ハリウッド・クラシック ブルーレイレビュー Pt.3

 

アリババと四十人の盗賊
Ali Baba and the Forty Thieves (1943)

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(P)2010 Eureka Video/Universal (UK)
画質★★★★★ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.37:1/HD規格:1080p/音声: 2.0 DTS-HD MA/言語:英語/字幕: 英語/地域コード: ALL/88分/制作国:アメリカ

<特典>
・音楽スコア&音響効果トラック
監督:アーサー・ルービン
製作:ポール・マルヴァーン
脚本:エドマンド・L・ハートマン
撮影:ジョージ・ロビンソン
   W・ハワード・グリーン
音楽:エドワード・ワード
出演:マリア・モンテス
   ジョン・ホール
   ターハン・ベイ
   アンディ・ディヴァイン
   カート・カッチ
   フランク・パグリア

 『アラビアンナイト』でお馴染みのアリ・ババと40人の盗賊の物語をヒントにしつつ、イスラム帝国がモンゴル帝国に侵略された13世紀半ばのペルシャを舞台に、カリフである父親を殺された王子アリ・ババと40人のレジスタンスが、モンゴルの皇帝フレグを打倒するという歴史活劇。そこに絡むのが妖艶な美女アマラ。実はアリ・ババと幼馴染のアマラは、策略家の父親によってフレグのお妃として差し出されようとしていた…というわけで、アリ・ババはモンゴルの支配からイスラムを解放すべく、そして愛するアマラを救うべく戦いに挑むってなわけだ。
 歴史ドラマ的要素が強いとはいえ、基本的には単純明快な冒険アクション。『アラビアン・ナイト』版ロビン・フッドとも呼ぶべきストーリーは子供向けと言えば子供向けかもしれないが、テクニカラーの鮮やかな色彩をフル稼働したオリエンタルな美術セットや衣装の華やかさ、大量のエキストラやスタントマンを動員した剣戟シーンの賑やかさは、まさしく古き良きハリウッド活劇の醍醐味だと言えよう。
 また、アマラ役のエキゾチック・ビューティ、マリア・モンテスの美しさも特筆すべきだろう。当時の彼女は、ほかにも『アラビアン・ナイト』('42)や『スーダンの砦』('45)など、中近東を舞台にした活劇映画(そのいずれもがジョン・ホールとのコンビ)で妖艶なヒロインを演じていたわけだが、中でも一番キレイに撮れているのが本作ではないかと思う。

 今のところイギリスでのみブルーレイ化されている本作。発売元はクラシック映画専門レーベルとして定評のあるEureka Video。著作権を持つユニバーサルより正式な許諾を受け、新たに制作したフルHDマスターを使用している。これがもう、ピッカピカの超高画質。テクニカラーの発色こそいまひとつ物足りないが、被写体のきめ細かな質感やディテールの再現力は驚くほどリアルだし、フィルムのキズやホコリもほとんど見受けられず。程よいフィルム・グレインが映像の滑らかさを際立たせる。ただし、あまりにもクリア過ぎて役者の付けヒゲがモロバレになっておりますが(笑)。
 一方、2.0chのモノラル音声はごくごく平凡。セリフは明瞭だし雑音の類もほぼないに等しいものの、全体的にはとてもフラットな印象。可もなく不可もなくといったところだが、それでも70年以上前の映画だということを考えれば十分なクオリティと言えるかもしれない。
 なお、特典映像は特になし。音楽スコアと音響効果だけを再生できるというオプションが付いているのみ。これってたまに見かける機能なのだけど、果たしてこれを有難がる人っているのだろうか?といつも疑問に思うのだよね…。

 

 

 

バスビー・バークリーの集まれ!仲間たち
The Gang's All Here (1943)

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(P)2014 Eureka Entertainment (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(イギリス盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.37:1/HD規格:1080p/音声: 1.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/103分/制作国:アメリカ

<パッケージ仕様>
フルカラーブックレット封入(56p)

<特典>
・評論家グレン・ケニー、ファラン・スミス、歴史家エド・ハルスによる音声解説
・ドキュメンタリー「Busbuy Berkeley: A Journey with a Star」
・未公開シーン
・オリジナル劇場予告編
監督:バスビー・バークレイ
製作:ウィリアム・ルバロン
原案:ナンシー・ウィンター
   ジョージ・ルート・ジュニア
   トム・ブリッジス
脚本:ウォルター・ブロック
撮影:エドワード・クロンジャガー
音楽:ハリー・ウォーレン
出演:アリス・フェイ
   カルメン・ミランダ
   フィル・ベイカー
   ベニー・グッドマン
   ユージン・バレット
   シャーロット・グリーンウッド
   エドワード・エヴェレット・ホートン
   シーラ・ライアン

 ミュージカル映画の魔術師バスビー・バークレイが、唯一20世紀フォックスに残した作品。アリス・フェイやカルメン・ミランダをはじめとする芸達者なエンターテイナーをキャストに揃え、バークレイらしい自由奔放なイマジネーションの限りを尽くして描かれる、まさしく万華鏡のごときカラフルで煌びやかでゴージャスなミュージカル映画の傑作だ。
 詳しい作品解説はこちらを参照して頂ければと思うが、それにしても戦時下にあってこれだけ大掛かりなセットを使った愉快なミュージカル映画を作っていたというだけでも、我々日本人にとっては少なからず驚きだといえよう。しかも、その奇想天外かつ大胆な映像表現の素晴らしさときたら!バスビー・バークレイのビジュアル的な天才ぶりが遺憾なく発揮されている。何度見てもため息を漏らさずにはいられない。

 今のところブルーレイで発売されているのはイギリスのみ。映画史的に重要なクラシック映画を最高品質のマスターを使用して再発している、いわばUK版クライテリオンとも呼ぶべきユーリカ・エンターテインメントのThe Masters of Cinemaシリーズからのリリースだ。
 本編はブルーレイ用に新しく制作されたHDリマスター版を使用。アメリカでは画質に問題のある'07年版と、ほぼ完璧なレストアが施された'08年版の2種類のDVDが発売されているが、今回のUK盤ブルーレイは当然のことながら後者の画質に近い。恐らく同じマスターではないはずだ。というのも、'08年版DVDと比べると若干ながらテクニカラーの色合いが弱いように見受けられるのだ。もちろん映像自体の滑らかさやきめ細かさはブルーレイの方が明らかに優れているのだが、全体的にちょっとばかり色褪せて見える点だけが惜しまれる。
 音声トラックは非圧縮の1.0chリニアPCM。これが70年以上前の映画としては文句なしにクリアな高音質。とても奥行きのある豊かなモノラル・サウンドで、全編を彩る華麗なミュージカル・ナンバーを余すことなく存分に堪能できるのが嬉しい。
 特典映像では約20分のドキュメンタリー「Busby Berkley: A Journey with a Star」を収録。これはアメリカ盤DVDにも収録されていたもので、バスビー・バークレイ監督のキャリアをダイジェスト的に振り返るもの。さらに5分間の未公開シーンとオリジナル劇場予告編も収められている。アメリカ盤DVDには主演女優アリス・フェイのドキュメンタリーや彼女が出演した晩年のテレビ番組も含まれていたが、残念ながら今回のブルーレイでは削除されてしまっている。一方、音声解説はDVDとは別の新たなトラックを収録。ブックレットに掲載されているコラムと併せることで、本作の制作背景や舞台裏についてまんべんなく学ぶことが出来る。まあ、全体的な印象としてはもうちょっと特典のボリュームが多くても良かったようには思う。

 

 

電撃作戦(北極星)
The North Star (1943) / Armored Attack! (1957)

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(P)2014 Paramount/Olive Films (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1.37:1/HD規格:1080p/音声: 1.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/76分・106分/制作国:アメリカ

<特典>
・1944年ラジオドラマ版(約30分)
監督:ルイス・マイルストン
製作:サミュエル・ゴールドウィン
脚本:リリアン・ヘルマン
撮影:ジェームズ・ウォン・ホウ
音楽:アーロン・コップランド
出演:アン・バクスター
   ダナ・アンドリュース
   ウォルター・ヒューストン
   ウォルター・ブレナン
   ファーリー・グレンジャー
   アン・ハーディング
   ジェーン・ウィザース
  
エリッヒ・フォン・シュトロハイム
   ディーン・ジャガー

 ちょっとばかりややこしいかもしれないが、『電撃作戦』と『北極星』はどちらも同じ映画の別々のタイトルである。戦時中のプロパガンダ映画であるため、日本では劇場未公開だった本作。かつて地上波テレビで放送された際のタイトルが『電撃作戦』だ。その後、DVD発売された際に『北極星』という新タイトルが付けられた。いずれも1943年度アカデミー賞6部門にノミネートされた“The North Star”の邦題だ。そして、実はその“The North Star”と1957年に発表された“Armored Attack”もまた、基本的には同じ映画なのである。そのワケを説明する前に、まずは“The North Star”の内容を簡単に説明しておこう。
 舞台は当時ソ連邦だったウクライナ共和国の遠さな村・北極星。のどかで平和な笑顔の絶えない毎日を送る住民たちだったが、そんな満ち足りた日常が突然壊されてしまう。残虐なナチス・ドイツの侵略が始まり、村がドイツ軍に占領されてしまったのだ。働き盛りの男たちはパルチザンとなって山へ潜伏。武器を調達して反撃の機会をうかがう。ところが、ドイツ軍は村の子供たちを次々と連行し、負傷した自国兵士に輸血を強要する。食べ物がない上に大量の血液を奪われ、どんどん衰弱していく子供たち。堪忍袋の緒が切れた村人たちは、丸腰のまま極悪非道な侵略者に立ち向かっていく…。
 そう、お分かり頂けるかと思うのだが、これは第二次世界大戦中の当時、同盟国だったソビエトの対独戦線を描いた作品なのである。あちらは一般市民までもが勇敢に戦っているのだから、我々もそれに見習おうじゃないか!という戦意高揚映画。これがなんというか、後の反共一辺倒なハリウッド映画からはとても想像ができないほど、徹底的にソビエトを美化して描いているのだ。
 牧歌的な美しいウクライナの大自然、明日への希望と強い愛国心を胸に何不自由なく幸せに暮らす誇り高き人々。そんな地上の楽園を破壊する憎むべきナチス・ドイツ。あまりにも過剰なソビエト賛美が今となっては噴飯ものなのだが、それでも当時のアメリカの観客は彼らに感情移入し、そんな愛すべきソ連邦の人々を虐める悪者ドイツは許せない!ドイツ打倒のために一致団結して戦おう!と胸を熱くしたに違いない…。きっと恐らく(笑)。
 で、この大げさ過ぎるソビエト賛美というのが、戦後の冷戦時代になって問題視されてしまったのである。悪の枢軸たる共産主義国家を褒め称えるとはけしからん!ということで、この世の楽園たる村の生活を描いた前半をバッサリと大幅カット。舞台設定も東欧某国とウヤムヤにされた。具体的な人間関係などはナレーションで説明。さらに、クライマックスでは追加シーンを挿入。ソビエトや東欧諸国の記録映像をバックに、命懸けでドイツと戦った勇敢な東欧の人々だが、戦後は共産主義者の愚かなリーダーたちによって彼らの願った平和は再び奪われ、ハンガリーの独立運動も赤軍によって蹂躙されてしまった(1956年のハンガリー動乱)…という重苦しいナレーションで締めくくられている。この再編集版が先述した“Armored Attack”であり、'57年に全米でテレビ放送されたのだ。
 いずれにせよ、映画作品としては及第点。あからさまなプロパガンダ色が今となっては滑稽に思えるだろう。とはいえ、監督は傑作『西部戦線異状なし』('30)の名匠ルイス・マイルストン。のどかな田舎の日常風景が一瞬にして地獄へと変わってしまう空襲シーンは、衝撃で思わず身震いしてしまうほどの迫力だ。キャストの顔ぶれも実に豪華。主演のアン・バクスターは個人的にあまり好みの女優ではないのだが、ドイツ軍医師役のエリッヒ・フォン・シュトロハイムや正義感溢れる村医者のウォルター・ヒューストン、頼れる村の老人ウォルター・ブレナン、ヒロインの心優しき母親アン・ハーディングなどのベテラン勢が好演。当時まだ18歳だったファーリー・グレンジャーの眩い美少年ぶりも要注目だ。

 もともとはRKOによって配給された本作の版権は、現在パラマウントが所有。ブルーレイは同社のアーカイブ作品を掘り起こしているオリーブ・フィルムスから発売されている。パッケージの扱いとしては再編集版がメインで、オリジナル版は事実上のボーナス扱い。これは恐らく画質の違いが理由ではないかと思う。
 というのも、オリジナル版は部分的にフィルムの損傷が著しく、本来ならきちんとした修復作業が必要なのだ。しかし、リマスターはするけれどレストアはしない、というのがオリーブ・フィルムスの基本姿勢。余計なコストはかけたくないのだろう。なので、原版フィルムの保存状態がそのまま画質に反映される。
 このオリジナル版の場合は、全体的には良好なパートが多いのだが、ごく一部ではあれど酷いところは明らかに酷いといった感じ。一方の短縮版は記録フィルムの流用シーンこそ画質が粗いものの、それ以外は概ねクリーンでシャープな印象だ。DTS-HDマスター・オーディオにエンコードされたモノラル音声は、両バージョンともに至ってクリア。セリフも明瞭に聞き取れるし、戦闘シーンの音響効果も十分迫力がある。
 そして、オリーブ・フィルムスにしては珍しく収録されている特典は、劇場公開の翌年に放送されたラジオ・ドラマ版。アン・バクスターにウォルター・ヒューストン、ファーリー・グレンジャー、ジェーン・ウィザースと、映画版のキャストが再集結している。

