ラウラ・ジェムサー Laura Gemser

 

 

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 ソフト・ポルノが世界的なブームとなった70年代。『エマニエル夫人』の大ヒットにあやかったイタリア映画『愛のエマニエル』('75)で注目を集め、“黒いエマニエル”として一世を風靡したのがラウラ・ジェムサーだった。自由奔放でありながら、どこかイノセントな奥ゆかしさと聡明さを併せ持った美貌、そしてエキゾチックな褐色の肌。ポルノ女優らしからぬ清楚な品の良さは、本家エマニエルのシルヴィア・クリステルに通じる魅力だったと言えるだろう。
 本人は女優になりたいと思って映画界に入ったわけではなかった。そもそも、映画や演劇にはあまり興味がなかったようだ。それだけに、自らのキャリアに対する野心は殆ど持ち合わせてはいなかった。『女囚エマニュエル』('84)で共演した女優兼プロデューサーのロレーヌ・デ・サルについて訊かれたラウラは、次のように答えている。“彼女は知性派を誇示したがるようなタイプだった。でも私に言わせれば下らない知性よ。要は、映画作りに知性なんて必要ないの。通俗的な映画を撮影するというのに、舞台女優のような空気や優雅さなんて要らない。シェイクスピア劇じゃないんだし。楽しまなくてどうするの?”と。

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『猟奇変態地獄』('77)より

 ラウラは1950年、インドネシアのジャワ島で生まれた。4歳の時、両親に連れられてオランダへ移住。地元の服飾学校でファッション・デザインを学び、卒業後は雑誌のグラビア・モデルとしてヨーロッパ各国で活躍した。その写真を見たイタリアのプロデューサーから声がかかり、ピエル・ルドヴィコ・パヴォーニ監督の“Amore Libero”('74)で映画デビュー。さらに、モデル時代から旧知の仲だったフランシス・ジャコベッティ監督の『続エマニエル夫人』('75)にマッサージ師役で登場し、全裸のマッサージ・シーンを演じた。
 そして、ラウラにとって映画出演3作目となったのが、『愛のエマニエル』だった。舞台となるケニアの美しい大自然を背景に、女流写真家エマニエルの自由奔放な性を赤裸々に描く作品で、折からのソフト・ポルノ・ブームに乗って世界的な大ヒットを記録。ラウラは一躍トップ・スターとなった。当時のヨーロッパにおける彼女の人気は凄まじく、1年間に5〜6本の主演作をこなすほどの売れっ子だった。
 例えば、タイで“Black Emanuelle goes East”の撮影を終え、そのまま新作の撮影のためにエジプトへ。それが終わると、すぐにローマで次の作品の打ち合わせをし、その足でモロッコへ向って“Black Emanuelle goes East”の続きを撮影する、といったハード・スケジュールをこなしていた。
 それでも、映画の撮影のために世界中を旅するというのは、彼女にとって女優という仕事の最大の魅力だったようだ。当時は撮影が終わると、その最終地でバカンスを過ごしていたという。イタリア産娯楽映画にまだ勢いがあった時代ならではの優雅さと言えるだろう。
 また、私生活では『愛のエマニエル』で共演した俳優ガブリエル・ティンティと76年に結婚。2人はおしどり夫婦として知られ、実に24本もの映画で共演を果たしている。

