イタリア産犯罪バイオレンス映画傑作選
PART 2

 

 

Milano Rovente (1973)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Dagored Films (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:イタリア語/字幕
:英語/地域コード:ALL/101分/製作:イタリア

映像特典
なし
監督:ウンベルト・レンツィ
製作:ジュゼッペ・トルトレッラ
脚本:ウンベルト・レンツィ
    フランコ・エンナ
撮影:ランベルト・カイミ
音楽:カルロ・ルスティケッリ
出演:アントニオ・サバト
    フィリップ・ルロワ
    マリーザ・メル
    アントニオ・カサグランデ
    カルラ・ロマネッリ
    タント・チマローサ
    アレッサンドロ・スペルリ
    フランコ・ファンタジア

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ミラノで野菜の卸売業を営むトト(A・サバト)

フレンチ・マフィアのボス、ル・キャピタン(P・ルロワ)

 ウンベルト・レンツィの手掛けた犯罪バイオレンス映画第1作目が、この“Milano Rovente”だ。ミラノを根城にする売春組織のボスが、縄張りを荒らそうとするフレンチ・マフィアと壮絶なギャング戦争を繰り広げるという作品。ド派手な銃撃戦や血みどろのリンチ・シーンなどが盛りだくさんの映画だが、中でも特に目を引くのは女性に対する激しい暴力シーンの数々。
 主人公が売春組織の元締めということもあって、出てくる女性の大半が売春婦。フレンチ・マフィアどもが嫌がらせ・報復として、彼女たちを拉致するわ、レイプするわ、リンチするわの大盤振る舞いを繰り広げる。だいたい主人公自身が女を商品としか見てないフシもあって、全編これ女性蔑視のオンパレードみたいな内容だ。
 それ以外にも差別発言としか思えないようなセリフも数多く、倫理的には問題ありまくりの1本。もちろん、製作サイドには女性を意図的に貶めるようなつもりは毛頭なかったはずだ。当時の日本映画界でも、今なら不適切と判断されるようなセリフや表現はまかり通っていた。あくまでも、そういうことに目くじらを立てる人が少ない時代だったのである。
 それに、この手の映画を好んで見るのはほとんどが男性。実際、製作サイドだって男性客しか想定してなかったに違いない。だから何をやっても構わないというわけではないが、単純に血沸き肉躍るセックスとバイオレンスを楽しめばそれでいい、というだけのこと。そうしたある種の野蛮な悪趣味さというのも、イタリア産バイオレンス映画の醍醐味なのだから。

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裏で売春組織を牛耳っているトト

麻薬が原因で死んでしまった売春婦

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女性に対する過激な暴力シーンが満載

警察のコンタルディ警部(F・ファンタジア)に直訴するトトだったが・・・

 主人公はシチリア出身の男トト・カンジェーミ(アントニオ・サバト)。彼はミラノで野菜の卸売業を営んでいる実業家だが、それはあくまでも表の顔。その実態は、路上で客引きをしている売春婦たちの元締めだ。明るくてチャーミング、社交的でカリスマ性のある彼は、部下からも売春婦たちからも絶大な信頼を得ている。
 そんな彼にも心配の種があった。ドラッグの蔓延である。近頃ではドラッグが原因で命を落としてしまう売春婦も少なくない。なるべくなら警察との軋轢は起こしたくない彼にとって、組織がドラッグ・ビジネスと関わることは避けなくてはならなかった。
 そんなある日、トトの自宅をル・キャピタン(フィリップ・ルロワ)と呼ばれるフレンチ・マフィアのボスが訪れた。ミラノへの進出を目論んでいる彼は、トトにある種の業務提携を持ちかける。それは、トト配下の売春婦たちを使ってドラッグの密売をするというものだった。当然のことながら、トトはル・キャピタンの申し出を断った。
 もちろん、それで相手がすごすごと引き下がるとは思えない。そこで、トトは先手を打ってフレンチ・マフィアの麻薬密売ルートを探った。自分のところの売春婦が強引に加担させられようとしている現場を目撃した彼は、ことの次第を警察のコンタルディ警部(フランコ・ファンタジア)に訴える。ところが、その直後に警察は売春婦たちの一斉摘発を行った。
 さらに、仕事中の売春婦たちが次々と暴漢に襲われるという事件が多発。売春婦たちはレイプされ、リンチされ、売上金を奪われていった。その上、トト自身も自宅前で暴漢に襲われてしまう。恋人ジャスミン(マリーザ・メル)が警察に通報したことから命拾いをしたが、フレンチ・マフィアたちがトトの組織を徹底的に破壊しようとしていることは間違いなかった。
 内部の情報が逐一漏れていることに気付いたトトは、裏切り者がいるに違いないと睨む。案の定、彼の右腕の一人ニーノ(タント・チマローサ)がフレンチ・マフィアと通じていた。幹部が揃って賑やかに晩餐会を楽しんでいる中、トトはニーノの処刑を命じる。
 そして、彼が最も信頼する幹部リーノ(アントニオ・カサグランデ)の助言で、アメリカから逃亡してきているマフィアのドン、ビリー・バローネ(アレッサンドロ・スペルリ)に協力を仰ぐことにした。武力抗争に慣れているバローネは、戦いの術を熟知しているのだ。こうして、トトはフレンチ・マフィアとの全面戦争に突入する・・・。

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ミラノの路上に溢れかえる売春婦たち

ル・キャピタンはミラノへの進出を目論んでいた

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トトの恋人ジャスミン(M・メル)

