HARD TO FIND FILMS
〜ヨーロッパ映画篇2〜

 

 

Madame du Barry (1954)
日本では劇場未公開・テレビ放送もなし
VHS・DVD・BDいずれも日本未発売

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(P)2009 Televista (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 4:3/音声:モノラル/言語:フランス語/字幕:英語/地域コード:ALL/105分/制作国:フランス・イタリア

<特典>
スチル・ギャラリー
監督:クリスチャン・ジャック
製作:フランシス・コーヌ
   ジョルジュ・ダンシジェル
   ジョルジュ・ルーラ
   アレクサンドル・ムヌシュキン
   アンジェロ・リッツォーリ
脚本:アルベール・ヴァランタン
   クリスチャン・ジャック
   アンリ・ジャンソン
撮影:クリスチャン・マトラ
音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス
出演:マルティーヌ・キャロル
   アンドレ・リュゲ
   ダニエル・イヴェルネル
   ジャンナ・マリア・カナーレ
   マッシモ・セラート
   ガブリエル・ドルジア
   ジャン・パレデ
   ドニ・ドイネ
   マルゲリート・ピエリ
   ノエル・ロクヴェール
   ウンベルト・メルナティ
   イザベル・ピア

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舞台は18世紀半ばのパリ

美人のお針子ジャンヌ(M・キャロル)は顧客の人気者だった

妻も愛人も亡くして退屈するルイ15世(A・リュゲ)

公妾の座を狙うグラモン侯爵夫人(G・M・カナーレ)

<Review>
 フランス革命前夜のベルサイユ宮殿で絶大な権力を持ったルイ15世の公妾デュバリー夫人の半生を、「ボルジア家の毒薬」('52)や「女優ナナ」('55)の黄金コンビ、クリスチャン=ジャック監督とマルティーヌ・キャロル主演で描いた壮麗な歴史ドラマ。貧しい庶民から成り上がった夫人の強く逞しい生き様を通して、当時の貴族社会およびフランス社会の世相を軽妙な風刺ユーモアを交えつつ描いた秀作だ。
 時は18世紀半ば。洋裁店のお針子ジャンヌは、その類希な美貌と鼻っ柱の強い性格を買われ、貧乏貴族デュバリー伯爵の婚約者となる。というのも、ギャンブルの借金を抱えたデュバリー伯爵は、彼女を妻にして宮廷へ出入りさせ、あわよくば国王ルイ15世の公妾にして宮廷での地位と大金をせしめようと目論んでいたのだ。
 ところが、伯爵の考えていたよりも早く国王はジャンヌを見初めてしまった。実は、当時の彼はまだ既婚者。しかし、国王の公妾となるには貴族の人妻でなくてはならない。そこで、伯爵は田舎に暮らす独身の兄とジャンヌを形式的に結婚させ、なんとかベルサイユ宮殿へと送り込むことに成功する。
 一方、これを気に食わなかったのが筆頭大臣のショワズール公爵。予てから妹グラモン侯爵夫人を国王の妾にしようと画策していた彼は、なんとしてでもジャンヌの足を引っ張ろうと妨害工作を張り巡らし、グラモン侯爵夫人や国王の娘たちもそれに加担する。しかし、ルイ15世とリシュリュー元帥を味方につけたジャンヌは持ち前の機転を利かせ、数々の難局を見事に乗り切って公妾の地位を手に入れるのだった。
 初めこそ周囲から白い目で見られていたものの、庶民の出身らしいアッケラカンとした性格で、次第に宮廷の人気者となっていくジャンヌ。だが、今度は妾を毛嫌いするマリー・アントワネットがショワズールらと結託して彼女の地位を脅かし、さらには来るフランス革命の嵐が彼女の運命を呑み込んでいく…。
 本編では食料を求めて暴動を起こす庶民にジャンヌが味方をするシーンなどもあり、作り手はジャンヌ=庶民の代弁者という位置づけを明確にしながら、彼女の目を通して当時のフランス貴族の傲慢と怠慢、上流社会の堕落と腐敗に切り込んでいく。つまり、フランス革命は起きるべくして起きた出来事だったというわけだ。
 それゆえ、少々美化されすぎたデュバリー夫人の描き方には賛否があるかもしれない。しかし、相手が王様だろうと大臣だろうと納得のできないことには毅然と立ち向かい、それでいて自分の美貌を最大限に有効活用する計算高さも兼ね備えた彼女を演じるマルティーヌ・キャロルはすこぶる魅力的。カラフルな美しい映像と軽妙なリズム感、そして洒脱なユーモアで全編をまとめ上げたクリスチャン=ジャック監督の演出も素晴らしい。これが未だに日本未公開のままというのは理解致しかねるところだ。

