イタリアン・カルト・ホラー傑作選
PART 2

 

エイリアンドローム
Contamination (1980)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2003 Blue Underground (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★★
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/6.1chDTS-ES・5.1ch サラウンドEX・2.0ch サラウンド・モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/95分/製作:イタリア・西ドイツ

特典映像
L・コッツィ監督 インタビュー
メイキング・ドキュメンタリー(劇場公開当時製作)
オリジナル劇場予告編
ポスター&スチル・ギャラリー
グラフィック・ノベル(DVD-ROM)

監督:ルイジ・コッツィ
製作:クラウディオ・マンチーニ
脚本:ルイジ・コッツィ
   エリッヒ・トメク
撮影:ジュゼッペ・ピノーリ
特殊効果:ジョヴァンニ・コリドーリ
音楽:ゴブリン
出演:イアン・マカロック
   ルイーズ・マーロー
   マリーノ・マゼ
   ジーグフリード・ラウヒ
   ジセラ・ハーン
   カルロ・デ・メーヨ
   カルロ・モンニ

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ニューヨークの港へ到着した無人の貨物船カリビアン・レディ号

アーリス警部(M・マゼ)は細菌感染を疑う

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音を立てながら不気味に光る卵形の物体を発見

緑色の液体に触れた人間は体内から破裂する

 イタリア映画界では極めて少数派の熱心なSFマニアであり、現在はダリオ・アルジェントの盟友としてホラー・ショップ“Profondo Rosso”の店長を務めるルイジ・コッツィ監督が手掛けたSFスプラッター。人間の体を破裂させてしまうエイリアンの卵による地球侵略の恐怖(?)を描いた作品だ。
 ニューヨークの港に到着した無人の貨物船から、緑色の奇妙な物体が大量に発見される。それは一見すると卵のような形をしているが、熱で温まると音を立てて光りはじめ、最終的には破裂してしまう。そして、その液体に触れた人間もまた、体内から木っ端微塵に破裂してしまうのだ。一体誰が何の目的で運んできたのか?
 やがて、その液体の成分が地球上には存在しないバクテリアであることが判明。しかも、かつて火星に降り立った調査隊が似たような物体を目撃していたことが分る。陸軍の女性科学者と第一発見者の刑事、そして火星探検に携わった元宇宙飛行士の3人は、貨物船のルートをたどって一路南米はコロンビアへ。そこで彼らが目撃したのは、世にも醜悪な一つ目のエイリアン“サイクロプス”だった・・・!
 ということで、当時の『エイリアン』ブームに便乗して作られた映画であることは明白だろう。ただ、コッツィ監督自身は『エイリアン』にヒントを得たことを認めつつも、『原子人間』(55)や『放射能X』(51)、『ボディ・スナッチャー/恐怖の町』(56)といった50年代のSFホラーに対するオマージュという意味合いの方が強かったと語っている。確かに、全体的なノリとしては『2001年宇宙の旅』以前の古典的SF映画の世界に近いと言えよう。つまり、当時ですら既に古臭いと感じさせるような内容の作品だったわけだ。
 そもそもストーリー展開は場当たり的で盛り上がりに欠けるし、山場が少ない分だけ余計なサイドストーリーに時間を割きすぎている。相当な低予算であったろうことも、映像を見れば一目瞭然といったところ。クライマックスに出てくる“サイクロン”のクリーチャー・デザインなんか、冗談としか思えないようなヘッポコさだ。実際、コッツィ監督もクリーチャーのお粗末な出来栄えは悩みのダネだったらしく、なんとかごまかそうとクライマックスでは極端に照明を落としている。
 それでも、内臓の飛び散る人体破裂シーンはなかなかショッキング。というか、欧米ではこのスプラッター描写のみで伝説化してしまったといっても過言ではないだろう。全編を通じて漂うイタリア映画らしいチープな胡散臭さも魅力。カルト映画と呼ぶに相応しいバッド・テイスト・ムービーある。

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陸軍の女性科学者ホームズ大佐(L・マーロー)

物体から出る液体は地球上に存在しない未知のバクテリアだった

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輸入会社の倉庫で緑色の物体が大量に隠されていた

元宇宙飛行士ハバート(I・マカロック)の協力を得るホームズ大佐

 ニューヨークの港に無人の貨物船カリビアン・レディ号が到着した。細菌感染を疑ったニューヨーク市警のアーリス警部(マリーノ・マゼ)は、完全防護した医師団と共に船内へ調査に入る。そこには、まるで体内から破裂したかのように無残な姿となった船員たちの死体が。
 さらに船底へと足を踏み入れたアーリス警部らは、大量のコーヒー豆会社のダンボールを発見する。その一つが床に転がっており、中から緑色の奇妙な物体が飛び出していた。それはまるで卵のようだ。見ると、その物体の一つが高熱の配管の下に落ちている。それは不気味な音を立てながら怪しく光っていた。
 部下の一人がその物体を持ち上げた瞬間、それは勢いよく破裂。医師団は中から飛び散った液体を浴びてもがき苦しみ、挙句の果てに体の内部から破裂してしまった。一人生き残ったアーリス警部は、慌ててカリビアン・レディ号を後にする。
 すぐさまアメリカ陸軍が調査に乗り出した。陣頭指揮を取るのは女性科学者ホームズ大佐(ルイーズ・マーロー)。彼女は瞬間冷凍させた物体を研究施設へ持ち帰り、その成分を検証させた。すると、それは卵ではなく未知のバクテリアだという。ホームズ大佐は機動部隊を率いて、ブロンクスにある輸入元の会社へと乗り込む。すると、そこには既に大量の物体が運び込まれていた。しかし、社員とおぼしき怪しげな男たちは自ら液体を浴びて破裂し、証言を得ることは出来なかった。ホームズ大佐は、その場で物体を全て焼却処分させる。
 さらなる検証の結果、バクテリアは地球上に存在するものではないことが分った。ホームズ大佐はふと、2年前に行われた火星調査のことを思い出す。宇宙飛行士の一人が、緑色の卵のような物体を火星で見たというのだ。しかし、火星に生物などいるはずがない。その宇宙飛行士は狂人のレッテルを貼られ、精神病院送りとなってしまった。
 宇宙飛行士の名はイアン・ハバード(イアン・マカロック)といい、現在はニューヨーク市内のアパートで暮らしている。彼を狂人扱いした張本人は、他でもないホームズ大佐だった。彼女は自らハバートの自宅へ赴き、事件捜査への協力を願い出る。
 ハバードによると、火星へ着陸した彼と同僚のハミルトン(ジーグフリード・ラウヒ)は洞窟の中で緑色の物体を発見し、さらに眩いばかりの奇妙な光を目撃したという。その光はまるで人間の心を操ろうとしているかのようだった。ハバートはマインドコントロールに抵抗したが、ハミルトンは操られるがままとなったのだ。
 当時のホームズ大佐は、論理的なハミルトンの言葉を信用してしまった。すっかり騙されたのだ。しかし、ハミルトンは6ヶ月前に飛行機事故で死亡しており、今回の事件とは関係が内容に思われた。いずれにせよ、早急に真相を解明しなくてはならない。ホームズ大佐は上層部の了解を取り、ハバートとアーリス警部を連れて、カリビアン・レディ号が出航した南米コロンビアへと向かうことにする。
 実は、死んだはずのハミルトンはコロンビアで生きていた。飛行機事故は偽装されたものだったのだ。彼は愛人ペルラ(ジセラ・ハーン)が社長を務めるコーヒー豆会社を隠れ蓑にして、緑色の物体を世界各地へばら撒こうとしていた。彼はハバートらがコロンビア入りしたことを知り、秘かに罠を仕掛ける。
 ホテルでシャワーを浴びていたホームズ大佐は、何者かによってシャワールームに閉じ込められてしまう。しかも、足元には今にも破裂しそうな緑色の物体が。彼女は間一髪のところで、ハバートとアーリス警部に救出された。
 すぐさま、ホームズ大佐とアーリス警部は輸入業者を装ってコーヒー豆会社の工場へ。だが、二人の正体を知っているハミルトンとペルラによって捕えられてしまう。一方、ハバートはセスナ機に乗ってコーヒー農園へと向かった。ところがセスナ機には細工がされており、農場の近くに墜落してしまう。奇跡的に無傷だったハバートは農園の内部へ忍び込んだ。案の定、そこには緑色の物体が大量に育てられていた。彼はコーヒー豆会社スタッフに成りすまし、一路工場へと向かう。
 その頃、ホームズ大佐とアーリス警部はハミルトンによって工場の地下へと連れて来られていた。暗闇の奥に光る怪しげな目。それは世にも醜悪な姿をした一つ目エイリアン“サイクロプス”だった。果たして、ホームズ大佐らの運命やいかに・・・!?

