イタリアン・ホラー ブルーレイ レビュー

 

悪魔の微笑み
La notte dei Diavoli (1972)

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(P)2012 Raro Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA /言語:イタリア語・英語/字幕:英語・ドイツ語/地域コード:ALL/93分/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
アウターケース収納
ジャケット2種類
フルカラー・ブックレット(12p)

<特典>
・作曲家ジョルジョ・ガスリーニのインタビュー
・ファンゴリア誌編集長クリス・アレクサンダーのイントロダクション
・オリジナル劇場予告編
監督:ジョルジョ・フェローニ
製作:ルイジ・マリアーニ
原作:アレクセイ・トルストイ
脚本:エドゥアルド・マンザノス・ブロシェロ
   ロマーノ・ミリオーリ
   ジャンバティスタ・ムセット
撮影:マヌエル・ベレングエル
音楽:ジョルジョ・ガスリーニ
出演:ジャンニ・ガルコ
   アゴスティナ・ベッリ
   ロベルト・マルデラ
   シンツィア・デ・カロリス
   テレサ・ギンペラ
   マリア・モンティ
   ビル・ヴァンダース
   ウンベルト・ラホー

 日本ではマカロニ・ウェスタン「荒野の1ドル銀貨」('65)やイタリアン・ホラー草創期の名作「生血を吸う女」('61)で知られるジョルジョ・フェローニ監督の、これは知る人ぞ知る隠れた傑作。呪われた土地に迷い込んでしまった男の遭遇する恐怖と、愛すればこそ殺さねばならない哀しき吸血鬼の本能を、おどろおどろしいムードと切ない叙情を交えながら描いた見事な怪奇譚である。


 原作はロシアの作家アレクセイ・トルストイ(「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」のレフ・トルストイの又従兄弟)の小説「吸血鬼の一族」。あのマリオ・バーヴァ監督もオムニバス映画「ブラック・サバス」('63)の1篇として取り上げた怪奇幻想文学だ。舞台は東欧のユーゴスラヴィア。錯乱状態で発見された男性ニコラが精神病院に収容され、彼の体験した悪夢のような出来事がフラッシュバックで語られていく。
 仕事へ向かう途中に森の奥へ迷い込んだニコラは、そこで木こりの一家と遭遇する。よそ者に心を開こうとしない閉鎖的な一家。実は、彼らには魔女の呪いがかけられており、吸血鬼と化した家族が愛する我が子や親を毒牙にかけるという、恐ろしくも哀しき負の連鎖が繰り返されていたのだ。
 幻想的なゴシック・ホラーの様式美を踏襲しつつ、'70年代らしい大胆な性描写とスプラッター描写を盛り込んだフェローニ監督の演出は、一歩間違えれば下世話になりかねないところを、その絶妙なさじ加減によって風格のある怪奇映画として成立させている。巨匠ジョルジョ・ガスリーニによるセンチメンタリズム全開の、美しくも妖しげな音楽スコアがまた素晴らしい。


 日本では'80年代にVHSで発売されたのみ。海外でも過去にイタリア盤DVDが発売されていたものの、それ以外の地域では長いこと海賊版ビデオでしか見ることのできなかった幻の映画だ。世界初の公式ブルーレイ発売となる上記の米国Raro Video版は、新たに35ミリフィルムからフルハイビジョンでテレシネされたマスターを使用している。Raro Video本社がリリースしたイタリア盤DVDがスタンダード・サイズでのレターボックス収録だったのに対し、アメリカ盤BDはスコープサイズのワイドスクリーン収録。部分的にフィルムのキズやノイズは散見されるものの、ほとんど気にならない程度だ。
 全体的に色合いが赤茶けているようにも感じるが、これはもともとフェリーニ監督が意図した色彩であり、作品のどんよりとした閉鎖的な世界感を表現することに成功している。暗いナイト・シーンの多い作品だが、きめ細やかな映像のおかげでディテールが潰れてしまうことも全くない。十分すぎるくらいの高画質だ。ただ、音声で一部ヒスノイズの目立つ部分があり、若干の経年劣化が否めないのは惜しまれる。


