Groovy Italian Cinema!
PART 1

 

 何といってもイタリアはファッション、インテリア、音楽、そして女優の宝庫。特に映画界に勢いがあった60年代から70年代にかけては、お洒落でポップな作品がとても多かった。ということで、今回はそうしたお洒落でポップなイタリア映画をノン・ジャンルで紹介してみたい。

 

続・黄金の七人 レインボー作戦
Il grande colpo dei 7 uomini d'oro (1966)
日本では1966年劇場公開
VHS・DVD共に日本盤発売済

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(P)2002 King Records (Japan)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:イタリア語/字幕
:日本語/地域コード:2/97分/製作:イタリア

映像特典
キャスト・スタッフ バイオグラフィー
監督:マルコ・ヴィカリオ
製作:マルコ・ヴィカリオ
脚本:マルコ・ヴィカリオ
撮影:エンニオ・グァルニエリ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
出演:ロッサナ・ポデスタ
    フィリップ・ルロワ
    エンリコ・マリア・サレルノ
    ガストーネ・モスキン
    ジャンピエロ・アルベルティーニ
    モーリス・ポリ
    ダリオ・デ・グラッシ
    ガブリエーレ・ティンティ

 大人気の「黄金の七人」シリーズだが、その中からあえてベストを選ぶとすればこの2作目になるだろう。割りと小ぢんまりまとまっていた感のある1作目に比べて、スケールも荒唐無稽さも倍増。ロッサナ・ポデスタのファッションやお色気もパワー全開で、すこぶる楽しい娯楽映画に仕上がっている。
 奇想天外な泥棒テクニックを買われた“教授”以下お馴染みの泥棒一味が、アメリカ政府の依頼で南米共産国の独裁者を誘拐。ついでに7000トンの金塊まで頂いちゃうというのが今回のお話。007ばりの秘密兵器もバンバン登場するし、ちょっとHな大人のジョークやアルマンド・トロヴァヨーリのお洒落でグルーヴィーな音楽も満載。こういう粋で洒脱な大人のエンターテインメント、今ではさっぱり作られなくなってしまったのが残念。

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峰不二子のモデルにもなった美女ジョルジャ(R・ポデスタ)

金塊の話を聞いて全身ゴールドに変身するジョルジャ

 オープニングはイタリア国内の銀行。教授(フィリップ・ルロワ)率いる泥棒一味は、銀行の地下に眠る墓地から穴を掘って金庫の強奪を計画。ところが、あと一歩で大成功というところで、謎の組織に捕えられてしまう。
 組織の正体はアメリカ政府。教授たちの才能に目を付けたアメリカは、南米にある某共産国の革命指導者である将軍(エンリコ・マリア・サレルノ)の誘拐を依頼する。抜け目のない教授は700万ドルの報酬と武器などの提供を要求。アメリカ政府はしぶしぶ承諾する。
 アメリカ海軍の潜水艦で某国に潜入した一味。まずは美女ジョルジャ(ロッサナ・ポデスタ)が雑誌ライフの女性記者を装って将軍に接近する。ブラック・レザーのジャンプ・スーツに身を包んだジョルジャは、将軍の屋敷への潜入に成功。最初はアメリカのスパイと疑った将軍だったが、たちまち彼女のお色気の虜となってしまう。
 一方、ジョルジャに続いて上陸したアドルフ(ガストーネ・モスキン)、アルド(ガブリエーレ・ティンティ)、アルフレ(モーリス・ポリ)、アウグスト(ジャンピエロ・アルベルティーニ)は、港に停泊している船に忍び込む。実は、ここには7000トンにも及ぶ金塊が隠されていた。ついでにこいつも頂いちゃおうというわけである。というよりも、むしろこれこそ教授が今回の誘拐計画を引き受けた本当の理由だったのだ。
 ところが、得意のお色気作戦で将軍をメロメロにさせていたジョルジャは、将軍から金塊の話を聞いて作戦変更。金塊を独り占めしようと、教授からの指示を無視してしまう。そうはさせまいと、アルドたちが将軍の部下を装って邸宅に乗り込み、ひとまずは誘拐を成功させるのだったが・・・。

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クールでダンディな教授(P・ルロワ)

ユニークなガジェットも次々と登場

 本作の目玉は何と言ってもロッサナ・ポデスタ扮する女泥棒ジョルジャだろう。セクシーで、頭が良くて、気まぐれで、平気で仲間を裏切るけど憎めない猫科の女。峰不二子のモデルになったというのは有名な話だ。前作でもゴージャスなファッションと小粋な悪女ぶりを見せてくれていたジョルジャだが、今回は全てにおいてさらにパワー・アップ。ファッションだけでなく目の色までコロコロ変えて将軍を誘惑する。曰く“好きな男といると目の色が変わるの”って、ほとんどカートゥーンの領域(笑)。将軍が金塊の話をするやいなや、髪の毛から目の色、ドレスに至るまで、瞬く間にゴールドに変身してしまうのだから正直な人だ。
 監督はマルコ・ヴィカリオ。ロッサナ・ポデスタのダンナさんだ。なので、彼女の魅力を十分すぎるくらいに理解している。というよりも、妻を最高に美しく撮りたいがために作った映画なんじゃないかとさえ思えてくる。それくらい、本作のロッサナ・ポデスタは魅力的で美しい。
 前作では奇想天外な泥棒テクニックと、騙し騙されるというスリリングな駆け引きが魅力だったわけだが、本作は007を発端とするスパイ映画ブームの影響がかなり濃厚。それだけに、前作の世界観を愛するファンからは賛否両論あるようだが、個人的にはスパイ映画やコミック映画も大好きなので全然OK。むしろ、もっとド派手に活躍してもらっても良かったくらいだ。

