イタリアン・コメディ セレクション

 

 

パンと恋と夢
Pane, amore e fantasia (1953)
日本では1955年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済
※下記北米盤DVDはイタリア盤と同じデジタル・リマスター版

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(P)2008 Mya Communication (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:イタリア語・英語/字幕:なし/地域コード:ALL/製作:イタリア

特典映像
ポスター&スチル・ギャラリー
監督:ルイジ・コメンチーニ
製作:マルチェロ・ジローシ
脚本:ルイジ・コメンチーニ
   エットーレ・M・マルガドンナ
撮影:アルトゥーロ・ガレア
音楽:アレッサンドロ・チコニーニ
出演:ヴィットリオ・デ・シーカ
   ジーナ・ロロブリジーダ
   マリサ・メルリーニ
   ヴィルジリオ・リエント
   ティナ・ピカ
   マリア・ピア・カジリオ
   ロベルト・リッソ
   ヴィットリア・クリスポ

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中年色男アントニオ(V・デ・シーカ)が警察署長として着任

アントニオの到着は人口600人の村にとって一大事件だ

貧しいお転婆娘マリア(G・ロロブリジーダ)

マリアは若い新米巡査ピエトロ(R・リッソ)に恋している

 山間の小さな村を舞台に繰り広げられる恋のさや当てを、ほのぼのとしたタッチで描いた恋愛喜劇。貧しいけれども陽気で、騒々しいけれども憎めなくて、噂好きで厚かましいけれども人情味溢れる。そんな古き良きイタリア庶民の面白さを、ハンサムな中年警察署長を巡るささやかな恋愛模様を通して温かく見つめていく。他愛ないといえば他愛ない物語ではあるものの、戦後イタリア映画の復興を象徴する古典的名作の一つであることは確かだ。
 舞台は人口600人の山村サリエーナ。そこへ、中年ではあるものの独身でハンサムな警察署長アントニオが赴任してくる。早速、隣に住む助産婦アンナレッラに一目惚れするアントニオだったが、村人の噂によると彼女はローマに恋人がいるらしい。それは残念と諦めた彼は、次に村人から“山猫”とあだ名されるお転婆娘マリアに好意を寄せる。しかし、彼女の方は新米巡査ピエトロに夢中。とはいえ、ピエトロは気が弱くて奥手な若者だし、勝ち気で喧嘩っ早いマリアも素顔は純情で優しい乙女。なので、なかなかお互いに素直な気持ちを打ち明けられないでいる。そんな折、ピエトロが牧師の姪っ子と結婚するらしいとの噂が村中に流れて…。
 一連のネオレアリスモ作品で世界にその名を轟かせた戦後のイタリア映画だが、高度成長期への突入によって明るく夢のある題材が好まれるようになった。いわゆる“バラ色のレオアリスモ”というやつだ。その転換期に生まれたのがヴィットリオ・デ・シーカ監督の『ミラノの奇蹟』(50)であり、レナート・カスッテラーニ監督の『2ペンスの希望』(51)であったわけだが、さしずめ本作はその決定打となった一本と言えるかもしれない。
 監督のルイジ・コメンチーニは、戦後イタリアの大衆娯楽映画を語る上で絶対に欠かすことのできない巨匠。『ブーベの恋人』(63)のようなメロドラマからアクション映画まで実に幅広い職人監督だったが、中でも本作のような大衆喜劇は得意中の得意だった。素朴で牧歌的なストーリーの中にも一般庶民の逞しさや狡賢さ、セックスや宗教に関する都合のいいモラル解釈などをチクリと皮肉ってみせたりする辺りは実に鋭い。なかなか侮ることのできない映画監督と言えよう。
 さらに、アントニオ役を演じるヴィットリオ・デ・シーカとマリア役のジーナ・ロロブリジーダが見事なくらいのはまり役で、物語に活き活きとした躍動感と心温まる深みを与えている。個性豊かな脇役陣によるバイタリティ溢れる演技も実に魅力的。そればかりか、村人役のエキストラたちも芸達者が揃っており、意地の悪い地主が現れると口々に“くたばれ、くたばれ、くたばれ…”と念仏を唱える姿なんかまさに抱腹絶倒だ。
 ちなみに、本編中でさらりと触れられる『パンと恋と夢』というタイトルの由来もなかなか気が利いている。やはり活気に満ちた時代の空気が生んだ作品なのであろう。主演のロロブリジーダは本作を足掛かりに世界的な大女優へと成長し、コメンチーニ監督も翌年のベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した。興行的にも大変な成功を収め、同じスタッフとキャストによる続編『パンと恋と嫉妬』(54)が作られている。