 映像特典の目玉はジョルジョ・ガスリーニの独占インタビュー。かなり生真面目かつ気難しい人物だと思われ、インタビュアーの質問に噛み付く場面も少なからずあったりするのだが、本作での仕事にはかなり思い入れがあったらしく、アントニオーニの「夜」と並ぶ自身の代表作だと言い切っているのがファンとしては嬉しい限り。実際、サントラ盤アルバムのクオリティも高い。
 一方、ファンゴリア編集長によるイントロダクションは形式的で簡単なもの。それ以外はオリジナル劇場予告編のみってことで、全体的な特典映像のボリュームとしては物足りなくも感じる。まだ現役であるジャンニ・ガルコやアゴスティナ・ベッリのインタビュー、スチル・ギャラリーなどもあれば尚の事良かったのに…とも思うが、初見から20年以上、ずっと手元に置きたいと思っていた映画の、まさに念願叶ってのブルーレイ化なので贅沢は申しません。

 

 

食人族
Cannibal Holocaust (1980)

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(P)2014 Grindhouse Releasing (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤3枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA ・1.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/95分/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
・収納ボックスケース付き
・フルカラー・ブックレット(26p)
・サントラ盤CD

<特典>
・監督ルッジェロ・デオダートと俳優ロバート・カーマンの音声解説
・俳優カール・ヨークと女優フランチェスカ・チアルディの音声解説
・ルッジェロ・デオダート監督インタビュー(2011年)
・俳優ロバート・カーマン インタビュー(2000年)
・俳優カール・ヨーク インタビュー(2005年)
・女優フランチェスカ・チアルディ インタビュー(2010年)
・助監督サルヴァトーレ・バシーレ インタビュー(2014年)
・作曲家リズ・オルトラーニ インタビュー(2003年)
・撮影助手ロベルト・フォルゲス・ダヴァンザティ インタビュー(2010年)
・ルッジェロ・デオダート監督 パネル・ディスカッション(2011年)
・フランチェスカ・チアルディQ&A (2010年)
・カール・ヨークとルッジェロ・デオダートのリユニオン(2009年)
・ロバート・カーマンとルッジェロ・デオダートのリユニオン(2000年)
・劇中フィルム別バージョン
・全米リバイバル公開プレミア
・スチル・ギャラリー
・オリジナル劇場予告編集(国際版・イタリア版・ドイツ版・アメリカ版・全米リバイバル版)
監督:ルッジェロ・デオダート
製作:フランコ・パラッジ
   フランコ・ディ・ヌンツィオ
脚本:ジャンフランコ・クレリチ
撮影:セルジョ・ドフィッツィ
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ロバート・カーマン
   カール・ガブリエル・ヨーク
   フランチェスカ・チアルディ
   ペリー・パーカネン
   ルカ・バルバレスキ

 今さら改めて説明する必要もないであろう、映画史上最大の問題作の一つにしてイタリアン・ホラー史上に燦然と輝く傑作。南米アマゾンで行方不明になったドキュメンタリー撮影隊の搜索に向かった大学教授が、ジャングルの中で彼らの無残な遺体とフィルムを発見。そこには、食人族の実態をカメラに収めようとして自ら餌食になってしまった若者たちの末路の一部始終が記録されていた…というわけで、いわゆるファウンド・フッテージ系ホラーの元祖と言えよう。
 もちろん、本編は全てフィクション。当時は衝撃のドキュメンタリー映画として劇場公開され、これは本物か偽物かと世界各国で物議を醸した。日本以外の大半の国では残酷シーンがカットされ、イギリスなど一部の国では上映そのものが禁止されるという憂き目に。殺人や人食いのシーンはもちろん特殊メイクだが、動物を殺すシーンは全て本物で、これがまた日本以外の各国では問題視された。しまいには、撮影のために人を殺したとの疑いがかけられ、デオダート監督が裁判にかけられる事態にまで発展。劇中で殺される女性スタッフを演じたフランチェスカ・チアルディが法廷に証人として現れたため、さすがに告訴は取り下げられたものの、その後しばらくデオダート監督は要注意人物として映画界から干されてしまった。

