HOLLYWOOD GODDESSES (1)
ジェーン・マンスフィールド Jane Mansfield

 

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 バスト1メートル以上というホルスタイン級の巨乳。初めっから女優になろうなんて野心はなく、ただ有名になりたい、贅沢な生活をしたい、スターになりたい!というだけで34年の短い人生を駆け抜けたセックス・シンボルだった。本人も自分のセールス・ポイントはおっぱいだけだと十分承知していたのだろう。どこへでも出て行っては巨乳を見せびらかし、2流3流の俳優たちとのスキャンダルで話題を集め、おつむの弱いブロンド美人を演じきった。
 世間での評価も“マリリン・モンローの二番煎じ”。念願かなってハリウッド・スターの座を手にしたが、ものの2〜3年で人気は急落。その後は低予算のB級映画に出たり、イタリアへ行って史劇に出たり、ナイトクラブの過激なステージに立ったり。公然わいせつ罪の現行犯で逮捕されたことすらある。
 また、40部屋もある巨大な自宅豪邸は別名“ピンク・パレス”と呼ばれたように、外観は全てピンクで統一されていた。そればかりか、ピンクの毛皮絨毯にピンクのハート型風呂、庭のプールにはピンクのシャンパンといった具合に、全てがピンク、ピンク、ピンクという悪趣味な成金ぶり。実はIQ163で5ヶ国語を操るという才媛であったらしいが、そのライフスタイルはほとんど冗談みたいなもんだった。
 それでも、20世紀フォックス時代に出演した『女はそれを我慢できない』(56年)と『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』(57年)の2本は、そうした彼女の大衆的でお下品なエロティシズムとフランク・タシュリン監督のポップでライトなコメディ・センスが見事にマッチした佳作だった。『よろめき休暇』(57年)では大スター、ケイリー・グラントと共演。しかも監督は名匠スタンリー・ドーネンという洗練されたコメディだったが、やはり彼女一人が妙に浮いてしまうという結果に。
 なかばハリウッド・グラマーのパロディ程度にしか見なされなかった彼女だが、自動車事故で惨死するという悲劇的な最期によって、いつの間にかハリウッド黄金期の伝説へと生まれ変わっていった。ちょうど“ジェーン・マンスフィールドのそっくりさん大会”に出かける途中だったというのも妙に泣かせる。

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『法に叛く男』より

 1933年4月19日ペンシルヴァニア州の生まれ。本名はヴェラ・ジェーン・パーマーという。父親は有能な弁護士だった。生後まもなくニュージャージー州へ移るが、3歳の時に父親が心臓発作で死去。その後、母親が再婚したことで、6歳の時にテキサス州のダラスに移った。
 17歳の時にポール・マンスフィールドという男性と結婚して出産。育児をしながらテキサス大学及びサザーン・メソジスト大学に学んだ。この頃から数多くの美人コンテストに優勝するようになり、もともと演劇にも興味があったことから、54年に家族を連れてロサンゼルスへと移住。UCLAで学びながら、ワーナー・ブラザーズの映画で端役の仕事を得るようになった。
 エドワード・G・ロビンソン主演のフィルム・ノワール『法に叛く男』(55年)では、出番こそ少ないながらヤクザの愛人役で強い印象を残す。さらに、ブロードウェイに招かれて出演した舞台“Will Success Spoil Rock Hunter?”で評判となり、20世紀フォックスと契約して映画『女はそれを我慢できない』(56年)の主役を獲得した。
 さらに、ブロードウェイで出演した舞台の映画化『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』もヒットし、『よろめき休暇』でケイリー・グラントと共演。『気まぐれバス』(57年)ではゴールデン・グローブ賞の新人賞を受賞した。
 この頃から、パーティやイベントなどでのおっぱいポロリ事件が続発。わざわざ胸がはだけてしまいそうなドレスを着ているわけだから、最初から計算ずくの売名行為であったのだろうが、マスコミや批評家はこぞって彼女を批判した。もちろん、一般大衆は大喜びしたわけなのだが。
 58年にはポール・マンスフィールドと離婚。同年、元ミスター・ユニバースのボディビルダー、ミッキー・ハージテイと再婚した。しかし、59年にフォックスとの契約が切れてしまい、B級映画への出演やナイトクラブでのパフォーマンスで生計を立てるようになる。特にお色気満載のステージ・パフォーマンスは大人気で、当時としてはトップ・クラスのギャラを稼いでいたらしい。
 63年にミッキー・ハージテイと離婚し、その翌年に低予算映画の監督マット・シンバーと結婚。この頃には彼女もすっかりアルコール中毒に陥ってしまい、しかも日常的にシンバーからの暴力を受けていた。そして、離婚訴訟の進行する中で起きた交通事故により、帰らぬ人となってしまったわけだ。
 スターとしては一流でも女優としては二流だったジェーン・マンスフィールド。娘マリスカ・ハージテイはテレビ・ドラマ『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』でエミー賞やゴールデン・グローブ賞などの主演女優賞を総なめにし、その演技力が高く評価されている。父親と母親、どちらの才能を受け継いだのだろうか・・・?