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ハバートは探索に向かった火星で緑色の物体を目撃していた

南米コロンビアに到着したホームズ大佐、アーリス警部、ハバート

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大佐を巡ってライバル心を燃やすハバートとアーリス警部

緑色の物体と一緒にシャワールームに閉じ込められたホームズ大佐

 もともと純粋なSFホラーを撮るつもりだったコッツィ監督だが、プロデューサーのクラウディオ・マンチーニは『007』シリーズのようなスパイ物が好きだったという。コロンビアに舞台を移してからの後半がアクション主体で進行するのも、そのプロデューサーの意向を汲んでのことだったようだ。
 また、コッツィ監督は当初“Alien Arrives on Earth”というタイトルを考えていたが、これまたマンチーニの意向で“Contamination”に変更を余儀なくされた。これはもともと、当時マンチーニが『チャイナ・シンドローム』に影響されて企画したものの頓挫した映画のタイトルだったという。コッツィ監督自身はこのタイトルに不満だったことから、“Alien Contamination”というタイトルでアメリカ公開された際には思わずほくそ笑んだらしい。
 なお、撮影期間はトータルでたったの5週間。物語の前半はニューヨークが舞台となっているが、実際にニューヨークでロケしたのはたったの2日間だった。コロンビアでのロケも実質1週間程度。あとは全てイタリア国内で撮影された。冒頭に出てくるニューヨークの港も、実はイタリアの漁港がロケ地である。
 コッツィ監督と共同で脚本を手掛けたのは、ジェス・フランコ監督のスラッシャー映画『ブラディ・ムーン/血ぬられた女子寮』(81)を書いたドイツの脚本家エリッヒ・トメク。製作のクラウディオ・マンチーニは『ウエスタン』(69)や『ミスター・ノーボディ』(73)など一連のセルジョ・レオーネ作品に携わってきた人物で、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)でも製作を担当。本作ではチャールズ・マンシーニという英語名を名乗っている。
 さらに、『未来帝国ローマ』(83)や『マーダロック』(85)などのルチオ・フルチ作品で知られるジュゼッペ・ピノーリが撮影監督を担当。アルジェントやレオーネ、フルチらの作品を手掛けたイタリアを代表するSFXマン、ジョヴァンニ・コリドーリが特殊効果に名を連ねている。
 そのほか、パゾリーニやフェリーニ、レオーネなど巨匠の作品には欠かせない大御所ニノ・バラーリが編集を、セルジョ・マルティーノやフルチ作品の常連であるマッシモ・アントネッロ・ゲレンが美術デザインを、ジョー・ダマート作品などを手掛けたジャコモ・カーロ・カルドゥッチがセット装飾を担当。
 また、音楽スコアには当時分裂状態にあったゴブリンが参加。クラウディオ・シモネッティら中核メンバーが不在ということもあって、『サスペリアPART2』(75)や『サスペリア』(77)の頃のような精彩が全く感じられないのは残念だ。

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コーヒー豆会社の社長ペルラ(G・ハーン)と面会する大佐たち

コーヒー農園で大量の物体を発見するハバート

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ハミルトン(S・ラウヒ)は物体を世界中に輸出していた

遂に正体を現したエイリアン“サイクロプス”

 さてさて、本作のキャストについてだが、実は当初フルチの『サンゲリア』(79)の主要メンバーをそのまま起用する予定だったらしい。というのも、本作の製作会社と『サンゲリア』の製作会社のオフィスが、たまたま同じビルの同じフロアにあったことから、プロデューサーのマンチーニは『サンゲリア』が世界中で大儲けしているという情報を耳にしていたのだ。とはいえ、結果的にスケジュールを押さえることが出来たのは、主演のイアン・マカロックただ一人であった。
 本作では元宇宙飛行士ハバート役を演じているマカロック。もともとイギリスのテレビ・ドラマを中心に出演していた地味な俳優だったが、フルチの『サンゲリア』をきっかけに名前が知られるようになった人物だ。ただ、その後の代表作は本作と『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』(80)くらいのもの。主役を張るにはちょっと華に欠ける役者だ。
 一方、2枚目半の軟派なアーリス警部役を飄々と演じているのは、ヴィスコンティの『山猫』(63)やゴダールの『カラビニエ』(64)、マルコ・ベロッキオの『ポケットの中の握り拳』(65)など巨匠の名作に数多く出演した名優マリーノ・マゼ。本作のようなB級映画にもワリと躊躇することなく出てしまう人だ。
 また、ルイーズ・モンローという変名で女性科学者ホームズ大佐役を演じているルイーズ・マーローは、モントリオール映画祭主演女優賞など数多くの映画賞を獲得しているカナダの有名なフランス系女優。もともと監督はキャロライン・マンローにこの役を演じさせるつもりだったらしいが、“女性科学者がセクシー美女だなんて不自然だ”というマンチーニの横槍で変更を余儀なくされたらしい。
 さらに、エイリアンに操られる男ハミルトンを演じているのは、『栄光のル・マン』(71)でスティーヴ・マックイーンのライバル役を演じていたドイツ人俳優ジーグフリード・ラウヒ。『パットン大戦車軍団』(70)や『鷲は舞いおりた』(76)、『最前線物語』(80)などハリウッド製戦争映画のドイツ人将校役としてもお馴染みの人である。
 そのほか、ジェス・フランコ監督の『人喰い魔神・裸女狩り』(80)にも出ていたドイツ人女優ジセラ・ハーン、大女優アリダ・ヴァリの息子でフルチの『地獄の門』(80)などにも出ていたカルロ・デ・メーヨが顔を出している。