 とはいえ、本作が単なるキワモノ映画でないことは明言しておこう。上記ブルーレイのブックレットにライナーノーツを寄稿しているイーライ・ロス監督も述べているが、「食人族」とその他大勢のカンニバル映画の最大の違いは、全編に貫かれる徹底したリアリズムだと言えよう。ネオレアリスモの巨匠ロベルト・ロッセリーニに多大な影響を受けたデオダート監督は、実際にアマゾンのジャングルでのロケを敢行し、エキストラには本物のインディオを起用。本編を見ているだけでも、撮影の過酷極まりなかったことが容易に想像できる。そのとてつもない気迫というか、執念のようなものが見る者を圧倒するのだ。
 さらに、本当に残酷なのは食人族と文明人のどちらなのか、という大きな疑問を土台としながら、人間という存在の根源的な残虐性を浮き彫りにしていくストーリーにも骨がある。この世の中で最も恐ろしいのは人間なのだと。強烈な残酷描写のせいで見過ごされがちかもしれないが、これは極めてメッセージ性の高い社会派映画なのだ。

 で、上記は本編ディスクと特典ディスクにサントラ盤CDをセットした北米盤3枚組ブルーレイ。映画本編は新たにフルハイビジョンでテレシネされた上で修復作業が施されている。さすがに同時代のハリウッド映画のような高画質は望めないにせよ、過去のDVDバージョンと比べればクオリティの向上は明白。目立ったフィルムのキズや汚れも殆どないし、ディテールの情報量も豊富だ。ただ、後半のファウンド・フッテージ・シーンは17ミリの手持ちカメラで撮影されているため、お世辞にも画質が良いとは言えないものの、こればかりは仕方あるまい。そうあるべきシーンなのだし、かえって画質が良ければ不自然だろう。
 音声は2.0chのステレオ・リミックスとオリジナルのモノラルを用意。DVDでは5.1chサラウンドだったのに…と不満の声も聞こえてきそうだが、リズ・オルトラーニのスコアに包み込むような重量感のあるステレオ・リミックスは十分に合格点。デオダート監督と教授役ロバート・カーマンの音声解説に加え、今回はカール・ヨークとフランチェスカ・チアルディの音声解説も新たに収録されている。
 そして、過去のインタビュー映像をほぼ全て網羅した特典映像もなかなかのボリューム。DVDに収録されていたメイキング・ドキュメンタリー「イン・ザ・ジャングル」が消えてしまったのは残念だが、50分以上に及ぶデオダート監督のインタビューや助監督を務めたサルヴァトーレ・バシーレのインタビューが不足分をカバーしている。特に、ヘルツォークの「コブラ・ヴェルデ」やローランド・ジャッフェの「ミッション」といった未開地映画に数多く携わったバシーレのワイルド過ぎるコメントは、まさに過酷な現場で叩き上げてきた無骨なタフ・ガイならではの力強さに溢れており、そもそも映画製作とは基本的に肉体労働であることを改めて思い起こさせてくれる。
 なお、特典映像には隠しコマンドも複数含まれているので、注意深く探してみて欲しい。

 

 

ナイトメア・シティ
Nightmare City (1980)

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(P)2014 Raro Video (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★

ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM ステレオ/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:ALL/91分/制作国:イタリア・スペイン

<パッケージ仕様>
アウターケース収納
フルカラー・ブックレット(12p)

<特典>
・ウンベルト・レンツィ監督 インタビュー
・オリジナル劇場予告編集(英語版・イタリア語版)

監督:ウンベルト・レンツィ
製作:ディエゴ・アルキメーデ
   ルイス・メンデス
脚本:アントニオ・チェザーレ・コルティ
   ルイス・マリア・デルガード
   ピエロ・レニョーリ
撮影:ハンス・バーマン
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:ヒューゴ・スティグリッツ
   ローラ・トロッター
   フランシスコ・ラバル
   メル・ファーラー
   マリア・ロサリア・オマッジョ
   エドゥアルド・ファヤルド
   ステファニア・ダマリオ