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通信担当のフランス人アルフレ(M・ポリ)

メンバーの指揮官的存在アドルフ(G・モスキン)

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グループで一番の2枚目アルド(G・ティンティ)

ドジでお人よしのアウグスト(G・アルベルティーニ)

 撮影を担当したのはエンニオ・グァルニエリ。フランコ・ゼフィレッリ監督のお気に入りカメラマンとして、「ブラザー・サン・シスター・ムーン」('72)や「トラヴィアータ」('85)、「オテロ」('86)、「永遠のマリア・カラス」('02)などを手掛けている人物。それ以外にも、パゾリーニの「王女メディア」('69)やデ・シーカの「悲しみの青春」('70)、リーナ・ウェルトミューラーの「流されて・・・」('74)など、数多くの名作に携わってきた、イタリアを代表する撮影監督の一人である。
 また、ロッサナ・ポデスタの衣装を手掛けたガイア・ロマニーニは「077/地獄の挑戦状」('66)や「ドクター・コネリー/キッドブラザー作戦」('67)などのスパイ映画でダニエラ・ビアンキの衣装を担当し、「デボラの甘い肉体」('68)ではキャロル・ベイカーのゴージャスなドレスをデザインした人。
 教授役のフィリップ・ルロワはフランスの俳優だが、「濡れた本能」('64)や「愛の嵐」('73)などイタリア映画での仕事が多い。英国紳士にも通じる洒落た雰囲気のダンディな俳優で、決して演技の上手い人ではなかったが、存在感のある役者だった。そういえば、彼の娘フィリピーヌ・ルロワ=ボーリューも女優として一時期活躍していたが、どこへ行ってしまったのだろう?
 泥棒一味の中で一番インパクトが強いのはアドルフ役のガストーネ・モスキンだろう。ベルトルッチの「暗殺の森」('70)やセルジョ・コルブッチの異色ウェスタン「スペシャリスト」('69)など、主に悪役として知られる俳優で、ゴリラみたいなアクの強い風貌が印象的な人。よくドイツ人役でキャスティングされることが多いが、生粋のイタリア人だ。
 お人よしでちょっと抜けているアウグスト役のジャンピエロ・アルベルティーニもいい味を出している。彼は戦争アクションや刑事ドラマなどに数多く出演している俳優で、人情味のあるベテラン刑事であったりとか、温厚な軍人役なんかを得意としていた人だ。
 グループ内で一番の2枚目アルドを演じているガブリエーレ・ティンティは、“黒いエマニュエル”こと70年代を代表するセクシー女優ローラ・ジェムサーのダンナだったことで知られる俳優。マリオ・バーヴァのホラー映画からブルーノ・マッテイのポルノまで、とにかくどんな映画にでも出る役者だった。フランス人アルフレ役を演じているモーリス・ポリも、イタリア産B級映画には欠かせない脇役。特に70年代から80年代にかけて、数多くのポルノ映画に出演していた。
 そして、明らかにキューバのカストロ将軍をモデルにした革命軍の将軍役を演じているのは、イタリアを代表する名優エンリコ・マリア・サレルノ。マッシモ・ダラマーノ監督の左翼系ウェスタン「バンディドス」('66)やステファーノ・ヴァンツィーナ監督の汚職告発映画「黒い警察」('71)など、社会派娯楽映画で活躍した渋い役者だ。本作では珍しくコミカルな一面を見せている。

 なお、今のところ本作がDVD化されているのは日本だけの様子。それはそれで大変喜ばしいことなのだが、画質的にはいまひとつ不満が残るというのが正直な感想。フィルムの傷やノイズが目立つのと、テクニカラーの色彩が若干濁ってしまっているのは残念だった。

 

黄金の7人 1+6エロチカ大作戦
Homo Eroticus (1971)
日本では1972年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2002 King Records (Japan)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー作品/ワイド・スクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:イタリア語
/字幕:日本語/地域コード:2/110分/製作:イタリア

映像特典
スタッフ・キャスト バイオグラフィー
監督:マルコ・ヴィカリオ
製作:マルコ・ヴィカリオ
脚本:マルコ・ヴィカリオ
    ピエロ・キアラ
撮影:トニーノ・デリ・コッリ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
出演:ロッサナ・ポデスタ
    ランド・ブッツァンカ
    シルヴァ・コシナ
    アドリアナ・アスティ
    イラ・フルステンベルグ
    エヴィ・マランディ
    ピア・ジャンカルロ
    ベルナール・ブリエ
    シモネッタ・ステファネッリ
    シャーリー・コリガン
    フェミ・ベヌッシ
    パオラ・テデスコ
    ブリギッテ・スカイ

 日本では「黄金の七人」シリーズ4作目として劇場公開されたものの、実際は全く関係のない作品。シチリアのド田舎からやって来た巨根の絶倫男が、上流階級のマダムたちをなで斬りにしていくというセックス・コメディだ。
 結構・・・というよりもかなり露骨でお下品なジョークが満載だが、実にあっけらかんとしているところが大らかで微笑ましい。随所に北イタリアと南イタリアの生活格差や階級差別などをチクリと皮肉っており、風刺喜劇としてもすこぶる面白い。
 しかし、最大の見所は何といっても豪華な女優の顔ぶれ。ロッサナ・ポデスタやシルヴァ・コシナといったトップ・スターから、当時まだ新人だったシモネッタ・ステファネッリ、B級映画やソフト・ポルノでお馴染みのブリギッテ・スカイやフェミ・ベヌッシ、パオラ・テデスコに至るまで、イタリア映画ファンなら大喜びのセクシー女優大競演である。彼女たちの華やかなファッションはもちろんのこと、モダンでヒップなデザインのインテリアや小道具も満載。違いの分る大人にこそお薦めしたい爆笑コメディだ。

