ジャッロ ベストセレクション
PART5

 

Malocchio (1975)
日本では劇場未公開・テレビ未放送
VHS・DVD・BDなどの日本発売なし

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(P) BCI Eclipse Company (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/音声:モノラル/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/93分(※)/製作:イタリア・スペイン・メキシコ
※ジャケット表記は89分

<特典映像>
予告編ギャラリー(グラインドハウス仕様)
監督:マリオ・シシリアーノ
脚本:フリオ・ブックス
   フェデリコ・デ・ウルチア
   マリオ・シシリアーノ
撮影:ヴィセンテ・ミナヤ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:アンソニー・ステファン
   リチャード・コンテ
   ホルヘ・リヴェロ
   ピラール・ヴェラスケス
   エドゥアルド・ファヤルド
   ダニエラ・ジョルダーノ
   ピア・ジャンカーロ
   ルイス・ラ・トーレ
   エヴァ・ヴァニチェク
   アラン・コリンズ
   ローン・フレミング

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大金持ちのプレイボーイ、ピーター(J・リヴェロ)

ピーターは毎晩見る悪夢に悩まされていた

ピーターに殺される予知夢を見たというイヴォンヌ(L・フレミング)

<Review>
 これは珍しくメキシコ資本の入ったジャッロである。ハリウッドでも知名度のあるメキシコの2枚目トップスター、ホルヘ・リヴェロがキャスティングされているせいだろう。一応、クレジット上はアンソニー・ステファンとリチャード・コンテという伊・米の大御所が主演扱いになっているものの、実質的な主役はあくまでもホルヘ。恐らく「ローズマリーの赤ちゃん」をお手本にしたであろう、オカルト的要素の濃厚な猟奇サスペンスとなっている。
 主人公はリッチでハンサムなプレイボーイの青年ピーター。奇妙な悪夢に悩まされている彼は、亡き父の親友である精神科医ストーン博士に助けを求める。夢の中に出てくる怪しげな邪教集団、頻繁に飛んでしまう自分の記憶。そうこうしているうちに、ピーターの周りでは関係者が次々と無残な死を遂げていく。正気を失いつつある自分に言い知れぬ不安を感じるピーターだったが…。
 一般的な猟奇サスペンスだと、主人公に恨みを持つ何者かが彼を貶めようとして犯行を重ねているのか、それとも主人公自身が凶行に及んだものの記憶がないだけなのか、果たして真相は…?という犯人探しがミステリーの焦点となるところなのだが、本作の場合は早々にピーター自身が実行犯であることを明かしてしまう。その代わりとして謎を残すのは、犯行直前のピーターがまるで別人のように豹変してしまうこと、その間の本人の記憶が完全に飛んでしまうこと、そして殺人の予兆としてポルターガイスト現象が起きること。さらには、ピーターの意識が戻ると惨劇の痕跡が一切なくなっている点も要注目であろう。
 つまり、これらの現象が夢の中に出てくる邪教集団と何らかの関係があるのか、もしかすると彼は目に見えない邪悪な力によって操られているのではないか、という超自然的な要素がミステリーの主軸と深く関わってくるのである。周りの人間の誰もがどことなく怪しい…という点も含め、少なからず「ローズマリーの赤ちゃん」に影響されたであろうことは想像に難くない。
 監督は主にアクション映画や戦争映画で知られるマリオ・シシリアーノ。なにげにポリス・アクション的なタッチが感じられるのはそのせいかもしれないが、それでもオカルトっぽい雰囲気作りはなかなか悪くない。全体的に残酷シーンが控えめなのも、謎解きの核心が論理的に説明がつくものなのか、それとも超自然的なものなのかを曖昧にするという意味において正解だったように思う。
 ただ、いかんせんテンポが遅い。いろいろと謎を散りばめつつ、じわじわと恐怖を高めていこうという算段だったのかもしれないが、全てにおいて核心を溜めすぎなのだ。引き際を知らないというのだろうか。しかも、結末は観客の想像に委ねることにしてしまったため、何一つとして謎が解明されないまま突然ジ・エンドとなる。もちろん、タネ明かしをしないことが悪いんじゃない。結果的に、ただ延々と謎を羅列することだけに終始してしまったことが問題なのだ。つまり、謎の向こう側に隠された“何か”を観客に想像させるだけの要素、つまりドラマが決定的に欠如してしまったのである。要は、中身が空っぽということだ。これはなんともいただけない。
 とりあえず、先述したように雰囲気だけはいい。あとステルヴィオ・チプリアーニのスウィート&メロウな音楽スコアも絶品。また、やたらとイケメン男優のマッチョなヌードが多いのも興味深い。スペイン産娯楽映画ファンにはお馴染みのピラール・ヴェラスケスを筆頭に、ラテン系のセクシー女優が何人も出ているにも関わらず、カメラの前で脱ぐのは男優ばかりというのはちょっと珍しい。なんだろう、ゲイ・マーケットでも意識したのだろうか(笑)?

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診察をするストーン博士(R・コンテ)と助手サラ(P・ヴェラスケス)

ピーターは謎の脅迫電話を受けるようになる

彼と肉体関係にあったというエリザベス(D・ジョルダーノ)だが…

<Story>
 ハンサムで遊び人のピーター・クレイン(ホルヘ・リヴェロ)は、亡き父親の残した莫大な財産のおかげで、放蕩三昧の自堕落な毎日を送っていた。しかし、最近になって奇妙な悪夢に悩まされるように。それは、怪しげな男女たちの繰り広げる黒ミサの様子だった。あまりにもリアルな上に毎晩続くことから不安を隠せないピーターだったが、恋人のターニャ(ピア・ジャンカーロ)や親友ロバート(ルイス・ラ・トーレ)にもなかなか相談できないでいる。
 そんなある晩、彼はとあるバーでイヴォンヌ(ローン・フレミング)というフランス人女性と知り合う。彼女とは全くの初対面だったが、なぜかイヴォンヌはピーターの名前を知っていた。彼女の夢の中に現れた不気味な男が、“お前はピーター・クレインに殺される”という言葉を残したのだという。一度は帰宅したもののイヴォンヌの話が妙に気にかかったピーターは、再び店へ戻って彼女を自宅へ招いた。話をしているうちにいいムードになってきた2人だったが、突然ピーターの顔つきが豹変する。まるで何かに取り憑かれたかのごとく鬼の形相となり、さらには周辺の家具が勝手に動き始めた。そして、彼は恐怖に凍りつくイヴォンヌの首を絞めて殺害するのだった。
 翌朝目覚めたピーターは、連れてきたはずのイヴォンヌの姿がないことを怪訝に思う。昨晩の記憶が全くないのだ。執事ウォルター(エドゥアルド・ファヤルド)に尋ねても、イヴォンヌという女性など全く知らないという。自分は気が触れてしまったのではなかろうか。いてもたってもいられなくなったピーターは、亡き父の親友である精神科医ストーン博士(リチャード・コンテ)とその助手であるサラ・ターナー医師(ピラール・ヴェラスケス)に助けを求めた。
 ピーターの相談を受けたストーン博士とサラだったが、特に目立った精神異常の兆候は見られない。ただのストレスという可能性が大きかった。だが、ピーターの不安はぬぐい去れない。さらに、彼のことを殺人犯だとほのめかすような脅迫電話までかかってくるようになった。恋人ターニャとの関係も険悪になりつつある。
 ピーターは気分転換のため、週末を田舎で一人過ごすことにした。だが、その途中で車が故障してしまう。電話を借りるために近くの民家を訪れるピーター。迎え入れた家主のデレク(アラン・コリンズ)と妻エリザベス(ダニエラ・ジョルダーノ)は、どうやら彼と面識がある様子だった。しかも、エリザベスはピーターと肉体関係にあったらしい。だが、彼本人は夫妻のことを全く覚えていなかった。しかも、つい今しがた道で出会った老女が夫妻の亡くなった叔母であることを知り、ピーターはすっかり頭が混乱してしまう。そしてその次の瞬間、彼はまたしても鬼の形相に変貌し、まずは妻エリザベスを、そして悲鳴を聞いて駆けつけた夫デレクを殺害するのだった。
 翌日になって殺人事件のことを知ったピーターは、自分が犯人なのではないかと底知れぬ不安に陥る。そんな彼を精神的に支えるのは、今や相思相愛の関係になったサラだった。しかし、自分に対する疑いを晴らすことのできない彼は、ストーン博士に頼んで病室に監禁してもらうことにした。ところが、再び発作を起こした彼はテレキネシスのようなパワーを使い、無意識のうちに病院を抜け出してしまう。そしてその晩、親友のロバートが殺害された。
 ストーン博士の通報を受けて病院を訪れた警察のラニエリ刑事(アンソニー・ステファン)は、ロバート殺害の状況が一連の殺人事件と酷似していることに着目する。おのずと疑惑の目はピーターへ向けられたが、決定的な証拠となる手がかりは見つけられなかった。そんな彼の身にもまた危険が迫りつつあった。
 一方、意識の戻ったピーターが自宅へ戻ると、執事ウォルターが自分の妻(テレール・パヴェス)を家に連れ込んで悪巧みの相談をしていた。例の脅迫電話の主はウォルター夫妻だったのだ。ショックを受けたピーターはサラの家に身を寄せる。きっと全てはウォルターたちがピーターを陥れるための策略に違いないと考えるサラ。しかし…?

