ハリウッド・クラシック ブルーレイ レビュー

 

ロビン・フッドの冒険
The Adventures of Robin Hood (1938)

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(P)2008 Warner Home Video (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/フルスクリーン/画面比: 1.33:1/HD規格:1080p/音声: Dolby Digital Mono 1.0/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ABC/102分/制作国:アメリカ

<特典>
・映画史家ルディ・ベルマーによる音声解説
・映画評論家レナード・マーティンによるイントロダクション
・ヴィンテージ・ニュース映画
・短編ミュージカル「Freddie Rich and His Orchestra」
・短編アニメーション「Katnip Kollege」
・映画「汚れた顔の天使」予告編
・メイキング・ドキュメンタリー「Wecole To Sherwood」
・ドキュメンタリー「Glorious Technicolor」
・アウトテイク集
・12年版、22年版、38年ドイツ語版のハイライトシーン集
・撮影舞台裏ホームムービー集
・短編アニメ「Rabbit Hood」
・短編アニメ「Robin Hood Daffy」
・ギャラリー集(美術デザイン、衣装デザイン・場面コンセプト画・舞台裏写真・広告&ポスター)
・短編「Cavalcade of Archery」
・短編「The Cruise of the Zaca」
・ワーナー作品NGシーン集(38年)
・音楽スコア(オーディオのみ)
・ラジオドラマ版(オーディオのみ)
・ピアノ・セッション(オーディオのみ)
・エロール・フリン作品予告編集
監督:マイケル・カーティス
   ウィリアム・キーリー
製作:ハル・B・ウォリス
脚本:ノーマン・ライリー・レイン
   シートン・I・ミラー
撮影:トニー・ゴーディオ
   ソル・ポリート
音楽:エリッヒ・ウォルフガング・コーンゴールド
出演:エロール・フリン
   オリヴィア・デ・ハヴィランド
   ベイジル・ラズボーン
   クロード・レインズ
   アラン・ヘイル
   ユージン・パレット
   パトリック・ノウルズ
   ウーナ・オコナー

 当時ハリウッドで人気絶頂だったオーストラリア人俳優エロール・フリンが、伝説の義賊ロビン・フッドに扮した歴史活劇。古くはダグラス・フェアバンクスからケヴィン・コスナーまで、ロビンを演じたスターは数多いが、このフリン版をベストに挙げる映画ファンは少なくないだろう。中世ヨーロッパの油絵がそのまま動き出したような映像美はもちろん、エロール・フリンによる明朗快活で颯爽としたロビン・フッド像、マリアン役を演じるオリヴィア・デ・ハヴィランドのテクニカラー映えする美貌、そして悪役ベイジル・ラズボーンのクールなカッコ良さなど、ハリウッド黄金期の娯楽映画らしい魅力が満載だ。
 こちらの米国盤ブルーレイは、特典映像を含め“ワーナー・プラチナ・コレクション”として日本発売された2枚組DVDと同一内容。なぜか日本ではDVDしかリリースされなかった。もともと撮影当時のテクニカラーの技術的な問題もあり、色合いがキツすぎて肌の色など全体が赤っぽく見えてしまう、フォーカスが甘くて輪郭がボヤけて見えてしまうなどの欠点が指摘されてきた作品だが、この'08年版リマスターは色彩のバランスが最大限に改善されており、旧DVD盤とは比べ物にならないくらい映像が自然できめ細かい。ごく一部でフィルムの傷が若干チラつくものの、ほとんど気にならない程度。原音マスターをそのまま生かしたモノラル音声も極めて明瞭だ。
 そして、なによりも嬉しいのは、お腹いっぱいになること必至な特典の数々。基本的には2枚組DVD盤とラインナップは一緒で、ブルーレイ専用の蔵出しコンテンツはない。だが、製作背景を詳細に追ったメイキング・ドキュメンタリーはもとより、テクニカラーの歴史を紐解くドキュメンタリーや、貴重なサイレント時代のロビンフッド映画や本作のドイツ語版のハイライトシーン集などなど、まさにてんこ盛りの状態。中でも、ベイジル・ラズボーンと作曲家コーンゴールドが、撮影の合間に個人的に8ミリで記録していたという舞台裏映像は必見。当時のハリウッドの現場内部を見ることが出来るのは興味津々だ。
 また、当時のワーナーは自社製作映画のNGカットばかりを集めた短編映画を定期的に作り、ロードショーの余興として上映していたのだが、本BDに収録されている38年版には本作からのNGシーンが多数含まれており、セリフをトチって赤面したり自虐笑いするオリヴィアたちの素顔を垣間見ることができる。
 さらに、ワーナーのDVDおよびBDでは、古き良き時代のロードショー興業の雰囲気を再現すべく、ニュース映像や短編アニメなどを収録している。かつて、まだテレビが存在しなかった時代には、本編の始まる前にニュース映像や短編アニメ、次回作の予告編などを上映するシステムがあったのだ。本DVDで特筆すべきは、その短編アニメが1080pのフルHDで収録されていること。クラシック・アニメ・ファンにはちょっと嬉しいボーナスだ。