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社交界の美女たちが勢ぞろい

シチリアの絶倫男ミケーレ(L・ブッツァンカ)

 シチリアからベルガモに上京してきた若者ミケーレ(ランド・ブッツァンカ)。素朴で正直者だが下半身の欲望が抑えきれない彼は、近所の女の子たちを悦ばしまくったおかげで田舎を追い出されてきたのだった。地主である父親の友人フィケーラ氏(ミケーレ・チマローサ)を頼りにやって来た彼は、大富豪ランプニャーニ氏(ルチアーノ・サルチェ)の豪邸で執事として働くことになった。ランプニャーニ夫人のココ(ロッサナ・ポデスタ)は、ミケーレの絶倫伝説を聞いて興味津々の様子。
 “田舎者は病気を持ってるから”とランプニャーニ氏に言われ、メッツィーニ医師(ベルナール・ブリエ)の診察を受けたミケーレ。メッツィーニは彼のイチモツを見て愕然とする。巨大な睾丸が三つもぶら下がっている上に、ペニスが特大級に長いのだ。これは珍しいから学会で研究しようと大喜びのメッツィーニ。
 さらに、メッツィーニとその夫人(イラ・フルステンベルグ)が友人たちにミケーレの話をしたもんだから、彼はたちまち社交界で話題の的となってしまう。特にご婦人方は“あら、いやだ”と言いながら、内心は誰もが興味津々。ココが開いたホーム・パーティには、ベルガモ中の貴婦人が集まってきた。もちろん、みんなのお目当ては絶倫ミケーレ。
 ひとまず、執事としては全く素人のミケーレをココが徹底的に教育し、一応は一人前の仕事をするようになる。ココは社交界のイベントがあれば必ずミケーレを連れて行き、ご婦人方の羨望の眼差しを横目にほくそ笑むのだった。
 ある日、ランプニャーニ氏が出張に出かけることに。しかし、それは全くの嘘で、ランプニャーニ氏は楽しそうにデートをするココとミケーレの後を付け回していた。そして、いよいよ2人はベッド・イン。向かいのアパートの窓から覗いていたランプニャーニ氏も何故か大興奮。しかし、2回戦、3回戦、4回戦と絶倫ぶりを発揮するミケーレを見て、最後はあきれ果ててしまった。
 さらに、ミケーレはココの親友である女社長カルラ(シルヴァ・コシナ)に呼び出され、工場の社長室で下半身フル稼働の大サービス。“アメリカの会社よりあなたと合併したいわ”と言わしめるほど満足させてしまった。やがて、メッツィーニ夫人、コンチェッタ(ピア・ジャンカルロ)、エルシリア(フェミ・ベヌッシ)、ジューシー(エヴィ・マランディ)と、街中の貴婦人たちを絶頂に導いていくミケーレ。
 だが、その人気ぶりに気付いたココが腹を立て、ミケーレをクビにしてしまったことから彼の運命に暗雲が立ち込めていく。ミケーレに悦ばせてもらったのが自分だけじゃなかったと知った貴婦人たちは、手の平を返したように彼を薄汚い田舎者呼ばわりするようになる。さらに、侯爵夫人(アドリアナ・アスティ)のもとに身を寄せていたミケーレだったが、なんとセックスの最中に夫人が腹上死してしまった。しかも運の悪いことに、そこへ自分の娘(シモネッタ・ステファネッリ)がミケーレによって傷物にされたと知ったフィケーラ氏が、猟銃を片手に乗り込んできてしまう。果たしてミケーレの運命やいかに・・・!?

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欲求不満の大富豪夫人ココ(R・ポデスタ)

ココの親友である女性実業家カルラ(S・コシナ)

 金持ちだろうが貧乏人だろうが、ベッドでやることは一緒。ということで、セックスしか取柄のない田舎者が、お上品ぶった上流階級の赤裸々な下半身を暴いていくというわけだ。イタリアといえばカトリックの総本山であるバチカンのお膝元であり、古いモラルや因習に支配されてきた土地柄だったが、戦後はその反動も大きかった。処女を奪われた若い娘とその家族のドタバタを描いた「誘惑されて棄てられて」('63)や、若い娘と結婚するため妻に浮気をさせて殺してしまう男の身勝手さを皮肉たっぷりに描いた「イタリア式離婚狂想曲」('61)など、一連のピエトロ・ジェルミ作品がその原点と言えるかもしれない。イタリアのセックス・コメディは下らないようでいて、実は結構奥が深いのである。
 今回ヴィカリオ監督と共に脚本を手掛けているのは、イタリアの風刺小説家ピエロ・キアラ。その作品の多くが映画化されている他、「肉体のバイブル・禁断の賛美歌」('85)など映画脚本家としても活躍した人物である。
 撮影を担当したのはパゾリーニやフェリーニ、セルジョ・レオーネなど巨匠たちの名作を数多く手掛けてきた、イタリアを代表する大物撮影監督トニーノ・デリ・コッリ。ほとんど悪ノリに近いような、洒落を効かせたスタイリッシュなカメラワークがとても楽しい。
 また、モダンでゴージャスな美術デザインを手掛けたフラヴィオ・モヘリーニは、パゾリーニの「アッカトーネ」('61)や「マンマ・ローマ」('62)、ロベルト・ロッセリーニの「ローマで夜だった」('60)、マリオ・バーヴァの「黄金の眼」('68)などで知られる人物。セット装飾を手掛けたカルロ・ジェルヴァーシは、ヴィスコンティの「家族の肖像」('74)や「イノセント」('76)、最近では「タイタス」('99)や「パッション」('04)、「エクソシスト ザ・ビギニング」('04)などのハリウッド映画も手掛ける大御所だ。

