GRINDHOUSE CLASSICS
PART 1

 

 グラインドハウスとはアメリカにおいてかつて存在した、低予算のキワモノ映画(いわゆるエクスプロイテーション映画)ばかりを2〜3本立興行で上映する場末の映画館のこと。70年代〜80年代にかけて、ニューヨークなら42番街、ロサンゼルスならブロードウェイ近辺など、主に治安の悪い繁華街に集中して存在した。
 こうした映画館が登場したのは60年代末のこと。それまでストリップやヌード・ショーを見せていたような劇場が廃業し、映画館へと鞍替えして行ったのがきっかけだった。もともと低予算映画の配給先といえばドライブ・イン・シアターがメインだったが、当時はそうした興行形態も衰退の一途。要は、それまでのドライブ・イン・シアターに取って代わるような形で生まれたのが、グラインドハウスだったと言っても良いかもしれない。
 グラインドハウス系の映画館で好んで上映されたのは、主にアクション、ホラー、ソフト・ポルノといったエクスプロイテーション映画。出演者は全くの無名、ないしは落ちぶれた往年の映画スター。セックスやバイオレンスを売り物にしたチープな作品が殆んどで、タイトルやポスターだけはやけに大袈裟だったりする。エクスプロイテーションとは搾取という意味だが、まさに観客から入場料を搾取するようなキワモノ映画ばかりが並んでいたわけだ。
 だが、その一方で大手映画会社が撮ることの出来ないような野心作も少なくなかった。メジャー作品では味わうことのできないチープなスリルというのも魅力だったのだろう。また、一般には流通しないイタリアや日本、香港などのB級娯楽映画も数多く上映され、当時のアメリカでは映画マニアにとって貴重な情報源でもあったようだ。
 ただ、80年代に入ってホーム・ビデオが一般家庭に普及すると、多くの低予算映画がビデオでも手軽に見れるようになり、グラインドハウスの存在意義は次第に失われていく。また場所柄、映画館の中で麻薬の取り引きや売春などが行われることも少なくなく、犯罪に巻き込まれるというリスクも高かった。中でもニューヨークの42番街などは、当時は犯罪の巣窟として有名だった。
 やがて90年代半ばにはグラインドハウスそのものが死滅。ニューヨークの42番街もクリーン・アップされ、街にゴロゴロしていたヤクの売人や売春婦は追い出され、ポルノ・ショップや覗き部屋なども消えてなくなった。それでも、グラインドハウスを懐かしむ声はいまだに根強い。ハーシェル・ゴードン・ルイスやテッド・V・マイケルズの作品を映画館で見れるなんてグラインドハウスでしかあり得なかっただろうし、当時のアメリカ人にとって外国のB級娯楽映画をスクリーンで見ることの出来る貴重な場所だった。そうした古き良き時代へのノスタルジーの結晶が、ロバート・ロドリゲスとクェンティン・タランティーノによる“グラインドハウス”シリーズ、『プラネット・テラーinグラインドハウス』(07年)と『デス・プルーフinグラインドハウス』(07年)だったわけだ。

 

 

Policewomen (1974)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 BCI/Navarre (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/90分/製作:アメリカ
※『ラスベガスレディの賭場荒し』と二本立て

映像特典
なし
監督:リー・フロスト
製作:ウェス・ビショップ
脚本:リー・フロスト
    ウェス・ビショップ
撮影:ポール・ヒップ
出演:ソンドラ・カリー
    トニー・ヤング
    フィル・フーヴァー
    エリザベス・スチュアート
    ジーニー・ベル
    チャック・ダニエル
    ローリー・ローズ
    リチャード・シュイラー
    ウィリアム・スミス

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女子刑務所の女看守レイシー・ボンド(S・カリー)

脱獄事件が発生する

 女ばかりの犯罪組織に挑む女性刑事の活躍を描いた、超低予算のお色気アクション・ムービー。当時は『クレオパトラ・ジョーンズ』シリーズのような女性版ブラック・ムービーや、アンジー・ディッキンソン主演の刑事ドラマ『女刑事ペッパー』などが話題になっていた時代。そうしたトレンドに乗って作られた作品であろう事は想像に難くないだろう。
 役者の演技は稚拙だし、カメラワークも不安定で、セットや小道具もやたらチープという典型的なC級映画。ただ、カラテ・アクションからカー・チェイス、定番のキャット・ファイトに至るまで、一応アクションの見せ場は盛りだくさんに揃えている。ヒロイン役のソンドラ・カリー(ランナウェイズの元ボーカリスト、チェリー・カリーの実姉)がアン=マーグレット・タイプの赤毛美人なのもポイントが高し。70年代のお色気女性アクションが好きな人には十分楽しめる一本だろうと思う。

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特別捜査官に任命されたレイシー

空手の腕前も男顔負け

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レイシーと組むのは2枚目刑事フランク(T・ヤング)