 

オズの魔法使
The Wizard of Oz (1939)

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(P)2009 Warner Home Video (Japan)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(日本盤2枚組)
カラー(一部モノクロ)/フルスクリーン/画面比:1.33:1/HD規格: 1080p/音声:Dolby TrueHD 5.1 ch(英語)・Dolby Digital 1.0ch(日本語)/音声:英語・日本語/字幕:英語・日本語/地域コード:ABC/102分/制作国:アメリカ

<特典>
・スタッフ・キャスト・その家族による音声解説
・メイキング「オズのステキな世界」
・メイキング「オズに捧げる」
・メイキング「オズの伝説」
・ドキュメンタリー「オズの記憶」
・ドキュメンタリー「すばらしいお話の世界」
・ドキュメンタリー「オズの復元」
・キャラクター紹介
・短編「電気」
・短編「カラー撮影に不可欠なもの」
・ニュース映像「アカデミー授賞式」
・ニュース映像「1939年:テキサス・プロモーション」
・アニメ「Off To The Wizard」より
・ハロルド・アレン撮影のホーム・ムービー
・未公開シーン集
・竜巻シーン
・ミュージック・サウンドトラック(オーディオのみ)
・オリジナル・モノラルトラック(オーディオのみ)
・シングアロング(オーディオのみ)
・ジュークボックス(オーディオのみ)
・ラジオプロモーション(オーディオのみ)
・1939年ラジオドラマ版(オーディオのみ)
・1950年ラジオドラマ版(オーディオのみ)
・予告編集
・ドキュメンタリー「ヴィクター・フレミング:ハリウッド黄金期の監督」
・ドキュメンタリー「L・フランク・ボーム:オズの裏側」
・ドキュメンタリー「マンチキンがスターの殿堂入り」
・テレビ映画「L・フランク・ボーム物語」
・サイレント短編「The Wonderful Wizard of Oz」(1910)
・サイレント短編「His Majesty, The Scarecrow of Oz」(1914)
・サイレント短編「The Magic Cloak of Oz」(1914)
・サイレント短編「The Patchwork Girl of Oz」(1914)
・サイレント映画「オズの魔法使」(1925)
・短編アニメ「オズの魔法使」
監督:ヴィクター・フレミング
製作:マーヴィン・ルロイ
原作:L・フランク・ボーム
脚色:ノエル・ラングリー
   フローレンス・ライアソン
   エドガー・アラン・ウールフ
撮影:ハロルド・ロッソン
音楽:ハーバート・ストサート
出演:ジュディ・ガーランド
   フランク・モーガン
   レイ・ボルジャー
   バート・ラー
   ジャック・ヘイリー
   ビリー・バーク
   マーガレット・ハミルトン
   チャールズ・グレープウィン

