Jennifer's Shadow (2004)

 

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(P) Lions Gate Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:スペイン語/地域コード:1/96分/製作:アメリカ・アルゼンチン

映像特典
オリジナル劇場予告編
G・フィリップスとF・ダナウェイの音声解説
監督:パブロ・パレス
   ダニエル・デ・ラ・ヴェガ
製作:P・J・ペティエット
   クロード・ヴィジェリエ
原案:P・J・ペティエット
脚本:パブロ・パレス
   ダニエル・デ・ラ・ヴェガ
撮影:モンティ・ローワン
音楽:ミシャ・リバーマン
出演:ジーナ・フィリップス
   フェイ・ダナウェイ
   ドゥイリオ・マルツィオ
   ニコラス・パウルス
   ヒルダ・ベルナルド

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ブエノスアイレスの閑静な古い豪邸

十数年ぶりに帰って来たジェニファー(G・フィリップス)

姉ジョアンナの葬儀に参列する

 総製作費たったの120ドルという超激安で作られたビデオ作品ながら、ドイツなど一部の国で高く評価されたゾンビ映画“Plaga zombie”(97)とその続編“Plaga zombie : Zona mutante”(01)で知られるアルゼンチンのホラー映画監督パブロ・パレス。その彼が、同じく地元のインディーズ・ホラー出身のダニエル・デ・ラ・ヴェガ監督と共同で、初めて北米マーケット向けに撮った作品が、この“Jennifer's Shadow”である。
 舞台はブエノス・アイレス。双子の姉の訃報を聞いて、祖母メアリー・エレンの家を訪れたアメリカ人女性ジェニファーの体験する悪夢のような出来事を描く。実は、祖母の住む家は死んだ姉のもので、その遺言でジェニファーが相続することとなった。彼女は現金が必要なため、祖母の猛反対を押し切ってこの家を売りに出そうとする。
 ところが、その晩からジェニファーは不思議な悪夢を見るようになった。カラスが彼女の内臓を食うという夢だ。その直後に体調を崩して入院した彼女は、検査で自らの肝臓が半分なくなっていることを知らされる。謎めいた老人ダリオの協力で姉の死因を調べた彼女は、やがて自らの家系に隠された忌まわしい秘密と、祖母メアリー・エレンの恐るべき正体を知ることになる・・・。

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久しぶりに再会した祖母メアリー・エレン(F・ダナウェイ)

姉の残した不気味なカラスの絵を発見する

屋敷の売却を祖母に告げるジェニファー

 全編を通じて厳かなゴシック・ムードで統一された本作。かつて“南米のパリ”と呼ばれたブエノス・アイレスのノスタルジックで壮麗なロケーションの効果もあってか、まるで70年代のイタリアン・ホラーを見ているかのような美しい映像にまず目を奪われる。随所に『サスペリアPART 2』や『サスペリア』を彷彿とさせるようなシーンもあり、パレス監督とデ・ラ・ヴェガ監督がダリオ・アルジェントを相当に意識したであろうことは想像に難くない。
 その一方で、血みどろの残酷シーンやショッキングな恐怖シーンを極力抑え、ミステリアスなムードの中で徐々にヒロインのパラノイアが増殖していくというラヴクラフト的アプローチは、ホラー映画ファンでも好き嫌いの分かれるところかもしれない。それでも、ロケーションやプロダクション・デザインの美しさも含め、スタイリッシュで計算されたカメラワークには見るべきところが多いと言えよう。
 ただ、本作の最大の問題点は脚本だ。思わせぶりなだけのストーリーはかなり退屈。もったいぶるだけもったいぶって、結局は何を描きたいのか皆目見当がつかないまま呆気なく終ってしまう。ムードを重視し過ぎたおかげで、ストーリー・テリングがなおざりになってしまったという印象だ。
 さらに、全く感情移入の出来ないヒロイン像にも問題がある。ジェニファーは誰に対しても横柄で上から目線、それでいて一人では何も出来ずに周囲を振り回し続けるというかなり身勝手な女性だ。誰も私の悩みを分かってくれないという被害者意識ばかりが強く、救いの手を差し伸べようとする人にまで理不尽な怒りをぶつける始末。そんな女性が恐ろしいトラブルに巻き込まれたとしても、全く同情も共感もできないだろう。演じるジーナ・フィリップスの感情表現に乏しい演技にも原因があるのかもしれないが、これほど見る者をイラつかせるヒロインというのもいかがなものかとは思う。
 ひとまず、ビジュアル・イメージやカメラ・ワークは十分に合格点。この手のヨーロピアンなセンスの古典的オカルト・ホラーは近頃珍しいので、その点だけでも大いに評価したいところ。祖母役を演じる大女優フェイ・ダナウェイの、ゴージャスで化け物じみたビッチなオバサマぶりも痛快だ。
 ちなみに、アメリカではホラー映画祭スクリームフェストで上映された後、“Chronicle of the Raven”というタイトルでDVD発売されている。