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助産婦アンナレッラ(M・メルリーニ)に夢中のアントニオ

牧師ドン・エミディオ(V・リエント)はマリアの理解者

ピエトロが他の娘と結婚すると聞かされたマリア

マリアとパオレッタ(M・P・カジリオ)が大喧嘩

 イタリア山間部の小さな村サリエーナに新しい警察署長アントニオ・カロテヌート(ヴィットリオ・デ・シーカ)がやって来た。白髪の中年男とはいえ、独身でハンサム。好奇心旺盛で噂好きの村人たちは大騒ぎだ。警察署長の任期は4年。しかし、人口たったの600人という長閑な田舎では窃盗事件の一つもなし。こんな退屈な場所に4年間も縛られるのかと思いやられるアントニオだったが、隣のアパートに住む美人の助産婦アンナレッラ(マリサ・メルリーニ)に一目惚れし、田舎暮らしも悪くはないかもしれないと思い始めていた。
 村には“山猫”とあだ名される貧しいお転婆娘マリア(ジーナ・ロロブリジーダ)が住んでいる。母親の女手一つで育てられ、4人の幼い弟や妹がいるマリアは、まだまだうら若い娘の身でありながら一家の大黒柱だ。しかし、村にはこれといった仕事があるわけではなく、意地悪な地主の農園から盗んだ果物を売って生計を立てている。とびっきりの美人なもんだから村中の男たちが色目を使うものの、しっかり者で気の強い彼女は身持ちも固い。
 とはいえ、村人の中にはマリアのことを快く思わない人々もいた。そんな彼女に理解を示すのは、村人たちの生活を温かい目で見守る教会の牧師ドン・エミディオ(ヴィルジリオ・リエント)。マリアのお転婆ぶりを厳しい口調で戒めつつも、根は正直者で優しい彼女のことを誰よりも心配して気にかけていた。
 そんなマリアには、人知れず想いを寄せる相手がいた。駐在所に勤務する新米の巡査ピエトロ(ロベルト・リッソ)だ。彼の方でもマリアに惚れていたものの、なにしろ極端に奥手で気が弱いもんだから、彼女を目の前にすると言葉も出なくなってしまう。ただし、それはマリアも一緒。普段は勝ち気で喧嘩っ早い彼女だったが、ピエトロの前では途端にしおらしくなってしまう。なんとも歯がゆい2人だった。
 さて、見回りの途中でアンナレッラとお近づきになってウキウキするアントニオだったが、情報通のメイド、カルメーラ(ティナ・ピカ)によると、アンナレッラは月に一度必ずローマへ行くのだという。普段はどこかもの寂しげな彼女だが、ローマから帰って来るとスッキリした顔をしている。あれは絶対に恋人がいるはずだ。そう聞いたアントニオは落胆するものの、そこは切り替えの早い楽天的なラテン気質、今度は気風のいいマリアに鞍替え。彼女が愛しているのは部下のピエトロだとも知らず、気さくに声をかけられるたびに色めき立つアントニオだった。
 ところがそんなある日、マリアはカルメーラから信じられないような話を耳にする。ピエトロがドン・エミディオの姪っ子で意地悪な娘パオレッタ(マリア・ピア・カジリオ)と結婚するというのだ。深く心を傷つけられたマリアは、ピエトロに対する態度を豹変。理由を知らないピエトロは戸惑うばかりだ。さらに、村の広場でマリアとパオレッタが大喧嘩を繰り広げ、気性の荒いマリアは留置所で一晩を過ごすことになる。
 ちょうどその日、マリアの家族は巡礼に出かけていて留守だった。マリアはロバの餌やりをしなくてはいけないものの、留置所から出ることは出来ない。そこで、彼女はアントニオに餌やりを頼むことにする。アントニオは気を利かせたつもりで留守宅に金を置いてきたのだが、これが思わぬ騒動のタネとなってしまった。翌朝、何も知らずに帰宅したマリアの母親(ヴィットリア・クリスポ)が金を見つけ、聖アントニオの奇蹟だと大騒ぎし始めたのだ。たちまちマリアの家には村人が大勢集まり、この奇蹟に感謝して祈り始めた。しかし、マリアは金を置いたのがアントニオだと気付いており、安っぽい女のように扱われたと思って深く傷つく。しかも、そんな彼女の様子を見て早合点した母親が、娘とアントニオを結婚させようと子供たちを使って画策するのだった。
 一方、事態を知ったドン・エミディオがアントニオを呼び出す。手の付けられないはねっ返りのマリアだが、性根は純情で優しい娘だ。彼女とピエトロが愛し合っていることを知るドン・エミディオは、2人を結婚させるつもりだった。どんなことがあっても、マリアを傷つけることは絶対に許さない。そう聞かされたアントニオは、2人のために一肌脱ぐことを決意する。さらに、ローマから戻ったアンナレッラと再会した彼は、思いもよらぬ事実を知ることとなり…。

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マリアだけが留置所へ入れられることとなる

おだてられたアントニオはマリアにアタックしようとする

マリアの家で金が見つかり奇蹟だと大騒ぎする村人たち

マリアの母親(V・クリスポ)が余計な世話を焼く

 ド田舎の保守的で閉鎖的なコミュニティーにおける生きづらさを風刺しつつ、それでもお互いに助け合いながら本音でぶつかり合うイタリア人気質を大らかなユーモアで包み込むように描いていくコメンチーニの眼差しはとても優しい。人間の愚かさや浅はかさをおちょくりながらも、最終的にはやっぱり人間て素晴らしいもんだという前向きな姿勢が、なんとも清々しい爽やかさを醸し出す。実に後味のよろしい作品だ。
 コメンチーニ監督と共同で脚本を執筆したエットーレ・マリア・マルガドンナは『2ペンスの希望』の原作者であり、ある意味で“バラ色のレアリスモ”を牽引した一人とも言うべき脚本家。続編『パンと恋と嫉妬』はもちろんのこと、シリーズ第3弾にしてソフィア・ローレンがヒロイン役を務めたディーノ・リージ監督の『殿方ごろし』(55)の脚本も担当している。
 ちなみに、撮影監督を担当したアルトゥーロ・ガレアと音楽スコアのアレッサンドロ・チコニーニも、同じく『2ペンスの希望』に携わっていた。ガレアはサイレント時代から活躍する当時既にベテランのカメラマンで、チコニーニは『靴みがき』(46)や『自転車泥棒』(48)などヴィットリオ・デ・シーカ監督作品に欠かせない名作曲家。中でも牧歌的で耳触りの良いチコニーニのメロディは、なかなか印象深い出来栄えだ。
 そのほか、編集には『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(42)や『夏の嵐』(54)などヴィスコンティ作品に欠かせない名職人マリオ・セランドレイ、美術デザインには『屋根』(56)や『ふたりの女』(60)のガストーネ・メディン、セット装飾には『サロン・キティ』(76)や『ラスト・エンペラー』(87)の衣装デザイナーとしても知られるウーゴ・ペリコーリなどが参加。また、後にヴィスコンティやパゾリーニのカメラマンとして有名になるアルマンド・ナヌッツィが、本作ではアルトゥーロ・ガレアのアシスタントを務めている。

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マリアとピエトロの仲を知らされるアントニオ

ピエトロの気持ちを初めて知り安堵するマリア

アンナレッラと再び急接近するアントニオ

アンナレッラから思いもよらぬ手紙を受け取る

 主人公の警察署長アントニオ役を演じているのはヴィットリオ・デ・シーカ。日本では映画監督として馴染みの深い巨匠だが、もともとは戦前のイタリア映画界を代表する二枚目スターだった。その伊達男ぶりは撮影当時50歳を過ぎていた本作でも健在。お人よしで優柔不断な色男を時にはダンディに、そして時には哀れなくらい滑稽に演じており、その軽妙洒脱な持ち味は絶品と言えよう。
 一方のマリア役を演じるジーナ・ロロブリジーダもまた鮮烈な印象を残す。後にハリウッドへも進出し、イタリアを代表する演技派のセクシー女優として世界にその名を轟かせる彼女だが、本作での野性味あふれるパワフルで自由奔放な演技は素晴らしいの一言。実に伸び伸びとしたナチュラルなお色気を発散しており、彼女にとって最大のはまり役と言ってもおかしくない。
 また、助産婦アンナレッラ役を演じるマリサ・メルリーニの上品で控え目な大人の色香、厳しくも温厚なドン・エミディオ役を演じるヴィルジリオ・リエントの頼もしさ、口やかましいが人情味のある老女中カルメーラ役を演じるティナ・ピカの飄々とした存在感、そしていかにもイタリアのマンマといった感じのヴィットリア・クリスポのお節介焼きな肝っ玉母さんぶりなど、脇を固める役者陣のユニークな個性にも魅了される。
 そのほか、デ・シーカ監督の『ウンベルトD』(52)で注目された若手女優マリア・ピア・カジリオ、スペクタクル史劇や冒険映画でも活躍したロベルト・リッソなどが出演。さらに、『グラマーと吸血鬼』(63)などのイタリアン・ホラーで知られる個性的な脇役俳優アルフレード・リッツォが、着任したばかりのアントニオを自宅に迎えるベテラン警官スクインツィ役で顔を出している。

 

 

Toto nella luna (1958)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2008 Televista Inc. (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆

DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/107分/製作:イタリア

特典映像
フォト・ギャラリー

監督:ステーノ
製作:マリオ・チェッキ・ゴリ
原案:ステーノ
   ルチオ・フルチ
脚本:ステーノ
   サンドロ・コンチネンザ
   エットーレ・スコラ
撮影:マルコ・スカルペッリ
音楽:アレクサンドル・デレヴィツキー
出演:トト
   シルヴァ・コシナ
   ウーゴ・トニャッツィ
   サンドラ・ミーロ
   ルチアーノ・サルチェ
   リチャード・マクナマラ

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2流出版社の社長パスカーレ(トト)は大の女好き

若手従業員のアキーレ(U・トニャッツィ)はSF作家志望だ

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社長の怒りを買ってボコボコにされたアキーレ

アキーレの血液から驚くべき大発見が!

