イタリア産犯罪バイオレンス映画傑作選
PART 3

 

ザ・シシリアン/復讐の挽歌
I padroni della citta' (1976)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済
※イタリア盤DVDは日本盤と別仕様

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(P) Raro Video (Italy)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イタリアPAL盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/ステレオ/音声:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:ALL/92分/製作:イタリア・西ドイツ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
監督バイオグラフィー
監督:フェルナンド・ディ・レオ
製作:アルマンド・ノヴェッリ
脚本:フェルナンド・ディ・レオ
    ピーター・ベルリング
撮影:エンリコ・メンツェール
音楽:ルイス・エンリケ・バカロフ
出演:ジャック・パランス
    アル・クライヴァー
    ハリー・バエル
    ヴィットリオ・カプリオーリ
    エドマンド・パードム
    ジゼラ・ハーン
    エンゾ・プルクラーノ
    ロベルト・レアーレ

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目の前で父親を射殺された少年は・・・

マフィアの取立て屋として働くチンピラ、トニー(H・バエル)

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親玉マンザーリの逆鱗に触れてしまったリック(A・クライヴァー)

トニーはリックを自宅で介抱する

 幼い頃に父親を殺された若者とお気楽なチンピラのコンビが、暗黒街のボスから大金をせしめるため組織と壮絶な戦いを繰り広げる。2004年のヴェネチア国際映画祭にて行われた、タランティーノ選定によるイタリア産B級映画回顧展でも上映された作品だ。
 監督はタランティーノが熱愛するイタリアン・バイオレンスの巨匠フェルナンド・ディ・レオ。マカロニ・ウェスタンの脚本家から映画監督へと転身し、『スローター・ホテル』(71年)や『ミラノカリブロ9』(72年)、『皆殺しハンター』(72年)などの名作を世に送り出した人物だ。本作は彼のフィルモグラフィーの中でも決してベストな作品とは言えないものの、テンポの良いストーリー展開とダイナミックな演出は最後まで飽きさせない。
 特に、クライマックスにおける広大な工場跡を舞台にした銃撃戦の巧みな演出とド迫力のカーチェイス・シーンは必見だ。また、ディ・レオ監督の作品としては珍しくコミカルな描写が多く、ライトで軽妙洒脱なバイオレンス・アクションに仕上がっているのも好感が持てる。
 一方、ストーリー的に中途半端で意外性に乏しいという印象は否めず、簡単に先が読めてしまうというのは惜しい。また、悪役であるジャック・パランスの存在が強烈過ぎてしまい、主人公の2人が地味に見えてしまうのも残念だった。ただ、コミック・リリーフとして登場する名優ヴィットリオ・カプリオーリの絶妙な演技とユニークなキャラクターが非常に面白く、彼の存在に救われている場面もかなり多い。少なくとも、イタリア産娯楽映画全盛期の魅力を十二分に伝えてくれる作品ではある。

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トニーとリックはコンビを組んで詐欺を計画

トニーのボスであるチェリコ(E・パードム)

 2人の犯罪者が隠れ家に戻ってくる。そのうちの一人マンザーリ(ジャック・パランス)は、邪魔な相棒をその場で射殺。一部始終を見ていた相棒の幼い息子は、拳銃でマンザーリを撃とうとする。しかし、弾丸が切れており、その場で殴り倒されてしまった。
 それから15年後。マフィアのボス、チェリコ(エドマンド・パードム)の下で借金の取り立てを担当しているトニー(ハリー・バエル)は、うだつの上がらない生活に嫌気が差していた。いつか大儲けして豪勢な生活をと夢見てはいるものの、所詮はしがないチンピラでしかない。美人のクラブ歌手クララ(ジゼラ・ハーン)にも軽くあしらわれる始末だ。
 ある日、チェリコの経営する違法カジノにリック(アル・クライヴァー)という若者がやって来た。カード賭博で大金を巻き上げられるリック。それを詐欺だと直感した彼は、自分のボスを連れてカジノへ戻って来る。賭博詐欺のトリックを見抜いたボスが圧勝し、リックの損失分を回収して行く。その一部始終を見ていたトニーは、
マフィアの元幹部だった中年ギャンブラー、ナポリ(ヴィットリオ・カプリオーリ)から、そのボスの正体が街を牛耳る大物マフィア、マンザーリだとを知る。
 一方、組織の金でギャンブルをしたことから、リックはマンザーリの怒りを買ってしまった。半殺しの目に遭って気を失ったリックを、トニーは自宅に連れ帰って介抱する。回復して動けるようになったリックに、トニーが提案をする。憎きマンザーリから大金をせしめようじゃないかと。
 売れない役者をクララに紹介してもらったトニーは、税務署の職員と偽ってマンザーリの事務所に押しかけた。組織の違法書類を見られては困ると考えたマンザーリは、彼らに多額の現金を賄賂として手渡す。こうして、まんまとマンザーリを騙してみせたトニーとリック。
 しかし、すぐに詐欺はばれてしまった。マンザーリの部下たちはトニーとリックが主犯だと突き止め、2人の行方を追う。そのためマンザーリとチェリコの組織が激しく対立する。やがて詐欺に加担した役者がステージ上で殺害され、トニーのボスであるチェリコまでが暗殺されてしまった。ナポリもマンザーリ一味に捕まって殺されそうになったが、間一髪のところをトニーとリックに救われる。
 こうなったら反撃するしか生き残る手立てはないと考えたトニーたちは、郊外にある工場跡の廃墟にマンザーリ一味をおびき寄せる。実はリックにとって、マンザーリとこの場所で対峙するということは重要な意味を持っていた。かくして、3人はマンザーリ一味を相手に壮絶な戦いを繰り広げることとなる。

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暗黒街を牛耳る大物マフィア、マンザーリ(J・パランス)

マンザーリとチェリコの組織対立も激化していく

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トニーの計画に一役買うクラブ歌手クララ(G・ハーン)

70年代の若者にとって乱交パーティは定番(?)