売春婦たちが次々と暴漢に襲われる

 情け容赦ないバイオレンスのつるべ打ちが実に痛快。だが一方で、傑作『ミラノ殺人捜査網』(73年)に比べて短絡的というか、いまひとつ焦点の定まらない印象を受ける作品でもある。その原因は、主人公トトのキャラクター設定にあるかもしれない。
 『ミラノ殺人捜査網』の主人公ジュリオ・サッキは同情の余地もない悪人で、それゆえにイタリア社会の暗部を象徴するカリスマ的存在となり得た。ところが、本作のトト・カンジェーミにはそのカリスマ性が決定的に欠落している。社会との共存を望み、麻薬を憎む常識人的な面を持ちながら、その一方で女を平気でモノ扱いしたり、賑やかに食事を楽しみながら部下を殺害できる冷血漢。存在自体がグレーというよりも中途半端で曖昧なため、どうも感情移入することが難しいのだ。いや、感情移入してもいいのかどうか迷ってしまう、と言ったほうが正しいかもしれない。
 恐らくレンツィはネオレアリスモ的な犯罪映画を狙ったのだろう。確かに、現実社会の人間というのは善悪でなかなか割り切れるものではない。グレー・ゾーンがあって当たり前だ。リアリズムを追求するのであれば、両方の面を兼ね備えた複雑な人間性を描かなくてはウソになる。全編に渡ってミラノの路上でロケを敢行し、ドキュメンタリー映画のような演出を徹底していることからも、本作におけるレンツィのリアリズム志向は十分に窺い知ることが出来るだろう。
 しかし、それにしてはストーリーそのものがリアリズムとはかけ離れすぎていた。主人公トトの人間描写にしても表面的。その心の暗部にまで踏み込んではいない。娯楽映画にリアリズムを持ち込むこと自体は全く間違っていないし、戦後イタリア映画復興を支えた重要な要素だと思うのだが、本作はそのリアリズムを濫用し過ぎてしまっているのではないだろうか。ただ、その反省のもとに『ミラノ殺人捜査網』という傑作が生まれたのだ考えるならば、いろいろと違った見方も出来るのだろうとは思う。
 レンツィと共に脚本を手掛けたのはフランコ・エンナ。マウリツィオ・ルチディ監督の『最後の大犯罪』(73年)にも参加していたが、人物の詳細については定かでない。一方、撮影監督のランベルト・カイミは、巨匠エルマンノ・オルミの初期作品を手掛けていたカメラマン。また、編集のヨランダ・ベンヴェヌーティは、『ストロンボリ/神の土地』(50年)や『イタリア旅行』(54年)など、ネオレアリスモの巨匠ロベルト・ロッセリーニ作品で知られる人物だ。
 そして、本作で注目しておきたいのは、カルロ・ルスティケッリによるジャジーでファンキーな音楽スコア。日本では『ブーべの恋人』(63年)や『鉄道員』(56年)、『刑事』(59年)など戦後のイタリア映画音楽を代表する名作で知られる巨匠だが、アクション映画やホラー映画、西部劇などのジャンル系映画でも数多くの名スコアを残している。

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暴行を受けた売春婦たちの見るも無残な姿

トト自身も自宅前でフレンチ・マフィアに襲われる

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処刑される裏切り者ニーノ(T・チマローサ)

アメリカのマフィア、バローネ(A・スペルリ)がトトに力を貸す

 主人公トトを演じているのはアントニオ・サバト。ハリウッド映画『グラン・プリ』(66年)でゴールデン・グローブ賞にノミネートされて一躍注目を集めたイタリア俳優だ。しかし、どうも垢抜けない安手のフランコ・ネロというイメージが強く、母国に戻ってからはB級路線まっしぐら。息子のアントニオ・サバト・ジュニアはカルバン・クライン・ジーンズの広告で有名になり、モデルからハリウッド・スターへ転身している。とはいえ、こちらも最近ではもっぱらB級映画ばっかりなのだが・・・。
 対するフレンチ・マフィアのボスを演じているのは、『黄金の7人』のフィリップ・ルロワ。彼も当時は犯罪アクション映画に引っ張りだこだった。また、オーストリア出身の美人女優マリーザ・メルがトトの恋人役で顔を出しているが、ほとんど色添え的な扱い。これといった見せ場が全くないのは残念だった。
 一方、ダミアーノ・ダミアーニ監督のご贔屓として知られる個性的な脇役俳優タント・チマローサが、裏切り者のニーノ役でなかなか強い印象を残している。また、警察のコンタルディ警部役で顔を出しているフランコ・ファンタジアは、西部劇やアクション映画のスタント指導及び武器指導でも有名な人で、本作では助監督も務めていた。

 

 

非情の標的
Revolver (1973)
日本では1977年劇場公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済(アメリカ盤とは別仕様)

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(P)2002 Blue Underground (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/110分/製作:イタリア・フランス・西ドイツ

映像特典(日本盤には無し)
メイキング・ドキュメンタリー(S・ソリーマ監督、F・テスティのインタビュー)
オリジナル劇場予告編
アメリカ版劇場予告編
ラジオ・スポット集
ポスター&スチル・ギャラリー
タレント・プロフィール集
監督:セルジョ・ソリーマ
製作:ウーゴ・サンタルチア
脚本:アルドゥイーノ・マイウリ
    マッシモ・デ・リータ
    セルジョ・ソリーマ
撮影:アルド・スカヴァルダ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:オリヴァー・リード
    ファビオ・テスティ
    アゴスティナ・ベッリ
    パオラ・ピタゴーラ
    ダニエル・ベレッタ
    フレデリク・ド・パスカル
    マルク・マッザ
    ラインハルト・コルデホフ

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親友の亡骸を岸辺に埋めるミロ

フランスで財界の大物が暗殺された

 『狼の挽歌』(72年)で犯罪アクション映画ブームに火をつけたセルジョ・ソリーマ監督の生んだ傑作アクション。妻を誘拐された男が犯罪者の脱獄に加担するのだが、そこから徐々に警察と裏社会の癒着が暴かれていくという筋立てがとても良く出来ている。マカロニ・ウェスタンを含めて、娯楽映画に政治的・社会的なメッセージを的確に盛り込んでいくことにかけては天下一品だったソリーマだが、その点で本作は『血斗のジャンゴ』(67年)と並ぶ名作と言えよう。
 さらに、巨匠エンニオ・モリコーネによるテーマ音楽の素晴らしいこと!犯罪映画には似つかわしくないくらいスウィートで透明感のあるスコアが、逆に主人公たちの悲哀をこれでもかと盛り上げていく。鳥肌が立つくらいに感動的だ。

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暴君として恐れられる刑務所長ヴィト(O・リード)

ヴィトの愛妻アンナ(A・ベッリ)