 

 

猟奇!喰人鬼の島
Antropophagus (1980)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済
(日本盤DVDと北米盤DVDは別仕様)

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(P)2005 Shriek Show (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤2枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:1/88分
/製作:イタリア

特典映像
J・ダマート監督ドキュメンタリー
G・イーストマン&Z・ケローヴァのインタビュー
アメリカ公開版オープニング
オリジナル劇場予告編集
ポスター&スチル・ギャラリー
監督:ジョー・ダマート
製作:ジョー・ダマート
   ジョージ・イーストマン
   オスカル・サンタニエロ
脚本:アリスティド・マッサチェージ
   ルイジ・モンテフィオーリ
撮影:エンリコ・ビリビッキ
音楽:マルチェロ・ジョンビーニ
出演:ティサ・ファロー
   ジョージ・イーストマン
   サヴェリオ・ヴァローネ
   ゾーラ・ケローヴァ
   セレナ・グランディ
   マーガレット・マザンティーニ
   マーク・ボディン
   ボブ・ラーセン

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旅行者グループと知り合った女性ジュリー(T・ファロー)

アラン(S・ヴァローネ)のボートで島へ向かう

 イタリア映画界きってのC級エログロ帝王ジョー・ダマート監督。ホラーからポルノに至るまで即物的で直情的な低予算映画を大量生産し続けた商売人だが、そんな彼のフィルモグラフィーの中でも、特に罰当たりな内容で悪名高い作品がこれ。ギリシャはエーゲ海の孤島を舞台に、凶暴な人喰い殺人鬼が若い美女から胎児まで手当たり次第に食い殺しまくるというお話だ。
 主人公はエーゲ海クルーズを楽しむ旅行者グループ。とある島へやって来た彼らだが、なぜだか町には人っ子一人いない。やがて、一人また一人と殺されていく仲間たち。実は、この島には発狂した人喰い殺人鬼が徘徊していたのだ・・・!
 露骨で悪趣味な残酷描写で熱狂的マニアを獲得したこの作品。中でも有名なのは、殺人鬼が妊婦の下半身から胎児を引きずり出して食いちぎるという前代未聞のゴア・シーンだ。実際には暗闇のロング・ショットなので胎児の姿形はよく分らないし、カット自体がワリと短いこともあって今見ると大してショッキングでもないのだが、劇場公開当時は上映禁止騒ぎに発展する国まであったというぐらい物議を醸したらしい。
 他にも、いたいけな少女の首筋を思いっきり食いちぎったり、殺人鬼が腹からこぼれ落ちた自分の内臓をむさぼり食ったりと、良識のかけらも感じられない残酷描写の数々が最大の売り。というか、それ以外は見るべきところの全くない作品である。
 “この映画を作った唯一の理由は金儲け。なにか芸術的な志をもって作ったわけじゃない”とは製作・脚本に携わった俳優ジョージ・イーストマンことルイジ・モンテフィオーリの弁だが、完成した作品はまさにその言葉を裏付けるような出来栄えだ。
 なので、残酷描写以外は文字通りの手抜き仕事。ストーリーなんて殆んどあってないようなものだし、上映時間を稼ぐために挿入されたドラマ・パートやサスペンス・シーンなどもひたすら退屈。そもそも、スリルや緊張感なんぞ微塵もありゃしない。
 ただ、それでもなおこの作品がマニアを魅了するのは、作り手側の志が低いからこそ発揮される“開き直りパワー”みたいなものなのだろう。どうせ俺らが作ってるのは下らないC級映画なんだし、罰当たりだろうとなんだろうと好き勝手やっちまうぜ、とったノリの乱暴な“いかがわしさ”こそが本作の身上。くれぐれも、それ以上は期待しないように(笑)
 なお、英語版とイタリア語版では一部登場人物の名前が違っている。以下のストーリー紹介では、イタリア語版に出てくる登場人物名を参考にした。

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漠然とした不安を抱くカロル(Z・ケローヴァ)