 ジャック・パランス扮するマンザーリの詰めの甘さが終始気になるところではあるが、そんなことイチイチ気にしていたらイタリアのB級映画なんて見てられんだろう(笑)脚本に参加しているピーター・ベルリングはドイツ出身の脚本家兼プロデューサー。俳優としても数多くの映画に出演しており、特に『アギーレ/神々の怒り』(72年)や『マリア・ブラウンの結婚』(79年)などファスビンダー作品の常連俳優として知られている。
 撮影を担当したエンリコ・メンツェールは、ジャンニ・ディ・ヴェナンツォの弟子として戦後イタリアを代表する数多くの名作に携わってきたカメラマン。撮影監督としては『イタリア式愛のテクニック』(66年)や『わたしは目撃者』(71年)、『悪魔が最後にやって来る』(78年)などの娯楽映画を主に手掛けている。
 また、製作は“I ragazzi del massacro”(69年)以降ほとんどのディ・レオ作品を手掛けたプロデューサー、アルマンド・ノヴェッリが担当。編集のアメデオ・ジョミーニや美術監督のフランチェスコ・クッピーニなど、スタッフの多くが常連組で占められている。
 そして、ジャジーでクールな音楽スコアを担当したのは、『イル・ポスティーノ』(94年)でオスカーを受賞した巨匠ルイス・エンリケ・バカロフ。

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リックやトニーと親しいギャンブラー、ナポリ(V・カプリオーリ)も危機一髪

マンザ−リ一味との全面戦争に乗り出すトニーたち

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軽いノリで追っ手をかわしていくトニー

ついにマンザーリと一対一で向き合うリック

 キャスト・クレジット上では大物ジャック・パランスが主演ということにはなっているものの、実質的にはリック役のアル・クライヴァーとトニー役のハリー・バエルが主演。アル・クライヴァーは本名をピエル・ルイジ・コンティというイタリア人で、70年代に一世を風靡したセクシー女優アニー・ベルの旦那としても有名。ルチオ・フルチやブルーノ・マッテイなどの作品にも脇役として数多く出演している。
 一方のハリー・バエルはドイツの出身で、ハリー・バールという芸名でも知られる。巨匠ファスビンダーのお気に入り俳優であり、初期の作品ほとんど全てに出演していた。ハンス=ユルゲン・ジーバーベルク監督の名作『ルトヴィッヒ2世のためのレクイエム』(72年)では主人公ルトヴィッヒ2世役を演じている。
 彼らを助太刀する愛すべき中年ギャンブラー、ナポリを演じているのは、『地下鉄のザジ』(60年)や『おかしなおかしな大冒険』(73年)などフランス映画でも活躍した名コメディアン、ヴィットリオ・カプリオーリ。
 その他、マカロニ・ウェスタンにも何本か出演していたドイツ女優ジゼラ・ハーンがクラブ歌手クララ役で、60年代のスペクタクル史劇に数多く主演したハリウッド出身の名優エドマンド・パードムがトニーのボス、チェリコ役で顔を出している。

 

Ricco (1973)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 Dark Sky Films (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:英語/地域コード:1/94分/製作:イタリア・スペイン

映像特典
クリストファー・ミッチャム インタビュー
スチル・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
監督:トゥリオ・デミケッリ
製作:ホセ・G・マエッソ
脚本:マリオ・ディ・ナルド
    ホセ・G・マエッソ
    サンチャゴ・モンカーダ
撮影:フランシスコ・フライレ
音楽:ナンド・デ・ルーカ
出演;クリストファー・ミッチャム
    バーバラ・ブーシェ
    アーサー・ケネディ
    マリーサ・ロンゴ
    エドゥアルド・ファヤルド
    マヌエル・ザルゾ
    ホセ・マリア・カファレル
    パオラ・セナトーレ

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出所して故郷に戻った若者リコ(C ・ミッチャム)