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アンナが何者かに誘拐されてしまった

誘拐犯は服役囚ミロ(F・テスティ)の身柄を要求する

 フランスで財界の大物が白昼堂々何者かによって暗殺された。その数日後、犯人のものと推測されるバイクと死体が発見された。そのバイクは人気歌手アル・ニーコ(ダニエル・ベレッタ)のものだったが、数年前に友人ジャン=ダニエルに譲ったという。彼は死体の身元確認に立会い、それがジャン=ダニエルであると証言した。
 ミラノの刑務所長ヴィト・チプリアーニ(オリヴァー・リード)は正義感の強い男だが、囚人たちには堅物の暴君として恐れられていた。ある日、彼は久々の休日を最愛の妻アンナ(アゴスティナ・ベッリ)と過ごしていると、刑務所からトラブル発生の連絡が来た。囚人の一人が暴れているのだという。夫婦でクリスマスの買い物をする予定だったが、アンナは仕方なく一人で行くことにする。
 暴れる囚人を何とか取り押さえたヴィト。なぜか囚人は酔っ払っていた。誰かが酒を与えたのだ。早々に帰宅したヴィトだったが、家はもぬけの殻だった。そこへ、匿名の電話がかかってくる。妻を誘拐したと。返して欲しければ、刑務所に囚われているミロ・ルイス(ファビオ・テスティ)というフランス人を引き渡せというのだ。
 背後にいる人間を探るためにミロの身辺を洗うヴィト。しかし、彼はどこにでもいる安っぽいチンピラだった。フランスから友人と共にイタリアへ来て、ミラノで強盗を働いて捕まったのだ。友人は途中で死んだようだが、彼はその名前を決して明かさなかった。
 いずれにせよ、犯人に繋がる手がかりがないからには、相手の要求を呑むしかない。ヴィトの手引きでミロは脱獄を成功させた。しかし、ミロ自身も誰が自分を助けてくれているのか皆目見当がつかない様子だった。約束した場所で犯人グループと落ち合うが、ミロは彼らに見覚えがない。結局、犯人たちがアンナを連れてこなかったことから、人質交換は先延ばしになった。
 ヴィトは信頼している部下に犯人グループを尾行させたが気付かれてしまった。彼らはアンナを始末しようとするが、そこへ身なりの良いフランス人(フレデリク・ド・パスカル)が現れる。彼が犯人グループの雇い主だった。彼は雇った連中をその場で解雇し、アンナをフランスへ連れ帰った。
 もぬけの殻となった隠れ家へやって来たヴィトは、そこにアンナの置手紙と一緒にクロスワード・パズルを見つける。そこにはある人物の名前が書かれていた。ミロによると、その人物はイタリアで身を隠しているフレンチ・マフィアだった。
 その男は、ミロにメッセージを渡す。それを見たミロは、隙をついてヴィトを殴り倒した。形勢は逆転し、ミロは口封じのためにヴィトを殺そうとする。しかし、彼は命がけで妻を救おうとするヴィトに同情していた。全てが終わったら自分を見逃すということを条件に、彼はヴィトの妻奪還に力を貸すことにする。
 カルロッタ(パオラ・ピタゴーラ)という女性の手引きで国境を越えたヴィトとミロは、一路パリへと向った。彼は人気歌手アル・ニーコと会う。自分を刑務所から救い出そうとする人間がいるならば、彼しか考えられなかった。ミロとアル、そしてイタリアで逃亡中に死んだ友人ジャン=ダニエルは無二の親友だったのだ。
 だが、アルはミロの救出に関して何も知らないと語る。それがウソだとミロは感づくが、アルは何かに怯えている様子だった。さらに、アルの自宅を出たヴィトとミロを何者かが尾行する。どうやら、何者かがミロの命を狙っているようだった・・・。

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アンナの誘拐にはフランス人(F・ド・パスカル)が関わっていた

ヴィトの手引きで脱獄に成功したミロ

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決死の覚悟で妻の奪還に挑むヴィト

ヴィトとミロの2人はことあるごとに対立する

 必要悪という口実のもとに犯罪組織と結託して邪魔者を始末していく警察権力。正義を信じていた刑務所長ヴィトは事件の核心へ迫っていくうち、自分も権力の駒の1つに過ぎなかったことに気付いていく。そんな彼の目の前に突きつけられる究極の選択。妻アンナを救うのか、それとも今や親友となったミロを抹殺するのか。巨悪の前では個人の正義がいかに無力であるのか、ということを思い知らされるクライマックスが胸に痛い。
 細かい伏線の積み重ねによってサスペンスを盛り上げていくソリーマの演出は実に見事。切れ味の鋭いアクション・シーンも迫力満点だ。特に後半、パリの裏町での人質交換が一転して敵の罠だったという下りは、銃撃戦とカー・アクションが入り乱れ、ソリーマのダイナミックなアクション演出が冴え渡る。たたみかけるような編集のテクニックも圧巻だ。
 その一方で、細かい人物描写やディテール描写に優れているというのもソリーマの強み。ふとした動作や何げない言葉から、人間の感情や心の微妙な変化を描き出していくのが非常に上手い。本作でも、そうしたきめ細かい演出が、ヴィトとミロの奇妙な友情に説得力と深みを与えている。
 また、冒頭のヴィトとアンナのラブ・シーンの演出も印象的。玄関先から抱き合い、キスをし、服を脱ぐ2人の動作を、足元だけをカメラで追いながらワン・テイクで表現していく。イタリア産犯罪映画には珍しい、とてもロマンティックで洒落たシーンだった。
 ソリーマと共に脚本を手掛けたのはアルドゥイノ・マイウリとマッシモ・デ・リータ。マイウリはマリオ・バーヴァの『黄金の眼』(67年)やセルジョ・コルブッチの『ガンマン大連合』(70年)で知られる脚本家で、骨太な男性ドラマを得意とした人物だ。また、デ・リータも『ミラノの銀行強盗』(68年)や『警告』(80年)など、社会派のアクション映画を数多く手掛けた硬派な脚本家。基本的にこの2人がシナリオの土台を作り、そこにソリーマがディテール部分を書き加えたようだ。
 撮影のアルド・スカヴァルダは巨匠アントニオーニの『情事』(60年)やベルトルッチの『革命前夜』(64年)など、主にアート系映画を手掛けたカメラマン。また、『野獣暁に死す』(68年)や『五人の軍隊』(69年)、『青い体験』(73年)など数多くのイタリア産娯楽映画で有名なセルジョ・モンタナリが編集を担当している。

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犯人グループとの接触をはかるヴィト

ミロは犯人たちに全く心当たりがない

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立場が逆転する2人だったが・・・

DVDの特典映像でインタビューに応えるファビオ・テスティ

 主人公の刑務所長ヴィトを演じたのは当時人気絶頂だったイギリス俳優オリヴァー・リード。野性味溢れる・・・というよりも野獣そのもののような演技と存在感には文字通り圧倒される。アルコール癖が悪いことで有名な人だったが、本作でも撮影中からしこたま飲んでいたようだ。時間が押せば押すほど酔いつぶれてしまうので、毎日彼の出番は早めに撮り終えるようにしていたらしい。
 対する小悪党ミロを演じているファビオ・テスティは、当時イタリアでは2枚目スターとして人気が高かった俳優。甘いマスクのスマートなヒーローを演じることが多かった人だが、本作では犯罪の世界に生きる複雑な若者像を生き生きと表現している。ヘヴィー級なオリバー・リードの演技に対して、軽妙で柔軟性の高い彼の演技は絶妙のバランスだったと言えよう。
 また、ヴィトの妻アンナ役を演じているアゴスティナ・ベッリも良かった。バービー人形のように可愛らしい顔立ちと優れた演技力を兼ね備えた女優さんだったが、その美しさゆえに過小評価されてしまった人でもあった。本作でも出番こそ少ないものの、理不尽な犯罪に巻き込まれるアンナの恐怖と葛藤を体当たりで大熱演している。クライマックスで見せる彼女の表情は、本作のテーマそのものを雄弁に物語って秀逸だった。
 犯人グループの黒幕であるフランス人を演じたフレデリク・ド・パスカルは、ロベール・アンリコの『美しき人生』(63年)やマリナ・ヴラディと共演した『夫婦』(69年)などで知られるフランスの中堅スター。フランスへの密入国を手引きする女性カルロッタ役のパオラ・ピタゴーラは、マルコ・ベロッキオの名作『ポケットの中の握り拳』(65年)で注目された女優だ。また、フランスの人気歌手アル・ニーコ役を演じているダニエル・ベレッタは、自ら本作の主題歌も歌っている。