 

 

呪いの血
The Strange Love of Martha Ivers (1946)

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(P)2012 Film Chest, Inc. (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1:33:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch DOLBY DIGITAL/言語:英語/字幕:スペイン語/地域コード:A/ 116分/制作国:アメリカ

<特典>
・映画評論家ウィリアム・ヘアの音声解説
・オリジナル劇場予告編
・修復前後の映像比較
監督:ルイス・マイルストン
製作:ハル・B・ウォリス
原案:ジョン・パトリック
脚本:ロバート・ロッセン
撮影:ヴィクター・ミルナー
音楽:ミクロス・ローザ
出演:バーバラ・スタンウィック
   ヴァン・ヘフリン
   リザベス・スコット
   カーク・ダグラス
   ジュディス・アンダーソン
   ロマン・ボーネン
   ダリル・ヒックマン
   ジャニス・ウィルソン

 まるでホラー映画みたいな邦題だが、実のところはさにあらず。同じくバーバラ・スタンウィックが主演し、アカデミー賞7部門にノミネートされたビリー・ワイルダー監督の傑作『深夜の告白』('43)を明らかに意識した、男女の複雑な愛憎ドラマを軸に展開するフィルム・ノワールである。
 主人公は3人の幼馴染み、マーサとサム、そしてウォルターの3人。自立心が旺盛で我の強いマーサは、風来坊気質のサムと一緒に家出を計画するものの、ウォルターの告げ口によってバレてしまい、育ての親である厳格な伯母のもとへ引き戻される。そして、激しい憤りを抱えた彼女は、思いあまって伯母を階段から突き落として殺してしまうのだが、目撃者であるウォルターに証言を偽装させ、無実の人物を犯人に仕立て上げてしまう。
 それから16年後。伯母の莫大な遺産を受け継いたマーサ(バーバラ・スタンウィック)は裕福な女性実業家となり、地方検事のウォルター(カーク・ダグラス)と結婚していた。とはいえ、マーサにとってウォルターは使い勝手のいい召使のようなもの。しかも、いまだ罪の意識に苛まれるウォルターは酒に溺れていた。そこへ、久しぶりに帰郷したサム(ヴァン・ヘフリン)が姿を現したことから、3人の運命の歯車が狂い始める。
 やはり自分の理想の男はサムだったと焼けぼっくいに火がつくマーサ。当初からサムの来訪は脅迫が目的ではないかと疑っていた
ウォルターは、そんな2人にたちまち嫉妬心を燃え上がらせていく。彼の憶測に反してサムは16年前の事件の真相など知る由もなかったのだが、やがておのずと気づいていくことに。計算高いマーサは言葉巧みにサムを誘惑し、もはや足でまといなウォルターを始末させようとするのだが…?
 どうしても『深夜の告白』の二番煎じという印象の否めない作品ではあるものの、自分の欲望や利益のために周囲の男たちを手玉に取るマーサ役の大女優バーバラ・スタンウィックはさすがの上手さだし、これが映画デビュー作だったカーク・ダグラスが後のマッチョなイメージとは正反対の、精神的に不安定で弱いウォルター役を演じているのも興味深い。また、故郷に戻ったサムと惹かれあう不幸な身の上の女トニーをリザベス・スコットが演じており、言うなれば彼女がサムにとってマーサの呪縛に対する歯止めの役割を果たすわけだが、もう少し役柄を膨らませても良かったように思う。

 アメリカではパブリック・ドメインになっていることから、画質の悪い廉価版DVDがこれまで数え切れないほどリリースされてきた本作。そんな中、アメリカ議会図書館に所蔵されている35ミリ・フィルムからリマスターされたというのが、上記のFilm Chest版ブルーレイだ。同社はパブリック・ドメイン作品の保存状態良好なフィルムを探し出し、フルハイビジョンの高画質でソフト化するという“HD Cinema Classics”というシリーズを出しており、これもその一環だ。
 とはいえ、原版に使用された35ミリ・フィルムというのも、結局は使い古された上映用プリントに過ぎない。ゆえに、保存状態が良いといっても、おのずと限界はある。しかも“HD解像度で修復された”と謳われているものの、あくまでも簡易的なデジタル・ノイズ・リダクションをかけただけであり、大手スタジオやクライテリオンのようなフレーム毎の丁寧な修復作業が行われたわけではない。
 なので、修復以前の映像と比べると確かにモノクロのコントラストは明瞭だし、五月雨のようなノイズも目立たなくはなっている。ただ、その一方で色調補正が強すぎるため映像がフラットになってしまい、フィルムらしい奥行きや深みが失われてしまった。しかも、ノイズだって完全に消えたわけではなく、全編を通してうっすらと残っているのが見て取れる。とりあえず、従来の粗悪な廉価版DVDよりは遥かにマシな画質ではあるものの、しかしこの映像を美しいと感じるかどうかは賛否が分かれるだろう。
 2.0chのモノラル音声は通常のDVDと同じドルビー・デジタル。セリフの聞き取りについては一切問題ないものの、やはりブルーレイ商品としては不満の残る仕様ではある。特典はフィルム・ノワールの研究者として知られる評論家ウィリアム・ヘアによる音声解説と、本編同様にデジタル・ノイズ・リダクションされたオリジナル劇場予告編、そして修復前後の映像比較。とりあえず、情報量の豊富な音声解説はとても勉強になる。

 

 

 

上海から来た女
The Lady from Shanghai (1947)

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(P)2015 Mill Creek Entertainment (USA)
画質★★★★★ 音声★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1.37:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/88分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:オーソン・ウェルズ
製作:オーソン・ウェルズ
原作:シャーウッド・キング
脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:チャールズ・ロートン・ジュニア
音楽:ハインツ・ロームヘッド
出演:オーソン・ウェルズ
   リタ・ヘイワース
   エヴェレット・スローン
   グレン・アンダース
   テッド・デ・コルシア

 鬼才オーソン・ウェルズが演出と主演を兼任し、当時の妻であった大女優リタ・ヘイワースを相手に、複雑な罠に陥れられた男を演じるフィルム・ノワール。公開当時は批評も興行成績も芳しくなく、ヘイワースとの離婚の一因にもなったとされる。確かにウェルズ作品としては全体的にアッサリとしているというか、彼独特のスタイリッシュな映像センスが抑えられているようにも感じられるが、しかしそれでもクライマックスの有名な鏡だらけの部屋でのマジカルな演出は圧巻だ。
 ウェルズが演じるのはアイルランド人の船乗りマイケル。暴漢に襲われた美しい人妻エルサ(ヘイワース)を助けた彼は、彼女と夫の裕福な弁護士バニスターのヨットの船員として雇われるのだが、やがて殺人事件の犯人に仕立て上げられてしまう。いわゆる巻き込まれ型のサスペンスだ。偽装殺人を仕組んだはずの男が本当に殺され、その計画に一役買うはずだったマイケルが容疑者となり、彼と妻の仲を疑うバニスターが弁護を引き受けるという歪な人間関係の構図。しかも、殺された男の本当の目的はバニスター殺しだった。この複雑怪奇なプロットは、確かにすんなりとは呑み込みづらいかもしれないが、とてもよく練り込まれている。トレードマークの赤毛のロングヘアをバッサリと切り落とし、シャンパン・ブロンドのショートカットにイメージチェンジをしたリタ・ヘイワースの妖艶なファムファタールぶりも秀逸。時代を経て高い評価を得ることになったのも納得の秀作だ。

 実は本作のブルーレイはアメリカで3度に渡って発売されている。最初のリリースは2014年1月。版権を持つソニー・ピクチャーズが新たに4K解像度でのデジタル・リマスターを行い、クラシック映画専門のケーブルテレビ局ターナー・クラシック・ムービーズ(TCM)が販売を担当したのだが、これがファンから大変なひんしゅくを買ってしまった。というのも、オーサリングの不手際で画質も音質も4Kリマスターの恩恵が全く反映されておらず、さらには特典映像が歯抜けになってしまうという失態を演じてしまったのだ。
 そこでTCMは修正を施した改訂版ブルーレイを同年7月に発売。ところが、音声と特典映像はきっちり修正されていたものの、今度は映像のブラックレベルを強調しすぎてしまい、暗いシーンになるとディテールが潰れてしまうという問題が発生。さすがにもうTCMには任せられないということになったのだろう、ソニー・ピクチャーズのアーカイブ作品を多数手がけている廉価版専門メーカー、ミルズ・クリークから3度目の正直で発売されたのが上記のブルーレイである。
 画質は驚くほどクリアで鮮やか。人によっては明るすぎると感じるかもしれないが、しかしディテールや質感のきめ細かな表現力は4Kリマスターならではの醍醐味と言えよう。DTS-HDのモノラル音声も極めて明瞭。TCM版では字幕未収録に不満の声も高かったようだが、今回はしっかりと収録されている。惜しむらくは特典映像が一切ないこと。TCM版では数種類の短いドキュメンタリーのほか、大量のスチル・ギャラリーが網羅されていたが、こちらは廉価版ゆえなのか予告編すら収録されていない。それでも、この高画質&高音質で現地価格9ドルで手に入るのだから文句は言えまい。

 

 

 

落とし穴(おとし穴)
Pitfall (1948)

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(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1.33:1/HD規格:1080p 音声:2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/86分/制作国:アメリカ

<特典>
・フィルム・ノワール研究家エディ・ミュラーによる音声解説
・オリジナル劇場予告編
監督:アンドレ・ド・トス
製作:サミュエル・ビショフ
原作:ジェイ・ドレイトラー
脚本:カール・カム
撮影:ハリー・ワイルド
音楽:ルイス・フォーブス
出演:ディック・パウエル
   リザベス・スコット
   ジェーン・ワイアット
   レイモンド・バー
   ジョン・ライテル
   ジミー・ハント

 日本では劇場未公開に終わったものの、かつて地上波テレビにて『おとし穴』のタイトルで放送され、現在は『落とし穴』として日本盤DVDがリリースされている。海外ではフィルム・ノワールの隠れた名作として人気が高いようだが、個人的にはさほど面白いとも思えなかった作品だ。
 ロサンゼルスの保険会社に務める男性ジョン(ディック・パウエル)。しっかり者の妻スー(ジェーン・ワイアット)と可愛い盛りの息子(ジミー・ハント)がいて、安定した職業と庭付きの一軒家に恵まれた彼だが、しかし一方で平凡な規則正しい毎日に漠然とした虚無感を抱いている。そんなある日、担当する横領事件の調査で犯人の恋人モナ(リザベス・スコット)と知り合ったジョンは、抜群に美人だが孤独で不運な彼女につい惹かれてしまい、一瞬の気の迷いで愛を交わしてしまう。すぐさま我に返る彼だったが、その様子をモナに執着する私立探偵マクドナルド(レイモンド・バー)が見ていた。自分には目もくれないモナが、ジョンには心を開いた。嫉妬に駆られたマクドナルドはストーカー行為をエスカレートさせ、それを止めようとしたジョンに恐ろしい罠を仕掛けるのだった…。
 ストーリー展開はだいたい予想通り。職人監督アンドレ・ド・トスの演出にも特筆すべきものは見受けられない。それなりに出来の良いB級ノワールといったところか。ただ、確かにフィルム・ノワールとして異色の設定ではある。主人公は中流階級の平凡なサラリーマン。うらぶれた私立探偵でも負け犬の犯罪者でもない。ファム・ファタールに当たるモナにしても悪女とは程遠い。たまたま悪い男にばかり見初められてしまい、ようやく頼れる理想の男性に出会ったと思ったら、それが妻子ある既婚者ジョンだったという、つくづく男性運のない可哀想な女性だ。フィルム・ノワールらしからぬフィルム・ノワール。そういう意味では興味深い。
 さらに、当時のハリウッド映画としては珍しく不倫が最終的に許されるという点もユニークだと言えよう。かつてのハリウッドではヘイズ・コードと呼ばれる自主規制の倫理基準が存在した。そのバックボーンとなったのは、政治的な影響力を持つ全米のキリスト教系宗教団体。ゆえに、キリスト教徒のモラルに反するような表現は全て規制の対象だった。同性愛や売春、中絶、そして不倫などを肯定するような表現は御法度で、そうした行為を働いた人物は罰として不幸になるというのが鉄則だったのである。
 '60年代末に撤廃されたヘイズ・コードだが、本作の作られた'48年というのはまだガチガチだった時代。一瞬の気の迷いとはいえ妻を裏切り、その事実を言い出せないでいた主人公ジョンだが、それを知った妻スーは悩みながらも最後は夫を許す。まあ、地獄廻りをすることで既に十分な罰は与えられたという解釈なのかもしれないが、それにしてもスーのような大人の対応は、ピューリタン的な価値観に縛られていた当時のハリウッド映画では異例だったと言えるだろう。

