イザベル・サルリ Isabel Sarli

 

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 60年代〜70年代にかけて活躍したアルゼンチンのセックス・シンボル、イザベル・サルリ。その豊満な肉体とホルスタイン級の爆乳、濃厚すぎるくらいのセックス・アピールで、世界中の男性ファンを悩殺した伝説の映画女優だ。日本でも『女体蟻地獄』(58)や『先天性欲情魔』(68)、『獣欲魔』(70)などの主演作が劇場公開され、夫で映画監督のアルマンド・ボーと共に来日も果たしている。
 1935年7月9日、アルゼンチンはエントレ・リオス州コンコルディアに生まれたイザベルは、幼い頃から近隣でも評判の美少女だったという。そんな彼女が映画界に入るきっかけとなったのは、1955年に行われたミス・アルゼンチンのコンテスト。見事に優勝を勝ち取った彼女を見初めたのが、アルゼンチン映画界のトップ・スター、アルマンド・ボーだった。
 アルマンド・ボーは1930年代末から活躍する映画俳優で、バイタリティ溢れるマッチョな風貌で庶民の人気を集めていた。自身の監督・出演作『女体蟻地獄』(56)のヒロイン役を探していた彼は、ミス・アルゼンチンに輝いたイザベルの写真を一目見て気に入ったという。
 当時の彼には妻子があり、イザベルとは21歳という年齢差があったものの、2人はたちまち恋に落ちてしまった。アルマンドは妻と離婚し、56年にイザベルとゴールインを果たした。
 さて、そのデビュー作『女体蟻地獄』はイザベルの全裸シーンが話題となり、アルゼンチンのみならず世界各国で大ヒットを飛ばした。アルゼンチン映画で女性のフル・ヌードが登場するのはこれが初めてのこと。当初は肌色のボディ・スーツを着用するはずだったが、夫に言いくるめられて全裸の水浴びシーンを演じることになったのだという。

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1956年にアルマンド・ボーと結婚したイザベル

ハリウッドの巨乳女優ジェーン・マンスフィールドと

 この『女体蟻地獄』の大成功によってアルマンドとイザベルはコロムビア映画との契約を取り付け、彼女の主演作は世界各国で上映されることとなる。南米はもとより、アメリカ、日本、ヨーロッパ、オーストラリア、東南アジアなどでも彼女の映画はヒットし、たちまち彼女は世界的なセックス・シンボルとなった。
 ただ、あくまでも母国アルゼンチンでの活動にこだわる彼女は、海外からの出演依頼は基本的に断り続けていたようだ。61年にはイギリスのランク・オーガニゼーションから『ナバロンの要塞』(61)の出演依頼を受けたものの、彼女の母親が“雨ばかり降っている陰気な国へは行きたくない”と同行を拒んだために断念。さらに、アメリカのプロデューサーからハリウッド俳優スチュワート・グレンジャーとの共演作を打診されたが、自分よりハンサムな俳優と妻が共演することにアルマンドが嫉妬したことから、こちらも丁重に断ったという。
 そもそも、イザベルの世界進出を妨げたのが夫アルマンド・ボーの存在だったことは間違いないだろう。各国から相次いだ出演依頼は、あくまでもイザベル個人に対してのもの。彼女自身は夫との共演にこだわったらしいが、さすがに相手役が50歳を過ぎたむくつけき中年男とあっては、どの映画会社も難色を示したというのも至極当然のことだろう。また、アルマンドの方も妻に対する独占欲が強く、なかなか自分の手元から放そうとはしなかったようだ。
 1973年にはコロムビア映画からの要請で南アフリカとの合作映画“La diosa virgen”に主演。やはりイザベルは夫アルマンドとの共演を希望したものの、年を取りすぎているという理由で却下され、当時20歳になったばかりだった義理の息子ヴィクトルの起用を条件に出演することとなった。監督は南アフリカ出身のダーク・デヴィリアーズ。彼によると現場ではアルマンドがイザベルの傍に付きっきりで、片時も目を放さなかったそうだ。

