イングリッド・ピット Ingrid Pitt

 

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 ハマー・フィルムのエロティック・ホラー『バンパイア・ラヴァーズ』(70年)と『鮮血の処女狩り』(71年)に主演し、現在もカルト女優として絶大な人気を誇っているイングリッド・ピット。実際、代表作と呼べる映画は、ハリウッドで出演した『荒鷲の要塞』(69年)とこの2本くらい。しかし、今でも世界規模のネットワークを誇るファン・クラブが存在し、各国の映画祭やコンベンションにも引っ張りだこという人気者。それほどまでに、『バンパイア・ラヴァーズ』と『鮮血の処女狩り』における彼女はセクシーで魅力的だった。

 1937年11月21日、ポーランドに生まれた彼女は、本名をイングーシュカ・ペトロフという。父親はドイツ人で、母親はユダヤ系のポーランド人。第2次世界大戦の最中、まだ幼い彼女は母と共にナチの強制収容所へ入れられた。その3年後、連合軍が収容所を爆撃した際に母と共に脱走し、しばらくはパルチザンと行動を共にしたという。
 終戦を迎えると、難民キャンプを渡り歩いて父親の行方を捜したが果たせず。戦後は東ベルリンに暮らし、有名なベルリン・アンサンブル劇団でブレヒトの妻ヘレーネ・ウィーゲルに演技を学んだ。しかし、反政府活動に関与していたことから警察に追われ、1962年11月に西ベルリンへ亡命。その後、亡命を手助けしてくれたアメリカ人将校ローランド・ピットと結婚して、カリフォルニアに移り住んだ。
 このように、後のグラマラスなセクシー女優というイメージからは想像もつかないくらい、実に波乱万丈の過酷な少女時代・青春時代を過ごした人だったようだ。さらに、その結婚生活も長続きせずに離婚。ヨーロッパへ戻った彼女は、1964年にスペインで映画デビューを果たす。
 スペインでロケされた『ドクトル・ジバゴ』(65年)に端役で出演したことをきっかけに渡米。ハリウッドへ移り、ウェイトレスのアルバイトをしながらテレビや映画に出演していた。フィリピンと合作のB級SF映画“The Omegans”(68年)を経て、リチャード・バートンとクリント・イーストウッド主演の戦争アクション『荒鷲の要塞』(69年)でヒロイン役に抜擢される。
 これをきっかけにイギリスへ活動の拠点を移し、アミカス・プロ製作のオムニバス・ホラー『ブラッド・ゾーン』(70年)に出演。これを見たハマー・プロのマイケル・カレラスに認められ、『バンパイア・ラヴァーズ』(70年)の女バンパイア、カーミラ役に抜擢された。この作品は世界的な大ヒットとなり、ハマー・プロのエロティック・バンパイア路線の先駆けとなる。
 続いて、実在の女吸血鬼として有名なバートリ・エリジェベトを題材にした『鮮血の処女狩り』(71年)に主演し、これも大変な評判となった。だが、その後はカルト映画『ウィッカーマン』(73年)に脇役として出演したのが目立つ程度で、さっぱり出演作に恵まれなくなってしまう。
 1980年にはスパイ小説“Cuckoo Run”で作家に転身。その後、現在までに10冊以上の小説やノンフィクション、自叙伝などを執筆している。さらに、自らの劇団を旗揚げして舞台女優としても活躍。政治スリラー『ファイナル・オプション』(82年)で映画界にも復帰し、戦争アクション『ワイルド・ギース2』(85年)やクライヴ・バーカー原作のホラー『アンダーワールド』(85年)、ナチスと闘った女性パルチザンを描く『ハンナ・セネッシュ』(88年)などに出演した。
 その後、しばらくは作家活動に専念していたものの、女優となった娘ステファニーの初主演作“The Asylum”(00年)でカムバック。だが、その直後に病で倒れてしまった。CGアニメ“Dominator”(03年)で仕事を再開し、低予算ホラー『ミノタウロス』(06年)で完全復活。今年は既に3本の映画に出演しており、ここへ来てようやく女優活動に本腰を入れるつもりになったようだ。
 ちなみに、娘ステファニーは残念ながら母親とは似ても似つかないくらい地味で華に乏しく、現在は女優を引退してグラフィック・デザイナーとして活躍している。それでなくとも、あれだけ美人で色っぽい母親を持てば、娘もなにかと大変だろうとは思うのだが・・・。まあ、余計なお世話か(笑)