 日本では殆ど知られていないものの、イタリアではチャップリンと並び称されるほどの国民的な喜劇王だったトト。なにしろ、コメディは国境を超えるのが最も難しいジャンル。特にトトの十八番である大衆演芸的なコメディ映画はなかなかイタリア国外に出ることはなく、その大半が今も日本未公開のままであるため、おのずと知名度が低くなってしまうのも仕方がないだろう。
 で、この“Toto nella luna”という作品。“月のトト”という意味のタイトルからも想像できるかと思われるが、50年代当時の世界的なSFブームをネタにしたナンセンス・コメディ。“トトとクレオパトラ”や“トト対マチステ”など時流のヒット映画や社会的トレンドをパロッた作品も少なくなかったトトだが、本作もそうした系統に属するタイプの一本と言えよう。
 トトの演じるのは、二流のお色気雑誌を発行する出版社の強欲なワンマン社長パスカーレ。世間は米ソの宇宙開発競争に端を発するSFブームに浮かれているが、彼は“いつの時代も大衆が求めるのは美しい女だ”と信じて疑わない典型的な単細胞のイタリア男。なので、一人娘の恋人である若手従業員アキーレが自作のSF小説を売り込んでも、まるで相手にしようとはしない。そんなある日、アメリカの出版社がアキーレの小説に興味を示し、目の飛び出るような高額ギャラで英語版の権利を手に入れたと判明。ビックリしたパスカーレは、大急ぎでイタリア語版を出版しようとする。
 ところが、これはパスカーレたちの大いなる誤解。英語のよく分からない彼らが勝手に勘違いしていたのである。実は、アキーレに接触してきたのはFBIのエージェント。というのも、彼の血液が極めて猿に近いと判明したことから、NASAが発射準備を進めている月ロケットのパイロットとしてアキーレに白羽の矢が立ったのである。さらに、FBIの動向を察知した某敵国のスパイが周辺を暗躍。その上、人類の宇宙開発を阻止すべくエイリアンまでもが入り乱れ、てんやわんやの大騒動が繰り広げられることとなる。
 往年の東宝喜劇みたいなノリ、と言えば分かりやすいだろうか。さながらトトはエノケン、ウーゴ・トニャッツィは森繁久弥、シルヴァ・コシナは水野久美…なんて若干の無理はあるかもしれないが、だいたいそんなイメージかもしれない。特にトニャッツィの芸風は若かりし頃の森繁を彷彿とさせるものがあるし、後にシリアスな役柄も含めてイタリアを代表する大御所俳優となったところだって似ている。
 いずれにせよ、古き良き時代の賑やかで愉快な大衆コメディであり、基本的にはそれ以上でもそれ以下でもない。ただ、途中から『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』のパロディへと脱線し、最後は全て女で片を付けてしまうという悪乗りぶりはなかなか痛快。なんだかんだいって結局、男は下半身が満たされりゃそれでオッケーなのよ、という大らかさ(?)が憎めない。

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FBI特使をアメリカの出版関係者と勘違いして大喜びのアキーレ

某敵国の女スパイ、タチアナ(S・ミーロ)が探りを入れていた

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アキーレの出世(?)に便乗しようとするパスカーレ

リディア(S・コシナ)とめでたくゴールインしたアキーレだったが…

 宇宙開発を推し進めるアメリカ。NASAは念願の月面調査へ向けて無人ロケットを発射するものの、原因不明の故障によって軌道を外れてしまった。実は、人類が宇宙へ行くことに警戒感を持つエイリアンたちが邪魔をしていたのだ。本来なら宇宙を目指すはずだったロケットはヨーロッパ方面へと暴走。仕方なく、NASAはローマ上空でロケットを爆破させた。
 ローマではロケット爆破の話題で持ちきりだったが、出版社を経営する中年男パスカーレ(トト)はそんなのどこ吹く風だ。彼が発行している“スーブレ”は美女の水着グラビアを売り物にした低俗な2流雑誌。しかし、大の女好きであるパスカーレにとってみれば、政治だ科学だなどといったわけの分からない話題より美女のグラビアの方が重要。自ら率先して撮影を仕切るほど力を入れている。
 そんなパスカーレの出版社で働いているのが、アキーレ(ウーゴ・トニャッツィ)という馬鹿正直な若者。彼はパスカーレの愛娘リディア(シルヴァ・コシナ)の恋人なのだが、以前からアメリカのSF小説やSFコミックに夢中で、自らも小説を書いてSF作家を目指している。リディアから結婚をせがまれているものの、今の給料ではとても無理。早くSF作家として身を立てたい。そう考えた彼はパスカーレに自作の小説を売り込むものの、当然のことながら却下されてしまう。どうしても諦められないアキーレは、次号の表紙で使用される美女のグラビア写真を、勝手にSF小説のイラストに差し替えてしまった。もちろん、パスカーレは大激怒。アキーレは社長からコテンパンに殴られてしまった。
 怪我の治療を受けるために病院へ行ったアキーレ。顔中に包帯を巻かれて病院を後にした彼だったが、ガーゼを片付けようとした担当医は驚くべき現象を目の当たりにする。ガーゼについていたアキーレの血が跡形もなく消えてしまったのだ。よくよく調べてみると、アキーレの血液には大量のグルモニウムが含まれていると判明。つまり、彼は猿と同じ血液の持ち主だったのだ。担当医は早速アメリカの国防省へと連絡。この世紀の大発見に関係者は色めき立つ。というのも、NASAは月ロケットに乗せるために最適な動物をサルと考えていたのだが、サルと同じ血液を持つ人間がいるのだとすれば、人類史上初の有人ロケットだって夢じゃない。かくして、国防省はFBIのエージェント、キャンベル(リチャード・マクナマラ)とオコナー(ジム・ドーレン)をローマへ派遣し、アキーレの説得を試みることにする。
 表紙の差し替え事件が原因で会社をクビになることが決まったアキーレ。そこへ、キャンベルとオコナーの2人がやって来る。アキーレは彼らがアメリカ人だと聞いただけで舞い上がり、ろくに英語も分からないくせに歓待する。一方のキャンベルたちもイタリア語が苦手で、なかなか両者の会話は噛み合わない。なんとか事情を説明しようとするキャンベルたちだったが、アキーレは宇宙ロケットという言葉が出てきたことから、彼らが自分の小説に興味を持っているのものと勘違いしてしまう。しかも、オーケーならば多額の前金をドルで支払うという。これはアメリカで小説を出版してくれるに違いない。そう思い込んだアキーレはさらに狂喜乱舞。キャンベルたちも彼が事情を理解したものだと勘違いしてしまった。
 しかし、勘違いしたのは彼らだけではない。隣の部屋で一部始終に聞き耳を立てていたパスカーレも、アメリカ人が多額のギャラでアキーレの小説を買いに来たものと信じ込み、思わず卒倒してしまうくらいに驚く。だが、そこは転んでもただでは起きない強欲な男。奴らがアメリカで出版するなら、こちらはイタリアとヨーロッパ全土で売りさばいてやると決定。すぐに雑誌の出版を差し止め、SF小説の大量印刷を手配する。
 一方、FBIの動向を調査する某敵国の科学者フォン・ブラウン(ルチアーノ・サルチェ)は、アメリカが何を企んでいるのか探るため、セクシーな美女スパイ、タチアナ(サンドラ・ミーロ)をパスカーレの出版社へ送り込んでいた。彼女をモデル志望と勘違いしたパスカーレは、喜んで自分のオフィスへと招き入れる。そして、一連の騒動を知ったタチアナは、そのSF小説にロケットを発射させるために必要な情報が記されていると勝手に判断。こっそりと原稿を写真に収め、何食わぬ顔をしてアジトへと戻る。そして、フォン・ブラウンは小説の中にあるロケット用燃料の調合方法こそがFBIの狙う機密情報だと信じ、その通りに燃料を作製。だが、その場で燃料は大爆発してしまった。
 かくして多額の前金を手に入れ、めでたくリディアと結婚式を挙げたアキーレ。小説の印刷を終えたパスカーレも上機嫌だ。ところが、その結婚式の席でようやく2人はキャンベルたちの本来の目的を理解。宇宙へ飛ばされるなんてまっぴら御免だと嫌がるアキーレだったが、小説の大量印刷で借金を抱えることになったパスカーレは是が非でも義理の息子を宇宙へ送り出し、残りの契約金を手に入れたい。押し問答の末に、アキーレは宇宙行きを断ることとなる。
 とはいえ、諦めきれないのはパスカーレ。彼は事務所にやって来たフォン・ブラウンとタチアナに洗いざらいの情報をぶちまけ、アキーレを誘拐してアメリカよりも先に有人ロケットを打ち上げようという彼らの作戦に協力することとなる。だが、一連のドタバタをエイリアンのスパイが監視していた。このままでは愚かな人類が宇宙を汚すことになってしまう。そう考えたエイリアンたちはアキーレとリディアの新居へ巨大な莢を送り込み、アキーレの複製人間を作ることにした。その複製人間をフォン・ブラウンたちに誘拐させ、宇宙ロケットに乗せてしまおうというのだ。
 しかし、この複製人間というのが途方もないバカで、誘拐事件をさらなる珍パニックへと陥れる。さらに本物のアキーレがフォン・ブラウンたちに誘拐され、彼らに協力したパスカーレまでもが一緒に監禁されてしまった。エイリアンたちは苦肉の策でパスカーレの複製人間も作成。偽者のアキーレとパスカーレをアジトへ送り込み、本物を脱走させようと目論むのだったが、事態はさらに思わぬ方向へと展開していく…。