母親はリコに父親の復讐を誓わせようとするが・・・

 マフィアに父親を殺され、恋人までをも奪われた若者の復讐を描いた犯罪バイオレンス。ストーリー自体はいたって平凡かつ単純だが、この作品で最も注目すべきは超過激でショッキングなスプラッター描写の数々。実際、当時アメリカでは“Cauldron of Death”というタイトルのホラー映画として公開されているほどだ。
 銃弾が顔に当たって顔面が崩壊するなんてのは朝飯前。なんと言っても強烈だったのは、マフィアによるペニスの切除シーンだ。裏切り者を裸にひん剥いて、そのペニスをナイフで切り取ってしまうのだが、これが本物にしか見えないくらいリアルで凄まじい。DVDを静止画モードにしてよ〜く見ると、ゴムのような柔らかい素材で出来たニセモノだと分かるのだが、まだビデオすらない時代に映画館でこれを見た人は恐らく度肝を抜かれたに違いない。切り口からドロっとした血液が溢れ出るというのも妙にリアル。極めつけに、そのペニスを本人の口に突っ込んでしまうのだから恐れ入る。これに比べたら、『ホステル2』の股間ちょん切りシーンなんかまだ可愛いもんだろう。
 さらに、このマフィアどもは殺した人間を大きな釜に入った薬品で溶かし、そこから石鹸を作って商売している。“俺は石鹸が嫌いだ”というのはマフィアのボスのセリフだが、そりゃ気持ち悪くて使えんだろう(笑)半分溶けちゃった人間の顔が釜の中で浮かび上がるシーンなんか、思わず吐き気をもよおしてしまいそうなくらいにリアル。製作年代を考えればなおさらだが、当時ホラー映画扱いされてしまったのも思わず納得してしまうような過激さである。
 一方、肝心のエロの方も過剰サービスと言っていいくらいに盛り沢山。とにかく、女優たちが意味もなく脱ぐ・脱ぐ・脱ぐ(笑)!チンピラの注意をそらすために、バーバラ・ブーシェが道のど真ん中でストリップを繰り広げるシーンなんて、素晴らしいくらいのバカバカしさだ。
 ただ、本作最大の弱点は主演のクリストファー・ミッチャム。言わずと知れたハリウッドのスーパースター、ロバート・ミッチャムの息子なわけだが、あまりにも感情表現が乏しすぎる。終始無表情の眠たそうなポーカー・フェイスで、主人公の無念や怒りが全く伝わってこないのだ。そのおかげで、どうも見ていてストーリーの中に入って行くことが出来ない。
 映画作品としては平均点ギリギリといったところ。ひとまず、強烈過ぎるバイオレンス描写の数々と、美しい女優たちによる山盛りのエロスを心行くまで楽しみたい。

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恋人ローサ(M・ロンゴ)はドン・ヴィート(A・ケネディ)の愛人に

リコは女詐欺師シーラ(B・ブーシェ)と知り合う

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シーラは亡き父の部下の姪っ子だった

ローサと再会を果たしたリコだったが・・・

 2年間の刑期を終えた若者リコ(クリストファー・ミッチャム)が戻ってきた。妹コンチェッタ(パオラ・セナトーレ)とその夫(ルイジ・アントニオ・ゲッラ)、そして年老いた母親(リタ・フランケッティ)は喜んで彼を迎える。だが、マフィアのボスだった父(ルイス・インドゥーニ)は、既にこの世にはいなかった。父は何者かによって殺害されたのだ。
 その後釜に座った男ドン・ヴィート(アーサー・ケネディ)こそが父の仇であり、リコをはめた張本人であると母親は語った。復讐を果たすのが男としての義務だと、息子に拳銃を手渡す母親。しかし、生前の父親とは不仲だったリコは、あまり乗り気になれなかった。
 恋人ローサ(マリサ・ロンゴ)の消息を求めて街へ出かけたリコは、女詐欺師のシーラ(バーバラ・ブーシェ)と知り合う。彼女のほうから、紙幣を両替して欲しいと近づいてきたのだ。快く応じたリコだったが、他の通行人にも同じように両替を頼んでいる彼女を見て、紙幣が偽札であることに気付く。
 こっそりと彼女のあとをついて行くと、そこは亡き父の忠実な部下だった偽札職人の家。シーラは彼の姪だったのである。リコはローサがドン・ヴィートの愛人にさせられてしまっていることを2人から聞かされた。多くの無実の人々が、ドン・ヴィートによって葬り去られたという。リコの心に初めて怒りの炎が燃え上がる。
 シーラの手助けで出入り業者のトラックへ紛れ込んだリコは、まんまとドン・ヴィートの屋敷に潜入し、ローサとの再会を果たした。しかし、ボディーガードに勘付かれてしまい、リコは再び戻ることを約束して屋敷を後にする。
 まず、リコはドン・ヴィートの集金車を襲う計画を立てた。集金を終えたチンピラたちが車で夜道を走っていると、突然道のど真ん中に現れる美女シーラ。彼女のストリップ・ショーにチンピラたちが目を奪われている隙を見計らって、リコは彼らを次々と川へ投げ落とした。そして、2人は現金を奪って夜の闇へと消える。怒り心頭のドン・ヴィートは、チンピラたちを薬品の中に投げ込み、石鹸の材料にしてしまう。
 さらに、リコはドン・ヴィートの幹部シラノ(エドゥアルド・ファヤルド)と密会する。彼は亡き父の親友だった。2人はドン・ヴィートがマルシリエーズ(ホセ・マリア・カファレル)というマフィアから買い取った密輸ダイヤモンドを奪う計画を立てる。仲介役のシラノがドン・ヴィートから預かった現金をリコが偽札とすり替え、ダイヤモンドも現金も両方頂いてしまおうというわけだ。しかし、マルシリエーズが偽札に気付いてドン・ヴィートに通報。リコを裏切ろうとしたシラノは射殺され、リコの素性もバレてしまう。
 その頃、ローサはボディガードのトニー(マヌエル・ザルゾ)を味方に付けようと誘惑。だが、彼とベッドを共にしているところをドン・ヴィートに見つかってしまった。トニーはペニスを切断された上に薬品の釜へ投げ込まれ、ローサもリンチされた挙句に殺される。
 さらに、リコの母親や妹夫婦までもがドン・ヴィートの手下によって蜂の巣にされる。妹は妊娠中だった。遂に堪忍袋の緒が切れたリコは、一人でドン・ヴィートのもとへと殴り込みをかけるのだった・・・。

