イタリアン・エロス セレクション

 

 

ガラスの部屋
Plagio (1969)
1970年日本公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2012 Jett Link/Pony Canyon (JP)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/音声:モノラル/言語:イタリア語・日本語/字幕:日本語/地域コード:2/82分/制作国:イタリア・フランス

<特典>
・オリジナル予告編
・「ガラスの部屋」ビデオクリップ
監督:セルジョ・カポーニャ
製作:ジュリアーナ・スカピーノ
脚本:セルジョ・カポーニャ
撮影:アントニオ・ピアッツァ
音楽:ロベルト・ムローロ
出演:レイモンド・ラヴロック
   ミタ・メディチ
   アラン・ヌーリー
   コゼッタ・グレコ
   ディノ・メーレ

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家族の期待を背負って医者を目指す大学生マッシモ(A・ヌーリー)

恋人のアンジェラ(M・メディチ)は法律を勉強している

2人は過激派の学生に暴行されていた若者グイド(R・ラヴロック)を助ける

<Review>
 かつての日本市場では、ヨーロッパ映画がハリウッド映画並みに絶大な支持を得ていた時代があった。そうした中、日本でのみ大ヒットする映画や日本でのみブレイクするスターなども登場。男性スターではフランスのルノー・ヴェルレーやイタリアのレイモンド・ラヴロックが本国以上の人気を集めたわけだが、そのラヴロックの日本における代表作がこの「ガラスの部屋」だった。
 物語の主軸は男女の三角関係だ。過激派の学生に暴行を受けていた美青年グイドを助けた医大生マッシモと恋人アンジェラ。裕福な家庭に育ちながらも孤独を抱えたグイドは2人に強く好意を寄せ、マッシモとアンジェラも繊細で優しい彼に親近感を覚える。やがて、マッシモが試験勉強のために不在となり、その間にグイドとアンジェラは男女の一線を超えてしまう。2人の裏切りを知って激怒するマッシモ。そんな彼に、グイドは“これまで通りの3人でいたい”と言うのだが…。
 当時の加熱する学生運動の時代というものをガッツリと物語の背景にしていることもあって、いわゆる左翼革命世代の若者たちによる新しい愛の形を描くラディカルなラブロマンスかと思いきや、後半へ進むに従って学生運動とはまるで無関係な辛気臭いメロドラマとなっていく。最愛の両親を交通事故で失った悲しみに囚われ続けるグイドは、深く愛し合うマッシモとアンジェラの姿に両親の面影を重ね、自分も彼らの美しい世界の一員になろうとしていたってわけだ。
 ある種のオイディプス・コンプレックスや同性愛の香りを匂わせつつも、なんとなく分かったようで分からない奇妙なラブ・トライアングル。グイドが本当に愛していたのはアンジェラではなく、実はマッシモの方だった…という深読みもできなくはないが、それも伏線としては今ひとつ不自然で弱いようにも感じる。
 とりあえず、お笑い芸人ヒロシのネタでも有名なペッピーノ・ガリアルディによる甘く切ない主題歌や、マーラーの交響楽5番など音楽の使い方はとても巧い。舞台となる古都ボローニャやお洒落なインテリアを活かしたスタイリッシュな映像も悪くないし、若く美しい男女の肉体を惜しげもなく披露するエロティシズムも魅惑的だが、結局のところ当時のヨーロッパ映画にありがちな雰囲気先行型悲恋映画の一つに過ぎなかったのではないだろうか。
 欧米ではB級アクション俳優としてのイメージが強いレイモンド・ラヴロックはこの時期が最も美しかったと言えるし、そんな彼の魅力を存分に堪能できることは確か。一方で、作品そのものは瞬く間に忘れ去られてしまったのも無理なかろうといった印象だ。

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孤独を抱えたグイドはマッシモとアンジェラに急接近する

単位の足りないマッシモは試験勉強に専念することを決意する

マッシモに紹介された年上の女性エデラ(C・グレコ)を訪ねたグイド

<Story>
 イタリア全土で学生運動が激しさを増す中、ボローニャの大学に通う医学生マッシモ(アラン・ヌーリー)と恋人アンジェラ(ミタ・メディチ)は、そうした喧騒から一定の距離を置きつつ、貧しいながらも気ままな学生生活を送っていた。そんなある夜、友人ロベルト(ディノ・メーレ)に借りた車でドライブを楽しんでいた2人は、過激派の学生に暴行を受けている若者グイド(レイモンド・ラヴロック)を助ける。ところが、警察署で2人が事情説明をしている間に、グイドは車を盗んで姿を消してしまった。
 その翌日、何事もなかったような顔をしてマッシモとアンジェラの前に姿を現すグイド。実は彼自身も車を盗まれてしまい、その搜索のために拝借しただけだという。その屈託のない笑顔に怒る気もなくなったマッシモ。しかも、返却されてきたのは新車だ。
 2人を一人暮らしの広い自宅アパートへ案内したグイドは、いつでも自由に出入りしていいと言う。それぞれ実家暮らしで金もなく、2人きりになる場所に事欠いていたマッシモとアンジェラにとっては嬉しい申し出だ。しかしなによりも、大胆不敵な微笑みの裏に孤独を秘めた繊細で優しいグイドに、2人はたちまち親近感を覚えるのだった。
 同じ大学に通うグイドは大金持ちの一人息子だったが、恋人はおろか友達すら作ろうとせず、私生活は謎のベールに包まれていた。だが、そんな彼もなぜかマッシモとアンジェラだけには心を開き、いつしか3人は常に行動を共にするようになる。勉強そっちのけで毎日遊びに興じる3人だったが、しかしそのせいでマッシモは大学の単位が足りなくなってしまった。苦しい家計から学費を捻出してくれている親のためにも留年はできない。そこで、彼はしばらく試験勉強に専念することを決める。
 未だに女性を知らないグイドは、マッシモからエデラ(コゼッタ・グレコ)という年上の女性を紹介される。町工場で働く年増女のエデラは経験豊富な優しい女性だったが、グイドは結局何もせずに彼女のアパートを後にした。アンジェラの待つ自宅へ戻った彼は、それまで抑えてきた彼女への想いを打ち明け、2人はついに一線を超えてしまう。
 何も知らず試験に臨むマッシモに対して、強い罪悪感を募らせるアンジェラ。一方で、グイドは2人の関係を彼に伝えるべきだという。そんなある晩、久しぶりにグイドのアパートを訪れたマッシモに、彼はわざとアンジェラとの浮気現場を見せつける。激怒してアパートを飛び出すマッシモ。そんな彼を追いかけたグイドは、アンジェラとの愛情もマッシモとの友情も失いたくない、これまで通りの3人でいたいと訴える。
 怒りと傷心で自暴自棄になりながらも、人間は痛みを乗り越えてこそ大人になれるというエデラの言葉に救われるマッシモ。やがて和解した3人は、グイドの実家へと向かう。そこで打ち明けられるグイドの悲しい過去。いつしか3人はベッドを共にして愛し合うのだったが…。