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FBIの目的をようやく理解して愕然とする2人

事の一部始終をエイリアンのスパイが監視していた

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アキーレを誘拐しようとする敵国一味に力を貸すパスカーレ

エイリアンは巨大な莢でアキーレの複製人間を作ろうとする

 監督はイタリアン・コメディの名匠ステーノことステファーノ・ヴァンツィーナ。もともと親友マリオ・モニチェッリとの脚本家コンビとして名を成し、共に映画監督への道を歩んだ人物だ。トトの主演作はもちろんのこと、アルベルト・ソルディやランド・ブツァンカなどイタリアの歴代喜劇王の作品をことごとく手掛けており、やはり日本で公開された映画は極めて少ないものの、イタリアでは数多くのヒット作を連発した大物監督である。本作では低予算を逆手に取ったチープなビジュアル・ギャグをこれでもかと盛り込み、実にテンポの良いリズミカルな仕上がり。職人技の光る正統派プログラム・ピクチャーといった感じだ。
 そのステーノと共同で原案を手掛けたのが、当時彼の愛弟子の一人だった“イタリアン・スプラッターの帝王”ルチオ・フルチ。さらに、その後イタリア映画を代表する名匠となったエットーレ・スコラと並んで、『さいはての用心棒』(66)や『悪魔の墓場』(74)、『地獄のバスターズ』(76)などの娯楽映画で腕を奮うことになる名物脚本家サンドロ・コンチネンザの名前が。他にも、この時代の大衆コメディ映画の脚本には、後にホラーやアクション系で活躍する脚本家及び監督がけっこう多く名を連ねており、そうした才能の言ってみれば登竜門的ジャンルでもあったのではないかと思われる。
 他にも、撮影監督のマルコ・スカルペッリや編集のジュリア―ナ・アッテーニなど、ステーノ作品の常連スタッフが参加。そんな中で注目したいのは、美術デザインを手掛けたジョルジョ・ジョヴァンニーニだ。彼はフェリーニの『甘い生活』(60)や『サテリコン』(69)、ゼフィレッリの『ブラザー・サン・シスター・ムーン』(72)などの美術監督を担当した人なのだが、実はテリー・ギリアムの『バロン』(88)も彼の仕事。本作のクライマックスに出てくる月世界の様子が、どことなく『バロン』を彷彿とさせるように見えてしまうのはちょっと考え過ぎだろうか…(笑)?。

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強烈なバカっぷりで大暴走するアキーレの複製人間

本物のアキーレとパスカーレは敵国スパイ一味に捕まってしまった

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複製人間と本物が入り乱れての珍騒動に発展

なぜかパスカーレが一人で月へ送り込まれてしまい…

 で、最後にトト以外の出演者についてもサラッと言及しておきたい。パスカーレの愛娘リディア役には、ご存知イタリアを代表する国際的な美人女優シルヴァ・コシナ。どちらかというと熟女的なお色気路線で有名な彼女だが、本作の当時はまだまだ可憐な清純派アイドル。ただ、ここではどう見ても色添えの域を出ないような役柄であるため、これといった見せ場に恵まれていないのが残念。
 一方、日本では『バーバレラ』(67)や『最後の晩餐』(73)、『Mr.レディMr.マダム』(78)シリーズで知られるウーゴ・トニャッツィがアキーレ役。女に振り回されるイタリア男の悲哀を演じて上手い大物俳優といったイメージの強い人だが、本作ではコッテコテの大衆演芸的なコメディ演技を披露しており、なるほど、もともとはこんなバカな役も出来る人だったのね、と少なからず驚かされる。
 そして、某敵国の女スパイとしてお色気担当を一手に引き受けるのがサンドラ・ミーロ。彼女もフェリーニやロッセリーニ作品での印象が強いため、薬品が爆発して下着一枚の黒焦げ姿になってしまうような役を演じているのがとても意外で新鮮だ。そのほか、『狂ったバカンス』(62)や『イタリア式愛のテクニック』(66)などの映画監督として有名なルチアーノ・サルチェが某敵国の科学者フォン・ブラウン役を、イタリア映画界で英語版吹替えの監修や声優を長年担当したリチャード・マクナマラがFBIエージェントのキャンベル役を演じている。

 

 

Gli zitelloni (1958)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2008 Mya Communication (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/98分/製作:イタリア
・スペイン

特典映像
なし

監督:ジョルジョ・ビアンキ
製作:エモ・ビストルフィ
   エドゥアルド・マンザノス・ブロシェロ
脚本:シルヴィオ・アマディオ
   アントニオ・アムーリ
   マリオ・ゲッラ
   カルロ・ロマーノ
撮影:ティーノ・サントーニ
音楽:イタロ・グレコ
出演:ヴィットリオ・デ・シーカ
   ワルテル・キアーリ
   マリア・ルス・ガリシア
   マリオ・リーヴァ
   マリオ・カロテヌート
   リディア・シモネスキ

   リーナ・モレッリ

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独身貴族“教授”(V・デ・シーカ)とマルチェロ

結婚なんかするかと誓うマルチェロ(W・キアーリ)たが…

結局はジーナ(M・L・ガリシア)とゴールイン

マルチェロの新婚生活に何があったのか…!?