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グールダン夫人(G・ドルジア)の娼館を訪れたジャンヌ

放蕩貴族デュバリー伯爵(D・イヴェルネル)と婚約する

ベルサイユ宮殿の晩餐会に招かれたジャンヌだが…

ルイ15世は正直者で鼻っ柱の強いジャンヌを気に入る

<Story>
 物語の始まりはフランス革命直後のパリ。自由と平等を手に入れた市民たちの集うサンジェルマンの祭りでは、断頭台の露と消えた王族や貴族の半生と最期を紙芝居で紹介している。民衆の野次や嘲笑の言葉が飛び交う中、“国王の娼婦”とあだ名された女性ジャンヌ・デュバリー夫人の数奇な運命が語られ始めた。
 それはまだルイ15世(アンドレ・リュゲ)が健在だった頃。上流階級の人々が出入りするパリの高級ブティックでは、とびきりの美人で愛嬌のあるお針子ジャンヌ・ランソン(マルティーヌ・キャロル)が評判となっていた。そんな彼女を特に贔屓にしていたのが、陸軍元帥のリシュリュー(ドニ・ドイネ)と高級娼館の女将グールダン夫人(ガブリエル・ドルジア)。2人がジャンヌに目をつけたのには理由があった。
 当時のベルサイユ宮殿では、長いことルイ15世の公妾として強大な権力を振るったポンパドゥール夫人が亡くなったばかり。彼女と対立したせいでライバルのショワズール公爵(マッシモ・セラート)に宮廷での影響力を奪われたリシュリュー元帥は、自らが新たな公妾を後ろ盾することで権力の挽回を図ろうとしていたのである。また、彼と懇意にしているグールダン夫人も、リシュリューの復権によって娼館を警察の監視対象から外してもらうことを期待していた。
 そんなこととはつゆ知らず、グールダン夫人の娼館へ生地を届けるジャンヌ。そこで彼女は偶然にも、サンジェルマンでナンパされた放蕩貴族デュバリー伯爵(ダニエル・イヴェルネル)と再会する。実は、伯爵も邪な魂胆があってジャンヌに目をつけていた。ギャンブルで多額の借金を抱えた彼はジャンヌを妻にしてベルサイユへ出入りさせ、ルイ15世の妾にして宮廷での地位と莫大な報奨金を手に入れようと目論んでいたのだ。
 ひとまずジャンヌを地方貴族の娘と偽って婚約を発表したデュバリー伯爵は、自宅のサロンで大物貴族たちを招き、小遣い稼ぎのためジャンヌに売春まがいのことをさせる。男好きで情にもろいジャンヌも、優雅な貴族相手の恋愛ゲームは嫌いじゃない。さらに、リシュリュー元帥の腰巾着である伯爵は、彼を通じてルイ15世とジャンヌを引き合わせる段取りをつけていた。
 初めてベルサイユ宮殿に足を踏み入れて胸を高鳴らせるジャンヌだったが、待てど暮らせど晩餐会の席にルイ15世は現れない。どうやら、どこかの覗き穴から彼女のことを確認するのだそうだ。宮廷の偽善的で奇妙なしきたりに開いた口のふさがらないジャンヌは、国王の妾などこちらから願い下げだとばかりに席を立ち、慌てるリシュリュー元帥やデュバリー伯爵にあっかんべーをして立ち去ろうとする。そんな彼女の豪快な姿を物陰から見ていたルイ15世は、たちまちジャンヌのことが気に入ってしまった。
 出口を探して宮廷内を彷徨うジャンヌに、身分を隠して声をかけるルイ15世。怒りの冷めやらぬジャンヌだったが、見ず知らずの男性の穏やかで紳士的な態度に好感を抱き、たちどころに2人は意気投合。すると、彼の横顔をじっと見つめていたジャンヌは、目の前にいる男性が国王その人だと気付いてびっくり仰天。だが、2人はそのまま寝室へと向かい、国王を待ち伏せしていたグラモン侯爵夫人(ジャンナ・マリア・カナーレ)を追い出し、甘い一夜を共に過ごすのだった。
 その翌日、プライドを傷つけられてご立腹のグラモン侯爵夫人は、兄であるショワズール公爵に昨晩の出来事を報告する。実は、ショワズールも妹を国王の公妾にして、宮廷内の権力掌握を狙っていたのだ。ジャンヌの背後に宿敵リシュリュー元帥の影を嗅ぎつけた彼は、なんとしてでも相手の動きを妨害し、妹をルイ15世の公妾にすべく策を張り巡らせる。
 一方、国王と結ばれて公妾の正式な候補に挙がったジャンヌだったが、それに慌てたのはデュバリー伯爵。こんなに早く計画が成功するとは思わなかったのだ。公妾となるには貴族の人妻であることが第一条件。だが、伯爵はまだ先妻との離婚が成立していないため、ジャンヌを妻にすることはできない。そこで、彼は急いで田舎に住む独身の兄ギヨーム(ノエル・ロクヴェール)を呼び寄せ、ジャンヌと結婚させる。
 かくして、後は公妾の正式発表を待つだけになったジャンヌとルイ15世。ところが、今度はジャンヌが自分の本当の出自や一連の偽装工作について国王に全て話してしまったことから、2人は喧々諤々の大喧嘩を繰り広げてしまう。さらに、ショワズール公爵とグラモン侯爵夫人がパリ中の業者に手を回したことから、公妾の発表式典へ出向くための馬車はおろか、ドレスの仕立屋も髪結いも全てドタキャンされてしまった。果たして、ジャンヌはこの絶体絶命のピンチをどうやって乗り切るのか…?
 さらには、王位後継者ルイ・オーギュストのもとに嫁いできたマリー・アントワネット(イザベル・ピア)がジャンヌを目の敵にし、ショワズール公爵らと結託して彼女を宮廷から追い出そうと画策する…。

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ジャンヌを警戒するショワズール(M・セラート)とグラモン夫人

宮廷の貴族たちはジャンヌに軽蔑の眼差しを向ける

大急ぎでデュバリー伯爵の兄と結婚するジャンヌ

公妾の発表式典に出席するため身支度を整える

<Information>
 クリスチャン=ジャック監督とマルティーヌ・キャロルのコンビ作は、日本でも大ヒットした「ボルジア家の毒薬」に続いてこれが2作目。しかも当時、私生活では結婚したばかりだった。それだけに、監督はマルティーヌのチャーミングでセクシーな魅力を存分に引き出しているし、彼女もまた夫の熱烈な愛情と期待に応えるかのごとく生き生きとした演技を披露。コメディエンヌとしての抜群の才能も見せつけ、単なるセクシー女優ではなかったことを強く知らしめてくれる。
 脚本には戦前の傑作「舞踏会の手帖」('37)や「北ホテル」('38)で有名な大御所アンリ・ジャンソンが参加。彼は「女優ナナ」や「戦場を駆ける女」('61)、「黒いチューリップ」('63)などでもクリスチャン=ジャックと組んでいる。また、同じく脚本に加わったアルベール・ヴァランタンも、次回作「女優ナナ」で再登板している人物だ。
 さらに、ジャン・ルノワールやマックス・オフュールス、ジャン・コクトーら巨匠の名作・傑作を数多く手がけた名カメラマン、クリスチャン・マトラが撮影監督を担当。彼もまた、「花咲ける騎士道」('52)など50年代のクリスチャン=ジャック監督作品には欠かせない常連組と言えよう。
 そのほか、コクトーの「美女と野獣」('46)やヴィスコンティの「夏の嵐」('54)で知られるマルセル・エスコフィエとルノアールの「恋多き女」('56)を手がけたモニーク・プロタンが衣装デザインを、クリスチャン=ジャック監督作品の常連組ロベール・ギイが美術デザインを、ルネ・クレマンの「鉄路の闘い」('45)などのジャック・デサノーが編集を、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーやジャック・ベッケルとの仕事も多いジョルジュ・ヴァン・パリスが音楽スコアを担当。当時のフランス映画界が誇る超一流の職人スタッフが勢ぞろいしている。

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ベルサイユでは大勢の貴族たちが待ち構えていた

晴れて公妾として認められたジャンヌ

マリー・アントワネット(I・ピア)はジャンヌを毛嫌いする

それでも仲睦まじいルイ15世とジャンヌだったが…

 '50年代のフランス映画界で最高のセックスシンボルと呼ばれたマルティーヌ・キャロルの相手役として、チャーミングで憎めないルイ15世役に扮しているのは、ジョセフィン・ベイカー出演のサイレント映画「モン・パリ」('27)でハンサムな舞台俳優役を演じていたアンドレ・リュゲ。一時はハリウッド映画でも活躍したことのある戦前の人気映画スターだ。
 さらに、己の利益のためにジャンヌを利用する貧乏貴族デュバリー伯爵を演じているのは、「巴里の空の下セーヌは流れる」('51)の医学生役や「ボルサリーノ2」('74)のファンティ警視正役で知られる名脇役ダニエル・イヴェルネル。ジャンヌのライバルであるグラモン侯爵夫人役には、当時イタリアを代表するグラマー女優だったジャンナ・マリア・カナーレが起用されている。
 そのほか、ショワズール公爵にはハリウッド映画への出演も多かったイタリアの大御所俳優マッシモ・セラート、リシュリュー役にはデュヴィヴィエの「埋れた青春」('53)にも出ていた老優ドニ・ドイネ、グールダン夫人役には無名だったココ・シャネルを有名にさせたことでも知られる舞台の伝説的大女優ガブリエル・ドルジア、デュバリー伯爵の兄ギヨームにはサッシャ・ギトリのお気に入りだった舞台俳優ノエル・ロクヴェール、リシュリューの片腕レベルには「花咲ける騎士道」や「フレンチ・カンカン」のジャン・パレデ、金銭と引き換えにジャンヌの後見人を引き受ける老貴婦人には「女優ナナ」にも出ていたマルゲリート・ピエリ、マリー・アントワネットには「わが青春のマリアンヌ」('55)で主人公に横恋慕する美少女役が印象深いイザベル・ピアが出演。さらに、'60年代のイタリア映画を代表する美人スターとなるジョヴァンナ・ラッリが、ジャンヌの親友のお針子娘役として顔を出している。

