GRINDHOUSE CLASSICS
PART 2

 

 

Seeds of Evil (1975)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2006 Subversive Cinema (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/ステレオ・モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/87分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー(J・ダレッサンドロ、K・ホートンら出演)
ジョー・ダレッサンドロによる音声解説
ジェームス・H・ケイ監督の音声解説
オリジナル劇場予告編集
タレント・バイオ集
スチル・ギャラリー
監督:ジェームズ・H・ケイ
製作:チャーマー・カークブライドJr
脚本:ジェームズ・H・ケイ
撮影:マイケル・ジンゲイル
音楽:マーク・フレデリクス
出演:キャサリン・ホートン
    ジョー・ダレッサンドロ
    リタ・ガム
    ジェームズ・コンドン
    アン・ミーチャム
    テオドリーナ・ベロ

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優雅な生活を送る実業家ジョン(J・コンドン)と妻エレナ(K・ホートン)

エレンは親友ヘレナ(R・ガム)の美しい庭を見て驚く

 まるで植物と会話をするかのように美しい花々を育てる謎めいた庭師カール。その端整な美貌と彫刻のような肉体、そしてミステリアスな雰囲気は、植物だけでなく上流階級のマダムたちをも魅了していく。それも、文字通り気が狂ってしまうくらいに。彼の正体を突き止めようとした若い主婦は、やがて世にも恐ろしい事実を知ることになる。果たして彼は何者なのか・・・?
 不思議な力を持った正体不明の庭師と、彼に魅了された若い人妻の不条理な関係を描いたファンタジック・ホラー。とてもシュールで風変わりな作品だ。恐らくジェームズ・H・ケイ監督はアート映画を目指したつもりだったのだろう。少なくとも当初のうちは。だからこそ、ウォーホル組のジョー・ダレッサンドロを庭師役に起用したはずだ。
 主演のキャサリン・ホートンによると、ギリシャ神話に出てくるペルセポネの物語をベースにした脚本に惹かれて出演を決めたというが、その上で“結果的に違うものが出来上がってしまった”と素直に認めている。
 実は、この作品には監督自身も製作費を出資していたという。そのため、撮影が進行するにしたがって、自分の投資した金が回収できなかったらどうしよう、という不安を抱くようになり、作品のクオリティよりもコマーシャリズムを重視するようになってしまったらしい。その結果、アート映画とトラッシュ映画をこちゃ混ぜにしたような、実に不可解で歪んだ作品が出来上がってしまったのかもしれない。
 しかも、あちこちの配給会社からことごとく断られ、ようやく配給先が決まったと思ったら、途端に担当者との連絡が取れなくなってしまったのだという。いつの間にか、“The Gardener”というオリジナル・タイトルは“Seeds of Evil”へと変えられてしまい、場末の映画館でひっそりと上映されただけで終ってしまう。
 監督もプロデューサーも借金を抱えたまま2度と映画を作ることが出来なくなり、『招かれざる客』(67年)で脚光を浴びた女優キャサリン・ホートンも、その後数年間仕事にあり付けなくなった。言うなれば、呪われた映画だったのである。
 ただ、映画の出来そのものは必ずしも悪くない。確かにストーリーは不条理で分かりづらい。アート映画にしては内容が下世話過ぎるし、娯楽映画にしては実験的過ぎる。これでは配給会社もマーケティングに苦労するだろう。
 だがその一方で、怪奇幻想の世界にエロスとバイオレンスを融合させた映像は、ホドロフスキーやアルジェントを彷彿とさせるものがあって興味深い。原色を散りばめたサイケデリックな色彩感覚や、スタイリッシュなファッションとアート・デザイン、モンドでグルーヴィーな音楽スコアなど、この時代のカルト映画が好きな人にとってはたまらない要素が盛りだくさん。imdbでの評価はかなり低いみたいだが、個人的には改めて再評価されるべき作品ではないかと思う。

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物静かで謎めいた雰囲気の庭師カール(J・ダレッサンドロ)