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夫ミッキー・ハージテイと
“Gli Amori di Ercole”より

 

女はそれを我慢できない
The Girls Can't Help It (1956)

日本では1957年劇場公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済(映像特典は予告編のみ)

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(P)2006 20th Century Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/ステレオ・モノラル/音声:英語・スペイン語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/97分/製作:アメリカ

映像特典
NY大学教授による音声解説
J・マンスフィールド ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
監督:フランク・タシュリン
製作:フランク・タシュリン
脚本:フランク・タシュリン
    ハーバート・ベイカー
撮影:レオン・シャムロイ
音楽:ライオネル・ニューマン
出演:トム・イーウェル
    ジェーン・マンスフィールド
    エドモンド・オブライエン
    ヘンリー・ジョーンズ
    バリー・ゴードン
    ジュリー・ロンドン
    レイ・アンソニー
    リトル・リチャード
    ファッツ・ドミノ
    ザ・プラターズ
    アビー・リンカーン
    エディ・コクラン
    エディ・フォンテイン
    ジーン・ヴィンセント

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マフィアのボス(E・オブライエン)に呼び出されたトム(T・イーウェル)

ブロンド美女ジェリー(J・マンスフィールド)

 音楽界の敏腕エージェントがマフィアのボスに頼まれ、ずぶの素人のブロンド美人をたったの6週間でスター歌手へと育てなくてはいけなくなるという音楽コメディ。そのブロンド美人を演じるのがジェーン・マンスフィールドである。
 共演に『七年目の浮気』(55年)のトム・イーウェルを起用していることから想像するに、フォックスは明らかに“第2のマリリン・モンロー”として彼女を売り出そうとしていたのだろう。ジェーン演じるブロンド美人ジェリーのキャラクターから表情、歩き方、仕草に至るまで、まるっきりモンローにソックリなのだ。ただ、ジェーンの方が肉感的というか、セックスの生々しさみたいなものが露骨で、モンローのような浮世離れした雰囲気に欠けている。
 それを意識してなのかどうかは分からないが、フランク・タシュリン監督はカラフルな色彩と賑やかな音楽を全編に散りばめ、前後に主人公たちの舞台挨拶を挿入することにより、作品そのものをポップでキュートなシンデレラ物語のように仕上げている。おかげで、ジェーンの濃厚過ぎるセックス・アピールそのものが、絶妙なユーモアへと昇華されているのだ。
 タシュリンはジェリー・ルイス(&ディーン・マーティン)の『底抜け』シリーズで有名なコメディ監督だが、本作の見事なビジュアル・センスとユーモア感覚は、改めて評価されるべきだろう。50年代のハリウッドを代表するコメディ映画の1本だと思う。