妊婦のマギー(S・グランディ)が足を捻挫してしまった

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なぜか町はもぬけの殻だった

島で一晩を過ごすことになった一行


 エーゲ海に浮かぶ小さな美しい島。ドイツ人の若いカップルが海水浴を楽しんでいる。しかし、無人のボートへ近づいた女性が何者かに海中へと引きずりこまれ、海岸で日光浴をしていた男性は脳天を鉈で真っ二つにされる。
 その島へ向かおうとしている女性がいた。女子大生のジュリー(ティサ・ファロー)である。彼女はエーゲ海クルーズに出かける男女グループと知り合い、彼らのボートに乗せてもらうこととなった。
 ボートを所有するのは医大生のアラン(サヴェリオ・ヴァローネ)。ジュリーはハンサムで逞しい彼に惹かれる。だが、軟派なお調子者のダニエル(マーク・ボディン)もジュリーに興味がある様子。ダニエルに横恋慕するアランの妹カロル(ゾーラ・ケローヴァ)は面白くなかった。
 だが、それ以上にカロルが懸念していたのはタロット占いの結果だ。それは、自分たちを待ち受けている恐ろしい運命を暗示していた。彼女はジュリーを疫病神扱いし、島へ行くことにも反対するが、アランは笑って相手にしなかった。
 かくして島へ到着した一行だったが、妊婦のマギー(セレナ・グランディ)が足首を捻挫して動けなくなってしまった。夫のアーノルド(ボブ・ラーセン)は身重の妻を心配するが、ジュリーを町へ送り届けてくるだけだという軽い気持ちもあって、彼女一人を船に残して上陸する。
 ジュリーは、3日前に島へ上陸したフランス人夫婦の娘の子守役をするためにやって来た。ところが、なぜだか町はもぬけの殻。一行は二手に分かれて住民を探したところ、ダニエルとカロルは建物の中から自分たちを見つめる一人の女性を発見する。そのアパートへ入ったところ、そこには腐敗した死体が残されていた。
 いったいこの島で何があったのか?一行は急いで港へと戻ったが、マギーが残っているはずのボートは沖へと出てしまっていた。彼らは、仕方なくフランス人夫婦の住む屋敷へと向かう。島に潜む何者かがマギーを連れ去ったことも知らずに。
 夜になると島は激しい嵐に見舞われた。眠っていたジュリーは物音に気付いて目を覚ます。ダニエルと共に暗闇の屋敷内を探索するジュリー。すると、キッチンの隅のワインを入れた樽の中から何者かが飛び出してきて、ダニエルの背中を包丁で突き刺した。
 それはフランス人夫婦の15歳の娘アリエット(マーガレット・マザンティーニ)だった。両親は何者かによって殺され、彼女は恐怖に震えながら樽の中に身を隠していたのだ。目が見えないために犯人が誰なのかは分からないが、それは全身から血の臭いを漂わせた凶暴な男だったという。
 ダニエルの傷は浅かったものの、念のために消毒薬が必要だった。アランとアーノルドは、町の薬局へ行って取ってくることにする。ジュリーはアリエットの看病をしていたが、そんな彼女にダニエルが強引に迫ってくる。その現場を目撃したカロルが屋敷を飛び出した。ジュリーは彼女の後を追う。
 屋敷に残されたのはダニエルとアリエット。二人は屋敷の中に何者かが潜んでいることに気付いていない。それは狂人のような目と醜悪な顔をした、身長2メートル近くの巨大な男(ジョージ・イーストマン)だった。男はダニエルを食い殺して去っていく。
 カロルを見失ったジュリーはアランとアーノルドの二人と合流。屋敷へ戻ってきたところ、恐怖に震えるアリエットと無残なダニエルの死体を発見する。この島には何か恐ろしい怪物がいるようだった。
 翌朝、ジュリーたちは近隣の屋敷へ移動することにする。そこは、クラウス・ボードマンという島の有力者の邸宅だった。だが、数ヶ月前にボードマンは妻子とクルーズに出かけたまま遭難してしまい、残された妹ルース(ルビーナ・レイ)は発狂してしまったという。
 屋敷へとやって来た彼らだったが、いきなり階段の上から女性が首をつって自殺した。それは屋敷の住人ルース。ダニエルとカロルが町中で遭遇した謎の女性だった。カロルは屋敷の中で休んでいた。彼女によると、ルースはひたすら何かを謝っていたという。
 その時、窓の外を見たアーノルドは自分たちのボートが潮に流されて港へ戻ってくる様子を目撃する。マギーの無事を確認するため、彼はアランと一緒に港へと向かった。その途中で、アランとはぐれた彼はマギーの靴を発見する。
 妻はどこか近くにいるに違いない。そう直感したアーノルドは、古代ローマ時代の墓地へとたどり着く。そこには腐敗した遺体が多数散乱していた。その中にマギーの姿が。彼女はまだ生きていた。だが、そこへ例の大男が現われる。彼はアーノルドを殺害し、マギーを絞め殺した上に彼女の腹から胎児を引きずり出してむしゃぶりついた。
 その頃、ジュリーとカロルは自殺したルースの日記を発見する。実は、彼女の兄クラウスは生きていた。妻子と一緒にボートで遭難した彼は、衰弱死した実の息子の肉を食ったがために発狂してしまったのだという。そう、島を徘徊している大男こそ、人喰い殺人鬼と化してしまったクラウスだったのだ・・・!

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ワインの樽の中に盲目の少女が隠れていた

少女はジュリーの知り合いアリエット(M・マザンティーニ)だった

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人喰い殺人鬼(G・イーストマン)がダニエルを食い殺す

一行はボードマン家の屋敷へとやって来た


 冒頭の海岸シーンは明らかに『ジョーズ』のパクリ。殺人鬼の正体を考えれば、女性が海中へ引きずり込まれて殺されるのは無理があり過ぎるのだが、この手のC級ホラーに理屈など不要。とりあえず、『ジョーズ』をパクることが先決だ。
 万事が万事そんな調子なので、殺人鬼がなぜマギーだけをすぐ殺さずに最後まで取っておいたのかとか、目の見えないアリエットがどうやって巨大な樽の中に身を隠したのかとか、余計なことを詮索しちゃいけない。そんなの全て作り手側の都合だと分りきっているのだから(笑)。
 ちなみに、殺人鬼が胎児にかぶりつくシーンでは食用ウサギの肉を使用。舞台となる墓地は、実在する古代ローマ時代の地下墓地だという。そこには2000年前の本物の人骨が散乱していたらしい。ダマート監督はスタッフに命じてニセモノの人骨を大量に用意させ、それを持ち込んで量を増やしてみせる工夫をした。ところが、撮影終了後にスタッフは本物の人骨まで一緒に回収してしまい、墓地へ返すに返せぬままダマート監督は自宅へと持ち帰ってしまったという。
 そんなダマート監督は本名のアリスティド・マッサチェージ名義で脚本に参加。だが、主だったストーリーを考えたのは、殺人鬼役を演じているジョージ・イーストマンことルイジ・モンテフィオーリである。その基となったのは、ダマート監督の手元にあった一冊の脚本。その出来栄えがあまりにも酷いことから書き直しを頼まれたモンティフィオーリは、作中にあった“海で遭難した一家の父親が息子の肉を食う”という部分だけを残し、そのエピソードを軸にして新しいストーリーを考えたのだという。
 ただ、彼自身は本作の出来栄えをあまり誇らしくは感じていないようだ。遊び感覚で作った映画だから撮影自体は非常に楽しかったものの、“決して好きな映画ではない”と正直な胸の内を語っている。あくまでも、生活のために撮った映画に過ぎないというわけだ。
 それはダマート監督にとっても同じことだったろう。撮影監督として名をなした後、低予算映画の監督や製作者として様々な変名を駆使しながら大量の作品を残した彼は、自分の撮る映画を芸術とは無関係のものと割り切っていたという。
 なので、タランティーノ以降のイタリア産B級映画再評価の流れについても、生前の彼は“一部のマニアたちの単なるノスタルジーに過ぎない。我々が過去に作った映画は、どれも取るに足らないものばかりさ”と自嘲気味に語っている。それは、“私の美徳は謙虚さだ”と自負する彼ならではの謙遜なのかもしれないが。
 なお、『猟奇変態地獄』(77)や『ビヨンド・ザ・ダークネス』(79)などのダマート作品でカメラ助手を務めていた愛弟子エンリコ・ビリビッキが、本作では撮影監督を担当。『真昼の用心棒』(66)や『マッキラー』(72)などフルチ作品で知られるオルネラ・ミケーリが編集を、ダマート作品の常連エンニオ・ミケットーニが美術デザインと衣装デザインを手掛けている。
 さらに、『西部悪人伝』(70)や『西部決闘史』(71)などマカロニ・ウェスタンで数多くの名作を残しているマルチェロ・ジョンビーニが音楽スコアを担当。本作ではよっぽど予算が足りなかったのか、全編を通じてシンセサイザーのチープなサウンドに終始しているのがちょっと寂しい。
 ちなみに、アメリカやヨーロッパ各国で物議を醸しながらも興行的には大成功を収めた本作。しかし、本国のイタリアでは大変な不評だったらしく、公開2日目で上映を中止する映画館もあったそうだ。

