ランベルト・バーヴァ
テレビ・ムービー・セレクション

 

 父親である巨匠マリオ・バーヴァと才能を比較されてしまうこともあってか、代表作『デモンズ』(85)以外は概ねホラー映画ファンからの評判はよろしくないランベルト・バーヴァ監督。80年代以降におけるイタリア産娯楽映画の斜陽で予算不足に悩まされ続けた彼は、劇場用映画の傍らでテレビ用映画の仕事も数多く引き受けた。中でも知られているのが、87年から88年にかけてレーテイタリアの発注で製作されたテレビ向けホラー映画シリーズ“Brivido Giallo”である。
 シリーズを構成しているのは『グレイブヤード』(87)、“Fino alla morte”(87)、『バンパイア/最後の晩餐』(88)、『オウガー』(88)の4本。出資元のレーテイタリアは、ベルルスコーニ首相の経営する巨大メディア・グループ、フィニンヴェスト傘下の制作会社(現在は統合されて消滅)だ。なので、いずれもそれなりの予算が用意されていたと思われる。テレビ向けだけに残酷描写や性描写は控えめだが、出来栄えそのものは劇場用としても十分に通用するもの。また、全体的にホラー色が弱いために熱心なホラー映画ファンからは軽視されてしまっているものの、テレビ映画ならではの軽いノリは決して悪くない。
 今回はシリーズ4作品中、特に個人的に好きな3作品がアメリカでDVD発売されたので、改めて紹介してみたいと思う。

 

 

グレイブヤード
Una notte al cimitero (1987)

日本では劇場未公開・テレビ放送なし
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2009 Mya Communication (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語・イタリア語/字幕:なし/地域コード:AL
L/96分/製作:イタリア

映像特典
なし
監督:ランベルト・バーヴァ
製作総指揮:マッシモ・マナッセ
      マルコ・グリロ・スピナ
脚本:ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
特殊メイク:ファブリツィオ・スフォルザ
音楽:サイモン・ボスウェル
出演:グレゴリー・レキ・サデウス
   レア・マルティーノ
   ベアトリス・リング
   ジャンマルコ・トニャッツィ
   カール・ジニー
   リーノ・サレッメ

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万引きをして警察から逃げる悪ガキたち

森の中で車が立ち往生してしまう

 地下墓地で一夜を過ごす羽目になった若者たちの恐怖体験を描いた作品。とはいっても、あちこちにナンセンスなギャグやジョークが散りばめられており、全体的にコメディ的な要素が濃厚。地下墓地を徘徊するゾンビたちもユーモラスで、どちらかというとのどかで御伽噺的な語り口のダーク・ファンタジーに仕上がっている。
 主人公は万引きで警察に追われる若者グループ。怪しげな酒場へと迷い込んだ彼らは、不気味な顔をした店主と賭けをする。それは、地下墓地で一夜を過ごすというもの。賞金に目がくらんで地下へと降りていった若者たちだったが、そこは生ける屍が徘徊する悪夢のような世界だった・・・。
 基本的には、次から次へと現われるゾンビを前にして、お気楽な若者たちがキャーキャーとわめいて逃げ回るだけ。しかも、このゾンビたちは人の肉を食うつもりなどサラサラない様子で、おばけ屋敷のアトラクションよろしく若者たちを脅かすだけに終始している。なので、全編を通じてちっとも怖くない。
 その一方で、棺から目覚めた男ゾンビが女ゾンビの胸にタッチして頬を引っ叩かれたりと、妙に愛嬌のあるゾンビたちの描写がユーモラス。中でもお気に入りなのは、ゾンビ一家の微笑ましい晩餐会だ。華麗な貴族の衣装に身を包んで、ネズミのソテーやらウジ虫の沸いたリンゴやらのディナーを仲睦まじく楽しむ醜悪なゾンビ一家。ところが、若者たちにその様子を覗かれていることに気付いて、ビックリして棺の中に隠れてしまう。まるで昔話にでも出てきそうなエピソードだ。
 また、迷路のような地下墓地をはじめとする大掛かりな美術セットも非常に良く出来ている。幻想感溢れるカメラワークも悪くない。往年のハマー・ホラーを彷彿とさせるゴシック・ムードがたっぷりだ。他愛のないホラー・コメディにしては上出来だろう。あとは、最後のオチさえもうちょっと気が利いていれば良かった。