 

El sonido prehistorico (1964)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2003 Alpha Video (USA)
画質★☆☆☆☆ 音質★☆☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/90分/製作:スペイン

映像特典
なし
監督:ホセ・アントニオ・ニエヴェス・コンデ
製作:グレゴリオ・サクリスタン
脚本:サム・X・アバルバネル
撮影:マヌエル・ベレングエル
音楽:ルイス・デ・パブロ
出演:ジェームズ・フィルブルック
    アントニオ・カサス
    アルトゥーロ・フェルナンデス
    ソレダード・ミランダ
    ホセ・ボダーロ
    イングリッド・ピット
    ロラ・ガオス
    フランシスコ・ピクエル

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探索チームは洞窟の中で卵の化石を発見

さらに不気味なミイラも見つかる

アンドレ教授(A・カサス)と娘のマリア(S・ミランダ)

 これがイングリッド・ピットの映画デビュー作。当時27歳くらいだったはずだが、オバサン臭いヘアスタイルのせいか、ちょっと老けて見えるのが玉に瑕。役柄的にもこれといって重要なパートではなく、あくまでも色添え的なポジションに終始している。とはいえ、まだまだ垢抜けないデビュー当時のイングリッドを見ることが出来るというだけでも貴重な作品だ。しかも、ヒロイン役は後にジェス・フランコ映画のミューズとなるカルト女優ソレダード・ミランダ。ユーロ系カルト映画ファンにはたまらないキャスティングだろう。
 で、映画そのものはどうなのかというと、これまたカルトでキッチュな作品。なんてったって、姿の見えない透明恐竜が人間を襲うってんだから。もちろん、特殊効果などの手間を省いて製作費を安く上げることがまず第一にあったのだろうけど、この力技的な発想が意外にも功を奏していて、どこから襲ってくるか分からないスリルと恐怖感を上手く盛り上げている。主人公たちが、目に見えない“物体”に仲間が八つ裂きにされていくのを見て呆然とするシーンの臨場感も迫力があった。
 原題は“原始の音”という意味で、透明恐竜が人間を襲う際に発する奇声音のことを指しているのだが、このサウンド・エフェクトもなかなかインパクトが強い。ゴジラとはまた一味違った、野性的で狂暴なケダモノの声だ。これだけでも十分に怖い。
 もちろん、決して傑作とか名作とか呼べる類の映画ではないものの、低予算映画はアイディアが勝負、ということを改めて実感させてくれる作品だとは思う。

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探索チームの一員が何者かに襲われる

目の前で繰り広げられる惨劇に呆然とする教授たち

卵から出てきた不気味な生物

 舞台はギリシャの山岳地帯。アンドレ教授(アントニオ・カサス)率いる捜索チームは、第二次世界大戦中にナチスが隠したとされる埋蔵金を探すべく洞窟に足を踏み込んだ。ダイナマイトを仕掛けて爆破させたところ、彼らは奇妙な卵の化石を発見する。
 一行は不思議に思いながらもその卵を持ち帰る。だが、洞窟の中にもう1つの卵が残されていることに気付かなかった。残された卵は突如として孵化し、中から出てきたスイラム状の生き物は瞬く間に透明となって消えてしまう。
 探索チームは近くの空き家を借りて滞在していた。そこへ、アシロフ博士(ジェームズ・フィルブルック)、アンドレ(アルトゥーロ・フェルナンデス)、ドーマン(ホセ・ボダーロ)、ソフィア(イングリッド・ピット)たちが合流する。アンドレ教授の一人娘マリア(ソレダード・ミランダ)は、若くてハンサムなアシロフ教授に心惹かれていた。
 翌日、洞窟の中で今度は古代の遺跡らしきものが見つかり、何かを守っているようなミイラが発見された。予想外の展開に戸惑いながらも興奮するアンドレ教授とアシロフ博士。ところが探索チームの一員が何者かによって殺される。奇妙な物音と隊員の悲鳴を聞いて駆けつけた彼らは、胸や顔をズタズタに引き裂かれた死体を発見した。
 ドーマンらは迷信的な地元の村人が、自分たちを追い出すため犯行に及んだのではないかと疑う。この地域は古くから呪われた土地と呼ばれ、村人たちに恐れられていたからだ。だが、再び洞窟に入った一行は目に見えない物体に襲われ、隊員が怪我を負ってしまう。
 さらに、夕飯を用意していたメイド(オラ・ガオス)が彼らの目の前でズタズタに体を引き裂かれて殺される。やがて夜も更け、周囲を警戒しながらも眠りに着く探索チームの人々。すると、居間に置いてあった卵の化石が割れて、中から不気味な生物が顔を出す。そこへ居合わせたアンドレ教授は慌てて卵を破壊した。
 夜が明けて一人で洞窟へと向ったアンドレ教授は、大量のダイナマイトを仕掛ける。目に見えない物体は洞窟に棲息しているはずだ。それなら、洞窟を破壊して一緒に埋めてしまおう、と考えたのだ。しかし、そこへ不気味な足音が忍び寄り、教授は無残にも殺されてしまった。
 教授の姿が見えないことに気付いたアシロフ博士やマリアたちは洞窟へ向うが、教授の悲鳴を聞いて何が起きたのかを悟る。さらに教授の仕掛けたダイナマイトが爆発し、洞窟の壁は崩れ落ちてしまった。すると、あの恐ろしい奇声と共に何かがもの凄いスピードで迫ってくるのを感じる。大急ぎで逃げ帰った一行は、ジープで脱走を試みるもののエンジンが動かない。
 目に見えない物体は家の中にまで進入してきたが、隊員たちの必至の抵抗で去っていった。アシロフ教授はキッチンに残された無数の足跡を発見し、ある妙案を思いついた。家の周囲に小麦粉を撒くのだ。足跡さえ確認できれば、物体の動きが目に見えて分かる。そこを襲撃すればいい。
 案の定、相手はこちらの作戦に引っかかった。その時、太陽の光に反射して物体の姿が一瞬だけ浮かび上がる。それは、なんと太古に死滅したはずの恐竜だった・・・!