 「ゾンビドローム」や「吸血魔の街」などの邦題でも知られ、いわゆる“走るゾンビ”の原点としても認知されているカルト・ホラー。とはいっても、本作に登場するゾンビたちは厳密には“ゾンビ”ではない。原発の放射能汚染によって凶暴化してしまった狂人たちだ。彼らが機関銃やナイフなどの武器を手に人々を襲い、血を吸うことで狂犬病のように感染が広まっていく。つまり、基本的にはゾンビ映画というよりもパンデミック映画と呼ぶ方が正しいのである。
 監督は硬派な犯罪アクションや戦争アクションで知られるイタリアのベテラン職人ウンベルト・レンツィ。まあ、もともとジャンル的にはなんでもござれの人なので、少なからずホラー映画の演出も手がけているのだが、正直なところあまり向いているとは言えなかったりする。そういう意味では、本作もご他聞に漏れず。監督自身は“原発の危険性を予知していた”とか“現実にも起こりうる恐怖を描いている”などと自画自賛しているが、どう考えても荒唐無稽なこじつけだ。なによりも、緊張感の欠片もない緩みきった演出の残念なこと(笑)。ケロイド状に顔のただれた感染者たちの特殊メイクもずさん。確かに珍品といえば珍品だが、それ以上でもなければ、それ以下でもない。

 日本でも2年ほど前にデジタル・リマスター版DVDがリリースされているが、ブルーレイ化されたのは上記の米Raro Video盤が世界初。日本盤DVDがモノラル音声だったのに対して、北米盤は2.0チャンネルのステレオ音声にリミックスされているので、恐らく使用されたマスターは別物なのだろう。どの世代のフィルムを原版にしているのかは定かでないが、ビジュアルの印象としては全般的に輪郭が甘め。すっきりシャープな映像というわけにはいかない。
 しかしながら、フルハイビジョンでテレシネされた上にデジタル修復が施されているということで、フィルムのキズもノイズも一切見られないクリーンな仕上がり。その点では全く文句のないレベルだ。イタリア語と英語の2種類が用意された音声トラックもクリアで立体感がある。映画そのものはC級クラスだが、ブルーレイの出来栄えはA級だ。
 一方、特典映像は監督のインタビューと劇場予告編2種類のみ。これは少しばかり物足りない。しかも、50分近くに及ぶ監督インタビューはハリウッド映画批判と自画自賛に終始しており、そのうえ英語があまり堪能ではないレンツィ監督がブロークン過ぎるイタリア語訛りの英語でまくし立てるばかりなので、正直なところあまり面白くない。かえって、付録ブックレットに収録されたファンゴリア編集長のコラムの方が参考になると言えよう。

 

 

ヘル・オブ・ザ・リビングデッド/ラッツ
Hell of the Living Dead (1980)/Rats: Night of Terror (1984)

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(P)2014 Blue Underground (USA)

ヘル・オブ・ザ・リビングデッド

ラッツ

画質★★★★★ 音声★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MONO/言語:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ALL/99分/制作国:イタリア・スペイン

<特典>
・メイキング「Bonded By Blood」(脚本家&共同監督クラウディオ・フラガッソ、ロッセラ・ドゥルディ、女優マルグリット・イヴリン・ニュートン、俳優フランコ・ガロファロ、オッタヴィアーノ・デラクア、マッシモ・ヴァンニ出演)
・ブルーノ・マッテイ監督インタビュー
・オリジナル劇場予告編集(インターナショナル版&イタリア版)
・ポスター&スチル・ギャラリー

ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MONO/言語:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ALL/99分/制作国:イタリア・フランス

<特典>
※メイキング・ドキュメンタリーと監督インタビューは「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」と共有
・オリジナル劇場予告編(インターナショナル版2種類、イタリア版1種類)
・ポスター&スチル・ギャラリー

監督:ブルーノ・マッテイ
製作:イザベル・ムーラ
脚本:クラウディオ・フラガッソ
   ホセ・マリア・クニレス
撮影:ジョン・カブレラ
音楽:ゴブリン
出演:マルグリット・イヴリン・ニュートン
   フランコ・ガロファロ
   セラン・カライ
   ロバート・オニール
   ギャビー・レノム
   ルイス・フォノル
監督:ブルーノ・マッテイ
製作:ジャック・レティエンヌ
脚本:クラウディオ・フラガッソ
   ハーヴ・ピッチーニ
撮影:フランコ・デリ・コリ
音楽:ルイジ・チェッカレリ
出演:オッタヴィアーノ・デラクア
   ゲレッタ・ゲレッタ
   マッシモ・ヴァンニ
   ジャンニ・フランコ
   アン=ジゼル・グラス
  