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ドン・ヴィートは街の裏社会を牛耳っていた

シーラの悩殺ストリップでドン・ヴィートの金を奪う

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父の親友だったシラノ(E・ファヤルド)と組むことになるリコ

ローサはボディガードのトニー(M・ザルゾ)を味方にしようとする

 監督のトゥリオ・デミケーリは60年代からマカロニ・ウェスタンや冒険アクションなどを数多く手掛けた職人監督。ジュリアーノ・ジェンマ主演の『くたばれカポネ』(73年)や『縄張(シマ)はもらった!』(74年)など軽妙なアクション・コメディを得意とする人だったが、本作は彼のフィルモグラフィーの中でも異色中の異色作と見ていいだろう。恥も外聞もない露骨なエログロ描写は痛快そのもの。ストーリー展開も非常にテンポが良く、バイオレンス・シーンのリアリズムも徹底している。
 脚本に参加したマリオ・ディ・ナルドは、マリオ・バーヴァ監督のサスペンス『ファイブ・バンボーレ』(70年)からマウロ・ボロニーニの名作『愛すれど哀しく』(71年)まで幅広いジャンルを手掛けた脚本家。ホセ・G・マエッソはスペインの出身で、『続・荒野の用心棒』(66年)や『黄金の棺』(66年)、『ガンクレイジー』(66年)など数多くのマカロニ・ウェスタンを手掛けた脚本家だ。サンチャゴ・モンカーダもスペインの脚本家で、『真夜中の恐怖』(73年)や『悪霊伝説』(86年)などホラー映画を手掛けることが多い。
 その他、撮影のフランシスコ・フライレや編集のアンヘル・セラーノなど、スペイン出身のスタッフが数多く参加している。

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ローサとの関係がばれたトニーは石鹸の材料に

リコの母親と妹夫婦がドン・ヴィートの手下によって殺される

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堪忍袋の緒が切れたリコは復讐を誓う

DVDの特典映像でインタビューに応えるクリストファー・ミッチャム

 主人公リコ役のクリストファー・ミッチャムは、上でも述べたようにハリウッドの大御所ロバート・ミッチャムを父に持つ御曹司スター。当初は親の七光りでハワード・ホークスの『リオ・ロボ』(70年)やアンドリュー・V・マクラグレンの『チザム』(70年)などに起用されたが尻つぼみで、オリヴィア・ハッセイ主演の『サマータイム・キラー』(73年)に出演するためスペインへと渡った。ちょうど同時期に撮影されたのが、この作品だったというわけだ。
 女詐欺師シーラ役のバーバラ・ブーシェも、ハリウッドからヨーロッパへ渡った女優。ただ、彼女の場合はもともとドイツの出身で、終戦直後の貧困から逃れるためにアメリカへ渡ったという経緯があった。当時はイタリア産の娯楽映画に数多く出演し、中でもジャッロや犯罪サスペンスには欠かせないスターだった。そのずば抜けた美貌はハリウッド時代から評判が高く、現在も熱狂的なファンが多い。『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02年)の端役で久々にハリウッド復帰したのは嬉しかった。
 さらに、リコの恋人ローサ役を演じているのは、70年代に数多くのソフト・ポルノやホラー映画に出演したセクシー女優マリサ・ロンゴ。特にアマゾネス物や女囚物でお馴染みだろう。どうしてもC級クラス以下の作品が多いため、あまり触れられる機会のない人だが、一部では熱狂的なファンもいるカルト女優である。ちなみに、メリッサ・ラングやメリッサ・ロングという変名を使うことも多い。
 また、リコの妹コンチェッタ役で顔を出しているパオラ・セナトーレにも注目しておきたい。彼女も70年代から80年代にかけて、数多くのソフト・ポルノやホラー映画に出演した女優で、一時期イタリアではかなり人気の高いトップ・スターだった。当時はまだデビューして間もない頃。その後はいかにもといった感じの巨乳エロ女優となってしまうが、この頃はまだほっそりとして初々しかった。
 その他、イタリア産犯罪映画には欠かせないハリウッド俳優アーサー・ケネディがドン・ヴィート役を、マカロニ・ウェスタンやホラー映画で有名なスペインの名脇役エドゥアルド・ファヤルドがシラノ役を、そして同じくマカロニ・ウェスタンで活躍したスペインの2枚目俳優マヌエル・ザルゾが哀れなトニー役を演じている。

 

ダーティ・チェイサー/凶悪犯死の大逃走500キロ
Squadra volante (1974)

日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 No Shame Films (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:1/95分/製作:イタリア

映像特典
ステルヴィオ・マッシ監督インタビュー
トーマス・ミリアン インタビュー
S・マッシ監督によるイントロダクション
オリジナル劇場予告編
ポスター&スチル・ギャラリー
S・マッシ監督ギャラリー
監督:ステルヴィオ・マッシ
脚本:フランコ・バルベーリ
    アドリアーノ・ボルツォーニ
    ステルヴィオ・マッシ
    ダルダノ・サケッティ
撮影:セルジョ・ルビーニ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:トーマス・ミリアン
    ガストーネ・モスキン
    ステファニア・カッシーニ
    マリオ・カルテヌート
    イラリア・ゲリーニ
    ジュゼッペ・カステラーノ
特別出演:レイモンド・ラヴロック