 “結婚は人生の墓場”などとも揶揄されたりするが、三組に一組のカップルが離婚するとも言われている現在では、一生のうちに何度も人生の春を経験する男女だって少なくなかろう。しかし、1950年代当時のイタリアでは事情が全く異なっていた。というのも、カトリック国家イタリアで離婚が法的に認められるようになったのは1970年のこと。つまり、それまでは一度結婚してしまうと二度と別れることは出来なかったのである。文字通り、一生に一度の重大な決断だったわけだ。現在でもイタリアでは離婚裁判にかかる費用が膨大なために離婚率は低く、逆に生涯未婚率の方が高いのだと聞く。恋多きイタリア人のこと、やはり一生束縛されることになる結婚は深刻な問題なのであろう。とはいえ、賑やかな大家族というのもイタリアの伝統。幸せな結婚生活は憧れでもあるはずだ。まさに理想と現実の板挟み。そんな悩めるイタリア人の結婚問題を痛烈なブラックジョークで皮肉ったのが、この“Gli zitelloni(中年の独身男)”というコメディである。
 主人公は雑貨屋の店員を務める若者マルチェロ。彼は下宿先の女将の一人娘ジーナと恋仲だ。もちろん結婚だって考えているし、ジーナとその母親も大いに乗り気。しかし、そんな彼に“教授”と呼ばれる優雅な中年独身貴族が忠告する。女は結婚すると豹変するもんだ、結婚の先に待っているのは男にとって地獄以外の何ものでもない、幸せな一生を送りたければ女から女へと渡り歩いて恋愛を楽しめ、と。その言葉に一抹の不安を覚えたマルチェロではあったが、ジーナと母親の猛烈な求愛攻撃に負けてしまい、あっけなくゴール・インしてしまう。ところが、それからほどなくしてマルチェロが殺人罪で起訴されてしまう。新しい下宿人パロディ氏を殺してしまったのだ。果たして、マルチェロの身に何が起きたのか…!?
 中盤から物語は『羅生門』スタイルの法廷ドラマとして展開。殺人事件へ至るまでの紆余曲折を、夫の言い分と妻の言い分の両面から描いていく。マルチェロによると、結婚当初から妻や姑の尻に敷かれっぱなし、まるで召使のようにこき使われ、挙句の果てにはマッチョな暴力男パロディ氏にジーナを寝取られてしまったのだという。しかし、ジーナの言い分は真逆。自分勝手で横柄な夫に振り回され続け、その一挙一動に怯えるような毎日を送っていたが、そんな彼女を繊細で心優しいパロディ氏が慰めてくれただけだというのだ。いったいどちらの言い分が本当なのか?それとも、両者ともに都合のいい言葉を並べているだけなのか?
 言うなれば、これは“結婚恐怖症”に陥った男のパラノイアをスラップスティックなブラック・ジョークで描いた作品。当時イタリアでは“神聖なる結婚のイメージを故意に貶めている”との理由から上映禁止の憂き目にあってしまったらしいが、それはちょっと勘繰りすぎであろう。物語の鍵となるのはヴィットリオ・デ・シーカ演じる狂言回し的な中年男“教授”。華やかな恋愛遍歴を重ねる独身貴族を気取った彼の、哀れで滑稽な素顔が暴かれていくクライマックスこそが、この作品の確信だと言える。とはいっても、別に結婚を美化しているわけではない。つまり、人間には誰でも“年貢の納め時”ってのがあるわけさ、という皮肉めいたメッセージによって、男と女の性を悲哀たっぷりに笑い飛ばしているのだ。
 イタリアにおける結婚と離婚の問題を皮肉ったコメディ映画といえば、誰もがピエトロ・ジェルミ監督の傑作『イタリア式離婚狂想曲』(62)を思い浮かべるに違いない。古女房に愛想を尽かした中年男が彼女の浮気をでっち上げ、名誉殺人の名のもとに妻を殺害。最後はちゃっかり年の離れた若い女性と再婚するという、それはそれは強烈な風刺喜劇だった。さすがに本作はそこまでの毒っ気はないものの、結婚にまつわるイタリア男の複雑な本音を赤裸々に描いたという点で、なにか共通するものがあるように感じる。両作を2本立てで見てみるのもまた一興かもしれない。