 もはや余計な説明など不要であろう、ハリウッド映画黄金期の金字塔にしてミュージカル・ファンタジーの大傑作。MGMがアメリカ最大の映画スタジオだった頃の、あらゆる才能と潤沢な資金が注ぎ込まれた極上のエンターテインメント作品と言えるだろう。名曲「虹の彼方に」をはじめとする素晴らしいミュージカル・ナンバーの数々、超一流のエンターテイナーたちによる見事なパフォーマンス、そしてスタジオの総力を結集して作られた精巧な美術セットに特殊メイク、テクニカラーの鮮烈な色彩。まさに夢見心地なおとぎ話の世界を存分に味わえる逸品だ。
 そんな不朽の名作のブルーレイは、本編の画質も特典もまた最上級。当時のテクニカラー映画は3原色法で撮影されていたのだが、この70周年記念盤ではそのオリジナルネガをマスターに使用し、なんと4Kならぬ8Kという超高解像度でスキャンした上で修復作業が施されている。なので、そのディテールの丁寧な再現力といい、カラーの鮮やかな発色具合といい、過去のDVDとは比べ物にならないほどのハイクオリティ。驚くのは、特殊メイクの細かい質感などがリアルに再現されることで、その粗が目立つどころか、逆にその見事な職人技が手に取るように分かること。美術セットもまた然りで、当時のMGM裏方陣の圧倒的な技術力というものをまざまざと見せ付けられる思いだ。
 また、ブルーレイ2枚に分けて収録された映像特典や音声特典もボリューム感たっぷり。映画版のみならず原作本の世界についても深く知ることのできるドキュメンタリーが8本も収録されているほか、撮影の合間の舞台裏を垣間見れるホームムービーやら、劇場公開当時の盛大なプロモーション・イベントの模様を撮影したニュースフィルムなど、貴重な映像がてんこ盛りだ。もちろん、後に映画「ザッツ・ダンシング!」でも紹介されたカカシ男の未公開ダンスシーンなど、劇場公開版でカットされた映像も楽しむことができる。
 さらに、原作者L・フランク・ボーム自身がプロデュースを手がけたサイレント映画版シリーズなど、今では殆ど目にすることのできない最初期のオズ映画の数々をノーカットで見ることができるのも嬉しい。どれも映画作品としての出来はイマイチだが、歴史的な資料価値は十分過ぎるくらいあると言えよう。また、故ジョン・リッターがボーム役を演じた90年製作のテレビ映画「L・フランク・ボーム物語」も収録。これがまた、ただの伝記映画に終わることのない“オズ愛”に溢れた名作なのだ(画質の悪さが残念ではあるが)。とにかく、「オズの魔法使」の世界を心ゆくまで堪能できる2枚組。まさしく、一家に1セット必携の永久保存版である。

 

レベッカ
Rebecca (1940)

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(P)2011 MGM/20th Century Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/フルスクリーン/画面比: 1.33:1/HD規格:1080p/音声: DTS-HD Master Audio 2.0ch Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/131分/制作国:アメリカ

<特典>
・映画評論家リチャード・シッケルによる音声解説
・音楽スコア&SEトラック
・メイキング・ドキュメンタリー
・ドキュメンタリー「The Gothic World of Daphne Du Maurier」
・スクリーンテスト映像集
・ラジオドラマ集(オーディオのみ)
・ヒッチコック監督インタビュー集(オーディオのみ)
・オリジナル劇場予告編

監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:デヴィッド・O・セルズニク
原作:ダフネ・デュ・モーリエ
脚本:ロバート・E・シャーウッド
   ジョーン・ハリソン
脚色:フィリップ・マクドナルド
   マイケル・ホーガン
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:フランツ・ワックスマン
出演:ローレンス・オリヴィエ
   ジョーン・フォンテイン
   ジョージ・サンダース
   ジュディス・アンダーソン
   グラディス・クーパー
   ナイジェル・ブルース
   レジナルド・デニー
   C・オーブリー・スミス