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ジェリーの素顔はとても家庭的な女性だった

ロックン・ロールやダンスも満載

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その脚線美で人々の注目を集めるジェリー

次第に心を通わせていくジェリーとトム

 タレント・エージェントのトム・ミラー(トム・イーウェル)は、マフィアのカジノ王マードック(エドモンド・オブライエン)の豪邸に呼び出され、ジェリー・ジョーダン(ジェーン・マンスフィールド)というブロンド美人を紹介される。ところが、彼女を6週間でスターに仕立て上げろと言われ、トムはすっかり頭を抱えてしまう。
 トムはかつてジュリー・ロンドンを育てた敏腕エージェントで、しかも身持ちが堅いと評判の男だった。そこを見込んでマードックは彼に白羽の矢を立てたわけだが、どこの誰とも知らぬ女性をいきなりスターにするのは至難の技だ。
 せっかちなマードックは、翌朝からジェリーをトムのもとへと送り届けた。どうやらジェリーはとても家庭的な女性で、料理や家事をやらせたら天下一品の腕前だ。彼女自身も、結婚して家庭を築くのが将来の夢だと語る。とはいえ、目下の課題はいかにして彼女を売り込むかということだった。
 そこで、トムは一計を案ずる。セクシーなドレスに身を包んだ彼女を、ショー・ビジネス界の関係者が出入りするナイト・クラブやレストランへ片っ端から連れて行った。そして、とにかく彼女に店内を目立つように歩かせるのだった。案の定、たちまち彼女は人々の注目の的となった。
 やがて、契約の話が幾つも舞い込むようになったジェリーだったが、トムは彼女の歌声を聴いてまたもや頭を抱えた。信じられないくらい下手くそなのである。だが、マードックは諦めなかった。テレビでロックンロールを歌うティーン・アイドルを見たマードックは“これだ!”とひらめいたのだ。
 かくして、一流バンドが演奏するロックン・ロールのリズムに、ジェリーの素っとん狂な声がフューチャーされた“ロック・アラウンド・ザ・ロック・パイル”という曲が出来上がった。トムは半ば強引な手段であちこちのジューク・ボックスにレコードを入れていく。それが功を奏したのか、このヘンテコな曲はたちまち若者の間で大ヒットしてしまった。
 しかし、スターになるよりも家庭に入ることを望むジェリーは全く成功を喜べなかった。また、トム自身もそんな彼女に惹かれていく。やがて、ジェリーが初めて人前で歌うコンサートの日が訪れるのだが・・・。

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実はもの凄い音痴だったジェリー

家庭に入ることを望むジェリーだったが・・・

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リトル・リチャード

ジュリー・ロンドン

 タシュリン監督はもともとアニメーターだったことでも知られるが、本作における原色カラーの使い方や、象徴的な美術セットの使い方、オフビートなコメディ演出などは、まさにカートゥーンの世界そのものと言えるだろう。これをそのままアニメで再現しても十分に通用するはずだ。
 本作はまた、ロックンロール映画の名作としてもよく知られている。当時はエルヴィス・プレスリーの成功によってロックン・ロールが一躍脚光を浴び、ビル・ヘイリーが出演した映画『ロックン・ロール』(56年)も話題となっていた。本作でもリトル・リチャードやファッツ・ドミノ、ジーン・ヴィンセントやエディ・コクランなど、当時全米で注目を集めていたロックン・ロール・スターが大挙出演している。その一方で、ザ・プラターズやジュリー・ロンドン、アビー・リンカーンなどオーソドックスなポップスやジャズのスターも登場し、幅広い層にアピールできるようバランスが整えられている。中でも、ジュリー・ロンドンが名曲“クライ・ミー・ア・リバー”を歌うシーンは、後のミュージック・ビデオを彷彿とさせるような演出が今見ても斬新だ。
 タシュリンと共に脚本を手掛けたハーバート・ベイカーは、『底抜け』シリーズなどでもタシュリンと組んでいる人物。『さまよう青春』(57年)や『闇に響く声』(58年)など初期のプレスリー映画を手掛けた脚本家でもある。
 そして、撮影監督がレオン・シャムロイ。彼は『哀愁の湖』(45年)でアカデミー賞を受賞した名カメラマンで、『慕情』(55年)や『王様と私』(56年)、『南太平洋』(58年)、『クレオパトラ』(63年)など数多くの名作を手掛けた大御所中の大御所。本作におけるカラフルでイマジネーション豊かな映像は彼の功績と言えるだろう。