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マッシモはアンジェラとグイドの裏切りに全く気付かない

そんな2人に不敵な微笑みを向けるグイド

グイドは浮気の現場をあえてマッシモに見せつけるのだった

<Information>
 監督のセルジョ・カポーニャはもともと俳優の出身。日本公開作はこれ一本だけだったが、そもそも映画監督としてのフィルモグラフィーが極めて少ない。本作を含めてもたったの4本。いわゆる反体制派映像作家の一人だったらしく、当時はそれなりに評価もされたようだが、なにしろ本作以外はイタリア本国ですらソフト化されていないため、今となってはその全容を把握することは難しい。'77年に50歳の若さで癌のため他界している。
 製作を担当したジュリアーナ・スカピーノは、カポーニャ監督作品の全てを手がけたプロデューサー。撮影監督のアントニオ・ピアッツァは、あのチチョリーナが主演したソフト・ポルノ「チチョリーナ・マイ・ラブ/エーゲ海に捧ぐバラード」('79)などの低予算映画に参加していたカメラマンだ。また、カルロ・リッツァーニの「目をさまして殺せ」('66)やジュリオ・ペトローニの「新・夕陽のガンマン/復讐の旅」('67)などマカロニ西部劇を手がけたフランコ・ボッターリが美術デザインを担当している。
 なお、先述したようにお笑い芸人ヒロシのネタにも使用された有名な主題歌「ガラスの部屋」は、実は本編ではラジオから流れていくるBGMとして1シーンにのみ、ちらりと使用されているだけだったりする。

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複雑な思いを乗り越えて和解する3人

グイドは両親を失った心の傷をいまだ抱えていた

同じベッドで愛し合う3人だったが…

 どことなく少年のあどけなさを残した主人公グイド役のレイモンド・ラヴロックは、本人も当時はまだ19歳と若かった。母親はイタリア人だが父親はイギリス人。顔立ちにアングロ・サクソン系の雰囲気があるのはそのせいだろう。もともとマカロニ西部劇「情無用のジャンゴ」('66)やギャング映画「ミラノの銀行強盗」('67)の無垢な美少年役で注目され、当時は本作や西ドイツ映画「透きとおった夕暮れ」('69)で相次いで恋愛映画の主演に起用されたわけだが、恐らく日本以外では全く受けなかったのだろう。欧米では「ミラノ殺人捜査網」('73)や「バニシング」('76)など、B級犯罪アクション映画のヒーローとしての認知度の方が高い。
 アンジェラ役のミタ・メディチの本業はカンツォーネ歌手。'65年にデビューして一躍人気アイドルとなり、その傍らで女優として映画やテレビにも出演していた。歌手として落ち目になった'80年代以降は女優業に専念し、現在もテレビを中心に活動しているようだ。ちなみに、本作のヌード・シーンでは肩から上のショットでしか顔を見せず、全裸ショットは全て後ろ向きで撮られているため、恐らくボディダブルを使っているのだろう。
 マッシモ役のアラン・ヌーリーはフランス人で、日本公開作は少ないものの、当時はフランスや西ドイツなどの青春映画で活躍していたらしく、主演作も少なからずある。詳しい事情は分からないが、'70年代後半からは活動の場を旧ユーゴスラヴィアへ移動した模様。ただ、内戦以降の消息は不明だ。
 また、若くて未熟な若者たちを優しく見守る年上の女性エデラを好演するコゼッタ・グレコは、戦時中から子役として数多くの映画に出演していたベテラン女優。マリオ・カメリーニ監督の「Gli eroi della domenica」('52)やディノ・リージ監督の「Il viale della speranza」('53)といった低予算の大衆向け娯楽映画に主演したほか、サッシャ・ギトリ監督のオールスター・キャストによる歴史スペクタクル「ナポレオン」('55)にも顔を出していた。

 

 

 

姉妹
Le sorelle (1969)
1970年日本公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2010 Jett Link/Pony Canyon (JP)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/音声:モノラル/言語:イタリア語/字幕:日本語/地域コード:2/110分/制作国:イタリア・フランス

<特典>
・フォト・ギャラリー
監督:ロベルト・マレノッティ
脚本:ブルネッロ・ロンディ
   ロベルト・マレノッティ
原案:アレッサンドロ・ファライ
撮影:ジュリオ・アルボニコ
音楽:ジョルジョ・ガスリーニ
出演:スーザン・ストラスバーグ
   ナタリー・ドロン
   マッシモ・ジロッティ
   ジャンカルロ・ジャンニーニ
   ラース・ブロック

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ノイローゼで休暇を取ったディアナ(N・ドロン)

妹マルタ(S・ストラスバーグ)と2年ぶりに再会する

マルタは裕福な夫アレックス(M・ジロッティ)と恵まれた生活を送っていた

<Review>
 ナタリー・ドロンにスーザン・ストラスバーグという、フランスとアメリカの美人スターを主演に据えたサイコロジカルなエロティック・ドラマ。実の姉妹によるレズビアンチックな愛憎関係を、退廃的なムードと耽美的な映像によって描き出した作品だ。
 ノイローゼで仕事に支障をきたしてしまった女性ディアナは、2年前に結婚して家を出た妹マルタのもとを訪れる。久々の再会に喜びつつも、どこかお互いに気まずさを隠せない姉妹。かつて2人の愛情は単なる姉妹の関係を超えたものだったが、ディアナの強すぎる束縛と罪の意識に苛まれたマルタは、結婚を機に逃げるようにして彼女のもとを去ったのだった。
 裕福な年上の夫と満ち足りた生活を送る妹の姿を見て複雑な想いが胸中をよぎるディアナ。しかし、マルタと夫アレックスの幸福な結婚生活は表面的なものに過ぎず、二人の間には埋めることのできない深い溝が横たわっていた。やがてアレックスは従兄弟ダリオを連れて家を空けることに。マルタと2人きりになったディアナは、なんとか彼女の愛を取り戻そうとするのだが…。
 本作のユニークな点は、最後の最後まで核心を突くことのない曖昧さにある。ディアナとマルタの同性愛的な歪んだ関係、マルタとアレックスの愛情のすれ違い、ディアナとダリオの心の触れ合い。どれもある程度は具体的に描写しながらも肝心の根幹部分にあえて触れず、観客に想像の余地と解釈の自由を与えているのだ。それゆえに難解な作品ではあるが、理屈だけでは説明しきれない愛という感情の摩訶不思議を探るという意味において、とてもユニークな試みだと言えよう。
 それはセリフのバランス配分にも現れている。登場人物たちの率直な本音を雄弁に語らせる一方、揺れ動く感情のヒダについては目線や表情、動作、沈黙、状況によって醸し出していく。ミニマルな実験ジャズと優美なイージーリスニングを掛け合わせた、ジョルジョ・ガスリーニによる変幻自在な音楽スコアが、そうしたセリフのないシーンにおいて見事な効果を上げている。単なる官能映画の枠に収まることのない野心作だ。