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修道院の廃墟で夜を過ごすことに

奇妙な酒場で大量の財宝を発見

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地下墓地で一夜を明かせば財宝が貰えるという店主(L・サレッメ)

賭けに乗り気のデヴィッド(K・ジニー)

 スーパーで万引きをしたロビン(グレゴリー・レキ・サデウス)、ティナ(レア・マルティーノ)、ミッキー(ベアトリス・リング)、ジョニー(ジャンマルコ・トニャッツィ)、デヴィッド(カール・ジニー)の5人組。ミニバンに乗って警官の制止を振り切った彼らは、立ち入り禁止を無視して森の中へと入っていく。
 辺りは霧が立ち込めてきて怪しげな雰囲気。棺を乗せた無人の馬車が通り過ぎていく。やがて霧は晴れたものの、ミニバンが川で立往生してしまった。近くに修道院の廃墟があることに気付いた彼らは、そこで夜を明かすことにした。
 だが、夜になって物音で目覚めた彼らは、そばに酒場があることに気付く。こんなところに何故?さっきは全く気付かなかったのに。ともあれ、すっかり腹ペコだった彼らは、酒場に入って食事にありつこうと考えた。
 そこは陰鬱なムードの不気味な店。黙りこくったままの客たちも奇妙だ。ふと彼らは、店の真ん中に膨大な量の財宝が飾られていることに気付く。片目の潰れた店主(リーノ・サレッメ)によると、それは賭けに勝った者へ贈られる賞金だという。
 その賭けとは極めて単純。酒場の地下にある墓地で一夜を過ごすというものだった。だが、これまでに生きて帰った者はなく、いつの間にか賞金が膨れ上がってしまったのだという。いかにも恐ろしげに語る店主だったが、好奇心旺盛なデヴィッドは興味津々。どうせ自分たちを脅かすために大袈裟なことを言っているのだと。
 とにかく、膨大な額の賞金は魅力だ。欲に目のくらんだ若者たちは相談しあい、まずはデヴィッドが先に地下墓地へ行くことにする。あとからこっそり仲間たちが合流すれば、みんなでワイワイとやっているうちに一晩なんて過ぎてしまうはずだ。
 かくして、店主の案内でデヴィッドが地下墓地へと入っていく。さらに、酒場が閉店したのを見計らって、仲間たちがこっそりと地下へ降りていった。もちろん、彼らの計画は店主もお見通しだ。
 真っ暗な地下墓地で合流した若者たち。しかし、彼らの前には恐ろしげなゾンビが次々と現れ、若者たちは迷路のような墓地を逃げまどうハメに。ようやく、あともう少しで明け方というところまで頑張ったが、今度は出口が分からなくなってしまった。そこで、彼らは直感だけで生きている能天気な女の子ミッキーに出口探しを託すのだったが・・・。

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若者たちは地下墓地で一夜を過ごすことにする

目の前で甦ったゾンビ

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次から次へと恐ろしい目に・・・!?

まるで迷路のような地下墓地

 ランベルトと共に脚本を手掛けたのは、彼が助監督を務めた父マリオの『血みどろの入江』(70)以来の付き合いである脚本家ダルダノ・サケッティ。80年代のイタリア産B級娯楽映画には欠かせない脚本家として大活躍した人物だ。実質的にランベルトが演出を手掛けたマリオの『ザ・ショック』(76)を筆頭に、『暗闇の殺意』(83)や『デモンズ』(85)など、二人は数多くの作品でコンビを組んでいる。
 撮影を担当したのは、これまたランベルト・バーヴァ作品には欠かせないカメラマン、ジャンロレンツォ・バッタリア。もともと彼は水中撮影のスペシャリストだった人物で、セルジョ・マルティーノ監督の『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』(79)や『パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼』(79)、ロバート・アルトマンの『ポパイ』(80)などで水中シーンの撮影を担当していた。
 さらに、ゾンビの特殊メイクを担当したのは、フルチの『野獣死すべし』(80)やルッジェロ・デオダートの『ヘルバランス』(88)などで強烈なゴア・シーンを手掛けたファブリツィオ・スフォルザ。フルチ作品に代表されるようなゾンビとはかなり異なる、シュールでファンタジックなモンスターに仕上げているのは面白い。
 また、フルチの『地獄の門』(80)やデオダートの『食人族』(80)、アルジェントの『オペラ座の怪人』(98)などで知られるマッシモ・アントネッロ・ゲレンが、地下墓地などの壮麗なセット・デザインを手掛けているのにも注目。いかにも80'sといった感じの、シンセ・ポップな音楽スコアを手掛けているのは、『デモンズ2』(86)でもランベルトと組んだサイモン・ボスウェルだ。

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華麗なるゾンビ一家の晩餐会

ゾンビと呼ぶには個性的過ぎるお顔立ち(笑)

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夜明け前になっても出口が見つからない

能天気なミッキー(B・リング)の勘だけが頼り・・・!?