運び屋の車を追い詰めたレイシーだったが・・・

 女子刑務所で脱獄事件が発生。2人の女囚が脱獄に成功してしまったが、女性看守レイシー・ボンド(ソンドラ・カリー)の活躍で、その他の女囚たちを取り押さえることが出来た。そこで、警察はレイシーを特別捜査官として起用し、脱獄した2人の女囚を追うことにする。
 だが、そこは男社会の警察組織。刑事たちは女ごときに捜査は任せられないと反発。しかし、射撃やドライブ、空手や柔道など、男性以上に優れたレイシーの腕前に、さすがの刑事たちも首を縦に振らざるを得なかった。
 逃げた女囚の一人はどうやらモード・アンダーソン(エリザベス・スチュアート)の手下だった。モードは70歳を過ぎた犯罪組織の女性ボスで、彼女の部下たちは全員女性。かねてから警察がマークをしていたが、シッポをつかめずにいたのだった。
 その頃、モードの屋敷に女囚ジャネット(ローリー・ローズ)とパム・ハリス(ジーニー・ベル)が到着した。ジャネットはモードの部下で、パムを仲間にと誘う。どこの馬の骨とも知らぬ人間を入れることに反対するモードだったが、パムの格闘技の腕前を見て納得。ただし、彼女の40歳年下の夫ドク(フィル・フーヴァー)に手を出さないということが条件だ。
 一方、レイシーは同僚の刑事フランク(トニー・ヤング)らと共に、モードの屋敷を監視することになった。そこへ怪しげな車が一台。運転手の女はフランクたちの存在に感づいて逃げ出した。後を追うレイシー。だが、相手の車は断崖絶壁から転落して大破してしまった。車のトランクからは大量のコカインが発見され、女が運び屋であったことが分かる。
 運び屋が殺されたことから、警察にマークされていることに気付いたモードたちは隠れ家を分散させた。レイシーはフランクと組んで一味の行方を捜す。2人の関係は次第に恋愛へと発展していった。
 ある日、ボートで釣りを楽しんでいた二人は、怪しげなクルーザーを目撃する。乗っているのはビキニ姿の女性ばかり。そのうちの一人がキャロライン(ドリー・トムソン)という売春婦であることにトニーが気付いた。彼は密かにクルーザーへ乗り移るが、女たちに気付かれて乱闘となる。敵方が優勢だったものの、間一髪のところでレイシーに救われる。
 クルーザーの持ち主がレイモンド・ウィルス(ウェス・ビショップ)という人物であることが判明し、レイシーは囮捜査を自ら買って出る。レイモンドのもとを訪れた彼女は、波止場で偶然彼のクルーザーを発見したと名乗り出た。
 実は、このレイモンドの邸宅こそ、モードの新しい隠れ家だった。部下たちがクルーザーごと行方不明になってしまったことに苛立っていたモードは、レイシーを警察の手先と疑って激しい拷問を加える。ところが、そこへ戻ってきたパムがレイシーの顔を見るなり、彼女を昔の仲間だと証言。疑いが晴れ、レイシーはモードの部下として迎え入れられる。
 パムはFBIの潜入捜査官だった。2人は協力してモード一味の悪事を暴こうとするのだったが・・・。

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ビキニのギャング団を相手に闘うレイシー

こんなサービス・ショットも

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70歳を過ぎた犯罪組織の女ボス、モード(E・スチュアート)

キャット・ファイト・シーンも大きな見どころ

 犯罪捜査そっちのけで乗馬やクルージングなどを楽しみながら熱々モード全開のレイシーとフランク、犯罪組織のボスのくせして簡単に人を信用してしまうモードなど、アクションのみならず突っ込みどころも満載。冒頭の女囚脱獄シーンにしたって、刑務所の警備があまりにも薄すぎる。だいたい囚人が服の下に拳銃を平気で隠し持ってる刑務所ってどうなのよ、と首をかしげずにはいられないだろう(笑)
 監督は『アニマル』(68年)シリーズや『色情狂ライフル魔』(70年)などのポルノ映画で知られるリー・フロスト。ゲテモノのカルト映画として有名な『Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男』(72年)の監督でもある。脚本と製作に参加しているウェス・ビショップは殆んどの作品で組んでいる相棒で、2人は『悪魔の追跡』(75年)の脚本も一緒に書いていた。また、ビショップはフロスト作品の脇役としても毎回顔を出しており、本作でもモードの協力者レイモンド役を演じている。
 撮影監督のポール・ヒップも、『陰獣の森』(69年)や『女の舌』(71年)などのポルノ映画出身。『無邪気な悪魔におもちゃが8つ』(74年)や『惨殺の墓場』(74年)といった低予算のホラー映画なども手掛けていたカメラマンだ。
 また、本作は『チャーリーズ・エンジェル』を彷彿とさせるゴージャスでファンキーなBGMも大きな魅力。ただ、全てライブラリー・ミュージックを使用していたらしく、作曲家のクレジットは一切ない。
 なお、タランティーノの『パルプ・フィクション』のタイトル・ロゴは、本作のタイトル・ロゴをパクっているそうだ。