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姉妹の間にはどことなく微妙に気まずい空気が流れている

かつて2人はただの姉妹以上の親密な関係にあった

アレックスの従兄弟ダリオ(G・ジャンニーニ)はディアナに惹かれる

<Story>
  国際会議の同時通訳を務める女性ディアナ(ナタリー・ドロン)は、ある日仕事中にノイローゼで大失態を演じてしまい、休みを取って妹マルタ(スーザン・ストラスバーグ)のもとを訪ねることになる。2年前に結婚したマルタは、夫とともに国境近くの小さな町外れに暮らしていた。
 久しぶりの再会を喜び合う2人。裕福な夫とともに大豪邸で何不自由なく暮らすマルタを見て安心するディアナだったが、お互いになんとなく気まずさを感じずにはいられない。というのも、2人の間には複雑な過去があったのだ。単なる姉妹以上の深い関係で結ばれていたディアナとマルタ。ディアナは妹に対して狂おしいまでの愛情を示し、マルタもその愛情に身を委ねていたが、次第に姉の強すぎる束縛と罪の意識に苦しむようになり、逃げるようにして結婚したのだ。
 マルタと年の離れた夫アレックス(マッシモ・ジロッティ)はお似合いの美男美女カップルだった。仲睦まじい2人の幸せそうな結婚生活を目の当たりにして表情の曇るディアナ。おのずと刺々しくなってしまう姉の態度に、その真意を察しつつも仲良し姉妹を演じようと努めるマルタ。その空々しい態度がディアナの苛立ちを増幅させる。
 アレックスの若い従兄弟ダリオ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)が現れ、マルタは彼とディアナの仲を取り持とうとする。ダリオは美しいディアナに一目惚れした様子。しかし、ディアナは裏表のない実直なダリオに少なからず好感を抱くものの、それは友情以上でも以下でもなかった。
 パーティの席でマルタとアレックスの不和が表面化する。誰が見ても理想の夫婦の2人だが、実は目に見えぬ深い溝が2人の間には横たわっていた。優しくてリッチでハンサムな夫に恵まれつつも、漠然とした満たされなさに苛まれるマルタ。そんな現実から逃れようと、愛人(ラース・ブロック)との逢瀬に溺れていた。そんな妻の不肖を知りつつ、何もすることができない夫アレックス。偽りの生活をやめて自分のもとへ戻るよう説得するディアナに、マルタは嫌悪感を露わにする。
 アレックスがダリオを連れて数日間家を空けることとなった。広い邸宅で2人きりになったディアナとマルタ。この機会に妹の愛情を取り戻そうとするディアナだったが…。

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偽りの幸福を一時でも忘れようと情事に耽るマルタ

アレックスは妻の心が満たされていないことをよく分かっていた

ダリオに連れられて古い教会を探索する姉妹

<Information>
 監督のロベルト・マレノッティはモンド系ドキュメンタリー「鎖の大陸」('63)の共同監督としてデビューした人で、初の単独監督作品である本作で初めて劇映画の演出を手がけた。ジーナ・ロロブリジーダ主演の「美女の中の美女」('55)やジッロ・ポンテコルヴォ監督の「青い大きな海」('57)などを手がけた名プロデューサー、マレーノ・マレノッティの息子。父親の製作助手として修行を積んでいたらしいが、本作が興行的に失敗してしまったせいなのか、次の監督作は15年後の「Cenerentola '80」('84)。当時西ドイツで大人気だったアイドル歌手ボニー・ビアンコを主演にした伊独合作映画で、シンデレラの現代バージョンという作品だった。
 そのマレノッティと共同で脚本を手がけたのが、「甘い生活」('59)や「魂のジュリエッタ」('64)など巨匠フェリーニのコラボレーターとして有名なブルネッロ・ロンディ。撮影は「アラン・ドロンのゾロ」('74)や「シャタラー」('87)などアクション映画の多いジュリオ・アルボニコが担当している。
 さらに、「大城砦」('61)や「栄光の戦場」('69)のアントニエッタ・ジータが編集を、「ナポリ犯罪ルート」('76)や「ジュリオの当惑」('85)のジョルジョ・ベルトリーニがセット装飾を、「エスカレーション」('67)や「黄金の眼」('68)などサイケでモダンな作品を当時幾つも手がけていたルチアーナ・マリヌッチがゴージャスな衣装デザインを担当。そして、音楽はアントニオーニの「夜」('61)やアルジェントの「サスペリアPart 2」('75)でも有名なジャズ界の重鎮ジョルジョ・ガスリーニ。彼のスコアが第3の主演スターと呼んでもいいほど効果的に使われており、中でもエッダ・デロルソの超絶スキャットをフューチャーしたオープニングの実験ジャズは、ディアナの狂気にも似た内面の歪みを的確に表現していて白眉だ。

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自分のもとへ戻るようマルタを説得するディアナ

アレックスはダリオを連れて家を留守にする

広い屋敷で2人きりになったディアナとマルタは…

 主演はシドニー・ルメットの名作「女優志願」('58)の主演で一世を風靡したスーザン・ストラスバーグ。父親が演劇界の大御所リー・ストラスバーグというサラブレッド、しかもオードリー・ヘプバーンを彷彿とさせる清楚な美貌の持ち主ということで将来を期待されたが、結局は「女優志願」を超えるような代表作に恵まれなかった。チャック・ノリスの「デルタ・フォース」('85)では乗客役で顔を出していたっけ。ジッロ・ポンテコルヴォの「ゼロ地帯」('60)以降、イタリア映画にも時折出演している。
 姉のディアナを演じているのは、日本では「個人教授」('68)の大ヒットで当時人気絶頂だったナタリー・ドロン。アラン・ドロンと結婚したことで、モデルから女優へ転身した人だ。演技力よりもルックス先行だった感は否めないものの、本作は彼女の硬質で冷たい美貌が役柄と絶妙にマッチしており、なかなかの適役だったと言えよう。なお、実年齢はナタリーの方がスーザンよりも3つ年下だ。
 マルタの夫アレックスには、戦前からイタリアを代表する二枚目スターとして絶大な人気を誇った俳優マッシモ・ジロッティ。日本では「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('42)や「夏の嵐」('54)で知られており、いわゆるヴィスコンティ映画の美青年の原型だとも言われている。当時は既に50代だったが、その彫刻のような美貌は健在だ。
 そして、アレックスの従兄弟で正直なひょうきん者ダリオを演じているのが、当時若手有望株として頭角を現していたジャンカルロ・ジャンニーニ。「流されて…」('74)や「セブン・ビューティーズ」('76)などリナ・ウェルトミューラー作品の主演スターとして国際的に高く評価され、ヴィスコンティの「イノセント」('76)にも主演。「ハンニバル」('01)や「007/慰めの報酬」('08)などハリウッド大作でも活躍しているのはご存知の通り。ギトギトと脂ぎった男臭さがトレードマークのジャンニーニだが、本作ではまだ初々しさの残る朴訥とした好青年なのが面白い。

 

 

 

ラスト・エマニュエル/異国の情事
Eva nera (1976)
日本では劇場未公開・テレビ未放送
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2012 Apprehensive Films (USA)
画質★☆☆☆☆ 音質★☆☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/画面比:1.66:1/音声:モノラル/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/96分/制作国:イタリア
※500枚限定プレス(DVD-R)

<特典>
・予告編集
監督:ジョー・ダマート
製作:アレクサンダー・ハコーエン
脚本:アリスティデ・マッサチェージ
撮影:アリスティデ・マッサチェージ
音楽:ピエロ・ウミリアーニ
出演:ラウラ・ジェムサー
   ジャック・パランス
   ガブリエル・ティンティ
   ミシェル・スターク
   シグリッド・ザンガー
   グイド・マリオッティ

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弟ジュールス(G・ティンティ)とナイトクラブを訪れた大富豪ジューダス(J・パランス)