ジャン=クリストフ・ブレティニエール

 イタリア産C級エクスプロイテーション映画の監督として悪名高いブルーノ・マッテイだが、そのフィルモグラフィーの中でも比較的まともな低予算パニック・ホラー2本をカップリングしたブルーレイ。まずは、それぞれの作品の簡単な解説から始めてみよう。
 世界的なゾンビ映画ブームに便乗する形で製作された「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」。ベースは明らかにジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」のパクリだが、そこに「ソイレント・グリーン」や「食人族」などの要素も巧みに絡め、血みどろスプラッターとバイオレンス・アクションが満載のゾンビ・パンデミック映画に仕上げている。ストーリーも制作規模も安上がりだし、演出だってお世辞にも上手いとは言えないが、あの手この手のサービス精神は旺盛。それなりに楽しめる作品には仕上がっている。井出昭監督のモンド・ドキュメンタリー「残酷人喰大陸」('74)のフィルムを流用しているのもまたご愛嬌だ。
 一方の「ラッツ」は、核戦争から250年を経た地球を舞台に、廃墟で一夜を明かそうとした若者グループが人喰いネズミの大群に襲われる。当時流行していた世紀末アクションと動物パニックを合体させた作品だ。ネズミが女性の陰部から入り込んで口から飛び出すショック・シーンが有名。イタリア映画らしいゲテモノ趣味が満載で、これまたパーティ・ムービーには最適な一本である。

 で、どちらの作品も過去にDVDで発売されているが、ブルーレイは上記の米ブルー・アンダーグラウンド盤が世界初。特に「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」は驚くぐらいの高画質だ。部分的にフォーカスの甘いシーンはあるし、「残酷人喰大陸」からの流用フッテージは画質の粗さが否めないものの、それ以外は文句なしにクリーンでシャープ。そのせいで特殊メイクの安っぽさもバレバレなのだけれど(笑)。
 「ラッツ」の画質に関しては可もなく不可もなく。フィルムのキズやノイズは丁寧に取り除かれているものの、全体的には輪郭が微妙に甘くてシャープネスに欠けている。DVDに比べれば大分見栄えは良くなっていると思うが、ブルーレイとしては及第点といったところだろうか。
 特典映像の目玉は両作品のメイキングを一本にまとめたドキュメンタリー「Bonded By Blood」。脚本家であり共同監督でもあったクラウディオ・フラガッソを中心にして、両作品の主要キャストが撮影の舞台裏を振り返る。フラガッソは当時のマッテイ作品の全てで共同監督を務めていたが、本編でクレジットされるのは脚本のみという特殊な契約を結んでいたのだそうだ。超低予算で映画を作ることの苦労と限界をよくわきまえており、かなり冷静かつ客観的に両作品のことを語っている。幼い子供に生のレバーを食わせたり、撮影のためにネズミを焼き殺したりと、今じゃありえないワイルドな舞台裏エピソードの数々も面白い。
 なお、ブルーノ・マッテイ監督のインタビューは過去に米アンカーベイ版DVDに収録されたものの流用で、尺にして7分程度という短さ。それぞれの作品の予告編集やスチル・ギャラリーも収録されている。中でも、日本を含む世界中のポスターやビデオ・ジャケット、DVDジャケットを網羅したギャラリーは、なかなかのボリューム感だ。

 

 

デモンズ
Demons (1985)

DEMONS-UK.JPG DEMONS-JP.JPG
(P)2012 Arrow Video (UK) (P)2013 Eclipse/角川書店 (JP)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.66:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:B/88分/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
アウターケース収納
ジャケット4種類(リバーシブル)
ポスター2種類(リバーシブル)
フルカラー・ブックレット(8p)
コミック本「Demons 3」前編

<特典>
・製作者ダリオ・アルジェント インタビュー
・作曲家クラウディオ・シモネッティ インタビュー
・ルイジ・コッツィ インタビュー
・ランベルト・バーヴァ監督と特殊効果セルジョ・スティヴァレッティの音声解説
・スタッフ&キャストの音声解説
ブルーレイ仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.66:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA、Dolby Digital MONO/言語:英語・イタリア語/字幕:日本語/地域コード:ALL/89分/制作国:イタリア