 

 

復讐の銃弾
Il cittadino si ribella (1974)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2006 Blue Underground (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/103分/製作:イタリア

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー(カステラーリ監督、F・ネロのインタビュー収録)
監督による音声解説
オリジナル劇場予告編
テレビ・スポット
監督:エンツォ・G・カステラーリ
製作:マリオ・チェッキ・ゴリ
脚本:マッシモ・デ・リータ
    アルドゥイーノ・マイウリ
撮影:カルロ・カルリーニ
音楽:グイド・デ・アンジェリス
    マウリツィオ・デ・アンジェリス
出演:フランコ・ネロ
    ジャンカルロ・プレーテ
    バーバラ・バック
    レンツォ・パルメール
    ナザレーノ・ザンペルラ
    マッシモ・ヴァンニ
    レナート・プッポ

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ごく平凡な男カルロ・アントネッリ(F・ネロ)

毎日のように起きる凶悪犯罪

 イタリアン・アクションの巨匠エンツォ・G・カステラーリが、名コンビであるフランコ・ネロと組んだ犯罪バイオレンス映画。凶悪犯罪に巻き込まれた平凡な男が、自らの手で犯罪者たちを成敗するという、いわばイタリア版『狼よさらば』である。
 カステラーリとネロのコンビ作といえば『死神の骨をしゃぶれ』(73年)が傑作として名高いが、これはその直後に撮った作品だ。前作では麻薬組織を撲滅するタフな刑事を大熱演したネロだが、ここでは社会に対する不満を抱えた平凡な男性を演じている。その彼が運悪く強盗に遭遇してしまい、拉致された上に激しい暴行を受けてしまう。ところが、多発する犯罪に対処できない警察は何もしようとはしない。そこで、怒り心頭の主人公が自らの手で犯人たちを追い詰めようとする・・・というわけだ。
 当時はアメリカでもこの種のリベンジ・アクションは数多く作られたものだったが、その殆んどは『狼よさらば』の安手なエピゴーネンに終わってしまった。基本的には本作もその1つ。刑事が主人公に“殺されなかっただけでも運がよかったと思え”とクギを刺すシーンがあるが、まさにその通りと言えるだろう。なので、それ以降に展開する主人公の猛烈な復讐劇に、いまひとつ感情移入することが出来ない。下手をすれば大切な恋人までをも巻き込みかねないのに、半ば復讐だけが生きがいとなっていく主人公の暴走ぶりは愚の骨頂。これは致命的なマイナス・ポイントだ。
 しかし、その一方で本作はアクション演出におけるカステラーリ監督の底力を見せ付けられる映画でもある。特にネロ扮する主人公が暴走車に追いかけられまくるシーンは、スタントなしの捨て身のアクション演技と、ペキンパーばりのスローモーションを多用したカメラワークが実に見事で、数あるイタリア産アクション映画の中でも屈指の名場面だった。巨大な倉庫を舞台に展開するクライマックスの銃撃戦も迫力満点。これらのアクション・シーンだけでも、十分に見る価値のある作品と言えるだろう。

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カルロの立ち寄った郵便局に強盗が押し入る

犯人グループに拉致されてしまったカルロ

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担当の刑事(R・パルメール)は捜査に消極的だった

自ら犯人を捜そうと決意するカルロ

 舞台はイタリアの港町ジェノア。この歴史ある古い街も、日常的に多発する凶悪犯罪に悩まされている。引ったくり、強盗、拉致、人殺しに要人暗殺など、あらゆる犯罪が人々を恐怖に陥れていた。
 工場のラボに勤める平凡な男性カルロ・アントネッリ(フランコ・ネロ)は、ある日郵便局に寄ったところを強盗事件に巻き込まれてしまう。3人組の犯人グループに拉致された上に暴行を受け、車の中に置き去りにされたカルロ。犯人たちはまんまと逃走してしまった。
 警察に保護されたカルロだったが、現場の状況から犯人グループの一味と疑われた上に、刑事(レンツォ・パルメール)から“犯罪者に歯向かおうとするからこんな目に遭うんだ”と戒められて激怒する。彼はつい先ごろも自宅を強盗に荒らされたばかりだったが、警察はろくに現場検証すらしなかった。
 怒りの収まりきらないカルロ。慰めようとする恋人バーバラ(バーバラ・バック)の言葉にすら逆上し、思わず平手打ちを食らわせてしまった。警察が何もしないのであれば、自分が犯人を捕まえてやる。そう心に誓ったカルロは、何かに取り憑かれたかのように夜の繁華街を練り歩いた。自分の足で犯人たちを捜そうというのである。チンピラの集まる場末の酒場で情報収集までしようとするが、逆に追い掛け回されてしまう。
 そうした彼の行動を知った友人は、当然のごとく猛反対する。バカな真似はよせ、と。しかし、かつてパルチザンだった父親をナチに殺された彼は、犯罪者に対して泣き寝入りすることは断固として出来なかった。
 やがて、彼は数ヶ月前の新聞に掲載されている強盗犯グループの顔写真を発見した。彼らは大学生で、証拠不十分として無罪放免になっている。カルロはある名案を思いついた。彼は大学生たちの後を尾行し、その犯行現場を隠し撮りし続ける。そして、その写真を彼らのもとに送りつけ、犯人捜しに協力させるというのだ。
 匿名の脅迫者となったカルロは、リーダー格のトミー(ジャンカルロ・プレーテ)をおびき出し、腕利きの強盗犯を3人集めるようにと指令を出す。“仕事”を頼みたい、というのが口実だった。トミーはしかるべき筋に連絡を取り、強盗犯たちがとある倉庫に集まることとなった。その様子を近くから望遠鏡で監視していたカルロは、やって来た強盗犯たちが例の犯人グループであることを確認する。
 早速、公衆電話から警察に通報したカルロだが、一向に警察のやって来る気配はない。そればかりか、突然犯人たちが倉庫から飛び出し、足早に逃げ去っていってしまった。明らかに、何者かの密告があったのだ。どうやら犯人たちは警察内部と通じ合っているようだった。
 警察が全く当てに出来ないと悟ったカルロは、自ら直接行動に出ることを決心する。拳銃でトミーを脅し、犯人グループの正体を割り出そうというのだ。だが、末端のチンピラにしか過ぎないトミーは何も知らない。行動を共にするうち、2人の間には奇妙な友情が芽生え始める。
 ようやく犯人グループと接触することが出来た2人だったが、カルロは暴行を受けた上に拉致監禁されてしまった。トミーも裏社会のルールに逆らうことは出来ないのだ。だが、カルロに親近感を持つようになっていたトミーは、こっそりと彼を逃がす。見張りに気付かれて追い掛け回されたカルロだったが、トミーの協力でなんとか脱出に成功した。
 犯人たちはカルロの身元を割り出したらしく、自宅が爆破されていた。もはや警察を信用することも出来ない。かくして、社会正義に目覚めはじめたトミーと共に、カルロは犯人グループとの全面対決に挑むこととなるのだが・・・。