   レオ・G・キャロル

 ヒッチコック映画の中でも特に賛否両論の分かれる作品だが、それは本作がいわゆるヒッチコック・スタイルのスリラーではなく、「嵐が丘」などにも共通するダークなゴシック・ロマンに属するからなのであろう。確かに、夫の死んだ前妻レベッカの影に怯えるヒロインの心情は少々大袈裟なようにも感じるのだが、鬱蒼と生い茂った森の奥にそびえ立つ古い豪邸の禍々しいムードや、無表情で何を考えているのかわからない女中頭ダンヴァース夫人の怖さなど、画面の隅々から醸し出される不気味で荘厳な空気は秀逸。個人的には結構好きな作品だったりする。
 日本ではなぜか正規版DVDが過去に1度も発売されたことのない本作。国内で出回っているのは、著作権保護期間の切れた二次使用素材をマスターにした海賊盤だ。で、こちらの正規アメリカ盤ブルーレイなのだが、画質に関してはほぼ完璧に近い。ほぼ…と表現したのは、部分的に劣化の目立つ箇所があるため。まずオープニング・シーンではフィルムの傷によるホワイトノイズがチラつくほか、一瞬だけ画面全体がブレてしまう。また、本編中にも幾つかフィルムの傷が散見される。気付くか気付かないか微妙なラインなのだが、画質にこだわりのある視聴者にとっては多少ストレスになるかもしれない。
 とはいえ、全体的にはディテールもきめ細かく、白黒のコントラストは深みがあって綺麗。少なくとも、DVD画質よりは遥かに見栄えがいいことは確かだろう。DTS-HDにアップグレードされたモノラル音声も明瞭で、フランツ・ワックスマンの音楽スコアも重厚感が際立つ。正規版ならではのクオリティの高さだ。
 映像特典や音声特典はブルーレイ用のオリジナルではなく、旧米国盤DVDからの移植。原作者ダフネ・デュ・モーリエについてのドキュメンタリーでは、彼女自身のセクシャリティがダンヴァース夫人のレズビアン的な側面に投影されているなどの興味深い深読みを楽しむことができる。また、衣装合わせのためのスクリーン・テスト集では、ジョーン・フォンテインとローレンス・オリヴィエの2人に加えて、当初ヒロインを演じるはずだったマーガレット・サリヴァンの映像も含まれている。これもまた映画ファンとしては嬉しいオマケだ。

 

 

ジャン・ルノワールの小間使の日記
Diary of a Chambermaid (1946)

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(P)2013 Paramount/Olive Films (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/フルスクリーン/画面比: 1.37:1/HD規格:1080p/音声: DTS-HD Master Audio 1.0ch Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/86分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:ジャン・ルノワール
製作:ベネディクト・ボジャース
   バージェス・メレディス
原作:オクターヴ・ミルボー
脚色:バージェス・メレディス
撮影:ルシアン・アンドリオ
音楽:ミシェル・ミシェレット
出演:ポーレット・ゴダード
   バージェス・メレディス
   ジュディス・アンダーソン
   ハード・ハトフィールド
   フランシス・レデラー
   フローレンス・ベイツ
   アイリーン・ライアン
   レジナルド・オーウェン

 フランスの巨匠ジャン・ルノワールが渡米時代に撮影した小品佳作。後にルイス・ブニュエルも映画化したオクターヴ・ミルボーの小説を原作に、美人で自由奔放で鼻っ柱の強い小間使いが、いろいろと問題や秘密を抱えた奉公先の一家を翻弄していく姿をユーモラスに描いていく。ルノワールのフィルモグラフィーの中では決して抜きん出た傑作ではないものの、艶笑譚的な軽快さの中に人間の誰もが内に秘めたダーク・サイドを浮かび上がらせる語り口はなかなかのもの。出演を兼ねた名優バージェス・メレディスの脚本が光る。また、主人公セレスティーヌを演じるポーレット・ゴダードのコケティッシュな魅力もいい。
 米国盤ブルーレイの発売元はオリーヴ・フィルム。パラマウント映画とライセンス契約を結び、同社のクラシック映画を次々とソフト化しているビデオ会社だ。ここは今まで陽の目を見なかったマイナー作品や、DVDが廃盤になって久しい隠れた名作をコンスタントに出してくれる有難いメーカーなのだが、その一方でレストア処理などに殆ど手をかけないという欠点もあったりする。一貫して特典が含まれていないというのも残念なポイントだ。
 本作に関しても、ソースフィルムの劣化や損傷がそのままフルHDのテレシネ・マスターに反映されており、けっこう粗の目立つ部分があったりする。ただ、モノクロのコントラストには深みがあり、全体的にはブルーレイ画質としてギリギリ合格点という印象。DTS-HDにアップグレードされた音声も良好だ。いずれにせよ、きちんと修復処理を施して欲しかった。