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ジュリーとカロルは自殺したルースの日記を発見する

アーノルド(B・ラーセン)は妻マギーの救出をはかる

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殺人鬼の正体は息子の肉を食って気が狂った父親だった

マギーの下腹部から胎児を引きずり出す殺人鬼

 ヒロインのジュリー役には、大女優ミア・ファローの実の妹であるティサ・ファロー。当時はフルチの『サンゲリア』(79)に主演した直後だったことから、そのヒットにあやかるべくキャスティングされたようだ。
 そんな彼女と惹かれあうハンサムな好青年アラン(英語版ではアンディ)には、イタリアを代表する世界的な大物俳優ラフ・ヴァローネの息子であるサヴェリオ・ヴァローネ。多くの2世俳優の例に漏れず、偉大すぎる親の名声に負けてしまった人だ。父ラフ・ヴァローネは存在感も演技のスケールも大きな名優だったが、そのカリスマ性を全く受け継がなかったのは致命的だったと言えよう。
 アランの妹カロル役には、フルチの『ザ・リッパー』(82)やウンベルト・レンツィの『人喰族』(81)などで知られるチェコ出身のカルト女優ゾーラ・ケローヴァ。盲目の少女アリエット(英語版ではヘンリエッタ)役を演じているマーガレット・マザンティーニ(クレジットはマーガレット・ドネリー名義)は、その後脚本家や小説家としてイタリアでは有名になった。
 また、本作では80年代のイタリアを代表するセックス・シンボル、セレナ・グランディがヴァネッサ・ステイガーという変名で出演している。当時はまだ無名だった彼女だが、やはりどこか田舎臭くて垢抜けない感じだ。ゾーラ・ケローヴァによると当時のセレナは演技に関して全くの素人で、普段は忍耐強いことで知られるダマート監督も彼女にだけは苛立ちを隠せなかったという。
 そして、実の息子を食ったことで発狂した男クラウス・ボードマン(英語版ではニコス・カラマンリス)を演じるジョージ・イーストマン。本名をルイジ・モンテフィオーリというイタリア人だ。マカロニ・ウェスタンの悪役として欠かせなかった長身の個性派俳優で、自ら脚本を手掛けてジュリアーノ・ジェンマと共演した『新・さすらいの用心棒』(76)という主演作もあるスターだった。ダマート監督とは私生活でも大変親しかったらしく、数え切れないほどの作品で一緒に仕事をしている。

 

 

Rosso sangue (1981)
日本では劇場未公開
DVD・VHS共に日本未発売

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(P)2009 Mya Communications (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語・イタリア語/字幕:なし/地域コード:AL
L/94分/製作:イタリア

特典映像
なし
監督:ジョー・ダマート
製作:ジョー・ダマート
   ドナテッラ・ドナーティ
脚本:ジョージ・イーストマン
撮影:ジョー・ダマート
音楽:カルロ・マリア・コルディオ
出演:ジョージ・イーストマン
   アニー・ベル
   エドマンド・パードム
   シャルル・ボロメル
   カーチャ・バーガー
   カシミール・バーガー
   ハーニャ・コチャンスキー
   イアン・ダンビー

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飛び出た内臓を手で押さえる謎の大男(G・イーストマン)

エングルマン刑事(C・ボロメル)は男がギリシャ人だと気付く

 『猟奇!喰人鬼の島』を世界的にヒットさせたダマート監督とジョージ・イーストマンのコンビが、その続編として製作したのがこれ。“Antropophagus 2”というタイトルで劇場公開された国もあったようだが、実際はジョージ・イーストマンが気の狂ったギリシャ人の殺人鬼を演じるという以外は何一つ共通点のない作品だ。
 今回はアメリカの小さな田舎町を舞台に、血に飢えた凶暴な殺人鬼が次々と住民を血祭りに上げていく。やはりストーリーは殆んどあってないようなもの。一応、半身不随の少女とその幼い弟が殺人鬼と対決する後半に、若干のアイディアがひねってあるという程度だ。
 それとて、結果的にはジョン・カーペンター監督の傑作『ハロウィン』(78)の露骨なパクリ。“書いているうちにだんだんやる気を失った”というジョージ・イーストマンの脚本は、残念ながら知性もオリジナリティも全く感じられない退屈な代物と言えよう。
 唯一にして最大の売りである残酷シーンにしても、その大半がフルチの『地獄の門』(80)やアントニオ・ビドーの『美人ダンサー襲撃』(77)といった他作品のコピー。だが、オリジナル以上に過剰で下世話なスプラッター描写を心がけているのは、さすがエログロ帝王ジョー・ダマートといったところだろうか。たとえ使い回しのチープなアイディアでも、とりあえずの勢いだけでそれなりに見えてしまうもんである。
 そんなこんなで、前作同様に残酷シーン以外は全くの手抜き仕事。映画作品としては酷い出来栄えとしか言いようがないものの、やはりダマート印のいかがわしさがマニアの琴線に触れる。力技的なクライマックスのショック・シーンも含めて、この手のクズみたいな低予算映画が好きな人なら退屈しない作品かもしれない。

