ハイロ Jairo
〜ブエノスアイレスからパリへ・・・〜
アルゼンチンの誇る国民的シンガー・ソングライター、ハイロ。しかし、彼はキャリアの大半をフランスで過ごしてきた。もちろん、その背景にはアルゼンチンの軍事独裁政権への反発があり、自由を求めてヨーロッパに活動の場を求めたという事情があったわけだが、その一方で彼のロマンティックで叙情的な作品世界はフレンチ・ポップスとの相性が良かった事も事実だろう。彼を最初に評価したのはボリス・ヴィアンであり、シャルル・トレントやジルベール・ベコー、シャルル・アズナヴールといったシャンソン界の大御所たちだった。タンゴの巨人アストル・ピアソラもハイロの音楽性を非常に高く評価し、アルバムでも共演を果たしている。彼の一世一代の名曲とも言うべき傑作“Es la Nostalgia”はヨーロッパ、アルゼンチン、メキシコなど世界各国で歌い継がれ、稀代のロマンチストであるハイロの卓越したメロディ・メーカーぶりを今に伝えている。日本には殆ど紹介されないまま現在に至っているが、是非とも日本の音楽ファンにも聴いて欲しい素晴らしいアーティストだと思う。
本名をマリト・ルーベン・ゴザレスというハイロは、アルゼンチンはクルズ・デ・エイェに生まれる。ブエノス・アイレスに出た彼はロックン・ロール・バンド“ザ・ツイスター・ボーイズ”のメンバーとして活躍し、65年にはマリト・ゴンザレス名義でシングル“Muy
Juvenil”をリリース。しかし、軍事政権下での音楽活動に限界を感じて1970年にスペインへ渡る。コスタ・デル・ソル国際音楽祭で優勝して注目を集め、71年にはアルバム“Emociones”でデビューを飾る。1976年に発表したアルバム“Jairo
canta a
Borges”がフランスで評判となり、翌年にはパリに招待されてオランピア劇場で単独コンサートを行った。そのままパリに活動の拠点を移したハイロは、同年のアルバム“Liberte”で名曲“Es
la
Nostalgia”を発表。ヨーロッパのみならず南米でも大ヒットを記録し、トップ・スターの地位を確立した。
1983年にアルゼンチンが軍政から民政へと移管されると、85年にアルバム“Jairo”レコーディングのために久々に祖国の土を踏んだハイロ。その後も政情が安定しないことからパリに戻ったものの、1994年には正式にアルゼンチンに帰国している。その後もコンスタントにアルバムをリリースしており、2004年にもアルバム“Ferroviario”を発表している。昨年は久々にコンサート・ツアーも行っており、今年は3年ぶりのニューアルバムのリリースも控えているという。
ミニ・ドキュメンタリー ココ で見れます(フランス時代の珍しい映像とヒット曲が満載!)