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ファッツ・ドミノ

ザ・プラターズ

 先述したとおり、ジェリーをスターにするため悪戦苦闘するトムを演じているのは、『七年目の浮気』でモンローと共演したトム・イーウェル。タシュリン監督とは『スカートをはいた中尉さん』(56年)でも組んでいた。憎めないダメ男役を演じて上手い人だったが、ジャック・レモンみたいなカリスマ性やスター性は恵まれず、60年代以降は主にテレビや舞台で活躍した。
 マフィアの親分マードックを演じるのは名優エドモンド・オブライエン。個人的にも大好きな渋い俳優で、特に『都会の牙』(49年)や『ヒッチハイカー』(53年)といったフィルム・ノワールは最高だった。ここでは典型的なマフィア像をカリカチュアライズしたようなコメディ演技を披露し、クライマックスではロックン・ロールのリズムに乗ってオフビートなパフォーマンスまで見せてくれる。

 

 

ロック・ハンターはそれを我慢できるか?
Will Success Spoil Rock Hunter? (1957)

日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2006 20th Century Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/4.0chサラウンド・モノラル/音声:英語・スペイン語/字幕:英語・スペイン語
/地域コード:1/92分/製作:アメリカ

映像特典
評論家による音声解説
ニュース映像
オリジナル劇場予告編
監督:フランク・タシュリン
製作:フランク・タシュリン
原作戯曲:ジョージ・アクセルロッド
脚色:フランク・タシュリン
撮影:ジョセフ・マクドナルド
音楽:シリル・J・モックリッジ
出演:ジェーン・マンスフィールド
    トニー・ランドール
    ベッツィ・ドレイク
    ジョーン・ブロンデル
    ジョン・ウィリアムス
    ヘンリー・ジョーンズ
    リリ・ジェントル
    ミッキー・ハージテイ
    グルーチョ・マルクス

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広告代理店に勤める主人公ロック・ハンター(T・ランドール)

ハリウッドのグラマー女優リタ・マーロウ(J・マンスフィールド)

 これまたフランク・タシュリンのアニメ的なギャグ・センスと映像センスが十二分に活かされた、オフビートで愉快なライト・コメディ。うだつのあがらない広告マンが、ハリウッド女優をテレビCMに起用しようとしたことから巻き起こるドタバタ騒動を描く作品だ。
 まず、冒頭に流れるお馴染みの20世紀フォックスのロゴ・ムービーからして洒落てる。よく見ると、ロゴの脇に主演のトニー・ランドールが映ってて、一人でドラムを叩いたりトランペットを吹いたりしながらファンファーレを演奏しているのだ。
 さらに、オープニングのタイトル・クレジットでは、当時のテレビCMのパロディ映像が次々とバックに流れる。ミルクを入れると元気にポンポンと弾けるシリアル食品、見る見るうちに泡があふれ出す食器用洗剤、人間まで巻き込んでしまう強力な洗濯機などなど。当時のテレビはまだ生放送の時代で、コマーシャルも基本的には生放送だった。そのため、放送中のアクシデントはつきものだったらしいのだが、タシュリン監督はそれを面白おかしくおちょくって見せているのである。
 その他、全編に渡ってタシュリンお得意のカートゥーン風ナンセンス・ギャグのオンパレード。ジェーン・マンスフィールド演じるハリウッド女優自体が、ジェーン・マンスフィールド自身をカリカチュアしたパロディという仕掛けが心憎い。しかも、本作で恋人役を演じたミッキー・ハージテイと実際に私生活でも結婚してしまうのだから大したもんだ(笑)