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エリザベスの夫デレク(A・コリンズ)も殺される

一連の殺人事件を捜査するラニエリ刑事(A・ステファン)

お互いに惹かれ合っていくピーターとサラ

<Information>
 冒頭でも述べたように、マリオ・シシリアーノ監督は主にアクション映画を数多く手がけた人物。特に低予算の戦争映画を得意としていたが、その一方で西部劇やセックス・コメディなども少なくない。あのマカロニ・ヒーロー、サルタナ・シリーズも何本かやっていた。ただ、これといったヒット作をモノにできなかったこともあり、一時はリー・キャッスル名義でハードコア・ポルノを撮っていたことも。恐らくホラー映画はこれ1作だけではないかと思う。
 脚本のフリオ・ブックスとフェデリコ・デ・ウルチアは共にスペインの出身。中でも、ウルチアは「アヴェ・マリアのガンマン」('69)など数多くのマカロニ・ウェスタンを手がけている。また、ブックスは主にコメディや西部劇の映画監督としても知られており、2人で脚本・監督のコンビを組んだ作品も少なくなかった。
 撮影監督を手がけたヴィセンテ・ミナヤもスペイン人で、スパニッシュ・ホラーの名匠アマンド・デ・オソリオ監督のエクソシストもどきホラー“La endemoniada”('75)なんかを手がけていた人。彼は照明の使い方が非常に凝っており、低予算でも見栄えのする画を撮ることができる。また、「テンペスト」('58)や「皇帝のビーナス」('62)などの大作から「ルチオ・フルチの新デモンズ」('90まであらゆるジャンルの映画を手がけたオテロ・コランゲリが編集を、「オーソン・ウェルズのフォルスタッフ」('65)を手がけたホセ・アントニオ・デ・ラ・ゲッラが美術デザインを担当。そして、イタリア映画音楽を代表するメロディメーカー、ステルヴィオ・チプリアーニが素晴らしい音楽スコアを聴かせてくれる。

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ピーターの症状はどんどん深刻なものになっていく

脅迫電話の主は執事のウォルター(D・ファヤルド)だった

ピーターに疑惑の目を向けるラニエリ刑事にも危険が…

 主人公ピーター役を演じているホルヘ・リヴェロは、もともとメキシコの西部劇やプロレス映画で注目を浴び、その端正なマスクとマッチョな肉体でブレイクした俳優。ハリウッドにも招かれ、ジョン・ウェインの「リオ・ロボ」('70)やチャールトン・ヘストンの「大いなる決闘」('76)で大役を務めた。いかにもラテン系のプレイボーイというルックスはピッタリだし、鍛え抜かれた体を惜しげなく見せるサービス精神(?)もバッチリだが、その一方で演技はやや大味な印象だ。
 ラニエリ刑事役のアンソニー・ステファンはマカロニ・ウェスタンのヒーローとしてお馴染みだろう。貧相なクリント・イーストウッドという感じで日本ではあまり人気が出なかったものの、本国イタリアでは大変な売れっ子だったらしく圧倒的に主演作が多い。確かに見栄えは良くないかもしれないが、意外にも味のある演技をする役者だと思う。本作でもクレジットとは裏腹に出番はかなり少ないが、存在感は十分に発揮していると言えよう。
 どこか怪しげな雰囲気のあるストーン博士役には、「都会の叫び」('48)や「他人の家」('49)などフィルムノワールの名作に数多く主演した往年のハリウッドスター、リチャード・コンテ。「ゴッドファーザー」('72)のドン・バルジーニ役で強い印象を残したことからイタリア産マフィア映画に声がかかるようになり、晩年はイタリアでの仕事がとても多かった。
 ヒロインのサラを演じているピラール・ヴェラスケスはスペイン出身のセクシー女優で、特にマカロニ・ウェスタンのヒロインとして引っ張りだこだった人。執事ウォルター役のエドゥアルド・ファヤルドも同じくスペイン出身で、マカロニ・ウェスタンやホラー映画の悪役として知られる名優だ。
 また、当時イタリアで大人気だったグラマー女優ダニエラ・ジョルダーノが、あっという間に殺される妖艶な人妻エリザベス役としてゲスト出演。その夫デレク役にはマリオ・バーヴァ作品の常連として知られる怪優アラン・コリンズ(本名ルチアーノ・ピゴッツィ)、最初に殺されるフランス人女性イヴォンヌ役にはスパニッシュ・ホラーの傑作「エル・ゾンビT死霊騎士団の覚醒」('72)のヒロインとして知られるローン・フレミング、ウォルターの妻役にはスペインの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品の常連でゴヤ賞ノミネートの経験も多数ある名女優テレール・パヴェスが扮している。

 

Follia Omicida (1981)
日本では劇場未公開・テレビ未放送
VHS・DVD・BDいずれも日本未発売

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(P) Raro Video/Minerva Pictures (Italy)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イタリアPAL盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/音声:2.0chモノラル/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:ALL/93分/製作:イタリア・フランス

<特典映像>
セルジョ・スティヴァレッティ インタビュー
イタリア版未収録シーン
監督:リカルド・フレーダ
製作:エンツォ・ボエターニ
   ジュゼッペ・コルーラ
   シモン・ミズライ
脚本:ファビオ・ピッチョーニ
   チェーザレ・コルティ
   リカルド・フレーダ
撮影:クリスティアーノ・ポガニー
音楽:フランコ・マンニーノ
出演:ステファノ・パトリーツィ
   シルヴィア・ディオニシオ
   アニタ・ストリンドバーグ
   ジョン・リチャードソン
   マルティーヌ・ブロシャール
   アンリ・ガルサン
   ラウラ・ジェムサー