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犯罪組織に潜入したレイシー

潜入捜査官パム(J・ベル)と組んで組織を叩く

 主人公レイシー・ボンド役を演じているのは、先述したように元ランナウェイズのボーカリストとして有名なチェリー・カリーの姉ソンドラ・カリー。お世辞にも演技が上手いとは言えないものの、派手な格闘シーンやアクション・シーンも自らこなし、精一杯の大熱演を繰り広げている。香港のカンフー映画を意識しすぎなのか、格闘シーンでやたらと変な顔をするのがおかしい。最近でもテレビを中心に女優活動を続けているが、整形のやり過ぎで能面みたいな顔になってしまった。
 彼女に協力する潜入捜査官パムを演じているのが、黒人女性アクション映画『TNTジャクソン』(75年)で有名なジーニー・ベル。また、『みな殺しの西部』(63年)や『アパッチ大襲撃』(64年)、『殺し屋の烙印』(69年)など西部劇の脇役として活躍したトニー・ヤングが、レイシーと恋に落ちる刑事フランク役を演じている。
 ちなみに、レイシーと空手対決するインストラクター役として顔を出しているウィリアム・スミスは、テレビ・ドラマ『ハワイ5−0』で知られるタフ・ガイ俳優。ボディビルダーとしても有名で、『コナン・ザ・グレート』(82年)ではシュワルツェネッガーの父親役を演じていた。

 

 

ラスベガスレディの賭場荒し
Las Vegas Lady (1975)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2007 BCI/Navarre (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/87分/製作:アメリカ
※“Policewomen”とカップリング

映像特典
なし
監督:ノエル・ノセック
製作:ノエル・ノセック
脚本:ウォルター・ダレンバック
撮影:スティーブン・M・カッツ
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:ステラ・スティーヴンス
    スチュアート・ホイットマン
    ジョージ・ディセンゾ
    リン・ムーディ
    リンダ・スクラッグス
    ジェシー・ホワイト
    トニー・ビル
    ジョセフ・デラ・ソート
    アンドリュー・スティーヴンス
    ステファニー・フォークナー

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女詐欺師ラッキー(S・スティーヴンス)

舞台となるカジノ・ホテル、サーカス・サーカス

 製作費100分の1で作られた女性版『オーシャンズ11』といったところか。3人組の女詐欺師たちが、あの手この手を使ってラスヴェガスのカジノから大金を巻き上げるというお話。有名な老舗カジノ・ホテル“サーカス・サーカス”で実際にロケを行い、70年代のラスヴェガスの雰囲気を堪能できる作品だ。
 ただ、前半はほとんど“サーカス・サーカス”のプロモーション・フィルムみたいな内容。中盤でいよいよ現金強奪作戦が実行に移されるものの、これといったスリル感もないままにストーリーが進行する。なんだか妙にのんびりとした映画なのだ。しかも、無駄なシーンが多い。ストーリーとは全く関係ないギャンブル・シーンやアトラクション・シーンが長すぎる。
 とどのつまり、場末の映画館の安い入場料でラスベガス旅行気分でも楽しみましょう、というだけの映画。安上がりな観光ムービーってところだろうか。

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謎のボスから指令を受けるラッキー

仲間のキャロル(L・ムーディ)がホテルで働いている

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カジノの警備員ヴィック(S・ホイットマン)

冷酷非情なマネージャー、エヴァーサル(G・ディセンゾ)

 ネバダ州郊外のウェスタン村。女詐欺師ラッキー(ステラ・スティーヴンス)は謎のボスから指令を受ける。次の水曜日にカジノ・ホテル“サーカス・サーカス”の最上階で行われるギャンブル大会へ潜入し、大金を強奪せよというのだ。金庫は同じフロアにあるマネージャー、エヴァーサル(ジョージ・ディセンゾ)のオフィスだ。ただし、大きな問題があった。最上階へはあらかじめ登録された会員しか入ることが許されていないのだ。
 “サーカス・サーカス”にはラッキーの仲間キャロル(リン・ムーディ)とリサ(リンダ・スクラッグス)が従業員として潜入していた。キャロルは貸しのあるウェイトレス、ジュディ(ステファニー・フォークナー)に頼んで、当日の給仕係として潜り込むことになった。また、曲芸師のリサは得意のアクロバットを使って、外部から侵入することにする。
 一方、ラッキーはカジノの警備員ヴィック(スチュアート・ホイットマン)と親しく、彼から内部の事情をいろいろと聞きだした。それによると、ギャンブル大会には昔馴染みのギャンブラー、ビッグ・ジェイク(ジェシー・ホワイト)が参加するという。彼女はビッグ・ジェイクの同伴者として会場に潜り込むことにした。
 マネージャーのエヴァーサルは冷血な男で、口答えする従業員に暴行を加えるなど朝飯前。実は、彼は裏で武器の密売に絡んでいた。ヴィックもことあるごとにエヴァーサルと衝突する。
 いよいよ、作戦が決行された。ウェイトレスとして潜入したキャロルはケータリング用のカートを準備。そこへ、外から侵入したリサが現金を隠し入れ、自らも中へ忍び込んだ。そして、会場をこっそりと抜け出したラッキーがカートを外へと運ぶ。全てが計画通りに入ったはずだったが、ちょっとした手違いでキャロルがエヴァーサルに捕まってしまう・・・。