エレンはカールの魅力にハマっていく

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使用人サルヴァドールが原因不明の急病で倒れた

エレン自身も次第に不可解な行動を取るようになる

 舞台はコスタリカ共和国の首都サン・ホゼ。裕福な実業家ジョン・ベネット(ジェームズ・コンドン)と妻エレン(キャサリン・ホートン)は、優雅で満ち足りた生活を送っていた。親友ヘレナ(リタ・ガム)の邸宅でティー・タイムを楽しんでいたエレンは、見違えるように美しくなった友人の庭を見て驚く。
 ヘレナによると、新しく雇った庭師カール(ジョー・ダレッサンドロ)のおかげだという。自宅の庭に物足りなさを感じていたエレンは、彼女に頼んでカールを雇うことにする。カールは物静かで謎めいた雰囲気の男だった。しかし、その美しい顔立ちと均整の取れた肉体は魅力的で、エレンは次第に彼の魅力にはまっていく。
 だが、メイドや使用人たちのカールに対する評判は芳しくなかった。見たこともない不思議な花を次々と咲かせていく彼を、信心深いメイドたちは悪魔的な存在だとして忌み嫌う。また、使用人のサルヴァドールも、理屈では説明のつかない彼の不思議な力に疑問を呈す。はじめは意に介さなかったエレンだったが、やがて自分が無意識のうちに不可解な行動を取っていることに気付き、その原因がカールの育てる花々なのではないかと疑うようになる。
 さらに、サルヴァドールが原因不明の急病で意識を失ってしまい、エレンの不安と疑問はより一層深まっていく。カールが何者なのかをヘレナに問いただすが、実は彼女も彼の素性をよく
知らない。そこで、エレンはカールの過去の雇い主を探すことにする。すると、以前に彼が勤めていた家庭では、その家の主婦たちが次々と自殺を遂げたり、気が狂ってしまっていることが分かる。単なる偶然だというヘレナだったが、エレンはカールを解雇することにした。ベネット家を後にしたカールは、再びヘレナの家で雇われることになるのだが・・・。

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漠然とした不安を感じるようになるエレン

カールの過去を調べ始めたエレンだったが・・・

 監督のジェームズ・H・ケイは、もともとニューヨークを中心に活躍する売れっ子のCMプロデューサーだった。007シリーズをはじめとする映画作品のCMスポットを数多く手掛け、いつしか自分でも映画を撮りたいと思うようになったという。しかし、なかなか自分好みの企画にめぐり合えず、それならばと自分自身で脚本を書きあげる。さらに、彼は親友のチャーマー・カークブライド・ジュニアとその父親に資金提供してもらい、僅かな自分の貯金までをも投資。かくして、初の劇場用長編映画の製作に乗り出すこととなったわけだ。
 だが、監督以下ほとんどのスタッフがキャリアの浅い人間ばかりで、撮影は手探りの状態で進められたという。ゆえに、製作費がかさんでいくに従って、監督の不安もどんどんと膨れ上がっていく。本当にこれで製作費が回収できるのか?そう考え始めた頃から、監督は本来の目標を見失ってしまったようだ。
 結果的に、それはそれで悪くなかったと思うし、監督自身も出来上がった作品について後悔することはないと明言している。ただ、業界での経験不足が災いして良からぬ配給会社に引っかかってしまったというのは、大いなる反省点だったようだ。

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カールに銃口を向けるエレン

果たしてカールの正体とは・・・!?

 ヒロインのエレン役を演じたキャサリン・ホートンは、アメリカでも有数の名家の出身。叔母に当たる大女優キャサリン・ヘプバーン主演の『招かれざる客』(67年)で映画デビューし、一躍世間の脚光を浴びた。その後、しばらく映画出演を断り続けていた彼女。久々の映画復帰作として選んだ作品が、この“Seeds of Evil”だったというわけだ
 その親友ヘレナ役を演じているリタ・ガムはベルリン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞したこともある名女優で、あのグレース・ケリーの親友だったことでも有名な人。キャサリン・ホートンとも親しく、彼女の紹介で本作へ出演することになったという。また、エレンの夫ジョンを演じているジェームズ・コンドンは、主にB級映画やテレビ・ドラマで活躍した俳優だ。
 しかし、やはり本作における真の主役は、なんといっても庭師カール役のジョー・ダレッサンドロだろう。アンディ・ウォーホルの秘蔵っ子として登場し、モデル及び俳優として時代の寵児となったセックス・シンボル。ウォーホル組を離れての仕事は、これが初めてだった。本人としては当時本格的な役者へのステップアップを考えており、トレードマークの肉体美をさらすのは不本意だったらしいが、やはり彼のヌード・シーンが最大の見せ場であることは否めない。いかんせん、少ないセリフでも大根役者なのはバレバレだしね(笑) とりあえず、彼が全裸で真夜中のプールを泳ぐシーンの幻想的な美しさはファン必見。

 

The Witch Who Came From The Sea (1976)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2004 Subversive Cinema (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/2.0chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/87分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー(M・パーキンス、D・カンディ、M・シンバー出演)
スタッフ・キャストによる音声解説
タレント・バイオ集
監督:マット・シンバー
製作:マット・シンバー
脚本:ロバート・ソム
撮影:ディーン・カンディ
音楽:ハーシェル・バーク・ギルバート
出演:ミリー・パーキンス
    ロニー・チャップマン
    ヴァネッサ・ブラウン
    ジョージ・“バック”・フラワーズ
    リチャード・ケネディ
    ペギー・フューリー
    リック・ジェイソン