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マリアは若いアシロフ博士(J・フィルブルック)に惹かれる

アンドレ教授までもが犠牲に

見えない敵に怯えるマリアとソフィア(I・ピット)

 監督のホセ・アントニオ・ニエヴェス・コンデは、50年代から70年代にかけて数多くの低予算娯楽映画(全て日本未公開)を世に送り出したスペインの職人監督。巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエの冒険活劇“Black Jack”(50年)では共同監督も務めていた。パニック・シーンのリズミカルで流れるような演出はとても上手いし、サスペンスの盛り上げ方もなかなかツボを心得ている。普通に考えてバカバカしいとしか思えない脚本を、ひとまずは見栄えのする映画に仕上げたというだけでも立派なものだろう。
 そのバカバカしい脚本を書いたのは、アメリカ出身の脚本家兼プロデューサーのサム・X・アバルバネル。もともとアメリカで“Prehistoric Women”などの超低予算冒険活劇に携わっていた人で、63年からスペインに活動の拠点を置いていた。ジョージ・マハリス主演の『最後の戦塵』(70年)やオリヴィア・ハッセー主演の『サマータイム・キラー』(72年)などの脚本も手掛けている。
 撮影監督のマヌエル・ベレングエルは戦前からスペイン及びイタリアで活躍したカメラマンで、戦争映画『大突撃』(64年)や冒険活劇『ジャワの東』(68年)、『モルグ街の殺人』(71年)などスペインで撮影されたハリウッド映画を数多く手掛けている人。『キング・オブ・キングス』(61年)の第2班撮影監督も務めていた。また、スパニッシュ・ホラーの傑作『象牙色のアイドル』(68年)のカメラマンであったことも付け加えておきたい。
 そして、地味ながらも印象的な特殊効果を手掛けているのは、『荒野の用心棒』(64年)を筆頭に数多くのマカロニ・ウェスタンで特殊効果を手掛けたマヌエル・バケーロ。ジュール・ヴェルヌ原作の『ミステリー島探検/地底人の謎』(72年)のSFXも彼の仕事だ。ただ、クライマックスでチラっと登場する恐竜のクリーチャー・デザインは酷い。あえて見せる必要もなかったんじゃないかと思う。