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ことごとく企画がボツとなってスランプ状態のロック

妹エイプリル(L・ジェントル)にリタの滞在先を聞き出す

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テレビCMの出演なんて全く興味なしのリタ

恋人の気を引くため、リタはある秘策を思いつく

 主人公はニューヨークの大手広告代理店に勤める男性ロック・ハンター(トニー・ランドール)。本人はやる気十分なのだが、出す企画はことごとくボツにされてしまい、今や仕事も首の皮一枚でつながっているような状態。なんとしてでも、今抱えている口紅のテレビCMを成功させなくてはいけなかった。
 ある日テレビのニュースを見ていると、ハリウッドのセクシー女優リタ・マーロウ(ジェーン・マンスフィールド)のニューヨーク来訪を報じていた。よく見ると、群がっている熱狂的ファンの中に妹エイプリル(リリ・ジェントル)の姿が。学校にも行かず何をやってるんだと憤慨したものの、はたと気付いた。リタを口紅のCMに起用すれば大成功間違いなしだ。
 エイプリルからリタの滞在先を聞き出したロックは、早速面会に訪れた。しかし、売れっ子映画スターのリタはテレビCMなんぞに全く興味を示さない。ところが、事態は思わぬ展開を見せる。恋人のターザン役者ボーボー(ミッキー・ハージテイ)の浮気を知ったリタは猛烈に激怒。彼に焼きもちを焼かせるためにある秘策を思いつく。
 リタからCM出演の了解を知らされたロック。しかし、それには条件があった。ボーボーの気を引くため、ロックはリタの恋人のフリをしなくてはならなくなったのである。しかも、そのボーボーがテレビ・レポーターに、リタがロック・ハンターという男と付き合っている、と喋ってしまったものだから大騒動になってしまった。
 自宅にはレポーターやファンが押し寄せ、たちまちロックは有名人となってしまう。天下のセクシー女優を虜にした男性として、彼自身がスターとなってしまったのだ。会社での株も上がり、たちまち出世頭に。その一方で、恋人のジェニー(ベッツィ・ドレイク)は、いくら仕事のためとはいえやり過ぎだと怒り心頭。自分のまいた種とはいえ、ロックはどうしたらよいものかと途方に暮れる。
 さらに、競争に明け暮れる広告ビジネスに嫌気がさした社長(ジョン・ウィリアムス)が引退を宣言。後継者としてロックを指名した。本来は喜ぶべきなのだろうが、静かで落ち着いた生活をしたいという社長の言葉に思わず共感してしまう。
 その一方で、世間のあまりの加熱ぶりからリタとのロマンスも嘘でしたとは言えなくなり、結婚せざるを得ないような状況に追い込まれる。ハリウッド女優を妻に迎える次期社長。はたから見れば誰もがうらやむラッキー・ボーイなわけだが、当の本人は迷っていた。自分が本当に求めているのはジェニーとの平穏な生活ではなかと。果たして彼は成功を取るのか?それとも真実の愛を取るのか?

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ロックはリタの新恋人として話題の的となるのだが・・・

追っかけに取り囲まれてタジタジのロック

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一連の騒動に恋人ジェニー(B・ドレイク)は怒り心頭

社長(J・ウィリアムス)が引退を表明する

 もともと、この作品はジェーン・マンスフィールド自身がブロードウェイで出演した舞台劇。しかし、タシュリン監督はヒロインの役名とタイトルだけを残して、あとは設定からストーリーまでほとんど変えてしまった。なので、ほぼオリジナルの作品だと言って構わないだろう。
 ちなみに、ジェーンの演じた女優リタ・マーロウの名前は、リタ・ヘイワース、マリリン・モンロー(頭文字の)、ジーン・ハーロウを合体させたもの。リタの出演作として『女はそれを我慢できない』や『よろめき休暇』、『気まぐれバス』のタイトルが挙げられているように、彼女はジェーン自身をモデルにしたキャラクターだ。しかも、彼女のパブリック・イメージを最大限にカリカチュアした破天荒なハリウッド・グラマーとして描かれているのがミソ。他にも、当時の20世紀フォックスのヒット作が随所にネタとして散りばめられている。
 また、フォックスお抱えの名美術監督ライル・ホイーラーとリーランド・フラーの手掛けたゴージャスな美術セットや、チャールズ・レ・マイヤーのデザインしたグラマラスなドレスの数々も大きな見どころだ。さらに、テーマ曲をジュリー・ロンドンのダンナとしても有名なボビー・トゥループが手掛けている。