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心に傷を負った女性モリー(M・パーキンス)

亡き父の自慢話を甥っ子たちに話して聞かせるモリーだったが・・・

 これまたシュールで奇妙な作品。幼い頃に父親から性的虐待を受けて心に傷を負った女性の、夢とも現実ともつかない白日夢の世界を描いたサイコ・サスペンスだ。タイトルは“海からやって来た魔女”という意味だが、実際に魔女が本編中に出てくるわけではない。これは、ヒロインの心の中に潜む狂気を表現した言葉というべきだろう。
 上で紹介した“Seeds of Evil”と同じように、この作品もアート映画とトラッシュ映画をごちゃ混ぜにした不条理な世界観がユニーク。全編にセックスとバイオレンスを散りばめつつ、詩的で幻想的な演出スタイルが貫かれている。ドラマティックな展開を一切排除し、ヒロインの心象風景を描きながら、淡々としたストーリーが綴られていくのだ。それゆえに、サスペンスとしての緊張感もなければカタルシスもない。見る人をかなり選ぶ作品だと言えるだろう。
  “The Sensuous Female”(70年)や“Africanus Secualis”(70年)などのセクスプロイテーション映画で有名なマット・シンバー監督と、『血まみれギャングママ』(70年)や『デスレース2000年』(75年)で有名な脚本家ロバート・ソムが組んだということで、マニアの間では長いこと幻のカルト映画と言われてきた作品。恐らくコアなマニアでも好き嫌いの真っ二つに分かれる映画だとは思うが、チャンスがあれば是非とも見ていただきたい。

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厳格なモラリストという仮面の裏で、淫らな夢想に耽るモリー

モリーは“ミロのヴィーナス”に心を奪われる

 主人公は30代の女性モリー(ミリー・パーキンス)。内職に忙しい姉ドーラ(ペギー・フューリー)に代わって甥っ子たちの面倒を見ている彼女は、どこか情緒不安定なところがある。いつものように甥っ子たちを連れて海辺へ出かけた彼女は、ビーチでトレーニングをしているラグビー選手たちの肉体に目を奪われた。いつしか彼らがサディスティックな方法で殺害される様子を夢見ていた彼女は、戸惑いを隠しきれず我に返る。
 実は、彼女は幼い頃に船乗りだった父親から性的虐待を受けていた。しかし、まるでそんなことなどなかったかのように、彼女は偉大な船長だった父親の自慢話を甥っ子たちに話して聞かせる。また、敬虔なクリスチャンで厳格なモラリストを自負するモリーは、時として抑えられない怒りの衝動に駆られ、それを鎮めるためアルコールに頼る毎日を送っていた。
 地元のバーで働く彼女は、店のオーナーであるロング・ジョン(ロニー・チャップマン)と恋愛関係にあった。父親のように優しくて包容力のあるロング・ジョンと満ち足りた生活を送っているはずのモリー。だが、気が付くと他の男性とのセクシャルな関係を夢想している。ある時は、店を訪れたラグビー選手たち2人の肉体を弄び、彼らをベッドに縛り付けてペニスを切除する様子を思い浮かべて興奮するのだった。
 ところが、ある日彼女がテレビを見ていると、そのラグビー選手たちが殺されたというニュースを報じていた。ホテルのベッドに縛り付けられ、ペニスを切り取られていたという。信じられないといった表情でテレビを見つめるモリー。
 知人宅のパーティに招かれた彼女は、居間に飾られた“ミロのヴィーナス”のレプリカに心を奪われる。そこに居合わせた男性は、ヴィーナスの正体が実は魔女であるという伝説を語って聞かせてくれた。
 そのハンサムな男性ビリー(リック・ジェイソン)は有名なテレビ俳優だった。急速に親しくなる2人だったが、モリーは突然態度を豹変させてビリーに襲いかかる。驚いたビリーは公衆の面前で彼女を殴り倒した。その後、モリーはヘソの周りにマーメイドのタトゥーを入れる。
 ある時、テレビのCMに出演している俳優アレクサンダー(スタッフォード・モーガン)が店を訪れた。以前から彼に憧れていたモリーは、アレクサンダーとセックスをした末に、彼のペニスを剃刀で切断する様子を夢想する。そして、その直後に彼の惨殺死体が発見された。
 翌朝、彼女は全身血まみれのまま、自宅のベッドに横たわっていた。隣で目覚めたロング・ジョンは、その姿を見て愕然とする。その頃、警察のストーン刑事(ジョージ・“バック”・フラワーズ)がモリーの身辺を聞き込み捜査していた。モリーの親友キャシー(ヴァネッサ・ブラウン)とロング・ジョンは、彼女に自首することを勧めるが、モリー自身は自分が殺人を犯したという認識が全くない。思い悩むロング・ジョンとキャシーの取った行動とは・・・。