 

 

シラノ・ド・ベルジュラック
Cyrano de Bergerac (1950)

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(P)2012 Paramount/Olive Films (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/フルスクリーン/画面比: 1.37:1/HD規格:1080p/音声: DTS-HD Master Audio 1.0 Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/113分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:マイケル・ゴードン
製作:スタンリー・クレイマー
原作:エドモン・ロスタン
脚色:カール・フォアマン
撮影:フランク・プラナー
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:ホセ・ファーラー
   マーラ・パワーズ
   ウィリアム・プリンス
   モリス・カルノフスキー
   ラルフ・クラントン
   ロイド・コリガン
   ヴァージニア・ファーマー

 17世紀のパリを舞台に、勇猛果敢な剣豪であり天才的な詩人でありながらも、その大きすぎる鼻ゆえに愛する女性への気持ちを伝えることができない男シラノ・ド・ベルジュラックの切ないロマンスを描いた名作。なんといっても、本作でアカデミー主演男優賞に輝いたホセ・ファーラーが素晴らしい。というか、惚れ惚れするくらいの存在感。自信に満ちた道化師的な饒舌さとは裏腹の、繊細で傷つきやすい内面をスケールの大きな演技で表現しており、格闘シーンので披露する剣術や軽業の身のこなしも完璧。筆者の世代だと、どうしてもオールスターキャスト映画の顔見せ要員に駆り出される重鎮俳優という印象しかないのだが、なるほど名優と呼ばれる意味が嫌でも分かろうというものだ。
 そもそも低予算で作られた映画だったらしく、時代劇ロマンスとしては製作規模も小ぢんまりとしているものの、その分だけ無駄なシーンがないのも不幸中の幸いだったかもしれない。ヒロインのロクサンヌ役を演じるマーラ・パワーズや恋敵クリスチャン役のウィリアム・プリンスも好演。特に、我々世代には「ガントレット」('77)の悪役をやったオジさんというイメージが強いプリンスの、若き日のスマートな二枚目ぶりは新鮮だ。
 で、こちらも修復作業なし&特典なしのオリーヴ・フィルムによるブルーレイ。ただ、本作の場合はオリジナルネガの状態がかなり良好だったらしく、目立ったフィルムの傷や汚れは無いに等しい。モノクロのコントラストも明瞭で、ディテールの再現力も抜群。それでいて、しっかりとフィルム・グレインも残しており、極めて自然な仕上がりだ。DTS-HDのモノラル音声も殆どノイズなし。本編のみの収録は残念だが、この高画質は立派だと言える。

 

 

男の罠
Man-Trap (1961)

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(P)2012 Paramount/Olive Films (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン (スクィーズ収録)/画面比: 2.35:1/ HD規格:1080p/音声:DTS-HD Master Audio 1.0ch Mono/言語:英語/地域コード:A/93分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:エドモンド・オブライエン
製作:エドモンド・オブライエン
   スタンリー・フレイゼン
原作:ジョン・D・マクドナルド
脚本:エド・ウォータース
撮影:ロイヤル・グリッグス
音楽:リース・スティーヴンス
出演:ジェフリー・ハンター
   デヴィッド・ジャンセン
   ステラ・スティーヴンス
   エレイン・デヴリー
   ヴァージニア・グレッグ

