ジェス・フランコ Jess Franco
セレクション PART 2

 

ビーナスの誘惑・美しき裸身の復讐
Venus in Furs (1969)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Blue Underground (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/86分/製作:イギリス・西ドイツ・イタリア

特典映像
J・フランコ監督インタビュー
女優M・ローム音声インタビュー
オリジナル劇場予告編
ポスター&スチル・ギャラリー
J・フランコ監督バイオグラフィー

監督:ジェス・フランコ
製作:ハリー・アラン・タワーズ
原案:ジェス・フランコ
脚本:ジェス・フランコ
   マルヴィン・ウォルド
   カルロ・ファッダ
   ミロ・G・クッチャ
   ブルーノ・レデール
撮影:アンジェロ・ロッティ
音楽:マンフレッド・マン
   マイク・ハッグ
出演:ジェームズ・ダレン
   バーバラ・マクネア
   マリア・ローム
   クラウス・キンスキー
   デニス・プライス
   マーガレット・リー
   ポール・ミュラー
   マンフレッド・マン

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スランプに陥ったトランぺッター、ジミー(J・ダレン)

砂浜で美女ワンダ(M・ローム)の死体を発見する

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プレイボーイの大富豪アフメッド(K・キンスキー)

気の弱い中年の美術商キャップ(D・プライス)

 原題は「毛皮を着たヴィーナス」。あの作家マゾッホの書いた倒錯小説の映画化とおもいきや、これが全く無関係の作品だったりするのはフランコらしいいい加減さと言うべきだろうか。もともとジャズやロックへの造詣が深いことでも知られるフランコだが、本作はジャズと美女、愛と倒錯、生と死などをキーワードに、めくるめく官能と復讐のラビリンスへと迷い込んでしまったミュージシャンの、文字通り夢とも現実ともつかない奇妙な体験を描いていく。シュールでデカダンなムード、エッジの効いたエクスペリメンタルな演出。どことなく垢抜けなさは残るものの、アバンギャルドな映像作家としてのジェス・フランコの一面を垣間見るには十分な、これは隠れた佳作とも言うべき一本だろう。
 主人公はスランプに陥ったジャズ・トランぺッター、ジミー。ある日、彼は海辺で美女の死体を発見する。女性の名はワンダ。以前に見かけたことのある女性だった。それは彼が演奏するパーティでのこと。毛皮を身にまとって会場に現れたワンダは、主催者アフメッドとその仲間たちからサディスティックに凌辱され、そのまま消息を絶っていたのだ。恐らく彼らに殺されたのだろう。現場を目撃しながら何も出来なかったことを悔やむジミーは、そんな忌まわしい思い出から逃れるかのように、南米はブラジルのリオへと旅立つ。
 やがて、黒人歌手リタの精神的な支えでカムバックを果たしたジミーだったが、そんな彼の前に死んだはずのワンダが姿を現す。海辺の死体は彼女じゃなかったのか?謎の真相もつかめぬまま、ワンダの危険な魅力に溺れていくジミー。彼女との関係が深みにハマればハマるほど、ミュージシャンとしての情熱に火がつくような気がした。だが、時を同じくして、あのパーティ会場でワンダを凌辱した人々が次々と謎の死を遂げていく。果たして、彼女の正体とはいったい…?
 フランコの友人でもあったトランぺッター、チェット・ベイカーの言葉をヒントに作られたという本作。ミュージシャンにとっては、女性こそがインスピレーションの源。それはライブ会場の観客席にいる美女でもいいし、もしくは空想の中にしか存在しない理想の女でもいい。演奏している最中は彼女のことを想い、ある種の疑似恋愛体験をする。それはまるで、海で溺れた人間が死に際に一生分の出来事を走馬灯のように思い返すのと同じ。情熱的な恋愛に身を焦がしながら、しかし気が付くとものの3分程度しか経っていないのだ。そんなベイカーの告白に興味をそそられたフランコは、ベイカー自身を主人公のモデルにしながらストーリーを書き上げたのだという。
 ただ、本来はシュールなタッチのラブ・ストーリーを目指したところ、商業的な分かりやすさを求める出資者や配給元の要望もあって、ミステリー・タッチの復讐劇へと仕立てざるを得なかった。
「毛皮を着たヴィーナス」というタイトルも配給元からの指示。B級映画とはいえ、それなりの予算が注ぎ込まれているため、彼らの要求を呑まないわけにはいかない。そこは雇われる側である職人監督の辛いところだ。
 いずれにせよ、建前上はサスペンス仕立てのB級娯楽映画として作られているものの、実際は極めて観念的かつシュールレアリズムなアート映画風の作品に仕上がっている。タイトルとの辻褄を合わせるため、ヒロインはたびたび毛皮を着て登場するわけだが、これが意外にもスタイリッシュなアクセントとしての効果を発揮した。そのヒロインが凌辱事件の加害者に復讐を遂げるたび、“Venus in Furs will be Smiling〜!”というソウルフルな女性ボーカルがBGMとして鳴り響くというのも、なかなかクールでお洒落なアイディアだ。
 そして、あのどんでん返し的なクライマックス。まあ、そういうことなんだろうなと大方の予想はつくものの、ある種の「ミステリー・ゾーン」的な結末を思いがけず詩情豊かなタッチで描いたフランコのセンスと力量は、改めて評価されて然るべきだろう。ジェス・フランコを単なるエログロ映画監督と思っている人にこそ、是非とも見て欲しい作品かもしれない。

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レズビアンのファッション・フォトグラファー、オルガ(M・リー)

ワンダを暗闇へと誘うアフメッド

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アフメッドはオルガやキャップと共にワンダを凌辱する

トラウマに苦しむジミーを黒人歌手リタ(B・マクネア)が支える

 舞台はイスタンブールの海辺。一度は音楽を捨てたトランぺッターのジミー(ジェームズ・ダレン)だったが、まるで何かに取りつかれたかのように