ラ・ブーム La Boum
80年代の甘く切ない青春のメロディ

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 世の中には、ばかばかしいくらいにシンプルで愚かなくらいに率直だからこそ心に残る映画や音楽がある。そうした作品は頭の堅い批評家からは無視され、時にはこき下ろされながらも、一般大衆の間ではいつまでも愛され続ける。80年代にヨーロッパやアジアを中心に大ヒットを飛ばした映画「ラ・ブーム」シリーズなんかは、まさにその好例と言えるかもしれない。一人の少女の淡い恋と別れ。誰でも経験する平凡で普遍的な青春の1ページを切り取った恋愛ロマンス。下らないの一言で済ませるのは簡単だが、批評家ばかりに評価されるような映画に価値があるとも限らない。ヒットする作品には、必ず一般大衆の心を掴むだけの“何か”があるのだ。
 この「ラ・ブーム」シリーズに関していうならば、それはヒロインのソフィー・マルソーの魅力であり、そして大ヒットを記録した主題歌である。「ラ・ブーム」('80)でリチャード・サンダーソンの歌った「愛のファンタジー」、そして「ラ・ブーム2」('82)でクック・ダ・ブックスの歌った「恋する瞳」。どちらも、作曲は本編のスコアも手掛けたフランスの作曲家ウラジミール・コスマ。ジャン=ジャック・ベネックス監督の「ディーバ」('81)とエットーレ・スコラ監督の「ル・バル」('84)でセザール賞を受賞した人物である。どちらかというと軽いタッチのコメディや青春映画の音楽を手掛けることが多く、「ディーバ」と「ル・バル」、そして「ラ・ブーム」シリーズ以外にはこれといった代表作はない。が、非常にメロディアスでポップなスコアを得意とする作曲家で、そのフィルモグラフィーゆえに過小評価されていると言えるだろう。この「ラ・ブーム」シリーズでも、レゲエからディスコ、オールディーズ風ロックン・ロールまで幅広いジャンルを手掛けており、非常にライトなタッチながらポップで楽しいソングライティングを披露している。

 さて、肝心の主題歌たち。「愛のファンタジー」を歌ったのはイギリス出身のリチャード・サンダーソン。実は彼自身も作曲家で、ドキュメンタリー映画を中心に映画音楽を手掛ける他、伝統的なユダヤ音楽のアルバムもリリースしている。この「愛のファンタジー」ではボーカリストに徹しており、ソフトで女性的な美しい声を聴かせる。“夢は僕の現実、ただ一つの本物のファンタジー”と歌う歌詞は相当にクサいものの、結局10代の恋愛なんてそんなもんじゃん!?という意味では説得力がある。そして、これでもかと言わんばかりに繊細で美しく甘いメロディ。乙女心一撃の直球勝負。フランスでヒット・チャート1位を記録したほか、世界各国で合計800万枚を売ったというのも納得の珠玉のポップ・ナンバーだ。
 一方の「恋する瞳」。こちらを歌ったのもイギリス出身のバンド、クック・ダ・ブックス。彼らも本来はレゲエやスカを演奏するバンドで、現在も故郷のリバプールを中心に音楽活動を行っている。「恋する瞳」はフランスと台湾でヒット・チャート1位を記録し、彼らにとっては唯一のメジャー・ヒットになっている。こちらも「愛のファンタジー」に勝るとも劣らないロマンティックで美しいバラード。特に、ブリッジを置かずに一気にサビに入る部分の転調は見事で、優れたポップ・ミュージックのお手本とも言うべき出来映え。
 どちらも、TOTOやクリストファー・クロスといった当時のアメリカのAORを強く意識した作品であり、AOR系アーティストの多くがフレンチ・ポップスの影響を少なからず受けている事を考えると非常に興味深い。ちなみに、アメリカでは「ラ・ブーム」はニューヨークなど一部の大都市で公開されたのみで、「ラ・ブーム2」に至っては未公開のまま。しかし、アメリカの学校ではフランス語の授業で「ラ・ブーム」を教材として使う事が多く、学生時代にフランス語を選択したアメリカ人にとっても非常に思い出深い作品だという。imdbなどアメリカの映画関連の掲示板で“あの主題歌は何!?どこで手に入るの!?”といった書き込みを見かけることも少なくない。当たり前の事だが、優れた音楽に国境はないのである。