<特典>
・ダリオ・アルジェント「デモンズ」を語る
・クラウディオ・シモネッティ「デモンズ」の音楽を語る
・オリジナル予告編
・ランベルト・バーヴァ監督と特殊効果セルジョ・スティヴァレッティの音声解説
監督:ランベルト・バーヴァ
製作:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
   フランコ・フェリーニ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
音楽:クラウディオ・シモネッティ
出演:ウルバノ・バルベリーニ
   ナターシャ・ホヴェイ
   カール・ジニー
   フィオーレ・アルジェント
   パオラ・コッツォ
   ボビー・ローズ
   ゲレッタ・ゲレッタ
   ニコレッタ・エルミ
監督:ランベルト・バーヴァ
製作:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
   フランコ・フェリーニ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
音楽:クラウディオ・シモネッティ
出演:ウルバノ・バルベリーニ
   ナターシャ・ホヴェイ
   カール・ジニー
   フィオーレ・アルジェント
   パオラ・コッツォ
   ボビー・ローズ
   ゲレッタ・ゲレッタ
   ニコレッタ・エルミ

 言わずと知れた'80年代イタリアン・ホラーを代表するヒット作。基本的にはゾンビ映画のバリエーションだが、こちらはゾンビではなく悪魔。血液を媒介して凶暴化するだけではなく、精神的に弱い人間も不安や恐怖によって体を乗っ取られてしまう。劇中劇の映画に登場する悪魔デモンズが映画館に解き放たれ、閉じ込められてしまった人々が決死のサバイバルに挑むという脚本構成も面白く、荒唐無稽とはいえ極めてエンターテインメント性の高い作品だ。
 ホラー映画ファンの間では実質的にダリオ・アルジェントの映画じゃないかと言われている本作だが、確かにアルジェントの影響を無視するわけにはいかないだろう。プロデュースのみならず脚本にも参加しているわけだし、出演者にも長女フィオーレを筆頭としてアルジェント絡みの役者が含まれている。音楽もゴブリンのクラウディオ・シモネッティなわけだし。だが、アクションとスピードに比重を置いたハリウッド的なアプローチは、明らかにアルジェントの作風とは異なる。その下世話な雑食性から推察しても、やはりランベルト・バーヴァが主導権を握っていたものと考えて良かろう。

 筆者が入手したのは、世界初のブルーレイ化となったアロー・ビデオの英国盤と昨年発売されたエクリプスの日本盤。画質的にはどちらも玉石混合だ。確かに過去のDVDと比べると映像の情報量は増えており、デジタル修復のおかげでキズやホコリはほとんど見られない。だが、その一方でフィルム・グレインは全体的にキツめ。カラーの発色もイマイチなため、画面全体に薄く白い膜がかかってしまったような印象を受ける。英国盤よりも日本盤の方が若干引き締まって見えるが、まあ、結局はどっこいどっこいといったところだろうか。パッと見では大差ない。
 ただ、大きく違うのは音声トラック。英国盤はイタリア語・英語ともにリニアPCMのモノラルで、随所で経年劣化によるブツブツしたノイズが目立つ。一方、日本盤はイタリア語と英語の音声トラックそれぞれ、5.1chサラウンド・リミックスのDTS-HDとモノラルのドルビー・デジタルから選ぶことができ、いずれもノイズ・フリーのクリアなサウンドを堪能することができるのだ。

 特典に関しても一長一短。ボリューム的には英国盤の方が優っているものの、ルイジ・コッツィのインタビューは「デモンズ」本編とはあまり関係のない内容なので、日本盤で削除されてしまっているのは大した問題ではないように思う。ただ、スタッフ&キャストの音声解説までオミットしてしまったのは残念。それ以外の特典は日英共通だが、オリジナル予告編は日本盤のみの収録となる。
 また、英国盤はお金のかかっている豪華パッケージも魅力だが、ただその分だけ厚みがあるため若干場所を取るのが問題(笑)。これはユーザーの好き好きだろう。封入特典のコミック「デモンズ3」はデモンズの起源を描いたオリジナル作品だが、大して面白い代物でもない。あくまでもコンテンツ重視ということを考えると、音声のクオリティで大きく差をつけた日本盤を素直にオススメしたい。

 

 

デモンズ2
Demons 2 (1986)