蛇を体に絡ませ妖艶に踊るヌード・ダンサー、エヴァ(L・ジェムサー)に惹かれる

エヴァは蛇と同じくらい女性を愛するレズビアンだった

<Review>
 “褐色のエマニエル”として'70年代に一世を風靡したセクシー女優ラウラ・ジェムサーが、「シェーン」('53)や「シティ・スリッカーズ」('91)のオスカー俳優ジャック・パランスと組んだイタリア産B級エロス。ヘビ使いのヌード・ダンサーを演じるラウラが、蛇マニアの大富豪に見初められたことから殺人事件に巻き込まれる…とはいっても、映画の大半は全裸で大蛇と戯れながら踊るラウラ、セクシー美女たちとねっとりレズるラウラ、香港の街を楽しげに散策するラウラなどなど、ほとんどラウラ・ジェムサーのプロモーション・ムービー的な内容。もちろん、その方向性は本作のターゲット層を考えれば大正解だと言えよう。
 舞台は香港。大富豪のジューダスは弟ジュールスに連れて行かれたナイトクラブで、ヘビ使いのヌード・ダンサー、エヴァに惹かれる。実は、ジューダスは熱心な蛇マニアで、自宅にはあらゆる種類の珍しい蛇が飼われていた。欲しいものは何でも与える、金に糸目はつけないからという彼の申し出を受け、住み込みでヘビたちの世話をすることになったエヴァ。だが、ジューダスの留守中に恋人の女性ジェリを連れ込んだところ、寝室に紛れ込んだ毒蛇によってジェリが死んでしまう。警察は事故死と断定したが、何者かがわざと毒蛇を部屋に放ったと信じるエヴァは、犯人に壮絶な復讐を遂げるのだった…。
 ということで、一応はリベンジ物の官能サスペンスってことなのだろうが、事件が起きるのは物語の半分以上を過ぎてからだし、そもそも初めっから観客に犯人をバラしているし、サスペンス映画としては完全にやる気ゼロである。しかも、証拠もなにも全くなしの唐突な復讐劇、そして贖罪といえばそうなのかもしれないけれど必然性が感じられない唐突なクライマックス。脚本そのものが行き当たりばったりだ。
 だいたい、この手の映画にとってストーリーとは1時間半の上映時間を埋めるための言い訳みたいなもの。それ自体に意味を求めちゃいけない。本作の場合、あくまでもメインはラウラ・ジェムサーであり、彼女のエロティックな肢体を眺めるためだけに映画は存在するのである。なので、ラウラ・ジェムサーのファンやB級ソフト・ポルノのファンであれば楽しめること間違いなしだが、それ以外の観客にとっては退屈なことこの上ないはず。でも、それでいいのだ。

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妄想の中でも蛇と戯れるエヴァの姿が延々と続く…(笑)

エヴァはジューダスの自宅で蛇の世話を任されることになる

その一方で、刺激的なアバンチュールを楽しむエヴァ

<Story>
 香港に住む人間嫌いの大富豪のジューダス・カーマイケル(ジャック・パランス)は、プレイボーイの弟ジュールス(ガブリエル・ティンティ)に誘われてナイトクラブを訪れた。そこで彼は大蛇と戯れながら踊るヌード・ダンサー、エヴァ(ラウラ・ジェムサー)を見かけて目が釘付けになった。
 その翌日、ジュールスからエヴァの電話番号を教わったジューダスは、豪華な自宅マンションに彼女を招く。足を踏み入れたエヴァは驚いた。彼の部屋では様々な種類の珍しい蛇が飼われていたのだ。人間よりも蛇を愛するジューダスに親近感を覚えた彼女は、金に糸目はつけないから住み込みで蛇の世話をして欲しいという彼の申し出を引き受ける。
 エヴァは行く先々で美女たちをナンパする自由奔放な肉食系レズビアンだった。そんな彼女は、ある日ジュールスに紹介されたブロンド女性ジェリ(ミシェル・スターク)と親しくなる。社会に貢献するため中国医学を学んでいるという彼女を本気で愛するようになるエヴァ。だが、ジューダスの留守中に彼女をマンションへ招き入れたところ、寝室に紛れ込んだ毒蛇に噛まれてジェリが死んでしまう。警察は事故死と断定したのだが…。

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エヴァは親しくなったジェリ(M・スターク)をレズビアンクラブへ誘う

兄ジューダスと違ってジュールスはサディスティックな男だった

ジェリのことを本気で愛するようになるエヴァ

<Information>
 監督は良きにつけ悪しきにつけラウラ・ジェムサーのキャリアを導いたエログロ映画監督ジョー・ダマートことアリスティデ・マッサチェージ。本作は「愛のエマニエル」('75)の続編“Emanuelle nera - Orient Reportage”('76)に続く2人のコンビ作品第2弾となる。とはいえ、どちらも香港が舞台となっていることから推測するに、恐らく両作品とも同時期にまとめて撮影されたのだろう。
 脚本も撮影もマッサチェージが本名で担当。彼がもともとB級映画の名カメラマンだったのはご存じの通りだ。製作は特撮マカロニ史劇「7人の輝ける戦士」('83)や文芸エロス「ナナ」('83)を手がけたアレクサンダー・ハコーエンが担当。ユーロB級映画の名物製作者、ハリー・アラン・タワーズも製作総指揮に携わっている。
 また、後に「サンゲリア2」('88)や「ゾンビ4」('88)などのC級ホラーの製作者となるフランコ・ガウデンツィが美術監督として参加。その「サンゲリア2」の監督をルチオ・フルチに代わって担当し、マッサチェージと並ぶイタリア映画界のゲテモノ監督として鳴らしたヴィンセント・ドーンことブルーノ・マッテイが編集を手がけている。
 そして、「フリーセックス地帯を行く/天国か地獄か」(768)の主題歌”マナ・マナ”などで世界中に熱狂的なファンを持つマエストロ、ピエロ・ウミリアーニが音楽スコアを担当。エキゾチックなアフロビートと艶かしいメロディが絶妙にブレンドされた、実に素晴らしいラウンジ・サウンドを全編に渡って堪能させてくれる。

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蛇にマウスを食べさせるなど今ならクレームもののシーンも

寝室に紛れ込んだ毒ヘビに噛まれたジェリが死亡する

ジュールスと共に故郷の島へバカンスに出かけるエヴァだったが…

 主演のラウラ・ジェムサーについてはこちらを参照していただくとして、それ以外のキャストについてザックリと解説を。中年の孤独な大富豪ジューダスを演じているジャック・パランスは、映画ファンならばご存知のように傑作ノワール「突然の恐怖」('53)や名作西部劇「シェーン」などの強烈な悪役として鳴らしたハリウッドの名優。ただ、本作の当時はハリウッドでは過去の人扱いで仕事がなく、しばしばイタリアをはじめとするヨーロッパ各国の低予算映画に出稼ぎをしていた。本作も、彼にとっては数ある小遣い稼ぎのうちの一つだったに違いない。その後西ドイツ製作の「バグダッド・カフェ」('87)で再評価されるようになり、「シティ・スリッカーズ」で念願のオスカー受賞を果たしたというわけだ。
 ジュールス役のガブリエル・ティンティはラウラ・ジェムサーの夫。「黄金の7人」('75)シリーズの仲間アルド役で記憶しているファンも少なくないだろう。ジェリ役のミシェル・スタークは「卒業生」('76)や「サロン・キティ」('76)にも出ていたマイナーなセクシー女優。美人と呼ぶには微妙な感じの貧相な魔女顔で、ブロンドとスリム体型と脱ぎっぷりの良さ以外はこれといって特筆すべきところなし。もうちょっとマシな女優を選んで欲しかったところだ。

 

 

7 ragazze di classe (1979)

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(P)2010 MYA Communications (USA)
画質★☆☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.77:1/音声:モノラル/言語:イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/87分/制作国:イタリア・スペイン

<特典>
なし

監督:ペドロ・ラザガ
製作:ジーノ・ロッシ
原案:トゥリオ・デ・ミケーリ
脚本:トゥリオ・デ・ミケーリ
   フェデリコ・G・アイカルディ
撮影:クリスティアーノ・ポガニー
音楽:ファビオ・フリッツィ
出演:ジャネット・アグレン
   ナディウーシュカ
   アルベルト・デ・メンドーザ
   パオロ・ジュスティ
   ロッサナ・ポデスタ
   エンゾ・チェルシコ
   ジャコモ・ロッシ・スチュアルト
   アドリアーナ・ルッソ
   ベアトリーチェ・ジョルジ
   ヴェロニカ・ミリエル
   フアン・サンタマリア