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彼女の絶大な人気を伝える当時の雑誌

ファンの声援に応えるイザベル

 はてさて、いずれにしても、当時はアルゼンチンを代表する国際的な大スターだったイザベル・サルリ。しかし、その一方で彼女は賛否両論の分かれる存在でもあったようだ。特に60年代末以降の作品は過激な性描写が問題視され、たびたび当局とトラブルになっている。中でも『獣欲魔』ではヒロインが馬の交尾を見て欲情するシーンが物議を醸し、アメリカなど一部の国ではカット版での上映を余儀なくされた。
 また、イザベルのセックス・シーンばかりを売り物にする監督アルマンド・ボーの姿勢を批判する声も強かったらしい。実際、アルマンドの演出はセンセーショナリズムに訴えるばかりで、映画監督としての才能には正直なところ疑問を感じざるを得ない。同じくアルゼンチンを代表する人気監督だったエミリオ・ヴィエイラは、“確かに彼は強烈な個性の持ち主だったが、映画演出のテクニックについては全くと言っていいほど無頓着な監督だった”と語っている。それゆえに、スターとしてのイザベル・サルリは
伝説化したものの、肝心の主演作について語られることは極めて少ない。
 やがて、76年にビデラ将軍による軍事独裁政権が誕生すると、イザベルとアルマンドの2人は“国家の恥”であるとして政府の処刑リストに載り、72時間以内に首都ブエノスアイレスを去らねば命の保証はないと脅迫された。以降、夫婦は完全武装した傭兵隊をボディガードとして雇い、細々と映画製作を続けることになる。
 そして軍事独裁政権が倒れた1981年、アルマンド・ボーが67歳で死去。最愛のパートナーを失ったイザベルは、自らも映画界を去ることを決意した。だがその後、96年にソフト・ポルノ“La dama regresa”で一時的にカムバック。さらに、今年はセックス・コメディ“Arroz con leche”(09)で13年振りの映画復帰を果たしている。

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現在のイザベル・サルリ

 

先天性欲情魔
Fuego (1969)
日本では1971年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは未発売

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(P)2002 Something Weird (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
1/90分/製作:アルゼンチン
※“Setenta veces siete”(68)とのカップリング

映像特典
オリジナル劇場予告編(3種類)
アルゼンチン映画予告編集
短編ストリップ映画集
監督:アルマンド・ボー
製作:アルマンド・ボー
脚本:アルマンド・ボー
撮影:リカルド・ヨウニス
音楽:フンベルト・ウンブリアーコ
   アルマンド・ボー
出演:イザベル・サルリ
   アルマンド・ボー
   アルマ・ムヒーカ
   ミゲル・A・オルモス
   オスカル・ヴァリセッリ
   モニカ・グレイ

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裕福な独身女性ラウラ(I・サルリ)

ラウラに一目惚れする実業家カルロス(A・ボー)

レズビアンの召使アンドレア(A・ムヒーカ)

 イザベル・サルリとアルマンド・ボーのコンビ作で最も有名なのが、この『先天性欲情魔』だろう。なかなかインパクト強烈な邦題が秀逸だが、もともとのオリジナル・タイトルはスペイン語で“炎”という意味。要するに、四六時中体が火照って仕方のない色情狂のお話である。
 ヒロインは大金持ちの独身女性ラウラ。彼女は生まれつきの色情狂で、男だろうが女だろうが相手構わずセックスをしていないと気がすまない。カルロスという年上の男性から熱烈なプロポーズを受けて結婚するものの、真昼間から男を漁るために街中を徘徊するような始末だ。事態の深刻さに気付いたカルロスは精神科医に相談し、彼女を治療させようと試みるのだが・・・。
 ・・・という半ばどうでもいいような話が、ラテン気質丸出しの濃厚なメロドラマ・スタイルで仰々しく語られていく。まさにドロドロ&コッテコテの愛憎ドラマ。これがアメリカ映画ならば、ラス・メイヤーのように痛快で開けっぴろげなフェミニズム映画へと仕立て上げられるところだろう。
 しかも、アルマンド・ボー監督による演出の大袈裟で下手っクソなこと(笑)!カメラの構図や動き、ライティング、編集など全てにおいて、まるで学生の撮ったアマチュア映画みたいなノリだ。さらに、場違いとしか言いようがないくらいに濃厚で大仰なBGM。ヒロインがオッパイを揉みしだきながら欲情するたびに、まるでマカロニ・ウェスタンのテーマ曲のごとき勇壮なメロディがガンガンと鳴り響くのだ。もちろん、ラブ・シーンでは哀愁のラテン・ムード歌謡。実に分かりやすい(笑)
 そして、それに輪をかけて強烈なのが、思い入れだけはたっぷりのイザベルとアルマンドによる情熱溢れる大根演技。本人たちはそれこそクラーク・ゲーブルとヴィヴィアン・リーにでもなったつもりなのだろうが、まるで場末のストリップ小屋で三文芝居を見せられているような気分になること必至だ。その大いなる勘違いぶりは、見ている途中でもしかしたらこれはコメディなのでは!?と思えてくるほど大胆不敵極まりない。
 てなわけで、イザベル・サルリの爆乳以外にも、いろんな意味で見どころ満載の1本。お世辞にも良く出来た映画とは言いがたいが、このビザールな世界観は一度味わっておいても損はないはず。ただし、くれぐれも胃もたれにはご注意を(笑)