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ラッキーはヴィックに本気で惹かれていく

ビッグ・ジェイク(J・ホワイト)の同伴者として会場に潜入したラッキー

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仲間の曲芸師リサ(L・スクラッグス)も計画に参加する

まんまと現金を運び出すことに成功したのだが・・・

 あまりにも単純過ぎて、サスペンスも緊張感もほとんどゼロ。キャロルが敵に捕まってからの展開も、とんでもないくらいのあっけなさにビックリしてしまう。どんでん返しの1つもあって良さそうなもんなのだが、あれよあれよという間に敵を片付けてしまって、一気にハッピーエンドへと突入。なんとも能天気な作品だ。
 監督は『新・ローマの休日』(87年)や『トルネード』(96年)など主にテレビ・ムービーで知られるノエル・ノセック。だからというわけではないが、演出は非常にコンパクトで軽い。まるっきりテレビ映画のノリだ。おっぱいポロリのヌード・シーンすらないというのは、70年代のB級映画としてはいかがなもんかといった感じだろう。
 脚本のウォルター・ダレンバックもテレビでの仕事が多い人で、『探偵ハート&ハート』や『フォール・ガイ』などのヒット・ドラマを手掛けている。また、撮影のスティーブン・M・カッツは『ブルース・ブラザーズ』(80年)や『ゴッド・アンド・モンスター』(98年)を手掛けたカメラマンだが、当時は『メサイア・オブ・ゴッド』(73年)や『スウィッチブレード・シスターズ』(75年)といったグラインドハウス系の低予算映画に数多く関わっていた。
 音楽を手掛けたアラン・シルヴェストリも、後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)や『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94年)、『ポーラー・エクスプレス』(04年)などを手掛けることになる。

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キャロルがエヴァーサルに捕らえられてしまう

カメオ出演しているアンドリュー・スティーヴンス(中央)

 主演は60年代のアイドル女優ステラ・スティーヴンス。『砂漠の流れ者』(70年)と『ポセイドン・アドベンチャー』(72年)で人気再燃するも、残念ながら長続きせず、当時はB級路線まっしぐらだった。
 対するタフガイ俳優スチュアート・ホイットマンも、当時は低予算映画の常連組。『ビッグ・マグナム77』(76年)や『ホワイト・バッファロー』(77年)など一部ではいい仕事もしていたが、大概は本作みたいなネーム・バリューだけの顔見せ出演ばかりだった。
 その他、『ヘルター・スケルター』(76年)の弁護士役で有名なジョージ・ディセンゾ、テレビ『ルーツ』で知られる黒人女優リン・ム−ディ、『ハーヴェイ』(50年)や『セールスマンの死』(51年)で有名な名脇役ジェシー・ホワイトなどが脇を固めているが、みなさんまるで今さっき暗記したばかりのセリフを棒読みしているかのような大根ぶり。って、本当にそうだったりして(笑)
 なお、『復活の日』(80年)にも出ていた黒人女優ステファニー・フォークナーと、ステラ・スティーヴンスの息子アンドリューの2人が小さな役でチラリと顔を出している。

 

 

Don't Go Near The Park (1981)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に未発売

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(P)2006 Dark Sky Films (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/84分/製作:アメリカ

映像特典
未公開シーン集
スプラッター・シーンNG集
監督と女優L・クィグリーの音声解説
フォト・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
テレビ・スポット
監督:ローレンス・D・フォールズ
製作:ローレンス・D・フォールス
脚本:リンウッド・チェイス
    ローレンス・D・フォールズ
撮影:ウィリアム・デ・ディエゴ
出演:アルド・レイ
    ミーノ・ペルーチェ
    リニア・クィグリー
    タマーラ・テイラー
    バーバラ・モンカー
    クラッカーズ・フィン
    クリス・ライリー

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若い娘(L・クィグリー)と結婚するマーク(C ・フィン)

16歳の誕生日を迎えた娘ボンディ(T・テイラー)

 あまりにも不条理な設定と知能指数の低いストーリー、バカ丸出しのセリフに行き当たりばったりな演出、そして見てくれの悪いスプラッター描写の数々で、一部の映画マニアの間では半ば伝説と化している超最低級オカルト・ホラー。見ているだけで頭が悪くなりそうな映画だ。イギリスでは残酷描写が問題となって上映禁止になったらしいが、別の意味でも上映禁止にするべきだった作品かもしれない(笑)
 なので、普通に考えて他人にオススメ出来るような映画ではないのだが、同時にこれほどまでに狂った映画も滅多にないだろう。そういった意味で、一生に一度くらいは見ておいても損はない映画だと思う。多分。