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妻殺しの犯人を捜すインターポール捜査官ラヴェッリ(T・ミリアン)

白昼堂々と行われた現金輸送車の強盗事件

 イタリアン・アクションの名匠ステルヴィオ・マッシ監督が初めて手掛けた犯罪バイオレンス映画。通りがかりの銀行強盗に妻を殺された警官の壮絶な復讐劇を描く作品だ。プロットそのものは定番中の定番。マカロニ・ウェスタンの時代から幾度となく使われてきた典型的なリベンジ・ドラマと言える。
 ただ、悪役を含めて人間味溢れる登場人物たちのキャラクター、派手さはないものの説得力のあるストーリーなど、同時代の犯罪アクションとは一線を画するリアリズムは評価に値するだろう。イタリア映画お得意の荒唐無稽な展開が一切ないのである。
 中でも、トーマス・ミリアン扮する主人公ラヴェッリの寡黙な一匹狼ぶりはすこぶるカッコ良さ。パワフルでエキセントリックなキャラクターでお馴染みのミリアンが、いつもとは完全に真逆の渋い警察官を見事に演じている。また、イタリア映画ファンにはお馴染みの名優ガストーネ・モスキンの演じる悪役マルセイエーズも面白い。殺されたメンバーの母親に分け前を届けたり、ちょっとオツムの弱い愛人に振りまわされたりと、妙に人間臭くて憎めない悪党なのだ。
 もちろん、アクション映画としての見せ場もきっちりと押さえている。中でも、荒涼とした冬の片田舎で展開するカー・チェイス・シーンの空撮ショットは見事で、古い町並みの景色を生かしたダイナミックで美しい映像はまるでフレンチ・ノワールを見ているかのよう。リアルなスタント・シーンも迫力満点だ。
 血みどろのバイオレンス・シーンを期待すると肩透かしを食らうかもしれないが、じっくりと練られたストーリーやセリフの妙で見せる良質な作品。繰り返しの鑑賞にも堪えうる佳作だと思う。

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強盗事件の首謀者マルセイエーズ(G・モスキン)

犯人グループはアパートの一室に身を隠していた

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ミラノ警察はラヴェッリの捜査関与に懸念を示す

事件に使われた撮影機材はポルノ会社から盗まれたものだった

 舞台は真冬のミラノ。現金輸送車が白昼堂々と強盗一味に襲われる事件が起きた。犯人グループが映画の撮影クルーを装って襲撃したため、通行人はてっきり映画の撮影が行われているものと思って誰も通報しなかったのだ。
 事件現場に駆けつけたラヴァーニ刑事(マリオ・カルテヌート)とカロ警視(アントニオ・ラ・ライナ)は、現場検証の様子を見守る一人の男に気付いた。彼の名はラヴェッリ(トーマス・ミリアン)。もともとミラノ警察の刑事だったが、妻が強盗事件の流れ弾に当たって殺されたことから退職し、現在はインターポールの捜査官を務めている。そして、妻を死に至らしめた犯人を執念深く追っているのだ。
 鑑識の結果、今回の事件に使われた機関銃の弾丸が、かつての強盗事件のものと同一であることが判明。復讐に燃えるラヴェッリは静かに行動を起こす。だが、警察は事件捜査に私情を持ち込む彼の存在を疎ましく感じていた。また、義理の妹フェーデ(イラリア・ゲリーニ)も、いつまでも事件のことを忘れることができないラヴェッリのことを心配する。
 だが、かつてラヴェッリの相棒だったラヴァーニ刑事が捜査に手を貸すようになる。犯人グループの使った撮影カメラが、怪しげなポルノ映画会社から盗まれたものだと判明。そこから、ベルロッティ(グイド・レオンティーニ)という男の存在が浮上する。ベルロッティの仲間レオナルディ(ニノ・デルーコ)はラヴェッリとも昔馴染みのコソ泥だった。レオナルディをマークしたラヴェッリとラヴァーニ刑事は、マルセイエーズ(ガストーネ・モスキン)という犯罪者の存在を知る。
 一方、マルセイエーズの一味は愛人マルタ(ステファニア・カッシーニ)のアパートに身を隠していた。しかし、血気盛んな若者リーノ(レイモンド・ラヴロック)が仲間と対立。喧嘩で足を踏み外したリーノは、頭を強打して死んでしまった。マルセイエーズは仕方なく、ミラノを脱出することにした。
 現金を持ったマルタが一足先に街を出て、仲間たちと合流することになった。牧師に変装したマルセイエーズたちは、後から車に乗って移動。途中でリーノの母親に彼の分け前を届けた一行は、なんとか検問をくぐり抜けることに成功した。しかし、途中で立ち寄ったサービス・ステーションで変装がばれてしまい、慌てたメンバーが拳銃を発砲。駆けつけたパトカーとのカー・チェイスが展開する。
 事件の一報を受けたラヴェッリはヘリに乗って現場へ急行。しかし、あともう一歩というところでマルセイエーズたちを取り逃がしてしまった。なんとか逃走に成功した犯人たちは郊外の一軒家に押し入り、そこに住む一家を人質にしてほとぼりが冷めるのを待つことにする。しかし、配達に訪れた郵便局員が異変に気付いてしまった。さらに、マルセイエーズがマルタと2人だけで高飛びするつもりであることが仲間にバレてしまい・・・。