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同じく欲求不満の侯爵夫人(A・アスティ)

ミケーレを誘惑するメッツィーニ夫人(I・フルステンベルグ)

 さて、主人公ミケーレを演じているランド・ブッツァンカだが、日本では全くといっていいほど知名度がないものの、イタリアでは当時絶大な人気を誇ったコメディアン。よく見るとちょっとだけ2枚目という風貌を生かし、オツムは弱いが下半身は強いという間抜けなプレイボーイ・キャラを数多く演じた俳優だ。このミケーレ役などは、まさに彼の十八番といったところだろう。
 ココ役のロッサナ・ポデスタとカルラ役のシルヴァ・コシナは、イタリア映画ファンには説明の必要もない大女優。特にシルヴァ・コシナは、ジェット・プロペラ機の中でオッパイをポロリと出してミケーレを誘惑するなどの痴女ぶりを発揮。ロッサナがセクシーでゴージャスな衣装を次々と披露する傍らで、彼女はもっぱら脱ぎ役に徹している。まあ、マルコ・ヴィカリオ監督としては、愛妻を脱がすのが忍びなかったのだろう。
 腹上死してしまう侯爵夫人を演じているアドリアナ・アスティは、ベルトルッチの「革命前夜」('64)のヒロイン役として有名な人で、パゾリーニやヴィスコンティ、ブニュエルなどの巨匠に愛された個性的な女優。メッツィーニ医師の妻を演じているイラ・フルステンベルグは、15歳でオーストリアの名門公爵夫人となったことで知られる女性で、社交界の花形から女優に転身したことで話題になった人だった。
 その他、ココの社交界仲間として「無敵のゴッドファーザー/ドラゴン世界を往く」('74)に主演したシャーリー・コリガン、イタリア産のホラー映画やアクション映画でひたすら脱ぎ役を演じていたフェミ・ベヌッシ、マリオ・バーヴァの「バンパイアの惑星」に主演したエヴィ・マランディ、ブルーノ・コルブッチ版「ボッカチオ」('72)などに出ていたピア・ジャンカルロ、「シシリアン・マフィア」('72)や「空手アマゾネス」('74)に主演したパオラ・テデスコらが登場。さらに、ランプニャーニ家のメイド役としてマリオ・バーヴァの「血みどろの入江」('72)でヌード・シーンを披露したドイツ人女優ブリギッテ・スカイも出演。また、フィケーラ氏の一人娘役で「ゴッドファーザー」('72)のアポロニア役で有名なシモネッタ・ステファネッリが顔を出している。
 メッツィーニ医師を演じているベルナール・ブリエは「北ホテル」('38)や「洪水の前」('54)、「女猫」('58)などで有名なフランスを代表する名優。「バルスーズ」('73)や「美しすぎて」('89)のベルトラン・ブリエ監督は彼の息子だ。
 さらに、ココの夫であるランプニャーニ氏を演じているルチアーノ・サルチェは、カトリーヌ・スパーク主演の「狂ったバカンス」('61)やオールスター・キャストのセックス・コメディ「イタリア式愛のテクニック」('66)で知られる映画監督。俳優としても50本以上の映画に出演している。

 

華麗なる殺人
La Decima Vittima (1965)
日本では69年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 King Records (Japan)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイド・スクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:イタリア語/字幕:日本語/地域コード:2/89分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
ポスター&フォト・ギャラリー
スタッフ・キャスト紹介
デジタル復刻パンフレット
監督:エリオ・ペトリ
製作:カルロ・ポンティ
原作:ロバート・シェクリー
脚本:トニーノ・グェッラ
    エンニオ・フライアーノ
    ジョルジョ・サルヴォーニ
撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽:ピエロ・ピッチョーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ
    ウルスラ・アンドレス
    エルザ・マルティネッリ
    マッシモ・セラート
    サルヴォ・ランドーネ
    ルーチェ・ボニファッシー

 殺人ゲームがスポーツ競技として合法化された近未来を舞台に、ハンターとなったアメリカ人女性と標的となったイタリア人男性の奇妙な駆け引きを描いていく作品。ジャンル分けするとなれば近未来SFアクションとでも言うべきなのかもしれないが、ここで描かれる近未来はゴダールやタルコフスキーの擬似的未来観に近い。合理化された社会で蔓延する不毛な人間関係、不自然なくらいに清潔で空虚な荒涼とした街並み、殺人をもビジネスに利用していく腐敗した商業主義。そうした、アントニオーニやフェリーニにも通じる不条理な世界を、幾何学模様のポップでモダンなファッションやアート、シュールでアバンギャルドなオブジェや小道具、そしてピエロ・ピッチョーニのクールでファンキーなモダン・ジャズに乗せて描いていく非常にスタイリッシュな作品だ。

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謎めいた雰囲気のマルチェロ・ボレッティ(M・マストロヤンニ)

マルチェロに惹かれていくキャロリン(U・アンドレス)

