Isolation (2005)

※『エイリアン パンデミック』のタイトルで2009年12月に日本盤DVDが発売されました

 

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(P)2007 First Look (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★★
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/5.1chサラウンド・ステレオ/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード
:ALL/95分/製作:アイルランド・イギリス


映像特典
B・オブライエン監督短編映画
ストーリーボード集
クリーチャー・デザイン集
オリジナル劇場予告編
監督:ビリー・オブライエン
製作:ルース・ケンリー=レッツ
    ベルトラン・ファーヴル
    エド・ギニー
脚本:ビリー・オブライエン
撮影:ロビー・ライアン
特殊効果:ボブ・キーン
音楽:エイドリアン・ジョンストン
出演:ジョン・リンチ
    エッシー・デイヴィス
    ショーン・ハリス
    マルセル・ユーレス
    ルース・ネッガ

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アイルランドの人里離れた牧場

牧場を経営している男ダン(J・リンチ)

 遺伝子操作の失敗によって生まれたモンスターの恐怖を描くクリーチャー・ホラー。プロット自体はごくありきたりだが、アイルランドの人里離れた牧場を舞台に設定することで、他のホラー映画にはない独特の荒涼とした雰囲気を生み出している。さらに、キャストには『キャル』(84)や『父の祈りを』(93)などで知られるアイルランドの名優ジョン・リンチ以下、ホラー映画とはあまり縁のない渋い役者を起用。まるで、パット・オコナーやジム・シェリダンの世界にモンスターが飛び込んでしまったかのような作品となった。
 主人公はアイルランドの牧場主ダン。彼は生物学研究所と契約し、遺伝子操作による牛の品種改良に協力している。研究所の科学者ジョンは牛の成長を早め、食肉の供給効率を上げる研究をしていた。ところが、その実験の結果生まれたのは、異常な速さで成長する凶暴な肉食ミュータントだった。
 しかも、その遺伝子は血液経由で感染し、他の生き物の遺伝子を侵食してしまう。つまり、ミュータントを牧場の外に出してしまったら、世界中の人間や動物の遺伝子が変異してしまうのだ。かくして、真夜中の牧場に取り残された人々とミュータントによる、決死のサバイバルが繰り広げられることとなる。
 監督のビリー・オブライエンは、これが初の長編作品となるアイルランドの若手映像作家。文字を書くことの出来るネズミが人間を懲らしめる短編映画“The Tale of the Rat That Wrote”(99)は、パペット・アニメーションと実写を組み合わせた実験的作品で、初期のティム・バートンやクエイ兄弟を彷彿とさせるダークでファンタジックなモノクロ映像がとても印象的だった。本作ではアイルランド独特の風土や寂れた片田舎の陰鬱なムードを存分に生かし、ハリウッド産ホラーとは一線を画するアート・ムービー的な世界を作り上げている。また、余計な説明を極力省き、クリーチャーの姿もなるべく見せないようにすることで、ミステリーとサスペンスを盛り上げていくという手法も巧い。
 その一方で、全体的にアクションやスプラッターは控えめで、ムード重視の傾向が強いため、ハリウッド映画のような派手さには著しく欠けるかもしれない。アイディアのオリジナリティという点でも不満が残る。とはいえ、ありきたりなストーリーを普通とは違った角度から描き、質の高い演出や実力のある役者の演技で観客を最後まで飽きさせないのは立派。コアなホラー映画ファンなら、一度は見ておいて損のない小品佳作と言えよう。

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妊娠した牛の様子をチェックする女医オーラ(E・デイヴィス)

駆け落ち中のジェイミー(S・ハリス)とメアリー(R・ネッガ)

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牛の出産で奮闘するダンとジェイミー

ダンは生まれたばかりの子牛に指を噛み切られてしまった

 アイルランドの人里離れた場所で牧場を経営している中年男ダン(ジョン・リンチ)。彼は近隣の生物学研究所と契約を結び、肉牛の品種改良実験に協力していた。とはいえ、高額の契約金目当てに牛を提供しているだけで、彼自身は実験内容について全く知らない。
 実験を担当しているのは生物学者のジョン(マルセル・ユーレス)と、その助手を務める女性獣医オーラ(エッシー・デイヴィス)。ある日、妊娠中の牛の膣内をチェックしていたオーラは、手の甲に傷を負ってしまう。それはまるで、何かに噛まれたような傷だった。しかし、胎児に噛まれるというようなことはあり得ない。超音波スクリーンによる検査でも胎児に異常はなく、ジョンは傷について大して気にとめる必要はないという。
 一方、ダンは牧場のそばで一台のトレーラー車が止まっていることに気付く。車に乗っているのはジェイミー(ショーン・ハリス)とメアリー(ルース・ネッガ)の若いカップル。2人は家族の反対を押し切って駆け落ちし、今まさに逃避行の最中だった。ダンはすぐにでも立ち去るよう警告するが、2人は当分居座る心積もりだった。
 その晩、真夜中に牛が産気づいてしまう。ダンは1人で対応に追われるが、今までに経験したことのないくらいの難産だった。1人では手に負えないと感じたダンは、トレーラーのジェイミーに助けを請う。協力して何とか子牛を引きずり出すことに成功したダンとジェイミー。ところが、子牛の様子がおかしい。上手く呼吸が出来ない様子だ。何か詰まっているのではと子牛の口に手を入れたダンだったが、凄まじい力で指を噛み切られてしまった。生まれたばかりの牛に歯が生えているというのは、どう考えても異常だ。
 そこへ、オーラがやって来た。昼間の傷の件がどうしても引っかかるという。事情を聞いたオーラは子牛を始末することにする。異変を察知した母牛が暴れだしたものの、なんとか2人は子牛を屠殺。敷地内にあるラボで解体したところ、驚くべき事実が判明した。
 子牛の体内には6つの子宮があり、その中に小さな胎児が含まれていたのだ。つまり、子牛は既に妊娠した状態で生まれたのである。しかも、その胎児は全身を骨で覆われた奇形だった。
 事情を呑み込めないダンにオーラが説明する。ジョンは肉牛の供給効率を上げるため、遺伝子操作によって牛の成長を早めるための研究・実験を行っていた。しかし、こんな事態は全くの想定外だ。実験段階で何かが間違ったとしか言いようがない。ジョンに研究の中止を進言することを約束したオーラは、ラボに近づかないよう指示して牧場を後にする。しかしその頃、ラボの中では胎児の一体が蘇生し、不気味に動き出していた。