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何かを悟ったかのようにマーメイドのタトゥーを彫らせるモリー

姉ドーラ(P・フューリー)のもとに刑事が訪れる

 哀しくも切ないクライマックスがとても印象的。脚本を書いたロバート・ソムは当時ミリー・パーキンスの旦那だったが、モリーというキャラクターにはミリー自身の素顔が色濃く反映されているという。そもそも、彼女の父親も船乗りだったらしい。もちろん、本人は幼い頃に虐待されたこともなければ、人を殺したことだってないのだけれど。
 監督のマット・シンバーは、女優ジェーン・マンスフィールドの最後の旦那だったことでも知られる人物。70年代から数多くのセクスプロイテーションやブラック・ムービーを世に送り出し、ピア・ザドーラ主演のエロティック映画“Butterfly”(82年)でラジー賞3部門にノミネートされたトラッシュ映画界の名物(?)監督だ。マッチョ女優ローレン・ランドンが主演した女バーバリアンもの『ハンドラ』(84年)と『イエローヘアー/黄金の首』(84年)も、マニアの間では人気が高い。。
 そして、撮影監督を担当したのは、今やハリウッドを代表する大物カメラマンとなったディーン・カンディ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フック』(91年)、『ジュラシック・パーク』(93年)、『アポロ13』(95年)、『ホリデイ』(06年)など、数多くの大作・話題作を手掛けてきた人物だ。撮影監督に昇進して初めての仕事が、この作品だったという。
 また、音楽のハーシェル・バーク・ギルバートは40年代から活躍する作曲家で、日本でも大ヒットしたテレビ・ドラマ『バークにまかせろ』のテーマ曲を手掛けたほか、映画『月蒼くして』(53年)や『カルメン』(54年)などでオスカーにもノミネートされたことのある人物。

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俳優アレクサンダー(S・モーガン)のペニスを切り取るモリー

自首を勧めるロング・ジョン(L・チャップマン)だったが・・・

 主演のミリー・パーキンスは、名作『アンネの日記』(59年)のアンネ役で一世を風靡した元祖美少女スター。70年代当時は家庭を優先して映画界を離れていたが、この作品は夫が脚本を書いたということで例外的に引き受けた仕事だった。80年代にはハリウッド復帰を果たし、『ロンリー・ブラッド』(85年)や『ウォール街』(87年)などで母親役を演じている。
 ロング・ジョンを演じたロニー・チャップマンは、エリア・カザン監督のお気に入り俳優として『エデンの東』(55年)や『ベビイドール』(56年)などに出ていた人で、『墓石と決闘』(67年)や『11人のカウボーイ』(71年)などの西部劇でも有名な巨漢俳優。モリーの親友キャシーを演じているヴァネッサ・ブラウンは、40年代に20世紀フォックス専属の娘役として活躍した女優だった。

 

バスケット・ケース
Basket Case (1982)

日本では1985年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2001 Something Weird (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/
91分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング映像
未公開シーン集
オリジナル劇場予告編
TVスポット集
ラジオ・スポット集
監督・スタッフ・出演者の音声解説
ロケ地再訪
スチル・ギャラリー
女優T・S・スミス ラジオ・インタビュー
女優B・ボナー出演のTVショー
監督:フランク・ヘネンロッター
製作:エドガー・レヴィンス
脚本:フランク・ヘネンロッター
撮影:ブルース・トーベット
音楽:ガス・ルッソ
出演:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック
    テリー・スーザン・スミス
    ビヴァリー・ボナー
    ロバート・ヴォゲル
    ダイアナ・ブラウン
    ロイド・ペイス

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ニューヨーク42番街へ来たデュウェイン(K・V・ヘンテンリック)

大事そうにしているバスケット・ケースの中身とは・・・?