DEMONS2-UK.JPG DEMONS2-JP.JPG
(P)2012 Arrow Video (UK) (P)2013 Eclipse/角川書店 (JP)
画質★★★★★ 音声★★★★★ 画質★★★★★ 音声★★★★★
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.66:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:B/91分/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
アウターケース収納
ジャケット4種類(リバーシブル)
ポスター2種類(リバーシブル)
フルカラー・ブックレット(8p)
コミック「Demons 3」後編

<特典>
・特殊効果セルジョ・スティヴァレッティ インタビュー
・ルイジ・コッツィ インタビュー
・ランベルト・バーヴァ監督と特殊効果セルジョ・スティヴァレッティの音声解説
ブルーレイ仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.66:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA、Dolby Digital MONO/言語:イタリア語・英語/字幕:日本語/地域コード:ALL/91分/制作国:イタリア

<特典>
・オリジナル予告編
・ランベルト・バーヴァ監督と特殊効果セルジョ・スティヴァレッティの音声解説
監督:ランベルト・バーヴァ
製作:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
   フランコ・フェリーニ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
音楽:サイモン・ボスウェル
出演:デヴィッド・ナイト
   ナンシー・ブリリ
   コラリーナ・カタルディ・タッソーニ
   ボビー・ローズ
   アーシア・アルジェント
   ヴァージニア・ブライアント
   アントニオ・カンタフォーラ
監督:ランベルト・バーヴァ
製作:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ランベルト・バーヴァ
   ダルダノ・サケッティ
   フランコ・フェリーニ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
音楽:サイモン・ボスウェル
出演:デヴィッド・ナイト
   ナンシー・ブリリ
   コラリーナ・カタルディ・タッソーニ
   ボビー・ローズ
   アーシア・アルジェント
   ヴァージニア・ブライアント
   アントニオ・カンタフォーラ

 舞台は映画館から高層マンションへ。今度はテレビのブラウン管から解き放たれた悪魔デモンズが、封鎖されたマンション内で次々と住人たちを襲い感染を広めていく。アイディア先行であったろうことの想像に難くない、前作以上に荒唐無稽で突っ込みどころの満載なパート2だが、このほとんどコメディとも呼ぶべき悪ノリっぷりが本作の醍醐味。最初にデモンズ化するサリー役コラリーナ・カタルディ・タッソーニのブッチギレた怪演といい、ミニ・デモンズVS若妻妊婦の対決といい、バカバカしいけど楽しい見せ場がいっぱいだ。
 また、ダリオ・アルジェントの次女アーシアの映画デビュー作としても記憶される本作。若妻ハンナ役のナンシー・ブリリもその後、イタリア国内で数々の演技賞に輝く売れっ子女優になった。また、ランベルトの父マリオ・バーヴァの「処刑男爵」('72)にも出ていた往年のイケメン俳優アントニオ・カンタフォーラがアーシアの父親役で登場。前作とは別の役でボビー・ローズも出演しており、キャスティングの面でもいろいろと見どころが多い。

 で、こちらも筆者は英国盤と日本盤の両方を入手。画質はどちらもほぼ一緒だ。部分的にフィルム・グレインが強すぎて濁りの目立つシーン(特にナイト・シーン)もあるにはあるが、トータルではブルーレイとして十分なレベルの高画質。サリーの両親(父親役はランベルト・バーヴァ)の登場シーンでは画面が大きくブレるものの、これは撮影時のカメラ・ミスであってテレシネやオーサリングなどの技術的なミスではない。
 音声についても「デモンズ」と同様で、英国盤がリニアPCMのモノラルであるのに対し、日本盤はDTS-HDの5.1chサラウンド・リミックスとドルビー・デジタルのモノラルを収録。ただ、今回は英国盤の音声トラックもかなりクリーンな状態で、非圧縮な分だけサウンドにも重量感がある。あくまでも再生環境や好みの問題であって、どちらが良いか悪いかは断言できないかもしれないけど。
 特典も微妙なところ。英国盤に収録されているセルジョ・スティヴァレッティのインタビューは、過去に米アンカー・ベイ版DVDに収録されていたものと一緒で、内容的にも音声解説のコメントと被る点が多い。また、ルイジ・コッツィのインタビューもイタリアン・ホラーの歴史を解説する内容であり、「デモンズ2」本編とは殆ど関係がない。なので、オリジナル予告編と音声解説のみの日本盤でも特に損した気にはならず。あえて両方手に入れる必要もないかなといった感じだ。

 

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