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能天気なリタにさすがのロックも心もとない

ゴージャスな美術セットにも注目

 主人公ロック・ハンターを演じているのはブロードウェイ出身の俳優トニー・ランドール。『恋をしましょう』(60年)ではマリリン・モンローとも共演している。日本ではあまり馴染みのない人だが、アメリカではレコード歌手として、テレビの司会者として、そして舞台のエンターテイナーとして絶大な人気を誇った大スターだった。
 ロックの恋人ジェニー役のベッツィ・ドレイクは当時ケイリー・グラントの奥さんとして有名だった女優。また、リタのマネージャーで元女優というヴァイオレットを演じたのは、30年代のハリウッドを代表するミュージカル女優ジョーン・ブロンデル。ロックの勤める広告代理店の社長を演じたジョン・ウィリアムスはブロードウェイの名脇役だった。
 また、クライマックスにはゲストとしてマルクス兄弟のグルーチョ・マルクスがノー・クレジットで登場。洒落の効いた意外な役柄で出てくるのが楽しい。

 

 

不死身の保安官
The Sheriff of Fractured Jaw (1958)

日本では1963年劇場公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2006 20th Century Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/ステレオ・モノラル/音声:英語・フランス語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/103分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ラオール・ウォルシュ
製作:ダニエル・M・エンジェル
原作:ジェイコブ・ヘイ
脚本:アーサー・デイルス
撮影:オットー・ヘラー
音楽:ロバート・ファーソン
出演:ケネス・モア
    ジェーン・マンスフィールド
    ヘンリー・ハル
    ブルース・キャボット
    ロナルド・スクワイア
    ウィリアム・キャンベル
    シド・ジェームス
    ロバート・モーリー

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甥っ子ジョナサンの放蕩ぶりに呆れる叔父(R・モーリー)

銃砲店の後継者であるジョナサン・ティッブス(K・モア)

 巨匠ラオール・ウォルシュの手掛けた、ナンセンスで愉快な西部劇コメディ。アメリカ西部にやってきた英国紳士がなぜだか保安官になってしまい、鉄火肌の西部女やインディアンたちと協力して無法者集団に立ち向かうという作品だ。
 随所に伝統的な西部劇を皮肉るようなジョークを織り交ぜ、それまでの西部劇ではスポットの当たることの少ない外国人や女性、インディアンたちを大活躍させる。しかも、撮影場所はイギリスとスペインということで、古き良き時代の西部劇に対するアンチテーゼなのかと思いきや、さにあらず。開拓時代のアメリカの野蛮な無法ぶり笑い飛ばしつつ、ちょっと違った角度から西部劇の楽しさを教えてくれる小品佳作だ。

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酒場を経営する鉄火肌の女性ケイト(J・マンスフィールド)