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警告を発する謎の老人ダリオ(D・マルツィオ)

再び悪夢に悩まされるジェニファー

不安に駆られてダリオの働く墓地を訪れる


 真夜中の大豪邸。一人の女性が暗闇の中を怯えながら逃げようとしている。そんな彼女を見下ろす一匹の黒いカラス。屋根裏部屋のドアが開き、女性は何者かに中へと引きずりこまれる。うろたえる女性。そして、彼女の断末魔の悲鳴が闇に包まれた屋敷の中で響き渡る・・・。
 秋のブエノスアイレス。双子の姉ジョアンナの訃報を知ったアメリカ人女性ジェニファー(ジーナ・フィリップス)は、久しぶりに祖母の住む古い屋敷を訪れる。ここへ来るのは少女時代以来のことだ。威圧的な祖母との折り合いが悪く、両親が亡くなってからはこの家に寄り付くことを避けていた。
 ジョアンナの葬儀が行われる墓地で祖母メアリー・エレン(フェイ・ダナウェイ)と再会したジェニファー。祖母は大仰な仕草で再会を喜んで見せるが、ジェニファーはそのわざとらしい態度に嫌悪感を覚える。さっさとやるべきことを済ませてアメリカへ帰りたい。ジェニファーは屋敷を売りに出すことを祖母に伝える。
 この屋敷は先祖代々受け継がれてきたもので、父親が亡くなってからは姉ジョアンナの所有となっていた。その姉が亡くなった今、ジェニファーが相続することとなったわけだ。このところ人生をやり直したいと考えていた彼女は、屋敷を売った金で新生活をスタートさせるつもりだった。そもそも、この屋敷には良い思い出などない。さっさと売り払ってしまいたかった。祖母と病身の叔母エマ(ヒルダ・ベルナルド)には、手頃なアパートでも買い与えればいいだろう。しかし、当然のことながら祖母メアリー・エレンは猛反対する。
 その晩、ジェニファーは奇妙な夢にうなされた。屋敷の中でカラスに襲われる夢だ。翌日、ダリオ(ドゥイリオ・マルツィオ)という初老の紳士が屋敷を下見に訪れる。だが、彼は屋敷内を一通り見て回ったあと、ここを売り払うべきではないとジェニファーに告げる。しかも、どうやら彼はジェニファーの見た悪夢についても知っているようだ。その言葉によると、彼女の身の安全のためにも、この屋敷に住み続けなくてはいけないのだという。そして、助けが必要であればいつでも自分のところへ来るようにと言い残して去っていった。
 ジェニファーはその晩も悪夢を見た。今度は、ベッドに縛り付けられた上、カラスに内臓を食われるというショッキングなものだった。翌朝、ベッドで気を失った彼女は病院に担ぎ込まれる。検査の結果、彼女の肝臓の半分がなくなっていた。しかも、原因不明の病に侵されている可能性もあるという。付き添った従兄弟ロベルト(ニコラス・パウルス)によると、死んだジョアンナも全く同じ症状に苦しんでいたのだそうだ。
 不安と恐怖で混乱したジェニファーは医師の反対を押し切って退院し、墓地の管理人をしているダリオのもとを訪れる。墓地は“彼ら”の目が行き届かない唯一の場所なのだという。ダリオに助けを求めたジェニファーだったが、魔術だの霊だのという彼の言葉を聞いて呆れ果て、“あなたはただの異常者よ”と捨てゼリフを残してその場を立ち去った。
 そしてその夜、寝たきりだった叔母エマがジェニファーの寝室へやって来る。屋敷をすぐに立ち去るよう警告する叔母は、何かを言いたげな様子だった。しかし、ジェニファーは叔母の言葉に耳を貸すこともなく、屋根裏部屋の扉を見て怯える彼女の様子すら気にとめなかった。その直後、叔母は変死を遂げる。
 叔母の死や祖母の態度に疑問を持ったジェニファーは、何か手がかりになるものはないかと図書室を探る。すると、古い黒魔術の本が出てきた。そこには、彼女の悪夢と良く似た呪いの記述があった。
 翌日ロベルトに本のことを相談したジェニファーは、その帰り道に容態が急変して再び病院に担ぎ込まれる。自分の身に危険が迫っていることを察知した彼女は病院を抜け出し、屋敷の屋根裏部屋へと忍び込んだ。そこには黒魔術の道具がところ狭しと並び、鳥かごの中にはカラスが飼われていた。そこへ、祖母メアリー・エレンが帰ってくる。カラスに話しかける祖母の言葉を聞いたジェニファーは、彼女が自分に呪いをかけているのだと確信した。
 こっそりと屋敷を抜け出したジェニファーは再びダリオのもとを訪れ、改めて彼の助けを求めるのだったが・・・。