 独立系の弱小会社リーガル・フィルムズが製作し、当時はユナイテッド・アーティスツが配給した本作だが、現在はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のフィルム・アーカイブが所蔵。上記のアメリカ盤ブルーレイは、マーティン・スコセッシが主催する映画基金の協力で35ミリのデュープ・ネガ・フィルム(上映用プリントの複製元となる原版フィルム)から起こされた、最新のHDマスターを素材として使用している。
 さすがにカメラ・ネガやインターポジから起こした場合に比べると、画像の鮮明度やディテール感がやや劣る印象はしなくもないし、フィルムの細かい傷や汚れも見受けられるものの、トータルではまずまずの高画質。使い古しの上映用プリントを元にした過去のDVDとは雲泥の差だ。2.0chのモノラル音声もクリアで安定感がある。英語字幕が付いていればなお良かったが、それでも十分に満足できる仕上がりだ。
 特典はフィルム・ノワールのエキスパートとして有名な映画研究者エディ・ミュラーによる音声解説。作品の背景から撮影秘話に至るまで詳細な情報が語られており、ファンにとっては大変勉強になることだろう。

 

 

 

三人の妻への手紙
A Letter to Three Wives (1949)

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(P)2013 20th Century Fox (Japan)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(日本盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1.37:1/HD規格:1080p/言語:英語/音声:1.0ch DTS-HD MA・2.0ch DOLBY DIGITAL/字幕:日本語・英語/地域コード: A/104分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
製作:ソル・C・シーゲル
原作:ジョン・クレンプナー
脚色:ヴェラ・キャスパリー
脚本:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
撮影:アーサー・C・ミラー
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ジーン・クレイン
   リンダ・ダーネル
   アン・サザーン
   カーク・ダグラス
   ポール・ダグラス
   バーバラ・ローレンス
   ジェフリー・リン
   コニー・ギルクライスト
   セルマ・リッター

 ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督といえば、脚本家出身らしい機知に富んだ洗練された会話と、幾重にもレイヤーを重ねた上質な人間ドラマで知られる巨匠だが、そんな彼にとって『イブの総て』('50)と並ぶ代表作とされるのが本作。アカデミー賞の作品賞にノミネートされ、監督賞と脚色賞に輝いた珠玉の名作だ。
 主人公は閑静な郊外の住宅地に暮らす3人の主婦デボラ、リタ、そしてローラ。それぞれ何不自由ない裕福な生活を送っている親友同士だが、そんな彼女たちのもとに、ある日一通の手紙が届く。あなたがたのうちの誰かのご主人と駆け落ちします、という差出人不明の女性からの手紙だった。まさかうちの人が…と表向きは平静を装いつつ、でももしかしたら…と内心気が気ではない3人。そんな彼女たちが夫との馴れ初めや山あり谷ありの結婚生活を振り返ることで、改めて夫婦の絆というものを考え確かめるというわけだ。
 ストーリーの構成は極めて分かりやすい。まるで古典的な舞台劇を見ているかのような、いわば優等生的な作劇スタイルだと言えよう。しかし、マンキーウィッツ自身による脚本はセリフの随所に女性の本音や不満を絶妙な按配で散りばめ、男と女の愛情やすれ違いを繊細なタッチで活写することによって、まことに普遍的な夫婦愛のドラマへと仕立て上げている。そればかりか、のどかな農園で育った世間知らずなデボラ、最先端の職業でバリバリと稼ぐキャリアウーマンのリタ、都会の貧しいスラム街に生まれ育った玉の輿妻のローラと、人生背景の全く異なるヒロインたちを配することで、当時の女性たちが置かれた社会的な立場にも鋭くメスを入れていく。実に見事な女性映画だと言えよう。

 筆者が入手したのは65周年を記念してリリースされたブルーレイの日本盤。過去のDVD(あくまでも20世紀FOXの正規盤)も高画質で評判だったが、こちらのブルーレイはさらにモノクロのコントラストが鮮明で、全体的に明るくきめ細やかなディテールの再現力は、SDとHDのクオリティの違いを大きく印象づける。音声トラックはロスレスのDTS-HDマスターオーディオとドルビー・デジタルの2種類を用意。どちらも非常にクリアで聞きやすいが、やはり前者の方が奥行きも深みも感じられて秀逸だ。
 ただ惜しむらくは、米国盤に収録されている女優リンダ・ダーネルの伝記ドキュメンタリーや専門家の音声解説、オスカー授賞式の模様を伝えるニュース映像などの特典が日本盤では省かれてしまったこと。オリジナル劇場予告編のみというのはいささか寂しい。

 

 

 

シルバー・シティ
Silver City (1951)

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(P)2012 Olive Films/Paramount (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.37:1/HD規格:1080p/音声: 1.0 DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/91分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:バイロン・ハスキン
製作:ナット・ホルト
原作:ルーク・ショート
脚本:フランク・グルーバー
撮影:レイ・レナハン
音楽:ポール・ソーテル
出演:エドモンド・オブライエン
   イヴォンヌ・デ・カーロ
   バリー・フィツジェラルド
   リチャード・アーレン
   グラディス・ジョージ
   ローラ・エリオット

 1951年から52年にかけて、バイロン・ハスキン監督×ナット・ホルト製作×エドモンド・オブライエン主演で3本の西部劇が作られているが、その中の一本がこれ。今では『宇宙戦争』('53)や『黒い絨毯』('54)など一連のSF映画で語られることの多いハスキンだが、もともとはギャング映画や冒険活劇映画など何でもこなすオールマイティな職人監督であり、当然ながらハリウッドの職人監督の常として西部劇も数多く撮っていたのだ。
 舞台は西部開拓時代の鉱山町シルバー・シティ。地元を牛耳る悪徳業者ジャーボーは、ほとんど価値のない鉱山を採掘業者に貸出して暴利を貪っていたが、あるとき鉄火肌の美女キャンダンスと父親ダッチが借りている鉱山から大量の銀が見つかる。しかし、鉱山の借用期限はあと12日だけ。それまでに鉱石を運び出したい親子だったが、そうはさせまいとジャーボー一味が様々な妨害工作を仕掛ける。そこで、キャンダンスはタフで寡黙な採掘技師ラーキンに助太刀を頼むのだが、実は彼には過去の暗い秘密があり、世間的に目立つようなことはしたくない。それでもキャンダンスの女っぷりにほだされて力を貸すラーキンだったが、そんな折、彼の過去を知る人物が町を訪れ、事態は複雑な様相を呈していく。
 田舎町を支配する悪の権力者を孤高のヒーローが成敗するという、まさに西部劇の王道的なプロットをベースにしながらも、そのヒーローがスネに傷を持つ曰くつきの男で、しかも困った人を助けるよりも自らの保身に走りがちという点が異色。そんな後ろ向きでグズグズした主人公に、男勝りで意志の強いヒロインがハッパをかけることで正しい道へと導き、最終的には過去の罪も贖わせることになるというわけだ。
 古典的な勧善懲悪とは一線を画すという意味で、翌年の『真昼の決闘』('52)を先駆けたような西部劇。まあ、あくまでも低予算のB級プログラムピクチャーなので、さほどストーリーに深みがあるわけでもなく、かなり大味な仕上がりではあるものの、まだまだマチズモ的な風潮の強かった'50年代に、こういう男女の立場が逆転したような西部劇が作られていたという事実は興味深い。
 そんなイマイチ頼りにならないヒーローを、タフガイの代名詞とも呼ぶべき強面俳優エドモンド・オブライエンが扮しているというのもまた面白い。また、『わが谷は緑なりき』('41)や『我が道を往く』('44)など温厚な人格者を演じ続けたバリー・フィツジェラルドが、ここでは強欲な悪徳業者ジャーボーを演じている…というのもちょっとした驚き。どちらも意外性を狙ったキャスティングだと言えよう。そして、鉄火肌のヒロイン、キャンダンスを演じているのが、エキゾチックなクール・ビューティ、イヴォンヌ・デ・カーロ。これがもう、最高にハマり役。派手な顔立ちがテクニカラーで一層のこと際立ち、特にクロースアップの美しさときたら筆舌に尽くしがたい。彼女だけでも見る価値は十分。

 ブルーレイはパラマウントとのライセンス契約でオリーヴ・フィルムがリリース。まあ、いつものことといえばいつものことなのだが、ソフト化に当たって修復作業などの手間暇を一切かけていないため、必ずしも満足のいく画質とは言えない。画像イメージは全体的にソフトで、大きなフィルムのダメージこそ見られないものの、細かなキズや汚れはそのままの状態。テクニカラーの色彩もいまひとつ鮮明さに欠ける。とはいえ、クロースアップされた俳優の肌の質感などは、さすがブルーレイといった感じのきめ細かさ。なんというか、鮮明度には若干欠けるけれど、かといって不鮮明なわけでもないといった感じだ。
 モノラル音声の状態も同様で、普通にクリアでクリーンだけれど特筆すべきほどでもなく。少なくとも、原版の保存状態が良かったであろうことは想像に難くない。なお、これまたいつものオリーヴ・フィルム製品らしく、特典映像は一切なし。レアな古い映画を見れるというだけで御の字といったところだろうか。

 

 

地上より永遠に
From Here To Eternity (1953)

FROM_HERE_ETERNITY.JPG
(P)2013 Sony Pictures (Japan)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(日本盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1.33:1/HD規格:1080p/音声: 5.1ch DTS-HD MA・2.0ch DOLBY DIGITAL/言語:英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・日本語・ポルトガル語・スペイン語/字幕:日本語・韓国語・ノルウェー語・ポーランド語・ポルトガル語・スウェーデン語・タイ語・トルコ語/地域コード: ALL/118分/制作国:アメリカ

<特典>
・知られざるトリビア:グラフィック・イン・ピクチャー
・ティム・ジネマンとアルヴィン・サージェントによる音声解説
・メイキング・ドキュメンタリー
・フレッド・ジネマン監督インタビュー
監督:フレッド・ジネマン
製作:バディ・アドラー
原作:ジェームズ・ジョーンズ
脚本:ダニエル・ダラダッシュ
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:ジョージ・ダニング
出演:バート・ランカスター
   モンゴメリー・クリフト
   デボラ・カー
   ドナ・リード
   フランク・シナトラ
   アーネスト・ボーグナイン
   ジャック・ウォーデン
   ジョージ・リーヴス
   クロード・エイキンズ

 ご存知、アカデミー賞の作品賞以下8部門を独占した巨匠フレッド・ジネマン監督の代表作。太平洋戦争直前のハワイはホノルルの陸軍兵舎を舞台に、軍隊内で蔓延る陰湿なイジメや暴力、不倫、売春などの問題を赤裸々に描く。当時全米でセンセーションを呼んだベストセラー小説の映画化だ。
 一般的には軍隊の非人間性を批判した通俗的な内幕暴露ドラマと解釈されているようだが、個人的にはちょっと違うのではないかと思っている。確かに原作者ジョーンズは陸軍の出身で、彼自身の経験に基づいた作品であることは間違いない。そういう意味では内幕暴露ものであり、軍曹と上官の妻の不倫など通俗的なメロドラマの要素も確かに濃厚だ。しかし、本作の評価と成功を理解するためには当時の時代背景を知っておく必要があるだろう。
 原作及び映画版の作られた'50年代初頭のアメリカは、マッカーシズムの嵐が吹き荒れ朝鮮戦争が始まった時代。自由主義と民主主義を掲げるアメリカで、個人の思想や表現の弾圧が横行するという大いなる皮肉。そこへ国民の徴兵に対する不満も湧き上がり、多くの人々がアメリカの正義と理想に疑問を抱くようになった時代だとも言えよう。
 片や、本作では清廉潔白であるはずの陸軍の汚れた実態が暴かれていく。個人の自由は規則でがんじがらめにされ、権威によって人権は踏みにじられ、臭いものには蓋がされる。その歪みはイジメとして弱者へ向けられ、まともな神経の持ち主は恋愛やセックスに現実逃避するか、組織の底辺で負け犬に甘んじるしかない。それもこれも、強い軍隊を維持するための必要悪なのかもしれないが、しかしいざ日本軍に急襲されるとひとたまりもない。
 本作における陸軍の偽善はアメリカ合衆国の偽善であり、すなわちあらゆる体制や組織の内包する非人間性というものを糾弾した作品だとも解釈できるだろう。そして、その本質は今もなお変わっていない。それこそが本作の持つ普遍性ではないかと考えるのだ。

 ソニー・ピクチャーズから発売されているブルーレイは世界共通仕様。ブルーレイ専用のマスターを使用しているのかどうかは定かでないものの、程よいグレインがフィルムらしさを醸し出す映像には厚みと深みが感じられる。下手にコントラストや明るさを強調せず、マスター素材本来の見た目を尊重した結果なのだろう。真珠湾攻撃の記録映像は粗くて浮いているが、それ以外にはフィルムの傷や汚れもほとんどなく、トータルでの印象はシャープできめ細かい。
 音声はDTS-HDマスターオーディオの5.1chサラウンドリミックスとドルビーデジタルの2.0chモノラル。日本語を含む各吹替版もドルビーデジタルのモノラルだ。サラウンド音声は重量感があって広がりも十分。特に音楽スコアで効果を発揮している。セリフも明瞭で聞き取りやすい。
 特典で特筆すべきはグラフィック・イン・ピクチャーの再生モード。この設定で本編を再生すると、画面の随所に映画評論家やジネマン監督の息子など関係者のコメント映像、および一口トリビアなどが表示される。その他の特典は全て過去のDVDからの移植。メイキング・ドキュメンタリーは賞味3分程度という短さだが、その物足りなさをグラフィック・イン・ピクチャーが補っているという感じだ。