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『武士道ブレード』('80)より

“Murder Obsession”('80)より

 こうして世界的なセックス・シンボルとして活躍するようになったラウラ・ジェムサー。フェイ・ダナウェイ、ジェームズ・メイソンほかオールスター・キャスト出演の大作『さすらいの航海』('76)ではオーソン・ウェルズの付き人役を演じ、三船敏郎、リチャード・ブーンら共演の『武士道ブレード』('80)では九の一忍者役を熱演した。また、アラン・バートレット監督の戦争メロドラマ『カムバック』('82)では、『大草原の小さな家』のマイケル・ランドンを相手にヒロイン役を演じ、本格的なハリウッド進出も果たしている。ただ、この作品では彼女のポルノ女優というイメージを危惧したバートレット監督の指示で、モイラ・チェンという芸名を名乗らなくてはいけなかった。これは彼女にとって相当な屈辱だったようだ。
 “バートレット監督は私の人生を変えたがっていたの。分かるでしょ?彼はモラリストという名の汚らわしい人種の1人よ。彼は私のしてきたことを全て否定させようとした。タイではみんなが私に寄ってきて、ラウラ・ジェムサーでしょ?って訊いてくるのだけど、いいえ、モイラ・チェンです、って答えなくてはいけなかった。とても屈辱的だったわ”
 結局、この『カムバック』という作品はあまり話題にならず、彼女のハリウッド進出はこれが最後となった。また、イタリアの娯楽映画業界が急速に衰退していったこと、彼女自身の年齢的な問題もあって、80年代半ばからは脇役の仕事が増えていく。時には、脱ぐ必要すらない端役に甘んじることさえあった。
 この頃から、彼女は衣装デザイナーとしても映画に関わるようになる。もともと、学生時代にファッション・デザインを学んでいたこともあり、彼女にとっては得意分野だ。後押ししてくれたのは、ジョー・ダマートことアリスティド・マッサチェージ監督だった。“撮影からの帰りにバスの中で、モデルになる前は服飾の勉強をしていたことを友達に話していたの。それを傍で聞いていたアリスティドが、衣装を作ってくれないかと頼んできたわけ。女優として常にセットにいるわけだし、彼にしてみれば時間とお金の節約になったのね(笑)”

 1991年11月に最愛の夫ガブリエル・ティンティが59歳で死去。イタリアを活動の拠点にしたのも、映画界に残ることを決意したのも、全て夫のためだったというラウラは、ガブリエルの死で仕事に対するモチベーションを失ってしまった。“ガブリエルが死んでしまい、私には全てがどうでもよくなってしまった。だから決めたの。もう結構よ、って。全てを止めにして、映画界から足を洗うことにしたの”
 以来、彼女は夫ガブリエルとの思い出が詰まったローマの自宅にひっそりと暮らし、マスコミの取材も頑なに断り続けている。唯一の例外が、97年に出版された回想録“Io Emanuelle(私はエマニエル)”。その中で、彼女は『愛のエマニエル』で共演したドイツ人女優カリン・シューベルトの自殺未遂に触れ、こう語っている。
 “とても悲しいく思う。私たちは『愛のエマニエル』で共演して、とても仲良くなったの。(中略)ケニアではとてもくつろいだわ。カリンと彼女の夫、そして私とガブリエルの4人で、よく遊びに出たものよ。私たちの運命がこんなにも残酷で辛いものになるとは思いもしなかった。ケニアで過ごしたあの頃を振り返ると、まるで遠い過去の出来事のようだわ。私たちはみんな、とても幸せだった”と。

 

 

愛のエマニエル
Enamuelle Nera (1975)
日本では1976年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2006 Maxima Entertainment (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス仕様)/モノラル/音声:英語/字幕:なし
/地域コード:ALL/85分/製作:イタリア

映像特典
なし
監督:ビト・アルベルティーニ
製作:マリオ・マリアーニ
脚本:ビト・アルベルティーニ
    アンブロージョ・モルテーニ
撮影:カルロ・カルリーニ
音楽:ニコ・フィデンコ
出演:ラウラ・ジェムサー
    カリン・シューベルト
    アンジェロ・インファンティ
    ガブリエル・ティンティ
    ヴェナンティノ・ヴェナンティーニ
    イザベル・マルシャル
    ドン・パウエル