 おバカで能天気な若者グループを演じている俳優たちについても触れておこう。まず、ホラー映画ファンに馴染みが深いのは、『デモンズ』(85)の日本刀で殺される若者ケン役が印象的だったデヴィッド役のカール・ジニー。ランベルトの処女作『首だけの情事』(80)でヒロインの娘役を演じていたヴェロニカ・ジニーは彼の妹だ。
 ミッキー役のベアトリス・リングも、問題作(?)『サンゲリア2』(88)のヒロイン役でお馴染み。彼女はフランス人で、あの佐川君のパリ人肉食事件を題材にした『愛のかたち』(89)でもヒロインのフランス人女子大生役を演じていた。
 メガネをかけたティナ役のレア・マルティーノは、ランベルトの『キャロルは真夜中に殺される』(86)にも顔を出していた女優。ジョニー役のジャンマルコ・トニャッツィはイタリアの大御所俳優ウーゴ・トニャッツィの三男で、現在は売れっ子俳優として活躍中だ。ロビン役のグレゴリー・レキ・サデウスに関しては、これが唯一の出演作だったらくしく、詳しいことは分からない。
 また、酒場の店主役で登場するリーノ・サレッメも、ホラー映画ファンにはお馴染みなはず。『デモンズ』以降のランベルト・バーヴァ作品には欠かせない強烈なマスクの役者で、フルチの『ホラー・ハウス』(89)でも不気味な庭師役で顔を出していた。
 ちなみに、主人公たちに万引きされるスーパーの店主役にランベルト・バーヴァが、店員役に息子のファブリツィオ・バーヴァがカメオ出演している。

 

 

Fino alla morte (1987)
日本では劇場未公開・TV放送なし
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2009 Mya Communication (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語・イタリア語/字幕:なし/地域コード:ALL/製作:イタリア

映像特典
なし
監督:ランベルト・バーヴァ
製作総指揮:マッシモ・マナッセ
      マルコ・グリロ・スピナ
原案:エリサ・ブリガンティ
   ダルダノ・サケッティ
脚本:ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
特殊メイク:ファブリツィオ・スフォルザ
音楽:サイモン・ボスウェル
出演:ジョイア・スコラ
   デヴィッド・ブランドン
   ウルバノ・バルベリーニ
   ジュゼッペ・ステファーノ・デ・サンド
   ロベルト・ペディチーニ
   マルコ・ヴィヴィオ

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土砂降りの雨の中、死体を森の中に埋める男女

小料理屋を切り盛りする女性リンダ(G・スコラ)