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美女ばかりの詐欺グループを率いる元締めイヴォンヌ(R・ポデスタ)

高級デパートに接触するラウラ(J・アグレン)とセリア(V・ミリエル)

グラマラスな肉体で支配人をメロメロにするメルセ(ナディウーシュカ)

<Review>
 世界を股にかける美人詐欺グループが色仕掛けで男たちを騙していくセックス・コメディ。イタリア語の原題を直訳すると“7人の危険な女たち”、しかも彼女らの元締め役がロッサナ・ポデスタってことで、あの傑作泥棒映画「黄金の七人」('65)を少なからず意識したことは明らかだろう。
 主人公はラウラ、メルセ、セリア、ベルタら7人の美女で結成された詐欺グループ。元締めイヴォンヌの指揮のもと、彼女たちがターゲットにするのは違法行為でボロ儲けしている金持ちの男ども。ある時は女警官、ある時は女流写真家、ある時は英国貴婦人など、それぞれが様々な役柄に扮装し、巧妙に計算されたシナリオと妖艶な美貌、そして豊満な肉体を武器に、男たちを面白いように騙して大金や宝石を奪っていく。
 基本的には、そんな彼女たちの女ねずみ小僧的な詐欺計画の数々を、あっけらかんとしたユーモアと大胆なお色気で描いていくだけ。とりあえずリーダー格ラウラと、彼女の正体に気づいた誠実な紳士アントニオとの純愛ロマンスも織り交ぜられるが、まあ、大して芸はない。特に意味もなく散りばめられたヘアヌードやベタな下ネタギャグなど、当時のイタリア産セックス・コメディにありがちな内容だ。
 しかも、タイトルでは7人と謳いつつ、実際に活躍するのは4人だけ(笑)。他にもいろいろとツッコミどころはあるのだが、それもまたご愛嬌だろう。ジャネット・アグレンやナディウーシュカ、ロッサナ・ポデスタなど女優陣の顔ぶれは華やかだし、彼女たちが着用する洗練された'70年代モードもゴージャスでお洒落だし、舞台となるマドリードやアマルフィのロケーションもまた美しい。大らかな古き良き'70年代を懐かしむという意味で、年季の入った映画ファンならばけっこう楽しめるはずだ。ま、後には何も残らないけれどね。

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支配人の金庫からまんまと大金を巻き上げる美女たち

観光地として有名なアマルフィに高飛びする

好色な大富豪カヴァラーリ(G・ロッシ・スチュアルト)に近づくセリアとメルセ

<Story>
 マドリードに集まった7人の美女たち。いずれ劣らぬセクシーで妖艶な彼女らの正体は、富と権力を牛耳る金持ちの男たちを狙う詐欺グループだ。元締めイヴォンヌ(ロッサナ・ポデスタ)の掲げる合言葉は、搾り取れるだけ搾り取れ。今度のターゲットは高級デパート、作戦の実行班はラウラ(ジャネット・アグレン)、メルセ(ナディウーシュカ)、セリア(ヴェロニカ・ミリエル)、ベルタ(ベアトリーチェ・ジョルジ)の4人。逮捕された仲間ノルマ(アドリアーナ・ルッソ)を助けるためにも、彼女たちは弁護士費用などに充てる多額の現金が必要だった。
 まずはラウラとセリアがフェミニスト団体の代表を装ってデパートの社長と面会し、チャリティへの協力を要請。社長は堅物の老人で2人の色気にも全くなびかなかったが、代理を任された息子アントニオ(フアン・サンタマリア)はハンサムで親切な紳士で、彼の取り計らいによってラウラとセリアはチャリティ用と称してテレビなど高額品を半額で大量に購入する。
 これでデパートの信頼を得た2人は、生活に困って仕事を探している友達がいるとアントニオに相談し、仲間のメルセを支配人の秘書として送り込む。そう、今回のターゲットはこの支配人だった。色仕掛けで支配人の愛人になったメルセは、彼が大金を隠し持っている事務所の金庫の鍵を入手。次にラウラが女性刑事、ベルタが万引き犯の妊婦、セリアが婦人警官に扮し、万引き事件をでっち上げて支配人の事務所で取り調べを行い、男性陣が外で待機している間に金庫の中の現金を盗むことに成功する。
 警察の手が回らないうちにアマルフィへと高飛びした美女たち。次なるターゲットはカステラマーレ候爵(アルベルト・デ・メンドーザ)とエンリコ・カヴァラーリ(ジャコモ・ロッシ・スチュアルト)。いずれも裏で悪事を働く上流階級の紳士だ。まずはメルセとセリアがカヴァラーリ、ラウラとベルタがカステラマーレ候爵に接近。気取った中年紳士たちも、彼女らの色香には敵わなかった。
 カヴァラーリをメロメロにしたセリアは、まんまと空家の豪邸を彼に買わせる。オーナー役は老女に仮装したメルセ。もちろん、代金はまんまと彼女たちの懐だ。一方、ラウラはファッション誌のグラビア撮影と称してカステラマーレ候爵の豪邸を借りる。そこで女流写真家に扮したメルセが公爵に接近。レンタル代を支払って信用を得た上で、次は個人的に屋敷を貸して欲しいと色仕掛けで頼み込む。
 その頃、悪名高い南米の大富豪ロベルト・ガリンデス(エンゾ・チェルシコ)がアマルフィにいると知ったイヴォンヌはラウラを送り込む。妖艶な英国貴婦人に扮したラウラは、たちまちガリンデスをメロメロにし、ピカソの贋作を超高額で買わせることに成功。取引場所はカステラマーレ候爵の屋敷で、メルセが候爵の代理人に扮したのだ。さらに、ラウラはエリザベス女王への紹介状(もちろん偽物)をガリンデスに渡し、騙されているとは知らない彼をロンドンへ追い払った。
 かくして、彼女たちの稼いだ大金で雇った一流弁護士のおかげで仲間ノルマは無罪放免。喜びに沸く美女たちは、アマルフィでの最後の仕事に取り掛かる。カステラマーレ候爵の紹介で大物宝石商フィリッポ(パオロ・ジュスティ)のもとを訪れたメルセは、侯爵の屋敷で行われる結婚式のために宝石を用意して欲しいと頼む。彼女のお色気にイチコロとなったフィリッポは大量の宝石を持参。メルセがウェディング・コーディネーター、ノルマが花嫁、セリアがメイドに扮し、どさくさに紛れて宝石を持って屋敷を逃げ出す。
 騙されたことに気づいて怒り心頭のフィリッポ、放心状態のカステラマーレ候爵、呆れた顔の候爵夫人。ロンドンからとんぼ返りしたガリンデスも、自分を騙したのが侯爵だと勘違いして屋敷へ押しかけてきた。その頃、次なる場所へ高飛びするために港へ向かう美女たち。ラウラは自分の正体を知りつつも愛してくれるアントニオのプロポーズを受けるべきか迷うのだが…。

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ラウラは悪徳貴族カステラマーレ候爵(A・デ・メンドーザ)に取り入る