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透明な物体の正体は太古の恐竜だった

ソフィア役で登場するイングリッド・ピット

セクシーなダンス・シーンも披露

 出演者の中では、やはりマリア役のソレダード・ミランダとソフィア役のイングリッド・ピットが最大の目玉。先述したようにイングリッドはまだまだ垢抜けない感じだが、ソレダード・ミランダはこの頃から抜群に美しい。妖艶な『ヴァンピロス・レスボス』(70年)や『シー・キルド・イン・エクスタシー』(70年)の頃とは違って、キュートな清純派路線なのもファンには興味深いところだろう。
 一方、主人公アシロフ博士役のジェームズ・フィルブルックはアメリカ出身の俳優。テレビ・ドラマを経て、初めて大役に抜擢された戦争映画『大突撃』(64年)の撮影でスペインに赴き、そのまま居ついてしまった。好青年という以外は全く印象に残らない役者で、マカロニ・ウェスタンや戦争アクションに幾つか出演したもののパッとせず。70年代半ばには引退して、アメリカに戻ってしまったようだ。
 アンドレ教授役のアントニオ・カサスは、マカロニ・ウェスタンの脇役俳優としてお馴染みの顔。また、スペインではテレビを中心に活躍している有名俳優アルトゥーロ・フェルナンデスとホセ・ボダーロが、探索チームのメンバーとして顔を出している。

 

 

バンパイア・ラヴァーズ
The Vampire Lovers (1970)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 MGM (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/91分/製作:イギリス

映像特典
オリジナル劇場予告編
I・ピットによる原作朗読
I・ピット、R・W・ベイカー監督らの音声解説
監督:ロイ・ウォード・ベイカー
製作:ハリー・ファイン
原作:シェリダン・レ・ファニュ
脚本:チューダー・ゲイツ
撮影:モーリー・グラント
音楽:ハリー・ロビンソン
出演:イングリッド・ピット
    ピーター・カッシング
    ジョージ・コール
    ケイト・オマーラ
    ドーン・アダムス
    フェルディ・メイン
    ダグラス・ウィルマー
    マデリーン・スミス
    ジョン・フィンチ
    ピッパ・スティール
    ジョン=フォーブス・ロバートソン

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スピルスドルフ将軍の邸宅に怪しげな黒馬車の影が・・・

姪の誕生日を祝うスピルスドルフ将軍(P・カッシング)

 19世紀アイルランドの作家シェリダン・レ・ファニュが書いた傑作怪奇小説『カーミラ』を、ブリティッシュ・ホラーの殿堂ハマー・フィルムが映画化した作品。ハマーにとって初の女性バンパイアものであり、エロスを全面に押し出した最初の作品だった。そしてもちろん、イングリッド・ピットが一躍ホラー映画の女王となった記念すべき作品でもある。
 ただ、映画の出来そのものはいまひとつ。同じ原作を映画化したものであれば、ロジェ・ヴァディム監督の傑作『血とバラ』(60年)の方が、レ・ファニュの繊細で耽美的な世界を遥かに上手く表現していた。その点、ロイ・ウォード・ベイカーの演出は男性的過ぎるというか、繊細さに欠ける嫌いがあるように感じる。
 この手の作品には粘着質的な変態趣味が必要不可欠だと思うのだが、ウォード・ベイカーの演出は官能的ではあっても変態的ではない。淫靡なムードがあまり感じられないのだ。当時としてはきわどいレズビアンの描写についても、退廃的なワビサビの世界が感じられないのは不満。
 とはいえ、女吸血鬼を演じるイングリッド・ピットの濃厚で妖艶な美しさは絶品だ。まさにフェロモン全開といった感じ。20歳という設定には若干無理があるものの、同性を惹きつけるほどのセックス・アピールというのは十分に説得力がある。随所に挿入されるヌード・シーンも非常に大胆で、興行的に大成功したと言うのも頷けるところだろう。ハマーの職人スタッフらによるゴシック・ムードたっぷりの美術セットも素晴らしい。

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伯爵夫人の娘マルシーラ(I・ピット)

マルシーラとローラ(P・スティール)はすぐに親しくなる

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ドクター(F ・メイン)が到着したとき既にローラは死亡していた