 舞台は21世紀。戦争や争いをなくすという名目のもと、“ハント”と呼ばれる殺人ゲームが合法化された。出場希望者たちは国際殺人競技センターに登録され、コンピューターで選ばれた相手と殺し合いをすることになる。片方はハンター、もう片方は標的だ。ハンターには標的のあらゆる情報が提供されるが、標的には誰がハンターなのか教えられない。10回のハントをクリアして、つまり10人を殺して勝ち抜けた出場者には、賞金として100万ドルが与えられる。
 ニューヨークで9人目を殺したアメリカ人美女キャロリン・メレディス(ウルスラ・アンドレス)は、最後の相手となる標的を殺すためにローマへと向う。今や全米が注目するスターとなった彼女には大企業のスポンサーが付き、テレビの特番を組むために撮影クルーも同行している。
 彼女の標的となるのは6人目を殺したばかりのマルチェロ・ボレッティ(マルチェロ・マストロヤンニ)。ローマ市内のヴィーナス宮殿を、記念すべき10人目の相手との死闘の舞台として選んだキャロリンは、自分がハンターであることに気付かれないよう彼を宮殿まで誘い出そうとして接近する。
 マルチェロは謎めいた人物だった。妻リディア(ルーチェ・ボニファッシー)とは離婚調停中で、気まぐれな愛人オルガ(エルザ・マルティネッリ)と同棲している。慰謝料として財産の殆んどを妻に持っていかれた彼は、夕陽を眺めながら涙を流すという新興宗教・夕陽教の教祖として生計を立てている。彼にとって宗教は純粋にビジネスであり、本人には信仰心など全くない。その一方で、老人を政府の施設に預けなくてはいけないという法律を無視し、年老いた両親を自宅にかくまっているという孝行息子でもある。その掴みどころのないマルチェロの人柄に、キャロリンは次第に惹かれていくのだったが・・・。

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瞬きをする巨大な目のオブジェが飾られたマルチェロの自宅

マルチェロの愛人オルガ(E・マルティネッリ)

 原作はカルト的な人気を誇るSF作家ロバート・シェクリーの短編小説「七番目の犠牲者」。政府が殺人ゲームを合法化することで戦争や犯罪を抑制しようとする近未来を舞台に、文明の進化によって失われた人間性とその再生を描いていく。ある意味で「バトル・ロワイヤル」の原点とも言える作品だ。
 ただ、エリオ・ペトリ監督は殺人ゲームをあくまでも合理化社会の象徴的な存在の一つとして捉え、全編にあらゆる物質主義・合理主義的な要素を盛り込むことによって、無機質で殺伐とした近未来像を浮かび上がらせている。人々はお互いに必要以上のコミュニケーションを取らなくなり、お互いの物質的利益だけが人間同士を結びつけるような社会が形成されている。妻リディアに財産を奪われたマルチェロに、オルガは“早く人を殺して賞金を稼いで”と催促する。“もし自分が殺されたらどうするんだ”と切り替えしたマルチェロに、彼女はこう答える。“保険金が下りるから大丈夫よ”と。
 人間の生活の営みは政府によって管理されており、受胎センターが人口の増減をコントロール、生産活動が出来なくなった老人は国によって回収されていく。余計な装飾を排したファッションやインテリア、街の風景は洗練されてスタイリッシュで無駄がないが、その代わり人間的な温かみに欠けている。
 そんな世界観の中で、殺しを稼業とする男女の不可解な恋愛が繰り広げられていくというわけだ。脚本を手掛けたのはフェリーニやアントニオーニ、デ・シーカなど巨匠たちの名作を数多く手掛けた大御所脚本家トニーノ・グェッラ、初期から中期にかけてのフェリーニ作品全てを手掛けたエンニオ・フライアーノ、そしてマカロニ・ウェスタンやポリス・アクションの脚本で知られるジョルジョ・サルヴォーニ。ロバート・シェクリーの世界を土台にしつつ、アントニオーニ的な不毛感、フェリーニ的な不条理感を通じて独特の文明論を展開していく脚本は非常に独創的だ。
 エリオ・ペトリの演出は、計算し尽くされたスタイルを強調することによって、ある種のアダルト・コミック的な雰囲気を作り上げている。言うなれば、大人のための風刺的SFファンタジーだ。美術セットから音楽、ダンスに至るまで、モダニズムやネオダダ、ポップ・アートといったアバンギャルドなキーワードで全編をまとめ上げている。
 その後、カンヌ映画祭脚本賞を受賞した「悪い奴ほど手が白い」('67)、カンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞した「殺人捜査」('70)、そしてカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した「労働者階級は天国に入る」('71)といった一連の汚職・不正告発映画で、左翼系社会派の巨匠となっていったペトリ監督だが、本作では遊び心溢れる一面も垣間見せてくれるのが興味深い。
 なお、撮影は初期アントニオーニ作品のほぼ全てを手掛けたジャンニ・ディ・ヴェナンツォ。フェリーニの「81/2」('63)や「魂のジュリエッタ」('64)も彼が撮影を担当している。美術デザインを担当したピエロ・ポレットもアントニオーニ作品の常連。また、ウルスラ・アンドレスやエルザ・マスティネッリのウルトラ・モダンな衣装は、伝説的なフランスの前衛派クチュリエ、アンドレ・クレージュのデザインによるもの。
 主演はマルチェロ・マストロヤンニとウルスラ・アンドレス。マストロヤンニ扮するマルチェロ・ボレッティは、まるで「甘い生活」('60)の主人公マルチェロ・ルビーニがそのまま近未来にやって来たかのような人物。明らかに意識して脚本に描きこまれているのだろう。一方のアンドレスは、言わずと知れた初代ボンド・ガールなわけだが、そのコミック・ヒロイン的なムードを存分に生かしている。冒頭ではシルバーのビキニ姿で登場し、ブラに仕込まれた拳銃で標的を射殺。まさしく「オースティン・パワーズ」の元ネタだ。
 さらに、トップ・モデル出身の人気女優エルザ・マルティネリがマルチェロの愛人オルガ役で登場する他、戦前のイタリアでマチネー・アイドルだった2枚目スター、マッシモ・セラートがマルチェロの専属弁護士役として顔を出している。