カヴァラーリを虜にして大金をせしめるセリア

ラウラは南米の大富豪ガリンデス(E・チェルシコ)を丸め込む

<Information>
 演出はリン・フレデリック主演のSFロマンス「熱愛」('75)で知られるスペイン出身の職人監督ペドロ・ラザガ。実は彼、その昔「七人のあばれ者」('63)という「七人の侍」をパクったスペクタクル史劇を撮っている。まあ、単なる偶然だとは思うのだけれど(笑)。
 原案と脚本を手がけたトゥリオ・デ・ミケーリはアルゼンチンの出身で、マカロニ西部劇「ワイアット・アープ」('65)やホラー映画「モンスター・パニック/怪奇大作戦」('70)などの監督作もある人物。脚本家としては、ジュリアーノ・ジェンマ主演のマフィア・コメディ「くたばれ!カポネ」('73)が有名だ。また、コリンヌ・クレイリー主演の「ラスト・ハーレム」('81)の脚本と製作を手がけたフェデリコ・G・アイカルディが共同脚本に名を連ねている。
 撮影は「白昼の暴行魔」('78)や「サイズぴったり」('84)のクリスティアーノ・ポガニー。「皇帝のビーナス」('62)や「モンテカルロ・ラリー」('69)などで有名な大御所ガボール・ポガニーの息子だ。また、「ペンデュラム/悪魔のふりこ」('91)や「パペットマスター」シリーズなど、アメリカのフルムーン・ピクチャーズ作品で有名になるアドルフォ・バルトーリがカメラ・オペレーターを務めている。
 そして、音楽を担当するのは「荒野の処刑」('75)以降、「サンゲリア」('79)や「ビヨンド」('80)、「地獄の門」('80)などルチオ・フルチ監督作品の大半を手がけるファビオ・フリッツィ。本作ではいかにも'70年代末らしい、ディスコとAORをミックスしたライトなポップサウンドを聴かせている。

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ラウラの正体を知りつつも愛のために追いかけてきたアントニオ(J・サンタマリア)

侯爵の名前を利用して最後の仕事に取り掛かるメルセ

宝石商フィリッポ(P・ジュスティ)から大量の宝石を奪う

 主演はフルチの「地獄の門」('80)やウンベルト・レンツィの「食人帝国」('80)でお馴染みのスウェーデン人女優ジャネット・アグレン。日本ではホラー映画女優という印象の強い人だが、もともとはフランス産青春映画「さらば夏の日」('72)の性に奔放な美少女役など、正統な美人女優として売り出された人だった。
 彼女と二枚看板で主演にクレジットされているナディウーシュカは、ドイツ出身の元ファッションモデル。ソフィア・ローレンを彷彿とさせる濃厚なお色気とグラマラスボディ(しかも身長180センチ)はイタリアやスペインで需要が高く、セックス・コメディやソフト・ポルノで重宝されたが、日本では主演作が輸入されることはなかった。なお、スペインで撮影されたシュワちゃん出世作「コナン・ザ・グレート」('82)では、コナンの母親役として顔を出している。
 一番の脱ぎ役セリアを演じているヴェロニカ・ミリエルは、'70年代にスペインで一世を風靡したお色気コメディエンヌ。爽やかでキュートな魅力の持ち主だ。一方、メンバーの妹分的なブロンド美女ベルタを演じているベアトリーチェ・ジョルジは、アルジェントの「インフェルノ」('80)やカヴァーニの「愛の謝肉祭」('82)で有名なトップ女優エレオノラ・ジョルジの妹。お姉さんと顔は似ているものの演技力は遥かに及ばず、映画出演作がこれ一本きりだったのも頷ける。
 そのほか、フルチの「幻想殺人」('71)の刑事役でも知られるスペインのダンディな名優アルベルト・デ・メンドーザ、マリオ・バーヴァの「呪いの館」('67)のヒーロー役やマカロニ西部劇スターとしても有名なジャコモ・ロッシ・スチュアルト、「アラン・ドロンのゾロ」('74)で相棒の召使ホアキンを演じていたエンゾ・チェルシコ、ジャン・ギャバン主演の「脱獄の報酬」('76)などフランス映画への出演が多いパオロ・ジュスティ、「欲望の中の女」('81)などのエロス物に数多く顔を出していたアドリアーナ・ルッソなどが共演。
 そして、ハリウッド映画「トロイのヘレン」('55)の主演で“世界一の美女”と呼ばれ、峰不二子のモデルともなった「黄金の七人」('65)シリーズの女泥棒ジョルジア役でも有名な大女優ロッサナ・ポデスタが、美女たちの元締めイヴォンヌ役を演じている。

 

 

スキャンダラス・鏡の中の背徳
Scandalosa Gilda (1985)

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(P)2010 One 7 Movies (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/音声: 2.0ch DOLBY STEREO/言語:英語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/97分/制作国:イタリア

<特典>
なし
監督:ガブリエル・ラヴィア
製作:ピエトロ・イノチェンツィ
原案:ガブリエル・ラヴィア
脚本:ガブリエル・ラヴィア
   リカルド・ギオーネ
撮影:マリオ・ヴルピアーニ
音楽:ジョルジョ・カルニーニ
出演:モニカ・ゲリトーレ
   ガブリエル・ラヴィア
   ピーナ・チェイ
   ジャスミン・マイモーネ
   ダリオ・マッゾーリ
   サーシャ・マリア・ダーウィン
   イタロ・ガスペリーニ

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夫の浮気現場を目撃して深く傷ついた人妻(M・ゲリトーレ)

年老いたメイド(P・チェイ)の慰めと助言も彼女の耳には届かない

旅に出た彼女はエキセントリックなアニメ作家(G・ラヴィア)と知り合う

<Review>
 かつてイタリア映画界きってのおしどり夫婦だったモニカ・ゲリトーレとガブリエル・ラヴィア。俳優の傍らで舞台や映画の演出家としても活躍したラヴィアは、常に妻ゲリトーレをヒロイン役に据えていた。映画では5本の監督作がある彼だが、その全てで妻と共演している。これもその中の一本。
 今回ゲリトーレが演じているのは美しき年増の人妻。夫が若い女と浮気している現場を目撃してしまった彼女は、ショックのあまり自暴自棄となり家出をしてしまう。そんな彼女がドライブ中に知り合ったのは、オペラ好きのエキセントリックなアニメ作家。彼の情熱的な愛情と欲望に身を任せて溺れつつも、頑なに愛されることを拒む彼女は、まるで自分だけでなく彼のことも傷つけるかのように、暴力的でハレンチで淫らな行為を続けていく…。
 どこからどう見ても「ラスト・タンゴ・イン・パリ」からの影響が濃厚な作品。アナル・セックス・シーンなんかそのまんまだしね。ノワール風の退廃的でスタイリッシュな映像、ムーディでジャジーな音楽スコアなど、いかにもベルトルッチを気取ってみた芸術ポルノといった感じだ。
 ただ、ウジウジとしたヒステリックな女の自傷行為的セックスを延々と見せられるのは結構な忍耐力を必要とするし、そんな彼女に誘惑され傷つけられ貶められながらも求めていく男の気持ちもイマイチ理解不能。そもそもヒロインの心の傷というのが、結局のところ“私ってオバサン?私ってそんなにブス?”と完全に見た目だけの浅はかな話だったりするのがなんとも情けない。あんた、美人だけど頭は相当悪いよね、とでも言いたくなるってもんだ。
 確かにモニカ・ゲリトーレはすこぶる美しい。'80年代的なお洒落ビジュアルも、まあ、懐かしいよねって意味を含めて楽しめたりするのだが、中身は残念ながら薄っぺらい。おそらく一番の見どころは、途中で挿入されるアダルト・アニメ。アニメ作家の男が即興で考えついた作品てことなのだが、ペニスにソックリな小人の国に巨大な美女スキャンダラス・ギルダがやってくる。しかも、その姿は下半身に顔がくっついただけという素晴らしい代物(笑)。ワギナの部分が巨大な口になっていて、その中へペニスくんが呑み込まれて精力を抜き取られる。なかなかイカしたセンスの大人向け風刺アニメだ。