なにかと世話を焼く売春婦ケイシー(B・ボナー)

 シャム双生児の兄弟が、自分たちを切り離した医者たちに次々と復讐を遂げていく。80年代半ばにニューヨークのミッドナイト・シアターで爆発的なヒットを飛ばし、全米のビデオ・セールスでもナンバー・ワンを記録。80年代を代表するカルト・ムービーとなった傑作だ。
 主人公は奇形の兄ベリアルをバスケット・ケースに入れて持ち歩く若者デュウェイン。2人はシャム双生児として生まれたが、子供の頃に無理やり切り離されてしまい、醜い兄はまるでゴミのように捨てられてしまう。復讐を誓った兄弟は父親を殺害。さらに、自分たちを引き離した医者たちに復讐するため、ニューヨークへとやって来る。
 異形なる者の孤独や怒り、哀しみを描いたペシミスティックなストーリーがまず素晴らしい。いかにも低予算といった感じのチープなセットや特殊メイクも、逆に陰鬱で病的なムードを醸し出して秀逸だ。
 頭部の両脇から手が伸びた兄ベリアルのクリーチャー・デザインもインパクト強烈。性的欲求を満たすことの出来ないベリアルが、血まみれの女性の股間に自分の下半身(?)を必死になってこすりつけるシーンなんて、見ていて居たたまれなくなるほどに切なくて残酷だ。これほど精神的にどんよりと暗い気分にさせてくれるホラー映画もなかなかないだろう。
 また、本作は80年代のニューヨーク42番街の猥雑な雰囲気を今に伝えてくれるという点でも特筆に価する。当時の42番街はポルノ・ショップや覗き部屋、ストリップ劇場が軒を連ね、ヤクの売人や売春婦が行き交う危険地帯。ロングアイランド出身のヘネンロッター監督は、学生時代から42番街にある場末の映画館、いわゆるグラインドハウスに通いつめる映画フリークだった。彼にとってはまさにホームグランド、最も愛着のある場所だったに違いない。
 そのうらびれた怪しげな42番街の雰囲気と、社会の底辺で逞しく生きる人々の姿を見つめる眼差しの暖かさというのも、この作品の大きな魅力のひとつだと言える。そういった点も含めて、今はなきグラインドハウス全盛期の空気をリアルに伝えてくれる映画。これを見ずしてホラー映画は語れまい。

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受付嬢シャロン(T・S・スミス)と親しくなるデュウェイン

バスケット・ケースの中から飛び出した兄ベリアル

ベリアルはニードルマン医師(L・ペイス)を惨殺する

 ニューヨークは42番街。売春婦や季節労働者が住まいにしている場末のホテル・ブロスリンへ、大きなバスケット・ケースを大事そうに抱えた若者デュウェイン(ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック)がやって来る。そそくさと前金をマネージャー(ロバート・ヴォゲル)に支払って部屋へと向う彼を、ホテルの住人たちは好奇の眼差しで見るのだった。
 翌朝、再びバスケット・ケースを抱えたデュウェインが向った先は、ニードルマン医師(ロイド・ペイス)のクリニック。そこで彼は、受付嬢のシャロン(テリー・スーザン・スミス)と親しくなる。偽名を使って診察を受けたデュウェインは、クリニック内の様子をうかがっているようだ。ニードルマン医師は妙な胸騒ぎを覚える。
 その晩、受付のシャロンが帰宅したのを見計らってクリニックに忍び込んだデュウェインは、バスケット・ケースのフタを開けて中身を解き放つ。ニードルマン医師に襲いかかる不気味な化物。それはデュウェインの双子の兄ベリアルだった。ニードルマン医師は胴体を真っ二つに切断されて絶命する。
 その翌日、デュウェインはベリアルを部屋に置いたまま、シャロンとのデートへ向った。初めてのキスを交わすデュウェインとシャロン。その瞬間、ホテルに残されたベリアルが狂ったように暴れだした。まるで、兄弟の間にテレパシーでも存在するかのように。
 嫉妬に駆られて凄まじい叫び声をあげ、部屋中のものを破壊していくベリアル。物音に気付いたホテルの住人たちも騒ぎ出す。マネージャーが合鍵を使って中に入ると、ベリアルは急いでバスケット・ケースの中に隠れた。狐に鼻をつままれたように首をかしげながらも、部屋を出て行く人々。だが、ベッドの上に札束を見つけた泥棒のミッキー(ジョー・クラーク)は、後からこっそりと部屋へ忍び込む。そこへ襲いかかるベリアル。その悲鳴を聞いて駆けつけた住人たちは、血だらけになって死んでいるミッキーを発見する。
 ベリアルの身に何かが起きたと直感したデュウェインは、急いでホテルへと向う。ホテルの住人たちから非難され、警察にも尋問されて精神的に参ってしまったデュウェイン。近くのバーで飲んでいると、ホテルのお隣さんでもある親切な売春婦ケイシー(ビヴァリー・ボナー)に声をかけられる。すっかり意気投合した2人。慣れない酒に酔っ払ってしまったデュウェインは、もうろうとする意識の中で自分の生い立ちを振り返る。
 シャム双生児として生まれたデュウェインとベリアル。デュウェインは見た目も普通の健康体だったが、そのわき腹にくっついた状態のベリアルは醜い姿をした奇形だった。母親は出産のショックで死亡。父親(リチャード・ピアース)はすっかり飲んだくれとなってしまった。ベリアルが妻を殺したと思い込む父親は、違法な手術で兄弟を引き離すことにする。
 だが、たとえ物理的に引き離すことができても、2人は不思議な力で結びつきあっていた。ゴミ捨て場に捨てられたベリアルを見つけ出したデュウェイン。2人は父親を殺害する。そして、幼い頃から2人のことを可愛がってくれた叔母(ルース・ニューマン)のもとで育てられたのだ。
 しかし、その叔母も亡くなったことから、2人は兼ねてから準備していた計画を実行に移す。自分たちを引き離した3人の医師たちに復讐を遂げるのだ。最初に殺されたのはリフランダー医師(ビル・フリーマン)。ニードルマンは二人目だった。そして、残る一人が女医カッター(ダイアナ・ブラウン)である。
 翌日、二日酔いで目覚めたデュウェインは、バスケットケースを抱えてカッター医師のクリニックを訪れた。彼女の前でケースのフタを開けてみせるデュウェイン。ベリアルはカッター医師の舌を引き抜き、顔中をメスでメッタ刺しにする。
 こうして目的を遂げた2人。そこへ、ニードルマン医師の死にショックを受けたシャロンがやって来る。彼女への想いを一度は諦めようとしたデュウェインだったが、不安そうに怯えるシャロンを目の前にして再び愛の炎が燃え上がった。しかし、それを見て猛烈な嫉妬心に駆られた兄ベリアルは、恐るべき凶行に走るのだった・・・。