 

 

The System (1964)
(aka The Girl-Getters)
日本では劇場未公開・テレビ放送なし
VHS・DVD・BDいずれも日本未発売

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(P)2010 VCI Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/スクィーズ収録/画面比:1.78:1/音声:モノラル/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/87分/制作国:イギリス

<特典>
なし
監督:マイケル・ウィナー
製作:ケネス・シップマン
脚本:ピーター・ドレイパー
撮影:ニコラス・ローグ
音楽:スタンリー・ブラック
主題歌:ザ・サーチャーズ
出演:オリヴァー・リード
   ジェーン・メロウ
   バーバラ・フェリス
   ジュリア・フォスター
   ハリー・アンドリュース
   アン・リン
   ジョン・アルダートン
   デヴィッド・ヘミングス

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行楽シーズンを迎えたイギリス南部の田舎町に観光客が押し寄せる

女たらしのプレイボーイ、ティンカー(O・リード)

仲間たちとともにガールハントに余念がない

<Review>
 日本では未公開のままに終わったオリヴァー・リード主演作。監督は当時のイギリス映画界で新進気鋭の若手監督として、内外で高い評価を得ていたマイケル・ウィナー。「ジョーカー野郎」('66)や「脱走山脈」('68)など後に数々の名作を生むことになる2人の初コンビ作であり、ほろ苦いひと夏の恋愛模様に痛烈な社会風刺を絡めた青春ドラマである。
 舞台はイギリス南部の避暑地。主人公ティンカーは自他ともに認めるやり手のプレイボーイで、今日も仲間の若者たちを引き連れてガールハントに余念がない。なぜなら、夏場の行楽シーズン以外は閑散とする田舎町に住む彼らにとって、それが年に一度で唯一の刺激だったからである。
 そんなある日、ティンカーはニコラという上流階級の娘と知り合う。裕福な家庭に生まれ育ち、ファッション・モデルとして世界を飛び回るほどの美貌の持ち主、しかも自由奔放で自信に満ち溢れた彼女は、ティンカーがこれまで出会ったことのないタイプの女性だった。初めはいつもの遊びのつもりだった彼だが、いつしか彼女のことを本気で愛するように。だが、2人の関係が深まれば深まるほど、彼はニコラと自分を隔てる見えない壁を痛感せざるを得なくなるのだった。
 タイトルの“The System”とはティンカーが編み出した観光客の女性を口説き落としてベッドインするまでの手練手管のことだが、同時に主人公たちを取り巻く階級や婚姻などの伝統的社会システムのことも意味する。恋愛や結婚の古臭い価値観を真っ向から否定し、富や権力を皮肉交じりの冷ややかな目で見つめ、一匹狼の反逆児を気取ってみせるティンカーは、言うなれば'60年代当時の“今どきの若者”だ。
 しかし、あらゆる面で恵まれた女性ニコラに深入りすればするほど、彼は自分がいかにちっぽけで無意味な存在なのかということを、否応なく自覚させられていく。そして、バカな観光客を手玉にとっているつもりだったはずが、自分たちこそ実は観光客のいい慰みものなのだということを思い知らされる。結局は、井の中の蛙に過ぎない下層階級の田舎者なのだと。
 '50年代の“怒れる若者”と呼ばれるムーブメントで旧態然とした社会システムに怒りの反旗を翻したイギリス映画界だが、本作では従来の価値観が急激に変化しつつあった'60年代の刹那的かつ享楽的な若者像を赤裸々に描きつつ、それでもなお根本的に変わらないイギリス社会の不平等というものを、主人公ティンカーの無力感や焦燥感を通して浮き彫りにしていく。小粒ながらも鋭く風刺の効いた佳作である。

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仲間のニッジ(J・アルダートン)は恋人を妊娠させてしまった

自由奔放で遊び慣れた令嬢ニコラ(J・メロウ)に惹かれるティンカー

セックスと結婚を結びつけてしまう平凡な女の子ローナ(J・フォスター)

<Story>
 夏の到来とともに、イギリス南部の田舎町ロクサムへ大勢の観光客が押し寄せる。ビーチリゾートが唯一の産業であるこの町にとって、行楽シーズンはまさしく年に一度の書き入れ時だ。冬場は暇を持て余すしかない住人たちも、ここぞとばかりに大忙し。そんな中に、ティンカー(オリヴァー・リード)をリーダーとする若者グループの姿もあった。
 観光客向けに記念写真を撮るティンカーを筆頭に、それぞれバーテンや土産物売りなどをして働く若者たちだが、彼らの本当の目的はガールハント。避暑に訪れた女の子たちから言葉巧みに宿泊先を聞き出し、ひと夏のアバンチュールを楽しもうというのである。なにしろ、観光シーズン以外は閑散とした場所ゆえ、地元の若者たちにとっては夏場の女遊びが唯一の楽しみだったのである。
 いつものように駅で観光客を物色していると、ティンカーは周囲と明らかに違う雰囲気の女の子に目を奪われる。それは、あくまでも庶民向けの避暑地に似つかわしくないゴージャスな女の子。高級リムジンに乗った彼女はニコラ(ジェーン・メロウ)といい、町外れに豪華な別荘を持つ大富豪グリブ氏(ジョン=ポーター・デヴィッドソン)の娘だった。
 早速、お揃いの洒落たブラックスーツで着飾ってグリブ氏のパーティへ潜入する若者たち。ティンカーはなに食わぬ顔でニコラに近づいた。そんな彼の目論見と下心を十分承知の上で誘いに乗ってみせるニコラ。彼女はティンカーがこれまでに出会ったことのない、自由奔放で遊び慣れた上流階級のお嬢様だった。
 そもそも、この辺りにやって来る女の子たちといえば平凡な中流階級ばかり。セックスと恋愛や結婚を結びつけるような、それこそついこの間ベッドに連れ込んだローナ(ジュリア・フォスター)のような、見た目は悪くなくても中身は全くイカしてない女の子ばかり。たちまちティンカーはニコラに惹きつけられていった。
 一方、仲間のニッジ(ジョン・アルダートン)は恋人を妊娠させてしまい悩んでおり、女友達スージー(バーバラ・フェリス)は自分も男の子達みたいに出会いが欲しいと願い、ティンカーのオフシーズンのセックス相手である人妻エラ(アン・リン)は仕事人間である芸人の夫に愛想を尽かしていた。賑やかで活気あふれる真夏のリゾート地も、一皮剥けば人々の生々しい欲望や不満が渦巻いていたのである。
 そんな友人や知人たちを尻目に、ニコラとの優雅なアバンチュールを楽しむティンカー。しかし、彼女の素顔や生活を知れば知るほど、彼はニコラと自分との間に見えない壁が立ちはだかることを感じていく。ファッションモデルとして世界を旅し、リッチな上流階級の世界に暮らす彼女と比べれば、いくら女たらしのプレイボーイなワルを気取ってみたところで、所詮自分などは負け犬の田舎者に過ぎないことを身につまされるのだ。
 それゆえ、グリブ氏の前では反権力志向のアウトサイダーみたいに振舞ってみたり、リッチなニコラの友人たちに喧嘩をふっかけてみたりと、プライドを保つために愚かな抵抗を試みるティンカーだったが、結局はコテンパンにやり込められてしまい、己の無力を痛感せざるを得なくなってしまう。それでもなお、自分とニコラは似た者同士で心身ともに通じ合っていると思っていた彼だったが…。

