ハーマンズ・ハーミッツ Herman's Hermits
ポップで爽やかな元祖バブルガム・バンド!
60年代のブリティッシュ・インベージョンでは数多くのバンドが登場したが、その中でもダントツにポップで楽しいサウンドを聴かせてくれたのが、このハーマンズ・ハーミッツだろう。特にアメリカでの人気は絶大で、一時期はビートルズをも凌ぐような勢いだった。1965年だけでも、2曲の全米ナンバー・ワンに3曲のトップ10ヒットを放っている。キャッチーで覚えやすい楽曲、そしてボーカリストであるPeter
Nooneの少年のように無邪気な歌声と茶目っ気があって親しみやすいキャラクター。ティーンのハートを捉えるのに十分な魅力を兼ね備えていた。
後にカーペンターズがカバーしてリバイバル・ヒットさせた“There's
A Kind of Hush”、牧歌的でセンチメンタルなポップ・ナンバー“Silhouettes”、ダンサンブルでキュートなビート・ポップ“Wonderful
World”など、彼らの作品はコマーシャルで優れたポップ・ミュージックの宝庫と言えるだろう。彼らの存在がなければ、その後のThe
Monkeesをはじめとするバブルガム・ポップは生まれなかったと言っても過言ではない。
だがその一方で、時として過剰なまでの分りやすさは、全米ナンバー・ワンにもなった“Mrs.Brown
You've Got A Lovely
Daughter”のようなメンバー自身でさえ恥ずかしいと思ってしまう通俗的で安易なポップ・ナンバーを生んでしまい、同世代のビートルズやローリング・ストーンズに比べて批評家受けは芳しくなかった。とことんまで一般大衆受けを狙うという売り方はプロデューサーであるMicky
Mostの戦略であり、それ自体は成功したと言えるだろう。ただ、そのせいで彼らが優れたポップ・バンドとしての正当な評価を得る事が出来なかったというのも残念な事実ではある。
ハーマンズ・ハーミッツが結成されたのは1964年。もともとテレビの人気子役スターとして活躍していたPeter Nooneは1963年にThe Cyclonesというグループに参加。そこで知り合ったベーシストのKarl Greenに、ギタリストのKeith HopwoodとDerek Leckenby、ドラマーのBarry Whitmanを加えて結成したのがThe Heartbeatsというグループで、これがハーマンズ・ハーミッツの前身となる。その後、Peter NooneのニックネームであるHermanを使ってHerman and the Hermitsというバンド名に変え、さらにそれを縮めてHerman’s Hermitsとなった。ちなみに、このハーマンというニックネームの語源はテレビ・アニメ「ロッキー・アンド・ブルウィンクル」に出てくるキャラクター、シャーマンで、ピーターが“シャーマン”に似てると誰かが言ったのをKarl Greenが“ハーマン”と聞き間違えたのがきっかけだったそうだ。
地元のマンチェスターのクラブでライブ活動をしているところを、プロデューサーのMicky Most(The AnimalsやSuzy
Quatroの生みの親)にスカウトされ、1964年9月に“I'm Into Something
Good”でレコード・デビュー。全英チャートでナンバー・ワンを記録する(彼らにとっては唯一の全英ナンバー・ワン)。当初から、ピーターのキャラクターがアメリカ人受けすると睨んでいたMicky
Mostは同年12月に“I'm Into Something
Good”をアメリカでもリリース。全米チャート13位をマークし、幸先の良いスタートを切る。
翌年には“Mrs.Brown You've Got A
Lovely Daughter”と“I'm Henry [ I
Am”が全米ナンバー・ワンを記録(どちらも本国イギリスでは本人たちの希望でシングル・カットされなかった)。さらに“Silhouettes”、“Can't You
Hear My Heartbeat”、“Wonderful
World”がトップ10ヒットとなり、全米でハーマンズ・ハーミッツ・ブームを巻き起こす。当時、彼らのファンは“ハーマニア”と呼ばれていた。
66年には“A
Must To Avoid”が全米8位、全英6位を記録。さらに“Dandy”が全米5位、“This Door Swings Both
Ways”が全米12位となった。67年には“There's A Kind of Hush”が全米4位、全英7位となり、“No Milk
Today”も全英7位を記録した。しかし、この頃までが彼らの全盛期で、1968年以降徐々にヒット曲に恵まれなくなっていく。
1971年にはピーターがソロに転向。バンドは別のボーカリストを加えるなどして1994年まで地道に活動を続けていた。しかし、94年にDerek
Leckenbyが死去。その後、Barry
Witmanが新しいミュージシャンを集めてハーマンズ・ハーミッツ名義で活動しているが、その一方で2002年になってPeter
Nooneがハーマンズ・ハーミッツを名乗って全米のカジノを巡業するようになった。そのため、BarryとPeterの間でたびたびバンド名の使用を巡って訴訟が起こされているが未だに決着せず、イギリスとアメリカで2つのハーマンズ・ハーミッツが活動を続けている。まあ、落ちぶれたポップ・グループ、ロック・バンドにはこの種のトラブルはつき物で、かつてのファンにとっては残念という以外にない。ただ、スターだって所詮は人間。食っていくためにはきれいごとばかり言ってられない・・・というのは分るのだけどね・・・。アバのように解散後もメンバーが著作権問題などについて意思の疎通をしっかりして、きっちりと管理をしているようなグループは本当に稀だったりするわけですなー。
“Silhouettes”のファン・クリップは ココ で見れます!