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警察は男の様子を見ていた牧師(E・パードム)を尋問する

手術用ドリルで頭を突き刺される看護婦

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男は町へと飛び出してしまった

精肉工場の従業員も殺される

 森の中を一人の男(ジョージ・イーストマン)が必死の形相で走っている。その後を追う中年の牧師(エドマンド・パーダム)。男はとある一軒家の門をよじ登ろうとして、牧師に足をつかまれた。門の柵の先端が男の腹に突き刺さる。
 その頃、屋敷の中ではベネット家の人々が平凡な日常を過ごしていた。そこへ入り込んできた男は、腹からこぼれ落ちた内臓を手で押さえながら床に倒れる。平和な家庭に絶叫が響き渡った。
 男は病院へと担ぎ込まれた。緊急手術を行った医師は驚きを隠せない。男は内臓が外へ飛び出したのにも関わらず驚異的な速度で回復し、しかも傷口の凝結が通常では考えられないほど早かった。その上、手術中に意識を取り戻しても平気な様子だった。
 事件の連絡を受けて病院へ駆けつけたエングルマン刑事(シャルル・ボロメル)は、男の衣服からギリシャの通貨を見つけて首をひねる。ギリシャ人の男が、こんなアメリカの田舎町で何をしていたのか?
 手術は無事に終った。その様子を例の牧師が物陰から見ていた。警察は牧師の行動を不審に思って尋問をする。すると、手術室から大きな物音が。エングルマン刑事が駆けつけると、看護婦が手術用のドリルで頭に穴をあけられて絶命しており、男は姿を消していた。
 牧師は男の正体を語り始める。彼はミコス・ステノポリスといい、生化学者でもある牧師の病院で治療を受けていた患者だった。ところが、放射能を使った実験治療の影響で頭が狂ってしまい、手当たり次第に人を殺す殺人鬼となってしまったのだ。病院を脱走してアメリカへとやって来たミコスを追って、牧師はこの町へとたどり着いたのだという。
 しかし、放射能の影響でミコスの体は驚異的なまでに進化を遂げていた。どんなに重傷を負っても、すぐに元通りとなってしまう。彼を殺すには頭部を銃で撃ち抜くか損傷させる以外に方法はなかった。生憎今夜はアメフトのテレビ中継で人が出払っており、警察本部からの応援は明日の朝になってしまう。エングルマン刑事は牧師や新米刑事を従えて、自ら殺人鬼狩りに乗り出さねばならなくなった。
 その頃、町へと飛び出したミコスは精肉工場の従業員を殺害し、さらに暴走族のリーダー(ミケーレ・ソアヴィ)を血祭りに上げる。そんな彼がたどり着いたのは、あのベネット家の屋敷だった。
 そのベネット家では、父親(イアン・ダンビー)と母親(ハーニャ・コチャンスキー)が友人宅のパーティへと招かれていた。留守番をするのは幼い長男のウィリー(カシミール・バーガー)とベビーシッターのペギー(シンディ・リードベター)、そして半身不随でベッドに寝たきりの姉カーチャ(カーチャ・バーガー)の3人だった。今夜は病院の看護婦エミリー(アニー・ベル)がカーチャの世話をしに来るはずだったが、どうやら遅刻しているようだ。
 犬を外へ出そうと玄関の扉を開けたペギーが頭をかち割られた。その直後に、エミリーが屋敷へと到着する。キッチンでミコスの姿をみかけたウィリーが“ブギーマンが出た”と騒ぐが、いつもウィリーの悪戯に手を焼いているエミリーやカーチャは真に受けない。
 しかし、病院から殺人鬼が町を徘徊しているとの連絡を受けたエミリーは、念のために屋敷内を見て回った。すると、物置部屋の中でペギーの惨殺死体を発見。電話が不通になってしまったことから、彼女は助けを呼ぶためにウィリーを外へと逃がす。
 カーチャの部屋へ立て篭もるエミリー。もの凄い力で押し入ろうとする殺人鬼ミコス。そこへ、心配したウィリーが戻ってきてしまった。殺人鬼がウィリーのもとへ向かったことに気付いたエミリーは彼を助けようとして、反対にオーブンで上半身を丸焼きにされて殺される。ウィリーは再び外へと逃げた。
 かくして、屋敷の中に残されたのは半身不随のカーチャと殺人鬼のみ。果たして、カーチャの運命やいかに・・・!?

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牧師によれば、男は頭を破壊しなければ死なないという

倒れた男に近づく暴走族のリーダー(M・ソアヴィ)だったが・・・

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留守番をするウィリー(K・バーガー)と姉カーチャ(K・バーガー)

ベビーシッターのペギー(C・リードベター)も殺される

 いろいろと事件のバックストーリーを設定しておきながら、それが殆んど物語進行の上で生かされていないのは、やはり脚本を書いたジョージ・イーストマンのやる気のなさの表れか。どうやって気の狂ったミコスが遠く離れたアメリカへとやってきたのか?という素朴な疑問も含めて、ビックリするくらい大雑把にストーリーが展開していく。はなからディテールに注意を払うようなつもりなど一切なかったのだろう。
 今回はピーター・ニュートンという名前で演出を手がけたダマート監督は、リチャード・ホーラーという別名で撮影監督も担当している。脚本のジョージ・イーストマンも、本作ではジョン・カートという変名を使用。ちなみに、共同製作者としてクレジットされているドナテッラ・ドナーティは有名な製作者エルマンノ・ドナーティの娘で、『猟奇変態地獄』(77)や『地獄の報酬』(78)などダマート監督作品の助監督を長年務めた女性である。
 また、『食人帝国』(80)や『エニグマ怒霊界』(88)、『ザ・トレイン』(89)など80年代のイタリア産B級ホラーには欠かせない作曲家カルロ・マリア・コルディオが音楽スコアを担当。前作のマルチェロ・ジョンビーニ同様、チープなシンセサウンドでお茶を濁している。

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何も知らずに屋敷へ到着した看護婦エミリー(A・ベル)

殺人鬼と遭遇してしまったウィリー

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エミリーは助けを呼ぶためウィリーを外へ逃がす

殺人鬼はどこに隠れているのか・・・!?