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ティンカーはニコラのことを本気で愛してしまう

問題ばかり起こすティンカーを叱責する上司ラーセイ氏(H・アンドリュース)

ニコラの父グリブ氏(J=P・デヴィッドソン)に反逆児ぶってみせるティンカー

<Information>
 日本では「妖精たちの森」('71)や「狼よさらば」('74)などの、過激なバイオレンス映画やエロス映画で知られるマイケル・ウィナー監督。個人的には好きな作品の多い映画監督ではあるのだが、特に晩年は批評的にも興行的にも失敗作が続いたこともあって、正直なところ映画ファンからの評価はあまり芳しくない。しかし、イギリスからハリウッドへ拠点を移す以前の彼は、それこそカレル・ライスやトニー・リチャードソンなどの系譜に属する映画作家として高い評価を受けていたのである。題材的にルイス・ギルバート監督の名作「アルフィー」('66)を先駆けたような本作は、当時の野心的で切れ味鋭い彼の作家性を知る上で重要な映画の一つと言えるように思う。
 脚本を手がけたのは、同じくウィナー監督と組んだ「明日に賭ける」('67)やロバート・エリス・ミラー監督の「きんぽうげ」('72)などで知られるピーター・ドレイパー。映画よりもテレビでの仕事が多い人だったようだ。また、カメラマン時代の巨匠ニコラス・ローグが撮影監督を担当し、イージー・リスニングの作曲家や指揮者としても有名なスタンリー・ブラックが音楽スコアを手がけている。主題歌“The System”を演奏しているのは、ビートルズに次いで世界的な成功を収めたリヴァプール系バンド、ザ・サーチャーズ。アップテンポなモッズナンバーでありながら、そこはかとなく哀愁を漂わせたメロディが秀逸だ。

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ティンカーは裕福で恵まれたニコラの友人たちに敵意をむき出しにする

夏の終わりが近づく中、ニッジの結婚式が盛大に行われる

ニコラとの関係もこのまま続くわけなどなく…

 主演は当時26歳の怪優オリヴァー・リード。ハマー・フィルムの「吸血狼男」('61)で脚光を浴びた彼にとって、非ホラー映画への主演はこれが初めてだった。文字通り野獣系のマッチョ俳優として売り出していた当時の彼だが、本作では女たらしのプレイボーイという新境地に挑戦しており、これがなかなかの好演だったりする。眼力の強さもかなりのインパクトで、どことなく屈折したアウトロー的な雰囲気をよく醸し出していると言えよう。
 自由奔放で大人びた富豪令嬢ニコラを演じているのは、「冬のライオン」('70)の国王ヘンリー2世の愛人アレース役でゴールデン・グローブ賞候補になった女優ジェーン・メロウ。さらにミュージカル映画「心を繋ぐ6ペンス」('67)のヒロイン役で有名なジュリア・フォスター、オスカー・ウェルナー共演の恋愛映画「雨のしのび逢い」('68)が印象深いバーバラ・フェリス、「ニコライとアレクサンドラ」('71)や「スーパーマン」('78)などでお馴染みのハリー・アンドリュース、イギリスでは後にテレビ俳優として売れっ子になったジョン・アルダートンなどが共演。そして、当時まだ無名だったデヴィッド・ヘミングスが仲間グループの最年少メンバーとして顔を出しており、それこそまるで天使のような美青年ぶりを披露している。

 

 

Four In The Morning (1965)
日本では劇場未公開・テレビ放送もなし
VHS・DVD・BDいずれも日本未発売

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(P)2010 VCI Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/スクィーズ収録/画面比:1.78:1/音声:モノラル/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/90分/制作国:イギリス

<特典>
なし
監督:アンソニー・シモンズ
製作:ジョン・モリス
脚本:アンソニー・シモンズ
撮影:ラリー・パイザー
音楽:ジョン・バリー
出演:アン・リン
   ジュディ・デンチ
   ノーマン・ロドウェイ
   ブライアン・フェラン
   ジョー・メリア

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ある朝、テムズ川のほとりで若い女性の溺死体が発見される

バーの営業を終えたホステス(A・リン)