 

SOUNDTRACK.JPG REALITY.JPG REALITY_REMIX.JPG YOUR_EYES.JPG

La Boum / La Boum 2

Reality / Richard Sanderson

Reality / S-Boy

Your Eyes / Cook Da Books

(P)Pomme Music/Sony(France) (P)1987 Carrere (Germany) (P)2003 Media Spirit (Germany) (P)1987 Carrere (Germany)
1,Reality (chante par Richard Sanderson)
2,It Was Love
3,Formalities (Instrumental)
4,Gotta Het A Move On
5,Swingin' Around
6,Gotta Get A Move On
7,Formalities
8,Gotta Get A Move On (Instrumental)
9,Murky Turkey
10,Goin' On For Ever
11,Your Eyes (chante par Cook da Books)
12,I Can't Swim
13,Get It Together
14,Disillusion (Instrumental)
15,Maybe You're Wrong
16,Silverman (Instrumental)
17,Reacing Out
18,Rockin' At The Hop
19,Silverman (Instrumental)
20,La Boum 2 (Instrumental)
Side A
1,Reality (Extended Version) 8:10
Side B
1,Reality (Album Version)
2,I Can's Swim
1,Radio Mix 3:23
2,Original Extended 7:52
3,DJ Dee Lay Remix 7:02
4,Infraroth Mix 7:51
5,Pegelklub 6:59

produced by M.Schmidt.
#1,#2 remixed by Stefan Muller & Hendrik Wilhelms
#3 remixed by DJ Dee Lay
#4,#5 remixed by Stefan Roth
Side A
1,Your Eyes (Extended Version) 6:03
Side B
1,Your Eyes (Instrumental Version) 6:03
2,Rockin' At The Hop
 「ラ・ブーム」と「ラ・ブーム2」のサウンドトラックを収録したカップリング盤。リチャード・サンダーソンの#1、クック・ダ・ブックスの#11の他、殆どがThe RegimentやThe Cruisersといったバンドの演奏によるポップ・ナンバーで、いわゆるインストものが少ない。青春=アメリカン・ポップスといったイメージなのか、全体的に古き良き時代のアメリカン・ポップスを彷彿とさせるナンバーが多いのが印象的で、フランス人のアメリカン・カルチャーに対する憧れのようなものが感じられるのが面白い。  「愛のファンタジー」の12インチ・バージョン。87年にドイツでリバイバル・ヒットした際にリリースされたもので、基本的にはオリジナル・バージョンをエディットし直して長尺にしただけ。12インチだからといってダンス・ミックスを期待すると肩透かしを食うが、ディスコのチーク・タイムで流すのには使えるバージョンと言えるかもしれない。ただし、最後はサビを繰り返しながら急にフェード・アウトするので、次の選曲に困るかも。カット・インにインパクトのある曲じゃないと、非常にぎこちなくなってしまいます。  こちらはリチャード・サンダーソン本人のボーカル・トラックを使用した正真正銘のリミックス・バージョン。案の定というか、ガンガンにBPMを上げまくったハード・トランスに仕上がっていて、かなり好き嫌いが分かれそうな出来。こうでもしない限りはダンス・バージョンにアレンジするのが困難な楽曲とも言える。オーディエンス受けを狙ったネタとしてならクラブ・プレイでも使えるかもしれないけど、一般のリスナーが聴くにはちょっと辛いかも。  「恋する瞳」も12インチ・バージョンがあったのですね。こちらもドイツで制作されたロング・バージョンで、やはりオリジナルをエディットして長尺化しただけのもの。ただ、B面のインスト・バージョンはオリジナルのサントラにも収録されていなかったので、カラオケとして使えるかも!?

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