イザベル・オーブレ Isabelle Aubret

 

 

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 1962年にユーロビジョン・ソングコンテストでグランプリに輝いた大ヒット曲“Un premier amour(日本タイトル『はじめての愛』)”で知られるシャンソン歌手イザベル・オーブレ。そのしっとりとした美しい歌声は実に上品で、なおかつ都会的な洒脱さも兼ね備えていた。しかも、軽やかで柔らかくてフェミニン。その上、ブロンドのエレガントな美人ときたもんだから、ジャック・ブレルやジャン・フェラといった錚々たる才人たちもすっかり彼女の虜となってしまった。
 哀愁溢れる抒情的なラブソングを歌わせたら天下一品だが、その一方でボサノバやラテン・ジャズに挑戦したアルバム“Isabelle Aubret”('71)というお洒落でグル―ヴィーな名盤も残している。一時は日本でもかなり人気があったようだが、今ではすっかり忘れ去られてしまっているのが残念だ。

 1938年7月27日、フランス北部の街リールに生まれたイザベルは、本名をテレーズ・コケレールという。地元ラジオ局の関係者に才能を認められたことからコーラス・グループのメンバーとなり、その後パリのオランピア劇場で行われた歌唱コンテストに入賞してキャバレーの舞台に立つようになった。その後、大物芸能エージェントのジャック・カネッティにスカウトされ、1961年にバークレー・レコードから歌手デビュー。その翌年にユーロビジョンのグランプリに輝き、一躍売れっ子のトップ・スターとなった。
 そんな彼女にとって、アーティストとしての大きな転機となったのが1963年。当時フランスで絶大な人気を誇っていたスーパー・スター、ジャック・ブレル、そして飛ぶ鳥を落とす勢いだった新星ジャン・フェラという2人の天才的なシンガー・ソングライターと運命的な出会いを果たしたのだ。イザベルの才能にほれ込んだブレルとフェラは、彼女のために自らの作品を幾つも提供した。特にフェラの紡ぎだす穏やかで美しいメロディは彼女の歌声との相性が抜群で、“C'est veau la vie”や“Deux enfants au soleil”などの名曲を数多く生み出している。
 そして、その可憐な美貌と歌声を買われた彼女は、ジャック・ドゥミ監督のあの名作『シェルブールの雨傘』('64)のヒロイン役にも抜擢されることとなった。ところが、直前になって交通事故で大怪我を負ってしまい、映画出演どころか芸能活動そのものを休業せざるを得なくなってしまう。その後、65年にサルヴァトーレ・アダモのオランピア劇場公演にゲスト出演してカムバック。68年にはヒット曲“La source”で再びユーロビジョン・ソングコンテストに出場し、今度は3位での入賞を果たした。
 69年に所属レコード会社バークレーを離れ、ブレルやフェラのプロデューサーとして有名なジェラール・メイスの個人レーベル、メイスへと移籍したイザベル。この頃からよりポップなサウンドへとシフト・チェンジし、先述したラテン・グルーヴの傑作“Isabelle Aubret”というアルバムも生み出した。また、ヨーロッパのみならずカナダや南米、日本などでもコンサート公演を行い、76年には東京音楽祭へ出場して最優秀歌唱賞を獲得している。
 しかし、81年の暮れに舞台から転倒するというアクシデントに見舞われ、2年間のリハビリ生活を余儀なくされてしまった。その後はコンスタントにシングルやアルバムを発表しつつ、86年頃からはヨーロッパ各地やソビエトなどでもコンサート活動を再開。90年にはオランピア劇場での単独ライブを成功させ、92年にはミッテラン大統領からレジョン・ドヌール勲章を授与された。現在もライブを中心に現役で活躍しており、06年には久々のオリジナル・アルバムを発表している。

 

CHANSON_FRANCAISE.JPG CHANSON_FRANCAISE_2010.JPG 1971_ALBUM.JPG ADELAIDE.JPG

Chanson francaise

Chanson francaise

Isabelle Aubret (1971)