珍しいフランスのTVライブ ココ で見れます(ミレイユ・マチューやクロード・フランソワと一緒にディスコを歌ってます)
オフィシャル・ホームページは ココ です(ディスコグラフィーの中から、一部アルバムが試聴可能です)
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Liberte (1977) |
Canciones para mirar (1979) |
Vivre Libre (1980) |
Morir Enamorado (1981) |
(P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) |
1,Liberte (Libertad) 2,Es la Nostalgia 3,Que no hace falta 4,La Clara fuente (A la claire fontaine) 5,Digamos que soy 6,Mon amour aux quatre saisons 7,La desatada 8,El nino, la magia y yo 9,Te miro pasar temprano 10,De tanto andar canciones 11,En este dia impar pude saber 12,Al buen dios bonus 13,Dis moi (Digamos que soy) 14,L'engant et la magie (El nino la magia y yo) produced by Renaldo Cerri |
1,La familia polillal 2,La hormiga titina 3,Cancion para banar la luna 4,Cancion del jardinero 5,Cancion de los estornudos 6,Chacarera de los gatos 7,Cancion para vestirse 8,La vaca estudiosa 9,Manuelita la tortuga 10,La mona jacinta 11,El reino del reves 12,Milonga del hornero bonus 13,Manuelita la torture (Manuelita la tortuga) 14,La chanson du jardinier (Cancion del jardinero) 15,La lune japonaise (Cancion para banar la luna) produced by Renaldo Cerri |
1,Vivre libre 2,C7est ca la chance 3,Ou vont mourir les bateaux 4,Le combat 5,L'encre rouge 6,Tes mots caressent ma vie 7,Les jardins du ciel 8,Ne me parles plus d'elle 9,Elle m'avait dit 10,Elle a dans ses yeux 11,Petit soldat 12,Si tu la vois 13,Les demons les anges produced by Renaldo Cerri |
1,Morir Enamorado 2,Yo te invito bailarina 3,Me basta con saber 4,Siempre vos y solo vos 5,Estaba escrito en tu mano 6,Nos veran llegar 7,Yo se que llegara ese dia 8,Con este amor tan nuevo 9,Maria de Monserrat 10,Hay una nina en el alba 11,Sera que estoy llorando 12,Hoy dejo la ciudad produced by Renaldo Cerri |
ハイロが初めてパリでレコーディングしたアルバムがこれです。アズナヴールやベコー、ブレルを思わせるメロディアスで叙情的な美しい作品に仕上がっています。やはり一番の聴きものは、泣く子も黙る名曲#2でしょう。このエレガンス、このノスタルジー、これを傑作と呼ばずして何と呼ぼう!その他、それはそれは美しくもセンチメンタルな楽曲が目白押し。オススメです。 | こちらは、アルゼンチンの国民的な女流童謡作家マリア・エレナ・ワルシュの作品を集めたトリビュート・アルバム。ほのぼのとした愛らしい中にも、どこかもの悲しさの漂う素敵な作品です。子供向けの童謡集と侮ってはいけません。祖国アルゼンチンに対するハイロの想いがたっぷりと詰まった1枚と言えるでしょう。個人的には哀愁感溢れるメロディが印象的な#9がオススメ。 | 初めて全編フランス語でレコーディングされたアルバムです。しかも、全13曲中9曲が他人の作品。全体的に爽やかなフレンチ・ポップ色が強く感じるのは、そのせいなのかもしれないですね。なので、ちょっと物足りなさを感じてしまうのは否めません。そうした中で、いかにも彼らしいセンチメンタリズムとエレガンスを堪能できるバラードの名曲#6は特筆もの。シビれます。 |
胸キュンものの哀愁バラード#1で幕を開ける素晴らしいアルバム。これぞハイロ!といった感じの珠玉のメロディが満載です。中でも注目したいのは#10と#11。あのアストル・ピアソラが作曲とアレンジを担当しています。爽やかでほんのりメロウなポップ・ナンバー#2や痛々しいくらいに切なく哀しいバラード#4など、本当に素晴らしい楽曲ばかり。オススメです。 |
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Es La Nostalgia (1982) |
Sinfonia (1983) |
Amor De Cada Dia (1984) |
Jairo (1985) |
(P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) |