 

 

 

殺人目撃者
Witness To Murder (1954)

WITNESS_TO_MURDER.JPG
(P)2014 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/画面比:1.75:1/音声:2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/83分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:ロイ・ローランド
製作:チェスター・アースキン
脚本:チェスター・アースキン
撮影:ジョン・アルトン
音楽:ハーシェル・バーク・ギルバート
出演:バーバラ・スタンウィック
   ジョージ・サンダース
   ゲイリー・メリル
   ジェシー・ホワイト
   ハリー・シャノン
   フアニタ・ムーア

 一部ではアルフレッド・ヒッチコックの傑作『裏窓』の元ネタだとも言われている低予算のB級サスペンス。自宅の窓から殺人現場を目撃した女性が、彼女の通報を信用しない警察に代わって事件を立証しようと奔走する。確かに基本プロットは『裏窓』そっくりだ。とはいえ、本編を見る限りでは短期間に急いで製作されたであろうことは想像に難くない。恐らく、こちらがプレスリリースもしくは予告編などで明かされた『裏窓』の基本プロットを拝借して、本家が公開されるギリギリ直前の1か月前に劇場公開へ踏み切ったというのが真相だったのではないだろうか。
 主人公は一人暮らしのキャリアウーマン、シェリル。ある晩、真夜中に目を覚まして窓の外を眺めていた彼女は、向かいのアパートの部屋で殺人現場を目撃して警察へ通報するものの、証拠が発見されなかったために見間違いで処理されてしまう。確かに自分は女性が殺される様子をこの目で見た。そう確信するシェリルは自ら事件の証拠を掴むため調査を開始。一方、犯人の学者リヒターはそんな彼女の動向を一足先に察知し、全てはヒステリックなオールドミスの妄想だという筋書きを作り上げていく。その結果、リヒターによる偽証の数々を信じ込んだ警察によってシェリルは精神病院送りに。その上で、リヒターは退院した彼女を自殺に見せかけて殺そうとする…。
 とりあえず、あまりにも都合が良すぎる警察の無能ぶりが失笑もの。そりゃデカデカとサイレンを鳴らして現場に到着すれば、気づいた犯人がさっさと死体を部屋の外へ運んで証拠隠滅するのは当然だ。しかも、ろくに現場を検証しないまま室内に死体がないから事件性もなしと結論づける驚きの短絡さ。おいおい、せめて廊下や階段くらいはチェックしろよ!と突っ込みたくなること請け合いだ。
 その後も連続する警察の詰めの甘い捜査は半ば荒唐無稽。シェリルの言い分が全く信用されないのは、その背景として当時の独身女性やキャリアウーマンに対するアメリカ社会の偏見があるのだろうし、著書も出している学者リヒターの社会的地位がそれに拍車をかけているだろうことも理解できるのだが、それにしてもお膳立てが露骨過ぎるように感じる。シェリルの行動をことごとく先読みするリヒターの狡猾さも不自然。挙句の果てに、実はナチスでした…という衝撃(?)の事実まで明かされるのだから、いやはややってられんよ…なんて気分にもなってしまう。
 主演はハリウッド黄金期を代表する大女優バーバラ・スタンウィックだが、当時は人気も下降路線を辿っていた時期。この数年後に活動の場をテレビへと移すことになる。脚本はプロデューサーのチェスター・アースキンが兼ねているが、実はあのナナリー・ジョンソンもノークレジットで関わっているらしい。いずれにせよ、ヒッチコック作品の影響力を語る上での歴史資料的な価値はあるかもしれないが、映画作品としてそれ以上のものは特にないと言えよう。

 本作はユナイテッド・アーティスツが配給を担当した独立プロ系の作品。日本では遥か昔に地上波テレビで放送されたものの、それっきりビデオにもDVDにもなっていない。現在はMGMがライセンスを保有しており、20世紀フォックスの許諾を得たキノ・ローバー社がスタジオ・クラシックス・シリーズの一環としてブルーレイをリリースしている。
 ブルーレイ用として新たにHDリマスターされているらしいが、原版フィルムがオリジナル・ネガなのかインターポジなのかなどは不明。目立ったフィルムの傷や汚れは殆ど見られないし、全体的には概ねシャープできめ細かい画質なのだが、しかし一部で極端に画像の粗くなるシーンが存在する。あくまでもフィルムの状態に起因しているのだが、それがなぜなのかは推測するしかない。もしかすると、複数のフィルム素材を繋げて使用しているからなのかもしれないし、もともと編集の段階でその部分だけ焼き増ししたフィルムを使っていたからなのかもしれない。
 ロスレスのモノラル音声は可もなく不可もなく。少なくともセリフは明瞭に聞き取れる。特典はなし。レアな作品なので、それもまた仕方あるまい。

 

 

 

外国の陰謀
Foreign Intrigue (1956)

FOREIGN_INTRIGUE.JPG
(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/100分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編集
監督:シェルドン・レイノルズ
製作:シェルドン・レイノルズ
脚本:シェルドン・レイノルズ
撮影:バーティル・パームグレン
音楽:ポール・デュランド
出演:ロバート・ミッチャム
   ジュヌヴィエーヴ・パージェ
   イングリッド・チューリン
   フレデリク・オブレイディ
   ユージン・デッカース
   インガ・ティドブラド

 ヒッチコックやフリッツ・ラングの系譜に属するスパイ映画と呼ぶべきか。とある大富豪が心臓発作で急死。だが、その死因に疑問を抱いたジャーナリストが大富豪の過去を探ったところ、ヨーロッパを股にかけた巨大な陰謀に巻き込まれていく。実は、その大富豪は各国に身を潜める元ナチス協力者を脅迫しては口止め料をせしめていたのだ。しかも、元ナチス協力者たちは国際規模で組織網を形成しており、その手先にである暗殺者によって大富豪は殺されたのだった。その事実を知ったジャーナリストは、組織の撲滅を図る各国諜報機関のスパイとして潜入捜査に身を投じることになる…というわけだ。
 実はこれ、同名テレビドラマを劇場用にリメイクした作品。監督・製作・脚本の三役を一手に引き受けるシェルドン・レイノルズは、そのテレビ版のプロデューサーだ。だからと言ってしまえば失礼かもしれないが、演出のスタイルもかなりテレビドラマ的。主演は大スターのロバート・ミッチャムだし、フランスやスウェーデンでもロケを行っており、それなりにスケールの大きな作品ではあるのだが、全体的に小ぢんまりとした印象は拭えない。スリルやサスペンスにも乏しく、どことなくノンビリとして緊張感に欠けている。
 ただ、ジュヌヴィエーヴ・パージェにイングリッド・チューリンという、ヨーロッパの名花を揃えた女優陣の顔ぶれは大いに魅力。特にチューリンにとっては、まだ一連のイングマール・ベルイマン作品で世界的に高い評価を得る以前の仕事であり、そういう意味では先見の明のあるキャスティングだったと言えるだろう。

 大手スタジオの埋もれたアーカイブ作品をブルーレイ化する、キノ・ローバー社のスタジオ・クラシックス・シリーズの一環としてリリースされた本作。もともとはユナイテッド・アーティスツが配給した作品だが、現在はMGMがライセンスを持っている。その親会社である20世紀フォックスから許諾を受けて発売されたブルーレイだが、残念ながら原版フィルムの保存状態があまりよろしくない。しかも、ソフト化に当たって修復作業なども行われていないため、全編に渡って傷や汚れがかなり目立っている。中にはテクニカラーが色褪せしてしまっている部分も。高解像度による映像の滑らかさがせめてもの救いだろうか。
 20.chのモノラル音声はまずまず良好。少なくともセリフは明瞭に聞き取れるし、耳障りなノイズもほとんどない。なお、特典映像は予告編のみ。本作のオリジナル劇場予告編に加え、同じくロバート・ミッチャムが主演した『街中の拳銃に狙われる男』('55)と『メキシコの暴れん坊』('59)の予告編が収録されている。

 

 

性愛の曲り角
High School Confidential (1958)

HIGH_SCHOOL_CONFIDENTIAL.JPG
(P)2014 Paramount/Olive Films (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/画面比: 2.35:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/86分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:ジャック・アーノルド
製作:アルバート・ザグスミス
原案:ロバート・ブリース
脚本:ルイス・メルツァー
   ロバート・ブリース
撮影:ハロルド・J・マルゾラーティ
音楽:ジェリー・リー・ルイス
出演:ラス・タンブリン
   ジャン・スターリング
   ジョン・ドリュー・バリモア
   マミー・ヴァン・ドーレン
   ジェリー・リー・ルイス
   レイ・アンソニー
   ジャッキー・クーガン
   チャールズ・チャップリンJr.
   ダイアン・ジャーゲンス
   マイケル・ランドン
   ライル・タルボット

 何がどうなってこんな日本語タイトルが付いたのか定かではないが、『性愛の曲り角』などという官能小説みたいな響きとは裏腹に、これはいわゆるヤンキー映画の元祖みたいな作品。要は、ツッパリ高校生たちがシャブを決めて、スケを侍らせ、ドラッグレースやロックンロールに興じる姿をセンセーショナルに描いたキワモノ映画。その笑えるくらいの出来の悪さゆえに、アメリカでは今尚カルト映画として愛されている逸品(?)だ。
 舞台はなぜかキャンパスでジェリー・リー・ルイスがロックンロールを演奏しまくっているというあり得ない状況が日常茶飯事のハイスクール(笑)。転校早々から事務のオバサンに“あんたみたいなブスはあと20歳若くてもゴメンだね”と暴言を吐き、校長室の椅子にふんぞり返って夜露死苦!とメンチを切り、年増のブロンド美人教師(ジャン・スターリング)にセクハラをかまし、札付きのワルぶりを発揮してみせる高校生トニー(ラス・タンブリン)が主人公。校内を仕切る不良グループのリーダー、J・I(ジョン・ドリュー・バリモア)にも一目置かれるようになった彼は、俺にもヤクをさばかせろと元締めに引き合わせるよう持ちかける。実はこのトニー、高校生にしちゃ老けていると思ったら、なんと麻薬Gメンの潜入捜査官。ハイスクールのキャンパスが麻薬密売の温床になっていることを掴んだ当局は、高校生たちをシャブ漬けにしているギャングを取り締まるために彼を送り込んだのだった…!
 良識ある父兄の皆さん!今どきの高校はこんな恐ろしいことになっていますよ!気をつけてください!という社会啓蒙映画のフリをしつつ、実のところそれは当時の倫理審査をパスするための言い訳に過ぎず、本当はそういった乱痴気騒ぎを煽情的に描くのが目的という当時のキワモノ映画のお手本みたいな一本。なので、荒唐無稽すぎる強引な展開なんぞは当たり前だ。当時27歳のお色気グラマー女優マミー・ヴァン・ドーレンがトニーの叔母さん役なんて無理あり過ぎだし、そもそも潜入捜査の相棒として目立ちすぎだろ!とか、どいつもこいつもまるで高校生には見えないし!とか突っ込みどころは満載である。
 その一方で、ビートジェネレーションと呼ばれた当時の若者文化が今となっては興味深い。ジャズのリズムに合わせて詩を朗読するパフォーマンスなんて、まさしくラップの走りだし。あと、これは日本人には伝わりづらいだろうが、アメリカ人にとっては当時の若者スラングなんかも笑えるネタになっているようだ。
 そのほか、当時のマミー・ヴァン・ドーレンの旦那で有名なジャズ・トランペッターのレイ・アンソニーや、ロックンロールの伝説ジェリー・リー・ルイスの出演などは音楽ファンも見逃せないだろうし、チャップリンの名作『キッド』('21)の元子役ジャッキー・クーガンとチャップリン・ジュニアがギャングのボスとその右腕を演じているのも要注目。ドリュー・バリモアの父親ジョン・ドリューや、『大草原の小さな家』のパパとしてお馴染みのマイケル・ランドンがツッパリ高校生を演じているのも面白い。

 当時はMGMが配給を手がけたものの、現在はパラマウントが版権を持っている本作。オリーヴ・フィルムズがリリースしたオフィシャル版ブルーレイは、かなり保存状態の良いマスターフィルムから新たにリマスターされたものと思われる。部分的な傷や汚れは若干ながら見受けられるものの、全体を通してはほとんど目立たない。モノクロの輪郭は極めてシャープだし、細かいディテールもリアルに再現されている。文句なしの高画質と言っていいだろう。
 DTS-HDマスター・オーディオにエンコードされたロスレスのモノラル音声もすこぶる良好。セリフが明瞭なのは勿論のこと、ジェリー・リー・ルイスやレイ・アンソニーの音楽もしっかりとした音質で楽しむことが出来る。惜しむらくは特典が一切ない簡素なパッケージ仕様だが、いかんせんサービス精神に乏しいオリーヴ・フィルムズの商品なので仕方がない。

 

 

明日なき10代
The Young Savages (1961)

YOUNG_SAVAGES.JPG
(P)2014 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.75:1/ HD規格:1080p/音声:DTS-HD MA 2.0ch/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/103分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:ジョン・フランケンハイマー
製作:パット・デュガン
原作:エヴァン・ハンター
脚本:エドワード・アンハルト
   J・P・ミラー
撮影:ライオネル・リンドン
音楽:デヴィッド・アムラム
出演:バート・ランカスター
   ダイナ・メリル
   シェリー・ウィンタース
   エドワード・アンドリュース
   ヴィヴィアン・ネイサン
   ラリー・ケイツ
   テリー・サヴァラス