 湖のほとりの小料理屋を舞台に、愛人と結託して夫を殺害した女に降りかかる恐怖を描いた作品。ランベルト・バーヴァ監督にしては珍しく、かなり正統派路線の心理サスペンスに仕上がっている。
 主人公は田舎町で小料理屋を営む女性リンダ。彼女は8年前、秘かに愛人のカルロと共謀して夫のルカを殺害していた。ある日、彼らのもとにマルコという流れ者が転がり込む。リンダは金も身よりもない彼を料理人として雇うことに。しかし、それ以来不可解な出来事が連続する。
 夫の殺害現場で紛失したはずのイアリングが発見され、その遺体と共に埋めたはずの夫の結婚指輪が出てくる。幼い息子アレックスまで悪夢にうなされるように。しかも、マルコの声や口調は奇妙なくらい死んだ夫に似ていた。果たして彼は何者なのか?様々な疑問と憶測が渦巻く中、不安と恐怖に駆られたリンダとカルロの狂気が暴走していく。
 イタリア映画に詳しいファンならば、本作がルキノ・ヴィスコンティの名作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(42)を下敷きにしていることに気付くだろう。これは、アメリカの作家ジェームズ・ケインのハード・ボイルド小説を、舞台をイタリアに移して映画化したもの。ポー川流域で小料理屋を営む人妻が、愛のない結婚生活に疲れ果て、若い愛人と共謀して粗暴な夫を殺害する。しかし、ある行き違いから二人はお互いの裏切りを疑うようになり、破滅的な末路を辿ることになるという話だ。
 本作では、その基本的なプロットを応用し、ヴィスコンティ版の持つ雰囲気を拝借しつつ、オカルト的なホラー・ミステリーとして仕上げている。ストーリーの焦点は、流れ者マルコの正体が何者なのかという点。リンダは彼の中に亡き夫の存在を感じ、愛人カルロは彼が警察の捜査官なのではないかと疑う。マルコの存在を巡って深まっていく二人の疑心暗鬼。それはやがて、お互いへの不信感へと変わって行く。
 そうした心理サスペンス的な要素が濃厚なため、いわゆるホラー映画的な描写はかなり控えめ。一応、息子アレックスの見る悪夢として亡き夫のゾンビが出てきたり、マルコの正体が明かされるクライマックスではオカルト的な描写もあるが、必要最低限に抑えているという印象だ。
 ということで、あくまでも男女の愛憎と裏切りをテーマにしたサスペンス劇を基本にしているため、全体的に地味な印象の残る作品ではある。一方で、即物的な描写を抑えた細やかな演出や、イタリア映画の伝統を感じさせる独特の雰囲気には、ランベルト・バーヴァ監督の意外な側面を見て取ることができるだろう。その上手い下手は別にしても。そういった意味で、なかなか興味深く見ることが出来る一本だとは思う。
 ちなみに、本作はもともとルチオ・フルチ監督が暖めていた企画だったという。しかし、原案と脚本を手掛けたダルダノ・サケッティがフルチに無断で盟友ランベルト・バーヴァのもとへ企画を持ち込んでしまった。そのため、それまで『サンゲリア』(80)など数多くの作品で組んできたサケッティとフルチは絶縁状態に。腹の虫の収まらないフルチが原案は自分が書いたものだと主張するなど、泥沼の争いとなってしまった。

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暴力的で猜疑心の強い愛人カルロ(D・ブランドン)

二人は罪の意識と不安に怯えながら暮らしていた

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ある晩、マルコ(U・バルベリーニ)という流れ者がやって来る

リンダはマルコを住み込みの料理人として雇う

 土砂降りの雨の中、車で死体を運ぶ二人の男女。リンダ(ジョイア・スコラ)は愛人カルロ(デヴィッド・ブランドン)と共謀し、夫ルカ(ロベルト・ペディチーニ)を殺害したのだ。森の中で夫の死体を埋めようとする二人。突如、ルカが息を吹き返し、リンダのイアリングを引きちぎった。不測の事態でパニックに陥る中、カルロがルカの息の根をとめる。
 それから8年後。リンダは夫の経営していた小料理屋を引き継ぎ、幼い息子アレックス(マルコ・ヴィヴィオ)を女手ひとつで育てながら店を切り盛りしていた。同居するカルロは漁師となり、店で出す魚を近くの湖で獲っている。
 一見すると平穏な日々を送っているように思える二人だったが、内心では8年前の犯行がいつバレやしまいかと不安を抱えながら生活していた。それだけに、日頃から些細な言い争いが絶えない。息子アレックスも、粗暴で冷たいカルロになかなかなつかなかった。
 そんなある日、嵐の吹き荒れる真夜中に予期せぬ訪問者がやって来た。それは、マルコ(ウルバノ・バルベリーニ)と名乗る若い男。小料理屋は下宿屋も兼ねており、マルコは一晩の宿と食事を願い出る。カルロは冷たく追い返そうとしたが、気の毒に思ったリンダは彼を泊めてあげることにした。
 聞けば、マルコは身寄りのない流れ者で、所持金も残り僅かだった。料理人をしていたこともあるといい、その腕前はなかなかのもの。しかも、その味は亡き夫ルカの料理とソックリだった。なにか運命的なものを感じたリンダは、一人でキッチンとホールを切り盛りすることに限界を感じていたこともあり、マルコを住み込みの料理人として雇うことにした。
 だが、猜疑心の強いカルロはそれが気に食わない。店の常連である警官(ジュゼッペ・ステファーノ・デ・サンド)と親しげに談笑するマルコを見たカルロは、彼が警察の捜査官なのではないかと疑い始めた。
 一方のリンダも、マルコの声や口調が夫ルカにソックリであることに気付いて戸惑いを覚える。父親は失踪したとしか聞かされていない息子アレックスも、夜な夜な父親の悪夢を見てうなされるようになった。次第にリンダはマルコの姿に夫ルカの影を見るようになり、精神的に不安定な状態が続くようになる。
 ある日、リンダは家の中でイアリングを発見して驚愕する。それは、夫ルカの殺害現場で紛失したものと同じものだった。さらに、息子アレックスの枕元に夫ルカの結婚指輪が置かれていた。死体と一緒に森の中へ埋めたはずなのに。
 不安と恐怖に駆られたリンダとカルロは、森でルカの死体を埋めた場所を掘り返した。死体はすっかり腐敗していたが、誰かが手を付けたような痕跡はない。だが、指にはめられていたはずの結婚指輪は見当たらなかった。
 その正体が何者であるにせよ、マルコが夫殺しについて知っていることは疑いようのない事実と思われた。考えあぐねたリンダとカルロは、コーヒーに毒を盛ってマルコを殺害することにする。8年前に夫ルカを殺害したのと同じ方法だ。不安を隠しながらもマルコに毒入りコーヒーを与えるリンダ。
 しかし、1時間後にカルロがマルコの様子を確認しに行ったところ、彼はピンピンとしていた。驚いたカルロがコーヒーに混ぜた毒を確認したところ、ただの砂糖と入れ替えられている。リンダがマルコに寝返ったと考えたカルロは逆上して彼女に襲いかかるが、反対に抵抗されて殺されてしまった。
 カルロの死体を隠したリンダは、彼が家を出て行ってしまったと周囲に嘘をつく。それ以来、平穏無事な日々が続いた。漁の仕事はマルコが引き継ぎ、リンダは次第に彼に心を許していく。だが、マルコとついに結ばれた夜、リンダは彼の恐るべき正体を知ることとなる・・・。