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大学生トミー(G・プレーテ)たちは強盗の常習犯だった

カルロを思いとどまらせようとするバーバラ(B・バック)

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カルロはトミーを犯人捜しに協力させる

犯人グループのリーダー(R・プッポ)

 先述したように、ストーリー的には少々難のある作品だが、アクション・シーンの迫力は圧巻そのもの。中でもクライマックスの決闘シーンはアクション映画ファン必見だ。撃ち殺された犯人が水槽の中に落下し、顔面から血を吹きだしながら息絶える様子をワン・カットで見せてしまうのにはたまげた。
 中盤でフランコ・ネロが暴走車に追い掛け回されるシーンも凄い。なんたって、本気で追い掛け回されているんだから。ネロは自らスタントもこなし、車に撥ね飛ばされたり、崖の上から転げ落ちたりと、文字通り体当たりの大熱演を繰り広げる。細かいディテールをスローモーションで見せる辺りなんか、鳥肌もののカッコ良さだ。ちなみに、脚本を手掛けたのは、『非情の標的』でも組んだアルドゥイーノ・マイウリとマッシモ・デ・リータ。マイウリは“ディノ・マイウリ”としてクレジットされている。
 そして、見事なアクション・シーンをカメラに収めたのは、『必殺の歓び』(65年)や『復讐のガンマン』(68年)などのマカロニ・ウェスタンでもお馴染みのカメラマン、カルロ・カルリーニ。彼はもともとネオレアリスモ映画の出身で、フェリーニの『青春群像』(53年)やロッセリーニの『ロベレ将軍』(59年)、『ローマで夜だった』(60年)などの名作も手掛けている。
 また、編集を担当したジャンフランコ・アミクッチのリズミカルで無駄のないエディティングも特筆に価するだろう。彼はイタリア産アクション映画には欠かせない編集マンで、『ケオマ・ザ・リベンジャー』(76年)や『ローマ麻薬ルート大追跡』(77年)、『ジョーズ・リターンズ』(80年)、『ブロンクスからの脱出』(83年)など、殆んどのカステラーリ作品に関わっている人物だ。
 グイド&マウリツィオのデ・アンジェリス兄弟によるクールな音楽スコアも秀逸。レア・グルーヴ全開のインスト・トラックは勿論のこと、絶妙なタイミングでストーリーに絡んでくるテーマ曲がまたカッコいい。これはフランコ・ネロのリクエストで作られた曲だったらしいが、ネロは今でもそらで歌えるくらいお気に入りだったようだ。

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犯人を突き止めたカルロは逆にリンチされる

拉致監禁されてしまったカルロだったが・・・

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決死の覚悟で脱走を試みるカルロ

DVDの特典映像でインタビューに応えるフランコ・ネロ

 ということで、フランコ・ネロはこの作品に対して相当な思い入れがあったらしい。カステラーリ監督とも非常にウマがあったそうで、最終的にテレビ映画を含めて10本の作品で組んでいる。もともと運動神経に自信のある人なので、他の映画でも自らスタントをこなすことは珍しくないが、中でも本作におけるアクション演技は傑出していた。
 その相棒となるチンピラ、トミーを演じるジャンカルロ・プレーテもアクション演技には定評のある俳優。ティモシー・ブレントという変名で、数多くの低予算アクション映画に主演したスターだった。
 犯人グループを演じるマッシモ・ヴァンニ、ナザレーノ・ザンペルラ、ロマーノ・プッポの3人もイタリア産アクション映画には欠かせない脇役。いずれもスタントマン出身の俳優だ。中でも、ロマーノ・プッポは一度見たら忘れられないくらいに個性的な役者で、カステラ−リ作品でも常連組として活躍していた。
 そして、主人公の恋人バーバラを演じているのが、リンゴ・スター夫人としても有名なバーバラ・バック。当時はイタリア映画を中心に活躍していたが、その後『007/私を愛したスパイ』(77年)のボンドガールに抜擢されて世界的なスターとなった。ただ、本作では残念ながら色添え的な扱いに終始している。
 また、『黄金の七人』シリーズでお馴染みのレンツォ・パルメールが刑事役として登場。普段は気のいいオヤジさん的な役柄を演じることが多い人だが、ここでは珍しく憎まれ役に徹していた。

 

 

Roma a mano armata (1976)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P) Alfa Digital (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/94分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
ヨーロッパ版オープニング・クレジット
アメリカ公開版タイトル・シーン
アメリカ・ビデオ版追加シーン
監督:ウンベルト・レンツィ
製作:ルチアーノ・マルティーノ
    ミーノ・ロイ
脚本:ダルダノ・サケッティ
    ウンベルト・レンツィ
撮影:フェデリコ・ザンニ
音楽:フランコ・ミカリッツィ
出演:マウリツィオ・メルリ
    トーマス・ミリアン
    アーサー・ケネディ
    イワン・ラシモフ
    マリア・ロサリア・オマッジョ
    ジャンピエロ・アルベルティーニ
    ビアージョ・ペリーグラ
    アルド・バルベリート
    ステファノ・パトリッツィ
    ルチアーノ・ピゴッツィ
    ルチアーノ・カテナッチ

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ローマ市警の熱血刑事タンツィ(M・メルリ)