Adelaide

(P)1997 Mercury/Polygram (France) (P)2010 Mercury/Universal (France) (P)2001 L'arome Productions (France) (P)2001 Delta Music (Germany)
1,C'est beau la vie
2,La Fanette ビデオ
3,Il n'y a plus d'abonne au numero que vous avez demande
4,Les enfants
5,Vous qui passez sans me voit
6,Un premier amour ビデオ
7,Nuit et brouillard
8,Que reste-t-il de nos amours?
9,Deux enfants au soleil
10,Il ne faut pas briser un reve
11,C'etait bien
12,La chanson de Prevert ビデオ
13,Nous dormirons ensemble ビデオ
14,Reverie
15,Ma Boheme
16,Le premier rendez-vous
1,Nous les amoureux ビデオ
2,La chanson de Prevert
3,Un premier amour
4,Deux enfants au soleil ビデオ
5,Il n'y a plus d'abonne au numero que vous avez demande
6,Excusez-moi si j'ai vingt ans
7,La Fanette
8,C'est beau la vie
9,Nuit et brouillard
10,Nous dormirons ensemble
11,Arc-en-ciel
12,Il est venu
13,Les amants de Verone
14,La chanson des pipeaux
15,On ne voit pas le temps passer
16,Le bonheur
17,C'est toujours la premiere fois ビデオ
18,L'enfant qui...
19,La chanson tendre
20,Notre chambre
21,La source ビデオ
22,Le malheur d'aimer
23,C'est toi que j'attendais
1,Casa forte ビデオ
2,Adieu tritesse ビデオ
3,La ville est la ビデオ
4,La chanson d'orphee
5,Pour nous
6,Les enfants
7,Aimer a perdre la raison
8,Des jardins melancoliques
9,Parce que
10,Les derniers tziganes

arrangements et direction musicale
Alain Goraguer/Roland Vincent
1,Excuses-moi
2,Adelaide
3,Un premier amour
4,Deau enfants au soleil
5,Allez allez la vie
6,L'eternite Picasso
7,Des cornouailles a l'oural
8,Berlin
9,Les singers
10,Le plat pays
11,Tout le monde y pense
12,New York USA
13,Que serais-je sans toi
14,Paris canaille
15,Ma plus belle histoire d'amour
16,Les prenoms de Paris
17,Aimer
 61〜64年の初期ヒット曲のみで構成されたベーシックなベスト・アルバム。ユーロビジョン優勝曲#6やジャン・フェラの書いた名曲#1もちゃんと含まれています。この時期の作品は全体的にジャジーでしっとりとした大人っぽい雰囲気のものが多いですね。派手さはないけれど小粋で、じっくりと耳を傾けたい楽曲ばかり。ソフトで可憐なイザベルの歌声も実に気持ちいいです。  こちらはバークレー時代の集大成とも言うべき内容のベスト盤。当時のヒット曲は一通り網羅されています。なんといっても#1が断トツに素晴らしい。もちろん、それ以外もブレルやフェラ、ゲンズブール、サルヴァドールなど錚々たるソングライター陣による美しいメロディ、ジャジーでエレガントなアレンジ、イザベルの可憐で上品な歌声が存分に堪能できる名曲ばかり。  イザベルのアルバムの中でも特にカルト的な人気の高い1枚。当時世界的なトレンドだったブラジリアン・サウンドに挑戦した作品なわけですが、その洒脱なアレンジ・センスは特筆に値するかと思います。しかも、ソフトで上品なイザベルの歌声との相性も抜群。中でも「ア・フェリシダーヂ」のカバー#2や「黒いオルフェ」のカバー#4は秀逸。まさにとろけるような甘さです。

 こちらは主に90年代以降のレコーディングで構成された企画盤。一部ですが、70年代の音源も含まれています。ヒット曲#3と#4は73年の再録バージョン。#17は東京音楽祭出場曲です。で、この1曲以外は正直なところ“ン〜”といった感じの内容。相変わらず乙女なイザベルの歌声はいいんですけど、中途半端に90年代なアレンジとサウンドはちょっと頂けなかった。

 

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