華やかでセクシーなステージ・シーンも見どころ

 イギリスの由緒正しい銃砲店の後継者ジョナサン・ティッブス(ケネス・モア)は、会社のビジネスが行き詰まってしまったことから、自慢のライフル銃をアメリカ西部へ売り込みに行くことを決める。ドンパチが日常茶飯事のアメリカだったら、いくらでも需要があるだろうと見込んだのだ。
 乗っていた駅馬車がインディアンに襲われるも、“卑怯な行為はやめなさい!”と酋長を叱り飛ばして仲直りするティッブス。そんな彼が流れ着いた先は、対立する2つの無法者集団が縄張りを争っている小さな町フランクチャード・ジョーだった。彼はケイト(ジェーン・マンスフィールド)という鉄火肌で美人の女主人が経営する酒場で部屋を借りる。
 町ではすっかり、インディアンを撃退した凄腕ガンマンという噂が立ってしまったティッブス。無法者たちも、その行動に注目していた。その晩、サロンで酒を飲んでいたティッブスの目の前で無法者キーノ(ウィリアム・キャンベル)が撃ち殺される。さっさと死体を片付けて、何事もなかったかのようにドンちゃん騒ぎを続ける人々を見て、曲がったことの嫌いなティッブスは激怒。この町には正義と秩序が必要だと息巻くと、隣にいた町長(ヘンリー・ハル)から保安官に任命される。この町では保安官の寿命があまりにも短いため、誰もなり手がいなかったのだ。
 はじめはティッブスのことを変人扱いしていたケイトも、その向こう見ずで実直な人柄に惹かれるようになる。早速、この町でライフルを売りさばこうと考えたティッブスだったが、彼の取り出した射撃用ライフルを見てケイトは苦笑い。この町では人間を撃つ人はいても、鳥や動物を撃つ人はいないわよ、と。
 それならばと、家畜を飼っている近隣の農家を訪れて売り込みをするティッブスだったが、やはり全く興味を持って貰えなかった。と、その時、表で対立するライバル同士の無法者たちが銃撃戦を始めた。白昼堂々と殺し合いをするなんて、なんて野蛮な連中だと激怒したティッブスは、保安官として彼らの行動を叱り飛ばす。
 片方の若造はわけも分からずティッブスの迫力に圧倒されて逃げていったが、もう一人の無法者ジャック(ブルース・キャボット)は“後悔することになるぞ”と捨て台詞を残して去っていった。とにもかくにも、人々はティッブスを変わり者だけど頼れる保安官として認めるようになっていった。
 その帰り道、ティッブスはインディアンの集団に拉致されてしまう。あわや処刑されるところだったが、そこへ出てきた酋長がティッブスの顔を覚えていた。たちまち彼はインディアンたちと意気投合し、勇敢な白人として酋長と親子の契りまで交わしてしまう。
 インディアンから貰った大量の毛皮を持って意気揚々と町へ帰ったティッブス。ところが、ライフル銃との物々交換で手に入れたことを話すと、市長もケイトも大激怒してしまった。インディアンに武器を与えたりしたら、白人が皆殺しにされてしまうというのだ。
 そこで、対立する無法者たちが町で果し合いをするらしいとの情報が入る。人々はたちまちパニックに。殺し合いなどけしからんと息巻くティッブスは、町の外れに集結しているという無法者たちを懲らしめるため、たった一人で乗り込んでいってしまった。多勢に無勢。ティッブスを見捨てることができないケイトが加勢に加わるが、相手は何十人というならず者ばかりだ。あわや危機一髪と思われたその時、インディアンの酋長が“息子”を救うために大軍勢を引き連れてやって来た・・・!