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夜の闇に紛れて移動するベリアル

ディウェインはシャロンに生まれて初めて恋をする

物音を聞いて駆けつけた住人が見たものとは・・・

 破滅へと向うしかない兄弟の、あまりにも哀れで残酷な最期が実に切ない。復讐だけを心の拠り所とし、お互いに運命共同体として生きてきたデュウェインとベリアル。しかし、五体満足なデュウェインが人並みの幸せを求めてしまったことから、2人の固い絆が脆くも崩れ去ってしまう。この哀しい愛と憎しみのドラマが軸としてあるからこそ、『バスケット・ケース』はいまだに多くのファンから熱狂的に愛され続けているのだろう。
 1981年に撮影を終えたこの作品は、配給先が決まるまでに1年を要したという。ところが、この配給会社が何を考えたのか、残酷シーンを全てカットした上に編集まで勝手に変えてしまい、コメディ・タッチのモンスター・ムービーとして劇場公開してしまった。当然のことながら、客は全く入らないわ批評家にもコケにされるわの大不評。己の過ちに気付いた配給会社は、改めてオリジナル・バージョンをミッドナイト・シアターで再公開。その評判が口コミで伝わり、結果的にロングラン・ヒットとなったのだ。さらに、84年にセル・ビデオとして発売され、これが予想外の大ヒットを記録してしまった。
 この作品が劇場用映画デビューだったフランク・ヘネンロッター監督自身も一躍脚光を浴び、『ブレイン・ダメージ』(87年)や『フランケンフッカー』(90年)などの異色作を次々と発表。さらに、ファンの期待に応えるべく(?)『バスケット・ケース2』(90年)と『バスケット・ケース3』(92年)を世に送り出した。
 ところが、どちらも1作目とは似ても似つかない血みどろのホラー・コメディに。悪趣味極まりないエログロ・ナンセンスのオンパレードは、それはそれで面白かったのも事実だが、やはり1作目に比べると大変な違和感があった。それ以来、監督業から退いてしまったヘネンロッターだが、今年は16年ぶりとなる新作“Bad Biology”を発表している。
 ちなみに、特殊メイクに参加したケヴィン・ヘイニーは、その後『アダムス・ファミリー』シリーズなどのメジャー作品を数多く手掛け、『ドライビング・ミス・デイジー』(89年)の老人メイクでアカデミー賞を受賞。同じく特殊メイクを手掛けたジョン・カリオーネ・ジュニアも、『チャーリー』(92年)や『インソムニア』(02年)、『ダークナイト』(08年)などのメジャー映画で活躍し、『ディック・トレイシー』(90年)でオスカーに輝いている。

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ケイシーと意気投合したデュウェイン

無理やり引き離されるデュウェインとベリアル

断末魔の叫びをあげる女医カッター(D・ブラウン)

 主人公デュウェイン役のケヴィン・ヴァン・ヘンテンリックはヘネンロッター監督の友人で、『バスケット・ケース2』と『バスケット・ケース3』にも出演。現在は彫刻家を本業としながら、細々と俳優活動も続けているらしい。
 また、親切な姉御肌の売春婦ケイシー役を演じているビヴァリー・ボナーは、地元ニューヨークのケーブルTVで活躍していた黒人コメディエンヌ。なかなか味のある演技をする人で、以降のヘネンロッター監督作品にもたびたび登場している。それもケイシー役として(笑)