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必死になって無実を訴えるマルチェロ

ところが、裁判長たちは浮気談義に夢中

妻と義母の尻に敷かれっぱなしだったマルチェロ

新婚のベッドまで義母に邪魔をされてしまう

 マルチェロ(ワルテル・キアーリ)は雑貨屋で店員を務める平凡な若者。彼はマダム・ローザ(リディア・シモネスキ)の家に下宿しており、その娘ジーナ(マリア・ルス・ガリシア)といい関係になっている。母娘は豪華なお手製料理を彼のために振る舞い、この手この手で結婚にこぎ着けようと頑張っているが、マルチェロはなんとなく踏ん切りがつかない。まだまだ人生はこれからという気がするのだ。
 そんな彼に、近所では“教授”という呼び名で親しまれている独身の中年プレイボーイ(ヴィットリオ・デ・シーカ)が忠告する。近所の結婚した男たちを見てみろと。女房の尻に敷かれ、外では働き家の中でもこき使われ、まるで生ける屍のようになってしまった奴らばかりじゃないか。女というのは恋愛をしている時は可愛くて優しいが、結婚したとたんに威張りだし、見る見るうちにブクブクと太って醜くなる。結婚というのは女の罠だ。私を見て見なさい、女とは適当に恋愛を楽しんで、潮時になったらすっぱりと別れて次を探せばいい。そうすれば人生バラ色。みすみす楽しい生活を犠牲にする必要なんかないんだ、と。
 そう言われると、ますますマルチェロは将来が不安になってくる。こうなったら絶対に罠なんかにはまるもんか。そう決心したマルチェロだったが、なんだかんだいってマダム・ローザとジーナの作る手料理は絶品だし、チヤホヤされるのは心地いい。結局、彼は流されるままにジーナと結婚してしまった。ところが、それからしばらくたった頃。マルチェロは新しい下宿人パロディ氏を殺害し、狂ったようにジーナとマダム・ローザを縛り上げるという大事件を起こしてしまう。
 果たして、マルチェロの新婚生活に何が起きたのか?いよいよ裁判の日がやって来た。しかし、裁判長(マリオ・カロテヌート)と判事(マリオ・リーヴァ)の2人はまるでやる気なし。さっさと裁判を終わらせて家に帰ることしか考えていない。ところが、そこへ判事の愛人であるスウェーデン美女が裁判の傍聴にやって来た。しかも、これまたベッピンな女友達まで連れている。老いぼれた古女房の待つ家になんか帰るよりも、彼女たちとしけこんだ方がよっぽどいい。だが、大きな問題が一つあった。裁判長は妻や子供たちを連れて今夜から家族旅行へ出かける予定だったのだ。しかし、裁判が長引いて夜行列車に間に合わなければ、妻たちだけ先に旅行へ行って自分は美女とお楽しみができる。そう考えた2人は出来る限り裁判を長引かせることにした。
 そんな事情があるとはつゆ知らず、マルチェロは必死に無実を訴えるのだった。そもそも、結婚式の当日から自分は邪魔者扱いで、妻ジーナには数えきれないほどの恋人がいたことが判明。しかも、夫を尻目に元恋人たちからチヤホヤされて喜んでいたというのだ。新婚旅行から帰るとさらなる地獄が。義母は自分をダメ男扱いし、ジーナの機嫌を損ねれば夕飯抜きの罰が待っている。しかも新しい下宿人パロディ氏に自分の部屋は取り上げられ、新婚のベッドで義母が一緒に寝るという信じられないような事態に。このパロディ氏という人物がまた筋骨隆々の乱暴者で、ことあるごとにマルチェロをボコボコに殴る。さらに、朝は夫だけが早起きして食事の用意をし、まるで召使のような扱いを受け続けたのだと。
 そんなマルチェロの訴えにジーナとマダム・ローザは大反論。彼女たちは横暴で身勝手なマルチェロに悩まされ続け、なるべく機嫌を損ねないようにびくびくとしながら生活していたというのだ。そんな母娘を慰めてくれたのが、小柄で優しいパロディ氏。しかし、マルチェロはことあるごとにパロディ氏のことを小ばかにし、失礼な態度ばかり取っていたと訴えるのだった。
 それを聞いたマルチェロも黙っていない。パロディ氏とジーナはあからさまにイチャイチャするようになり、マルチェロは家に居場所がなくなってしまった。しまいには寝室からも追い出され、キッチンでゴムボートをベッド代わりに寝起きさせられる羽目に。さらに彼が一番大切にしていたチューバをパロディ氏が売り払ってしまい、その金でジーナに宝石を買い与えてしまった。さすがにマルチェロの我慢も限界に達し、気が付いたら犯行に及んでしまっていたというのだ。
 延々と平行線をたどる両者の言い分。ろくに話を聞いていなかった裁判長たちも、このままでは収拾がつかないのではと心配し始める。すると、そこへ“教授”が登場。証言台に立ち、事件の意外な真実を語りはじめるのだったが…。

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まるで召使のようにこき使われていた

ところが、義母と妻は猛反論

心優しくて繊細な下宿人パロディ氏

マルチェロはとんでもない暴力亭主だった…!?

 監督のジョルジョ・ビアンキは40〜60年代にかけて活躍した人物。本作を見る限りではなかなか洒落た演出の出来る職人肌といった印象だが、その作品の大半が大衆コメディだであったせいか、残念ながら日本で劇場公開された作品は一本もない。また、助監督で脚本にも参加しているシルヴィオ・アマディオもスペクタクル史劇からジャッロまで幅広いジャンルを手掛けた優秀な監督だったが、同じく日本では無名に等しい存在だ。
 脚本家のメンツとして特筆すべきなのは、ミーナやジャンニ・モランディなど大物カンツォーネ歌手のヒット曲を手掛けた有名な作詞家アントニオ・アムーリ。スーザン・サランドンのダンナだった映画監督フランコ・アムーリの父親でもある。もともとコメディ作家としてキャリアをスタートさせた人だったらしいが、映画の脚本に携わったのは本作を含めてたったの2本だけ。他には、フェリーニの『寄席の脚光』(50)や『青春群像』(53)などに俳優として出演していたカルロ・ロマーノ、トトやワルテル・キアーリ主演の大衆コメディを数多く手掛けたマリオ・ゲッラが脚本に携わっている。
 撮影監督を担当したのは、『激しい季節』(59)や『鞄を持った女』(61)などのヴァレリオ・ズルリーニ監督作品で有名なティーノ・サントーニ。編集にはヴィットリオ・デ・シーカ作品の常連アドリアーナ・ノヴェッリ、音楽スコアにはポップス歌手リタ・パヴォーネやパティ・プラヴォなどのプロデューサーとして知られるイタロ・グレコが名を連ねている。

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ジーナはマッチョなパロディ氏にメロメロ

しまいにはキッチンのゴムボートで寝起きする羽目に

ジーナとパロディ氏は遊びほうけてばかり

“教授”が事件の意外な真相を語りはじめる

 一応、クレジット上の主演はヴィットリオ・デ・シーカではあるものの、実質的にはマルチェロ役のワルテル・キアーリが主演と言って良かろう。日本だと『女優ナナ』(55)や『悲しみよこんにちは』(57)に出ていた2枚目半のイタリア人、もしくはヴィスコンティの『ベリッシマ』(51)でアンナ・マニャーニから大金を巻き上げた狡賢い若者といった程度の認知度しかないかもしれないが、イタリアでは50年代から60年代にかけて数多くの大衆コメディに主演した喜劇スターだった。よ〜く見たらけっこう男前で、なおかつ朴訥とした親しみやすさがあるというのが彼の魅力。なので、本作のように不器用で平凡な庶民の若者とうのははまり役だ。
 その妻ジーナ役にはスペインのセクシー系コメディエンヌ、マリア・ルス・ガリシア。また、ジーナの母親マダム・ローザを演じているリディア・シモネスキはイタリアの有名な吹替え声優で、シルヴァーナ・マンガーノやジーナ・ロロブリジーダなどの声を数多く担当していた人だ。女優として画面に登場するのは極めて珍しい。その他、イタリアの有名なテレビ司会者マリオ・リヴァ、『青い経験』(75)などのセックス・コメディでもお馴染みのマリオ・カロテヌート、ヴィスコンティのお気に入り女優だったリーナ・モレッリらが脇を固めている。

 

 

バンボーレ
Le bambole (1965)
日本では1966年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2006 Sony Pictures (Italy)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イタリアPAL盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:イタリア語・英語/字幕:イタリア語・英語/地域コード:2/105分/製作:イタリア
・フランス

特典映像
なし
監督:マウロ・ボロニーニ
   ルイジ・コメンチーニ
   ディーノ・リージ
   フランコ・ロッシ
製作:ジャンニ・ヘクト・ルカーリ
脚本:レオ・ベンヴェヌーティ
   ピエロ・デ・ベルナルディ
   ルチアーノ・サルチェ
   ステーノ
   トゥリオ・ピネッリ
   ロドルフォ・ソネーゴ
   ルイジ・マーニ
撮影:エンニオ・グアルニエリ
   カルロ・モントゥオーリ
   ロベルト・ジェラルディ
   レオニダ・バルボーニ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
出演:ジーナ・ロロブリジーダ
   エルケ・ソマー
   モニカ・ヴィッティ
   ヴィルナ・リージ
   ニーノ・マンフレディ
   ジャン・ソレル
   エイキム・タミロフ
   ピエロ・フォカッチャ
   オラツィオ・オルランドー