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スランプに陥った映画俳優マイケル(S・パトリーツィ)

恋人デボラ(S・ディオニシオ)を連れて実家を訪ねる

病弱な母グレンダ(A・ストリンドバーグ)と再会

<Review>
 一部ではマリオ・バーヴァと並んで“イタリアンホラーの創始者”とも呼ばれるリカルド・フレーダ監督の遺作である。どちらかというと歴史劇や文芸映画を得意とした彼がなぜバーヴァと比較されるかというと、ひとえにイタリア映画最初の本格的ホラー作品である“I Vampiri”('57)を手がけたから。ホラーというジャンルに特別の思い入れはなかったらしく、50本近いフィルモグラフィーの中でもホラー作品は10本にも満たない。とはいえ、”L'orribile segreto del Dr.Hichcock”('62)や”Lo spettro”('63)のような古典的ゴシック・ホラーの隠れた小品佳作も残している。それだけに、最後の作品がこんなみすぼらしいC級スプラッターとなってしまったのはとても残念だ。
 スランプに陥った映画スターのマイケルが、恋人デボラや仲間を連れて久々に実家へと戻る。出迎えたのは病弱の母グレンダと召使オリヴァー。この古びた広い豪邸は、マイケルにとって忌まわしい記憶の残る場所だった。というのも、彼は幼い頃に実の父親を殺していたのだ。少年時代を精神病院で過ごした彼は、それ以来初めて実家へ足を踏み入れたのである。既に過去のトラウマを克服したかに思えたマイケルだったが、少しづつ少しづつ奇妙な態度を取りはじめる。やがて、一人また一人と殺されていくゲストたち。果たして犯人は再び精神を病んでしまったマイケルなのか、それとも…!?
 というわけで、とにかく演出から何からひどく古臭い。そりゃ30年以上前の映画なのだから古臭くても仕方ないだろうと思われるかもしれないが、本作におけるフレーダの演出センスは当時ですら恐らく時代錯誤だったのではないだろうか。誤解のないように言っておくと、とりあえず時代のトレンドを意識はしている。露骨で下世話な性描写などはその最たるものだろう。音楽スコアのゴブリン的なシンセサウンドも80年代的ではある。しかし、使い古された型通りのショック演出や安っぽいカメラワークは、それこそ'60年代にレナート・ポルセッリやピエロ・レニョーリなどが撮っていたキワモノホラー映画と大差ないようなクオリティ。とても当時キャリア40年近くあるベテランの仕事とは思えない。
 それに輪をかけて酷いのが脚本だ。登場人物の不自然な行動やわざとらしいセリフなど、明らかにストーリーの辻褄合わせといった感じ。都合の良すぎる展開ばかりで苦笑いするしかない。さりげなくほのめかすべき手がかりなども必要以上に強調しすぎているため、何一つとして驚きも恐怖もない。終盤のどんでん返しはアイディアこそ悪くないものの、どうにも見せ方が下手っクソ。しかも、最後の最後でオカルトパワーに頼るのは卑怯なやり口だ。
 そうそう、無名時代のセルジョ・スティヴァレッティが絡んだという特殊メイクも凄まじい。もちろん悪い方向で。何がどうしてこうなったのか分からないが、まるっきり高校生の自主制作ホラーレベルのお粗末な仕上がりなのだ。斧でカチ割られる頭はハリボテのダミーヘッドだし、チェーンソーによる首切りシーンだって作り物の首に女優が顔を乗せているだけというのが丸分かり。せめてつなぎ目くらいは隠そうよ(笑)。
 少なくとも、これがイタリア映画黄金期の一端を担った名匠の仕事だということを考えると、なんともいたたまれない気持ちにさせられる作品。そう言う意味では、コアなイタリア映画ファンなら一度くらい見ておいてもいいかもしれない。

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マイケルの仕事仲間たちもやって来た

映画監督ハンス(H・ガルサン)に息子の秘密を話すグレンダ

ゲストを嫌う召使オリヴァー(J・リチャードソン)

<Story>
 ホラー映画の撮影で相手役の首を本気で締めてしまった人気俳優マイケル(ステファノ・パトリーツィ)は、このところの落ち込んだ気分を紛らわせるために恋人デボラ(シルヴィア・ディオニシオ)を連れ、長いこと帰っていない田舎の実家を訪ねることにする。広大な敷地の豪邸に住んでいるのは病弱の母グレンダ(アニタ・ストリンドバーグ)と、マイケルが幼い頃から働いている召使オリヴァー(ジョン・リチャードソン)の2人だけ。かつて色とりどりの花の咲き乱れた豪邸も、今では幽霊屋敷のように寂れてしまっている。体調の優れない母グレンダは息子との再会を喜ぶものの、デボラに対してはどことなくよそよそしかった。
 翌日、マイケルの仕事仲間たちが屋敷へとやって来る。映画監督のハンス(アンリ・ガルサン)、製作者のシャーリー(マルティーヌ・ブロシャール)、そして女優のベリル(ラウラ・ジェムサー)。新作映画のロケハンをしようというのだ。召使のオリヴァーは騒々しい業界人たちに冷たい視線を向ける。また、グレンダは息子がなぜ長いこと実家に寄りつかなかったのかをハンスに語った。マイケルは幼い頃に実の父親を刺殺していたのである。
 父親は高名なオーケストラ指揮者だったが、私生活では大変な暴君だったという。ある晩、グレンダが夫から暴行を受けていたところ、母親を助けようとしたマイケルは思い余って父をナイフで刺してしまったのだ。その後精神病院へ送られた彼は、治療を終えて一人前の社会人になったものの、この忌まわしい思い出の残る屋敷へは帰ろうとしなかったのである。
 その晩、入浴中のベリルが何者かに襲われて殺されかけてしまう。また、グレンダの冷たい態度に居心地の悪さを感じていたデボラは、さらに恐ろしい悪夢にうなされたことからすっかり精神的に参っていた。だが、マイケルにはそんな彼女を心配する様子が見受けられない。どことなく心ここにあらずという感じで、それが一層のことデボラの不安を煽るのだった。
 翌朝、マイケルと仲間たちは近くの森へロケハンに向かった。湖のほとりで語り合っていたマイケルとベリルは、気づくとお互いの肉体を求め合っていた。その一部始終をハンスがカメラで隠し撮りしていることも知らず。そして、いつの間にか眠っていたマイケルが目を覚ますと、隣には腹を裂かれたベリルの死体と血だらけのナイフが。マイケルは自分が殺してしまったものと思い、パニックに陥ってその場を逃げ出した。
 一方、思いがけず殺人現場を目撃してしまったハンスは屋敷へと戻り、メモを残して警察署へ向かおうとする。だが、部屋の外で待ち構えていた何者かによって斧で頭をカチ割られてしまった。犯人はハンスの死体とメモを片付ける。さらに、ハンスの残したカメラのフィルムを現像しようとしたシャーリーも、チェーンソーで首を切られて殺されてしまう。
 森へ出かけたまま帰ってこないマイケル立ちのことを心配するデボラは、落ち着き払った様子で夕飯を食べるグレンダを訝しく思っていた。ふと見ると、グレンダの胸元には奇妙なペンダントが。それは悪夢の中で見た悪魔崇拝者が身につけていたものと一緒だった。嫌な予感がして屋敷内を探したデボラは、衣装ケースに隠されたシャーリーの生首を発見。恐怖のあまり外へ飛び出した彼女は、マイケルを探して森の中をさまようが、背後から近づいた何者かに捕まってしまう。
 その頃、茫然自失のマイケルが屋敷へと戻ってきた。再び人を殺してしまった、自分はやはり異常者なのだろうか。絶望の淵へ追いやられた彼に、母グレンダは衝撃的な事実を語り始める…。