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義理の妹フェーデ(I・ゲリーニ)がラヴェッリを心配する

血気盛んな若者リーノ(R・ラヴロック)がトラブルを起こす

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ラヴァーニ刑事(M・カロテヌート)はかつてラヴェッリの相棒だった

マルセイエーズの愛人マルタ(S・カッシーニ)が最初に高飛びする

 原案と脚本を手掛けたのは、イタリア産娯楽映画の名脚本家ダルダノ・サケッティ。一般的にはホラー映画の脚本で知られるサケッティだが、アクション映画でも数多くの優れた作品を残している。その他、マリオ・バーヴァの『血みどろの入江』(71年)にも参加していたフランコ・バルベーリ、マカロニ・ウェスタンで活躍したアドリアーノ・ボルツォーニ、そしてステルヴィオ・マッシ監督自身が脚本に参加している。
 撮影を担当したセルジョ・ルビーニは、ステルヴィオ・マッシのカメラマン時代からの弟子で、当時撮影監督に昇進したばかりだった。主にアクション映画やホラー映画のカメラマンとして知られている。ちなみに、有名な俳優兼映画監督のセルジョ・ルビーニとは同姓同名の別人。
 また、セルジョ・レオーネの『ウエスタン』(68年)や『世にも怪奇な物語』(68年)、『悪魔の墓場』(74年)などで有名なカルロ・レヴァが美術デザインを、『サンタ・サングレ聖なる血』(89年)や『シチリアの娼婦たち』(94年)、『肉屋』(98年)などのマウロ・ボナンニが編集を担当している。
 さらに、イタリア映画音楽界きってのメロディ・メーカー、ステルヴィオ・チプリアーニがスコアを担当。ファンキーでグルーヴィーなサウンドを存分に聴かせてくれる。

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牧師に変装して逃亡を企てるマルセイエーズ一味だったが・・・

サービス・ステーションで変装がバレてしまう

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パトカーの追跡に応戦するマルセイエーズたち

ラヴェッリはマルセイエーズ一味を追い詰めようとするが・・・

 今回トーマス・ミリアン扮するラヴェッリの敵役マルセイエーズを演じているのは、『黄金の7人』シリーズでもお馴染みの名優ガストーネ・モスキン。これまでに2度のシルバー・リボン助演男優賞に輝き、コメディからシリアスまで何でもこなせるバイプレイヤー。『ゴッドファーザーPART 2』(74年)のドン・ファヌッチ役でも有名だ。ゴリラみたいな愛嬌のある顔は、一度見たら決して忘れられないだろう。
 そのマルセイエーズの愛人マルタ役を演じているステファニア・カッシーニは、『サスペリア』(77年)で主人公のルーム・メイト、サラ役を演じたことで有名な女優。アメリカ留学時代にアンディ・ウォーホルと親しかったらしく、『処女の生血』(74年)や『アンディ・ウォーホルのBAD』(77年)にも出ていた。まるで中世の絵画から抜け出てきたような雰囲気の浮世離れした女優さん。本作でも頭が悪くてハリウッド女優気取りの美女マルタ役を嬉々として演じていて上手い。
 その他、ルイジ・コメンチーニの“Lo scopone scientifico”(72年)でシルバー・リボン助演男優賞を受賞した名喜劇俳優マリオ・カロテヌート、ディーノ・リージ監督の『殿方ごろし』(55年)の町長役で知られるアントニオ・ラ・ライナなどが出演。また、トーマス・ミリアンの親友レイモンド・ラヴロックが、不運な最期を遂げる若者リーノ役でゲスト出演している。

 

Il conte e chiuso (1976)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 No Shame Films (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤2枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:1/95分/製作:イタリア

映像特典
リュク・メレンダ インタビュー
ポスター&スチル・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
特典CD(イタリアン・アクション音楽集)
監督:ステルヴィオ・マッシ
製作:ガブリエル・クリサンティ
原案:フランコ・モゲリーニ
脚本:ピエロ・レニョーリ
撮影:フランコ・デッリ・コッリ
音楽:ルイス・エンリケ・バカロフ
出演:カルロス・モンソン
    リュク・メレンダ
    ジャンピエロ・アルベルティーニ
    マリアンジェラ・ジョルダーノ
    マリオ・ブレーガ
    レオノラ・ファーニ
    ジャンニ・デイ
    スサーナ・ジメネス
    ルイサ・マネーリ

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流れ者の若者マルコ(C ・モンソン)