 

吐きだめの悪魔
Street Trash (1987)

日本では1987年に劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2005 Synapse Films (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/102分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ジム・ミューロー
製作:ロイ・フランケス
脚本:ロイ・フランケス
撮影:デヴィッド・スパーリング
音楽:リック・ウルフィック
出演:ビル・チェピル
    マイク・ラッケイ
    ジェーン・アラカワ
    ニコール・ポッター
    ミリアム・ザッカー
    マーク・スフェラッザ
    トニー・ダロウ

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酒屋の店主は地下倉庫で40年前の安ワインを発見する

何食わぬ顔で安ワインを売り出したところ・・・?

 ニューヨークのマンハッタンを舞台に、腐ったワインを飲んだ浮浪者たちが汚物を撒き散らかしながら溶けていく様を描く前代未聞の怪作。これを歌舞伎町の映画館で初めて見たときの衝撃といったら(笑)!まさしく、見ちゃマズいをもんを見てしまったという感じ。面白いのかどうかすらもよく分からず、ただひたすら汚くて醜悪でクレイジーな内容に呆然とさせられたもんだった。
 基本的にストーリーはあってないようなもの。一応、主人公はホームレスの家出兄弟ということにはなっているが、あとは彼らの周囲をたむろしている怪しげな浮浪者たちが次々とワインを飲んでグチャグチャになっていくというだけ。
 この特殊メイクがまたオフビートというか、ハチャメチャというか。廃墟のトイレに座ってたオッサンは青い体液を垂れ流しながら便器の中へ溶けていくし、デブのオッサンは体が風船のように膨らんだ挙句に臓器と体液を散らかしながら破裂するし。プルプルのゼリー状になっちゃうオッサンもいれば、溶けたオッパイからピューピュー体液を噴射させる女ホームレスも。食事しながら見ちゃいけない映画ナンバー・ワンである。
 他にも、売春婦が盛りのついた浮浪者たちに集団レイプされたり、その売春婦の死体を発見したオッサンが警察に通報するどころか大喜びでファックしたり、切り取ったペニスで浮浪者たちがキャッチボールして遊んだりと、神をも恐れぬ凶悪なブラック・ジョークのオンパレード。ここまで徹底して悪趣味だと、逆に気持ちがいいくらいだ。
 こんな頭のイカれた映画を撮ったのはどこのどいつだ!?と思ったら、監督のジム・ミューローはアカデミー賞の作品賞に輝いた名作『クラッシュ』(04年)の撮影監督。この人、あの『ターミネーター2』(91年)や『タイタニック』(97年)を初めとするジェームズ・キャメロン監督作品や、『JFK』(91年)以降全てのオリヴァー・ストーン監督作品を手掛けた、アメリカを代表するスティディカム・カメラの第一人者でもある。
 しかも、『ユージュアル・サスペクツ』(95年)や『X−メン』シリーズ、『スーパーマン・リターンズ』(06年)のヒットメーカー、ブライアン・シンガーも製作スタッフとして参加しているというんだからビックリ。やはり、才能のある人間はやることが違う(笑)
 とにもかくにも、百聞は一見にしかず。『ブレインデッド』(92年)や『悪魔の毒々モンスター』(85年)に勝るとも劣らない傑作(?)だ。まだ見たことがないというホラー映画ファンは、なにがなんでも探し出して見るし。ただし、くれぐれも『ホラー映画クロニクル』には載ってなかったよ、なんて突っ込まないように(笑)