1,Vaya con dios 2,Mon amie mon amour 3,Un monde heureux 4,Noche sin final 5,Es la nostalgia (nueva version) 6,Ni toi ni moi 7,Siempre me gano tu amor 8,Frensi 9,Tres palabras 10,Pequena flor 11,El dia que me quieras 12,J'ai mal d'aimer 13,Le train du dud 14,Mulher rendeira produced by Renaldo Cerri |
1,Sinfonia 2,Io ti sfido 3,Amica, amante mia 4,Maria Soledad 5,Stava Scritto 6,Tam Tam 7,Vita senza vita 8,Piu forte di me 9,Viva il sole 10,Love Me Again 11,Facile 12,Sogno 13,Neve produced by Renaldo Cerri & Italo Greco |
1,Ay Amor de cada dia 2,Como perfume de Jazmin 3,El canto que canto 4,Volveras 5,Soledad 6,Amor de sol y luna 7,Amigos 8,Para contar contigo 9,O el o yo 10,Quien, digo quien bonus 11,Hijo del mundo (Le pays tango) 12,Amour bonjour (Amor buen dia) 13,A maree basse (Amor de sol y luna) 14,Je veux etre heureux tout de suite produced by Juan Carlos Calderon |
1,Me muero si tu no estas 2,Te declaro mi amor 3,El mercader 4,Quien es ella 5,Si te vas 6,Tengo celos 7,Soy el hombre 8,Si vuelves sera cansancio 9,Vuelvo atras 10,Ella viene del mar produced by Alfredo Demenech |
自身の代表作#5のニュー・バージョン以外は、全て他人の楽曲のカバーで構成されたアルバム。とはいえ、きちんと彼ならではのカラーで統一されていて、安心して聴ける作品に仕上がっています。ただ、アレンジをし直した名曲#5は、ちょっとゴージャスにバージョン・アップし過ぎてしまった感じ。なんかブロードウェイのミュージカル・ナンバーみたいになっちゃってます。 | ハイロにとって初のイタリア語アルバム。パリとローマでレコーディングされています。オリジナル作品の他、カンツォーネ歌手トト・クトゥーニョのカバー#1なんかにも挑戦してますね。ビックリしたのは、バーブラ・ストレイサンドの「ウーマン・イン・ラブ」をカバーした#8。男性がこの曲をカバーしているのは珍しいですね。全体的にイタリア市場へのサービス企画といった印象です。 | スペインのヒット・メーカー、フアン・カルロス・カルデロンがプロデュースを手掛けたアルバム。全10曲中4曲をカルデロンが作曲しています。全体的に80年代のスパニッシュ・ポップスらしいAOR的な雰囲気の濃厚な作品で、初期からのハイロ・ファンにとっては賛否両論といったところかもしれませんね。個人的には可もなく不可もなく。あまり印象に残らないアルバムです。 | ハイロにとっては15年ぶりに祖国アルゼンチンでレコーディングした作品。一部をカリフォルニアで製作しています。自分の名前を冠したシンプルなタイトルからも、意気込みみたいなものを感じます。前作からのAOR的路線を踏襲しつつも、原点に立ち返った美しいメロディのノスタルジックな作品が多く、とても充実した内容に仕上がってます。 |
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La Trace Des Mes Pas (1986) |
Flechas De Neon (1991) |
Estampitas (1997) |
Balacera (1999) |
(P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)2006 Elefant/DBN (Argentine) | (P)1997 TST/DBN (Argentine) | (P)1999 TST/DBN (Argentine) |
1,La trace des mes pas 2,Ou que l'amour s'en aille 3,Petite fille en limousine 4,Elle aime 5,Je t'abandonne tout 6,La dame de mon enfance 7,Gotango 8,Sans elle 9,La licorne 10,Requiem 11,Il y avait de l'eau de l'air 12,Le voyage a l'envers 13,Peripherie produced by Jacqueline Levasseur |
1,Perro viejo 2,Los adioses 3,Un tipo como yo 4,Tiempos 5,La vereda del amor 6,Flechas de neon 7,Dejame entrar a tu corazon 8,Niegate 9,Cancion robada 10,Navidad Negra 11,Cancion de los aerolitos bonus 12,Comme sur un dessin inacheve 13,Sans me blesser la tete produced by Jacqueline Levasseur |