 『エマニエル夫人』の大ヒットにあやかって作られた亜流ソフト・ポルノ。本家のジュスト・ジャカン監督はあくまでも芸術映画を気取っていたが、こちらのアルベルティーニ監督はその点で非常に素直だった。
 太陽の下に照らし出される美女たちの裸、濃厚で官能的なベッド・シーン、そしてガイドブックに出てくるようなアフリカの壮大で美しい大自然。まだ庶民にとって海外旅行は夢のまた夢、ポルノだってようやく市民権を得たばかり、そんな70年代半ばという時代を象徴するような作品と言えるかもしれない。
 ストーリーはあってないようなもの、というのは本家と同じか。だが、思わせぶりなドラマ・シーンを極力排除し、大胆な性描写とロマンティックなロケーションを見せることに焦点を絞ったのは正解だった。ただのソフト・ポルノと言ってしまえばそれまでだが、少なくとも本家『エマニエル夫人』よりも遥かに映画としての見せ方を心得ている。
 もちろん、最大のセールス・ポイントは主演のラウラ・ジェムサーだろう。当時はまだちょっと垢抜けない雰囲気を残しているが、それが逆にポルノ女優らしからぬ清楚な魅力を生み出している。可憐な容姿に大胆なセックス演技というギャップが、当時の観客には新鮮だったのかもしれない。
 とはいっても、そこはあくまでもソフト・ポルノ。今見ればセックス描写だって奥ゆかしい限りだ。かえって、シャロン・ストーンの『氷の微笑』なんかの方が遥かに過激。当時はまだアダルト・ビデオなど存在しないし、ハードコア・ポルノだって一般庶民が見るものではなかった。一方、世間ではフリー・セックスが謳われ、一般映画でも大胆な性描写が描かれるようになっていた。そんな時代の生んだ徒花として、記憶にとどめておきたい作品と言えるだろう。

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ケニアを訪れた女流写真家エマニエル(L・ジェムサー)

パーティで知り合った男性リチャード(G・ティンティ)と意気投合

 女流写真家エマニエル(ラウラ・ジェムサー)は、雑誌の取材でアフリカのケニアを訪れる。彼女を出迎えたのは現地で大規模な農園を経営するイタリア人実業家ジャンニ(アンジェロ・インファンティ)と、その妻アン(カリン・シューベルト)。
 自由奔放なエマニエルは、歓迎パーティで紹介されたアメリカ人リチャード(ガブリエル・ティンティ)をはじめ、様々な人々とセックスを楽しむ。また、アンと親しくなったエマニエルは、彼女の案内でケニアの名所をあちこち訪れる。その傍らで、ジャンニはエマニエルに密かな思いを寄せていた。
 アンとも女同士のセックスを楽しんだエマニエルは、遂にジャンニとも結ばれる。彼の真剣な思いを感じて、つい本気になってしまうエマニエル。しかし、彼と愛人グロリア(イザベル・マルシャル)との電話を盗み聞きした彼女はショックを受け、まるで復讐に駆り立てられるかのように、誰彼かまわずセックスをするようになった(グロリアを含む)。しかし、海で溺れたところをジャンニに救われ、ようやく彼の強い愛情に気付く。
 だが、再びジャンニと結ばれた翌朝、エマニエルは何も言わずに去ってしまった。急いで彼女の後を追うジャンニ。そうとは知らず、エマニエルは列車の中でホッケー・チーム全員を相手にご乱交の真っ最中。ようやく彼女に追いついたジャンニは、自分のもとへ戻って欲しいと懇願するのだったが・・・。

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エマニエルの魅力に惹かれていくアン(K・シューベルト)