 巨匠ジョン・フランケンハイマーの監督2作目であり、後に「終身犯」('62)や「大列車作戦」('64)、「さすらいの大空」('69)などでもタッグを組むバート・ランカスターとの初コンビ作だ。ニューヨークのハーレムで、3人組のチンピラ少年が白昼堂々と盲目の少年を一方的に殺害するという事件が発生。無実の若者がストリートギャングの犠牲になったということで世論が大騒ぎする中、担当検事ハンク・ベル(ランカスター)が犯人たちの尋問や調査を進めていくと、被害者がただの身体障害者ではなかったこと、さらにはイタリア系住民とヒスパニック系住民の根深い対立構造が背景にあることが浮かび上がってくる。
 ハーレムの人種問題というのはミュージカル「ウエストサイド物語」にも描かれていたが、本作は同じくハーレム出身のイタリア系で貧困層の現実をよく知る主人公ベルの公正な視点から、貧しさと教育不足ゆえに犯罪の世界へ陥りがちな若者たちを取り囲む厳しい環境、そんな彼らを更正させたくとも出来ない親たちの無力感、そして臭いものに蓋をしてきれい事を並べる富裕層の偽善と無理解をあぶりだしていく。今から50年以上も前の映画だが、貧困層の直面する様々な問題の根本は変わっておらず、そういう意味では古さをあまり感じさせない社会派ドラマだと言えよう。

 日本ではDVDすら発売されていない本作だが、アメリカでは古いヨーロッパ映画やサイレント映画などの再発に定評のあるキノ・ローバー社が、20世紀フォックスより正式なライセンス許諾を受けてブルーレイ化。使用されているマスターフィルムの世代は不明だが、保存状態はかなり良好と言っていいだろう。明らかにレストア処理はされていないため、細かいキズや汚れは少なからず残されているし、ごく一部でフィルムの劣化も確認できるが、トータルで見れば気になるほどのものではない。モノクロのコントラストはしっかりとしており、フィルム・グレインの濃度も適度に自然な按配だ。
 一方、DTS-HDにエンコードされたモノラル音声も経年劣化は少なく、セリフも概ね聞き取りやすいし、デヴィッド・アムラムのドラマチックな音楽スコアも丁寧に再現されている。特典映像は一切なしという簡素なコンテンツ仕様だが、こういう忘れられがちな隠れた名作を、ちゃんとした高画質で鑑賞できるというだけでも有難いといえば有難い。

 

 

第十七捕虜収容所 / 特攻大作戦
Stalag 17 (1953) / The Dirty Dozen (1967)

DOUBLE_FEATURE.JPG

(P) Warner Home Video (USA)

第十七捕虜収容所

特攻大作戦

画質★★★★★ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆

ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/画面比:1.38:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch DTS-HD MA/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード: ALL/120分/制作国:アメリカ

<特典>
・俳優リチャード・アードマン、ギル・ストラットン、脚本家ドナルド・ビーヴァンによる音声解説
・メイキングドキュメンタリー「Stalag 17: From Reality to Screen」
・ドキュメンタリー「The Real Heroes of Stalag XVII B」

ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 1.85:1/HD規格:1080p/音声: 5.1ch DOLBY DIGITAL/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ALL/149分/制作国:アメリカ

<特典>
・テレビ映画「ダーティ・ヒーロー/地獄の勇者たち」('85年・95分)
・アーネスト・ボーグナインによるイントロダクション
・原作者E・M・ナサンソン、俳優ジム・ブラウンらによる音声解説
・メイキングドキュメンタリー「Armed and Deadly」
・メイキングドキュメンタリー
「Operation Dirty Dozen」
・ドキュメンタリー
「The Filthy Thirteen」
・ドキュメンタリー
「Marine Corps. Combat Leadership Skills」
・オリジナル劇場予告編
監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー
戯曲:ドナルド・ビーヴァン
   エドマンド・トルチンスキー
脚本:ビリー・ワイルダー
   エドウィン・ブラム
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:フランツ・ワックスマン
出演:ウィリアム・ホールデン
   ドン・テイラー
   オットー・プレミンジャー
   ロバート・ストラウス
   ハーヴェイ・ランベック
   リチャード・アードマン
   ピーター・グレイヴス
   ネヴィル・ブランド
   シグ・ルーマン
   マイケル・ムーア
   ピーター・ボールドウィン
   ギル・ストラットン
監督:ロバート・アルドリッチ
製作:ケネス・ハイマン
原作:E・M・ナサンソン
脚本:ナナリー・ジョンソン
   ルーカス・ヘラー
撮影:エドワード・スケイフ
音楽:フランク・デ・ヴォール
出演:リー・マーヴィン
   アーネスト・ボーグナイン
   チャールズ・ブロンソン
   ジム・ブラウン
   ジョン・カサヴェテス
   リチャード・ジャッケル
   ジョージ・ケネディ
   トリニ・ロペス
   ラルフ・ミーカー
   ロバート・ライアン
   テリー・サヴァラス
   ドナルド・サザーランド
   クリント・ウォーカー
   ロバート・ウェッバー

 第二次世界大戦を題材にした全くタイプの違う戦争映画2本をカップリングしたお徳用ブルーレイ。まあ、ほとんど女っけがない野郎映画という点ではどちらも共通しているか(笑)。『第十七捕虜収容所』はパラマント映画の製作、『特攻大作戦』はMGMの製作だが、どちらもワーナー傘下のターナー・エンターテンメントがブルーレイ化に関わっていることもあり、上記の2枚組はワーナー・ホームビデオからリリースされている。

 ウィリアム・ホールデンにアカデミー主演男優賞をもたらした『第十七捕虜収容所』は、実在したドイツ軍捕虜収容所の日常をサスペンスフルに描く。ビリー・ワイルダーらしからぬ戦争映画とも言われたりするが、そもそも彼は『深夜の告白』ではフィルムノワール、『失われた週末』ではシリアスドラマ、『情婦』ではミステリーといった具合に、わりとジャンルに縛られない側面もあることを忘れてはなるまい。
 本作も前半は個性的な野郎どもが揃った捕虜収容所の人間模様をユーモアと悲哀を交えながら賑やかに活写しつつ、シニカルな個人主義者セフトンがドイツ軍スパイの疑いをかけられて村八分にされていく様子をじっくり描く。そして、後半はスパイ探しにグッとフォーカスしながら、ドイツ軍から戦犯容疑をかけられた米軍将校を助けるために囚人たちが一致団結していく様子がスリリングに展開する。
 戦争の大義名分などものともしない、人間の強さと逞しさと良心を謳いあげた娯楽性の高いヒューマンドラマ。ドイツ軍が必ずしも悪人として描かれていないのは、ワイルダー自身のキャリアの原点がドイツにあることを考えれれば当たり前だろうし、なによりも立場が違えば善と悪も入れ替わることを大前提としているためだろう。
 当初はチャールトン・ヘストンがセフトン役に起用されていたというが、ここはニヒルなホールデンで大正解。どこか間抜けで滑稽な収容所長役のオットー・プレミンジャー、まさしく野獣みたいにアグレッシブだけど愛らしくて憎めないアニマル役のロバート・ストラウスと相棒シャピロ役のハーヴェイ・ランベック、なにかと血気盛んで短気なデューク役のネヴィル・ブランド、気さくだけど実はしたたかな看守シュルツ役のシグ・ルーマンなど、脇役の面々も素晴らしい。まだどこか初々しさの残るピーター・グレイヴスの二枚目ぶりにも注目だ。
 ブルーレイのコンテンツは、北米盤コレクターズ・エディションDVDをそのまま移植している。本編が新たにリマスターされているのかは定かでないものの、画質はDVDに比べて雲泥の差といっていいほどの高画質だ。イメージはシャープで力強いし、フィルムグレインも非常に滑らか。目立った汚れや傷も見られない。ロスレスのモノラル音声も重量感がある。
 特典では約22分のメイキングドキュメンタリー「Stalag 17: From Reality to Screen」が見どころ。セフトンの右腕クッキーを演じたギル・ストラットンやホフィー役のリチャード・アードマン、原作戯曲を書いたドナルド・ビーヴァンなどのインタビュー映像を交えながら、作品の背景から撮影秘話までが語られていく。舞台裏スチールなども使用されている。また、もうひとつのドキュメンタリー「The Real Heroes of Stalag XVII B」では、本物の第十七捕虜収容所に囚われていた元軍人たちのインタビューを基に、実際の収容所生活がどのようなものであったのかを浮き彫りにしていく。音声解説を含め、これらの特典は日本盤DVDには未収録だ。

 無冠の巨匠ロバート・アルドリッチの最高傑作たる『特攻大作戦』は、まさしく究極の侠気映画でもある。陸軍組織のルールに馴染まない一匹狼のライズマン少佐(リー・マーヴィン)が任されたのは、囚人ばかりで組織された特殊部隊を率いて、ドイツ占領下フランスの敵軍司令部を壊滅させる極秘作戦。生きて帰れる保証は限りなく少ない自殺ミッションだ。
 作戦成功の暁には罪が恩赦されることを交換条件に参加した12人の囚人は、いずれも一癖二癖ある問題児ばかりの素人集団。そんな彼らが厳しくも人情味溢れるライズマン少佐のシゴキのもと次第に一致団結し、戦争のプロ集団としてメキメキと成長していく様子を痛快に描きつつ、クライマックスの壮絶なバトルシーンでは残酷で醜い戦争の現実を悲壮感たっぷりに描いていく。
 女性を含むドイツ軍高関係者たちを手榴弾で皆殺しにする描写は、どれほど崇高な大義名分をも木っ端微塵にする戦争の非人間性を強烈に印象付ける。スタジオの反対を押し切ってまで、このシーンを残すことに執着したアルドリッチ監督の真意が反戦にあることは明らかだ。また、権威主義者の俗物ブリード大佐(ロバート・ライアン)の部隊をライズマン一派が出し抜く展開にも、アルドリッチの反権力志向がまざまざとにじみ出る。そんな彼らに最初は疑問を抱いていた上官ウォーデン(アーネスト・ボーグナイン)が、やがてニヤニヤとしながら密かに応援するようになる様子も微笑ましい。
 そして、これでもかとばかりに個性派のクセモノ俳優が揃った豪華なキャストも素晴らしい。リー・マーヴィンのカッコ良さは勿論のこと、狂犬のような男フランコを演じるジョン・カサヴェテス、クールでタフなウラディスロー役のチャールズ・ブロンソン、狂信的なクリスチャンでレイシストのマゴット役のテリー・サヴァラス、どこか飄々としたピンクリーを演じる若かりしドナルド・サザーランドなど、どいつもこいつもいちいち魅力的。忠実で頼もしいボーレン軍曹役のリチャード・ジャッケルや、ちょっと気弱だけど情に厚いアンブラスター少佐役のジョージ・ケネディも大好きだ。
 こちらのブルーレイは、日本盤でもリリースされた2枚組スペシャル・エディションと同一内容。本編の画質は概ね良好だが、部分的に若干の問題がある。というのも、全体的にはクリアでシャープ、質感の再現もリアルで細やかなものの、シーンやカットによっては極端にボヤけてしまうのだ。ごく一部だけれど微かな傷が散見されるところもある。これはソース・プリント自体がそういう状態なのだろう。
 5.1chサラウンドにリミックスされたドルビー・デジタル音声も平凡な印象。セリフや効果音などは明瞭だが、全体的にフラットでほとんどサラウンド効果は感じられない。普通のテレビで見る分には問題ないが、再生環境によっては不満も出てくるだろう。
 特典の目玉は恐らくテレビ版の続編映画だろう。リー・マーヴィンにアーネスト・ボーグナイン、リチャード・ジャッケルの3人が再登板しているが、ケン・ウォールやラリー・ウィルコックスら当時の若手俳優陣はいずれも小粒で存在感が薄く、ストーリーもオリジナルの安手なコピーといった印象。そもそも、設定上は1作目の数カ月後なのに、マーヴィンもボーグナインもすっかりお爺ちゃんになっているのだから、画面的にかなり無理がある。ちなみに、画質も通常のDVDとほとんど大差がない。

 

 

黄金の指
Harry in Your Pocket (1973)

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(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0 DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/ 103分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
監督:ブルース・ゲラー
製作:ブルース・ゲラー
脚本:ジェームズ・デヴィッド・ブキャナン
   ロナルド・オースティン
撮影:フレッド・コーネカンプ
音楽:ラロ・シフリン
出演:ジェームズ・コバーン
   マイケル・サラザン
   トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー
   ウォルター・ピジョン
   マイケル・C・グウィン