 今回は特殊メイクなしで殺人鬼役に挑んだジョージ・イーストマン。確かにもともと強烈な個性を持った俳優だし、一度見たら忘れられないような顔つきではあるのだが、なんかもうちょっと工夫が欲しかったというのが正直なところ。
 また、一応ヒロイン役として70年代ヨーロッパを代表するセックス・シンボル、アニー・ベルがクレジットされているものの、あっという間に頭部を丸焦げにされて殺されるのにはガッカリした。しかも、“愛の妖精”と呼ばれた全盛期に比べると、別人としか思えないような“普通のおばさん”ぶり。いろいろな意味で期待を裏切られるキャスティングだったと言えよう。
 一方、ロリコン映画『小さな唇』(78)のロリータ役で知られるドイツ人女優カーチャ・バーガーが、真のヒロインとも言える半身不随の少女カーチャ役を演じて奮闘。はっきり言って演技力はゼロに等しいものの、血まみれ姿で殺人鬼と格闘するクライマックスはなかなか印象的だった。彼女はマカロニ・ウェスタンでお馴染みの悪役俳優ウィリアム・バーガーの娘で、本作の母親役を演じている歌手ハーニャ・コチャンスキーは実の母親、さらに弟ウィリー役のカシミール・バーガーも実の弟である。
 その他、往年のハリウッド俳優エドマンド・パーダム、イタリア産B級映画で活躍したフランス人俳優シャルル・ボロメル、イタリア映画界で英語版吹替の製作に携わっていたイアン・ダンビー、イタリア版『プレイボーイ』のプレイメイトだったシンディ・リードベターなどが顔を出している。
 なお、暴走族のリーダー役としてミケーレ・ソアヴィが出演しているのは、イタリアン・ホラー・ファンにとって要注目のポイントだろう。後にダマート製作の『アクエリアス』(87)で監督デビューすることになるソアヴィだが、これがダマートとの初めての仕事だったという。

 

 

死霊の暗殺/エトルスカン
Assassinio al cimitero Etrusco (1982)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2008 Mya Communications (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語・イタリア語/地域コード:ALL/98分/製作:イタリア・フランス

特典映像
オープニング別バージョン
未公開シーン集
ポスター・ギャラリー
監督:セルジョ・マルティーノ
製作:ルチアーノ・マルティーノ
原案:エルネスト・ガスタルディ
   ダルダノ・サケッティ
脚本:エルネスト・ガスタルディ
   マリア・キアネッタ
   ジャック・レティエンヌ
撮影:ジャンカルロ・フェランド
特殊効果:パオロ・リッチ
音楽:ファビオ・フリッツィ
出演:エルヴァイア・オードレイ
   パオロ・マルコ
   クラウディオ・カッシネリ
   マリルー・トロ
   ヴァン・ジョンソン
   ワンディサ・グイダ
   ジョン・サクソン
   ジャンフランコ・バーラ
   フランコ・ガロファーロ

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悪夢に悩まされる人妻ジョーン(E・オードレイ)

イタリアにいる考古学者の夫アーサー(J・サクソン)から連絡が

 イタリア映画界きっての娯楽映画職人セルジョ・マルティーノの手掛けたスーパーナチュラル・ホラー。オカルトから犯罪スリラー、ポリス・アクションまで様々なジャンルの要素をごった煮的に詰め込み、最後は『インディ・ジョーンズ』みたいな考古学アドベンチャー風の味付けで仕上げたという風変わりな作品だ。
 主人公は考古学者を夫に持つアメリカ人女性ジョーン。夫がイタリアで殺害されたことから現地へ向かった彼女は、事件の背後に麻薬密売組織が絡んでいることを知る。洞窟の古代遺跡に隠された大量の麻薬を巡る争いに巻き込まれたジョーン。だが、彼女が唱えた呪文で洞窟は崩壊し、関係者は全員死亡する。
 唯一生き残ったジョーンに、今度はドメリ教授という考古学者が接近。彼女は古代エトルリアの女司祭の生まれ変わりだったのだ。やがてジョーンの周りで次々と発生する連続殺人事件。果たして、それは太古の眠りから甦った呪いのせいなのか・・・!?
 実はこの映画、もともと合計3時間に及ぶ2部構成のテレビ・ミニシリーズとして製作された作品だった。ところが、完成直後に劇場用として公開されることになり、大幅な削除が施されたのである。なので、ストーリーが頻繁にジャンプしてしまい、どうもダイジェスト版的な印象が拭えない。
 しかも、第1部が犯罪スリラー風、第2部がオカルト・ホラー風として作られていたこともあって、映画の前半と後半で全く違う作品のような印象を受けてしまう。結果として、かなり支離滅裂な内容の映画に仕上がってしまったことは否めないだろう。ジャンルを問わず優れた娯楽映画を作ってきたマルティーノ監督なだけに、この出来栄えはちょっと残念。珍しくクリスチャン・プラマーという変名を使っているのも、監督自身が満足していなかったことの表れなのかもしれない。
 それでも、当時世界中で大ヒットしたばかりの『レイダース/失われたアーク』(82)にあやかった考古学アドベンチャー的ムードは良好。往年のハリウッド・スター、ヴァン・ジョンソンからイタリアの名女優マリルー・トロに至るまで豪華な顔ぶれのキャストも魅力的だ。
 なお、上記のアメリカ盤DVDでは、劇場用再編集の際にカットされた未公開シーンの一部を特典映像として収録している。こんなマイナー映画の激レア映像を見ることが出来るというのも、やはりDVD時代ならではの恩恵であろう。

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アーサーは首を180度捻られて殺害された

イタリアへやって来たジョーンと友人マイク(P・マルコ)

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伯爵夫人マリア(M・トロ)は何も知らなかった

アーサーの仕事仲間だったヘザー(W・グイダ)