ジャンニ(A・インファンティ)もエマニエルを真剣に愛する

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ジャンニと急接近するエマニエル

エマニエルとアンは行く先々でセックスを楽しむ

 監督のビト・アルベルティーニは撮影監督出身。『カルタゴの女奴隷』('57)や『サビーヌの掠奪』('60)など、スペクタクル史劇やマカロニ・ウェスタンの撮影を数多く手がけた。その後、60年代末に映画監督へ転進し、アクションからSF、ドキュメンタリー、そしてソフト・ポルノに至るまで、ありとあらゆるジャンルをこなしている。
 この『愛のエマニエル』が大ヒットしたことから、アルベルティーニは続編“Emanuelle Nera 2”('76)を発表。しかし、何故かラウラ・ジェムサーは起用されなかった。どうやら、彼女のエージェントとアルベルティーニ監督のそりが合わなかったらしい。彼女は自身の回顧録で、その事をとても残念がっている。
 その代わりというわけではないが、彼女はジョー・ダマートことアリスティド・マッサチェージ監督による、全く別の“黒いエマニエル”シリーズに主演。ラウラとアリスティドはたちまち意気投合し、91年に彼女が引退するまで、実に31本もの作品で組んでいる。ただ、彼女はアリスティドを愛すべき人物だと語る一方で、その作品は暴力的で見るに耐えないものが多いことを認めている。アルベルティーニのエマニエル・シリーズは大らかで開放的だが、アリスティドのエマニエル・シリーズは陰惨でグロテスクだった。
 撮影のカルロ・カルリーニは、フェリーニの『青春群像』('53)やロベルト・ロッセリーニの『ロベレ将軍』('59)、『ローマで夜だった』('60)などの名作を数多く手がけた、ネオレアリスモ出身の名カメラマン。ケニアの美しい大自然を捉えた叙情的でロマンティックな映像は彼の功績なのかもしれない。
 また、本作はニコ・フィデンコによるお洒落でグルーヴィーな音楽でも人気が高い。フィデンコはもともとカンツォーネ歌手の出身で、ソフト・ポルノやマカロニ・ウェスタンなどB級映画の音楽を数多く手がけた作曲家だった。

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ケニアの大自然をカメラに収めるエマニエル

大空の下で開放的な性を満喫するアンとエマニエル

 共演のカリン・シューベルトはドイツ出身のセクシー女優で、当時はヨーロッパで絶大な人気を誇るスターだった。しかし、年齢や容姿の衰えと共に人気も急落し、80年代半ばにはハードコア・ポルノに転身してしまう。さらに、麻薬問題でたびたびトラブルとなり、95年には自殺未遂まで起こしてしまった。まさに転落人生まっしぐらという感じだ。これは彼女に限った話ではなく、リリ・カラーチやパオラ・セナトーレなど、70年代に活躍したセクシー女優の多くが同様の道を歩んでいる。
 その夫であるジャンニ役を演じたアンジェロ・インファンティは、イタリア映画ファンにはお馴染みの2枚目スター。日本では『ゴッドファーザー』('70)のマイケル・コルレオーネと親しくなるシチリア・マフィア、ファブリツィオ役が一番有名かもしれない。『ゴッドファーザーPART V』('90)でも20年ぶりにファブリツィオ役を演じていた。
 また、マカロニ・ウェスタンやイタリアン・アクションの悪役として有名なヴェナンティノ・ヴェナンティーニが、風変わりな画家役でオフビートな演技を見せているのも印象的。彼はもともとスタントマン出身で、これまでに150本近くの映画に出演している名脇役だ。最近では『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』('04)にも顔を出していた。

 

 

猟奇変態地獄
Emanuelle e gli ultimi cannibali (1977)
日本では1981年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済(別タイトル『アマゾンの腹裂き族』として)

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(P)2003 Media Blasters (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/93分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
ポスター&スチル・ギャラリー
監督:ジョー・ダマート
製作:ジャンフランコ・コーユームジャン
脚本:アリスティド・マッサチェージ
    ロマノ・スカンダリアート
撮影:アリスティド・マッサチェージ
音楽:ニコ・フィデンコ
出演:ラウラ・ジェムサー
    ガブリエル・ティンティ
    スーザン・スコット
    ドナルド・オブライエン
    パーシー・ホーガン
    モニカ・ザンキ
    アンナマリア・クレメンティ
    ディルチェ・フナーリ