盲目の少女ニナ(L・ファニ)に救われたマルコ

 『ダーティ・チェイサー/凶悪犯死の大逃走500キロ』を経て、『刑事マルク』シリーズや『フェラーリの鷹』(76年)で大ヒットを飛ばしたステルヴィオ・マッシ監督が放つ現代版『荒野の用心棒』。かつて最愛の母と妹を殺された風来坊の若者が、用心棒となって街を牛耳る2大ファミリーを争わせる。この年、マッシ監督が手掛けた作品は3本。その最後を飾ったのが本作だった。
 主人公を演じるのは当時世界的に有名だったアルゼンチン出身のボクシング元ミドル級世界チャンピオン、カルロス・モンソン。恐らく、彼のネーム・バリューと話題性に当て込んだ企画だったのだろう。ストーリーはダシール・ハメットの小説『血の収穫』や、それを最初に映画化した黒澤明の『用心棒』よりも、セルジョ・レオーネの『荒野の用心棒』に近い。というよりも、かなり酷似している。ファミリーのボスに囲われている母娘を主人公が助けるエピソードなんかそのまんま。ゆえに、かなり短期間で即興的に作られた映画だったのではないかと思うのだ。
 というわけで、ストーリーそのものはかなり安直。しかし、その背景に当時のイタリア社会が抱える格差問題や労働差別などを巧みに織り込んだピエロ・レニョーリの脚本は必ずしも悪くはない。ストーリーのテンポを崩してしまうようなエピソードを極力排除し、余計なロマンスやラブ・シーンなども一切ないというのは好感が持てる。マッシ監督の演出も全く無駄がない。どちらかというと脆弱な脚本をスピード感とダイナミズムで勢いよく見せていく。
 もちろん、カルロス・モンソンお得意のフィスト・ファイトも盛りだくさん。カー・アクションや銃撃戦なんかよりも、ここはやはりフィスト・ファイトを目玉にしなけりゃウソだろう。なんたって、102戦89勝という圧倒的な強さを誇った大物ボクサーなのだから。これだけでも、アクション映画ファンなら大満足。ステルヴィオ・マッシの職人技とカルロス・モンソンの肉体技で見せる一本だ。

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サピエンザ(G・アルベルティーニ)は街を出て行くよう勧める

マンゼッティ・ファミリーのボス、リコ(L・メレンダ)

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マルコはリコのボディガードとして雇われる

邪魔な判事を暗殺するマンゼッティ・ファミリー

 イタリア北部のとある大都市に、一人の若者が流れ着いた。彼の名はマルコ(カルロス・モンソン)。外人部隊の一員として世界各地の戦場を渡り歩いた彼は、職を求めてこの街へとやって来たのだ。
 マンゼッティ兄弟の経営する工場を通りかかった彼は、不当解雇に抗議する労働組合の面々とボディーガードたちの争いを目撃する。工場側が労働者たちを力で追い払おうとする様子を、マルコは黙って見ているわけにはいかなかった。たちまち十数人の屈強なボディーガードたちを一人でなぎ倒してしまうマルコ。だが、立ち去ろうとした彼にマンゼッティ兄弟のひ弱な末っ子ベニー(ジャンニ・デイ)が石を投げつけ、後頭部を強打したマルコは気を失う。
 ゴミ捨て場に放置されたマルコは、ニナ(レオノラ・ファニ)という盲目の少女に救われた。ニナは父親代わりの男サピエンザ(ジャンピエロ・アルベルティーニ)と一緒に古いトレーラーハウスで暮らしていた。貧富の差が激しいこの街では、労働者は不当に虐げられた生活を送っている。マンゼッティ・ファミリーとベルモンド・ファミリーが2大勢力として街を牛耳り、その富を搾取しているのだ。サピエンザはすぐに街を去るようマルコに忠告する。
 マンゼッティ兄弟の長男でボスのリコ(リュク・メレンダ)は、マルコの腕っぷしを買ってボディーガードとして雇うことにした。リコはファミリーの麻薬密売ルートを暴こうとする判事を白昼堂々と路上で暗殺。マルコはマンゼッティ・ファミリーの正体を目の当たりにする。
 再びトレーラーハウスを訪れたマルコは、サピエンザにベルモント・ファミリーのドン、ボボ(マリオ・ブレーガ)の居所を訊ねる。その上で、彼はスピエンザに大金を預けた。亡くなった母と妹の墓を建てるための資金だという。サピエンザはマルコが何か大それたことを計画しているのではないかと心配する。
 ベルモンド・ファミリーの経営するナイトクラブでボボと面会したマルコは、リコが判事暗殺の濡れ衣をベルモント・ファミリーに着せようとしていることを告げる。2大ファミリーの同盟を持ちかけたリコは、その隙に判事暗殺に使用された車をベルモント一味のガレージに忍び込ませ、警察に通報しようというのだ。
 半信半疑のボボだったが、敷地内に侵入したマンゼッティの部下たちを発見。銃撃戦の末、マンゼッティ兄弟の次男アレックス(クラウディオ・ズケット)を捕らえた。アレックスは無事に引き渡されたが、リコの策略は失敗に終わる。
 リコの屋敷にはリサ(ルイサ・マネーリ)という少女と美しい母親(マリアンジェラ・ジョルダーノ)が囚われていた。2人はリコの慰みものにされていたのだ。マルコは2人の姿に亡き母と妹を重ねあわせる。そう、マルコの母と妹はリコに陵辱された挙句、無残にも殺されてしまったのだ。彼は母娘に金を渡し、こっそりと屋敷から逃がしてやる。
 母娘がいなくなったことに気付いたリコは、部下に命じてマルコを半殺しの目に遭わせた。サピエンザの助太刀で逃げ出すことに成功したマルコ。だが、その行方を捜すマゼッティ一味の魔の手はサピエンザたちにも及び、あろうことかニナが寄ってたかってレイプされてしまう。いよいよ怒りが頂点に達したマルコは、マゼッティ・ファミリーを一網打尽にすべく立ち上がる。
 一方、リコは目障りになったベルモント一味の一掃に乗り出す。判事暗殺の秘密を知られたからには生かしておけない。ボボの愛人マリステッラ(スサーナ・ジメネス)を含む、ベルモント・ファミリー全員が無残にも殺された。だが、工場に戻ったリコやアレックスたちは、ベニーをはじめとする部下が何者かによって皆殺しにされているのを発見する。マルコの仕業だとすぐに勘付くリコ。かくして、マルコ対マンゼッティ・ファミリーによる最終決戦の火蓋が切って落とされた・・・。