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ヴィルナ・リージ

エルケ・ソマー

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モニカ・ヴィッティ

ジーナ・ロロブリジーダ

 60年代から70年代にかけて、イタリアでは複数の著名な映画監督を集めたオムニバス形式のコメディ映画が人気を集めた。そのきっかけとなったのは、フェリーニ、ヴィスコンティ、デ・シーカ、モニチェッリの4大巨匠が参加した『ボッカチオ'70』(62)であろう。これが大変な評判になったことから、『愛して御免なさい』(64)や『華やかな魔女たち』(65)、『おとぼけ紳士録』(65)、『女と男と金』(68)、フランスとの合作『愛すべき女・女たち』(67)などのオムニバスコメディが続々と登場。この『バンボーレ』という作品もその一つである。
 何といっても最大の売りは、ジーナ・ロロブリジーダ、エルケ・ソマー、モニカ・ヴィッティ、ヴィルナ・リージというインターナショナルな大物スター女優を揃えた豪華なキャスティングだ。ジーナは初心な年下の若い男を誘惑するセクシーな有閑マダム、エルケは結婚はしたくないけど子供だけは欲しいという現代の自立した女性、モニカは愛人と結ばれるためにダンナを殺そうとする疲れた人妻、そしてヴィルナは新婚のダンナに無関心な若い新妻と、それぞれにタイプの違う女性の悲喜交々な恋愛模様を演じている。この4人のゴージャスな魅力だけでも一見の価値はあると言えよう。
 ただ、マウロ・ボロニーニ、ルイジ・コメンチーニ、ディーノ・リージ、フランコ・ロッシといずれ劣らぬ名匠がメガホンを取っているにも関わらず、なぜかどのエピソードも尻つぼみで中途半端な印象。なによりも、脚本が今ひとつ面白くない。いずれも現代イタリアにおける複雑な恋愛事情を風刺したつもりなのかもしれないが、どうもアイディア倒れで終わっているとしか思えないのだ。
 ひとまず、これは女優の演技ならぬ艶技で魅せる映画。アルマンド・トロヴァヨーリによるグル―ヴィーなラウンジ系スコアも悪くない。軽いノリで楽しめばよろしいのではよろしいのではなかろうか。

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構ってくれない妻に欲求不満のジョルジオ(N・マンフレディ)
第1話:電話の呼び出し

今度は義母との長電話に夢中のルイーザ
第1話:電話の呼び出し

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向かいのアパートで日光浴をする美女に目を奪われるジョルジオ
第1話:電話の呼び出し

結局は水着美女(A・ブランデット)とねんごろに…?
第1話:電話の呼び出し

<第1話:電話の呼び出し> 監督:ディーノ・リージ
 ジョルジオ(ニーノ・マンフレディ)とルイーザ(ヴィルナ・リージ)は新婚夫婦。しかし、夫は妻のつれない態度に欲求不満が募りっぱなしだ。世間は夏のバカンス・シーズンへ突入したにも関わらず、ルイーザはどこへも出かける気がなく、家の中で趣味の読書をしてばかり。なんとか彼女の気を引こうとするジョルジオだったが、ルイーザはいつまでも読書に夢中だ。
 ようやくルイーザが本を読み終えたと思ったら、今度は彼女の母親から電話がかかってくる。これがまたえらく長電話となってしまい、ジョルジオはまたもや放っておかれる羽目に。文句を言うたびに電話を切る素振りだけは見せるルイーザだったが、結局は母親から振られた次の話題に乗ってしまう。
 もはやイライラも限界に達し始めたその時、ジョルジョの目に飛び込んできたのは、向かいのアパートのベランダで日焼けをする水着の若い娘アルメニア(アリシア・ブランデット)の悩ましい姿だった…。
<第2話:優生学理論> 監督:ルイジ・コメンチーニ
 外国人の若い女性ウーラ(エルケ・ソマー)は一人でローマへとやって来た。ガイドの若者ヴァレリオ(ピエロ・フォカッチャ)を雇い、レンタカーで街中を散策するウーラ。彼女の目的は、身体的にも知能的にも完璧な遺伝子を持ったイタリア人の男性を探し、彼の精子だけを貰って完璧な息子を作ることだった。社会的地位も財産も持ち合わせた彼女にとって、結婚など無用の長物。子供さえいればそれでいいのだ。
 しかし、全てを兼ね備えた完璧な男性など、なかなか簡単に見つかるものではない。それでも諦めずに遺伝子探しを続けるウーラのことを、ヴァレリオはすっかり好きになってしまう。だが、ウーラにとってみればヴァレリオは論外。頭はいいし性格も優しいけど、姿形はまるで猿そっくり。とてもじゃないが、優れた遺伝子を持っているとは思えない。諦めきれずに何度もアタックするヴァレリオだったが、ウーラの意志はとてつもなく固かった。
 そして遂に、身体的にも知能的にも完璧な男性マッシモ(マウリツィオ・アレーナ)と遭遇。すったもんだの末に、遺伝子を提供する契約を結んだ。これでお役御免となったヴァレリオ。しかし、ウーラはなんとなく後ろ髪を引かれる思いがするのだった…。

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一人でローマへやって来た外国人美女ウーラ(E・ソマー)
第2話:優生学論

その目的は完璧な遺伝子を持つイタリア男性を探すこと
第2話:優生学論

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ガイドのヴァレリオ(P・フォカッチャ)は優しくて協力的だ
第2話:優生学論

