Haunted Echoes (2008)

 

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(P)2010 E1 Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/ステレオ/音声:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/97分/製作:アメリカ

特典映像
なし
監督:ハリー・ブロムリー=ダヴェンポート
製作:マイク・スナイダー
脚本:レイチェル・キャレンダー
撮影:デヴィッド・スコット・イケガミ
音楽:マーク・ハート
出演:ショーン・ヤング
   デヴィッド・スターズィク
   M・エメット・ウォルシュ
   バーバラ・べイン
   ジュリエット・ランドー
   フェリックス・ウィリアムソン
   ケヴィン・マッコークル
   ザック・キルバーグ

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丘の上に建つビクトリア朝風の古い屋敷

誘拐殺人事件で愛娘を亡くした夫婦が越してくる

 '80年代カルト・ムービーとして知られるSFホラー映画『エクストロ』('83)のハリー・ブロムリー=ダヴェンポート監督が手掛けたオーソドックスなゴースト・ストーリー。予め断っておくと、決して出来のいい映画とは言えない。特に、極端な低予算をさらけ出してしまったハイビジョン・ビデオ撮影の安っぽさ、それに輪をかけてチープな特殊効果の稚拙さは如何ともしがたいものがある。ただ、観客の勝手な先入観と予測を巧みに裏切っていくストーリー展開、あえて根本的な問題を解決しないままに終わるクライマックスの不思議なモヤモヤ感は、なるほど、『エクストロ』のダヴェンポート監督らしいへそ曲がりっぷりだな、という印象だ。
 主人公は最愛の娘を隣人に殺された中年夫婦ガイとローラ。犯人が逮捕された末に獄中自殺したものの、2人の受けた心の傷や喪失感は決して拭い去ることが出来なかった。そこで、夫婦は心機一転するために、丘の上に建つビクトリア朝風の古い豪邸へ移り住むことにする。だが、この屋敷には忌まわしい過去があり、やがて2人は不可解な現象を目の当たりにしていく。
 と、ここまではよくあるゴースト・ストーリーといった感じ。屋敷の中で起きる怪現象が果たして本物なのか、それとも悲しみに暮れる夫婦の心の闇が生み出した幻なのか。2人の複雑な心情を丁寧に絡めながら、淡々とした語り口で描かれていく。特に、お互いに深い悲しみや後悔の念を共有しながらも、その気持ちがあまりにも強過ぎるために、つい相手を傷つけてしまう夫婦の姿が痛々しい。
 やがて、怪現象の正体が少女の幽霊であることが判明。ガイとローラは、それが亡き娘キンバリーだと確信する。自分を殺した犯人は他にいる、同じ悲劇を繰り返さないためにも真犯人を捕まえて欲しいと訴える少女。夫婦は幽霊の示すヒントを手掛かりに、以前この屋敷で暮らしていた男性ケネス・モンクの存在を突き止める。彼はキンバリーの通っていた学校の教員だった。
 ますます確信を強めるガイとローラだったが、ケネスの犯行を裏付けるような証拠は何も見つからない。抑えようのない憎しみと焦りから、自らの手でケネスに制裁を下そうと考えるローラ。そんな妻の暴走を必死に食い止めようとするガイ。みるみるうちに崩壊していく夫婦の絆。ところが、屋敷に棲む幽霊はキンバリーを装った別人であり、亡き娘を想うガイとローラの気持ちを巧みに利用していたのだ。果たして、幽霊の正体は何者なのか?そして、その目的とは?一方、暗い過去を抱えるケネスは自分の秘密が知られることを恐れ、ガイとローラを抹殺すべく秘かに屋敷へと忍び込んでいた…。
 サイコロジカルな超自然ホラーとして、少なくともプロットに限ってはなかなか良く出来ている。娘を殺された夫婦がその亡霊に導かれて真犯人を突き止める話か…と思わせておきつつ、実は全く違う方向へと向かう展開も悪くない。主人公たちの葛藤や迷いにも説得力がある。ただ、随所で説明的かつクサいセリフが見受けられるのは若干興醒めするところ。喋らされている役者自身もやはり違和感があるのか、不自然なセリフだと演技にも力が入っていないように見えてしまう。
 しかし、やはり最大の難点は安っぽい特殊効果を使用したショック・シーンであろう。特に幽霊の登場シーンに使われるデジタル合成は見るに堪えない代物。ほとんど最初期のビデオムービーと同レベルのショボさなのだ。さすがにこれは頂けない。ネコを電子レンジでチンして殺すシーンも蛇足だし、なによりも見るからにぬいぐるみなのが失笑もの。いっそのこと何も見せない方が逆に効果的だったように思う。
 とりあえず、監督や主演女優の名前にピンとくるシネフィル的なホラー映画ファンならば、一度は見ておいても損はないだろう。良い点も悪い点も含めて、なにかと勉強になるはずだ。ただ、そうでない人には…残念ながらあまりお勧めできるような作品ではないと思う。