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ヒッチハイクした車の中でレイプされそうになるボンディ

ペンダントの不思議な力で車は大破する

 12000年前の地球。原始人の男女が若さを保つために自分の子供達を食い殺し、魔女から罰として永遠の命を与えられる。年をとっても死ぬことが出来ないという呪いだ。そして現在のロサンゼルス。原始人の男はマーク(クラッカーズ・フィン)と名乗り、若者や子供たちを食い殺しては若さを保っている。一方、原始人の女ペトラネッラ(バーバラ・モンカー)も仮面を被ったまま森を徘徊し、若い女を食い殺して若さを取り戻すが、あっという間に老けてしまう。
 マークはパレードで見かけた若い娘(リニア・クィグリー)に催眠術をかけて結婚し、娘ボンディを授かった。マークとペトラネッラの目的はただ1つ、処女のまま16歳に成長した娘を食い殺すこと。そうすれば、永遠の若さを手に入れることが出来るのだ。
 そして、16歳の誕生日を迎えたボンディ(タマーラ・テイラー)。彼女は父マークからペンダントをプレゼントされた。反抗期の彼女は家出を決意。ヒッチハイクした車の中でレイプされそうになるが、ペンダントが光って車は橋から転落。彼女だけが無傷のまま助かる。
 森へさまよい込んだボンディは、一軒のあばら家を発見。そこはペトラネッラの棲み家で、幼い少年ニック(ミーノ・ペルーチェ)と若者カウボーイ(クリス・ライリー)が居ついている。2人とも家出人だった。町でタフト(アルド・レイ)という作家と知り合ったニックは、ペトラネッラが魔法使いであり、森一帯が呪われていることを知る。
 ペトラネッラが悪人とは信じられなかったニックだが、彼女がキャンプ中の女性を食い殺すのを見て愕然とする。その頃、ボンディは洞窟の中で目覚めた。マークとペトラネッラの2人は、彼女を殺そうとする。すると、ボンディは魔女へと変身し、殺された人々をゾンビとして蘇らせる。こうして、マークとペトラネッラはゾンビの餌食となったのだった・・・。

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たどり着いたあばら家はペトラネッラ(B・モンカー)の棲み家だった

ボンディは家出少年ニック(M・ペルーチェ)と仲良くなる

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作家タフト(A・レイ)は森が呪われていると警告する

次々と若い娘の腹を裂いて食い殺すペトラネッラ

 ・・・という支離滅裂なお話。マークとペトラネッラが、いきなり目から光線を出して攻撃するのには参った。お前らは宇宙人かよ!って(笑)しかも、そのオプチカル効果のチャチなこと。フィルムに傷をつけただけにしか見えないんだから。
 また、監督は人間の腹を裂くのがお好きだったようで、殺しの手口はぜ〜んぶ腹裂き。恐らく特殊メイクが思ったよりも出来が良かったのだろうけれど、バカの1つ覚えとはまさにこのこと。クライマックスで登場するゾンビ集団も、まるで素人の学芸会みたいな出来栄えだ。
 監督のローレンス・D・フォールズは、『ヤングウォリアーズ』(82年)や『ナイトフォース/若き戦士たち』(87年)などのB級アクションで知られる人物。ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド主演のヒューマン・ドラマ“Finding Home”ではモナコ国際映画祭の監督賞など世界各国の映画賞を受賞したらしいが、少なくとも本作を見る限りではクズ映画監督以外の何者でもない。その演出はエド・ウッドがオーソン・ウェルズに思えてしまうくらい酷かったりする。
 また、それに輪をかけて酷いのが脚本の出来。なんかもう、辻褄が合わないとかいう可愛いレベルの問題じゃないのだ。根本から破綻しまくってるもんだから、結局何の話だったのかさっぱり分からないままクライマックスを迎える。これをシュールとは決して呼ぶまい。
 ちなみに、本作で原始時代の美術セットを担当したのはロバート・A・バーンズ。そう、『悪魔のいけにえ』(74年)や『サランドラ』(77年)、『ハウリング』(81年)、『死霊のしたたり』(85年)の美術を担当したデザイナーだ。なんでまたこんな映画を・・・と言いたいところだが、いかんせん『ホラー喰っちまったダ!』(83年)とか『呪いのランプ』(87年)なんていうしょーもない映画にも関わっている人なので(笑)

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洞窟で目覚めたボンディを殺そうとするマーク

殺された人々がゾンビとなって蘇る

 一応、主演はアルド・レイということになっているが、出番はほんの10分程度。『雨に濡れた欲情』(53年)ではリタ・ヘイワースの相手役を演じ、『俺たちは天使じゃない』(55年)ではボギーとも共演したスターだったが、もともと演技が上手いわけでもなく、顔がいいわけでもなかったので、あっという間に脇役へ転落した俳優だった。特に70年代半ば以降はC級Z級映画のオンパレード。それでも仕事があったわけだから、元ハリウッド・スターという肩書きは一生モノの保険なのかもしれない。
 また、本作は80年代〜90年代にかけて活躍したスクリーム・クィーン、リニア・クィグリーの初期出演作としても知られている。彼女も出番は少ないのだが、その分めいっぱい脱ぎまくっているので、ファンならそれだけで十分満足できるだろう。
 ヒロイン役のタマーラ・テイラーはこれが唯一の大役だったみたいだが、本作では唯一まともな演技を見せてくれている。また、家出少年ニック役で大人びた演技を披露している子役ミーノ・ペルーチェも悪くない。彼はこの翌年、“Voyagers!”というテレビのSFドラマに主演して人気を博したようだ。

 

 

陰獣の森/ふりむくな!忍びよる殺人鬼の影
Don't Go In The Woods (1981)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2007 Code Red/Navarre (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL
/83分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー(60分)
TVトークショー映像集
監督による音声解説
女優M・ゲイルと監督による音声解説
ポスター&スチル・ギャラリー
監督:ジェームズ・ブライアン
製作:ジェームズ・ブライアン
脚本:ガース・エリアッセン
撮影:ヘンリー・ジンマン
音楽:H・キングスレイ・サーバー
出演:ニック・マックレランド
    ジェームズ・P・ヘイデン
    メアリー・ゲイル・アーツ
    アンジー・ブラウン
    トム・ドルーリー
    ケン・カーター
    デヴィッド・バース