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いつでもどこでも体に火が付きっぱなしのラウラ

激しく恋に落ちるラウラとカルロス

男だけでは満足できないラウラの肉欲を満たすアンドレア

 若くて美しい女性大富豪ラウラ(イザベル・サルリ)は、その自由奔放な性生活で知られる社交界の花形。彼女にはアンドレア(アルマ・ムヒーカ)というレズビアンのメイドがおり、男で飽き足らない欲望を満たしている。そんな彼女がいつものように川辺で水浴びしているところを通りがかったのが、カルロス(アルマンド・ボー)という中年の実業家。彼は一目でイザベルの妖艶な美しさに魅せられた。
 カルロスはイザベルの叔父と旧知の仲だった。パーティの席上で再会した二人は、たちまち激しい恋に落ちる。そんな2人の姿を見て嫉妬心をむき出しにするアンドレア。しかし、カルロスから結婚を申し込まれたラウラは戸惑いを隠せなかった。彼女の肉体は一人の男では満足できない。カルロスからの申し出は嬉しかったが、体の内側から炎のように燃え上がる欲望を鎮めることは出来なかった。
 それでも、熱心な説得を繰り返すカルロスの真心に心打たれたラウラは、彼との結婚を決意する。もちろん、アンドレは猛反対するが、ラウラの気持ちは揺るがなかった。しかし、いざ結婚式を終えて新婚生活に入ると、彼女は疼く欲望を抑えることができない。
 我慢の限界に達したラウラは、昼間から男の体を求めて町を徘徊した。セクシーな下着の上に毛皮を羽織った彼女は、道行く男に近づいては胸元をはだけて乳房を揉みしだき、恍惚とした表情を浮かべて誘惑する。大半の男は頭のおかしいイカレた女だと思って相手にしなかったが、中には舌なめずりをしながらついてくる男も。郊外の森で野獣のようなセックスに燃えた彼女は、ふと我に帰ると後悔と自責の念に駆られる。
 一方、ラウラの不在に気付いたカルロスが探しにやって来た。涙ながらに謝罪する彼女の言葉に、カルロスは黙って抱きしめることしか出来なかった。そんな寛大なカルロスだったが、その数日後に見知らぬ男とベッドでセックスをしているラウラを発見し、さすがに事態を見過ごすことができなくなる。
 知り合いの精神科医に相談したところ、彼女は明らかな色情狂だという。そこで、カルロスはニューヨークの高名なセラピストを訪ね、ラウラの治療を依頼することにした。しかし、その先には本人たちも想像しなかった悲劇的な結末が待っているのだった・・・。