犯罪者には力で対抗するのがタンツィの流儀

 ウンベルト・レンツィ監督がアクション映画の2大スター、マウリツィオ・メルリとトーマス・ミリアンを主演に迎えた異色作。1976年といえば、イタリアで犯罪バイオレンス映画が最盛期を迎えた年。一年間で22本もの作品が劇場公開されるという盛況ぶりだった。中でも、群を抜いてユニークな作品と言えるのが、この“Roma a mano armata”である。
 まず、基本的に大枠となるプロットが存在しない。マウリツィオ・メリル扮するタンツィ刑事を主人公に、彼の周囲で起こる様々な凶悪事件をドキュメンタリー・タッチで追っていく。やがて、それらの事件が少しづつ重なり合って行き、大都市ローマに蔓延る組織犯罪の実態を浮き彫りにしていくというわけだ。
 その主人公タンツィ刑事のキャラクターもまた強烈。犯罪を心のそこから憎んでおり、罪を犯した人間に対しては文字通り情け容赦がない。目には目を歯には歯をのメソッドで犯罪に立ち向かっていく究極のタフ・ガイである。
 それと対照的なのが、彼の恋人であるアンナ。検事局に勤める女性検事の彼女は、犯罪者は現代社会の哀れな犠牲者であり、救いの手を差し伸べるべき存在だと考えている。しかし、現実に凶悪犯罪に手を染めている連中は、性根の腐りきった救いようのない悪人ばかり。あくまでも理想論に終始しているアンナという女性は、きれいごとばかりで現実に対応できない“法律”を象徴する存在だ。
 また、タンツィ刑事は警察のイメージや政治的な力関係ばかりに配慮する警察署長とも激しく対立する。この警察署長にしても、言うなれば権力の偽善を象徴していると考えて然るべきだろう。こうした明確なキャラクター設定と明確なメッセージのもとに、複雑で入り組んだストーリーが展開していく。これはレンツィの演出力というよりも、ダルダノ・サケッティの書いた脚本のお手柄であろう。
 もちろん、レンツィの演出自体もダイナミックでテンポ抜群。中でもトーマス・ミリアン扮する狂犬のような傴男モレットの傍若無人な暴れっぷりは圧巻で、通りすがりの人間を片っ端から機関銃で殺しまくっていくパニック・シーンの迫力は必見だ。残念ながら日本では未だ未公開のままだが、70年代イタリア産犯罪バイオレンスを代表する傑作のひとつと言えよう。

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人情家の上司カプート警部(G・アルベルティーニ)

タンツィと真っ向から対立するルイーニ署長(A・ケネディ)

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麻薬組織に関わっている傴男モレット(T・ミリアン)

タンツィはモレットの尋問に強硬な姿勢で臨むのだが・・・

 凶悪犯罪の蔓延る大都市ローマ。タレこみ屋から情報を得たタンツィ刑事(マウリツィオ・メルリ)は、違法カジノを一斉に検挙した。そこで彼は以前から追っていた犯罪者を逮捕するが、数時間後には弁護士によって釈放されてしまった。凶悪な犯罪者であればあるほど、有能な弁護士が後ろ盾につく。民主主義に基づく法律の落とし穴に、タンツィ刑事は強い憤りを隠せなかった。
 一方、今度は銀行で強盗事件が発生し、警備に当たっていた警官が射殺された。こうした組織的な犯罪に立ち向かうため特殊部隊の編成を強く主張するタンツィ刑事と、平和的な方法で対処すべきだと考えるルイーニ署長(アーサー・ケネディ)は真っ向から対立する。
 市内を車で移動していたタンツィ刑事は、引ったくり事件を目撃。バイクに乗った二人連れを追い詰めた彼だったが、犯人たちはまだ年端も行かない少年だった。彼らを担当した女性検事アンナ(マリア・ロサリア・オマッジョ)は2人の生い立ちに同情し、無罪放免で釈放してしまう。その数時間後に少年たちは再びひったくり事件を起こし、逃走中にトラックと激突して死んでしまった。
 タンツィ刑事とアンナは恋人同士だったが、犯罪者は徹底的に罰するべきだと考えるタンツィに対し、アンナは社会の不公平なシステムこそが犯罪者を生むのであって、彼ら自身に罪はないと主張。二人の意見は平行線を辿っていた。
 麻薬組織のボスを追うタンツィ刑事と同僚のポリアーニ刑事(アルド・バルベリート)は、組織の配下にあるモレット(トーマス・ミリアン)という傴男を麻薬所持の現行犯で逮捕した。激しい暴行を伴う尋問を行ったが、モレットはトイレで自殺未遂をはかる。もちろん、拘束を免れるための芝居なのだが、マスコミや世間の評判を気にするルイーニ署長は激怒し、タンツィ刑事をデスクワークに回してしまった。
 その頃、タンツィ刑事の行動が目に余ると感じた犯罪組織は、彼の恋人であるアンナを拉致して暴行を加える。病院に収容されたアンナだったが、タンツィには犯人たちの顔を見なかったとウソの証言をする。
 犯罪捜査の第一線から外されてしまったタンツィ刑事だったが、彼に同情的な上司カプート警部(ジャンピエロ・アルベルティーニ)は、タンツィに現場の情報を逐一教える。それを基に、彼は密かに単独で犯罪者の摘発に動いていた。
 ある日、デートを楽しんでいた若いカップルがチンピラ集団に囲まれ、男性をリンチで半殺しにした挙句、女性の股間に丸太をぶち込むなどして激しいレイプを加えた。現場に残された遺留品から、グループのリーダーが有力政治家のドラ息子ステファノ(ステファノ・パトリッツィ)と判明。タンツィ刑事はプール・バーにたむろしていたステファノを追い詰めるが、車で逃げようとしたステファノは交通事故を起こして死んでしまった。
 さらに、タンツィのもとへトニー(イワン・ラシモフ)というチンピラと付き合っている娘の身の上を心配する母親が訪れる。彼女の話を聞くと、どうやらトニーはドラッグの売人だった。トニーを追い詰め、組織の黒幕を聞き出そうとしたタンツィ刑事だったが、彼の目の前でトニーは射殺されてしまう。
 カプート警部はタンツィをかばうが、ルイーニ署長の怒りは収まらない。タンツィ自身もそんな警察に嫌気がさし、自ら辞職を願い出た。そこへ新たな事件の情報が入った。強盗集団が銀行に立て篭もり、人質の身代金を要求しているというのだ。自ら現場の陣頭指揮に当たったルイーニ署長は犯人グループとの交渉に応じるが、カプート警部やタンツィには予想がついていた。犯人グループは最終的に人質を殺し、金を奪って逃走するはずだと。そこで、カプート警部は独断でタンツィと数人の狙撃隊を、銀行内へ送り込むことにする。通気口を伝って中へ進入したタンツィらは犯人グループを全員射殺し、人質の解放に成功した。
 ところが、その頃市内ではモレットが機関銃を片手に暴走し、次々と罪なき市民を皆殺しにしていた。現場へ急行したタンツィ刑事ら警官隊だったが、モレットを捕らえることは出来なかった。さらに、銀行の立て篭もり事件を新聞で知ったアンナは、犯人たちが自分を拉致した連中であることに気付いた。やがて、売人トニーの暗殺、銀行の立て篭もり事件、モレットの市民虐殺事件がにわかに1つの線で繋がっていく・・・。

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タンツィの恋人アンナ(M・R・オマッジョ)は女性検事

チンピラ集団による暴行レイプ事件が発生

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麻薬の密売人トニー(I・ラシモフ)