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カルロはマルコが警察の捜査官ではないかと疑う

殺害現場で紛失したはずのイアリングが・・・

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マルコを毒殺することに決めたリンダとカルロ

リンダがマルコに寝返ったと早合点して逆上するカルロ

 先述したように、もともとはルチオ・フルチが監督するはずだった本作。生前のフルチは自らが原案を考えたと主張していたが、実際には『サンゲリア』や『墓地裏の家』(81)などでも組んだエリサ・ブリガンティとダルダノ・サケッティの二人が原案を手掛けたようだ。
 ランベルト・バーヴァとサケッティの仕上げた脚本ではヒロイン、リンダの心の闇に比重が割かれ、なぜ彼女が夫殺しの計画に加担してしまったのか、なぜ彼女がカルロのような粗暴な男と関係を持ってしまったのかといった細かい心理にまで描写が及んでいる。恐らく、ランベルト・バーヴァ作品の中では、最も丁寧で完成度の高い脚本なのではないだろうか。
 その他のスタッフも顔ぶれは、前作とほぼ全く一緒。マルコの顔半分がルカになってしまうという特殊メイクは少々無理が感じられるものの、ファブリツィオ・スフォルザの実験精神というか、特殊メイク・アーティストとしての意気込みが感じられて面白い。また、フルチ作品におけるファビオ・フリッツィを彷彿とさせるようなサイモン・ボスウェルの音楽スコアも印象的だ。

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カルロの死体を隠すリンダ

リンダはマルコに少しづつ心を開いていく

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亡き夫ルカ(R・ペディチーニ)の亡霊か?それとも幻覚か?

マルコの姿が鏡に映らないことに気付いて驚くリンダ

 愛を求めるあまりに同じ過ちを繰り返してしまう孤独な人妻リンダを演じているのは、フルチの『SFコンクエスト/魔界の制圧』(83)やダリオ・ピアーナの『華麗なる殺人/死ぬには美しすぎて』(89)などにも出ていたセクシー女優ジョイア・スコラ。生活に疲れた田舎女の雰囲気を上手く出していて、なかなかの当たり役だと思う。
 一方、猜疑心が強くて嫉妬深い愛人カルロ役を演じているのは、『カリギュラ2』(82)のカリギュラ役や『アクエリアス』(87)の演出家役など、イタリア産B級映画ファンにはお馴染みのイギリス人俳優デヴィッド・ブランドン。デンジャラスな魅力のサイコな役柄を得意とする人だけに、こちらもピッタリのはまり役だ。
 そして、謎の男マルコ役として登場するのが、『デモンズ』のヒーロー役や『オペラ座/血の喝采』(88)のサイコな刑事役で有名な2枚目俳優ウルバノ・バルベリーニ。イタリアの名門貴族の出身で、巨匠ゼフィレッリのオペラ映画『オテロ』(86)のカッシオ役でも知られる人だ。最近では『007/カジノ・ロワイヤル』(06)にも顔を出していた。
 そのほか、イタリアでは声優として知られるロベルト・ペディチーニが夫ルカ役を、『デモンズ2』(86)のデモンズになってしまう少年トミー役が印象的だったマルコ・ヴィヴィオが息子アレックス役を演じている。