主婦(J・デンチ)は子育てのストレスに悩んでいた

<Review>
 今やアカデミー賞の常連となったイギリスの大女優ジュディ・デンチの映画デビュー作である。ある日の早朝のロンドン、平凡な男女2組の心のすれ違いを通して、徐々に変わりつつあった当時の男と女の価値観、そしてその埋められない溝を浮き彫りにした小品だ。
 朝もやの立ち込める午前4時のロンドン。テムズ川のほとりで女性の溺死体が発見される。その頃、閉店したバーのホステスは出勤前の恋人と落ち合い、つかの間の時間を一緒に過ごすことになる。恋人への愛情を感じつつも、深い関係へ踏み込めずに躊躇する彼女。女性も自立して生活できないといけない、愛があれば生きていけるほど社会は甘くない、簡単に体を許して子供が出来てしまったら今の生活が壊れてしまう、そう考える彼女にとって、ロマンティストで情熱的な彼との関係は楽しいけれど不満でもあった。彼女には2人の安定した将来を約束する確証が必要だったのだ。
 一方、育児ストレスに悩まされている主婦は、夜泣きの止まらない幼い娘に困り果てていた。夫は親友と夜遊びに出かけたまま。ようやく娘を寝かしつけたと思ったら、朝帰りの夫と友人が騒いで起こしてしまった。夫が悪い人でないことは分かっている。しかし、家事も子育ても彼女に任せっきりで何も手伝ってくれない。精神的にギリギリまで追い詰められた妻はそのことをなじるが、大人になりきれない夫は一切耳を貸さないばかりか逆に怒り出してしまう。
 作風としてはフランスのヌーベルバーグを意識したようにも思える。ストーリーに明確な起承転結はなく、日常の断片を切り取って淡々と見せていくのだ。それだけに見る側の忍耐力も求められるかもしれない。しかし、今となっては時代遅れに感じられるとはいえ、いわゆるウーマンリブの発芽を如実に感じさせるテーマは非常に興味深く、スタイリッシュなカメラワークで捉えられた当時のロンドン下町の景色も魅力的。また、最後まで身元が明かされない女性の溺死体が2つのストーリーを繋ぐ役割を果たし、旧来の封建的な価値感の犠牲になった女性を体現する存在として象徴的に扱われている点も面白い。
 なお、ロカルノ映画祭でグランプリに輝いた本作は、当時31歳のジュディ・デンチに英国アカデミー賞の新人賞をもたらした。その後、「眺めのいい部屋」('85)や「ハンドフル・オブ・ダスト」('88)で各演技賞を席巻するまで映画界では地味な地位に甘んじ続けた彼女だが、ここでは生活の全てを一人で抱えて壊れかけてしまった平凡な主婦の苦悩を体当たりで演じており、コワモテの老女を重厚に演じることが多い現在とのギャップにも興味をそそられる。

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大人になりきれない夫(N・ロドウェイ)は親友と朝まで遊んでいる

ホステスは出勤前の恋人(B・フェラン)と落ち合うことにした

盗んだボートでテムズ川の川下りを楽しむ2人

<Story>
 午前4時のロンドン。テムズ川のほとりで若い女性の溺死体が発見される。警官たちは遺体をボートへ乗せて波止場まで運ぶ。身元を確認できるようなものは何もなかった。その場で検視官が遺体の状況をチェックし、とりあえず事件性のないことを確認する。女性の死体は棺桶に入れられて警察署へ。捜査のために指紋を採取したあと、身元不明のまま遺体安置所に保管された。
 その頃、バーで働くホステス(アン・リン)は仕事を終え、出勤前の恋人(ブライアン・フェラン)と落ち合う。バーから出てきた彼女を嬉しそうに出迎える彼だったが、彼女はあまり気乗りがしないようだ。なぜそんなに働くのかという彼の素朴な疑問に、彼女は女性の自立の必要性や社会の厳しさを説く。
 現実主義者の彼女とは対照的にロマンチストな彼は、久しぶりに彼女と会えて素直に喜んでいる様子だったが、手をつないだりキスしようとしたりする彼に彼女はつれない態度を取る。それにもめげず楽観的で優しい彼に、やがて微笑みを浮かべるようになる彼女。喫茶店で一服した2人は人気の少ない朝の街角を歩き、ボートを盗んでテムズ川の川下りを楽しむ。いつしか激しく唇を重ね合わせる2人。だが、我に返った彼女は彼を突き放す。
 情熱のおもむくままに愛を求める彼だったが、彼女はそんな彼に対して不安をぬぐい去れなかった。世の中は愛だけでは生きていけない。彼女にはもっと確実な何かが必要だった。気まずい思いをした2人だが、彼女はそれでもなお優しい彼を愛さずにはいられない。お互いに手を取り合った2人は朝市で新鮮な果物や野菜を買い、まるで夫婦のように肩を寄せ合う。だが、その幸せな時間がかえって彼女を不安にさせるのだった…。
 一方、狭いアパートに暮らす主婦(ジュディ・デンチ)は幼い娘の夜泣きに悩まされていた。明け方になっても娘は泣き止まず、イライラいするばかりの彼女。夫(ノーマン・ロドウェイ)は親友(ジョー・メリア)と夜遊びに出かけたままだ。ようやく娘が落ち着いて眠り始めたと思ったら、その夫が親友を連れて帰ってきた。
 朝っぱらから子供のようにはしゃいで騒ぎ回り、せっかくウトウトしかけた幼い娘を起こしておきながら、一緒にもう一杯酒でもどうだい?と無邪気に妻を誘ってみせる夫と親友。父親としての自覚が全くない夫に妻は呆れ果てる。しかも、彼は妻が腹を立てている理由にもピンと来ていない様子。悪い人じゃない。そう分かっているからこそ、なんとか怒りを静めることの出来た妻だったが、どうにもこうにもイライラは隠せなかった。
 しかし、親友のことばかり気にかけて自分の悩みをろくに聞いてくれない彼に、妻はついにブチ切れた。子育てはおろか家事も一切手伝ってくれない夫に日頃の不満をぶちまける妻。全てを私に押し付けて自分は朝まで帰ってこない。このままじゃ私は頭がおかしくなってしまう。
 すると、夫も妻の言葉に逆ギレする。お前がそんな態度だから家に帰りたくなくなるのだと。俺は仕事をしているんだから、妻が子育てや家事をするのは当たり前だろう。俺だってこんな掃き溜めみたいな場所で惨めな人生を送りたくない。もっと自由になりたいんだ。そう吐き捨てて夫は親友とともに家を出てしまう…。

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現実主義者の彼女とロマンチストな彼との間には深い溝が…

父親としての自覚のない夫に妻は呆れ果てる

子供じみた夢想家の夫は妻の苦悩を理解してくれない

<Information>
 監督と脚本を手がけたのは、ピーター・セラーズ主演の小品佳作「別れの街角」('73)で知られるアンソニー・シモンズ。どことなくフランス映画を思わせる洗練された映像タッチは彼の個性なのだろう。決定的な代表作には恵まれなかったが、ジョン・ハート扮する犯罪者が幼い少女たちに翻弄される後期の「あどけない殺意」('88)など地味ながらも優れた作品を残しており、もっと評価されて然るべき映画監督ではないかと思う。
 撮影監督は「裸足のイサドラ」('68)や「ファントム・オブ・パラダイス」('73)のラリー・パイザー。シモンズ監督とは「別れの街角」でも組んでいる。さらに、編集にはキャロル・リード監督の「邪魔者は殺せ」('47)でアカデミー賞候補になったファーガス・マクドネル、美術監督はケン・ローチの「夜空に星があるように」('68)のバーナード・サロン。そして、当時007シリーズで脚光を浴びていたジョン・バリーが音楽スコアを担当。これまたヌーベル・バーグっぽいジャジーでクールで渋いサウンドを聴かせてくれており、どことなくメランコリックな風情を漂わせたメロディがとても印象深い。
 ジュディ・デンチと実質的にダブル主演を務めているのは、「殺しか現金(ぜに)か」('62)のヒロイン役や「暗闇でドッキリ」('64)のメイド役などで知られる女優アン・リン。結婚適齢期を過ぎつつあるホステスの、真剣だからこそ恋愛に躊躇してしまう複雑な心情を演じており、当時のモニカ・ヴィッティ辺りを彷彿とさせるアンニュイなムードがなかなかいい。
 そのほか、ピーター・コリンソン監督の「密室」('67)でレイプ魔の1人を演じたノーマン・ロドウェイがジュディ・デンチの夫役を、テレビの脚本家としても知られるブリアン・フェランがアン・リンの恋人役を、「唇からナイフ」('66)や「素晴らしき戦争」('69)などに出ていたジョー・メリアが夫の親友役を演じている。