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デボラは恐ろしい悪夢にうなされた

マイケルと浮気したベリル(L・ジェムサー)が殺される

斧で頭をカチ割られたハンス…(^^;

<Information>
 戦前に脚本家として映画界入りしたリカルド・フレーダ監督は、いわゆる大衆娯楽作品を得意とする職人監督として戦後のイタリア映画黄金期を支えた人物だった。中でも特に本人が好んだのは大型の歴史ドラマや文芸ドラマ。現場ではかなりの暴君だったらしく、助監督時代に苛められたルチオ・フルチなどはのちのちまで恨んでいたらしいが、大勢のスタッフやエキストラを強気で指揮する豪腕ぶりはプロデューサーに高く評価されていたようだ。ただ、そんな感じなもんだから、おのずと彼の作品は芸術性よりも力技的なスケールで見せるものが多い。手がけた作品数のわりに名作と呼ばれるものが少ないのはそのせいだろう。
 脚本を手がけたファビオ・ピッチョーニは'60年代からマカロニ・ウェスタンやホラーなどの娯楽映画を手がけてきた人物。ただ、どれも超マイナーな作品ばかりだったようだ。もう一人のチェーザレ・コルティは、ウンベルト・レンツィ監督のC級ゾンビ・パニック映画「ナイトメア・シティ」('80)に参加していた。まあ、なんとなくどうりで…といった感じの顔ぶれだ。
 撮影監督を担当したのは、セックス&バイオレンス映画の怪作「白昼の暴行魔」('78)で知られるカメラマン。「ふたりの女」('60)や「皇帝のビーナス」('62)で有名な大物撮影監督ガボール・ポガニーの息子で、'80年代にはハリウッドでテレビ映画を何本か手がけたこともある中堅だ。さらに、美術デザインを「野獣暁に死す」('68)や「タイタンの戦い」('81)のジョルジョ・デシデーリ、音楽スコアをハリウッド映画「悪魔をやっつけろ」('53)やヴィスコンティの「イノセント」('76)を手がけたフランコ・マンニーノが担当。
 さらに、特殊メイクには「デモンズ」('85)や「ザ・トレイン」('89)のアンジェロ・マッテイと、当時まだ駆け出しだった「フェノミナ」('85)や「デモンズ95」('94)のセルジョ・スティヴァレッティが参加している。一応マッテイの方が師匠格で、スティヴァレッティはその弟子ということで現場に入ったものの、実際のところは2人ともまだ素人に毛が生えたような状態だったらしい。なので仕事はほとんど暗中模索。フレーダ監督にはしょっちゅう怒鳴られていたそうだ。
 なお、本作で晩節を汚す結果になってしまったフレーダ監督だが、実はフランスの巨匠ベルトラン・タヴェルニエ監督の名作「パッション・ベアトリス」('87)の第2班監督としてひっそりと現場復帰をしていた。本人によると、同じくタヴェルニエが監督した「ソフィー・マルソーの三銃士」('94)はもともとフレーダが演出を手がけるはずだったが、プロデューサーとの意見の違いで直前に解雇されてしまったという。真偽のほどは定かでないのだけど。

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シャーリー(M・ブロシャール)はチェーンソーで首を…(笑)!?

マイケルを探して森をさまようデボラだったが…

グレンダは衝撃的な事実を息子に告白する

 主人公マイケルに扮するステファノ・パトリーツィは、巨匠ルキノ・ヴィスコンティの「家族の肖像」('74)でシルヴァーナ・マンガーノの娘の恋人を演じていた俳優。一時期はポリス・アクションもので活躍していたが、正直なところ主役を張るようなタイプでは全くない。本作でも存在感はほぼゼロ。出演者の中でも一番影が薄いというのは由々しき問題だ。
 その恋人デボラには、トニーノ・ヴァレリ監督のメロドラマ「ジュールの恋人」('70)でタイトルロールを演じていた女優シルヴィア・ディオニシオ。'70年代のイタリアで最も高い人気を誇った女性セックスシンボルの一人だが、同時にルッジェロ・デオダート監督の元奥さんとしても知られているかもしれない。
 さらに、マイケルの母グレンダ役を演じているのがスウェーデン出身のセクシー女優アニタ・ストリンドバーグ。'70年代のジャーロには欠かせない存在で、数々の名作で重要な役どころを演じた人だ。ただ、本作の場合は主人公の母親役としていくらなんでも見た目が若すぎる。もちろん、ヌードを含む回想シーンがあることを大前提にしてのキャスティングだったことは想像に難くないのだが、それならそれでもうちょっと説得力のある老けメークをすべきだったろう。
 一方、召使のオリヴァー役を演じるジョン・リチャードソンも、現在と過去とでほとんど変わっていないのが同じく不自然。ていうか、顔をちょっと青白くしてみただけじゃん!て感じ(笑)。リチャードソンはマリオ・バーヴァ監督の傑作「血ぬられた墓標」('60)でバーバラ・スティールの相手役を演じたイギリス人俳優で、これをきっかけに「炎の女」('65)や「恐竜100万年」('66)などのハマー・プロ作品で活躍した人だった。
 そのほか、「修道女ジュリアの告白」('73)や「ヘンリー・ミラーの愛した女たち」('90)などイタリア映画を中心に息の長い活躍を続けたフランス女優マルティーヌ・ブロシャール、「扉の影に誰かいる」('71)や「隣の女」('81)など数多くの作品に出演しているフランスの名脇役アンリ・ガルサン、「愛のエマニエル」('75)をはじめとする“褐色のエマニエル”シリーズでお馴染みのセクシー女優ラウラ・ジェムサーが脇を固めている。

 

ドレスの下はからっぽ
Sotto il vestito niente (1985)
日本では劇場未公開/テレビ放送あり
VHSは日本発売済/DVD・BDは日本未発売

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(P)2008 Another World Entertainment (DM)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(デンマークPAL盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/音声:2.0chモノラル/言語:英語・イタリア語/字幕:デンマーク語・ノルウェー語・スウェーデン語・フィンランド語/地域コード:2/90分/製作:イタリア

<特典映像>
予告編ギャラリー
フィルモグラフィー集
監督:カルロ・ヴァンツィーナ
製作:アキーレ・マンゾッティ
原作:マルコ・パルマ
脚本:カルロ・ヴァンツィーナ
   エンリコ・ヴァンツィーナ
   フランコ・フェリーニ
撮影:ジュゼッペ・マッカリ
音楽:ピノ・ドナッジョ
出演:トム・シャンレイ
   ルネ・シモンセン
   ドナルド・プレザンス
   ニコラ・ペリング
   マリア・マクドナルド
   キャサリン・ノイス
   アンナ・ガリエナ

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ミラノでモデルとして活躍するジェシカ(N・ペリング)