 

 

バンパイア/最後の晩餐
A cena col vampiro (1988)

日本では1989年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2009 Mya Communication (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語・イタリア語/地域コード:ALL/90分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル予告編
監督:ランベルト・バーヴァ
製作総指揮:マッシモ・マナッセ
      マルコ・グリロ・スピナ
原案:ルチアーノ・マルティーノ
脚本:ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
撮影:ジャンフランコ・トランスント
特殊メイク:ロザリオ・プレストピーノ
音楽:サイモン・ボスウェル
   マリオ・タリアフェッリ
出演:ジョージ・ヒルトン
   イザベル・ルッシノワ
   パトリツィア・ペレグリーノ
   リカルド・ロッシ
   ヴァレリア・ミリロ
   イヴォンヌ・スキオ
   ステファーノ・サベッリ
   ダニエレ・アルドロヴァンディ

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古城の地下に秘密の墓地を発見する撮影隊

撮影隊の血を吸って甦ったバンパイア

 『グレイブヤード』ではコミカルな側面を強調したランベルト・バーヴァだが、さらにコメディ路線を全面的に押し出したナンセンスでユーモア溢れるバンパイア・ムービーがこれ。不老不死のバンパイアに自分を殺してくれと頼まれた若者たちが、古城の中を逃げ回りながらバンパイア退治の方法を探っていくという物語だ。
 主人公は無名の若手新人俳優たち。伝説的なホラー映画監督ユーレックの新作映画のオーディションに合格した若者たちは、監督の住む古城へと招かれる。ところが、ユーレックは本物のバンパイアだった。
 彼に言わせると、不老不死のバンパイアの人生は退屈そのもの。とはいえ。バンパイアとしての生存本能が邪魔して自殺することも出来ないので、いっそのこと自分を殺してほしいという。さもなくば、自分がお前たちを殺してしまうぞと。
 かくして、城の中を逃げまどいながらも、あの手この手でバンパイアを退治しようとする若者たち。ところが、お馴染みの十字架もニンニクも木の杭も全く効き目がない。小説や映画に出てくるバンパイアは、所詮人間が考えたフィクションなのだ。かくして、ユーレックを退治する手がかりのあるという映画のフィルムを巡って、若者たちとバンパイアの熾烈(?)な攻防戦が繰り広げられる。
 古典的なホラー映画をネタにしたギャグといい、『ヤング・フランケンシュタイン』(74)のマーティン・フェルドマンにソックリな執事といい、メル・ブルックスのパロディ映画をお手本にしたのは明白。さらに、クリストファー・リーを彷彿とさせるユーレック役のジョージ・ヒルトン、舞台となる広大で壮麗な古城など、ハマー・ホラーを彷彿とさせる魅力にも溢れている。
 そのジョージ・ヒルトンのいい具合に悪ノリ気味なバンパイア演技を筆頭に、能天気でおバカな若者を演じる若手俳優たちや、本当にマーティン・フェルドマンに瓜二つな執事役のダニエレ・アルドロヴァンティ、“バンパイアのアイデンティティ・クライシスになんか付き合ってられないわ”とばかりに若者たちに力を貸す女バンパイア役のイザベル・ルッシノワなど、役者陣の賑やかでオフビートな演技も楽しい。
 もちろん、ベタなスラップスティック・ギャグやホラー・ネタのジョークを巧みに織り交ぜた脚本と演出も上出来。ランベルトの意外な才能を垣間見ることの出来る佳作だ。

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映画のオーディションに合格した若者たち

監督の住む古城へと招かれる

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不気味な執事(D・アルドロヴァンティ)に驚くリタ(P・ペレグリーノ)