 テレビシリーズ『スパイ大作戦』を大成功させたテレビ製作者ブルース・ゲラーが、今度はスリの世界を題材に映画進出を図った作品。金に困った若い男女が天才的な大御所スリ、ハリーのグループに加わって荒稼ぎするものの、やがて女を巡って男同士の意地の張り合いが始まり、その不協和音がグループの崩壊へとつながっていく。
 スリたちのそれぞれに役割分担があって、その華麗なチームワークを小気味よいテンポで描いていく辺りは、さながらウィル・スミス主演作『フォーカス』('15)の原点といった感じ。少なからず本作をお手本にしているであろうことは想像に難くない。当時としては画期的な描写だったろうし、目の付けどころはさすが『スパイ大作戦』の生みの親らしいと言えるだろう。
 ただ、それ以外のドラマ部分はけっこうグダグダで、特に仲間割れする辺りからの展開は通り一辺倒で面白みに欠ける。熟練したベテランが、あえて未熟な若者を助けて道を譲るというラストのオチもよくあるパターンだ。その辺の小ぢんまりとしたまとめ方は、テレビ出身であるゲラー監督の弱点と言えるかもしれない。
 ダンディなちょいワルおやじのジェームズ・コバーン、半人前なくせにプライドだけは高い血気盛んな若者マイケル・サラザン、そんな2人の男を愛して結果的に翻弄させてしまう知的な美女トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、それぞれに魅力的だが、なんといってもトボけた老人スリを演じる名優ウォルター・ピジョンの飄々とした演技が見事に潤滑剤の役目を果たしている。さすがはハリウッド黄金期を彩った大スター。こういう上品で紳士的で、茶目っ気と色気のある老優というのは、今の映画界にはすっかりいなくなってしまった。

 日本では過去にソフト化されたことが一度もなく、アメリカでもMGMのオンデマンド・シリーズでDVD発売されたことがあるのみというレアな作品だが、めでたくキノ・ローバー社のスタジオ・クラシック・シリーズとしてブルーレイ化が実現。画質的にはまずまずといったところだろうか。フィルムの汚れや傷みはほとんど見られないし、画像の印象自体も概ねきめ細かくてクリアだが、いまひとつ決め手に欠けるという感じ。超高画質!というレベルにまでは達していない、と言うべきだろうか。
 それは音声に関しても同様で、ロスレスのDTS-DHマスター・オーディオにエンコードされた2.0chモノラル音声はクリーンだし、ラロ・シフリンのメロディアスな音楽スコアも心地よく響いてくるが、その一方でセリフがイマイチ不明瞭な部分も少なくない。補足のためにも英語字幕はあった方がよかった。

 

スパイクス・ギャング
The Spikes Gang (1974)

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(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0 DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/ 96分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
・『マジェスティック』予告編
・『ブラック・エース』予告編
監督:リチャード・フライシャー
製作:ウォルター・ミリッシュ
原作:ジャイルズ・ティペット
脚本:アーヴィング・ラヴェッチ
   ハリエット・フランク・ジュニア
撮影:ブライアン・ウェスト
音楽:フレッド・カーリン
出演:リー・マーヴィン
   ゲイリー・グライムス
   ロン・ハワード
   チャールズ・マーティン・スミス
   アーサー・ハニカット
   ノア・ビーリイ・ジュニア

 いかにもニューシネマ以降のハリウッド映画らしい西部劇である。舞台は開拓時代も終わりに差し掛かった頃のアメリカ中西部。農村に暮らす平凡な少年ウィル(ゲイリー・グライムス)、トッド(チャールズ・マーティン・スミス)、レス(ロン・ハワード)の親友3人組は、たまたま逃亡中の銀行強盗スパイクス(リー・マーヴィン)と知り合ったことから、自由と刺激を求めて冒険の旅へ出るものの、やがて犯罪者として追われる身となっていく。
 抑圧された若者たちが犯罪の世界へ身を投じて自滅していくというのは、反権力をテーマに掲げたニューシネマによくある設定だが、しかし本作がその他大勢のニューシネマ作品と決定的に違うのは、主人公たちの犯罪行為が自発的なものではなく周囲に流された結果だという点であろう。
 質素で真面目で信心深い家庭に育った少年たちにとって、法律にも何ものにも縛られない自由人スパイクスの生き方はカッコ良く見えてしまう。しかし、なんの代償もなしに自由を謳歌できるほど世間は甘くない。一見すると勇敢で男らしくて親切に思えるスパイクスも、一皮剥けば生き残るためなら仲間を平気で裏切り、己の利益のためなら他人の命も躊躇なく奪える人物。そうでなければ、とうの昔に殺されていたはずだ。
 ところが純粋でウブな少年たちは、そうした弱肉強食な社会の厳しい現実を知らぬまま世間へ飛び出してしまい、言うなれば悪しきお手本であるスパイクスに感化されてしまったがために、哀れにも転落の道を歩むことになってしまう。スパイクとて、少年たちから一方的に英雄視されることは迷惑だったに違いない。彼自身が、己の卑劣さをよく知っているからだ。
 そういう意味では、彼も決して悪人ではない。そもそも、世の中は善も悪もない、どこまでもグレーな世界。だからこそ、賢く立ち回らねば墓穴を掘ることになる。結局、ジェシー・ジェームズやワイルド・ビル・ヒコックなど西部の英雄たちの素顔も似たようなものだったのであろう。これは、そうしたヒーロー伝説の裏に隠された複雑で醜い現実を赤裸々に暴くことで、西部開拓史の光と影を浮き彫りにした作品だとも言える。青春映画風の爽やかで瑞々しい演出が、物語の悲哀を一層のこと盛り上げて秀逸だ。

 こちらも、米キノ・ノーバー社のスタジオ・クラシックス・シリーズとしてリリースされたブルーレイ。もともとユナイテッド・アーティスツが配給した作品だが、現在は同社を買収したMGMが版権を持っており、親会社の20世紀フォックスが素材を提供している。画質はビックリするくらいにクリーン。冒頭のタイトル・シークエンスこそ若干ボヤけて見えるものの、それ以外はまるで撮りおろしたばかりのような鮮明さだ。フィルムに傷やノイズが見られないのは勿論のこと、色彩も豊かで深みがあるし、役者の肌の質感などもきめ細かくてフレッシュ。とても40年以上前の映画だとは思えない。
 2.0chのモノラル音声もなかなか優秀。全体的に今ひとつ迫力に欠ける嫌いはあるものの、セリフや音響効果はハッキリと明瞭で、磁気テープの経年劣化などはほとんど感じられない。本作を含めて同時期にキノ・ローバー社からブルーレイ発売された作品の予告編のみ、という特典映像の少なさだけが惜しまれる。

 

 

ニューヨーク・ニューヨーク
New York, New York (1977)

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(P)2011 20th Century Fox (JP) 
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.64:1/音声:5.1 ch DTS-HD MA/言語:英語・日本語/字幕:日本語・英語/地域コード:A/ 164分/制作国:アメリカ

<特典>
・マーティン・スコセッシ監督と評論家キャリー・リッキーによる音声解説
・マーティン・スコセッシ監督によるイントロダクション
・削除シーン&未公開シーン集
・メイキング・ドキュメンタリー「The New York, New York Stories: Part One」
・メイキング・ドキュメンタリー「The New York, New York Stories: Part Two」
・ライザ・ミネリ インタビュー
・撮影監督ラズロ・コバックスによる音声解説
・オリジナル劇場予告編(2種類)
監督:マーティン・スコセッシ
製作:アーウィン・ウィンクラー
   ロバート・チャートフ
脚本:アール・マック・ローチ
   マーディク・マーティン
撮影:ラズロ・コバックス
音楽:ジョン・カンダー
   フレッド・エッブ
   ラルフ・バーンズ
出演:ライザ・ミネリ
   ロバート・デ・ニーロ
   ライオネル・スタンダー
   バリー・プリマス
   メアリー・ケイ・プレイス
   ディック・ミラー

 マーティン・スコセッシによるハリウッド黄金期…特にMGMミュージカルへのオマージュが目一杯詰まった作品。そもそもストーリー自体が『スター誕生』('54)の焼き直しだしね。共に音楽の道を志す若い男女が出会い、恋に落ちて結婚。しかし気難しい男と自立心の強い女はたびたび衝突し、やがてそれぞれのキャリアそのものも明暗を分けていく。そんな男女の複雑かつ情熱的な愛の変遷をゴージャスなミュージカル・シーンたっぷりに描いていくわけだが、いかんせん尺が長い!特に前半はなかなか話が先に進まないもんだから、正直なところかなりイライラとさせられる。ドラマ・パートは三分の二くらいに削っても良かっただろう。
 また、往年のハリウッド・ミュージカルを再現したミュージカル・パートも、確かにかなり手が込んでいるし。スケールも大きいのだが、例えばバスビー・バークレイの演出なんかと見比べてしまうと、まだまだ野暮ったいというか、ビジュアル的なダイナミズムに欠けていることは否めない。要は、大胆なイマジネーションや洒脱なセンスに乏しいのだ。
 さらに、プライドが高くて自己中心的なジミーを演じているロバート・デ・ニーロは見事なハマリ役だと思うが、ヒロインのフランシーヌを演じるライザ・ミネリはどうも好きになれない。いや、客観的に見ても大熱演だとは思うし、ミュージカル・シーンのパフォーマンスも見事なのだが、あの大味なバタ臭さが個人的に受け付けないのですよ。ライザは『くちづけ』('69)の変わり者少女プーキー役が最高。でも、『キャバレー』以降のミュージカル・スターとしての彼女はちょっと苦手なのだよね。まあ、母親ジュディ・ガーランドの『スター誕生』と重ね合わせてみると、いろいろ感慨深いものはあるのだけれど。
 ということで、ハリウッド・ミュージカルの栄光をいま一度!という意欲や努力は認めるものの、それが必ずしも成功してるとは言い難い作品。もちろん、誰もが知る主題歌は素晴らしいけれど、ミュージカル映画としては今ひとつ不発に終わってしまったと思う。

 で、日本盤ブルーレイの内容は北米盤と基本的に一緒。言語や字幕の仕様も、再生機によって自動認識するので、例えば日本市場向けのプレイヤーで北米盤を再生すると、ちゃんと日本語吹替や日本語字幕を選ぶことが出来る。逆に、北米市場向けプレイヤーで日本盤を再生しても、言語はオリジナルの英語に加えてフランス語やスペイン語、イタリア語、ドイツ語などの吹替えバージョン、字幕もフランス語にスペイン語、ドイツ語、タイ語、スウェーデン語などしか認識しない。これは、アメリカ本国で一括して各国市場向けのブルーレイ・マスターを作成しているから。FOXやワーナー、ユニバーサルのブルーレイは基本的に全て、この方式で作られている。
 本編の画質はビミョーなレベル。フィルム自体の傷や汚れはほとんど見られないものの、全体的にソフトフォーカスが強く、フィルム・グレインもキツめであるため、クリアでクリスプな高画質を期待すると少々ガッカリするかもしれない。もしかすると、DVD用に制作した映像マスターをそのまま流用したのかも。特典映像の内容を鑑みても、その可能性は高いように思う。
 音声は5.1chサラウンドのDTS-HDマスター・オーディオ。こちらも、恐らくDVD用の音源ソースを改めてエンコードし直したのだろう。奥行きも広がりもあるサウンドは十分にハイクオリティで、この点だけは文句のつけようがない。やはりミュージカル映画は音質が重要だ。
 そして、2枚組特別編DVDをそのまま移植した特典なのだが、なんと音声解説を含めて日本語字幕が一切付いていない。これまた、本国で一括してマスターを作成したせいなのだろうが、英語字幕まで付いていないのは不親切としか言いようがないだろう。日本の発売元に直接的な非はないものの、それにしてもソフトメーカーとしての姿勢を疑われる杜撰さだ。

 

ホワイト・バッファロー
The White Buffalo (1977)

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(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/音声:2.0 ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/97分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
監督:J・リー・トンプソン
製作:パンチョ・コナー
原作:リチャード・セイル
脚本:リチャード・セイル
撮影:ポール・ローマン
音楽:ジョン・バリー
出演:チャールズ・ブロンソン
   ウィル・サンプソン
   ジャック・ウォーデン
   キム・ノヴァク
   クリント・ウォーカー
   スリム・ピケンズ
   スチュアート・ホイットマン
   ジョン・キャラダイン
   カラ・ウィリアムス
   エド・ローター

 一風変わった西部劇である。言うなればモンスター・ウエスタン。ガンマンのワイルド・ビル・ヒコックにインディアンのクレイジー・ホースという、開拓時代の西部で活躍した2人の誇り高き英雄を主人公に、巨大なホワイト・バッファローを倒すために一致協力する彼らの友情と戦いを描く。
 ホワイト・バッファローの悪夢に悩まされ続けるワイルド・ビル・ヒコック。一方のクレイジー・ホースは、ホワイト・バッファローに幼い娘を殺された怒りと悲しみを背負っている。そんな彼らが、己の心の平安を取り戻すためにホワイト・バッファローと対峙することになるわけだが、本来ならば敵同士である白人のヒコックと原住民のクレイジー・ホースがお互いに勇敢な戦士として認め合っていく過程がドラマの肝だと言えるだろう。
 全体的にどこか神話的な雰囲気を漂わせた、ダークでファンタジックな世界観がとてもユニーク。しかも、ヒコック役にチャールズ・ブロンソン、クレイジー・ホース役にウィル・サンプソン、ヒコックの旧友チャーリー役にジャック・ウォーデンと、まさに男の中の男と呼ぶべき激シブな顔ぶれの揃った重量級のキャスティングにワクワクさせられる。キム・ノヴァクやスチュアート・ホイットマン、ジョン・キャラダインなど、ほとんどワン・シーンしか登場しない脇役たちも豪華だ。
 そして、劇場公開当時に話題となったのが機械仕掛けの実物大ホワイト・バッファロー。本作は前年に『キング・コング』をヒットさせたディノ・デ・ラウンレンティスのプロダクションが製作しており、あの映画で実物大キング・コングのメカを担当したマリオ・キアーリとカルロ・ランバルディの2人が、こちらでもホワイト・バッファローの制作に携わっている。これが、当時の特撮技術を考えればなかなかの出来栄え。確かに今見ると作り物っぽさは否めないものの、それでも完成度はかなり高い。一方通行で同じ動きしか出来ないのもご愛嬌だ。