アメリカに住む双子の兄ボブ(・シャンレイ)は突然ビジョンに襲われる

それは何者かがジェシカを殺そうと狙う様子だった

<Review>
 '70年代末にはすっかりブームも下火になったジャッロだったが、巨匠ダリオ・アルジェントが原点回帰した「シャドー」('82)の大ヒットやによって再び火がつき、時代のトレンドを取り入れた新たなジャッロがにわかに量産され始めた。「ハロウィン」('78)や「13日の金曜日」('80)をはじめとするスラッシャー映画の世界的なブームも、それを後押ししていたと言えるだろう。そんな第二次ジャッロ・ブームを代表するヒット作の一つがこれ。イタリアならではのファッション業界を舞台にした、スタイリッシュで官能的な猟奇サスペンスである。
 新進ファッションモデルのジェシカが、ミラノのホテルから忽然と姿を消した。彼女の身に危険がおよんだことを直感した双子の兄ボブは、妹の行方を探すべくアメリカからイタリアへと飛ぶ。何一つとして手がかりがつかめぬ中、ジェシカの友人だったモデルが次々と殺されていく。やがて浮かび上がる隠蔽された過去の忌まわしい事件。果たして、ジェシカは事情を知る何者かに消されたのか、それとも…?
 原題をそのまま直訳したタイトルは、表層的な美しさのみで賞賛されるファッションモデルという存在を皮肉ったもの。大衆は華やかに着飾った彼女たちの容姿ばかりを崇拝し、そのドレスの下の中身には全く興味を示さない。つまり、中身はからっぽ同然ということだ。しかし、もちろんモデルだって人間。姿形が美しいからといって中身もそうとは限らない。
 ジェシカの行方を探してファッション業界を垣間見たボブは、富や名声、セックス、ドラッグなどの生々しい欲望にまみれたその実情を目の当たりにして“まるで別世界を見ているようだ”とため息をつく。だが、そんな彼に警察のダネーシ警部が言う。それは間違っている、君は我々の住む社会をちょっと違う角度から見ただけに過ぎないのだと。これは、上辺の豊かさや贅沢ばかりがもてはやされる、現代の物質社会を暗に揶揄した作品だとも言えるだろう。
 イタリアの著名なファッション誌編集者パオロ・ピエトローニが、マルコ・パルマのペンネームで書いた同名小説が原作。さすがにこの原作までは読んだことはないが、ファッション業界で起きたモデル失踪事件を主人公である雑誌編集長の日記形式で綴った推理小説で、殺人事件の謎解きよりも作者の実体験を基にしたスキャンダラスな描写に重点が置かれた作品だったようだ。
 これをそのまま映画にしてもあまり面白くないと感じた脚本のヴァンツィーナ兄弟は、アメリカ人モデルがリッチなイタリア人の遊び人に殺されたという実在の殺人事件をヒントにしつつ、当時イタリアで人気のあったブライアン・デ・パルマ監督の「ボディ・ダブル」('84)をお手本にして脚本を書いたという。双子の兄妹がテレパシーで通じ合っているという設定も、デ・パルマの「フューリー」('78)がお手本なのだそうだ。
 
さらに、クライマックスのスローモーションはダリオ・アルジェントの「4匹の蠅」('71)へのオマージュ。そういった意味では、確かにマニアが思わずニンマリしてしまうようなネタが散りばめられており、サスペンス映画ファンやジャッロ・ファンならば少なからず楽しめることであろう。個人的になんとも言えず愛着がある理由もそこだ。
 相変わらず絶妙な演技を披露してくれる名優ドナルド・プレザンスの出演も嬉しいし、「殺しのドレス」を彷彿とさせるピノ・ドナッジョの音楽スコアも素晴らしい。随所に挿入される'80'sヒットの数々も、カレン・ヤングにマレー・ヘッドにグロリア・ゲイナーと、いかにもイタリア人的なセンスのダンスクラシックばかりなのもかなりツボだ
 ただ、ヴァンツィーナ監督はもともとコメディやロマンスを得意とする人だけあって、どうも今ひとつサスペンスの盛り上がりに欠けてしまうのが玉にキズ。脚本はなかなかよく書けているし、ファッショナブルでスタイリッシュな映像も見目麗しいのだが、肝心のドキドキハラハラが決定的に足りない。いわゆる残酷シーンがほとんどないのも、一部のジャッロ・ファンには不満の残る点だろう。実に惜しい。

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ミラノ警察のダネーシ警部(D・プレザンス)はボブの訴えに半信半疑

ボブは親切なモデルのバーバラ(R・シモンセン)に好意を抱くようになる

ジェシカの友達だったキャリー(C・ノイス)がホテルで殺される

<Story>
 ワイオミング州のイェローストーン国立公園でレンジャーとして働くボブ(トム・シャンレイ)は、遠く離れたイタリアのミラノでファッションモデルをする双子の妹ジェシカ(ニコラ・ペリング)の活躍ぶりを喜んでいた。そんなある日、仕事中に彼はある恐ろしいビジョンを見てしまう。ハサミを持った何者かがジェシカを襲おうとしていたのだ。ボブとジェシカは、幼い頃から不思議なテレパシーのような力で通じ合っていた。医師によると、双子にはよく見られる現象だという。妹の身に危険が迫っていると直感した彼はすぐにミラノへ国際電話をかけるが、ジェシカの部屋はすでにもぬけの殻だった。
 ボブは一路ミラノへと向かった。現地の警察へ相談に行くも、応対したダネーシ警部(ドナルド・プレザンス)はボブの話に半信半疑。ひとまず捜索願だけは受理してもらった。その足でモデルエージェントを訪れたボブは、ジェシカと親しかったという著名な日本人カメラマン、マサユキを紹介してもらう。そこで彼に声をかけてきたのが、キャリー(キャサリン・ノイス)というベテランのモデルだった。
 マサユキによると、キャリーは裕福な宝石商ジョルジョ・コローニ(パオロ・トメイ)の愛人らしい。コローニはモデル好きのプレイボーイとして悪名高かった。キャリーはボブになにか話があるようだったが、コローニに急かされて足早に立ち去ってしまう。そしてその晩、彼女はホテルの自室で何者かに殺される。犯人は現場からダイヤモンドの粒を持ち去った。
 ボブは同じホテルに宿泊するデンマーク人モデル、バーバラ(ルネ・シモンセン)と親しくなる。ワイオミングの田舎で育ったジェシカやボブと同じように、バーバラも小さな田舎町の出身だった。一方、警察のダネーシ警部はジェシカの仕事仲間が謎の死を遂げたことで、ジェシカの失踪事件にも本腰を入れて動こうとしていた。署内のデータベースを調べてみたところ、実は他にも一件、モデルの捜索願が出されていた。失踪したのはクリスティナ・ランドルフという新人モデル。しかも、その友人であるマーゴ・ウィルソン(マリア・マクドナルド)というモデルは、行方不明のジェシカや殺されたキャリーとも関係があったようだ。警部はすぐさまマーゴの行方を追った。
 その頃、キャリーの死で身の危険を感じたマーゴは、慌ててホテルをチェックアウトしていた。とりあえずその日の仕事を終えたら、そのまま高飛びしようと考えているらしい。警察はすぐに彼女の後を追ったが、仕事中の彼女の身柄を拘束することはできない。会場に刑事たちがいることを知ったマーゴは急いで逃げようとするが、トレーラーの中で着替えをしている最中に殺されてしまった。
 だが、今回は現場から複数のダイヤモンドの粒が発見され、宝石商コローニが事情聴取に呼ばれる。そこで、驚きの事実が明かされた。実は2ヶ月ほど前にコローニはモデルたちを自宅へ招いて特別なパーティを催した。参加したのはキャリーにマーゴ、ジェシカ、そしてクリスティナ(ソニア・ルール)だった。刺激を求めたコローニは実弾を使ってロシアン・ルーレットを始めたのだが、そこで運悪くクリスティナが死んでしまったのだ。慌てた彼はクリスティナの遺体を処理し、モデルたちに口止め料としてダイヤモンドを与えたというのである。
 かくして、コローニは自らの罪を自供し、ジェシカ以外の関係者は全員殺された。ということは、犯人は何らかの過程でモデルたちがダイヤを持っていることを知ってそれを狙ったのか、それとも行方不明のジェシカがダイヤを独占しようとして犯行を重ねたのか。いずれにせよ、今やジェシカは容疑者だった。そこへ、ボブのもとに一通の手紙が届く。それはジェシカからのものだった。事情があって身を隠している、もう自分のことは探さないでくれという。果たして、彼女の身に一体何があったのだろうか…?

