Going Shopping (2005)
(P)2007 MTI Home Video
(USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/ステレオ/音声:英語/字幕:スペイン語/地域コード:ALL/106分/製作:アメリカ
映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
ジャグラム監督&V・フォイト音声解説
劇場予告編
バイオグラフィー集
監督:ヘンリー・ジャグラム
製作:ジュディス・ウォリンスキー
脚本:ヴィクトリア・フォイト
ヘンリー・ジャグラム
撮影:ハナニア・ベアー
音楽:ハリエット・ショック
出演:ヴィクトリア・フォイト
ロブ・モロー
リー・グラント
パメラ・ベルウッド
ブルース・デイヴィソン
メエ・ホイットマン
ジェニファー・グラント
ジュリエット・ランドー
シンシア・サイクス
ヘンリー・ジャグロムというと日本では知名度が低いものの、アメリカではインディペンデント映画界のベテランとして有名な中堅監督だ。1960年代半ばから俳優として活躍し、ジャック・ニコルソンやデニス・ホッパー、オーソン・ウェルズらと親交を深め、「イージー・ライダー」('69)の編集コンサルタントも担当している。ウェルズが出演した実験映画“A
Safe
Place”('71)で監督デビューを果たし、「ブルー・ベルベット」でも共演したデニス・ホッパーとディーン・ストックウェル主演の「トラック」('76)で評価を高めた。いわばアメリカン・ニュー・シネマ世代、フラワー・チルドレン世代の申し子的な人物だ。
そんな彼がショッピングとファッションをキーワードに、現代の消費社会における女性心理の謎に迫った映画(ちょいと大袈裟?)が“Going
Shopping”である。ジャグロム夫人で脚本家でもあるヴィクトリア・フォイト扮するファッション・デザイナーの物語を軸に、ショッピングとファッションの大好きな女性たちが次々とカメラの前で本音トークを繰り広げるという構成。要は擬似ドキュメンタリー的な作りというわけだ。
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販売員としても才能バツグンのホリー |
そんな彼女に一大トラブル勃発! |
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ダメ男アダム役のブルース・デイヴィソン |
母の恋人である怪しげな男リッチー |
ヒロインのホリー・G(V・フォイト)は、サンタ・モニカに自らのブティックを構える人気ファッション・デザイナー。目下のところ、一年で最大のイベントである“母の日セール”に向けて準備に余念がない。ところが、そんな大事な時期に重大な問題が発覚する。共同経営者である恋人アダム(ブルース・デイヴィソン)が、彼女に無断で店を抵当に入れて借金をしていたのだ。しかも、期日が迫っているというのに返済のめどが立っていないという。娘のココ(メエ・ウィットマン)は反抗期真っ盛りで言う事聞かないし、情緒不安定の母ウィニー(リー・グラント)も店に入り浸りであれこれとトラブルを巻き起こす。絶体絶命のピンチを切り抜けようと、怪しげな母の恋人リッチー(ジョセフ・フューリー)に頼み込んでサラ金業者に金を借りてみたものの、とんでもなく高い利息にビックリ仰天。上得意であるビバリーヒルズの有閑マダムに助けを請うものの、こちらもダンナに断られてしまう。全ての望みを絶たれたホリーは、最後の手段としてセールの日程を繰り上げてみた。すると、ファッションと買い物に目のない女性たちの間でたちまち噂が広まり、ブティックは文字通り戦乱状態に・・・。
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多感な年頃の娘ココを演じるメエ・ウィットマン |
情緒不安定な母ウィニー役の大女優リー・グラント |
見終わった後の率直な印象は、とにかく“古い”。昔のウディ・アレンかロバート・アルトマンの映画みたいなのだ。しかも、極端な低予算で作られているという事もあって、まるで70年代のインディーズ映画を見ているかのような錯覚を起してしまう。随所で女性たちが自らのショッピング論やファッション論、女性論をカメラに向かって語るという趣向も、まるっきり70年代の実験映画。離婚したカップルの悲喜こもごもの再会を描く「デイブとジュディ〜二人の離婚記念日〜」('85)やカンヌ映画祭の舞台裏をドキュメンタリー・タッチで描いた「カンヌ 愛と欲望の都」('02)もそうだったが、この人はウディ・アレンやロバート・アルトマンが散々やり尽くしたような作風を延々と真似し続けているのだ。自分が若かった頃のトレンド・ファッションをそのまま引きずってる中年のオジさんやオバさんを見かける事があるが、ジャグロムの映画はまさにそんな感じ。70年代当時は斬新だったスタイルが、すっかり古臭い保守的なものになってしまっているとは何たる皮肉。
本作ではサイド・ストーリーとしてホリーと年下の男性マイルズ(ロブ・モロー)のロマンスが進行するのだが、あまりにもアッサリとしてしまっていて消化不良。母ウィニーの万引き癖の発覚や一癖あるサラ金オヤジのエピソードなど、いろいろと詰め込んではみたものの全てが空回りしてしまっている。最後のハッピー・エンドにしても唐突過ぎてしまい、まるで取ってつけたような不自然さ。根本的にプロの映画監督としての技量が欠けているのだ。それも30年前なら、荒削りで青臭いアンチ・ハリウッドの映画青年として評価されたことだろう。しかし、そのまま全く成長しなかったのは致命的だった。本人もインタビューで“リハーサルなんかやらない”、“演出なんか必要ない”と豪語しているが、キャリア30年以上のベテラン監督の言うセリフではなかろうに。いったい自分が幾つだと思ってるんだ!
ということで、80歳になる往年のオスカー女優リー・グラント(大ファンです!)、人気テレビ・ドラマ「NUMBERS」でもお馴染みのロブ・モロー、「いちご白書」や「ウィラード」で有名なブルース・デイヴィソン、往年の大ヒット・ドラマ「ダイナスティー」でブレイクしたパメラ・ベルウッドなど錚々たる役者がアドリブ満載の演技を繰り広げているが、ジャグロムの“演出”はそれをただカメラに収めるだけに終始。まるで映画学校を卒業したばかりの素人監督が撮ったような作品に仕上がってしまっている。いやぁ人間、過去に縛られてちゃいかんですな。
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年下の好青年マイルズ役のロブ・モロー |
買い物大好きな女心が奇跡を起す・・・? |
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