 

セッソ・マット
Sessomatto (1973)
日本では2005年劇場公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2005 Columbia Music (Japan)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:イタリア語/字幕:日本語/地域コード:2/116分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ディーノ・リージ
脚本:ルッジェロ・マッカリ
    ディーノ・リージ
撮影:アルフィオ・コンティーニ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
出演:ジャンカルロ・ジャンニーニ
    ラウラ・アントネッリ
    アルベルト・リオネッロ
    デュリオ・デル・プレート
    パオラ・バルボーニ
    カルラ・マンチーニ

 「ナポリと月とあなた」('58)や「バンボーレ」('65)、「ナポリと女と泥棒たち」('66)などで知られるイタリアン・コメディの巨匠ディーノ・リージ監督が手掛けた爆笑セックス・コメディ。ジャンカルロ・ジャンニーニとラウラ・アントネッリの2人が、様々な愛とセックスの形を演じていくオムニバス形式の作品。変態と言われようがスケベと言われようが、そこに愛があれば何だっていいじゃないか!みんな人間なんだしさ!という大らかなセックス観が庶民的な笑いとペーソスの中で描かれていく愉快な映画だ。
 しかし、この作品が有名になった一番の理由は、アルマンド・トロヴァヨ−リの手掛けたサウンドトラックにあるだろう。女性のあえぎ声とスキャットを駆使したポップでキュートでグルーヴィーなテーマ曲は傑作中の傑作(詳しくは本HP内の映画音楽/アルマンド・トロヴァヨーリのページを参照)。ラウラ・アントネッリのセクシーなファッションや、モンドでお洒落なインテリアなど、イタリア映画らしいアート・センスにも注目したい。

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セクシーなシスター・ナース(L・アントネッリ)

惚れた女は生き別れた兄だった!?

 ストーリーは9話構成。第1話は白亜の豪邸を舞台にしたマダム(L・アントネッリ)と召使(G・ジャンニーニ)のHな秘め事。第2話は貧乏子沢山の夫婦(ジャンニーニ&アントネッリ)の家庭円満(?)の秘訣。第3話は老女が大好きという生真面目男(ジャンニーニ)の猛烈アタック作戦。そこまでいっちゃうか!?というクライマックスには大爆笑。お婆ちゃんフェチなら必見(?)。第4話はハネムーンに出かけたカップル(ジャンニーニとアントネッリ)が、ダンナのインポを解決しようと秘策を考え出す。第5話は家を出て行ったブサイクな妻を忘れられない男(ジャンニーニ)と美人娼婦(アントネッリ)の奇妙な3P(?)。第6話は修道服の看護婦(アントネッリ)にあらぬ妄想をかき立てられる医者(ジャンニーニ)のお話。第7話は殺された夫の復讐を下半身で遂げるシチリア女(アントネッリ)。第8話は生き別れた兄を探す弟(ジャンニーニ)の惚れた巨漢娼婦(A・リオネッロ)が実は兄だったという異色のメロドラマ。兄弟愛も恋愛も、同じ愛には変わりないというポジティブ・シンキングに思わず感動(?)。本作中で最も印象に残るエピソード。そして第9話はお得意さんの自宅に招かれたビジネスマン(ジャンニーニ)が、相手の奥さん(アントネッリ)の猛烈なエロ攻撃に遭う。果たして単なる妄想なのか?それとも本当に誘惑してるのか?

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逃げた女房を忘れられない男(ジャンニーニ)と娼婦(アントネッリ)

こんなステキなインテリアも沢山登場

 脚本に参加しているルッジェロ・マッカリはリージ作品の常連で、名コンビ的な存在。他にも、「もしお許し願えれば女について話しましょう」('64)や「特別な一日」('77)、「パッション・ダモーレ」('80)といったエットーレ・スコラ監督作品を数多く手掛けている人で、人間の性に対して鋭い観察眼を持っている脚本家だ。本作でも、ちょっと悪乗り気味で突拍子のないエピソードの中に、人間の性の豊かさと大らかさを抜群のセンスで描きこんでいる。特異な性癖を持った人々のことを決してバカにせず、笑いという愛情で包み込んでいるところが面白い。
 撮影を手掛けたのはリリアーナ・カヴァーニの「愛の嵐」('73)やマイケル・カコヤニスの「トロイアの女」('71)などで知られる名カメラマン、アルフィオ・コンティーニ。スタイリッシュな美術デザインを担当したのは、アラン・ドロンの「ビッグ・ガン」('73)やマルコ・フェレーリの「ピエラ/愛の遍歴」('83)を手掛けたロレンツォ・バラルディだ。
 主演のジャンカルロ・ジャンニーニは当時が人気絶頂。リナ・ウェルトミューラーの「流されて」('74)や「セブン・ビューティーズ」('76)、ヴィスコンティの「イノセント」('75)など次々と主演作が話題になり、マストロヤンニに続くイタリアのトップ・スターとして世界中から注目を集めていた。最近でも「ハンニバル」('01)や「007/カジノ・ロワイヤル」('06)などハリウッド映画で活躍中で、若い頃よりも渋みの増した艶っぽい名優になった。
 一方のアントネッリも、当時は「青い体験」('73)が記録的な大ヒットとなり、イタリアを代表するセクシー女優として活躍していた時期。ジャンニーニとは「イノセント」でも共演を果たしている。しかし、セックス・シンボルのイメージから抜け出すことが出来ず、コカイン中毒になってしまい、90年代には第一線から退いてしまった。
 なお、第3話でジャンニーニの猛烈アタックを受ける老女役を演じているパオラ・バルボーニは90年近くの映画キャリアを誇った伝説的な名女優。当時既に73歳だったが、若いジャンニーニとベッド・インして数十年ぶりのエクスタシー・・・なんて大胆なシーンまで演じている。若い頃には舞台でヌードを披露し、大変なスキャンダルになったこともあったそうだ。その時の彼女の反論がなかなかイケている。“私は人魚役を演じていたのよ。上着を着た人魚なんて見たことある?”