 

 

青い騒音
All The Right Noises (1969)
日本では劇場未公開・テレビ放送なし
DVDのみ日本版発売済

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(P)2010 Jet Rink/Pony Canyon (Japan)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/音声:モノラル/言語:英語/字幕:日本語/地域コード:2/87分/制作国:イギリス

<特典>
フォト・ギャラリー
監督:ジェリー・オハラ
製作:サイ・リトヴィノフ
脚本:ジェリー・オハラ
撮影:ジェリー・フィシャー
音楽:メラニー
出演:オリヴィア・ハッセー
   トム・ベル
   ジュディ・カーン
   ジョン・スタンディング
   レスリー=アン・ダウン
   ロバート・キーガン

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テレビや舞台の照明技師として働く平凡な男レン(T・ベル)

仕事先の舞台で知り合った無名の若手女優ヴァル(O・ハッセー)と親しくなる

しかし、レンには愛する妻ジョイ(J・カーン)がいた

<Review>
 名作「ロミオとジュリエット」で大ブレイクしたオリヴィア・ハッセーが、その直後の1969年にイギリスで撮影した主演作第2弾。日本では劇場未公開、テレビ未放送のまま'10年にDVDリリースされて陽の目を見た作品だが、どうやら本国イギリスでも'71年に劇場公開されるまでお蔵入りしていた模様。30代の既婚男性と10代の少女の人目を忍ぶロマンスを描いた恋愛映画である。
 舞台はロンドン。妻子ある30代の照明技師レンは、実の父親の浪費癖などに悩まされながらも、平凡で慎ましい生活を送っていた。そんなある日、彼は友人の代理で照明係を担当したミュージカル劇に出演中の若手女優ヴァルと知り合い、無邪気で愛らしい彼女に強く惹かれるものを感じる。一方のヴァルもまた、知的でハンサムな年上のレンに憧れを抱いていた。たちまち燃え上がる恋の炎。だが、2人の間にはレンの家庭以外にもさらに大きな障壁あった。というのも、ヴァルはまだ15歳の未成年だったのである…。
 日本語タイトルやストーリー内容からして、ソフトポルノ的な初体験ものや禁断の不倫ドラマを連想する向きもあるかもしれないが、これが意外なくらい(?)に地味で真っ当な作品。確かに道ならぬ恋を描いてはいるものの、主人公たちのロマンスは禁断の関係と呼ぶにはなんとも奥ゆかしいものがある。とりあえず肉体関係は結んでしまうものの、もちろん直接的な描写もなく辛うじて匂わすのみ。物語全般を通してドラマティックな展開があるわけでもなく、後ろめたさを感じつつも惹かれ合わずにはいられない男女の切ない感情のひだを淡々と描いていくのだ。
 自分の日常や身の回りに足りない何かを恋愛に求めてしまうのは人間の性(さが)かもしれないが、結局それはないものねだりにしか過ぎない。たとえ平凡な毎日であっても、今あるささやかな幸せをしっかりと守るべきじゃないか。そんな意外とモラリスティックな映画なので、くれぐれもオリヴィアの初々しいヌードなどは期待せぬように。ひとまず70年代ロンドンの庶民生活や風俗がたっぷりと盛り込まれているので退屈はしないが、かといって特筆すべき点もない作品。主演2人の好演に救われている部分もかなりあるように思う。

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妻や子供たちと質素ながらも幸せな家庭を築いてきたレン

ギャンブル中毒で根無し草の父親(R・キーガン)が唯一の頭痛の種だった

レンはヴァルが15歳の未成年だと知って戸惑う

<Story>
 舞台やテレビの照明技師として働いている男レン(トム・ベル)は、友人のピンチヒッターとしてミュージカル劇の仕事を引き受ける。そこで彼は、脇役の1人として出演しているキュートな若手女優ヴァル(オリヴィア・ハッセー)と親しくなった。公演終了後に2人で近くのパブへ寄り、夜道は危険だからと彼女を自宅まで送り届けることにしたレン。その道すがら、冗談を交わしながらじゃれあう2人は、いつしかお互いの唇を重ね合わせていた。
 しかし、レンは家庭のある身だった。テレビのCMタレントをしている妻ジョイ(ジュディ・カーン)はしっかり者の良妻賢母で、5歳の長女と7ヶ月の次女はまだまだ可愛い盛り。贅沢のできるような身分ではないものの、平凡なりに幸せな家庭生活だ。そんなレンにとって唯一の悩みの種は、ギャンブル好きで根無し草の父親(ロバート・キーガン)。競馬でスってはレンのところへ金の無心に来るのだが、母親が病院で死にかけている時にもパブで飲んだくれていた父親のことを、彼は今も許せないでいた。
 ある日、レンは制服姿のヴァルを見かけて驚く。本人に問い詰めたところ、彼女はまだ15歳だった。あとちょっとで16歳になるからと、まるで子供扱いしないでくれと言わんばかりのヴァルだったが、さすがに未成年を相手の火遊びは躊躇われる。彼女の一途な恋心を受け止めていいものか迷ったレンは、彼女が劇団と一緒に巡業へ出ることを知り、しばらく距離を置こうと申し出るのだった。1週間もすれば俺のことなど忘れてしまうさ、と。
 愛する家族のもとへ戻ったレンだったが、どうしても彼女のことが頭から離れない。気晴らしに妻と娘たちを連れて海岸へ水遊びに出かけるが、それでもヴァルへの思いは冷めやらなかった。結局、彼は劇団の地方巡業についていくことにする。妻もCM撮影のためマヨルカ島へ行くことになった。早る気持ちを抑えながら、レンは劇団の一行と共に列車へ乗り込む。
 巡業中はひと目もはばからずデートを重ねるレンとヴァル。後ろめたさを感じているレンに対し、無邪気なヴァルは嬉しさを隠せない様子だった。そんな彼女を劇団仲間のローラ(レスリー=アン・ダウン)は心配し、なにかとレンに釘を刺すのだが、2人の恋心は止められない。やがてある晩、ロンドン近郊の町での公演を終えた2人。レンはヴァルを自宅へ招き入れ、彼らはついに一夜を共にする…。