若者たちは古いバンパイア映画を見せられる

 オープニングは第一次世界大戦前のヨーロッパ。とある映画撮影隊が、古城の地下に隠された秘密の墓地を発見する。そこにはバンパイアのミイラが眠っていた。夢中でカメラを回すスタッフの一人が誤って怪我をしてしまったところ、その血がバンパイアの口へと入ってしまう。みるみるうちに息を吹き返すバンパイア。パニックに陥った撮影隊の悲鳴が暗闇にこだまする。
 時は移って現代。伝説的なホラー映画監督ユーレックの久々となる新作映画のオーディションが行われ、リタ(パトリツィア・ペレグリーノ)、モニカ(イヴォンヌ・スキオ)、ジョニー(リカルド・ロッシ)、サーシャ(ヴァレリア・ミリオ)の4人が合格する。
 早速、ユーレックの住む古城へと招かれた若者たち。不気味な執事ジルス(ダニエレ・アルドロヴァンティ)に出迎えられた彼らは、城の豪華絢爛たる内装に圧倒される。しかし、肝心のユーレックは日没にならないと現われないという。
 ユーレックの指示を受けた助手のマシュー(ステファーノ・サベッリ)は、彼が監督したという古い映画を若者たちに見せる。それは、驚くぐらいにリアルなバンパイア映画だった。ところが、途中で映写機が故障してしまい、映画を最後まで見ることは出来なかった。監督に怒られることを恐れたマシューは、ジルスと口裏を合わせて映写機の故障のことを黙っていることにする。
 やがてディナーの時間となり、ようやくユーレック(ジョージ・ヒルトン)が姿を現した。ところが、食事の最中にジョニーがあることに気付く。ユーレックの姿が鏡に映っていないのだ。ニヤリと笑ったユーレックの口からのぞく鋭い牙。
 そう、ユーレックはバンパイアだったのだ。しかし、彼はバンパイアの生活に飽き飽きとしていた。昼間は外を歩き回ることも出来ず、寝る場所といえばいつも棺桶の中。しかも、これが非常に寝心地が悪い。人の血だって正直なところ美味いとはいえない。もともと好き好んでバンパイアになったわけではないし、ここらでそろそろ死んでしまいたい。もう何千年も生きてきたのだから十分だ。
 しかし、その一方でバンパイアとしての本能は、生きて人間の血を吸うことを望んでいる。まさに葛藤の毎日だ。そこで、君たちに頼みごとがある。是非とも自分を殺してほしい。そのために、君たちはオーディションで選ばれたのだ、と。
 ユーレックの息の根をとめる方法は、先ほど上映された映画の中にヒントがあるという。もしも夜明けまでに彼を殺すことが出来なければ、若者たちはユーレックの餌食となってしまうのだ。
 いきなりの告白に頭が真っ白の若者たち。本物のバンパイアの存在など、にわかに信じることは出来ない。そんな彼らを、助手のマシューが地下墓地へと案内する。そこには、バンパイア退治に失敗してユーレックの餌食となり、余にも醜い怪物へと変えられてしまった人々が。それでも納得のいかない若者たちの前に再び姿を現したユーレックは、映写機の故障を隠していたマシューの心臓をえぐり取って殺してしまう。
 これでようやくユーレックが本気であることを悟った若者たち。大急ぎで城内を逃げ回り、駆け込んだキッチンでニンニクを調達。椅子の脚を追って十字架を作り、恐る恐るユーレックの行方を追う。
 ところが、ニンニクも十字架も全く効き目なし。ユーレックの心臓めがけて木杭を突き刺したものの、これまた全然効果がなかった。バンパイアだって数千年のうちに進化するもの。それに、過去の映画や小説などで描かれたバンパイアは、所詮は人間が考えたフィクションに過ぎない。
 絶体絶命の窮地に追い込まれた若者たちは、なんとかバンパイア退治の鍵を探そうと城内を逃げ回る。そんな彼らの様子を面白そうに眺めているのは、この城に住むセクシーな女バンパイア(イザベル・ルッシノワ)だ。
 女バンパイアはユーレックの愛人だったが、そのアグレッシブな欲の深さにはユーレックも呆れ果てている。こんな強欲な女を相手にするんだったら、まだ男を知らない人間の処女の方が遥かにマシだ。そんな彼が目を付けたのは、若者たちの中で唯一の処女モニカ。
 いよいよユーレックに追いつめられた若者たち。モニカがその毒牙にかかってしまった。しかし、従来の吸血鬼伝説に根拠がないのだとすれば、ユーレックに血を吸われたモニカがバンパイアになってしまうこともないのでは?
 いずれにせよ、最後の頼みの綱は例の映画フィルムだ。ユーレックに愛想を尽かした女バンパイアの協力で映写機の修理に成功した若者たち。だが、既に夜は白々と明け始めていた・・・。