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マーゴの行方を追うダネーシ警部たち

中央駅の外ではモスキーノのショーが行われていた

ショーを抜け出したマーゴ(M・マクドナルド)の背後に殺人鬼が…

<Information>
 本作の企画は、もともと巨匠ミケランジェロ・アントニオーニにオファーされていたという。恐らくプロデューサーは彼の代表作「欲望」('66)をイメージしていたのかもしれない。確かに、あのアルジェントも「欲望」にインスパイアされて「サスペリア PART2」('75)を撮ったくらいなのだから、あながち間違った人選でもなかったろうとは思うが、やはりあえなく断られてしまう。そこで白羽の矢が立ったのがカルロ・ヴァンツィーナだった。
 日本では比較的知名度の低いヴァンツィーナだが、本国イタリアでは'70年代後半から第一線で活躍しており、現在までに60本以上の監督作を発表している名匠だ。脚本家の兄エンリコ・ヴァンツィーナとは常に二人三脚で、ユーモアを効かせたお洒落なラブコメディを撮らせたら天下一品。イタリア映画黄金期にオマージュを捧げた艶笑コメディ「マリーナの甘い生活」('89)などはなかなかの傑作だった。クオリティの低下が著しかった'80年代のイタリア産娯楽映画界において、とりあえずハリウッドにも引けを取らないエンターテインメント作品を撮ることのできる数少ない映画監督の一人だったと言えよう。
 ヴァンツィーな兄弟と共に脚本を手がけたのは、「フェノミナ」('85)や「オペラ座/血の喝采」('88)などアルジェントのコラボレーターとして有名なフランコ・フェリーニ。なので、主人公が特殊能力の持ち主だという設定が「フェノミナ」と似ているのも不思議ではないだろう。また、製作にはマルコ・フェレーリの「ピエラ愛の遍歴」('83)やナンニ・モレッティの「ジュリオの当惑」('85)など、当時優れたアート作品を世に送り出していたアキーレ・マンゾッティが当たっている。
 撮影監督を手がけたのは、ヴァンツィーナとは「アバンチュールはデュエットで」('83)などでも組んだジュゼッペ・マッカリ。もともと大御所ジュゼッペ・ロトゥンノの愛弟子たった人で、フェリーニの「サテリコン」('69)や「アマルコルド」('73)、デ・シーカの「昨日・今日・明日」('63)、ヴィスコンティの「山猫」('63)、フルチの「ザ・サイキック」('77)、アンソニー・ドーソンの「キラーフィッシュ」('78)など、数多くの作品で助監督や第二班撮影監督を長いこと務めてきた。「リバイアサン」('89)や「ハドソンホーク」('91)などのハリウッド映画にも参加している。
 そのほか、「特別な一日」('77)や「ル・バル」('83)など巨匠エットーレ・スコラ作品の常連であるライマンド・クロチアーニが編集を、ジェームズ・キャメロンの「殺人魚フライングキラー」('81)やフランチェスコ・ロージの「遥かなる帰郷」('97)のステファノ・パルトリニエリが美術デザインを担当。
 さらに、エレガントで抒情溢れる音楽スコアを手がけたのは、「キャリー」('76)や「殺しのドレス」('80)、「ミッドナイトクロス」('81)などブライアン・デ・パルマ監督とのコラボレーションで有名な大御所ピノ・ドナッジョ。間違いなく製作サイドからの要望だったのだろう、まさに「殺しのドレス」のあのテーマ曲を彷彿とさせる、甘く官能的でロマンティックなメロディが実にいい。
 なお、本作を製作するにあたって各ファッションブランドに協力を求めたらしいのだが、“ファッション業界のイメージを著しく傷つける内容”だということを理由に、ことごとく断られたのだそうだ。その中で唯一、協力してくれたのがモスキーノ。なので、劇中のファッションショーでもモスキーノが全面的にフューチャーされている。さらに、製作会社は本作のプレミア試写に数多くのファッション業界関係者を招いたらしいのだが、誰ひとりとして来なかったそうだ。

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バーバラとより親密になっていくボブだったが…

2ヶ月前、ジェシカはあるトラブルに巻き込まれていた

残された唯一の関係者であるジェシカに疑惑の目が向けられるのだが…

 主人公のボブを演じているのは、主にテレビドラマで活躍しているアメリカ人俳優トム・シャンレイ。最近でも「HAWAII FIVE-O」やら「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」、「デクスター」、「クリミナル・マインド」など数え切れないほどの人気ドラマにゲスト出演しているので、名前は知らずとも顔はよく知っているという人も多いことだろう。
 そんな彼と親しくなるバーバラを演じているのは、'80年代を代表する世界的なスーパーモデルのルネ・シモンセン。デュラン・デュランのジョン・テイラーの恋人だったことでも有名だ。女優としては残念ながらパッとしなかったものの、現在は母国デンマークで作家やジャーナリストとして活躍しているそうだ。
 そして、警察のダネーシ警部を演じているのは、「大脱走」('63)や「ハロウィン」('78)、「ニューヨーク1997」('81)などでお馴染みの名優ドナルド・プレザンス。この当時は世界で最も忙しい俳優などと呼ばれ、本当に数え切れないほどの映画に出演していたが、どの作品でもまんべんなく上手い人だった。仕事に全くムラがないのだ。本作でも、ちょっと一癖あるけど人情に厚い飄々とした刑事を独特の存在感で演じている。この人は、何を演じさせても説得力があるというか、演技が演技に見えない点が素晴らしい。たとえ出番が少なくとも、その中で演じるキャラクターの人間性や描かれないバックグランドを台詞回しや表情、動作の中に表現してしまう。これがプロの役者ってもんだ。
 なお、ジェシカ役のニコラ・ペリング、マーゴ役のマリア・マクドナルド、キャリー役のキャサリン・ノイスについては詳細不明。モデルエージェント役には「髪結いの亭主」('90)で有名になる前のアンナ・ガリエナ、ダネーシ警部の助手にはB級アクションやホラーの脇役として活躍したサイラス・エリアス、新人モデルのクリスティナ役にはイタリアの人気テレビ司会者ソニア・ルールが扮している。

 

アクエリアス
Deliria (1986)
日本では1987年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)1999 EC Entertainment (UK) (P)2002 Anchor Bay Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(UK盤NTSCバージョン)
カラー/スタンダードサイズ(ワイドスクリーン用マット・オプション付き)/音声:2.0chドルビーサラウンド/言語:英語/字幕:なし/88分/製作:イタリア

<特典映像>
オリジナル劇場予告編
ミュージックビデオ
スチルギャラリー
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/音声:ドルビーサラウンドEX・2.0chドルビーサラウンド/言語:英語/字幕/なし/90分/製作:イタリア