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年上のレンに一途な気持ちを傾けるヴァル

家族と水入らずで過ごしながらもヴァルのことが頭から離れないレン

何も知らない妻に見送られてレンは劇団の巡業に加わる

<Information>
 監督と脚本を手がけたのは、ハーレクイン・ロマンスの映画化第1号「雪物語」('77)や、ジョーン・コリンズ主演の熟女ソフトポルノ「ザ・ビッチ/淫らな欲望」('78)などで知られるジェリー・オハラ。良くも悪くもベタな商業路線を貫いた人だが、本作は彼のフィルモグラフィーの中でも比較的異質な部類に入るかも知れない。
 製作は「時計じかけのオレンジ」('71)の映画化権を獲得してキューブリックに演出させたサイ・リトヴォノフ。もともと映画界や演劇界の大物を数多く顧客に抱える凄腕弁護士だった彼は、ニコラス・ローグとの関わりが深かったらしく、「美しき冒険旅行」('71)や「地球に落ちて来た男」('76)にも出資していた。ただ、製作者としては映画よりも舞台の方に重点を置いていたようだ。
 さらに、ジョセフ・ロージーやリチャード・レスターに重用されたカメラマンで、「恋」('71)と「スカイエース」('76)で英国アカデミー賞候補になったジェリー・フィシャーが撮影監督を担当。「屋根の上のバイオリン弾き」('71)や「遠すぎた橋」('77)などで有名なアントニー・ギブスが編集を、「フランス軍中尉の女」('81)や「エメラルド・フォレスト」('85)のテリー・プリチャードが美術監督を、そして女性シンガーソングライターのメラニーが主題歌と音楽スコアを手がけている。

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巡業の合間に急接近していくレンとヴァル

日常を忘れて2人だけの時間を過ごす

レンはついにヴァルを自宅へ招き入れる

 本作撮影当時のオリヴィア・ハッセーは18歳。ジュリエット役とは打って変わって駆け出しの売れない女優を演じているわけだが、その完全無欠の美少女ぶりは全くもって遜色なし。恋した相手を切なげに見つめる眼差しは、誰もが思わずキュンとさせられるはずだ。
 一方、そんなオリヴィアに惚れられてしまう年上の男性レンを演じているトム・ベルは、当時のイギリスで社会派ドラマ映画の労働者役を中心に親しまれた名優。アメリカのミニシリーズ「ホロコースト」('78)のナチ将校アイヒマン役や、ヘレン・ミレン主演の「第一容疑者」シリーズの嫌味な部下オトリー役などで記憶している人も多いのではないだろうか。俗に言う美男子ではないものの、生活感を滲ませた雰囲気ハンサムといった風貌が、作品にリアリズムを与えている。
 また、明るくて夫想いなレイの妻ジョイ役には、アメリカのテレビを中心にコメディエンヌとして活躍したジュディ・カーン、レンの父親役には「わらの犬」('71)にも出ていたロバート・キーガン。さらに、当時まだ無名だったレスリー=アン・ダウンがヴァルの親友ローラ役で顔を出している。

 

 

さらば夏の日
Du soleil plein les yeux (1969)
日本では1970年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P) Jett Rink/Pony Canyon (Japan)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
カラー/スタンダードサイズ/画面比:1.33:1/音声:モノラル/言語:フランス語/字幕:日本語/地域コード:2/83分/制作国:フランス

<特典>
フォトギャラリー
監督:ミシェル・ボワロン
製作:フランシス・コーヌ
脚本:アネット・ワドマン
   ミシェル・ボワロン
撮影:ジャン=マルク・リペール
音楽:フランシス・レイ
出演:ルノー・ヴェルレー
   フロランス・ラフュマ
   ジャネット・アグレン
   ベルナール・ルコック
   ジャン・フェルニオ
   マルティヌ・サルセー
   カトリーヌ・ソラ

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前途有望な若き医師ヴァンサン(R・ヴェルレー)

母親(M・サルセー)は離婚してからふさぎがちになった

大学受験に挑んだ弟ベルナール(B・ルコック)

父親(J・フェルニオ)が再婚相手を連れてやって来る

<Review>
 本国フランスではあまりパッとしなかったものの、なぜか日本では大ヒットを記録した恋愛映画。「小さな恋のメロディ」を例に出すまでもなく、ヨーロッパ映画全盛期の当時は少なからずそういう作品が
存在した。本作の場合は、主演が日本で大人気だった2枚目俳優ルノー・ヴェルレーであること、フランシス・レイによる日本人好みの甘く切ないテーマ曲、そしてフランスの古都レンヌや南ヨーロッパの避暑地を舞台にしたロケ地のロマンティックな美しさ。言うなれば、ヨーロッパに憧れる当時の日本人の大好きな要素が目一杯詰まった映画だったわけだ。
 主人公はヴェルレー扮する若きドクター、ヴァンサン。生真面目な彼は、離婚して別の女性と一緒になった父親のことを今も恨み続けていた。ところが、夏休みに恋人と弟を連れてヨット旅行へ出かけた彼は、旅先の避暑地で出会った自由奔放なスウェーデン美女モニカに惹かれ、それが原因で恋人ジュヌヴィエーヴと別れることになってしまう。理屈ではない恋愛の複雑さと難しさを初めて経験した彼は、ようやく父親の気持ちを理解するようになる…。
 という、今となってはなんともシンプルでナイーブなお話だ。当時の欧米はといえば、ラブ&ピースなフリーセックスの時代へ突入していた頃。旧世代や田舎の観客ならばともかく、恐らく当時ですらトレンドに敏感な若い世代からは、保守的で古臭い映画だと思われたのではなかろうかと思う。これがイタリア映画だったら、きっと全く違った内容になっていたに違いない。
 それはともかく、映画作品としては正直なところ凡庸。ミシェル・ボワロン監督の演出は単調で個性がなく野暮ったい。ただし、美しいロケーションを捉えたイメージ映像だけは確かに魅力的だ。よくある観光映像の域を出てはいないものの、日本人特有のヨーロッパへの憧憬を刺激するには十分だろう。フランシス・レイの音楽もまた然り。なんとなく雰囲気だけで見せてしまう映画…と言えなくもない。