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腫れてゴールインを果たしたラウラとカルロス

火照った体を鎮めようとするラウラ

道行く男を片っ端から誘惑して歩くラウラ

 これでもかと言わんばかりの大袈裟な身振り手振りで、己の情欲に翻弄される悲劇の色情狂女を演じるイザベル・サルリ。まるでドラッグ・クィーンかと見まごうばかりのメイクやファッションも含め、彼女の存在そのものがキッチュというかクィアーなオーラをバンバンと発散しまくっている。ここまでくると、ほとんどパロディの領域。もちろん、本人はいたって大真面目なのだけれど(笑)
 一方、アルマンド・ボー監督のチープで趣味の悪い演出も相当なもの。よくぞこれで30年以上も映画監督を続けることができたもんだと、違った意味で感心すること請け合いだ。アメリカのラス・メイヤー監督と比較されることも少なくないが、そりゃメイヤー監督に対して失礼ってもんだろう。ラス・メイヤーは映画監督としての基礎も映像作家としての志もしっかりと備わっていたが、アルマンド・ボーにはそのどちらも皆無に等しいのだから。
 ちなみに、撮影監督のリカルド・ヨウニスは40年代半ばから数多くの低予算娯楽映画を手掛けたカメラマンで、アルマンド・ボーと組むのはこれが4作目。また、編集のロサリーノ・カテルベッティや衣装のパコ・ハウマンドルーなども、ボー監督とはたびたび一緒に仕事をしているスタッフだ。
 で、ラウラのメイドを務めるレズビアンのオバサン、アンドレアを演じているのは、これがイザベル・サルリとの共演2作目となるベテラン女優アルバ・ムヒーカ。これがなかなか強烈な顔をした女優さんで、蛇のように嫉妬深いアンドレア役にはピッタリなのかもしれないが、イザベルとのレズビアン・シーンは残念ながら全く美しくない。これがイタリア映画だったら、もうちょっと若くて色気のある女優さんを使ったろうに。
 また、ラウラの浮気相手として登場する男優たちも、垢抜けない中年オヤジばっかりなのが腑に落ちない。やはり、主演の2人よりも目立っちゃイカン、という鉄則のもとに集められたキャスティングなのだろうか。それにしても、脇役陣に全く華がないというのもいかがなもんだろうとは思うのだが・・・。

 

Setenta veces siete (1962)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2002 Something Weird (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/95分/製作:アルゼンチン

※『先天性欲情魔』とカップリング
監督:レオポルド・トーレ・ニルソン
製作:フリオ・コドイ
原作:ダルミロ・サエンス
脚本:ベアトリス・グイド
   レオ・タワーズ
   リカルド・ルナ
   リカルド・ベケール
撮影:リカルド・ヨウニス
音楽:ヴィルトゥド・マラーニョ
出演:イザベル・サルリ
   フランシスコ・ラバル
   ハルデル・フィーリョ
   ヒルダ・スアレス
   ブランカ・ラグロッタ
   イグナチオ・フィンデル

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メキシコの怪しげな売春宿

物憂げな娼婦コーラ(I・サルリ)

 こちらはイザベル・サルリがアルマンド・ボー以外の監督と組んだ数少ない作品の1つ。荒涼としたメキシコの砂漠を舞台に、馬泥棒と恋に落ちた人妻の孤独と哀しみを描く心理サスペンス・ドラマだ。当時はカンヌ映画祭のパルム・ドールにもノミネートされ、かなり高い評価を得た作品である。
 イザベルが演じるのは、どこまでも地平線と岩山の続くメキシコの寂れた田舎に暮らす女性コーラ。夢や希望もなく生きてきた彼女は、偶然立ち寄ったアメリカ人の男と結婚する。しかし、辺鄙な場所での夫婦生活は、以前と変わらず退屈で空虚なものだった。そこへ現れた馬泥棒の男。追い詰められて傷ついた彼を介抱しているうち、コーラは男に対して特別な感情を抱いていく・・・。
 物語は売春婦へと身を落としたコーラの回想形式で綴られており、さながらミケランジェロ・アントニオーニがマカロニ・ウェスタンを撮ってしまったといったような印象の作品に仕上がっている。つまり、メキシコの荒野を舞台にした“愛の不毛”を描くドラマとでも言ったところか。
 ただ、非常に芸術性の高い作品であることは間違いないのだが、あまりにもストーリーが淡々としているので、正直なところちっとも面白くない。イザベル・サルリのヌード・シーンすらほとんどないもんだから、ファンにとっては期待はずれ以外の何ものでもないだろう。
 ちなみに、アメリカでは配給会社が勝手にセックス・シーンを付け足し、ソフト・ポルノとして上映されている。上記のアメリカ盤DVDに収録されているのは、そのソフト・ポルノ・バージョン。これがまた、つまらなさに拍車をかけているのなんのって・・・(笑)