カルンシュタイン家の墓場に美女の影が・・・

 18世紀末のオーストリア。妹をバンパイアに殺されたハルトグ男爵(ダグラス・ウィルマー)は、吸血鬼であるカルンシュタイン伯爵家の墓地を訪れ、一族を片っ端から串刺しにした。伝説の美女ミルカラ・カルンシュタインただ一人を残して・・・。
 それから数年後、スピルスドルフ将軍(ピーター・カッシング)の邸宅では姪ローラ(ピッパ・スティール)の誕生パーティが盛大に行われていた。そこへ伯爵夫人(ドーン・アダムス)が娘マルシーラ(イングリッド・ピット)を伴ってやって来る。その独特な雰囲気に誰もが目を奪われた。やがて黒衣の使者(ジョン=フォーブス・ロバートソン)が到着し、伯爵夫人は急遽帰らねばならなくなった。彼女は娘マルシーラをしばらく預かって欲しいと将軍に頼んで足早に去っていく。
 ローラとマルシーラはすぐに仲良くなった。やがてマルシーラはローラの肉体を求めるようになり、ローラもその甘美な誘惑に溺れていく。彼女は恋人カール(ジョン・フィンチ)とも会わなくなり、すっかり家の中でマルシーラと過ごすようになった。
 だが、やがてローラは夜な夜な悪夢に悩まされるようになる。体調も優れなくなり、みるみるうちに生気を失っていった。そして、カールがドクター(フェルディ・メイン)を連れてきた時は既に手遅れで、ローラは静かに息を引き取った。ドクターは彼女の胸元に不可解な傷跡が残っていることに気付く。それ以来、マルシーラは忽然と姿を消してしまった。
 それからしばらく経って、スピルスドルフ将軍の友人モートン(ジョージ・コール)は、壊れて立ち往生している馬車に遭遇する。馬車に乗っていたのは伯爵夫人と姪のカルミーラ(イングリッド・ピット)。夫人は病で危篤だという弟のもとへ向う途中だった。モートンは夫人に気を使い、カルミーラをしばらく預かることにする。
 モートン家にはエマ(マデリーン・スミス)という一人娘がいる。エマはカルミーラと急速に親しくなるが、家庭教師ペロドット(ケイト・オマーラ)はカルミーラの素行を怪しむ。やがて、エマはカルミーラの誘惑に溺れ、ローラと同じように体調を崩して寝込んでしまった。
 診察に訪れたドクターは、エマの胸元にローラと同じ傷を発見。彼女の首に十字架を下げさせ、部屋にガーリックの花を飾らせた。エマの部屋に入ろうとしたカルミーラは、十字架とガーリックの匂いに気付いて足がこわばる。モートン家を後にしたドクターは、吸血鬼の正体を現したカルミーラに襲われた。
 ウィーンからの帰り道、モートンはスピルスドルフ将軍とカール、そして将軍が呼び寄せたハルトグ男爵と遭遇した。ドクターの死体が森の中で発見されたという。しかも、モートン家からの帰り道で、その手口は明らかに吸血鬼によるものだった。
 半信半疑のモートン。ハルトグ男爵は一行を連れて、カルンシュタイン伯爵家の墓地へとやって来た。そこに残されたミルカラ・カルンシュタインの肖像画を見て、一同は息を呑む。将軍はそれがマルシーラと同一人物だと確認。そして、モートンは我が家に身を寄せているカルミーラに瓜二つだと気付く。
 その頃、エマの部屋に飾られたガーリックの花を召使に命じて撤去させているカルミーラ。その様子を不審に思った家庭教師ペロドットが、カルミーラの毒牙にかかった。もはやエマの命は風前の灯。しかし、エマの身に危険が迫っていることを知ったモートンの頼みで、カールがモートン家へと馬を走らせる・・・。

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モートン家の一人娘エマ(M・スミス)

エマはカルミーラ(I・ピット)の虜に

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妖艶で謎めいた雰囲気のカルミーラ

カルミーラはエマの胸元から血を吸い取る

 監督のロイ・ウォード・ベイカーはハリウッドでマリリン・モンロー主演の『ノックは無用』(52年)を撮り、大作『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』(58年)で高く評価された人物。その後、ハマー・フィルムでSF映画『火星人地球大襲撃』(67年)やサスペンス映画『残酷な記念日』(68年)などを手掛けるようになった。ムードやスタイルよりもエンターテインメント性を重視する職人肌の人ゆえに、本作では退廃的な映像美や耽美的なエロティシズムを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。
 レ・ファニュの名作を脚色したのは、『バーバレラ』(67年)や『黄金の眼』(67年)の脚本家として有名なチューダー・ゲイツ。本作をきっかけに、『恐怖の吸血美女』(71年)や『ドラキュラ血のしたたり』(71年)などのハマー作品を手掛けている。
 撮影のモーリー・グラントはハマー・フィルムで長年カメラ・オペレーターを務めてきた人物。他にも『血のエクソシズム/ドラキュラの復活』(70年)や“The Horror of Frankenstein”(70年)など数本を手掛けているが、あまり上手い人ではないように思う。
 また、ハマー作品にしては残酷描写の少ない作品なのだが、オープニングとエンディングでバンパイアの首を切断するシーンの特殊メイクは非常に良く出来ている。特にダミーヘッドの出来栄えは、一瞬本物かと思ってしまうくらいにリアル。『恐竜の島』(75年)や『レイダース/失われたアーク』(81年)、『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(83年)を手掛けたトム・スミスの見事な職人技だ。