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キャンプに繰り出す若者たち

次々と殺されていくキャンプ客たち

断崖絶壁から突き落とされる男性

 こちらも80年代を代表するクズ映画として名高い作品。あまりにも酷すぎるがゆえに、ごく一部のマニアから熱烈に愛されている映画だ。ストーリーは、森へキャンプに出かけた若者たちが正体不明の殺人鬼に遭遇するというもの。『13日の金曜日』に端を発するスラッシャー映画ブームの流れを汲んだ作品と言えるだろう。
 ただ、演出やカメラワーク、役者の演技、特殊メイクなど全てが素人レベルで、学生による自主制作映画の域を出るものではない。ホラー映画として云々言う以前に、映画作品として問題アリだ。もちろん、ホラー映画としてもまるっきり怖くない。逆に、こんな映画が商業ルートに乗って劇場公開されてしまったという事実の方がよぽど怖かったりする(笑)
 とはいえ、その一方で妙に微笑ましい映画でもある。全体的にのんびりしているというか、長閑というか。スプラッター・シーンも残酷な割にはあっさりしているし、この種の映画に付きものであるセックス・シーンも皆無。暴力描写にもサディスティックな感覚が全くない。例えるならば、映画好きの田舎者が見よう見まねで撮ってみたホラー映画という感じ。やけに素朴で健康的なのだ。
 恐らく、製作サイドにはホラー映画に対する思い入れや強いこだわりがあまりないのだろう。それを善しとするか否かは個人の好き嫌いだとして、少なくともポップコーン片手に軽いノリで見ることの出来る映画ではある。まあ、いずれにしても酷い映画であることには変わりないのだけれど(笑)

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一人殺され・・・

また一人殺され・・・

仲間と喧嘩別れするピーター(N・マックレランド)

 舞台はユタ州の山岳地帯。ピーター(ニック・マックレランド)とイングリッド(メアリー・ゲイル・アーツ)、クレイグ(ジェームズ・P・ヘイデン)、ジョニー(アンジー・ブラウン)の若い男女4人組は、森の中へキャンプに出かけた。その一方、森では休日を楽しむ人々が何者かによって次々と殺されている。
 腕を斧で切断される若者、断崖の上から突き落とされる男性、ナイフでメッタ刺しにされる中年女性。そうした惨劇に全く気付かないまま、主人公たちは森の奥へと足を踏み入れていった。ふとしたことからピーターとクレイグが仲たがいし、ピーターはグループを離れる。森の中を一人さまよっていた彼は、偶然殺人現場を目撃してしまった。犯人は異様な格好をした巨体の殺人鬼(トム・ドルーリー)。ピーターは命からがら逃げ延びる。
 一方、残された3人は相変わらず気楽にキャンプを楽しんでいた。ところが、イングリッドが場所を離れている隙に、クレイグとジョニーが殺人鬼に襲われる。現場へ駆けつけたイングリッドとピーター。しかし、既にクレイグとジョニーの姿はなかった。
 森の中を歩き回った2人は、荒れ果てた小屋を発見する。中へ入ると、そこは無残な姿となったクレイグの死体が。ここは殺人鬼の棲み家だったのだ。逃げ惑うピーターとイングリッド。それを追う殺人鬼。2人は何とか森を抜け出すことに成功し、ふもとの町へたどり着いた。
 その頃、町では行方不明者の続出が問題になっていた。病院の女医はピーターの話を極限状態から来る妄想だと診断するが、保安官(ケン・カーター)と保安官助手(デヴィッド・バース)の2人は信憑性があると考える。
 やがて、森に残されたままのジョニーを心配したピーターは、彼女を救出すべく森へと戻っていく。そのことに気付いたイングリッドも後を追った。その一方で、保安官と助手の2人は町の人々と共に討伐隊を結成し、殺人鬼を捕らえるべく森の中へと入っていく。

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ついに姿を見せた殺人鬼(T・ドルーリー)

クレイグ(J・P・ヘイデン)が殺される

殺人鬼から逃れたピーターとイングリッド(M・G・アーツ)

 監督のジェームズ・ブライアンは60年代末からインディペンデント映画の世界で活躍する人物。B級西部劇や大衆コメディ、ロジャー・コーマン作品などに強い影響を受けたらしく、“出来の悪い映画こそ面白い”というのが信条だったという。本作についても“冗談のつもりで撮った”と語っているように、もしかしたらあえて下手っクソな演出を狙ったのかもしれない。だとすれば、それを知らずに金を払わされた観客はたまったもんじゃないのだが(笑)
 なお、脚本のガース・エリアッセンや撮影のヘンリー・ジンマンなど、本作のスタッフは殆んどが映画製作に携わるのは初めて。これが唯一の仕事だったという人も少なくない。

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町の人々は討伐対を組織する

一人森に残されたジョニー(A・ブラウン)

保安官助手(D・バース)