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砂漠のど真ん中で夢も希望もない生活を送っていたコーラ

粗野なアメリカ人パスカル(J・フィーリョ)が通りがかる

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パスカルと結婚生活をスタートさせたコーラ

ある日、ガンマンたちに追われる馬泥棒を目撃

 メキシコのとある売春宿。物憂げな表情を浮かべて客を取っているコーラ(イザベル・サルリ)は、他の売春婦たちとはちょっと違った雰囲気の持ち主だった。仕事を終えてボンヤリと天井を見つめていた彼女は、片隅にぽっかりと空いた穴を見つける。やがて、彼女は忘れたくても忘れられない過去を思い出すのだった。
 かつて彼女は、荒涼とした砂漠の真ん中にポツンと立つ一軒の雑貨屋で両親(イグナチオ・フィンデル、ブランカ・ラグロッタ)と共に暮らしていた。人里離れたこの地で育った彼女にとって、夢や希望などないも同然。そんなある日、一人のアメリカ人が店へやって来る。
 男の名前はパスカル(ハルデル・フィーリョ)。両親はどこの馬の骨とも知れぬ男に警戒心を抱くが、コーラは彼の強引で野性的な魅力に心惹かれた。やがて彼が近隣に土地を買ったことが分かり、それを知った両親は手のひらを返したように態度を変える。かくして、コーラとパスカルは夫婦となった。
 夫の土地へと移り、新婚生活を始めたコーラ。しかし、砂漠に囲まれたあばら家での共同生活は、以前と変わらず夢も希望もないものだった。夫は家の傍で井戸を掘り始め、コーラもその手伝いをするようになる。
 そこへ、一人の男が馬に乗ったガンマンたちに追われてきた。ガンマンのライフルが火を放ち、男は掘りかけの井戸の中へと崩れ落ちる。男に駆け寄ったコーラは、彼が死んだことをガンマンたちに告げた。男は馬泥棒だという。パスカルが遺体の始末を買って出たことから、ガンマンたちは礼を言って去っていく。
 しかし、男は死んでなどいなかった。コーラが嘘を言ったのである。男の名前はペドロ(フランシスコ・ラバル)。なぜ自分を助けたのかという彼の問いに、コーラは黙って首を傾げるだけだった。
 ペドロが死んでいなかったことを知ったパスカルは驚いて激怒するが、井戸掘りを手伝わせればいいというコーラの言葉に渋々納得する。確かに人手が必要だった。体力の回復したペドロは井戸掘りを手伝うようになり、コーラとも次第に親しくなっていく。
 そうした中、パスカルはペドロがガンベルトの中に大金を隠し持っていることを知る。欲に目の眩んだ彼は、ペドロを殺害して金を巻き上げることを思いついた。夫から殺人計画を持ちかけられたコーラだったが、彼女には別の考えがあった・・・。

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馬泥棒の名はペドロ(F・ラバル)

ペドロと親しくなるコーラだったが・・・

 原作はダルミロ・サエンスの書いた同名小説。スペイン語で“70×7”という意味だ。アルゼンチンでは有名な小説なのか、68年にもイザベル・サルリ主演でリメイクされている。また、脚本にはベルリン国際映画祭の金熊賞にノミネートされたこともある映画監督リカルド・ベケールが参加。
 監督を手掛けたレオポルド・トーレ・ニルソンは『天使の家』(57)と『MAFIA/血の掟』(72)が日本でも劇場公開されたことのあるアルゼンチンの監督で、ベルリン国際映画祭やカンヌ映画祭でも受賞経験のある名匠。脚本に参加しているベアトリス・グイドは彼の妻でもある。
 そして、馬泥棒のペドロ役を演じているのは、ルイス・ブニュエル監督作品の常連としても知られるスペインの名優フランシスコ・ラバル。近年ではカルロス・サウラ監督の『ゴヤ』(99)で演じた画家フランシスコ・デ・ゴヤ役が印象に残る人だ。
 また、コーラの夫となるアメリカ人パスカル役には、ブラジルの有名な脇役俳優ハルデル・フィーリョ。日本では晩年に出演したヘクトール・バベンコの『ピショット』(81)くらいしか劇場公開作のない人だが、ブラジルでは幾つも演技賞を獲得している名優だ。

 

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