“There's A
Kind Of Hush”のテレビ映像 ココ で見れます!
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Mrs.Brown You've Got A Lovely Daughter |
Both Sides of Herman's Hermits (1966) |
There's A Kind of Hush All Over The World (1967) |
(P)1994 Repertoire(Germany) | (P)2000 Repertoire (Germany) | (P)2000 Repertoire (Germany) |
1,Heartbeat 2,Travelling Light 3,I'll Never Dance Again 4,Walking With My Angel 5,Dream On 6,I Wonder 7,For Your Love 8,Don't Try to Hurt Me 9,Tell Me Baby 10,I'm Henry [ I Am 11,The End of the World 12,Mrs.Brown You've Got A Lovely Daughter bonus tracks 13,I'm into Something Good 14,Youe Hand In Mine 15,Show Me Girl 16,I Know Why 17,Silhouettes 18,Can't You Hear My Heartbeat 19,Wonderful World 20,Just A Little Bit Better 21,Take Love, Give Love 22,Sea Cruise 23,Mother in Law 24,I Understand 25,Thinking of You |
1,Little Boy Sad 2,Story of My Life 3,My Reservation's Been Confirmed 4,Bus Stop 5,For Love 6,Where Were You When I Needed You 7,All The Things I Do For You Baby 8,Leaning On A Lamp Post 9,Dial My Number 10,Oe Ee Baby 11,Je Suis Anglais 12,Listen People bonus tracks 13,Kansas City Loving 14,A Must To Avoid 15,The Man With The Cigar 16,Got A Feeling 17,Hold On 18,Og Mr.Porter 19,The Future Mrs, 'Awkins 20,Two Lovely Black Eyes 21,My Old Dutch |
1,There's A Kind of Hush 2,East West 3,You Won't Be Leaving 4,Saturday's Child 5,If You're Thinkin' What I'm Thinkin' 6,No Milk Today 7,Little Miss Sorrow, Child of Tomorrow 8,Gaslite Street 9,Rattler 10,Dandy 11,Jezebel bonus tracks 12,This Door Swings Both Ways 13,What is Wrong - What is Right 14,I Can Take Or Leave Your Loving 15,Marcel's 16,(I Gotta)Dream On 17,Don't Try to Hurt Me 18,Biding My Time 19,The George And the Dragon 20,Wild Love 21,Gotta Get Away 22,Make Me Happy |
1965年にリリースされたファースト・アルバム“Herman's Hermits”(イギリス編集版)に、シングルのみリリースされた楽曲のA面B面をボーナス・トラックとして加えたコンピレーションCD。初期のヒット曲はこれ一枚でほぼ完璧にカバーできてしまう。個人的には超キャッチーでポップでドリーミーな#5がめちゃめちゃ好きですね。シングル・ヒットした#17もちょっとセンチメンタルでキュートなナンバーで愛くるしい。ただ、当時はアルバムというのはシングルを売るよりも利益が高いという理由だけで売られる傾向が強かったから、シングル曲以外は必ずしも出来が良くないのが残念。 | まさにハーマニア・ブーム真っ只中の66年にリリースされた実質上のセカンド・アルバム(この間にライブ・アルバム、ベスト・アルバムをリリースしている)。全体的にビート色を強めており、明らかにビートルズやストーンズを意識している。