<特典映像>
オリジナル劇場予告編
ミケーレ・ソアビ バイオグラフィー
監督:ミケーレ・ソアヴィ
製作:アリスティデ・マッサチェージ
   ドナテッラ・ドナーティ
脚本:ルイジ・モンテフィオーリ(ルー・クーパー名義)
撮影:レナート・タフリ
音楽:サイモン・ボスウェル
出演:デヴィッド・ブランドン
   バルバラ・クピスティ
   ドン・フィオーレ(ドメニコ・フィオーレ)
   ロバート・グリゴロフ
   ミッキー・ノックス
   ジョン・モーゲン(ジョヴァンニ・ロンバルド・ラディーチェ)
   クレイン・パーカー
   ロリ・パレル(ロレダーナ・パレッラ)
   マーティン・フィリップス
   ジェームズ・E・R・サンプソン
   ウルリケ・シュヴェルク
   メアリー・セラーズ
   ジョー・アン・スミス
   ピエロ・ヴィダ

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ホラーミュージカルのリハーサル現場

演出家ピーター(D・ブランドン)は傲慢な暴君だった

足を捻挫した主演女優アリシア(B・クピスティ)は病院へ

殺人鬼ウォレスは看護師を殺して脱走していた

<Review>
 第2次ジャッロ・ブームの最盛期に登場した作品。アルジェントやフルチのもとで修行を積んだミケーレ・ソアヴィ監督の処女作としても、当時ホラー映画ファンの間では結構な話題となったものだった。ホラーをテーマにしたミュージカルのリハーサル現場に殺人鬼が紛れ込む…というアイディアがユニーク。それが十分な効果を上げているかどうかはまた別として、少なくとも新しいことにチャレンジしようという作り手の意欲的は十分に感じられるだろう。
 新作ホラーミュージカルの上演に向け、夜遅くまでリハーサルに励む関係者たち。足首を捻挫した主演女優アリシアは近くの病院で応急処置を受けるが、そこには恐るべき連続殺人鬼アーウィン・ウォレスが収容されていた。手当を終えて稽古場へ戻ったアリシアだが、その直後に裏方スタッフが殺されてしまう。脱走した殺人鬼ウォレスがついて来てしまったのだ。通報を受けた警察は付近の捜索と警備を強化し、稽古場はマスコミでごった返した。これをビジネスチャンスだと考えた演出家ピーターは、世間の注目が集まっているうちに舞台を開演すべく、念のために稽古場に鍵をかけた上で徹夜でリハーサルを続けることにする。ところが、ウォレスは建物内に潜んでいた。閉鎖された劇場で次々と殺されていく関係者たち。果たして、彼らのうち何人が生きてここを出ることができるのだろうか…!?
 とまあ、基本的なストーリーは「猫とカナリア」('27)を始めとする“オールド・ダーク・ハウス”ものの変化球。人里離れた古い豪邸が劇場へ変わっただけだ。精神病患者の殺人鬼が紛れ込むという設定も同じ。非常にシンプルな筋立てである。これが本格的な処女作となったソアヴィの演出は非常にテンポが良く、登場人物が多くて少々複雑な人間関係もスッキリと無駄なく処理できている。クライマックスのダメ押し的なこけおどし演出もなかなか上手い。
 ただ、その一方で今になって見直してみるとかなり粗も目立つ。特に気になるのは、アフレコのクオリティの低さであろう。もともとイタリア映画はアフレコが基本。伝統的に現場の音録りはしない。その出来栄えも作品によってまちまち。同時録音にしか思えないほど自然なものもあれば、思わず苦笑いしてしまうほど不自然なものもある。本作の場合は残念ながら後者だ。恐らく、手間ひまをかけている余裕がなかったのだろう。
 加えて、デヴィッド・ブランドンやミッキー・ノックス、ロバート・グリゴロフなど一部の役者以外は、本人ではなく別人が声を当てているものと思われるのだが、中でも主演のバルバラ・クピスティを担当している声優の演技が大げさ過ぎてひどい。この全体的に粗雑なアフレコ処理がどうにもこうにも耳障りで、なかなか本編に集中できないのである。
 また、冷静になってみると脚本の出来もあまりよろしくない。それぞれのキャラクターに特徴があって分かりやすいのはいいのだが、結局のところそれだけ。描き込み方によっては面白くなるはずの人間ドラマがほとんど手付かずなため、登場人物の誰にも感情移入ができず、一人また一人と殺されていってもあまり気にならないのである。最後の最後にヒロインが惨劇の現場を再訪する理由も全く共感できず。なんだか取って付けた感がぬぐい去れない。
 あと、冒頭のミュージカルシーンもなんだかなあという感じ。これ絶対に当たないよ、と思わず演出家に忠告してしまいたくなるような代物なのが小っ恥ずかしい。まあ、だから金に目がくらんでリハーサルを続行しちゃうのだろうけど。フクロウ男のコスチュームだけはイカしてるが。まあ、ブームの最中だからこそ当たったのかなあという印象の映画ではある。やっぱりソアヴィ監督は「デモンズ3」('89)と「デモンズ95」('94)がベストだな。
 ちなみに、本作が初めてDVD化された際、ビスタサイズではなくスタンダードサイズでの収録だったためにファンから不満の声が上がった。なんで左右をカットしてしまうんだと。しかし、実はこのスタンダードサイズが本作の場合は正しい画面比率だった。つまり、劇場公開版はスタンダードサイズで撮影された原版フィルムの上下をマスキングして隠していただけなのである。昔はこのような手法を使っている作品が結構多かった。日本の「犬神家の一族」('76)なんかもそう。今ならば撮影の段階でカメラのレンズにマスキングしてしまうのだけど。なので、スタンダードサイズだからといって必ずしもトリミングされているわけではない場合がある、ということは留意しておく必要があるだろう。

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衣装係のベティ(U・シュヴェルク)が殺される

第一発見者はアリシアだった

金に目がくらんだピーターはリハ続行を決定する

着替え中に身の危険を感じたローレル(M・セラーズ)