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いつしか夫婦の間に笑顔が戻ってくる

妻ローラ(S・ヤング)が少女の幽霊を目撃してしまう

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近くに住む老人ニール(M・E・ウォルシュ)も少女の姿を目撃する

ローラの妹クレア(J・ランドー)は霊感が強かった

 10歳の少女キンバリー(リリー・ハウ)が自宅から忽然と姿を消した。真夜中に飼い犬の様子を見るため外へ出たところ、何者かに連れ去られてしまったようだった。自宅には外部から人が侵入した形跡が見つからなかったことから、マスコミは少女の両親に疑いの目を向ける。しかし、その数日後にキンバリーは変わり果てた姿で発見され、近所に住むデニス(ザック・キルバーグ)という10代の少年が逮捕された。ところが、デニスは留置所で首つり自殺を遂げてしまい、真相のうやむやになったまま事件の捜査は打ち切られることとなった。
 それから数か月後、キンバリーの父親ガイ(デヴィッド・スターズィク)と母親ローラ(ショーン・ヤング)は、娘のいなくなった現実を少しづつ受け入れるようになっていた。そんな折、ガイは丘の上に建つヴィクトリア様式の屋敷が売りに出されていることを知る。以前からローラが憧れていた家だ。娘を失った悲しみと決別して人生を立て直すため、彼は思い切って屋敷を買うことにする。
 古い屋敷なので内装のリニューアルが必要だったが、自分たちで壁紙を選んだりカーテンを選んだりしているうちに、いつしか夫婦の間に笑顔が戻ってくる。ふさぎ込みがちだったローラも前向きになってきた。ところが、引越しが終わってから数日後のある晩、夜中に目を覚ましたローラは少女の幽霊らしきものを家の中で目撃する。はじめは娘を失ったショックの後遺症かと思っていたが、それ以来ローラの身の回りでは不可解な現象が立て続けに起きた。ケネスという男性からの間違い電話、壁に浮かび上がる謎の文字。さらに、近所に住むニール(M・エメット・ウォルシュ)という老人が、2階の窓辺にたたずむ少女の姿を目撃する。ローラは自分の気のせいなどではないことを確信するが、夫は信じてくれなかった。
 そんなある日、ローラの妹クレア(ジュリエット・ランドー)とその夫ジェイソンが引っ越し祝いにやって来た。霊感の強いクレアは、この家が呪われていると感知する。その晩、例のケネスという男性から再び間違い電話がかかってきた。どうやら、相手はこちらからの呼び出しにリダイヤルしているらしく、これ以上いたずら電話はやめてくれと訴える。たまたまその電話に出たガイは、妻が自分を責めるために嫌がらせの細工をしているのではないかと考えて激怒した。というのも、もともと飼い犬を外で放し飼いにしたのは彼のアイディア。キンバリーは愛犬が寂しがっているのではないかと心配し、様子を見に行ったことから被害に遭ってしまったのだ。あの忌まわしい事件を招いたのは誰のせいなのか?それまで決して口に出さなかったお互いへの不信感が強まり、たちまち夫婦仲は険悪なものになってしまう。