ウーラに恋してしまったヴァレリオだったが…
第2話:優生学論

<第3話:スープ> 監督:フランコ・ロッシ
 街角の小さなバーを経営する人妻ジョヴァンナ(モニカ・ヴィッティ)は、愛のない結婚生活に疲れ果てていた。夫(ジョン・カールセン)のためにいつものスープを作るジョヴァンナだったが、2人の間には一切の会話もなし。仕事もせず外をブラブラとし、夕飯のスープを食べるためだけに帰って来る夫には愛想も尽き果てていた。
 そんなジョヴァンナには、リチェット(オラツィオ・オルランド―)という年下の愛人がいる。しかし、見た目はマーロン・ブランド気取りのリチェットだったが、中身はまるっきり気弱なダメ男。ジョヴァンナを奪い去るようなガッツは望むべくもない。考えあぐねた彼女はなけなしの貯金をはたいて、知り合いのトラック運転手に夫の殺害を依頼する。交通事故に見せかけて轢き殺してくれと。しかし、相手はずぶの素人。この計画はあえなく失敗してしまった。
 そこで、彼女は街のチンピラ、ペッペ(デ・シモーネ)に夫の暗殺を改めて依頼した。なんだかんだと文句を言いながらも、ペッペと仲間たちは仕事を引き受けることにする。だが、堅気の人間が裏社会に首を突っ込んでもろくなことはない。結局、ジョヴァンナはまんまとペッペ一味に騙され、手持ちの金を全て奪い取られてしまったのだ。
 もはやこれまで、このまま不幸な結婚生活に耐え続けなくてはいけないのか。すっかり気落ちしてしまったジョヴァンナだったが、そこは転んでもただでは起きない女。自分への変わらぬ愛を誓うリチェットに、ある相談を持ちかける…。
<第4話:キューピッド神父> 監督:マウロ・ボロニーニ
 大都会ローマでカトリック教会の大きな会議が開かれることとなり、イタリア全土から大勢の司祭や神父たちが集まってきていた。有閑マダム、ベアトリーチェ(ジーナ・ロロブリジーダ)の夫が経営する豪華ホテルも客室満杯の大忙し。そこへ、会議に参加するアルクーディ神父(エイキム・タミロフ)と秘書の甥っ子ヴィンチェンゾ(ジャン・ソレル)が到着する。予約手続きの手違いで部屋は余っていないかったものの、ベアトリーチェは若くてハンサムなヴィンチェンゾに一目ぼれしてしまい、なんとか空き部屋を用意して2人を宿泊させることにした。
 それとなく微笑みかけたり、わざと体を触ってみたりして積極的にアプローチするベアトリーチェだったが、ヴィンチェンゾは彼女の方を振り向く素振りすら見せない。というのも、ヴィンチェンゾはガチガチの宗教一家に育った超のつく堅物で、いまだに女性の手すら触れたことのない純朴な真面目青年だったのだ。
 そうとは知らないベアトリーチェは、彼を誘惑するためにあの手この手の猛攻撃を仕掛ける。自分の部屋の隣にヴィンチェンゾを移動させ、大音量でレコードをかけながら悩殺ストリップを展開するベアトリーチェ。普通の男だったら鍵穴から覗いてよだれでも垂らしているはず。だが、世間知らずで鈍感なヴィンチェンゾは全く気付かず、一心不乱にタイプライターで叔父のスピーチ原稿を打ちまくっていた。
 プライドを傷つけられて怒り心頭のベアトリーチェ。こうなったら最後の手段だとばかりに、彼女はアルクーディ神父にとんでもない言いがかりをつける。ヴィンチェンゾが自分を嫌らしい目で見ていると。それで自分の存在に目を向けてくれるかと思いきや、これまたのれんに腕押し。さらに頭に来たベアトリーチェは、あることないこと片っ端から誹謗中傷の言いがかりをつけ、ヴィンチェンゾのことをとんでもない変質者に仕立て上げてしまうのだった…。

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夫(J・カールセン)との侘しい結婚生活に疲れたジョヴァンナ
第3話:スープ

愛人ラチェット(O・オルランド―)も頼りない
第3話:スープ

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全財産を叩いてチンピラに夫殺しを依頼する
第3話:スープ

夫の死を嘆く妻のふりを演じてみせるジョヴァンナだったが…
第3話スープ

 まず第1話を監督したのは『殿方ごろし』(55)や『ベニスと月とあなた』(58)などで有名なコメディ映画の大御所ディーノ・リージ。『アンナ』(51)や『海岸』(54)などのアルベルト・ラットゥアーダ監督作品を手掛けたロドルフォ・ソネーゴが脚本を書いている。主演は『女房の殺し方教えます』(64)でハリウッドにも進出したブロンドの美人女優ヴィルナ・リージ、『あんなに愛しあったのに』(74)の名演も印象深いイタリアの国民的喜劇俳優ニーノ・マンフレディ。また、『ローマのしのび逢い』(69)などに出ていた小悪魔系女優アリシア・ブランデットが、向かいのアパートに住むビキニ美女役で顔を出している。本編中では最も短いエピソードであり、まことに他愛のない小話といった印象だ。
 第2話は『パンと恋と夢』のルイジ・コメンチーニが監督。脚本にはステーノにルチアーノ・サルチェという、こちらも大衆コメディでお馴染みの映画監督が携わっており、フェリーニやデ・シーカのお抱え脚本家として有名なトゥリオ・ピネッリがセリフを担当している。主演は『暗闇でドッキリ』(64)や『おフロの王女さま』(66)などハリウッドでも一世を風靡した西ドイツ出身のセクシー女優エルケ・ソマー。さらに、イタリアの有名なポップス歌手ピエロ・フォカッチャ、ディーノ・リージ作品の常連俳優マウリツィオ・アレーナが出演。こちらは題材の着眼点そのものは面白かったものの、結局ありきたりなオチでお茶を濁してしまった。
 第3話を監督したフランコ・ロッシは、日本だと本作をはじめ『愛して御免なさい』や『華やかな魔女たち』とオムニバス映画しか紹介されていないものの、イタリアではベネチア国際映画祭で受賞したこともある名匠。脚本は第1話と同じくロドルフォ・ソネーゴが担当し、『花ひらく貞操帯』(68)や『結婚大追跡』(68)のルイジ・マーニがセリフを書いた。主演は巨匠アントニオーニの『情事』(60)や『太陽はひとりぼっち』(62)などで日本でも根強い人気を誇る女優モニカ・ヴィッティ。ポリス・アクションなどの悪役で知られるオラツィオ・オルランド―、『女ヴァンパイア カーミラ』(64)や『デモンズ3』(89)などのホラー映画でお馴染みのジョン・カールセンが脇役を務めている。女性版『イタリア式離婚狂想曲』といった感じがしないでもないが、下町の猥雑とした雰囲気や悲哀に満ちたストーリーなんかはなかなかユニーク。ただ、どこからどう見たって、モニカが下町のくたびれた人妻には見えなかった。
 第4話は『汚れなき抱擁』(60)や『わが青春のフローレンス』(70)、『愛すれど哀しく』(71)などのヒットで名高い巨匠マウロ・ボロニーニ監督。文芸メロドラマの印象が強い人だが、実はこの手の艶話的なコメディも意外と得意だったりする。ボッカチオの『デカメロン』からストーリーの着想を得ているらしく、ピエトロ・ジェルミやマリオ・モニチェッリの作品で有名なレオ・ベンヴェヌーティとピエロ・デ・ベルナルディのコンビが脚色を手掛けた。主演はソフィア・ローレンと並んでイタリアを代表する大女優ジーナ・ロロブリジーダ。さらに、オスカー俳優のエイキム・タミロフと、フランスの人気二枚目俳優ジャン・ソレルが顔を合せている。とりあえず、ジーナの妖艶な美しさは存分に堪能できるし、中盤までの展開はすんなりと楽しめるのだが、ヒロインによる
誹謗中傷攻撃が始まってからはちょっと理解不能。ベアトリーチェとヴィンチェンゾが結ばれるまでのドタバタに無理がありすぎて、瞬く間に興ざめしてしまった。

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暇を持て余したホテル経営者の妻ベアトリーチェ(G・ロロブリジーダ)
第4話:キューピッド神父

アルクーディ神父(A・タミロフ)と秘書がチェック・イン
第4話:キューピッド神父

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ベアトリーチェは神父の秘書ヴィンチェンゾ(J・ソレル)に一目惚れ
第4話:キューピッド神父

あの手この手でヴィンチェンゾを振り向かせようとするものの…
第4話:キューピッド神父

 

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