 一見すると恵まれた暮らしを送っている中産階級の平凡な男が、金に目がくらんで戦友の持ちかけた犯罪に加担したところ、それは彼を陥れるための巧妙な罠だった…というノワールタッチの心理サスペンス。「裸足の伯爵夫人」('54)でアカデミー助演男優賞を獲得した強面の名優エドモンド・オブライエンの監督作品である。
 オブライエンはこれ以前に、悪徳警官を描いた「事件の死角」('55)というノワール映画の隠れた名作を監督しているのだが、本作もまた甘さゆえ袋小路に追い詰められた男の地獄めぐりをハードなタッチで描いた佳作。誰もが羨む美しい奥さんがいて、郊外のシンプルながらお洒落な一軒家に住み、隣人や友人からも愛されている主人公の、その綺麗ごとで塗り固められた上っ面を躊躇なく引き剥がしていく脚本が面白い。
 そんな彼に近づいて罠を仕掛ける朝鮮戦争時代の親友を、どうしても「逃亡者」のイメージが強いデヴィッド・ジャンセンが演じているのは微妙にミスキャストな気がするものの、ちょっと頼りなげでバカ正直な主人公を西部劇の実直な好青年俳優ジェフリー・ハンターに当てたのは大正解だし、ロリータ系セックスシンボルのステラ・スティーヴンスが主人公の飲んだくれの悪妻というのも絶妙なキャスティングだと思う。
 日本では劇場公開されたっきりで、これまでビデオ発売すらされていない幻の作品。アメリカ盤ブルーレイは修復作業なしのオリーヴ・フィルムからの発売だが、ソースフィルムの状態は極めて良好で、部分的に傷がチラつく箇所はあるものの、ほとんど気にならない程度である。全体的に若干だが黒の深みは足りないような気もするが、モノクロのコントラストは十分に明瞭。DTS-HDのモノラル音声も普通に聞き取りやすい。これで特典さえあれば良かったのだが。

 

 

冷血
In Cold Blood (1967)

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(P)2010 Sony Pictures (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★

ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/ HD規格:1080p/音声:Dolby TruHD 5.1ch/言語:英語・フランス語/字幕:英語・フランス語・ドイツ語・アラビア語/134分/制作国:アメリカ

<特典>
なし

監督:リチャード・ブルックス
製作:リチャード・ブルックス
原作:トルーマン・カポーティ
脚色:リチャード・ブルックス
撮影:コンラッド・L・ホール
音楽:クインシー・ジョーンズ
出演:ロバート・ブレイク
   スコット・ウィルソン
   ジョン・フォーサイス
   ジェフ・コリー
   ポール・スチュアート
   ジェラルド・S・オローリン
   ウィル・ギア

  実際に起きた一家4人惨殺事件を取材した作家トルーマン・カポーティの同名ノンフィクションを映画化した作品。フィリップ・シーモア・ホフマン主演の「カポーティ」('05)では、その執筆にまつわるドラマが描かれていたので、この映画版や原作を見たことなくても、大まかなストーリーくらいは知っている映画ファンも多かろう。
 実録ものらしい冷徹で乾いたリアリズムを貫きながらも、数多のセミ・ドキュメンタリー映画とは一線を画するスタイリッシュなカメラワークと濃密な心理描写が秀逸。背筋が凍ると同時に美しさすら感じさせる。ただ“金が欲しい”というだけの理由で民家へ忍び込み、その挙句に平凡で幸せな一家を皆殺しにしてしまう無軌道な2人の若者の恐ろしさ、そして直接的な描写は避けつつも犠牲者たちの末路を克明に映し出した暴力シーンの痛ましさ。当時としては相当にショッキングだったであろうことは想像に難くない。
 それでいて、単なる見世物映画に終わることなく、古き良きアメリカが崩壊した時代の世相を浮き彫りにした鋭利な社会性が漲っている。後になって本当に殺人事件を起こしてしまうロバート・ブレイクに、現在も人間味溢れる老優として映画やテレビで活躍中のスコット・ウィルソンという2人の素晴らしい俳優が、屈折と鬱屈を内に秘めた当時の貧困層の若者像をナチュラルに演じて説得力がある。また、ジョン・フォーサイスやジェラルド・S・オローリンといった、警察側を演じる強面の名優たちの存在感も、凄みと渋みがあってすこぶる良い。
 日本ではDVDのみが発売中。こちらのアメリカ盤ブルーレイは、予告編すら含まれていないという映像特典の乏しさが惜しまれるものの、画質そのものは非の打ち所がないくらい完璧。明暗のコントラストは身震いがするほどシャープで美しく、細かい質感などの再現力も実に見事だ。フィルムの傷や汚れなども一切ないので、画面はまさにツルツルのピカピカ。やはりブルーレイはこうでなくちゃね!と感嘆することしきりだ。TruHDの5.1chサラウンドにリミックスされた音声もまるっきり濁りなし。これは絶対に手放せない。

 

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