 ジョー・ダマート(アリスティド・マッサチェージ)監督による“黒いエマニエル”シリーズの一本。エマニエルが人身売買の組織を暴く“Emanuelle Nera - Orient Reportage”('76)、エマニエルがスナッフ映画の製作現場に迫る“Emanuelle in America”('76)など、ダマート版エマニエルは陰惨で露骨なエロ・グロ描写で知られているが、中でも特に悪名高い作品がこの『猟奇変態地獄』である。
 ストーリーは単純明快。女性レポーター、エマニエルがアマゾンのジャングルで人喰い族に遭遇するというお話だ。当時はウンベルト・レンツィ監督の『カニバル/世界最後の人喰い族』('76)がイタリア内外で大ヒットしており、それに便乗する形で作られた映画だった。内容はまさしくスプラッター・ポルノ。過激なセックス・シーンは勿論のこと、内臓をえぐり出したり、首を跳ね飛ばしたり、胴体を切断したりといったグロテスク描写もてんこ盛りである。

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事件を追う女性レポーター、エマニエル(L・ジェムサー)

乳房を食いちぎられた看護婦

 NYの精神病院に潜入取材を試みていた女性レポーター、エマニエル(ラウラ・ジェムサー)は、看護婦が乳房を食いちぎられるという事件を目撃する。犯人は精神病患者の女性(ディルチェ・フナーリ)だった。その女性に興味を持ったエマニエルは病室へと忍び込み、得意のセックス攻撃で話を聞きだそうとする。しかし、どうやら彼女は言葉が通じないようだった。翌朝、エマニエルはドクターから女性がアマゾンのジャングルで発見されたこと、50年前に絶滅したはずの人喰族に育てられたらしいということを聞き出す。
 この願ってもない特ダネに飛びついたエマニエルは、人類学者マーク・レスター(ガブリエル・ティンティ)を伴って南米のアマゾンへと取材に向う。現地では人喰族の話に興味津々の女の子イザベル(モニカ・ザンキ)、布教活動に務めるシスター・アンジェラ(アンナマリア・クレメンティ)、そして案内人のサルヴァドーレ(パーシー・ホーガン)と合流。とはいえ、エマニエルとマークはセックスに明け暮れ、イザベルはその様子を盗み見しながらマスタベーションに耽っていた。
 ジャングルに入った一行は、アマゾンに眠るダイヤモンドを探している夫婦ドナルド・マッケンジー(ドナルド・オブライエン)、マギー(スーザン・スコット)の2人と出会う。好色なマギーはサルヴァドーレを誘惑し、ドナルドはイザベルの肉体を虎視眈々と狙っていた。
 そんな彼らの前に、絶滅したはずの人喰族が現れる。シスター・アンジェラが捕らえられ、無残にも腹を切り裂かれてしまった。命からがら逃げ出した一行。しかし、ダイヤモンドを発見して、興奮のあまりセックスに夢中となったマッケンジー夫妻が人喰族に襲われる。ドナルドは重傷を負い、マギーは連れ去られてしまった。
 一行はマギーを救出するために後を追うが、人喰い族に見つかってしまう。サルヴァドーレは殺され、ドナルドとイザベルは捕らえられてしまった。やがて、人喰族の集落では生贄の儀式が始まる。果たして、エマニエルとマークはイザベルたちを救出し、無事にジャングルを脱出することが出来るのか・・・?

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人類学者のマーク・レスター教授(G・ティンティ)

セックスを武器に特ダネをものにしていくエマニエル

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レスター教授に惹かれていくエマニエルだったが・・・

エマニエルとイザベル(M・ザンキ)