 ローラは自宅を飛び出して妹クレアの家に身を寄せた。その晩、一人になったガイの前に少女の霊が姿を現す。その上、家の壁に不可解な文字が浮かび上がった。ようやくローラの言葉を信じるようになったガイ。果たして、前の住人も同じような現象を体験していたのだろうか?ニールによると、この屋敷に住んでいたギッチェル夫人(バーバラ・べイン)は精神病で入院していた。ガイとローラはギッチェル夫人のもとを訪ねる。しかし、夫人が語るのは生後2週間で亡くした次男のことばかり。役に立つような情報を得ることは出来なかった。その帰りがけ、ローラは夫人の長男とすれ違う。彼女はその顔にどこか見覚えがあった。
 結局、夫婦はワラにもすがる思いでジェイ(エド・ブリゲイディア―)という霊媒師に屋敷を見てもらうことにする。どうやら、少女の霊は復讐を求めているらしい。彼女を殺したとして逮捕されたのは別人で、真犯人は僧侶なのだという。このままでは別の少女がまた犠牲になってしまうと訴える霊。ローラはその正体が娘キンバリーであることを確信し、少女の霊もそれを認める。
 ガイとローラは警察のマクドナルド刑事(ケヴィン・マッコークル)に再捜査を求めるものの、その根拠が幽霊の証言だとはさすがに言い出せない。確たる証拠がなければ警察は動けなかった。一方、屋敷ではさらに奇妙な出来事が起きるようになる。フローリングの下から動物の骨が発見され、近所をさ迷っていた猫が電子レンジで焼死した。キンバリーの霊がこんなことをするのだろうか?
 その頃、ローラは近隣の住人からギッチェル夫人にまつわる不可解な話を耳にする。亡き夫とはお互いに子連れの再婚同士だった夫人。だが、一緒に暮らすようになってから夫の家庭内暴力が始まり、夫人は次第に精神のバランスを崩してしまったという。夫には前妻との間に出来た娘エレナがいたものの、これまた手の付けられない不良少女だったらしい。おかげで夫人の息子ケネスは内気な少年になってしまった。だが、夫が病死した直後にエレナは蒸発してしまい、それからほどなくしてギッチェル夫人と息子は屋敷を手放してしまったのだという。以来、長いこと屋敷は買い手がつかなかったのだそうだ。
 本当に幽霊の正体はキンバリーなのだろうか?そんな疑問が頭をよぎった矢先、ローラは重大な発見をする。聖歌隊で歌うキンバリーの様子を記録したホームビデオに、ある人物が映っていたのだ。それは病院で見かけたギッチェル夫人の息子ケネス(フェリックス・ウィリアムソン)。彼は実の父親の姓モンクを名乗っていた。そう、モンク=僧侶。ケネスはキンバリーの通っていた学校の臨時職員だった。ローラは、娘の霊はこのことを訴えたかったのだと確信する。
 以来、ケネスの周辺を執拗に調査し続けるようになったガイとローラ。だが、彼の犯行を裏付けるような証拠は全く出てこない。娘を殺した真犯人がようやく分かったというのに、それを追求することのできないジレンマ。怒りと焦りで冷静な判断の出来なくなってしまったローラは、法で裁くことが出来ないのなら自らの手で天罰を下そうと考えるようになる。なんとか思いとどまらせようとするガイだったが、もはやローラの頭には復讐しかなかった。
 だがその頃、ガイとローラに疑われていることを知ったモンクは、やはり焦りと恐怖心から異常な行動に走っていく。まずは、夫婦と接触した実の母親を殺害。そして、次にガイとローラの2人を抹殺すべく屋敷へと忍び込んでいく。いよいよ娘の仇と対峙することになる夫婦。だが、全てはキンバリーを名乗る少女の霊が巧みに仕組んだ策略だった…。