ロックン・ロールやノーザン・ソウルのエッセンスを盛り込んだ楽曲が多いものの、やはりメランコリックでポップな#4やキャッチーでダンサンブルな#9なんかの方がハーマンズ・ハーミッツらしく感じてしまう。というより、ピーターの幼げな歌声にはポップでシンプルな楽曲の方が合っているのだと思う。シングル曲を集めたボーナス・トラックはどれも平凡な出来。 | 彼らのアルバムでは、これがベストでしょう。ポップでキュートで爽やかな楽曲が揃って、聴き応え十分な仕上がり。日本ではカーペンターズのカバーで有名な#1なんか、この時期のハーマンズ・ハーミッツのサウンドを象徴するような出来栄え。程よくグルーヴィーでキャッチーなポップ・ナンバー#3、思わず微笑がこぼれてしまうような愛らしい#5、ちょっとメランコリックで哀しげなヒット・ナンバー#6、ノスタルジックでメロウな#8など、舌足らずなピーターのボーカルを生かした親しみやすい楽曲が並ぶ。ボーナス・トラックもいい曲が揃ってます。 |
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Blaze (1967) |
Mrs.Brown,You've Got A Lovely Daughter (1968) |
(P)2001 Repertoire (Germany) | (P)2001 Repertoire (Germany) |
1,Museum 2,Upstairs, Downstairs 3,Busy Line 4,Moonshine Man 5,Green Street Green 6,Don't Go Out Into The Rain 7,I Call Out Her Name 8,One Little Packet Of Cigarettes 9,Last Bus Home 10,Ace, King, Queen, Jack bonus tracks 11,Sleepy Joe 12,Just One Girl 13,London Look 14,Sunshine Girl 15,Nobody Needs To Know 16,Something Is Happening 17,The Most Beautiful Thing In My Life 18,Ooh She's Done It Again 19,My Sentimental Friend 20,My Lady 21,Here Comes The Star 22,It's Alright Now |
1,It's Nice to be Out in the
Morning 2,Holiday Inn 3,Ooh, She's Done It Again 4,There's A Kind of Hush 5,Lemon and Lime 6,The Most Beautiful Thing in My Life 7,Daisy Chain Part 1 8,Daisy Chain Part 2 9,The World is For the Young 10,Mrs.Brown, You've Got A Lovely Daughter bonus track 11,Regardez-moi 12,Years May Come, Years May Go 13,Sime Please 14,Bet Yer Life I Do 15,Searching for the Southern Sun 16,Lady Barbara 17,Don't Just Stand There 18,Big Man 19,Wings of Love 20,Mum and Dad |
ハーマンズらしいバブルガムなポップ・センスにサイケデリック・ロックのエッセンスを盛り込んだ野心的なアルバムで、その試みは十分すぎるくらいに成功している。いかにも60年代後半のスウィンギン・ロンドンらしいソウルフルなビートに、思わず口ずさんでしまうようなキャッチーなメロディが目白押しで、彼らのアルバムとしては"There's A Kind of Hush〜”と双璧の出来映え。ただ、彼らの人気が下降線をたどりつつあった時期だけに、セールス的には伸び悩んだ。ボーナス・トラックの中では、モンキーズの“Daydream Believer”にも匹敵するキャッチーで爽やかな#12がダントツに素晴らしい。 | こちらは彼らの全米ナンバー・ワン・ヒットにインスパイアされた映画(主演も彼ら)のサントラ盤としてリリースされたアルバム。新緑の香り漂うロンドンの朝を思わせる、ポップで爽やかでメロウなビート・ナンバー#1が最高に気持ち良い。全体的には新曲入りのベスト盤的な内容で、インスト・ナンバーやハーマンズ以外の出演者による楽曲も含まれており、純粋に彼らのアルバムとは言い難い。ボーナス・トラックがとにかく粒揃い。Andre Pop作曲による思わず微笑みのこぼれてしまうような愛らしい#12、これまた爽やかでセンチメンタルな#13など、ハーマンズ・ファンにはたまらない珠玉のポップ・ナンバーが詰まってる。 |