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日が暮れて若者たちの前に現われたユーレック(G・ヒルトン)

ユーレックは正真正銘のバンパイアだった

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ユーレックに心臓を抉り取られる助手マシュー(S・サベッリ)

ニンニクや十字架で対抗しようとする若者たちだったが・・・

 この原案を手掛けたのは、イタリア映画界きっての娯楽職人セルジョ・マルティーノの実兄であるプロデューサー、ルチアーノ・マルティーノ。弟とのコンビで知られる人なだけに、もしかしたら本作ももともとはセルジョ・マルティーノが監督する予定だったのかもしれない。
 ハマー・ホラーを彷彿とさせるカラフルでゴシックな映像をカメラに収めたのは、『オウガー』や『デモンズ5』(89)でもランベルト・バーヴァと組んだジャンフランコ・トラスント。彼はフランコ・ディジャコモのカメラ助手として、アルジェントの『四匹の蝿』(71)やトニーノ・ヴァレリの『サハラ・クロス』(77)などにも参加していた人物だ。
 ゾンビ・チックなバンパイアの特殊メイクを手掛けたのは、『デモンズ』シリーズなどでもお馴染みのロザリオ・プレストピーノ。ホラー・コメディとはいえ、しっかりと特殊メイクにも手を抜いていないのは好感が持てるところだろう。
 さらには、『グレイブヤード』にも参加したマッシモ・アントニオ・ゲレンが本作でも見事な美術デザインを担当。地下墓地のシーンでは『グレイブヤード』のセットを上手く流用している。また、編集には『地獄の戦場コマンドス』(68)や『炎のいけにえ』(74)などの映画を手掛けた大ベテラン、ダニエレ・アラビソが参加している。
 そして、今回はサイモン・ボスウェルに加えてマリオ・タリアフェッリが音楽スコアを担当。80年代らしいポップなシンセ・サウンドを聴かせてくれる。

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若者たちを追いつめるユーリック

ユーリックの愛人である女バンパイア(I・ルッシノワ)

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モニカ(Y・スキオ)がユーリックに血を吸われてしまった

タイム・リミットを迎えた若者たちの運命やいかに・・・!?

 悩めるバンパイアのユーレックを演じているのは、マカロニ・ウェスタンやジャッロでお馴染みのダンディな2枚目スター、ジョージ・ヒルトン。この作品で初めて、彼がクリストファー・リーにソックリであることに気付いた。また、コミカルな演技に才能があることも意外な驚きだったと言えよう。
 そのユーリックの愛人であるお茶目な女バンパイア役として登場するイザベル・ルッシノワは、本名をマリア・イザベラ・コチアーニという生粋のイタリア人。日本ではあまり馴染みのない女優さんだが、イタリアでは70年代からテレビ・タレントとして活躍している人らしく、最近ではプロデューサーや脚本家にも進出している。ローレン・ハットン・タイプのアダルトな色気が魅力の女優だ。
 そして、バンパイア退治に悪戦苦闘する若者たちを演じる役者についても言及しておこう。まず、唯一の男性ジョニーを演じているリカルド・ロッシは、ユマ・サーマン主演の『湖畔のひと月』(95)にも顔を出していた俳優。80年代バンパイア・コメディの元祖『フライトナイト』シリーズのウィリアム・ラングスデールを彷彿とさせる、チャーミングで親しみやすい若者といった感じが好感持てる。
 歌手志望のリタ役を演じているパトリツィア・ペレグリーノは、ジョー・ドン・ベイカー主演のB級アメリカ映画『カウボーイ・ダンディ』(85)のヒロイン役も務めたことのある女優。リタの親友でダンサー志望の処女モニカ役のイヴォンヌ・スキオはテレビのCMタレントとして有名になった人で、現在はハリウッドを拠点に活躍している。また、ショートカットのサーシャ役を演じているヴァレリア・ミリロは、イタリアの有名なコメディアン、アントニオ・アルバネーゼの監督・主演作“Uomo d'acqua dolce”(96)のヒロイン役などで知られる女優だ。
 そのほか、巨匠フェリーニの『ジンジャーとフレッド』(86)ではマーティ・フェルドマンその人の役を演じたダニエレ・アルドロヴァンディ、フローレンス・ゲラン主演のソフト・ポルノ『レディ・ドール』シリーズのステファーノ・サベッリが脇を固めている。

 

 

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