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ワインを飲んで溶けていく浮浪者のオッサン

骨まで溶けちゃったもんだから脚がもぎ取れてしまう

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便器の中へズブズブと沈んでいって・・・

最後はドロドロの状態に

 ニューヨークはマンハッタンのスラム街。浮浪者がたむろする一角で営業している酒屋の店主は、地下倉庫の奥から埃をかぶったワイン・ケースを発見する。中から出てきたのは、いかにも安物といった感じの小型ワイン。日付を見ると40年も前の商品らしいが、手っ取り早く金に換えてしまえとばかりに、店主は1本1ドルの破格値で売り出すことにする。
 早速、このワインに目をつけたのが、若い浮浪者のフレッド(マイク・ラッケイ)。店主の目を盗んでワインを万引きしたフレッドだったが、仲間の老人に盗まれてしまう。しめしめとばかりに、廃墟のトイレでワインを飲み始めた老人だったが、次の瞬間青い液体を吹き出して苦しみ始める。みるみるうちに体が溶けていく老人。最後は便器の中で目と鼻と口だけを残して液状化してしまった。
 フレッドは弟ケヴィン(マーク・スフェラッザ)と共に、自動車のスクラップ工場で寝泊りしていた。広大なスクラップ工場は浮浪者たちの格好の住み家になっており、経営者のフランク(パット・ライアン)は頭を抱えている。しかし、従業員のウェンディ(ジェーン・アラカワ)は、ケヴィンに好意を寄せている様子だ。そんなウェンディに対して、フランクはたびたびセクハラを働lいている。
 さらに、スクラップ工場ではブロンソン(ヴィック・ノトー)というベトナム帰りの男が浮浪者の親玉として君臨。フレッドとケヴィンは集団から距離を置いて暮らしていたが、ブロンソンはそれが気に食わない様子だった。ある晩、フレッドが酔った売春婦を連れて帰ってセックスをしたところ、それを眺めながら興奮した浮浪者たちが暴徒となって売春婦を襲う。
 翌朝、フランクがドブ川で売春婦の死体を発見するが、ウェンディをレイプしようとして失敗したばかりだったため、彼はその死体を使って性処理を済ませる。その頃、ブロンソンに歯向かった男がペニスをちょん切られ、浮浪者たちはそれをオモチャにしてキャッチボール。なんとかペニスを取り返した男はバスに飛び乗って病院へ向うのだった。
 そうこうしている間にも、腐ったワインの被害者が続出。死体から飛び散った体液を浴びた通行人までもが被害に遭ってしまう。スラム街の異変に気付いた刑事ビル(ビル・チェピル)は捜査に乗り出すのだったが・・・。

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工場の従業員ウェンディ(J・アラカワ)はケヴィン(M・スフェラッザ)に好意を

ホームレスの兄弟フレッド(M・ラッケイ)とケヴィン

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ベトナム帰りのブロンソン(V・ノトー)は浮浪者のドンとして君臨

通りがかりの通行人までもが巻き添えに

 とまあ、だいたいストーリーはこんな感じ。社会の最底辺にうごめく有象無象の人間模様を描く・・・というより、大都会の掃き溜めに生きるゴミみたいな連中のゴミみたいな日常が強烈な悪臭と共に描かれていくというべきか。ま、実際に臭いなんかするわけはないのだが(当然)、見ていると思わず鼻をつまみたくなること必至。とにかく汚いのなんのって(笑)
 ジム・ミューロー監督は当時ニューヨークの映画学校に通っており、製作と脚本を務めたロイ・フランケスはその学校の講師だった。彼の父親はスクラップ工場の経営者だったが、息子には後を継がせたくないと考えた母親が映画の道を勧めたらしい。ある時、知人が映画を作っていると聞いた母親は、撮影現場の雑用係として息子を雇ってもらう。その映画というのが、なんとフランク・ヘネンロッター監督の『バスケット・ケース』だった。
 もともと映画に興味があった彼は、この現場で映画製作の面白さを味わい、母親の思惑通り(?)映画学校へ進学。彼が高校時代に撮った短編映画をベースに、脚本コースの講師だったフランケスが脚本を仕上げ、父親が製作費を捻出した。当時アメリカではスティディカムが新しい撮影テクニックとして話題になっていたことから、ミューローは自らスティディカム・カメラも操作したという。
 で、この作品を見て彼の仕事ぶりに注目したのが、スティディカムのパイオニアともいうべきカメラマン、ギャレット・ブラウン。キューブリックの『シャイニング』(80年)でスティディカムのオペレーターを務めた人物だ。このブラウンのもとに弟子入りしたことから、ミューロー自身もスティディカム・オペレーターへの道を歩むことになったというわけだ。つまり、この『吐きだめの悪魔』こそが、『T2』や『タイタニック』の原点なのである・・・って、んなわけないな(笑)

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ゼリー状になるまで溶けていく浮浪者たち

人によって体液の色が違うのはナゼ・・・!?

 なお、出演者はいずれも当時無名の俳優ばかり。フレッド役のマイク・ラッケイは特殊メイクも兼任している。また、スクラップ工場の経営者フランクを演じているパット・ライアンは、『悪魔の毒々モンスター』(84年)や『悪魔の毒々ハイスクール』(86年)にも出ていた巨漢俳優。やはり太りすぎが原因なのだろうか、44歳という若さで心臓発作のため死亡している。
 また、地元を仕切っているマフィアのボス役を演じたトニー・ダロウは、その後『グッドフェローズ』(90年)やテレビ・シリーズ『ザ・ソプラノズ』のマフィア役で有名に。また、レストランの若いドアマン役で顔を出しているジェームス・ロリンズは、フランク・ヘネンロッター監督の『フランケンフッカー』(90年)に主演している。

 

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