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カルンシュタイン家の墓場に到着したハルトグ男爵(D・ウィルマー)ら

遂に本性をあらわしたカルミーラ

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カール(J・フィンチ)はエマの命を守るためカーミラに立ち向かう

伯爵夫人役を演じるドーン・アダムス

 そして、マルシーラとカルミーラの二役を演じるイングリッド・ピット。彼女の脇を支えるキャストの顔ぶれがまた豪華である。まず、マルシーラに姪を殺されるスピルスドルフ将軍役には、ハマー・フィルムが誇るホラー映画の帝王ピーター・カッシング。出番は控えめながらも、しっかりと物語の最初と最後を締めてくれる。
 謎めいた伯爵夫人を演じているのは、『ニューヨークの王様』(57年)でチャップリンの相手役を演じた女優ドーン・アダムス。さらに、黒衣の使者役には『ドラゴンVS七人の吸血鬼』(73年)でクリストファー・リーに代わってドラキュラ役を演じたジョン=フォーブス・ロバートソン。この役自体も、もともとはクリストファー・リーが演じる予定だったらしい。
 将軍の友人であるモートン役を演じているのは、『クレオパトラ』(63年)のフラヴィウス役で有名なジョージ・コール。彼は60年代から数多くのテレビ・ドラマにも主演し、イギリスでは国民的な人気俳優だった。
 モートン家の家庭教師ペロドット役を演じているのは、大ヒット・ドラマ『ダイナスティ』でジョーン・コリンズのビッチな妹役を演じていたケイト・オマーラ。ドクター役はロマン・ポランスキーの『吸血鬼』(68年)のバンパイア役で有名なフェルディ・メインが演じている。
 そして、吸血鬼ハンターであるハルトグ男爵役を演じているのは、クリストファー・リー主演の『怪人フー・マンチュー』シリーズで、フー・マンチューの宿敵である捜査官ネイランド・スミス役を演じていたダグラス・ウィルマー。
 さらに、最初の犠牲者ローラ役には『恐怖の吸血美女』(71年)にも出ていたピッパ・スティール。次いで狙われるエマ役には、『ドラキュラ血の味』(69年)や『フランケンシュタインと地獄の怪物』(74年)にも出演し、ハマー・ファンの間ではアイドル的な人気を誇るマデリン・スミスが扮してアンニュイな魅力を放っている。
 なお、ローラの恋人カール役として、ロマン・ポランスキーの『マクベス』(71年)でマクベス役を演じて一躍脚光を浴びた名優ジョン・フィンチが登場。これが映画デビュー作だった。

 

 

鮮血の処女狩り
Countess Dracula (1971)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 MGM (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/93分/製作
:イギリス

映像特典
オリジナル劇場予告編
I・ピット、P・サスディ監督らの音声解説
監督:ピーター・サスディ
製作:アレクサンダー・パール
脚本:ジェレミー・ポール
撮影:ケン・タルボット
音楽:ハリー・ロビンソン
出演:イングリッド・ピット
    ナイジェル・グリーン
    モーリス・デナム
    サンダー・エレス
    レスリー=アン・ダウン
    ペイシェンス・コリアー

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血も涙もない伯爵夫人エリザベス(I・ピット)

若くてハンサムな青年将校トス中尉(S・エレス)

 16世紀のハンガリーに実在した女吸血鬼バートリー・エリジェベト(英語読みだとエリザベス・バートリー)を題材にした血みどろの残酷歴史ドラマ。『ドラキュラ血の味』(69年)や『ハンズ・オブ・ザ・リッパー』(71年)など、当時ハマー・フィルムで優れたホラー映画を撮っていた名匠ピーター・サスディの、重厚でスタイリッシュな映像美が光る名作だ。
 別名“血の伯爵夫人”と呼ばれたバートリー・エリジェベトは、己の若さと美貌を保つために若い女性の生血を浴びていた。その史実をもとにしつつ、より超自然的な要素を盛り込んだ怪奇幻想譚。いくらなんでも、全身に血を浴びただけでヨボヨボの婆さんからグラマー美女に若返るわきゃないだろう、と突っ込みたくなるところだが、全編を包み込む幻想的で妖しげなムードと様々な趣向を凝らした映像美のおかげで、大人向けの残酷な御伽噺となった。
 もちろん、サディスティックで好色で自己中心的な貴婦人を演じるイングリッド・ピットの強烈な悪女ぶりも絶好調。彼女に比べたら『氷の微笑』のシャロン・ストーンなんぞ、ほんの小娘といった感じだ。まさに一世一代の当たり役と言ってもいいだろう。
 同じくバートリー・エリジェベトを題材にしたスペイン映画『悪魔の入浴・死霊の行水』(73年)もなかなかの秀作だったが、やはりこの『鮮血の処女狩り』の完成度には敵わない。70年代のハマー・フィルムを代表する1本と言える。