逃亡したトニーを追い詰めるタンツィ刑事

 とにかくスピーディーでテンポが速い。次から次へと凶悪事件が起きるもんだから、まさに息つく暇もないようなストーリー展開だ。しかも、一見すると全く関係のないような事件ばかり起こるので、まるでオムニバス映画を見ているような錯覚に陥ってしまう。しかし、そのうちの幾つかの事件が絶妙なタイミングで少しづつ絡み合っていき、組織犯罪の全貌が浮かび上がってくる。まさにドキュメンタリー映画のような臨場感だ。
 脚本を手掛けたのはイタリアを代表する娯楽映画の脚本家ダルダノ・サケッティ。ルチオ・フルチやランベルト・バーヴァとのコンビで知られる人物で、主にホラー映画のジャンルで優れた仕事を残しているが、『ダーティ・チェイサー』(74年)や『サンダー』(83年)、『アフガン・フォース/戦場の黙示録』(89年)など、実はアクション映画の脚本もかなりの数を手掛けている。
 そして、撮影を担当したのはウンベルト・レンツィとのコンビでお馴染みのフェデリコ・ザンニ。ドキュメンタリー・タッチの撮影スタイルが特徴のカメラマンだが、本作では特にその才能が活かされている。バイオレンス・シーンやアクション・シーンの徹底したリアリズムは圧巻そのもの。
 また、フランコ・ミカリッツィの手掛けたグルーヴィーな音楽もカッコいい。『風来坊』シリーズなど、主にコミカルなマカロニ・ウェスタンで知られる作曲家だが、アクション映画におけるハードでファンキーなスコアでも定評のある人。デ・アンジェリス兄弟やブルーノ・ニコライなどに比べて、どうも過小評価される傾向にあるのが残念だ。

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またもや銀行で強盗事件が発生する

狂犬のように市民を虐殺していくモレット

 主演のマウリツィオ・メルリは当時アクション映画で引っ張りだこの俳優だったが、どうしてもフランコ・ネロの二番煎じという印象が強く、イタリア以外ではあまり人気が出ることはなかった。日本でも劇場公開作は『フェラーリの鷹』(76年)と『アウトロー・コップ』(80年)の2本だけ。アントニオ・サバトと同様に、どうもB級感が漂ってしまうスターだった。それでも、本作のタフ・ガイぶりはなかなかの大熱演だったと思う。
 そして、対するモレット役のトーマス・ミリアンが相変わらず凄い。しかも、今回は傴男の凶悪犯という、ある意味で放送コードすれすれのヤバい役柄。これ以上ないくらいの強烈な怪演を繰り広げている。あくまでも脇役なので出番は少ないのだが、時として主演のマウリツィオ・メルリを食ってしまうほどの迫力だった。この役柄は当時かなり評判になったらしく、モレットを主人公にした“La banda del gobbo”(78年)という作品まで作られている。もちろん、監督はウンベルト・レンツィ。
 タンツィ刑事を目の仇にするルイーニ署長を演じているのは、ハリウッドの大物スター、アーサー・ケネディ。一方、タンツィ刑事の恋人アンナ役を演じているマリア・ロサリア・オマッジョは、『ナイトメア・シティ』(80年)や『勇者ヘラクレス2』(85年)などに出ていた女優さんだ。ただ、かなりの美人であることに間違いないのだが、どうも演技に表情がないというか、常に仏頂面なのが気になってしまう。
 また、タンツィ刑事に同情的なカプート警部役を演じているのは、『黄金の7人』シリーズでお人よしの泥棒をコミカルに演じていたジャンピエロ・アルベルティーニ。人情味溢れる演技が魅力の名優で、本作でもいわゆる“オヤジさん”的な役柄を絶妙に演じていた。個人的にも大好きな俳優だ。
 その他、『バージン・エクソシスト』(74年)や『食人帝国』(80年)などでお馴染みのイワン・ラシモフ、リカルド・フレーダの遺作“Murder Obsession”(81年)に主演していたステファノ・パトリッツィ、マリオ・バーヴァ作品の常連だったルチアーノ・ピゴッツィ(アラン・コリンズ)、アクション映画の定番悪役俳優ルチアーノ・カテナッチなど、イタリア産娯楽映画ではお馴染みのバイ・プレイヤーたちがズラリと脇を固めている。

 

 

 

ローマ麻薬ルート大追跡
La via della droga (1977)

日本では劇場未公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2006 Blue Underground (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/93分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
カステラーリ監督による音声解説
監督:エンツォ・G・カステラーリ
製作:ガリアーノ・フソ
脚本:マッシモ・デ・リータ
    エンツォ・G・カステラーリ
撮影:ジョヴァンニ・ベルガミーニ
音楽:ゴブリン
出演:ファビオ・テスティ
    デヴィッド・ヘミングス
    シェリー・ブキャナン
    ジャンニ・オルランド
    ウォルファンゴ・ソルダーティ
    マッシモ・ヴァンニ
    アンジェロ・ラグーサ
    ロマーノ・プッポ
    セルジョ・ルッジェリ

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潜入捜査官ファビオ(F・テスティ)

インターポールの麻薬捜査官マイク・ハミルトン(D・ヘミングス)

 警察の潜入捜査官とインターポールの麻薬捜査官がタッグを組み、国際的な麻薬密売ルートを暴くという痛快バイオレンス・アクション。エンツォ・G・カステラーリ監督ならではのド派手なスタント・シーンが満載の作品だ。
 中でも古代遺跡・カラカラ浴場を舞台にした壮絶なバイク・チェイスと、クライマックスのセスナ機同士によるダイナミックなエアー・バトルは最大の山場。カステラーリのアクション演出が冴え渡る名シーンに仕上がっている。
 全体的にストーリーは単純明快。イタリア産犯罪バイオレンスに特有のニヒリズムや政治的メッセージよりも、明朗快活な娯楽アクションに徹している。その辺はカステラーリ独特の個性なのだが、同時に好き嫌いの分かれる点でもあると言えるだろう。
 いずれにせよ、これだけ大掛かりなスタント・シーンが実現できたのも、イタリア映画界に勢いがあった時代だからこそ。イタリア産娯楽映画黄金期のパワーを感じさせてくれる作品だ。

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ホテルでの麻薬取り引き現場を押えようとする警察だったが・・・

密売人を装って組織と接触を試みるファビオ

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ファビオはジッロ(W・ソルダーティ)という売人を利用する