 出演している役者たちにしても、当時も今も無名の人々ばかり。唯一、イングリッド役を演じているメアリー・ゲイル・アーツは後にキャスティング・ディレクターとなり、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(93年)や『ラストマン・スタンディング』(96年)、『アイ・アム・サム』(01年)、『蝋人形の館』(05年)などのメジャー作品を担当している。
 また、保安官助手役のデヴィッド・バースは『ニンジャU・修羅ノ章』(83年)にも出演。殺人鬼役を演じているトム・ドルーリーは、地元ユタ州のカントリー・シンガーだったそうだ。

 

 

ブラッディ・バースデイ/天使の顔をした悪魔の子供たち
Bloody Birthday (1981)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2002 VCI Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/85分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
製作総指揮M・ローゼンバーグの独占インタビュー
監督バイオグラフィー
監督:エド・ハント
製作:ジェラルド・T・オルセン
製作総指揮:マックス・ローゼンバーグ
脚本:バリー・ピアソン
    エド・ハント
撮影:スティーブン・L・ポージー
音楽:アーロン・オーバー
出演:ロリー・レシン
    スーザン・ストラスバーグ
    メリンダ・コーデル
    ジュリー・ブラウン
    ジョー・ペニー
    バート・クレイマー
    K・C・マーテル
    エリザベス・ホイ
    ビリー・ジャコビー
    アンディ・フリーマン
    ホセ・ファーラー

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同じ日に生まれたカーティス、デビー、スティーヴン

デート中の若いカップルが殺される

 無邪気そうに見える子供たちが次々と殺人を重ねていくというチャイルド・ホラー。『悪い種子』(56年)や『悪を呼ぶ少年』(72年)、『ザ・チャイルド』(76年)、『危険な遊び』(93年)など、海外ではこの種の作品が決して珍しくない。しかも、こういう映画に限って秀作が多かったりするのも興味深いことだろう。
 本作も低予算映画ゆえのチープさは否めないが、子供であることをいいことに悪事の限りを尽くす鬼っ子たちの憎々しさ、彼らの正体に気付いてしまった主人公たちの恐怖と戦慄などがとても上手く描かれている。皆既月食の間に生まれた子供には人間的な感情が欠落する、という根拠のない設定には無理があるものの、ジワジワと緊張感を盛り上げていくサスペンスフルな演出と脚本はなかなか秀逸だ。優れた低予算映画のお手本みたいな作品と言っていいだろう。

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星占いが趣味の女子高生ジョイス(L・レシン)

常に行動を共にする3人

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保安官を事故に見せかけて殺した子供たち

デイヴィス先生(S・ストラスバーグ)も射殺される

 1970年6月9日。カリフォルニア州のミードウベールという町で、ほぼ同じ時間に3人の子供が生まれる。奇しくも、彼らが生まれたのは皆既月食の瞬間であった。それから10年後の1980年6月1日。デート中の若いカップルが何者かによって絞め殺される。
 デビー(エリザベス・ホイ)、カーティス(ビリー・ジャコビー)、スティーヴン(アンディ・フリーマン)の3人は、10歳の誕生日を控えていた。小学校ではデビーの父親である保安官が殺人事件の起きたことを子供たちに伝え、怪しい人物を見かけたら警察へ通報するように呼びかける。その手に凶器となった縄が握られているのを見て、デビーたちはお互いに目を合わせた。
 その日の午後、帰宅した保安官をデビーたちは事故にみせかけて撲殺した。たまたま、近所に住む少年ティミー(K・C・マーテル)がその偽装工作を目撃してしまう。カーティスとスティーブンはスクラップ置場にティミーを誘い出し、彼を冷蔵庫の中に閉じ込めてしまった。
 何とか脱出することに成功したティミーだったが、姉ジョイス(ロリ・レシン)には真実を伝えられない。一方、次のターゲットとなったのは厳格な女教師デイヴィス先生(スーザン・ストラスバーグ)。父親の遺品である拳銃を盗み出したデビーたちは、朝一番にデイヴィス先生を銃殺する。その死体を発見したのはジョイスだった。彼女は現場から逃げ去るスティーヴンを目撃していた。
 翌日、ティミーの書置きを見たジョイスはスクラップ置場へ向う。だが、それはカーティスとスティーヴンの仕掛けた罠で、2人はスクラップ自動車でジョイスを轢き殺そうとする。また、デビーもティミーをテラスから突き落とそうとするが未遂に終わった。さらに、拳銃を手にしたカーティスは夜の街を徘徊し、通りがかりの若いカップルを嬉しそうに殺害する。
 星占いが趣味のジョイスは、町の人々の誕生日を調べていて奇妙なことに気付いた。デビーたちの生まれた時間帯は皆既月食で、土星が太陽と月の間に隠れてしまう。土星は感情を司る星で、この皆既月食の最中に生まれた子供は人間的な感情が欠落してしまうのだ。
 やがてデビーたちの誕生日が訪れる。盛大なパーティーが開かれたのだが、ジョイスはカーティスの不審な行動に気付いた。ケーキに次々とクリームを付け足しているのである。よく見ると、その手には農薬のビンが。既にみんなはケーキを口にしている。慌てて警告するジョイスだったが、ケーキには何の怪しいところもなかった。子供を疑うなんて、と白い目で見られるジョイス。その姿を眺めながらカーティスたちはほくそ笑んでいた。
 その後もデビーたちは執拗にティミーを襲撃するが、ジョイスに見つかり注意される。彼女は子供たちの言動に不信感を抱くようになっていた。だが、彼らは開き直って見せる。たとえジョイスが警察に相談しても、パーティの席での一件があったため、もう誰も彼女を信用しないだろうと。
 さらに、デビーが隠し持っていた殺害リストを姉ビヴァリー(ジュリー・ブラウン)が発見。デビーは姉を殺害する。度重なる身内の不幸に心労が重なった母親ブロディ夫人(メリンダ・コーデル)は入院し、ジョイスがデビーの面倒を見ることになった。弟ティミーを連れてブロディ家に泊まることになったジョイス。いよいよ、デビー、カーティス、スティーヴンによる殺人ゲームの幕が開く・・・。