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劇中劇であるアニメ“Sancadalosa Gilda”

ペニスにソックリな姿の小人たちの国

現れたのは巨大な美女(?)ギルダ

<Story>
 夫(ダリオ・マッゾーリ)が若い女性(ジャスミン・マイモーネ)と浮気をしている現場を発見し、ショックのあまり嘔吐してしまう人妻(モニカ・ゲリトーレ)。追い打ちをかけるように、夫は自分を尾行してきた妻のことを激しく責める。お前のせいで俺は恥をかかされたと。自宅へ戻った人妻は一人で悩み苦しむ。彼女は私よりも美人なの?彼女は私よりもセックスが上手いの?メイドの老婆(ピーナ・チェイ)は、夫婦の間にはベッド以外の愛が重要だと説くが、人妻の耳には届かない。
 翌朝、自宅を出た人妻はあてどもなく車を走らせる。そんな彼女が出会ったのはアニメ作家の男(ガブリエル・ラヴィア)。カーステレオでオペラを大音量でかけて大声で歌う男を“頭がおかしい”と侮蔑していた人妻だが、意外にも彼は紳士的で面白くて優しかった。目の前で即興のイラストを描き、楽しい作り話をしてくれ、君と寝たいと率直に言ってくれる男に身を任せた人妻。
 しかし、愛を交わしたあとに彼女は金を要求する。私は所詮“娼婦”だから、と。惨めな女に愛される資格なんてない、愛されたくもない、あなたが可哀想だから寝てあげただけ。だからお金をちょうだい。戸惑いながらもそれが彼女の本意ではないと考える男。激しい言い争いの末に、興奮した2人はアナルセックスに及ぶ。
 2人で再びあてどのない旅へ出た人妻と男。彼女への熱い思いをぶつける男、激しく拒絶しながらも愛欲に溺れる人妻。彼女は男の顔面に放尿プレイを強要し、公衆トイレで野獣のようなセックスを求め、雨の降りしきる中で罵詈雑言を浴びせ、道で拾ったトラック運転手とのセックスを男に見せつける。それでも愛しているという男に、行きずりの女をレイプさせる人妻。私を好きなら、あの女を犯して。数々の辱めにいよいよ怒りを爆発させる男だったが…。

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激しい肉欲に溺れた2人だったが…

人妻は男に金銭を要求する

娼婦のようなメイクに自虐的な笑いを浮かべる2人

<Information>
 日本では「デアボリカ」('73)の夫役や「サスペリアPART2」('75)のゲイのピアニスト役など、ホラー映画の俳優として知られているガブリエル・ラヴィアだが、イタリアではアート系ポルノの監督しても定評がある。筆者が当時映画館で見たのは同じく夫婦共演した「ベレッタの女/最後の誘惑」('86)だけだが、思い返せばあの作品も見た目や雰囲気だけはお洒落だけれど、後には何も残らない類のハードボイルド風エロスだった。
 ラヴィアと共に脚本を書いたのは、同じくゲリトーレが主演したサルヴァトーレ・サンペリ監督の「パトリシア/禁断の歓び」('84)やトニーノ・ヴァレリ監督の「黒い炎・情事」('85)のリカルド・ギオーネ。製作者のピエトロ・イノチェンツィは「ベレッタの女〜」のプロデュースも手がけたほか、ルッジェロ・デオダート監督の「ヘルバランス」('88)やセルジョ・マルティーノ監督の「カサブランカ・エクスプレス」('89)、クロード・シャブロル監督の「クリシーの静かな日々」('90)などテリトリーの実に幅広い人物だった。
 撮影監督のマリオ・ヴルピアーニは、「ひきしお」('71)や「最後の晩餐」('73)など鬼才マルコ・フェレーリ監督作品で知られるカメラマン。池田満寿夫の「エーゲ海に捧ぐ」('79)や「窓からローマが見える」('82)、増村保造の「エデンの園」('81)など、日本映画との縁も深い。アメリカのB級映画専門会社フルムーン・ピクチャーズの「キャッスル・フリーク」('95)も彼の仕事だった。
 アニメパートを手がけたのは、英語圏では“King Dick”のタイトルで公開されてカルト的な人気を得たアダルト・アニメ“Il nano e la strega(魔女と小人)”('73)で知られるイタリアの異色アニメ作家ギッバ。そのほか、「炎のいけにえ」('74)や「カニバル」('76)のダニエレ・アラビソが編集を、「サファリ特急」('76)のジョヴァンナ・アゴスティヌッチが美術デザインと衣装デザインを担当している。

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人妻は公衆トイレでケダモノのようなセックスを要求する

愛を求める男と愛を拒絶する女

トラック運転手とのセックスを男に見せつけようとする

 主演は当時ラヴィアの妻だったモニカ・ゲリトーレ。日本ではマーク・レスターと共演した「楡の木陰の愛」('74)やラウラ・アントネッリ共演の「薔薇の貴婦人」('86)で知られている程度だが、イタリアではヴィットリオ・デ・シーカやエットーレ・スコラなど巨匠の作品に出演した名女優として尊敬されており、シェークスピアからテネシー・ウィリアムスまでこなす舞台女優としても知られている。
 なお、ラヴィアとゲリトーレ以外のキャストはほとんど端役の扱い。メイドの老婆を演じているピーナ・チェイは戦前から映画に出ていたベテランで、巨匠ゼフィレッリの「トラヴィアータ/1985・椿姫」('82)にも顔を出していた。夫の浮気相手を演じているジャスミン・マイモーネは、「デモンズ」('85)の劇中映画に出演していた女優さん。夫役のダリオ・マッゾーリは「ベレッタの女〜」にも出ていた。

 

 

レディ・ドール2
L'attrazione (1987)

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(P)2014 One 7 Movies (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:モノラル/言語:イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/ 85分/制作国:イタリア

<特典>
なし
監督:マリオ・ガリアッツォ
製作:ジョー・ヴェヌーティ
脚本:マリオ・ガリアッツォ
撮影:シルヴィオ・フラスケッティ
音楽:フランコ・カンパニーノ
出演:フローレンス・ゲラン
   マリーノ・マゼ
   マルティーヌ・ブロシャール
   アン・マーガレット・ヒューズ
   ステファノ・サベッリ
   アドリアーナ・ジュフレ

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ファッション写真家ナディーネ(F・ゲラン)

シュナイダー邸で撮影を行う

ナディーネを引き止めるシュナイダー(M・マゼ)