<Story>
 とある劇場で新作ミュージカルのリハーサルが行われていた。フクロウの仮面をかぶった殺人鬼を題材にしたホラー・ミュージカルである。演出家ピーター(デヴィッド・ブランドン)の暴君ぶりは目に余るものだったが、スタッフもキャストもようやくありついた仕事だけに文句も言えないでいる。その厳しい猛特訓が災いして、主演女優のアリシア(バルバラ・クピスティ)は足首を捻挫してしまった。心配した衣装係のベティ(ウルリケ・シュヴェルク)は、彼女を近くの病院へ連れて行って応急処置を受けさせることにする。そこは精神病院であるにも関わらず。
 実は、その病院には16人殺しの連続殺人鬼アーウィン・ウォレス(クレイン・パーカー)が収容されていた。医師に無理を言って治療してもらった2人は、興味本位でウォレスの病室を覗いたあと、車で稽古場へと戻っていく。病室のベッドに横たわるのが看護師の死体だとも気づかずに。劇場で待ち構えていたのは怒り心頭のピーター。アリシアはライバルのローレル(メアリー・セラーズ)に主役の座を奪われ、その場で解雇されてしまった。そして、駐車場へ向かったところでベティの無残な死体を発見してしまう。
 通報を受けた警察が駆けつけ、犯行は病院を脱走したウォレスの仕業と断定される。大勢のマスコミが駆けつけ、現場は騒然とした雰囲気に包まれる。これでリハーサルも中止だと思われた。ところが、ピーターは出資者フェラーリ氏(ピエロ・ヴィダ)を説き伏せ、ミュージカルの初日を繰り上げることにし、徹夜でリハーサルを続行することを決定する。これはまたとないチャンスだと。世間の注目が集まっているうちにミュージカルを上演すれば、千客万来間違いなしだというのだ。そのなりふり構わない強欲さに誰もが反感を覚えつつ、自分たちも仕事が必要なだけに従わざるを得なかった。
 ピーターは劇場の出入口を封鎖し、誰も出入りができないようにした。これならば犯人が侵入してくる恐れもないだろう。警察が付近を捜索をしているし、劇場の前では警官も警備している。かくしてリハーサルが再開されることになったのだが、スタッフやキャストは不安をぬぐい去れなかった。そして、その不安は的中してしまう。ステージの上でコリンヌ(ロリ・パレル)がフクロウ男に刺殺されてしまったのだ。
 フクロウ男役はブレット(ジョン・モーゲン)のはずだったが、いつの間にか殺人鬼ウォレスと入れ替わっていたのである。しかも最悪なことに、ピーターは劇場の出入口の鍵をコリンヌに預けていた。その隠し場所は死んだ彼女しか知らない。すでに電話線は切断されており、劇場の厚い壁のせいで全員が叫び声を上げても外の警官には届かない。完全に外界から遮断されてしまったのだ。とにかく一同は楽屋に身を寄せて隠れることにする。
 しかし、その間にもフェラーリ氏が惨殺され、助手のマーク(マーティン・フィリップス)も楽屋のドアを破ろうとしたウォレスにドリルで殺される。このまま隠れていても埒があかないと考えたピーターは、逆に全員でウォレスを探して追い詰めることにする。しかし、パニクったローレルのせいでアリシアが階段から落下して気絶。さらに、シビル(ジョー・アン・スミス)が胴体を真っ二つに引き裂かれ、ダニー(ロバート・グリゴロフ)もチェーンソーで腹を八つ裂きに。果敢に立ち向かったピーターもまた、腕を切断された上に首を跳ね飛ばされてしまう。劇場内が静寂に包まれる中、意識を取り戻したアリシアはたった一人でウォレスと対峙することになるのだが…。

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フクロウ男がいつの間にかウォレスに入れ替わっていた

かろうじて楽屋に逃げ込んだ一同だったが…

助手マーク(M・フィリップス)がドリルで殺害される

逆にウォレスを探して追い詰めようとするのだが…

<Information>
 よく日本ではアルジェントの愛弟子とされるミケーレ・ソアヴィだが、これは間違ってもいないが正しくもないと言えよう。確かに彼はアルジェントの「シャドー」('82)や「フェノミナ」('85)などにスタッフとして参加しているし、アルジェントに関するドキュメンタリー映画も撮っているし、アルジェントの製作で「デモンズ3」('89)や「デモンズ4」('91)を監督したわけだが、そのキャリアの最初期に裏方のノウハウを教えたのはルチオ・フルチだった。また、本作で彼に初演出のチャンスを与えたのは、フルチとも関わりのあったエログロ映画の巨匠ジョー・ダマートことアリスティデ・マッサチェージ。アルジェントの愛弟子というよりも、イタリアンホラー全盛期の申し子と呼ぶべき人物のように思う。
 脚本を書いたのはルー・クーパーことルイジ・モンテフィオーリ。マカロニ・ウェスタンやイタリアン・ホラーのファンならば、野獣顔の巨体俳優ジョージ・イーストマンといえばピンとくるかもしれない。主に悪役俳優としてB級映画に引っ張りだこだった彼は、「新・さすらいの用心棒」('72)や「猟奇!喰人鬼の島」('80)など脚本家としてもコンスタントに活動を続けていたことで知られる。「ザ・フライ」('86)をパクった「恐怖の生体実験」('89)なんて監督作もあったっけ。などと振り返ってみると、彼が裏方に関わった映画はいずれもジョー・ダマート組ばかり。友達だからっていいように使われていたんだろうなあ(笑)。
 撮影監督を手がけたのは、ジャンニ・アメリオのカンヌ受賞作「小さな旅人」('92)でダヴィッド・デ・ドナテッロ賞候補になったレナート・タフリ。アルジェントの「オペラ座/血の喝采」('88)では第二班撮影監督を務めていた。ソアヴィとは「デモンズ3」でも組んでいる。
 そのほか、ダマート組のキャサリーン・ストラットンことロッサナ・ランディが編集を、「最後の晩餐バンパイア」('88)などランベルト・バーヴァ作品への参加が多いヴァレンティナ・デ・パルマが衣装デザインを、ダマートの助監督から身を立てたドナテッラ・ドナーティが共同製作を担当。また、アルジェントやホドロフスキーとの仕事でも有名なイギリスの作曲家サイモン・ボスウェルが音楽スコア手がけている。ただし、
ジャズファンク風のミュージカルナンバーは、「尼僧白書」('86)や「サンゲリア2」('88)、「ラットマン」('88)などダマート絡みの低予算映画でお馴染みのステファノ・マイネッティによるものだ。

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行方知れずだったブレット(J・モーゲン)も犠牲に

ダニー(R・グリゴロフ)はチェーンソーで腹をかっ捌かれる

果敢に立ち向かうピーターだったが…

意識を取り戻したアリシアは仲間を探すのだが…

 演出家ピーターを演じているデヴィッド・ブランドンは、もともとリンゼイ・ケンプの舞踏集団にいた人らしく、デヴィッド・ホートン名義でデレク・ジャーマンの「ジュビリー」('79)にも出ていたイギリス人俳優。どういう経緯でイタリアへ流れ着いたのかは定かでないが、ジョー・ダマートが柳の下のドジョウを狙ったC級ポルノ史劇「カリギュラ2」('82)のカリギュラ役で主演を果たし、以降イタリアで数多くのホラーやアクション、ソフトポルノなどに出演した。
 で、本作に実はもう一人カリギュラ俳優が出ている。シビルを妊娠させてしまうイケメン俳優ダニーを演じたロバート・グリゴロフだ。ダマート作品よりもさらにショボイ「カリギュラV」('85)で悪名高きローマ皇帝を演じた彼だが、その素性に関しては詳細不明。ほかにフルチの「マーダロック」('85)に出ていたということくらいしか分からない。
 さてさて、肝心のヒロインを忘れてはならない。'80年代のイタリア産娯楽映画を語る上で欠かせない女優の一人、バルバラ・クピスティである。もともとは、ティント・ブラス監督の文芸ポルノ「鍵」('83)で大女優ステファニア・サンドレッリの娘役を演じて注目された人。だが、それ以前にはフルチの「ザ・リッパー」('82)にも出ていたし、ソアヴィの「デモンズ3」でも再びヒロインを演じている。確かアルジェントの「オペラ座/血の喝采」にも出ていた。
 そのほか、ウンベルト・レンツィの「ゴーストハウス」('88)やランベルト・バーヴァの「デモンズ5」('90)でも殺され役だったメアリー・セラーズ、ルチオ・フルチやランベルト・バーヴァ作品の常連で最近だとリメイク版「オーメン」('06)などハリウッド映画にもたびたび出ている怪優ジョン・モーゲンことジョヴァンニ・ロンバルド・ラディーチェ、リリアーナ・カヴァーニ作品の常連だったピエロ・ヴィダ、イタリア映画の英語吹き替え版製作者として有名なミッキー・ノックスなどが脇を固めている。

 

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