 アメリカ人の人妻ジョーン・バーナード(エルヴァイア・オードレイ)は、イタリアへ行ったまま連絡が途絶えた考古学者の夫アーサー(ジョン・サクソン)の安否を心配している。しかも、彼女はこのところ不思議な悪夢に悩まされていた。古代の巫女のような格好をした自分が夫を殺害する夢だ。
 そんなある晩、イタリアにいる夫から国際電話があった。彼は古代エトルリアの墓地を見つけた、エジプトのツタンカーメンの墓以来の大発見だと興奮気味だ。しかし、その直後に電話の向うからうめき声が聞こえる。夫は何者かによって首を180度捻られて殺害されていた。
 実業家の父マリガン(ヴァン・ジョンソン)の猛反対を押し切って、ジョーンは夫の死の真相を探るべくイタリアへ飛ぶ。友人の科学者マイク・グラント(パオロ・マルコ)も同行してくれた。イタリアへ到着した彼女は、夫アーサーが滞在していた屋敷を所有する伯爵夫人マリア(マリルー・トロ)のもとを訪れる。
 マリアはアーサーの殺害に心当たりは全くないという。また、アーサーの研究仲間だった女性考古学者ヘザー(ワンディサ・グイダ)も事件に驚いている様子だった。マイクと共にアーサーの遺品をチェックしていたジョーンは、“12個目があった”という意味不明のメモ書きを発見して首を傾げる。
 さらに、アーサーは彼女に謎の首飾を残していた。それは古代エトルリアの神である“二尾のスコルピオン”をあしらったもので、恐らく遺跡から発掘されたものであった。それを身につけたジョーンは、しばしばうじ虫の幻覚を見るようになる。
 その頃、ニューヨークでは父マリガンがイタリアから届いた大量の荷物を確認していた。ところが、合計で12個あるはずの木箱が一つ足りない。そこには、ある重要な品物が隠されているはずだった。
 一方、真夜中の森で謎の老人(ルイジ・ロッシ)に出会ったジョーンは、手招きされるままに山中の洞窟へとやって来る。そこは彼女の夢の中に出てきた場所であり、古代エトルリアの神殿跡だった。ジョーンはそこで木箱を一つ発見する。中身は大量のヘロインだった。洞窟の外へ出た彼女は、何者かによって拉致される。
 ジョーンが行方不明になったとマイクから知らされた父マリガンは、一路イタリアへと飛んできた。彼はその足で伯爵夫人マリアのもとを訪れる。娘はここにいるはずだった。なぜなら、マリアも届かなかった木箱の行方を捜しているから。マリガンをおびき寄せるために娘をさらったに違いない。
 案の定、ジョーンを拉致したのはマリアだった。実は、マリガンとマリアは麻薬密輸ビジネスに関わっており、何も知らないアーサーが荷物の手配を担当していた。12個目の荷物の中身がヘロインだと知った彼は、秘かにそれを洞窟の中に隠していたのだ。そのヘロインを狙う何者かが、彼を殺害したのだろう。
 夫の殺された原因が父親にあると知ったジョーンは激怒するが、洞窟の中で木箱を発見したことを伝える。マリガンとマリアは彼女を連れて、その洞窟へ行くことにした。すると、彼らを狙う殺し屋が狙撃してくる。一行は急いで車を走らせた。
 殺し屋の正体はヘザーだった。一足先に洞窟へ到着して待ち伏せする彼女だったが、何者かによって首を180度捻られて殺害される。そこへジョーンたちが到着。ヘザーの仲間たちと銃撃戦になり、マリガンもマリアも射殺された。さらに、なにかに取り付かれたようにジョーンが呪文を唱えると、みるみるうちに洞窟が崩壊してしまう。その場に居合わせた人間は、ジョーン以外一人残らず死んでしまった。
 一命を取りとめたジョーンは、夫殺しの犯人へつながる手がかりが古代エトルリアにあると考え、つい最近発見されたばかりの遺跡へと向かった。彼女はそこで考古学者ドメリ教授(クラウディオ・カッシネリ)及びソレンセン教授(アニタ・ラウレンツィ)と知り合う。二人はジョーンの顔を見て驚いた様子だった。というのも、壁画に描かれた古代エトルリアの女司祭と瓜二つだったからだ。
 実際に壁画を見たジョーンも、あまりにも似ていることにビックリする。しかも、その女司祭の胸にはジョーンと同じ首飾が。果たして、これは何を意味するのだろうか?やがて、彼女の周囲で次々とむごたらしい殺人事件が発生し、事態は予想もしなかった方向へと展開していく・・・。

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アーサーはジョーンに古代エトルリアの首飾を残していた

老人に導かれて洞窟へとやって来たジョーン

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ジョーンの父マリガン(V・ジョンソン)とマリアは麻薬を密輸していた

アーサー殺害の理由が父にあるらしいと知って憤慨するジョーン

 欧米ではしばしばジャッロ映画としてカテゴライズされる本作。確かに動物系タイトルは往年のジャッロを彷彿とさせるものだし、連続殺人を描いていく後半もジャッロぽいと言えなくもない。が、やはり全体的なムードやオカルト的な要素を考えると、これをジャッロと呼ぶにはかなり無理があるように思う。
 原案を手掛けたのはジャッロ映画の巨匠エルネスト・ガスタルディと、イタリア産B級娯楽映画の名物職人ダルダノ・サケッティ。この二人が揃ったら鬼に金棒とも思えるのだが、本作の場合は逆に食い合わせが悪くなってしまったようだ。なお、脚本に参加したマリア・キアネッタはガスタルディの妻。ジャック・レティエンヌはフランスの映画プロデューサーである。
 その他のスタッフはマルティーノ作品の常連組。製作には兄ルチアーノ、撮影監督には名コンビのジャンカルロ・フェランド、編集にはエウジェニオ・アラビソと息子のダニエレ、美術デザインと衣装デザインにはマッシモ・アントネロ・ゲレンといった具合に、お馴染みの熟練した職人が揃っている。
 また、フルチの『サンゲリア』(79)や『ビヨンド』(80)などでお馴染みのファビオ・フリッツィが音楽スコアを担当。これがまるでゴブリンの手掛けたアルジェントの『サスペリアPART 2』(75)にソックリの仕上がりで、部分的には『ビヨンド』にも酷似したメロディとサウンドを聴くことができる。イタリアン・ホラー・マニアなら思わずニンマリとしてしまうに違いない。

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いつの間にか謎の呪文を唱え始めているジョーン

みるみるうちに洞窟は崩壊していった

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ジョーンの顔を見て驚くドメリ教授(C・カッシネリ)

ジョーンは古代エトルリアの女司祭と瓜二つだった

 ヒロインのジョーンを演じているエルヴァイア・オードレイは、アウグスト・カミニート監督の『バンパイア・イン・ベニス』(88)にも出演していたフランス人女優。ちょっとクセのあるタイプのブロンド美人だが、演技力に関しては大いに疑問の余地あり。主演女優の器ではないように感じられる。
 その友人でありジョーンに横恋慕する科学者マイクにパオロ・マルコ、ストーリー後半の鍵を握る考古学者にクラウディオ・カッシネリと、当時のイタリア産B級娯楽映画を語る上で欠かせない名物俳優二人が揃っているのは嬉しいところだ。
 さらに、サルヴァトーレ・サンペリのような名匠の作品からマカロニ・ウェスタンまで幅広く活躍した演技派の美人女優マリルー・トロが、伯爵夫人マリア役として登場。大物女優らしい存在感で作品に華を添えている。また、往年のスペクタクル史劇で活躍した女優ワンディサ・グイダの出演も、熱心なイタリア映画ファンには興味深いだろう。
 そして、この手のイタリア産B級映画に欠かせないベテラン・ゲストととして、エリザベス・テイラーと共演した『雨の朝巴里に死す』(54)などで知られる往年のハリウッド・スター、ヴァン・ジョンソンと、『燃えよドラゴン』(73)や『エルム街の悪夢』(85)でお馴染みのジョン・サクソンが出演。どちらも当時はイタリア映画への出稼ぎが多かった俳優だ。
 その他、『尼僧の背徳』(80)で生臭坊主を演じていたフランク・ガーフィールドことフランコ・ガロファーロ、フェリーニの『アマルコルド』(73)や『ジンジャーとフレッド』(85)にも出ていたルイジ・ロッシなどが顔を出している。

 

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