2人はチェスの対局を始める

<Review>
 '80年代のシルヴィア・クリステルとも呼ぶべきソフトポルノ女優フローレンス・ゲランの主演作。「レディ・ドール2」と銘打ってはいるものの、もちろん実際は続編でも関連作でもない。そもそも、あちらはフランス映画、こちらはイタリア映画だしね。
 で、ゲランが扮するのは美貌のファッション写真家ナディーネ。有名な経済学者シュナイダーの豪邸を撮影のために借りた彼女は、共通の趣味であるチェスを楽しむため宿泊することとなる。一つ駒を取るたび、相手に好きなことを命令できるというのがルール。初めは他愛のない大人のゲームだったはずが、やがて2人を取り巻く怪しげな人間関係が複雑に絡んでいき、思いがけない結末を迎えることとなる。
 とりあえず、ミステリー仕立ての官能ロマンスといったところか。シュナイダーの妻ルチアーナや秘書ヴァレリアのそれぞれに秘密があって、さらには資産家でもあるシュナイダーを巡る陰謀の影もチラホラと見え隠れする。そもそも、ネディーネとシュナイダーの間にも何かしら曰くがありげで…と思わせぶりな伏線を張っているものの、さしてサスペンスフルな展開にもならず。しかも、最後にはナディーネの意外…でもない正体が明かされ、なんだかハートウォーミングな話へ方向転換していくに至っては、正直やってられないねって感じだ(笑)。
 また、話の本筋とは特に関係のないエロティックな妄想シーンが多すぎるのも難点。同じシーンを何度も使いまわしているし。これはもう、時間稼ぎ以外の何ものでもあるまい。ストーリーの鍵になるチェス・ゲームだっていい加減。一応、文豪ジュゼッペ・ジャコーザの著書「チェスの一局」を引用したりして、それとなく本格風を装ってはいるものの、対局の描写はまるっきり手を抜いている。そもそも、話が進むにつれてゲーム自体がなおざりになってしまうし。
 とはいえ、フローレンス・ゲランの主演作ってだいたいこんな具合、つまり雰囲気だけ重視で中身は適当なエロ映画だから仕方ないか。なにしろ、当時は年に4〜5本くらいのペースで作られていたしね。まさに粗製濫造。その中でも、それなりに洗練されたゴージャスなムードを楽しめる本作は、まだまだマシな部類だと言えよう。

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夫とナディーネの仲を疑う妻ルチアーナ(M・ブロシャール)

大人の罰ゲームを愉しむナディーネとシュナイダー

2人には何かしらの過去がある様子だった

シュナイダーの身辺を探る秘書ヴァレリア(A・M・ヒューズ)

<Story>
 夜行列車に一人で乗った女性が、コンパートメントの中で謎の男に背後から犯される。抵抗することなく身を任せ、快感に悶える女。顔の見えない男は絶頂に達すると静かに消える。女性の名前はナディーネ(フローレンス・ゲラン)。ヴァニティ・ニュース社のファッション写真家だ。ヨーロッパ銀行の次期頭取と目される経済評論家シュナイダー(マリーノ・マゼ)の豪邸を訪ねた彼女は、下着のグラビア撮影に屋敷を貸してもらえないかと申し出る。
 撮影は滞りなく終了。スタッフやモデルたちと帰ろうとしたナディーネをシュナイダーが引き止める。お互いにチェスが趣味とのこと、良ければ泊りがけでゲームを楽しみませんか?というのだ。シュナイダーの妻ルチアーナ(マルティーヌ・ブロシャール)は当然怪訝そうな顔をするものの、ナディーネはシュナイダーの申し出を受けることにした。
 ゲームのルールはシンプル。お互いに相手の駒を一つ取るたび、好きな命令をすることができる。取られた方は、その命令を拒否することはできない。まるで昔からの知り合いのように振舞うナディーネと夫の様子に、ルチアーナは淫らな妄想を掻き立てられて身悶えるのだった。
 翌朝、シュナイダーの秘書ヴァレリア(アン・マーガレット・ヒューズ)が屋敷にやって来る。ナディーネは彼女から、ルチアーナがシュナイダーの正式な妻ではないこと、正体不明の本妻は別にいること、そしてヴァレリア自身も彼の愛人であることを知らされる。それでもチェスの対局は続けられ、ナディーネとシュナイダーはエロティックな罰ゲームを愉しんでいた。
 実は、ヴァレリアはシュナイダーの敵に送り込まれたスパイで、彼の身辺を密かに探っていた。また、ルチアーナは元高級コールガールで、その事実を周囲にひた隠していたのだ。2人はお互いに裏があると踏んでおり、それとなく牽制しあっていた。
 その頃、メイドのイオリア(アドリアーナ・ジュフレ)を車で自宅へ送り届けたナディーネは、その帰り道にジョルジョ(ステファノ・サベッリ)というハンサムな青年医師と知り合う。シュナイダー邸の晩餐会に彼を招いたナディーネ。ジョルジョは彼女を連れ去ろうとするが、しかしナディーネはシュナイダーのもとへ戻ってしまう。なぜ彼女はそこまでシュナイダーにこだわるのか…?

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元コールガールのルチアーナは正式な妻ではなかった

ナディーネに想いを寄せる青年医師ジョルジョ(S・サベッリ)

シュナイダーはナディーネとジョルジョの関係を妄想する

果たしてナディーネの正体とは…?

<Information>
 監督と脚本を手がけたのは、感動ファミリードラマ「虹をわたる風船」('74)からゲテモノ・ホラー「食人族VS首狩族」('86)まで、文字通り何でもアリの職人監督マリオ・ガリアッツォ。「エクソシスト」のパクリである「レディ・イポリタの恋人/夢魔」('74)をさらにパクった「バージン・エクソシスト」('74)も彼の作品だったっけ。
 撮影監督は「スペース・ウルフ/キャプテン・ハミルトン」('77)や「キャプティブ・プラネット/恐怖の惑星競売」('78)、「エイリアンズ」('80)など、イタリア産Z級SF映画を数多く手がけたシルヴィオ・フラスケッティ。そのほか、ルイジ・コメンチーニ監督作品の常連だったセルジョ・ブーツィが編集を、タヴィアーニ兄弟の「父/パードレ・パドローネ」('77)のジョヴァンナ・コッシア・デ・ポーリが衣装と美術を、「白夜」('57)から「イノセント」('77)まで全てのヴィスコンティ監督作品で助手を務めたアルビーノ・コッコが助監督を、タヴィアーニ兄弟の「アロンサンファン/気高い兄弟」('74)の製作者ジュゼッペ・フランコーネが制作主任を担当。また、「大人になる前に…」('78)など'70年代に活躍した作曲家フランコ・カンパニーノが音楽スコアを手がけている。

 ミス・カンヌ出身のフランス女優フローレンス・ゲランは、本国のB級ソフトポルノ「レディ・ドール」('85)のヒットで一躍国際的に注目されたわけだが、名匠サルヴァトーレ・サンペリ監督の「若妻の匂い」('86)や文豪ダヌンツィオを題材にしたロバート・パウエル主演の歴史劇「欲望の白い肌」('86)など、イタリア映画への出演もけっこう多かった。ジェス・フランコ監督の「フェイスレス」('87)には本人役でゲスト出演しており、当時のヨーロッパでの人気がいかに高かったのか伺い知ることができる。ただ、お世辞にも演技が上手いとは言えず、そのために全盛期はかなり短かった。
 シュナイダー役のマリーノ・マゼは、ゴダールの「カラビニエ」('63)やベロッキオの「ポケットの中の握り拳」('65)、カヴァーニの「愛の嵐」('74)など数多くの名作で重要な役を演じた名優。コッポラの「ゴッドファーザー」シリーズにも顔を出していたほどの俳優だが、イタリア映画界が斜陽となった'80年代は「エイリアンドローム」('81)や本作など低予算のB級映画への出演も少なくなかった。
 ルチアーナを演じているマルティーヌ・ブロシャールは、ティント・ブラス監督の「パプリカ」('89)などイタリア産ソフトポルノではお馴染みのフランス女優。ヴァレリア役のアン・マーガレット・ヒューズはアメリカ出身らしく、本作以降たびたびイタリア映画に出演しているが、その素性は全くもって分からない。
 そのほか、「レディ・ドール3」('87)でもゲランと共演していたステファノ・サベッリ、「黄金の三悪人」('67)などマカロニ西部劇でよくメキシコ女などを演じていたアドリアーナ・ジュフレ、「デモンズ」('85)で最初にデモンズ化した黒人女優ゲレッタ・ゲレッタなどが脇を固めている。

 

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