1,Prologo 2,Credo 3,Los peregrinos 4,Solo le pido a dios 5,Ave Maria (Gounod) 6,La saeta 7,Milagro en el bas union 8,Maria y las aves 9,La priere (en frances) 10,Aleluya numero 1 11,Vidala del nombrador 12,Por millones de ninos 13,Ave Maria (Schubert) 14,Epilogo bonus 15,La plegaria produced by Yaco Gonzalez |
1,La balacera 2,La balada del Corto Maltese 3,Maranello 4,Podria bailar toda la noche contigo 5,Mirame a mi 6,Te estoy olvidando 7,Hoy es sabado a la noche 8,Yegua de carrera 9,La carcel de la pena 10,Senorita Josefina 11,Cuartero corasson 12,Contame alguna mentira produced by Yaco Gonzalez |
再びパリに戻ってレコーディングされたアルバムで、プレンチ・ポップスの名匠ベルナール・エスタルディがアレンジとエンジニアを手掛けています。殆どが他人の作品で、中には大御所ディディエ・バルベリヴィエンの名前も。いかにも80年代のフレンチ・ポップスらしい内容で、地味ながら良質なアルバムに仕上がってると思います。 |
これがハイロにとって最後のパリ・レコーディング作品になります。再びベルナール・エスタルディがアレンジを手掛け、叙情的でロマンティックなポップ・ナンバーを聴かせてくれます。シンセ・サウンドを大胆に取り入れて新しい試みをしつつも、彼らしい世界を表現しているのが印象的ですね。ヨーロッパ時代の最後を飾るに相応しい1枚です。 | ハイロならではの宗教観をタンゴやクンビア、フォルクローレで表現したユニークな作品。ピアソラからシューベルト、ホアン・マヌエル・セラトまで、様々な作曲家の作品を取り上げています。ジャケットのイメージからはほど遠い内容の作品ですが、かなり野心的で骨のあるアルバムに仕上がっていると思います。 | ボレロやフォルクローレをベースにした、とても牧歌的で落ち着いた雰囲気のアルバム。かつての耽美的とも言えるくらいのセンチメンタリズムはすっかり影を潜め、優しさと大らかさに満ちた力強い作品に仕上がっています。アーティストとしての円熟味を増すに従って、民族的なルーツに回帰しているという印象ですね。 |
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Ferroviario (2004) |
24 Canciones de Oro | |
(P)2004 TST/DBN (Argentine) | (P)2002 TST/DBN (Argentine) | |
1,Elle Ferroviario 2,Triestezas de Amador 3,Soldados de plomo 4,Desaparecidios 5,El Fugitivo 6,Mujeres 7,Espartaco el Gladiador 8,El angel de la cancha 9,Maldita sea 10,Los hermanod Estampida 11,La reina Cobra 12,Guevarita 13,Pulsera de oro macizo 14,Madre Zoraida bonus track 15,El ferroviario (Cuerda y voz) produced by Yaco Gonzalez |
1,Por si tu quieres saber 2,Tu alma golondrina 3,El valle y el volcan 4,Amigos mios, me enamore 5,Es la nostalgia 6,Liberte 7,Nos veran llegar 8,Antiguo dueno de las flechas (Indio Toba) 9,Me basta con saber 10,Milonga del trovador 11,Moirir enamorado 12,Ave Maria |
1,Les jardins du ciel/Nuestro amor
sera un himno 2,Venceremos 3,Duerme negrito 4,Revolver 5,Caballo loco 6,Milagro en el Bar Union 7,La saeta 8,Soy libre 9,La balancera 10,Rutina modelo 11,Me gusta llorar 12,Volver a vivir |
まるで昔のフランス映画のワン・シーンを思わせるようにドラマチックで美しいバラード#1が強烈に印象に残る、エレガントで叙情的な作品。これが今のところ最新作に当たります。随所にサルサやタンゴ、ジャズの要素を散りばめ、それはそれはスタイリッシュで美しいアルバムに仕上がっています。全く衰えを感じさせないハイロの繊細な歌声も素敵です。 |
初心者の入門編としてオススメなのが、この2枚組のベスト盤。主だったヒット曲は収録されています。ただ、比率的にアルゼンチンに帰国した1994年以降からの選曲が多くなってしまっているのが残念かもしれません。それでも、ハイロを語るには欠かせない名曲#5はしっかりと77年のオリジナル・バージョンで収録されてします。 | ディスク2には、このベスト盤でしか聴くことの出来ない作品が3曲収録されています。まず、#10と#11はこのベスト盤のために書かれた新曲。さらに、#12はアルゼンチン帰国直後に発表された作品ですが、このベスト盤のために再録されています。これがまた、とても繊細で美しい作品に仕上がっているんですよね〜。ファン必聴です。 |