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病身の叔母エマ(H・ベルナルド)は何かを言いたげだった

叔母の変死にショックを受けるジェニファー

意を決して屋根裏部屋へと忍び込む

 パブロ・パレスと共に監督・脚本を手掛けたダニエル・デ・ラ・ヴェガは、過去にシチェス国際映画祭の短編映画賞を獲得したこともある人物。これが初の劇場用長編映画で、07年には国際マーケットを視野に入れた全編英語のホラー映画“Death Knows Your Name”を単独で手掛けている。
 原案と製作を手掛けたP・J・ペティエットは、80年代のカルト・ホラー『悪夢の惨劇』(88)の原作者として知られる人物。来年は“Julia X”(10)という作品で監督でデビューを果たす予定らしい。
 撮影監督のモンティ・ローワンは、サム・ライミ監督の『ザ・ギフト』(00)やジェニファー・コネリー主演の『ダーク・ウォーター』(05)で第2班撮影監督を務めていたカメラマン。音楽スコアを手掛けたミシャ・リバーマンは、『デッドウッド』や『コールド・ケース』など主にテレビ・ドラマの音楽エディターを務めている人物だ。

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ジェニファーの行方を捜す祖母メアリー・エレン

祖母はジェニファーに呪いをかけていた・・・!?

ダリオに救いを求めるジェニファーだったが・・・

 ヒロインのジェニファー役を演じているジーナ・フィリップスは、コッポラの製作した都市伝説ホラー『ジーパーズ・クリーパーズ』(01)の主演で知られる女優。また、人気ドラマ『アリーmyラブ』のサンディ役で記憶している海外ドラマ・ファンも少なくないだろう。美人ではあるのだが演技力に乏しく、なおかつスターとしての華に欠けることもあってか、『デスリング』(06)や『シックハウス』(07)など低予算ホラーでの主演が多い。
 一方、それとは正反対にスターとしてのオーラを出しまくりなのが、邪悪な祖母メアリー・エレン役を演じる大女優フェイ・ダナウェイ。晩年のジョーン・クロフォードを彷彿とさせる過剰演技は好き嫌い分かれるかもしれないが、その悪趣味すれすれのゴージャス感は個人的に大満足だ。
 また、ジェニファーにとって唯一の味方となる老人ダリオ役を演じているアルゼンチンの往年の2枚目スター、ドゥイリオ・マルツィオも、いぶし銀の味わいを醸し出して存在感がある。彼のように出てくるだけでドラマを感じさせる老優というのも、近頃ではあまり見かけなくなったと言えよう。

 

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