 

必殺の歓び
Requiem per un agente segreto (1966)
日本では1967年劇場公開
VHSは日本盤未発売
DVDは日本盤発売済(「ア・シークレット・エージェント」として)

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(P) Avanz Entertainment (Japan)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:日本語/99分/製作:イタリア・スペイン

映像特典
なし
監督:セルジョ・ソリーマ
製作:トマッソ・サゴーネ
脚本:セルジョ・ソリーマ
    セルジョ・ドナーティ
撮影:カルロ・カルリーニ
音楽:ピエロ・ウミリアーニ
    アントニオ・ペレズ・オレア
出演:スチュアート・グレンジャー
    ダニエラ・ビアンキ
    ピーター・ヴァン・アイク
    ジョルジア・モル
    ジャンニ・リッツォ
    ジュリオ・ボセッティ
    マリア・グラナダ
    フランコ・アンドレイ
    ミレッラ・パンフィーリ
    ジョン・カールセン

 60年代に大量生産された007の亜流映画の一本。ウミリアーニのクールなスコアと、お洒落でスタイリッシュなファッションやインテリアが見どころの作品だが、スパイ映画としては非常に中途半端で退屈な作品。ダニエラ・ビアンキやジョルジア・モル、マリア・グラナダといったゴージャス美女のお色気のおかげで、辛うじて最後まで見れるといった感じだ。
 舞台はモロッコのタンジール。アメリカの諜報員オブライエン(フランコ・アンドレイ)が殺される。アメリカ政府はモロッコを拠点にする犯罪組織の撲滅を狙っており、その組織の一員ブレサールとコンタクトを取ろうとしたオブライエンは。ブレサールもろとも何者かに射殺されたのだった。
 アメリカ政府は極悪非道の犯罪組織に立ち向かうため、同じように金のためなら手段を選ばないような男が必要だと考え、一匹狼のベテラン・スパイ、ビンゴ(スチュアート・グレンジャー)に白羽の矢を立てる。ベルリンからタンジールに向ったビンゴは、ノルウェー人スパイのエリック(ピーター・ヴァン・アイク)、エディス(ジョルジア・モル)と接触。組織がナチの残党の隠れ蓑になっていることを知る。
 殺されたブレザールの愛人であるダンサー、ベティ・ルー(マリア・グラナダ)に接触するべく、ビンゴはナイト・クラブの関係者を装って彼女のアパートを訪ねた。しかし、組織に騙されているベティ・ルーは、ビンゴたちがブレザール殺害の犯人である殺し屋だと勘違いしてしまう。
 仕方なく、周囲から探ろうと彼女の働くナイト・クラブを訪れたビンゴは、そこでブレザールの別居中の妻イヴリン(ダニエラ・ビアンキ)と知り合う。イヴリンは夫の仇を取るためにタンジールにやって来たのだ。そんな彼女に、ベティ・ルーはビンゴこそが犯人だと忠告する・・・。

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一匹狼のスパイ、ビンゴ(S・グレンジャー)

夫の復讐を誓った美女イヴリン(D・ビアンキ)

 マカロニ・ウェスタンやポリス・アクションで有名なセルジョ・ソリーマには、やはり硬派な男のドラマが合っているのかもしれない。どうも女の描き方が下手っクソで、妙に堅苦しいのだ。ストリッパーの身体に闘牛の映像を映し出すという007ぽい官能ダンス・シーンも盛り込んではいるものの、やけにあっさりしている。基本的に、彼は女を撮ることにあまり興味がないのだろう。 なので、全体的にスパイ・アクションとも、ポリティカル・サスペンスともつかない中途半端な内容で、全く盛り上がりに欠ける作品になってしまった。
 脚本にはセルジョ・レオーネの「ウエスタン」('68)や「夕陽のギャング」('71)で知られるセルジョ・ドナーティが参加しているものの、彼も作品によって出来不出来のムラが激しい脚本家だ。東西の冷戦が重要なキーワードになっているものの、その政治的要素を全く生かすことが出来ていない。というよりも、ストーリー上の必然性が全く感じられない。
 撮影のカルロ・カルリーニはロッセリーニの「不安」('54)や「ロベレ将軍」('59)、フェリーニの「青春群像」('53)などを手掛けたネオレアリスモ出身のカメラマンで、マカロニ・ウェスタンやソフト・ポルノでも優れた仕事を残している人物。音楽にはピエロ・ウミリアーニが参加しているが、彼の作品の中ではあまりパッとしない出来映えだ。
 また、主演が当時60歳を過ぎたスチュアート・グレンジャーというのもスパイ映画としては説得力に欠けている。普通に考えれば、スパイとしてはとっくに現役を引退しているような年齢なわけで、アクション・シーンの切れの悪さも致命的だった。
 対するダニエラ・ビアンキは、当時「007/ロシアより愛を込めて」('63)で世界的に注目され、スパイ映画のヒロインとして引っ張りだこだった。なので、タイムリーなキャスティングではあるのだが、いかんせん役柄が地味過ぎた。エディス役のジョルジア・モルはマンキーウィッツ監督のハリウッド映画「静かなアメリカ人」('58)で注目され、スペクタクル史劇などで活躍していたイタリア女優だが、彼女も色添え程度のポジション。当時B級スパイ映画で活躍していたスペイン女優マリア・グラナダが、一人でお色気パートを受け持っている。
 なお、日本盤DVDはなぜか「ア・シークレット・エージェント」というタイトルで、ひっそりと発売されている。コピーライトのクレジットを見る限り、ちゃんとした正規盤のようだが、画質はギリギリ合格点といったレベル。全体的にテクニカラーが褪せており、フィルムの傷やノイズはかなり目立つ。映像特典が何もないというのも残念だ。