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幽霊騒動が原因で夫婦の間に再び亀裂が入る

夫ガイ(D・スターズィク)も霊現象を目の当たりにする

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前の住人ギッチェル夫人(B・べイン)は気が狂っていた

霊媒師の透視で少女の霊が亡き娘キンバリーだと確信する

 脚本を手掛けたレイチェル・キャレンダーは、本作をきっかけに“Frozen Kiss”('09)や“Smile Pretty”('09)といったブロムリー=ダヴェンポート監督の作品を手掛けるようになった女流脚本家。後の作品はどちらもシリアスなドラマ映画なのだが、恐らく彼女自身もホラーというジャンルに興味や思い入れなど全くないのだろう。明らかに、本作の脚本は心に傷を負った人々の再生や贖罪といったテーマに重点が置かれており、恐怖を盛り上げるという意図が殆ど見えてこない。あくまでも幽霊譚というのは語り口の手段でしかないのだ。もちろん、それはそれで結構。事実、先述したようにセリフの稚拙さは難ありではあるものの、ストーリーそのものは決して悪い出来ではない。
 そのほか、製作と助監督にはマイケル・ダディコフ主演のコメディ「わたしを救けて/レスキュー・ミー」('91)の脚本を書いたマイク・スナイダー、撮影監督には“Frozen Kiss”と“Smile Pretty”にも参加した日系人カメラマンのスコット・イケガミ、視覚効果にはテレビ「CSI:マイアミ」のジョフ・リーヴィットが参加している。
 なお、一部ヨーロッパや南アフリカでは'08年から'09年にかけて劇場公開やDVD発売されていたものの、北米ではしばらくお蔵入りの状態が続き、'10年3月になってようやくDVDソフトとして陽の目を見ることとなった。

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フローリングの下から発見された動物の骨

ローラは娘を殺した真犯人を突き止める

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それはギッチェル夫人の息子ケネス(F・ウィリアムソン)だった

秘密の露呈を恐れたケネスは実の母親を殺害する

 主演はこのところすっかり日本へ新作が来なくなったショーン・ヤング。「ブレード・ランナー」('82)や「追いつめられて」('87)、「ウォール街」('87)など、かつてはヒット作・話題作が目白押しの売れっ子女優だったが、度重なる問題行動や奇行のおかげで業界関係者から敬遠されるようになり、みるみるうちに落ちぶれてしまった。全盛期にはハリウッドでも指折りの美人だった彼女も、本作の撮影当時は既に49歳。ポッコリと突き出たお腹やわずかな二重あごが第一線を離れたスターの哀愁を漂わせるのだが、それが逆に平凡な主婦・母親という役柄にしっくりくるのだから皮肉なもの。稚拙なセリフのせいで演技にはむらが見られるものの、総じてなかなかの好演を披露している。
 その夫を演じているデヴィッド・スターズィクは、主にテレビドラマの脇役として活躍している地味な俳優。「デスパレートな妻たち」のシーズン5では、カルロスに仕事を紹介する元上司スコット役で顔を出していた。他にもいろいろと人気ドラマでセミ・レギュラーなどを演じているようだが、あまり印象に残るようなタイプの役者ではない。
 隣の家に住む老人ニールを演じているのは、「ブラッド・シンプル」('84)の私立探偵役で有名なベテラン俳優M・エメット・ウォルシュ。さらに、往年の人気ドラマ「スパイ大作戦」や「スペース1999」でお馴染みの女優バーバラ・べインが、頭のおかしい老女ギッチェル夫人役で登場するのはちょっと嬉しい。ただし、あまりにも老けすぎていて、よーく見ないと分からないのだが。
 そのほか、バーバラ・べインとマーティン・ランドーの間の娘でドラマ「バフィー〜恋する十字架」の悪女ドゥールシラ役で強烈な印象を残したジュリエット・ランドー、オーストラリア出身のフェリックス・ウィリアムソン、「ゾンビ・ストリッパーズ」('08)でパニックの元凶になる海兵隊員を演じていたザック・キルバーグなどが顔を出している

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幽霊は復讐を強く訴えるのだが…

過去にケネスの義理の妹エレナが消息を絶っていた

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ケネスへの復讐を巡って激しい口論を交わすガイとローラ

夫婦の口を封じようとするケネスだったが…

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