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町は無法者たちの巣窟だった

町長(H・ハル)から保安官に任命されるティッブス

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ケイトは次第にティッブの人柄に惹かれていく

インディアンの酋長と親子の契りを交わすティッブス

 部外者であるイギリス人の目から見た“アメリカ西部のここがおかしい!”という所を、思い切りカリカチュアしてしまったウェスタン。礼儀と秩序を重んじる英国紳士と、何でもありの野蛮なアメリカ人が生み出すカルチャー・ギャッブの妙というのが愉快だ。世間的にラオール・ウォルシュという人は、どちらかというとタフな“男性映画”を撮る監督という印象が強いが、本当にいろんなタイプの映画をこなす才人であったことを再認識させられた。
 原作はジェイコブ・ヘイの書いた短編小説。当初はクリフトン・ウェッブが1954年に映画化する予定だったが、様々な事情で最終的にウォルシュのもとへ回ってきたのだという。脚本のアーサー・デイルスは『ベン・ケイシー』や『アイ・スパイ』など人気テレビ・ドラマの脚本を書いた人物で、もともと40年代から本名ハワード・ディムスデイル名義で軽喜劇映画を幾つも手がけていたようだ。
 屋内シーンの撮影が主にイギリスで行われたということもあり、現場スタッフの殆んどはイギリス人。撮影監督のオットー・ヘラーは、『血を吸うカメラ』(60年)や『アルフィー』(66年)、『パーマーの危機脱出』(66年)などで知られる名カメラマン。セット・デザインを手掛けたバーナード・ロビンソンは、『フランケンシュタインの逆襲』(57年)以降、ほとんどのハマー・ホラー作品の美術デザインを手掛けた人物である。衣装デザインのジュリー・ハリスは『ダーリング』(65年)でオスカーを受賞した女性で、『007/カジノ・ロワイヤル』(67年)や一連のビートルズ映画など、お洒落で洗練されたコスチュームには定評があった。本作でも、酒場で歌うジェーン・マンスフィールドのカラフルでちょっとフェティッシュな衣装がユニークだ。
 なお、屋外ロケ地に選ばれたのはスペインのアラゴン州。そう、数多くのマカロニ・ウェスタンが撮影された場所として名高い土地だが、本作が正真正銘、最初にかの地で撮影された西部劇であったという。エキストラとして雇ったジプシーや兵士たちが全く言う事を聞かないもんだから、ウォルシュ監督はジェーンのお色気をエサにして現場を指揮したという。なお、無法者の町フランクチャード・ジョーのセットはそのまま残され、後にセルジョ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』(64年)でも使用されている。

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無法者たちに立ち向かうティッブスとケイトだったが・・・

派手なアクション・シーンも満載!

 本作はジェーンにとって唯一の西部劇。鉄火肌で気風のいい西部女という設定はミスキャストと思われるかもしれないが、あの大味なキャラクターには意外とこれがハマっている。ちなみに、酒場のショータイムで聴かせる歌声は、あのコニー・フランシスが吹き替えをしているそうだ。
 主人公ジョナサン・ティッブスを演じるケネス・モアはイギリスを代表する喜劇俳優で、本作が初のハリウッド映画出演。頑固で堅物の英国紳士というステレオタイプを逆手に取り、なんともユーモラスで憎めない演技を見せてくれる。コメディだけでなくシリアスなドラマもいける人で、ヴェネチア国際映画祭男優賞を受賞した『愛情は深い海の如く』(55年)や『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』(58年)、『史上最大の作戦』(62年)など数多くの名作に出演した俳優だった。
 無法者がたむろす町で中立の立場を守っている市長役を演じたヘンリー・ハルは、主にブロードウェイの舞台で鳴らした名優だったが、ヒッチコックの『救命艇』(44年)や『ジェニーの肖像』(48年)といったハリウッド映画でも脇役として活躍した。ウォルシュ監督とは、お互いに無名だったサイレント時代からの友人だったという。
 無法者集団の親分を演じるブルース・キャボットは、あの『キング・コング』(33年)で有名なかつての二枚目スター。ジョン・フォードの『駅馬車』でジョン・ウェインの演じた役は、もともと彼が最初の候補だったという。ウェインとはその後親友となり、『拳銃無宿』(47年)や『ハタリ!』(62年)、『マクリントック』(63年)、『グリーン・ベレー』(68年)など数多くの作品で共演している。
 その他、『死刑囚2455号』(55年)などの低予算映画に主演作のある俳優ウィリアム・キャンベル、イギリスの国民的人気コメディ映画“Carry On”シリーズで有名な喜劇俳優シド・ジェームスなどが登場。また、『アフリカの女王』(51年)や『悪魔をやっつけろ』(53年)、『料理長(シェフ)殿、ご用心』(78年)などで知られるイギリスの名優ロバート・モーリーがティッブスの叔父役で、『佳人レイチェル』(52年)や『春風と百万紙幣』(53年)などの名作で有名なイギリスの名脇役ロナルド・スクワイアがティッブス家の弁護士として、それぞれカメオ出演をしている。

 

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