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屠殺した子牛を解体するダンとオーラ

子牛の体内から奇形の胎児が6体も発見される

 翌日、怪我をしたダンの代わりに牛の世話をしていたジェイミーは、血だらけになった牛の姿を発見する。しかも、水たまりの中で何かに足を噛まれてしまった。事情を聞いて困惑するダン。そこへ警官が訪れ、昨晩からオーラが行方不明だという。職場にも姿を見せていないらしい。ダンの胸に不安がよぎる。
 夜になってジョンが牧場へやって来た。残された胎児の細胞をチェックした彼は、異常なスピードでバクテリアが繁殖していることを発見して驚く。さらに、先日の超音波映像を再度確認した彼は、あまりにも小さな胎児の姿を見逃していたことに気付く。
 その頃、トレーラーで寝ていたジェイミーとメアリーは、ベッドに忍び込んできた異様な生物に気付いてパニックに陥る。逃げ出した胎児が成長していたのだ。このミュータントを始末しなければならない。なぜなら、こいつに襲われた動物がバクテリアに感染し、同じようなミュータントを産む可能性があるからだ。
 牧場内を捜索したダンたちは、オーラの死体を発見する。恐らく、昨晩秘かに牧場へ戻り、そこで例のミュータントに襲われたに違いない。オーラの死体を確認したジョンは、あることに気付いた。死体が食い荒らされているのである。不審に思った彼は自らの血をミュータントの細胞に混ぜ合わせてみる。
 顕微鏡を覗いたジョンは戦慄した。バクテリアが人間の細胞をまたたく間に侵食してしまったのだ。つまり、異常な遺伝子は人間にも感染するのである。噛まれたダンとジェイミーの2人も感染しているはずだ。恐ろしくなったジェイミーは牧場を逃げ出そうとするが、ジョンに殺害されてしまった。
 一方、牛を次々と襲っては食い殺したミュータントは急速に成長して巨大化。ダンやメアリーの身にも危険が迫っていた・・・。

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水たまりに潜む“何か”に足を噛まれるジェイミー

生物学者ジョン(M・ユーレス)も驚きを隠せない

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ダンはオーラの死体を発見する

オーラの死体には食い散らかされた跡が

 撮影を担当したロビー・ライアンは、アンドレア・アーノルドの“Red Road”(06)やサラ・ガヴロンの“Black Lane”(07)など、UKのインディペンデント映画で近年活躍の目覚ましいカメラマン。美術デザインを手掛けたポール・イングリスも、このところ『氷の微笑2』(06)や『007/慰めの報酬』(08)などで優れた仕事をしている新進気鋭のデザイナーだ。また、製作にはピーター・ミュランの『マグダレンの祈り』(02)やガブリエル・レンジの『大統領暗殺』(06)を手掛けたエド・ギニーが参加している。
 さらに、特殊効果デザインを手掛けたのは、『ヘルレイザー』(87)や『ハイランダー』(87)で有名なSFXマン、ボブ・キーン。ニール・マーシャルの人狼映画『ドッグ・ソルジャー』(03)を手掛けたイメージFXが、アニマトロニクス効果を担当している。
 なお、本作はフランスのジェラルメ映画祭でグランプリと国際批評家賞を受賞したほか、アメリカのオースティン・ファンタスティック映画祭でも作品賞・監督賞・撮影賞を、同じくアメリカのスクリームフェストでは作品賞・監督賞・主演女優賞を獲得している。

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メアリーとダンの身にも危険が迫る

猛スピードで成長するミュータント

 主人公ダンを演じるジョン・リンチは、名匠パット・オコナーの出世作『キャル』(84)でIRAに身を投じる若者キャルを演じて評価されたアイルランドの俳優。朴訥とした存在感が持ち味で、『父に祈りを』(94)や『フィオナの海』(94)など、アイルランドを舞台にした映画には欠かせない顔だ。
 女性獣医のオーラを演じているエッシー・デイヴィスはオーストラリア出身で、舞台版『欲望という名の電車』のブランチ役でローレンス・オリヴィエ賞を受賞した有名な舞台女優。映画だと、最近では『オーストラリア』(08)にキング・カーニーの妻役で顔を出していた。
 生物学者ジョン役のマルセル・ユーレスはルーマニア出身で、現在はハリウッドを中心に活躍している渋い脇役。出演作そのものはあまり多くないが、『インタビュー・ウィズ・バンパイア』(94)や『ミッション・インポッシブル』(96)、『ピースメーカー』(97)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(07)など、幾つものハリウッド大作で重要な脇役を演じている。
 そして、トレーラー暮らしをしている若者ジェイミー役には、ロック・バンドの栄枯盛衰を描いたモッキュメンタリー『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』(05)のマネージャー役が印象的だった俳優ショーン・ハリス。その恋人メアリー役には、ニール・ジョーダン監督の『プルートで朝食を』(05)で、未婚の母となる少女チャーリー役を演じて絶賛されたルース・ネッガが扮している。

 

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