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若返ったエリザベスは娘イロナに成り代わる

トス中尉はエリザベスの美貌に心奪われる

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だが、若返りの効果は長続きしなかった

旅回りのジプシー一座が城下を訪れる

 舞台は東欧の某国。ノドシーン伯爵が亡くなり、血も涙もないと評判の未亡人エリザベス(イングリッド・ピット)は城と土地を相続した。20年来の愛人である警備隊長ドビ(ナイジェル・グリーン)に付き添われて葬儀から戻ったエリザベスだったが、彼女の眼差しは若くてハンサムなトス中尉(サンダー・エレス)に熱く注がれる。
 6歳の時にヴィーンの寄宿学校へ送られた娘イロナ(レスリー=アン・ダウン)が13年ぶりに戻ってくるということで、城の人々はその準備に忙しかった。若い女中テリーに桃の皮を剥くよう命じたエリザベスだったが、彼女の気難しさに怯えたテリーが誤ってナイフで指を切ってしまい、その血がエリザベスの顔にかかってしまった。エリザベスに怒鳴りつけられ、逃げるようにして引き下がるテリー。
 ところが、鏡を見たエリザベスは愕然とする。血を浴びた部分の肌が見違えるように若返っているのだ。侍女ジュリー(ペイシェンス・コリアー)を連れてテリーの部屋へ向ったエリザベスは、彼女の体にナイフを振り下ろす。
 翌朝、召使たちはテリーの姿が見えないと騒いでいた。ドビ隊長は恋人と駆け落ちでもしたのだろうと取り合わない。彼がエリザベスの寝室へ向うと、そこには妖艶な姿の若い美女が。ドビ隊長はそれがエリザベスだと気付いて驚く。そして、他言無用を約束した。
 しかし、ここで1つ問題が生じる。今日にも帰ってくるはずの娘イロナの存在だ。エリザベスはドビ隊長の部下に命じて、イロナを誘拐・監禁させた。そして、自らがイロナを名乗って人々の前に姿を現す。晩餐会に出席したトス中尉はたちまち彼女の虜となり、2人は肉欲を貪るようにして結ばれる。
 しかし、若返りの効果は長続きしなかった。トス隊長の腕に抱かれて幸せに酔っていたエリザベスは、鏡に移る年老いた己の姿を見て取り乱す。そして、顔を見られないようにしながら、彼を寝室から追い出した。
 その頃、城下には旅回りのジプシー一座がやって来ていた。エリザベスは若い踊子を城へ招きいれて殺害。その血を浴びて若さを取り戻す。それ以来、彼女はジュリーに命じてたびたび若い娘をさらって殺し、若さと美貌を維持するようになる。そうとも知らないトス中尉はエリザベスに求婚し、彼女もそれを受け入れた。
 もちろん、ドビ隊長はそれを快く思わないが、立場的に黙って見ているしかない。そこで彼はトス中尉を酒場に呼び出し、なじみの売春婦に誘惑させた。そして、2人が部屋で寝ている様子をエリザベスに見せ付ける。ショックを受けて戸惑うエリザベス。だが、ちょうど若返りの効果が切れてきたことから、怒りにまかせて殺した売春婦の血を浴びる。
 ところが、今回は若返りの効果がなかった。そこへ助け舟を出したのが、以前からエリザベスの正体に勘付いていたノドシーン家専属の学者ファビオ(モーリス・デナム)。彼によると、処女の血でないと効果がないらしい。エリザベスに泣きつかれたドビ隊長は、城下から生娘を探してきて殺害する。
 無事に若さを取り戻したエリザベスは、トス中尉との婚礼の準備を始める。だが、売春婦が行方不明になったことから、トス中尉は城内の不穏な動きに気付くようになった。さらに、秘密を知ったファビオが出しゃばるようになったことから、ドビ隊長は自殺に見せかけて彼を殺害。その現場をトス中尉が目撃してしまう。
 ドビ隊長は彼をエリザベスのもとへ連れて行き、彼女が血の風呂を浴びている姿を見せる。正体がばれたエリザベスは開き直り、結婚しなければ売春婦殺害の罪を着せると脅かす。その頃、城内では壁の裏に隠されていた犠牲者たちの死体が発見されて騒然となっていた。ドビ隊長は事態を収拾するべく、殺人犯捜索のためと称して召使全員に暇を出した。そして、部下に命じて若い娘を連れてこさせる。ところが、それはエリザベスの娘イロナだった。
 侍女ジュリーは彼女を一目見てイロナだと気付く。イロナが幼い頃から誰よりも可愛がってきたジュリーは、なんとか助けてやりたいとトス中尉に救いを求めた。彼はイロナの清純な美しさに心を奪われる。だが、やがて婚礼の日がやって来た。人がいないのを見計らって、式典の最中に城から脱出を試みるイロナとジュリーだったが・・・。