 

ミッション・スターダスト
...4..3..2..1...morte (1967)
日本では劇場未公開・テレビ放送あり
VHSは日本未発売・DVDは日本盤発売済

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(P)2004 Avanz Entertainment (Japan)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:日本語/地域コード:2/90分/製作:イタリア・スペイン・西ドイツ

映像特典
なし
監督:プリモ・ゼリオ
製作:エルンスト・フォン・テウメール
脚本:クルト・ヴォゲルマン
    セルジョ・ドナティ
    プリモ・ゼリオ
撮影:マヌエル・メリーノ
    リカルド・パロッティーニ
音楽:アントン・ガルシア・アブリル
    マルチェロ・ジョンビーニ
出演:ラング・ジェフリーズ
    エッシー・ペルソン
    ジャンニ・リッツォ
    ルイス・ダヴィラ
    ピンカス・ブラウン
    ステファノ・シバルディ
    ジョン・カールセン
    ミレッラ・パンフィーリ

 「バーバレラ」('68)や「黄金の眼」('68)よりも前に作られていた、サイケでモンドなSFポップ・ムービー。ただし、「バーバレラ」のような膨大な予算もなく、「黄金の眼」のように豊かなイマジネーションも欠けているため、あまり過度な期待は禁物。とはいえ、ヒロインのエッシー・ペルソンが着こなすキュートなスペース・コスチュームはお洒落だし、原色の渦巻くカラフルな美術セット、アントン・ガルシア・アブリルとマルチェロ・ジョンビーニによるポップでダンサンブルな音楽など、この手のキッチュな映画が好きな人なら結構楽しめる要素がいっぱい。何も考えず、気楽に見たい一本である。
 月面で新たに発見されたクレーターを調査するスターダスト計画が実行に移され、ペリー・ローダン隊長(ラング・ジェフリーズ)ら飛行士らが月へと送り込まれた。しかし、彼らはそこで3400万光年彼方のアラゴン星からやって来た巨大宇宙船と遭遇する。
 アラゴン星では文明が進化し過ぎてしまい、人々の遺伝子が脆弱化してしまっていた。そのため、文明の若い人類と遺伝子を融合するべき太陽系を訪れていたのだが、その途中でリーダーのクレスト(ジョン・カールセン)が病に冒されてしまったのだった。その血液を調べたところ、クレストが白血病にかかっていることが判明する。
 ローダン隊長は地球で治療を受けるようクレストに勧めるが、地球人を見下すソーラ(エッシー・ペルソン)は猛反対。だが、地球人との友好的関係を希望するクレストは、その申し出を受けることにする。そこで、ローダンは地球の人々に気付かれないように注意をして、地球へ戻る事にする。というのも、地球よりも文明の進んでいる異星人がやって来たことを知れば、その技術を奪おうとする輩が現れる可能性があるからだ。
 ところが、以前からスターダスト計画には別の目的があるに違いないと睨んでいた犯罪組織が、ローダンたちが秘密裏に地球に戻ってきたことを察知してしまう。ローダンら宇宙飛行士たちは、クレストとソーラを守るために戦うことになるのだった。

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 SF映画としてはほとんどお子様向けも同然。典型的なB級映画だが、イタリア人特有のお洒落な遊び心が随所で生かされているのがユニークだと言えよう。プリモ・ゼリオ監督は史劇からアクションまで何でも手掛ける職人監督だったが、SF映画にアダルト・コミック的要素を盛り込んだのは賢かったと思う。
 カラフルでポップな映像を手掛けたのはジェス・フランコ作品のカメラマンとして知られるスペインのマヌエル・メリーノと、セルジョ・マルティーノやアントニオ・マルゲリティなどイタリアを代表する娯楽映画監督たちと組んできたリカルド・パロッティーニの2人。また、ベルトルッチの「暗殺のオペラ」('69)やタヴィアーニ兄弟の「サン・ロレンツォの夜」('82)、マイケル・ラドフォードの「イル・ポスティーノ」('94)の撮影監督を手掛けたフランコ・ディ・ジャコモが、アシスタント・カメラマンとして参加している。
 そして、ポップ・アート全開のサイケな美術デザインを手掛けたのは、フェリーニの「サテリコン」('69)や「アマルコルド」('73)などの美術監督及びセット・デザインを担当したジョルジョ・ジョヴァンニーニ。また、美術監督のハイメ・ペレス・クベーロはスペインの出身で、「続・黄金の七人/レインボー作戦」のセット・デザインを手掛けた他、数多くのマカロニ・ウェスタンの美術監督を担当した人だ。
 ローダン隊長役のラング・ジェフリーズはカナダ出身の俳優だが、主にイタリアや西ドイツで活躍した人。ヒロイン役のエッシー・ペルソンはスウェーデンの出身で、ポルノ映画の草分け的存在となったスウェーデンの大ヒット作「わたしは女」('65)に主演して一躍世界中の注目を集めた女優だった。
 なお、日本盤DVDは正規盤と思えないくらいに画質が酷く、しかもスタンダード・サイズにトリミングされたバージョンを使用している。

 

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