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受験に失敗した弟をヨット旅行に誘うヴァンサン

ヨットの旅は快適な天候に恵まれた

ヴァンサンらは父親の豪邸を訪れる

父親の新しい家族に馴染めないヴァンサン

<Story>
 フランスはブルターニュ地方の古都レンヌ。ヴァンサン(ルノー・ヴェルレー)は若く有能な医師として精力的に仕事をこなし、研修医ジュヌヴィエーヴ(フロランス・ラフュマ)との職場恋愛も順調だった。そんな彼が心配するのは母親ジャンヌ(マルティヌ・サルセー)のこと。以前は明るく笑顔の絶えない女性だったが、離婚してからはすっかりふさぎ込みがちになってしまった。
 また、大学受験を控えた弟ベルナール(ベルナール・ルコック)のことも気がかり。兄として受験勉強には協力してきたが、なにしろお調子者でそそっかしい弟なだけに、本番でヘマをやらかさないかとハラハラしていたのだ。試験を終えたベルナールは自信満々。その様子を見てホッとするヴァンサンだったが、合格発表までは安心できない。
 その合格発表の当日、父親ジャン(ジャン・フェルニオ)が再婚相手カトリーヌ(カトリーヌ・ソラ)を伴ってレンヌへやって来た。6年ぶりの再会に弟ベルナールは浮き足立つが、ヴァンサンの表情は浮かない。今までほとんど連絡をよこさず、母親を不幸にしておきながら、自分だけは新しい家庭を築いて悠々自適の暮らしを送る父親のことを、彼はどうしても許せなかったのである。
 父親を連れて自宅へ戻ると、母親が暗い表情で待っていた。大学からベルナールの不合格を伝える連絡があったのだ。ガックリと肩を落とすベルナール。気晴らしに夏休みは2人でウチへ来なさいと父親に誘われたヴァンサンだったが、既に恋人ジュヌヴィエーヴとヨット旅行に出かける計画を立てているし、そもそも父親の新しい家庭になど関わりたくない。とりあえず、彼は適当な言い訳をして父親の申し出を断った。
 しかし、それでは弟が可哀想だというジュヌヴィエーヴの説得で考えを変えたヴァンサンは、ベルナールも誘って3人でヨット旅行へ出かけることに。その途中で父親の家へ寄ることを約束する。ヴァンサンと違って父親が大好きなベルナールは大喜びだった。
 ヨット旅行は天候に恵まれ、何事もなく地中海沿岸の父親の豪邸へ到着する。広大な土地を購入した父親は、果樹園でオレンジを栽培して成功していた。ベルナールはカトリーヌや2歳になる腹違いの妹ともすぐに打ち解けたが、ヴァンサンはどうしても馴染むことができない。どうして一度結婚した女性と別れて違う女性を愛することができるのか。そんな彼を見かねた父親は、好きなところへ行けばいいと旅の続行を促す。
 かくして、再びヨットでの旅へ出たヴァンサンとジュヌヴィエーヴ、ベルナールの3人。とはいえ、カップルに同行する身のベルナールとしてはイマイチ面白くない。ヴァンサンは近くの避暑地へ上陸して遊ぶことにした。そこで彼は、ヨットクラブのスタッフでファッションモデルのスウェーデン人女性モニカ(ジャネット・アグレン)と知り合う。
 それとなくお互いに意識しあう2人だったが、ヴァンサンには恋人がいる。事情を察したモニカはベルナールに接近した。何も知らない無邪気なベルナールは、とびっきりの美女に声をかけられて有頂天。ジュヌヴィエーヴもモニカと意気投合し、4人は一緒に旅へ出ることにする。
 真夏の太陽の下、サーフィンにダイビングにとマリンスポーツを満喫する4人。しかし、モニカが本当は自分のことを求めており、自分自身でも彼女に惹かれていることを感じていたヴァンサンは、ベルナールにもジュヌヴィエーヴにも申し訳ないという気持ちが募る。そこで、彼はベルナールやモニカと別行動を取り、ジュヌヴィエーヴと2人きりでモロッコを目指すことにした。
 だが、そのモロッコでヴァンサンはモニカと再会する。ベルナールは旅の途中で知り合った連中とダイビングに出かけてしまったという。気持ちが抑えられなくなったヴァンサンは、ジュヌヴィエーヴに隠れてモニカと1日を過ごし、2人はビーチで熱い口づけを交わすのだった。しかし、夜になってヨットへ戻ったヴァンサンの様子に、ジュヌヴィエーヴは彼の心変わりを察知する。深く傷ついた彼女は、ヴァンサンに別れを切り出すのだった…。

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気晴らしに行楽地を訪れた3人

スウェーデン人の美女モニカ(J・アグレン)と知り合う

意気投合したモニカが合流することに

4人でモロッコを目指して旅を続ける

<Information>
 監督は「この神聖なお転婆娘」('56)や「アイドルを探せ」('63)などのコミカルな大衆娯楽映画で一時代を築いたミシェル・ボワロン。ナタリー・ドロン主演のほろ苦い恋愛映画「個人教授」('68)で新境地を開いた彼が、ドロンの相手役を演じて注目されたルノー・ヴェルレー、テーマ曲を大ヒットさせたフランシス・レイと再び組んだのが本作だったというわけだ。
 そのボワロン監督と共に脚本を手がけたアネット・ワドマンは、巨匠マックス・オフュルスの「たそがれの女心」('53)や「歴史は女で作られる」('56)で有名なベルギー出身の女流脚本家。ボワロン監督とは「殿方ご免遊ばせ」('57)や「パリジェンヌ」('61)などでたびたび組んでおり、前作「個人教授」にも参加していた。
 製作のフランシス・コーヌはミシェル・メルシエ主演の大ヒット歴史ロマン「アンジェリーク」シリーズで名高いプロデューサー。「別れのスキャット」('69)や「汚れた刑事(でか)」('70)などイヴ・ボワッセ作品で知られるジャン=マルク・リペールが撮影監督を、「アンジェリーク」シリーズのクリスチャン・ゴーダンが編集を担当している。
 なお、日本での劇場公開版および上記日本盤DVDの本編時間は83分だが、どうやら完全版は100分に及ぶらしい。また、劇場公開当時の画面アスペクト比は1.66:1のヨーロッパ・ビスタ・サイズなのに対し、日本盤DVDではスタンダード・サイズにトリミングされている。

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ヴァンサンとモニカはお互いに惹かれあっていた

ジュヌヴィエーヴ(F・ラフュマ)と2人きりになるヴァンサン

モロッコで再会したヴァンサンとモニカ

傷ついたジュヌヴィエーヴは別れを切り出す

 主人公ヴァンサンを演じているルノー・ヴェルレーは、ボワロン監督の前作「個人教授」でナタリー・ドロンの相手役を演じて注目されたイケメン俳優。「カトマンズの恋人」('69)など当時は立て続けに主演作が作られたものの、その人気は本国よりも日本での方が高かったらしく、後に「愛ふたたび」('71)と「恋の夏」('72)という2本の日本映画に主演している。
 その恋人役を演じているフロランス・ラフュマは本作が映画初出演だったらしく、その後も「続エマニエル夫人」('75)など数本の映画に出ているようだが、詳細についてはよく分からない。弟ベルナール役のベルナール・ルコックは、モーリ・ピアラの「ヴァン・ゴッホ」('91)やクロード・シャブロルの「石の微笑」('04)などに出演しており、セザール賞の助演男優賞を受賞した経験もある名脇役だ。
 そして、一部映画マニアにとって大注目なのが、ヴァンサンを誘惑する自由奔放なスウェーデン娘モニカを演じているジャネット・アグレン。「地獄の門」('80)や「食人帝国」('80)、「ラットマン」('88)など、一時期のイタリアン・ホラーに欠かせない存在として活躍したスウェーデン人女優だ。どちらかというと、ちょっとくたびれた年増のセクシー美女というイメージが強いだけに、まだ若くてピチピチとした彼女はなかなか新鮮である。
 なお、父親役のジャン・フェルニオの本業はジャーナリストで、映画出演は後にも先にもこれ一本だったようだ。

 

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