 という、なんともバカバカしくて下らない作品。しかし、そのえげつなさが逆にマニアの琴線に触れ、欧米ではカルト映画として非常に高い人気を集めている。アリスティド・マッサチェージ監督らしいハッタリの連続で、脚本なんかセックス・シーンと残酷シーンを見せるためだけの道具にしか過ぎない。真面目に鑑賞しようとする方が間違っているというもんだろう。
 マッサチェージはもともと撮影監督の出身。金儲けのためならどんな映画でも撮るという商売人だった。本作で使っているジョー・ダマートという名前を筆頭に、何と60近くもの変名を使用。カンフー映画を撮る時にはチャン・リー・スンやロバート・イップという中国人を名乗り、女性向けのソフト・ポルノを撮る時はジョーン・ラッセルやアンナ・バーグマンという女性を名乗り、史劇映画を撮る時はデヴィッド・ヒルズを、尼僧映画を撮る時はダリオ・ドナーティを名乗るなど、まさに臨機応変に名前を使い分けていた。まるっきり詐欺師の手口である。
 しかも、彼に騙された(?)のは観客だけではない。その最たる例が、出演者に無断で行われた本番シーンの挿入だろう。もともと彼の作品はソフト・ポルノとして製作されているので、セックス・シーンはあくまでも“演技”。なので、ガブリエル・ティンティやスーザン・スコット、アンジェロ・インファンティ、ジャック・パランスなどキャリアのある映画俳優が出演していたわけなのだが、彼は代役を使って撮影した本番シーンを編集で入れ込んだ“別バージョン”を作っていた。もちろん、出演者たちには一言の断りもなく。
 そうした別バージョンは一部のポルノ映画館などで限定上映されたので、当の俳優たちも殆ど気付かなかったらしい。ラウラ・ジェムサーは、たまたま入った映画館で上映されていた『カリギュラ2』('82)が別バージョンであることに気付き、初めて自分が騙されていたことを知ったという。本人が撮影した覚えのない本番シーンが挿入されていたのだ。当然のことながら猛烈に抗議したが、結局はアリスティドの巧みな話術にはぐらかされてしまった。
 そんな調子の人なので、本編に登場する“ジェニファー・オサリヴァンの実体験に基づく物語”というテロップも、当然ながらマユツバもの。エンド・クレジットでは“撮影に協力してくれたタプルカーラ(ブラジル、アマゾン)の関係者に感謝を捧げる”などとご丁寧に表記されているが、実はこれも大嘘だった。アマゾンのシーンが撮影されたのは、イタリア国内の自然公園。タプルカーラという場所が実在するのかどうか定かではないが、少なくともブラジルで撮影されてなどいない事だけは確かだ。

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巨大なヘビに襲われたエマニエル

ジャングルで出会ったドナルド(D・オブライエン)

 製作を手がけたジャンフランコ・コーユームジャンは、『戦場の謝肉祭』('80)や『トルネード』('83)、『エイリアン・フロム・ディープ』('89)など晩年のアンソニー・ドーソン作品をプロデュースした人物。ゾンビ映画の珍作『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』('80)のプロデューサーでもある。
 ちなみに、脚本のロマノ・スカンダリアートも、『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』を手がけていた人物。彼はもともとマカロニ・ウェスタンの脚本家で、監督作もいくつか残している。

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ドナルドの淫乱な妻マギー(S・スコット)

一行はジャングルをあてどなく彷徨う

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腹を裂かれて殺されるシスター・アンジェラ

人喰族の儀式が執り行われる

 今回ラウラ&ガブリエル夫妻と共演したのは、当時イタリアで活躍していたスイス出身のセクシー女優モニカ・ザンキ。3人はジュゼッペ・ヴァリ監督の『シスター・インモラル/背徳の賛美歌』('76)でも共演している。
 淫乱な人妻マギーを演じているのはスーザン・スコットことニーヴェス・ナヴァロ。ジュリアーノ・ジェンマやフランコ・ネロなどとも共演した美人スターだったが、本作の撮影時は人気も下り坂。ここでは、ソフト・ポルノとしてギリギリ限界のセックス・シーンを演じている。背に腹は替えられないというところなのだろうが、全盛期を知っているファンにとっては寂しい限りだ。
 その夫ドナルド役を演じるドナルド・オブライエンは、マカロニ・ウェスタンやアクション映画の悪役として知られる俳優。生まれも育ちもフランスというアメリカ人で、『大列車作戦』('64)や『グラン・プリ』('66)といったフランス・ロケのハリウッド映画にも出演している。
 また、冒頭で看護婦の乳房を食べる精神病患者役を演じたディルチェ・フナーリは、マッサチェージ監督の『ゾンビ’99』('80)や“Porno Holocaust”('81)にも出演しているポルノ女優だ。

 

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