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長年エリザベスの愛人だったドビ隊長(N・グリーン)

学者ファビオ(M・デナム)はエリザベスの正体に勘付く

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自殺に見せかけて殺されたファビオ

生血を浴びているところをトス中尉に目撃されるエリザベス

 エリザベスを巡る三角関係や娘イロナの存在は完全なフィクションだが、これはなかなか上手いアイディアだった。ストレートなゴシック・ホラー路線ではなく、昼メロ的な泥沼の愛憎劇に仕立てたのは題材から考えても大正解。美と若さと権力に対する、女の恐ろしいまでの執念を見事に浮き彫りにしている。これで否応なしにドラマも盛り上がるというもの。
 ピーター・サスディとアレキサンダー・パールによる原案を脚本にしたのはジェレミー・ポール。日本でもNHKで放送されて大評判になった、ジェレミー・ブレット主演のテレビ・ドラマ『シャーロック・ホームズ』シリーズの脚本家として有名な人物だ。なるほど、さすがに語り口が上手い。
 また、撮影を担当したケネス・タルボットの華麗なカメラワークも特筆すべきだろう。彼は名作『野生のエルザ』(65年)や『ハマーヘッド』(67年)のカメラマンとしても知られ、本作をきっかけにハマー・フィルムの作品を何本も手掛けた人物。光と影のコントラストや上品な色彩を効果的に用いた、実に絵画的で美しい画作りが特徴的だ。
 さらに、ケン・ラッセルの『バレンチノ』(77年)やピーター・ハイアムズの『ハノーバー・ストリート』(79年)、『ホワイト・ナイツ』(85年)、『スポーン』(97年)などの美術デザインを手掛けたフィリップ・ハリソンによる、壮麗で豪華なセット・デザインも大変素晴らしい。

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城内では犠牲者たちの遺体が発見された

開き直ってみせる悪女エリザベス

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ついにエリザベスとトス中尉は婚礼の日を迎える

ジュリー(P・コリアー)に付き添われて逃げようとするイロナ(L=A・ダウン)

 伯爵夫人エリザベスの愛人であるドビ隊長役のナイジェル・グリーンは、『ズール戦争』(63年)や『トブルク戦線』(66年)などイギリスの戦争映画やアクション映画の軍人役として欠かせない名優。出てくるだけで作品に風格が漂うというタイプの俳優だ。また、学者ファビオ役のモーリス・デナムも、戦争ものや歴史ドラマの脇役として英米の映画界で大変重宝された味のある役者だった。
 そして、エリザベスの娘イロナ役で登場するレスリー=アン・ダウン。ジョン・ウェインと共演した『ブラニガン』(73年)やハリソン・フォードと共演した『ハノーバー・ストリート』(79年)など、ハリウッドでも活躍したイギリス女優で、とにかく美しすぎるくらいに美しい人だった。その完全無欠なまでの美貌が仇になって、トップ・スターになり損ねてしまった女優さん。当時はまだデビューしたての17歳だったが、非の打ちどころのない美少女ぶりは眩いばかりだ。
 一方、エリザベスに見初められる2枚目士官トス中尉役を演じているサンダー・エレスはハンガリー出身の俳優。ジョン・ヒューストン監督の『クレムリン・レター』(70年)やアラン・ドロン主演の『スコルピオン』(73年)などに脇役で顔を出していた人で、本作が唯一の大役だった。

 

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