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ティミー(K・C・マーテル)を殺そうとするデビー(E・ホイ)

スクラップ置場で自動車に追い回されるジョイス

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楽しそうに人殺しを繰り返すカーティス(B・ジャコビー)

誕生日を迎えた3人のために盛大なパーティが

 この子供たちの憎たらしいこと!無邪気さを装って大人を信用させ、その陰で悪意に満ちた笑顔を浮かべながら人々をなぶり殺しにしていく。映画というのは悪役のキャラが立てば立つほど面白さが増すもんだが、その点でも本作は際立っている。
 また、クライマックスのオチもなかなか気が利いていた。その後の展開をあれこれと想像させてくれるようなエンディングが良い。ある意味で、続編を期待させるような作りとも言えるだろう。
 監督のエド・ハントはロサンゼルスの出身で、UCLAにて映画を学んだ人物。アメリカではなかなか仕事に恵まれず、カナダで監督としてのキャリアをスタートさせた。クリストファー・リーとロバート・ヴォーンを主演に迎えたSF映画『スターシップ・インベージョン』(77年)をヒットさせ、パニック映画『殺人バクテリアM−3』(78年)ではシチェス国際映画祭の批評家賞と最優秀脚本賞を受賞。ドキュメンタリー映画“UFO's Are Real”(79年)でアメリカに拠点を移し、本作の製作に至ったというわけだ。ただ、決定的なヒット作には恵まれず、ホラー映画『ブレイン/鮮血の全国ネット』(88年)を最後に映画界から消えてしまった。
 脚本に参加しているバリー・ピアソンはカナダ出身の脚本家で、エド・ハント監督とは『殺人バクテリアM−3』以降殆んどの作品で組んでいる。撮影監督のスティーブン・L・ポージーは、カルト映画として有名なスラッシャー・ホラー“The Slumber Party Massacre”(82年)や『新・13日の金曜日』(85年)などを手掛けたカメラマンで、90年代以降はテレビ・シリーズの監督としても活躍中。
 また、60年代から70年代にかけてイギリスで数多くのオムニバス・ホラーの秀作を生み出したアミカス・プロの元社長マックス・ローゼンバーグが、本作の製作総指揮を担当しているのも興味深い。上記のアメリカ盤DVDではローゼンバーグの数少ない貴重なインタビュー映像が収録されている。

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姉ビヴァリーを殺害するデビー

ジョイスとティミーの姉弟に危険が迫る

 主人公ジョイス役を演じているロリ・レシンは、80年代に数多くのB級映画で活躍した女優。中でもホラー・コメディ『ハイスクールはゾンビテリア』(86年)のヒロイン役として有名だ。隣のお姉さん的な爽やかさが魅力で、演技力もなかなかしっかりしていた。
 その弟ティミーを演じているK・C・マーテルは、『E.T.』(82年)のいじめっ子グレッグ役で有名な子役スター。『悪魔の棲む家』(79年)で主人公一家の長男を演じていた他、80年代の人気ドラマ『愉快なシーバー家』でもレギュラーを務めている。
 そして、恐るべき子供達を演じている3人の子役も印象的。中でも、天使のような笑顔と悪魔のような微笑を見事に演じ分けたデビー役のエリザベス・ホイと、不敵な笑みを浮かべながら楽しそうに人を殺していくカーティス役のビリー・ジャコビーは抜群に上手い。ジャコビーはテレビ・ドラマ“It's Not Easy”(83年)でティーン・アイドルとなり、主にテレビを中心に活躍を続けているようだ。
 また、80年代にMTVのVDJとして脚光を浴び、歌手としても活躍したジュリー・ブラウンが、デビーの姉ビヴァリー役で顔を出している。その他、テレビの昼メロ・スターとして有名なメリンダ・コーデルがデビーの母親役を、80年代から90年代にかけてアメリカで大人気となったテレビ・ドラマ“Jake and the Fatman”に主演したジョー・ペニーが星占いの研究者ハーディング氏役を演じている。ちなみに、、『アメリカン忍者』(85年)シリーズや『デス・リバー/失われた帝国』(89年)などB級アクションのヒーローとして活躍したマイケル・ダディコフが、ビヴァリーの彼氏役としてワン・シーンだけ登場する。
 そして、『ピクニック』(55年)や『女優志願』(58年)で有名な往年の美少女スター、スーザン・ストラスバーグがオールド・ミスの女教師役で登場。あっという間に殺されてしまう。また、オスカー俳優ホセ・ファーラーも産科医役として特別出演しているが、出番はトータルで2〜3分程度というチョイ役だった。

 

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