人目につかない場所でコンタクトを取るファビオとマイク

 コロンビア、アムステルダム、香港、ニューヨークと世界的な広がりを見せる麻薬シンジケート。その中継地点になっているのが、イタリアのローマだった。麻薬の密売ルートを探るインターポールの捜査官マイク・ハミルトン(デヴィッド・ヘミングス)は、地元イタリア警察の怠慢な捜査に苛立ちをつのらせている。
 ある日、一人の男が香港からローマへと降り立った。彼の名はファビオ(ファビオ・テスティ)。彼は空港の税関検査で引っかかり、荷物から大量のヘロインが発見された。直ちに逮捕されるファビオ。しかし、実は彼はハミルトンが送り込んだ潜入捜査官で、麻薬の密売人を装って組織の実態を暴こうとしていたのだ。空港には組織の関係者が待ち受けていたが、ファビオの逮捕を知って足早に逃げ去ってしまった。とんだ大失態だ。
 さらに、警察はホテルでの麻薬取り引き現場を押えようとするが失敗。ブツはまんまと組織の手元へと流れてしまった。警察は逮捕したファビオを留置所へぶち込む。そこへ、しがない麻薬密売人ジッロ(ウォルファンゴ・ソルダーティ)が収容されてくる。ジッロは自らが相当なジャンキーで、すでに禁断症状が出始めていた。
 機転を利かせたファビオはジッロを連れて逃亡に成功。彼の売人仲間と接触し、組織の上層部の人間と接触を図ろうとした。ファビオの前に現れたのはマッシモ(マッシモ・ヴァンニ)という男。ファビオはマッシモの代理人として、ジェノア出身のマフィアとの麻薬取り引きを行うことになる。
 取り引き現場では銃撃戦になるも、無事にブツをゲットしたファビオ。彼はわざと中身を砂糖と入れ替える。相手のマフィアに図られたと激怒するマッシモに、ファビオはある提案をする。確実に純度の高いコカインを入手できる場所、それは警察の押収品保管所だ。ファビオは警察へ潜入し、大量のコカインを奪うことに成功する。
 ファビオからコカインを受け取ったマッシモは、仲間を引き連れてアジトへと向う。ところが、そのコカインには追跡装置が埋め込まれていた。あらかじめファビオから連絡を受けていたマイクが、密かに仕掛けておいたのだ。
 マッシモらの乗ったバンを追うマイク。だが、車内でコカインの精製をしていた一味が追跡装置の存在に気付いてしまった。そうとは知らず、郊外の廃墟工場へと尾行して行ったマイクは、敵の待ち伏せに遭ってしまった。激しい銃撃戦の末、彼はファビオに命を救われる。
 大手薬品メーカーが麻薬組織の隠れ蓑と知ったファビオは、敵の陣地へと単身乗り込んでいく。その内部には、大規模なコカインの精製工場が広がっていた・・・。

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市民の生活を蝕んでいく麻薬の密売人たち

組織の殺し屋を演じるロマーノ・プッポ

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麻薬の取り引き現場が銃撃戦に

マイクは組織の待ち伏せに遭う

 いわゆるバディ・ムービーの路線に当たる作品で、随所にユーモラスなジョークが散りばめられるなど、アメリカン・スタイルのライトな娯楽アクションといった印象が濃厚。ハリウッド映画に多大な影響を受けたカステラーリならではのセンスだ。
 その一方で、サイド・ストーリーとして売人ジッロにも焦点が当てられ、哀れなジャンキーの末路が語られていく。麻薬欲しさに強盗殺人の罪を犯し、無残にも射殺されてしまうジッロ。恋人のヴェラ(シェリー・ブキャナン)もコカインの多量摂取で死亡する。一応、社会的なメッセージにも目配せしているが、あまり重要な要素にはなっていない。
 脚本を書いたのはマッシモ・デ・リータとカステラーリの2人。原案にはプロデューサーのガリアーノ・フソが関わっている。彼は70年代から80年代にかけて数多くの映画を世に送り出した製作者で、ティント・ブラスの『スナックバー・ブダペスト』(88年)やモアナ・ポッツィの『パパまた脱いじゃった』(92年)のようなエロスものから、マウロ・ボロニーニの『金曜日の別荘で』(91年)のような文芸ドラマ、スペインの巨匠カルロス・サウラの『愛よりも非情』(93年)など、実に幅広いジャンルを手掛ける人物だった。
 撮影のジョヴァンニ・ベルガミーニは、マカロニ・ウェスタン『黄金の三悪人』(67年)以来たびたびカステラーリと組んでいるカメラマン。他にも『アルデンヌの戦い』(67年)や『マフィア・コネクション』(73年)、『人喰族』(81年)、『死海からの脱出』(87年)など、イタリア産娯楽映画には欠かせない撮影監督の一人だった。
 また、本作ではダリオ・アルジェント作品でお馴染みのロック・バンド、ゴブリンが音楽を手掛けている。ただ、アメリカナイズされ過ぎたサウンドはあまり印象に残るようなものではなく、彼らの手掛けたスコアとしては平均点レベルの仕上がり。やはり、この種の作品はフランコ・ミカリッツィやデ・アンジェリス兄弟の独壇場だったと言えるだろう。

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ジッロ役を演じるウォルファンゴ・ソルダーティ

ヴェラ役で顔を出すシェリー・ブキャナン

 主人公コンビを演じるのはファビオ・テスティとデヴィッド・ヘミングス。スマートでユーモア・センスのあるテスティと、クールでダンディなヘミングスは、お互いがあまり出過ぎない程度に個性を主張し合い、絶妙のバランス感覚を保っている。
 それにしても、この頃のヘミングスは一番脂が乗っていた時期だったように思う。出世作の『欲望』(66年)がやはり一番有名なのかもしれないが、『ジャガーノート』(74年)や『サスペリアPART2』(75年)、そして本作へと至る70年代半ばの彼は、若い頃よりも貫禄が増した分、大人の男の渋い魅力に溢れていた。ただ、その後は年齢を重ねるごとに体重ばかり増して行き、『グラディエーター』(00年)で久々に顔を見たときは別人のようになってしまっていて驚いたもんだった。
 哀れなジャンキー、ジッロ役を演じているウォルファンゴ・ソルダーティは、名作『河の女』(55年)で知られる映画監督マリオ・ソルダーティの息子。フェリーニやゼフィレッリのアシスタントを経験し、ファッション・フォトグラファーとして雑誌“ヴォーグ”などでも活躍したことのある才人だった。カステラーリの『ケオマ・ザ・リベンジャー』(76年)で俳優デビューしたものの、その後は映画界を引退してレストランを経営しているらしい。
 その恋人ヴェラ役を演じているのは、『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』(80年)で頭皮を剥がされていた女優シェリー・ブキャナン。また、カステラーリ作品の悪役として毎回登場するマッシモ・ヴァンニとロマーノ・プッポの2人が、ここでも麻薬組織の幹部を演じて存在感を光らせている。特に、今回はロマーノ・プッポがむちゃくちゃカッコいい。

 ちなみに、上記のアメリカ盤DVDは日本盤DVDが海賊盤に思えてしまうくらい、むちゃくちゃ画質がいい。特典が監督の音声解説と予告編のみというのは残念だが、日本盤は何も入っていなかったので、いちいち文句を言うのも贅沢というもんだろう。

 

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