 配給元のユナイテッド・アーティスツがMGMに身売りし、現在はその親会社の20世紀フォックスが版権を持つ本作。キノ・ローバー社のスタジオ・クラシックス・シリーズとしてブルーレイ化されている。画質は概ね良好。全体的にシャープさには欠けるし、フィルムのパーツによってグレインが極端に粗くなったりするものの、ディテールのきめ細かさや映像の厚みは十分にブルーレイ・クオリティだ。
 2.0chのモノラル音声も極めて状態が良く、特にホワイト・バッファローの鳴き声やライフルの銃声などの音響効果は迫力あり。ジョン・バリーによる重厚感のある音楽スコアもズッシリと響き渡る。特典映像が予告編だけというのは残念だが、本編のハイクオリティを考慮すれば納得もできよう。

 

 

ドラキュラ都へ行く/ワンス・ビトゥン 恋のチューチューバンパイア
Love at First Bite (1979)/Once Bitten (1985)

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(P)2014 Scream Factory (USA)

ドラキュラ都へ行く
Love at First Bite (1979)

ワンス・ビトゥン/恋のチューチューバンパイア
Once Bitten (1985)

画質★★★★★ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MA 2.0 ch/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/96分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
・ラジオ・スポット集
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MA 2.0 ch/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/94分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
監督:スタン・ドラゴッティ
製作:ジョエル・フリーマン
原案:ロバート・カウフマン
   マーク・ジャインズ
脚本:ロバート・カウフマン
撮影:エドワード・ロッソン
音楽:チャールズ・バーンスタイン
出演:ジョージ・ハミルトン
   スーザン・セイント・ジェームズ
   リチャード・ベンジャミン
   ディック・ショーン
   アート・ジョンソン
   シャーマン・ヘムスリー
   イザベル・サンフォード
   バリー・ゴードン
   ロニー・シェル
監督:ハワード・ストーム
製作:ディミトリ・ヴィラード
   ロビー・ウォルド
   フランク・E・ヒルデブランド
原案:ディミトリ・ヴィラード
脚本:デヴィッド・ハインズ
   ジェフリー・ハウス
   ジョナサン・ロバーツ
撮影:アダム・グリーンバーグ
音楽:ジョン・デュプレ
出演:ローレン・ハットン
   ジム・キャリー
   カレン・コピンズ
   クリーヴォン・リトル
   トーマス・バラトア
   スキップ・ラッキー

 ヴァンパイア・ネタのホラー・コメディをカップリングした2本立てブルーレイ。どちらもMGMが版権を所有していることから、これまでにも同社のホラー系アーカイブ作品を積極的にソフト化してきたスクリーム・ファクトリーよりリリースされたというわけだ。
 恐らく、アラフィフの筆者世代にとって思い入れ深いのは「ドラキュラ都へ行く」だろう。アリシア・ブリッジスの歌う主題歌“I Love The Nightlife (Disco Round)”の大ヒットと相まって、当時は日本でもかなり話題を呼んだ作品だ。共産国のルーマニアを追い出されたドラキュラ伯爵が執事レンフィールドを従えてニューヨークへと降り立ち、美しきトップモデルと恋に落ちつつ、宿敵ヴァン・ヘルシング教授の孫と対決する。
 冒頭の“夜の子供たちよ…黙りなさい!”に始まるバンパイア物鉄板ネタのパロディが実に絶妙。ジャンルを愛するファンならば尚更のこと、作り手がよくよく勉強していることが伺えるし、洒脱なユーモア・センスにも脱帽する。さすがは、オスカー候補経験もあるロバート・カウフマンの脚本。ディスコ&フリーセックスの華やかなりしニューヨークへやって来たドラキュラの直面する数々のカルチャーギャップも爆笑を誘うし、思うように獲物にありつけず長閑な祖国を懐かしむドラキュラの姿を通じて、現代アメリカの堕落した風俗をチクリと皮肉るところも面白い。
 コッテコテにダンディでハンサムながら、どこか抜けたところのあるチャーミングなドラキュラを演じるジョージ・ハミルトンは抜群のはまり役。対するヴァン・ヘルシング教授の孫ジェフリー役のリチャード・ベンジャミンもノリノリの怪演で、だんだんとドラキュラが至極まともでジェフリーの方がサイコな狂人に見えてくる点も巧い。ただ、惜しむらくはヒロイン役のスーザン・セイント・ジェームスがイマイチ魅力不足ということ。もともとテレビのシットコム出身なのでコメディエンヌとしての才能はあるのだけれど、なにしろあまり美人だとは言えないので、ドラキュラが一目惚れするスーパーモデルとしては説得力に欠ける。
 一方、「ワンス・ビトゥン/恋のチューチューバンパイア」は、まだブレイクする前の若きジム・キャリーの出演作として有名な作品。ガードの固い彼女のせいで下半身が悶々とした童貞男子高校生マーク(キャリー)が、週末に悪友たちと連れ立って夜のハリウッドへと繰り出したところ、不老不死の美しき女ヴァンパイア伯爵夫人(ローレン・ハットン)に魅入られてしまう。言うなれば、童貞喪失ものにホラー風味を加えた青春コメディといったところだろうか。
 他愛ないといえば他愛ない映画ではあるが、'80年代半ばのファッションや音楽などのトレンドが盛りだくさんで、それだけでも結構見ていて楽しい。もちろん、若くて初々しいジム・キャリーもキュートだし、なによりも既にこの時点で「マスク」を彷彿とさせるハイテンションな芸達者ぶりが完成されていることにも驚かされる。ロバート・デ・ニーロの顔マネなんか、カリカチュアし過ぎで本人に怒られそうなレベル(笑)。マイケル・ジャクソンばりのダンスを披露するハロウィン・パーティ・シーンも楽しい見せ場だ。

 で、“ホラー映画のクライテリオン”と呼ばれるくらい高品質なソフト化に定評のあるスクリーム・ファクトリーだけに、本ブルーレイのクオリティもなかなかのもの。特に「ドラキュラ都へ行く」の画質はほぼパーフェクトで、フィルムの経年劣化が殆ど見られないばかりか、色の深みもディテールの再現力も非の打ち所なし。DTS-HDにエンコードされたモノラル音声も明瞭だし、以前のソフト化では版権の問題で差し替えられていたアリシア・ブリッジスの主題歌が復元されているのも嬉しい。
 「ワンス・ビトゥン〜」の方はといえば、当時の低予算映画にありがちなソフト・フォーカスを効かせた撮影のせいでいまひとつビジュアルの鮮明さには欠けるし、部分的にフィルムの傷が散見されることも確かだが、全体的に見れば画質はまずまず良好。音声トラックも素晴らしいとは言えないまでも、これといった問題はなしだ。
 特典は「ドラキュラ〜」が予告編とラジオ・スポット集、「ワンス・ビトゥン〜」は予告編のみ。ないよりはマシといった程度ではあるものの、なにしろ2in1の廉価版ブルーレイなので文句も言えまい。

 

 

 

ひと妻窃盗団
How To Beat The High Cost Of Living (1980)

HOW_TO_BEAT.JPG
(P)2015 Olive Films (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MA 2.0ch MONO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/105分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
監督:ロバート・シアラー
製作:ジェローム・M・ジートマン
   ロバート・カウフマン
原案:レオノーラ・ツナ
脚本:ロバート・カウフマン
撮影:ジェームズ・クレイブ
音楽:パトリック・ウィリアムス
出演:ジェーン・カーティン
   スーザン・セイント・ジェームス
   ジェシカ・ラング
   リチャード・ベンジャミン
   エディ・アルバート
   キャスリン・デイモン
   ダブニー・コールマン
   フレッド・ウィラード
   シビル・ダニング
   アート・メトラノ
   ロニー・シェル
特別ゲスト:ギャレット・モリス

 「ドラキュラ都へ行く」の脚本家ロバート・カウフマンが製作も兼任し、テレビ出身のロバート・シアラー監督が演出を手がけた社会風刺コメディ。「ドラキュラ〜」のリチャード・ベンジャミンとスーザン・セイント・ジェームスが再共演を果たしているわけだが、映画ファンにとってはブレイクする直前のジェシカ・ラングの出演作としても一見の価値ありだろう。デビュー作「キングコング」('78)で大根女優のレッテルを貼られた彼女は、ボブ・フォッシー監督の「オール・ザット・ジャズ」('79)でも汚名挽回を果たせず、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81)でようやく正当な評価を受けるようになったわけだが、その直前に出演したのが本作だったというわけだ。
 ちょっと誤解を招きかねない日本語タイトルだが、要は生活に行き詰まった主婦たちが苦肉の策で強盗を働くというもの。それも、銀行強盗のような大それたものではなく、ショッピングモールの現金つかみ取り大会で使用される紙幣をこっそり頂いちゃうという、まあ、ある意味で主婦的な他愛ない発想だったりする。当時のアメリカはインフレによる物価高騰が深刻な社会問題となっていた時代。そんな時事ネタをストーリーの軸にしつつ、当時のアメリカにおける女性の経済的な自立の難しさを痛烈に皮肉ったフェミニズム的要素の濃厚な作品と言えるだろう。
 まだどことなく初々しさの残るジェシカ・ラングは、アンティークショップを経営する世間知らずなブルジョワ美人妻という役どころ。本人なりに真剣な自立心も旦那に理解されず、火の車になった店を立て直すため強盗に加担するというわけだ。ただ、コメディエンヌとしてのぎこちなさは正直なところ否めない。その上、共演者が「サタデー・ナイト・ライブ」で一世を風靡した芸達者ジェーン・カーティンに、シットコムでのキャリアの長いベテラン女優スーザン・セイント・ジェームズなのだから、演技の面でかなり分が悪いと言えるだろう。そういう意味では、作品の選択を間違えたのではないかとも思う。

 で、主にパラマウント作品を中心に各メジャースタジオの旧作ライブラリーを再発するオリーヴ・フィルムよりリリースされたブルーレイ。もともとオライオン映画の配給作品なのだが、現在はMGMと20世紀フォックスが版権を所有しており、正式なライセンス許諾を受けてソフト化されている。
 画質は玉石混合。マスターフィルムの保存状態はさほど悪くないのだが、なにしろオリーブ・フィルムはソフト化に際して修復作業を一切行わないため、フィルムのキズや汚れなどはそのままだし、部分的な経年劣化も放置されたまま。とりあえず視聴するに大きな支障はないものの、ブルーレイの画質としてはギリギリ許容できる範囲といったところ。音声トラックもセリフの聞き取りには問題ないというレベルだ。
 ただし、普段は特典映像が一切ないことの多いオリーヴ・フィルムにしては珍しく、オリジナル劇場予告編が収録されているのはポイント高し。とはいえ、まるでVHSからコピーしたかのような酷い画質なのだけれど…。

 

 

殺意の香り
Still of The Night (1982)

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(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 1.85:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/93分/制作国:アメリカ

<特典>
・オリジナル劇場予告編
監督:ロバート・ベントン
製作:アーリーン・ドノヴァン
原案:デヴィッド・ニューマン
   ロバート・ベントン
脚本:ロバート・ベントン
撮影:ネストール・アルメンドロス
音楽:ジョン・カンダー
出演:ロイ・シャイダー
   メリル・ストリープ
   ジェシカ・タンディ
   ジョセフ・ソマー
   ジョー・グリファシ
   サラ・ボッツフォード

 アカデミー賞5部門に輝いた『クレイマー、クレイマー』('79)以来、ちょっと鳴りを潜めていたロバート・ベントン監督が久しぶりに発表したミステリー。ロイ・シャイダーにメリル・ストリープという顔合わせは、当時としては比較的地味だったこともあってか、日本公開もわりとひっそりだったように記憶している。今回数十年ぶりに再見したが、なるほど、映画そのものも非常にオーソドックスだ。
 妻と離婚調停中の精神科医サムの前に現れたのは、ミステリアスなブロンド美女ブルック。実は彼女、つい先日他殺体で発見されたサムの患者ジョージの愛人だった。なんとも掴みどころのない魅力の彼女に惹かれていくサム。しかし、やがてブルックがジョージを殺した犯人ではないかという疑惑が頭をもたげていく…。
 プロット自体はフィルムノワールのド定番。『マルタの鷹』('31)の頃から、いや、恐らくそれ以前から繰り返し用いられてきたファム・ファタール物のバリエーションだ。そこへ、フロイト的な心理学や夢診断などを謎解きに絡めたところが、本作の目新しさといえば目新しさか。随所にヒッチコック作品へのオマージュも散りばめられ、派手さはないものの、じっくりと見せる大人向けの作品になっている。
 また、今回改めて驚いたのは、ブルック役を演じているメリル・ストリープの美しさだ。ダイアン・キートンやジェシカ・ラングなんかと並んで、当時のメリル・ストリープは個人的にあまり好みの女優ではなかった。なにしろ、高校生だった筆者のお気に入りといえばソフィー・マルソーやフィービー・ケイツみたいなアイドル女優か、タニア・ロバーツやキャロライン・マンローみたいなセクシー女優。もしくはローレン・バコールやマリリン・モンローみたいなクラシック女優に興味を持ち始めたといった感じだった。そんな映画少年にしてみれば、メリル・ストリープは演技こそ上手いかもしれないけど、いまひとつ華やかさに欠けるオバサン女優といったところ。なので、あまりいい印象は持っていなかったのだが、久しぶりに見た本作の彼女はゾクゾクするくらい美しい。ポーカーフェイスの抑えめな演技のおかげもあってか、透明感のある繊細な美貌が際立つ。ちょっとした驚きだ。