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敵対するベルモンド・ファミリーのドン、ボボ(M・ブレーガ)

2大ファミリーの同盟が発表されるのだったが・・・

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リコに無理やり囲われている女性(M・ジョルダーノ)

その娘リサ(L・マネーリ)にも性的虐待を加えるリコ

 原案はフランコ・モヘリーニとなっているが、この人物に関しては詳細が不明。他にクレジットされている作品もないようなので、もしかしたらピエロ・レニョーリの変名なのかもしれない。脚本を手掛けたレニョーリはホラー映画『グラマーと吸血鬼』(63年)の監督として有名な人物で、マカロニ・ウェスタンやアクション映画の脚本家としても活躍した人物。悪名高い『ゾンビ3』(79年)や『ナイトメア・シティ』(80年)の脚本家として記憶しているコアなマニアも多いだろう。
 撮影監督のフランコ・デッリ・コッリはイタリアを代表する撮影監督トニーノ・デッリ・コッリの実弟で、カメラ・オペレーターとしてヴィスコンティやパゾリーニの作品に関わってきた人物。撮影監督としても、『地球最後の男』(64年)や『情無用のジャンゴ』(66年)などの優れたB級娯楽映画を数多く手掛けている。
 そして、音楽を担当したのは巨匠ルイス・エンリケ・バカロフ。主演のカルロス・モンソンと同じアルゼンチンの出身だけに、今回は母国の民族音楽をふんだんに盛り込んだ牧歌的でセンチメンタルなスコアを聴かせてくれる。

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マンゼッティ一味から壮絶なリンチを受けるマルコ

サピエンザの助けでマルコは脱出に成功する

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ニナがマンゼッティ一味によって集団レイプされる

マルコの怒りは頂点に達する

 既に述べたように、主演のカルロス・モンソンは当時世界的に有名なミドル級ボクサーだった。世界チャンピオンとして14回の防衛戦に勝ち残り、無敵のヒーローとしてその名を轟かせた人物。しかし、そのライフスタイルには問題も多く、様々なスキャンダルにまみれた挙句、元恋人の殺害容疑で有罪に。53歳で仮出所中に起こした交通事故により死去した。当時は俳優への転身をはかり、母国でも何本か映画に出演していたようだ。しかし、スキャンダル続きで俳優業にも身が入らず。本作を見る限りでは演技もなかなか堂に入っているし、スターに必要なカリスマ性も併せ持っているだけに、俳優として長続きできなかったのは残念だ。
 対するマフィアのドン、リコを演じるリュク・メレンダは、イタリア産アクション映画ファンにはお馴染みの2枚目スター。以前にも紹介しているので、詳しい説明は必要ないだろう。ここでは珍しく残忍で冷徹な悪役を演じており、これがまたよくハマっている。ダンディな高級スーツに身を包み、まるで狩りを楽しむかのように敵を銃殺していく彼の不敵な微笑みはクールでサディスティック。ちなみに、上記のアメリカ盤DVDでは、現在の彼がフランスで経営しているアンティーク・ショップが紹介されており、自ら日本や中国の骨董品について熱弁をふるっている。どうやら、日本へも頻繁に買い付けで足を運んでいるようだ。
 さらに、対立するマフィアのドン、ボボ・ベルモンド役には『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(66年)や『ミスター・ノボディ』(73年)などのマカロニ・ウェスタンで知られる毛むくじゃら俳優マリオ・ブレーガ、マルコに力を貸す中年男サピエンザ役には『黄金の7人』シリーズでお馴染みの名優ジャンピエロ・アルベルティーニ、マンゼッティ兄弟のひ弱な末っ子ベニー役にはカルト・ホラー“Patrick vive ancora”(80年)にも主演していた歌手兼俳優のジャンニ・デイ、次男アレックス役にはスタントマン出身の2枚目俳優クラウディオ・ズケットが扮している。
 一方、女優陣ではリコに囲われている中年女性役に、60年代にスペクタクル史劇のお姫様女優として活躍したマリアンジェラ・ジョルダーノ。『ゾンビ3』で息子に乳房を食いちぎられる女性を演じていた人だ。そして、その娘リサを演じているルイサ・マネーリは、『MrレディMrマダム』(78年)で主人公の息子と結婚するブルジョワ娘アンドレア役を演じた女優。盲目の少女ニナ役には、増村保造監督の『エデンの園』(80年)でヒロイン役を演じたレオノラ・ファニが扮している。
 そして、ボボ・ベルモンドの愛人であるストリッパー、マリステッラ役を演じているスサーナ・ジメネスは、アルゼンチンの有名な女性エンターテイナー。実は彼女、当時のカルロス・モンソンの恋人で、後に彼が結婚してからも愛人関係を続けていたことで知られる。もともと60年代からイタリア映画への出演経験があったので、恐らく彼女が橋渡し的な役割を担ったのかもしれない。

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DVDの特典映像で自ら経営する骨董品店を紹介するL・メレンダ

 

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