 当時MGMに吸収合併されたユナイテッド・アーティスツが配給した本作だが、現在は20世紀フォックスが権利を所有。ブルーレイは正規のライセンス契約を結んだキノ・ローバーからリリースされている。フィルムの保存状態はすごぶる良好。傷や汚れはほとんど見られない。クロースアップでのディテールのきめ細かさにも驚かされる。カラーの発色も極めて鮮明かつ自然だ。
 2.0chの音声トラックも概ね問題なし。部分的にちょっとセリフの聞き取りづらさは感じるが、全体的にはさほど支障をきたすほどではないし、メロディアスなオーケストラスコアの重量感にはロスレスの恩恵も感じられる。特典は予告編のみ。

 

 

シンシア・ギブのモダン・ガールズ
Modern Girls (1986)

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(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/84分/制作国:アメリカ

<特典>
・クレイトン・ローナー インタビュー
・オリジナル劇場予告編
監督:ジェリー・クレイマー
製作:ゲイリー・ゴーツマン
原案:アニタ・ローゼンバーグ
   ローリー・クレイグ
脚本:ローリー・クレイグ
撮影:カレン・グロスマン
音楽:ジェイ・レヴィ
   エド・アーキン
出演:シンシア・ギブ
   ヴァージニア・マドセン
   クレイトン・ローナー
   ダフネ・ズーニガ

 邦題を見ても分かる通り、日本で当時アイドル女優としてブレイクしていたシンシア・ギブの人気に当て込んでビデオ発売された作品。だが、実際はシンシアの単独主演ではなく、彼女を含めた当時ハリウッドで人気赤丸急上昇中の若手女優3人が、大都会ロサンゼルスでルームシェアする美しき親友トリオを演じるポップなガールズ・ムービーだ。
 主人公は男たちに貢がせまくるモテモテのゴージャス美女ケリー(ヴァージニア・マドセン)、いつまでも白馬に乗った王子様を夢見ている無邪気な乙女シーシー(シンシア・ギブ)、そしてちょっとシニカルでクールな知性派マーゴ(ダフネ・ズーニガ)の3人。昼間はうだつの上がらない仕事をしている彼女たちだが、夜ともなれば人気のナイトクラブも顔パスの人気者。将来の目標は特になし、今が楽しければそれで良し。そんな'80年代的今時ギャルたちが、たまたまアッシー君になった地味な真面目男子クリフォードと一緒に夜のL.A.を遊びまわるうち、なんとなく今のままじゃダメかも…と思い至るようになるまでを描く。
 全編に渡って'80年代のポップカルチャーが満載の本作。当時のL.A.の若者に人気のナイト・スポットやトレンド・スポットでロケが行われ、個性的でカラフルな80'sファッションも続々と登場。BGMにもデペッシュ・モードやジーザス&メリー・チェーン、TKA、ベル・スターズなどのヒット曲がたっぷりと使われており、当時のロサンゼルスを知るリアルタイム世代にとっては涙モノの作品と言えるかもしれない。
 シンプルで他愛のないストーリーも、確かにありがちと言えばありがちだが、軽薄短小な'80年代の青春模様を軽妙かつ鮮やかに捉えつつ、いつまでも楽しんでばかりはいられないことを悟り始めるヒロインたちの揺れ動く心、大人になる一抹の寂しさみたいなものをサラリと描いており、なかなかどうして好感が持てる。

 MGMが版権を持つ本作は、20世紀フォックスのライセンス許諾を受けたキノ・ローバーがブルーレイをリリース。これが思わずニンマリしてしまうくらいの高画質で、いかにも'80年代らしいキラキラのファッションやインテリアが鮮やかに甦る。まさにタイムカプセルといった感じ。あまりにも映像が鮮明かつクリアなせいで、'80年代がそんなに昔のこととは思えなくなってしまう。この感覚は、当時を知る世代にしか分からないかもしれない。
 DTS-HDマスター・オーディオにエンコードされたステレオの音声トラックも強力。なにしろBGMのポップソングも重要な位置を占めている作品なだけに、クリアで研ぎ澄まされたハイクオリティなサウンドは嬉しい。また、キノ・ローバー製品にしては珍しく英語字幕が付いているのもポイントが高いと言えよう。
 そして、これまたキノ・ローバー製品にしては珍しく、特典映像としてクリフォード役を演じたクレイトン・ローナーの最新インタビューも収録。すっかり白髪まじりのオジサンになってしまったその姿に、改めて過ぎ去った年月を思い知らされる。やっぱり'80年代は遠くなりけりなのだ。

 

 

リバース・エッジ
River's Edge (1986)

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(P)2014 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 1.85:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/99分/制作国:アメリカ

<特典>
・ティム・ハンター監督の音声解説
・オリジナル劇場予告編
監督:ティム・ハンター
製作:サラ・ピルスビューリー
   ミッジ・サンフォード
脚本:ニール・ジメネス
撮影:フレデリク・エルムス
音楽:ユルゲン・クニーパー
出演:クリスピン・グローヴァー
   キアヌ・リーヴス
   アイオン・スカイ
   ロクサーナ・ザル
   ダニエル・ローバック
   ジョシュア・ミラー
   デニス・ホッパー
   レオ・ロッシ
   ジム・メッツラー

 脚本を手がけた『レベルポイント』('78)や監督処女作の『テックス』('82)などで、当時のアメリカの平凡な若者たちの社会的な孤独や疎外感、大人への怒りなどを鮮やかに描いて定評のあったティム・ハンター監督の、これは言うなれば集大成的な青春群像劇と呼べるかもしれない。
 舞台はアメリカの小さな田舎町。川辺で女子高生ジェイミーが恋人の男子高校生サムソンに絞殺されてしまう。仲間たちに犯行を打ち明けるサムソンだが、誰もそれを真に受けず。現場へ連れて行かれてようやく本当だと悟った彼らだが、多方はどうしていいものだか分からず途方に暮れ、一部の若者たちは酒やマリファナに逃げて事件そのものをなかったことにしようとする。結局、死体を隠してサムソンを守ろうということになるのだが、その決断に一人疑問を抱くマットは良心の呵責に苦しんでいく。
 1981年にカリフォルニアで実際に起きた事件をモデルにした作品。主人公の高校生たちは、いわゆる労働者階級の貧しい子供ばかりだ。荒んだ家庭に居場所がない彼らは放課後も一緒になってつるみ、アルコールやドラッグで日常の孤独を紛らわせ、退屈で希望のない毎日をやり過ごしている。まるで感受性が鈍ってしまったような彼らは、人間の死というものに対しても実感が持てない。そんな現代の病んだ青春像というものを、本作は荒涼とした風景の中で淡々と描いていく。
 '80年代の青春映画といえば、一般的には一連のジョン・ヒューズ作品やヴァレー・ガール物などのような、いわゆるバブル的なポップでオシャレでプチブル的な作品群を思い浮かべる映画ファンも多いと思うが、本作はそれとは正反対の暗く澱んだ世界を描く。前者が青春の光だとすると、本作は紛れもなく影。経済の衰退した地方社会においては、恐らくこちらの青春像の方がよりリアルだったのではないかとも思う。
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』('85)のマーティの父親役で注目されたばかりのクリスピン・グローヴァーを主演に据えた本作は、キアヌ・リーヴスやアイオン・スカイなど、'90年代にブレイクする若手スターが無名時代に出演した作品としても知られている。キアヌの屈折した弟役を演じているジョシュア・ミラーは、『ニア・ダーク』('87)や『クラス・オブ・1999』('90)などでも歪んだ人格の少年を演じて強烈な印象を残していた。こうしたキャスティングの面でも注目に値する作品だと思う。

 日本でも20世紀フォックスからDVDがリリースされている本作だが、アメリカではキノ・ローバー社がフォックスより正式な許諾を得てブルーレイをリリース。新たなリマスターが施されているのか定かではないものの、画質は概ね良好だ。全体的にグレインがかなり濃厚なので、恐らく気になる人は気になるかもしれないが、ディテールや質感はとてもきめ細かいし、イメージの輪郭もハッキリとしている。
 一方、DTS-HDマスター・オーディオにエンコードされたロスレスのステレオ音声だが、印象的には割とフラットかもしれない。とはいえ、音響効果が重要な作品ではないので特に問題はないし、もともとの素材がそういうものだと考えるべきだろう。
 特典はティム・ハンター監督の音声解説とオリジナル劇場予告編。ちょっと寂しい気もするが、DVDは予告編のみだったので良しとしよう。その音声解説だが、キャスティングの話だったり、撮影中の役者との思い出だったりが中心で、作品そのものに深く踏み込んでいるわけではないものの、ファンにとっては貴重な舞台裏情報が満載だ。

 

 

 

ロシアン・ルーレット
Company Business (1991)

COMPANY_BUSINESS.JPG
(P)2015 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0 DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/ 98分/制作国:アメリカ

<特典>
・メイキング映像「Our Country 'Tis of We」
・ジーン・ハックマン コメント
・ミハイル・バリシニコフ コメント
・ニコラス・メイヤー コメント
・スティーヴン=チャールズ・ジャッフェ コメント
・撮影舞台裏映像
・オリジナル劇場予告編
監督:ニコラス・メイヤー
製作:スティーヴン・チャールズ・ジャッフェ
脚本:ニコラス・メイヤー
撮影:ジェリー・フィッシャー
音楽:マイケル・ケイメン
出演:ジーン・ハックマン
   ミハイル・バリシニコフ
   カートウッド・スミス
   テリー・オクイン
   ジェラルディン・ダノン

 ゴルバチョフ書記長の行ったペレストロイカ=情報公開政策を契機に、シュワちゃん主演の「レッドブル」('88)などハリウッド映画におけるロシアやロシア人の描き方も大きく変わったわけだが、ソビエト連邦解体の3か月前に全米公開された本作も、そうした流れの中から生まれたスパイ映画と言えよう。
 主人公は現役を引退した元CIAスパイのサム(ジーン・ハックマン)。いきなり古巣へと呼び戻された彼は、KGBの潜入スパイ、グルシェンコ(ミハイル・バリシニコフ)をベルリンへと送り届け、ソビエトに拘束されているアメリカ人パイロット、ソベルと交換するという極秘任務を仰せつかる。ところが、現場で相手方のよこしたソベルが数日前に米国内で見かけたソ連スパイであることに気づいたサムは、その場の独断で人質交換を中止。かくして、サムとグルシェンコはCIAとKGBの両方から追われる身となり、ヨーロッパ各国を股にかけた逃亡劇が始まる。
 恐らくストーリー自体は、最近スピルバーグが『ブリッジ・オブ・スパイ』('15)として映画化した、'62年のルドルフ・アベルとフランシス・ゲイリー・パワーズの人質交換にヒントを得ているのだろう。CIAもKGBも結局のところ同じ穴の狢、組織の利益や体面のためなら平気で個人を切り捨てるクソみたいな組織だ、という基本姿勢は、ポスト東西冷戦後のスパイ映画らしい視点と言えるかもしれない。
 ただ、冒頭からのシリアスなスパイ・サスペンス路線が、だんだんとコミカルで荒唐無稽なバディものアクションへとシフト・チェンジすることで、最終的に焦点の定まらない中途半端な作品になってしまった。実際、メイヤー監督自身も本作を失敗作だと認めている。脚本が完成しないまま撮影に入ってしまったことで、作品自体の方向性を見失ってしまったようだ。決着がついたのかどうかよく分からないクライマックスなどは、その象徴といえるかもしれない。

 日本ではかつてVHSで発売されていたものの、それっきり滅多に見る機会のなくなった本作。アメリカではMGMよりDVD発売されているが、ブルーレイはキノ・ローバー社のスタジオ・クラシックス・シリーズとしてリリースされている。映像のオリジナルソースは不明だが、'90年代の映画としてはいまひとつ不満の残る画質かもしれない。フィルム自体の傷や汚れはほとんどないものの、全体的に輪郭がボヤけていてコントラストも甘い。DVD以上、ブルーレイ以下といった印象だろうか。
 2.0chのステレオ音声も、DTS-HDマスターオーディオだけあって銃声や爆発音などの音響効果やスリリングな音楽スコアはそれなりに迫力あるが、肝心のセリフに一部聞づらいところがあるのが残念なところ。マスターフィルムの修復作業などは特に施されていないのだろう。
 なお、特典は劇場公開時にテレビ放送向けに制作されたと思われる簡単なプロモーション用メイキング映像と、そこに織り込まれた主演コンビや監督らのコメントの未編集映像、および撮影舞台裏映像。いずれもVHSテープから起こされているみたいので画像はかなり粗い。

 

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