フルムーン・ピクチャーズ セレクション Part 1

 

 スチュアート・ゴードン監督の「ZOMBIO/死霊のしたたり」('85)や「フロム・ビヨンド」('86)、「ドールズ」('86)をはじめ、「グーリーズ」('85)シリーズや「トロル」('86)シリーズなどのヒット作を放ち、'80年代に一世を風靡した低予算のSF&ホラー専門スタジオ、エンパイア・ピクチャーズ。その創業社長であるチャールズ・バンドが、'88年のエンパイア倒産を受けて新たに設立した会社がフルムーン・ピクチャーズだった。
 '89年にパラマウント映画との提携で設立された同社は、低予算&量産体制というエンパイア・ピクチャーズの経営路線をそのまま継承。作品の傾向としても、ホラーやSF、ファンタジーに特化した旧エンパイアのジャンル系路線を踏襲した。ただ、最大の違いは配給システムだ。劇場公開を前提として映画作りをしていたエンパイアに対し、フルムーン作品は全てレンタルを中心としたビデオスルー。後にセル市場が活況を呈するとセルへ移行することになるのだが、いずれにせよ当時も今もホーム・メディア・ソフトでの販売がフルムーン・ピクチャーズの基本的なマーケティング戦略だ。
 記念すべき第1作目は「パペットマスター」('89)。実はこれ、当初は劇場公開を目指していたらしいのだが、直前になってビデオスルーに変更された。この判断が結果的に正解だったのか、「パペットマスター」はレンタル市場で大成功。劇場配給よりもビデオ販売の方が実質的に儲かることを肌で実感したチャールズ・バンドは、以降の作品も一貫してビデオでリリースすることを決める。
 ただ、この方針転換を提携先のパラマウントは快く思わなかったようだ。やはり、映画は劇場公開作品の方がランクは上。どうしてもビデオスルー作品は軽んじられてしまう。それでも、当時はレンタル市場に勢いがあったことからフルムーン作品もヒットを連発。「パペットマスター」はシリーズ化され、スチュアート・ゴードン監督の「ペンデュラム/悪魔のふりこ」('91)や日本ではなぜかシリーズ2作目以降しか発売されていない“Subspecies”('91)がセールス的にも批評的にも大成功。エンパイア時代にヒットしたSF映画「トランサーズ/未来警察2300」('85)も復活してシリーズ化された。
 ところが、'90年代も半ばになるとレンタル市場の急速な衰退を受け、フルームーン作品のセールスも下降。見切りをつけたパラマウントは、'95年にフルムーンとの提携を打ち切ってしまう。スチュアート・ゴードンのラヴクラフト物「キャッスル・フリーク」('95)や「パペットマスター」シリーズでなんとか挽回を図ろうとしたチャールズ・バンドだが、残念ながらもはや当初の勢いを取り戻すことは叶わなかった。
 それでも、熱心で忠実なB級映画ファンのおかげでレーベルは今尚存続。フルムーンもそうしたコアなファン層だけに向けた制作体制へ切り替え、安っぽい、下らない、バカバカしいなどと嘲笑されつつも、“Killjoy”('00)シリーズや「ジンジャーデッドマン」('05)シリーズなどのトラッシュなC級ホラーをコンスタントにリリース。さらに、「パペットマスター」や“Subspecies”といった代表作のフィギュアや関連グッズなどのマーチャンダイジングも展開し、現在に至っている。
 なお、DVDの時代になって当たり前となった特典映像のメイキング・ドキュメンタリーやインタビューだが、フルムーンはVHSビデオ時代から同様のことをやっている。それが、'91年の「パペット・マスター2」から収録されるようになった“Video Zone”という巻末のおまけ映像だ。コンセプトとしてはビデオマガジン。最初にチャールズ・バンド社長の作品解説がイントロダクションとして入り、続いて本編のメイキング・ドキュメンタリー、さらにこれから発売される新作の主演スターや監督のインタビュー、予告編なども含まれ、レーベルのプロモーション的な役割も兼ねていた。これがことのほか好評で、以降もフルムーン作品の名物コーナーとして定番化されたのである。
 というわけで、今回はフルムーン・ピクチャーズの人気シリーズ以外の初期作品をまとめてドドーンと紹介したい。

 

 

シャドー・ゾーン
Shadowzone (1990)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/88分/制作国:アメリカ

<特典>
なし

監督:J・S・カーダン
製作:キャロル・コッテンブルック
製作総指揮:チャールズ・バンド
脚本:J・S・カーダン
撮影:カレン・グロスマン
音楽:リチャード・バンド
出演:デヴィッド・ビークロフト
   ジェームズ・ホン
   ルイーズ・フレッチャー
   ショーン・ウェザリー
   ミゲル・ナネス
   ルー・レオナード

 「パペット・マスター」に続くフルムーン製作作品第2弾として同時リリースされた3本のうちの一つがこれ。地下の閉ざされた実験施設を舞台に、夢の向こう側からやって来た未知の怪物が人々を血祭りに挙げていく。夢をキーワードにしている点で「エルム街の悪夢」('85)を連想する向きもあるかもしれないが、どちらかというと雰囲気的には「エイリアン」('79)や「遊星からの物体X」('82)に近い作品と言えよう。
 キャストにはオスカー女優ルイーズ・フレッチャーや最近では「ゴースト・エージェント/R.I.P.D.」('13)にも出ていたジェームズ・ホンというベテラン名優を起用。夢や睡眠に独自の解釈を試みた意欲的な作品ではあるのだが、やたらと理論の説明に多くの時間を費やした脚本がまどろっこしく、乱暴なセンスのクリーチャー・デザインにも安っぽさが漂う。88分の上映時間は客観的に決して長いとは言えないはないが、それでも編集でもっと短くしたほうが良かったかもしれない。

 NASAの極秘地下施設シャドウゾーンで死亡事故が発生し、本部からヒコック大尉(デヴィッド・ビークロフト)が調査のため派遣される。施設の責任者はエアハード博士(ルイーズ・フレッチャー)とヴァン・フリート博士(ジェームズ・ホン)の2人。ここでは一般から募った被験者を使って睡眠障害に関する様々なテストを行っていたのだが、そのうちの一人が実験中に謎の死を遂げてしまったのだ。
 解剖による検視でも原因は分からないという博士たち。だが、彼らは何か重大な事実を隠している様子。施設にやって来てから夜な夜な悪夢にうなされるヒコック大尉は、その謎を突き止めようとしていた。そんなある日、被験者の睡眠実験中に異常事態が発生。モニターを監視していた技術者ワイリー(ミゲル・ナネス)は、“ヤツがやって来る!”と悲痛な叫び声を上げる。その次の瞬間、実験室にいたヴァン・フリート博士が何者かに殺されてしまった。
 実は、博士たちは実験の過程で夢の向こう側にあるパラレルワールドの存在を発見していた。だが、その通り道に気が付いた向こう側の邪悪な“何か”が、こちらの世界へ行き来するようになってしまったのだ。その“何か”は自由自在に姿形を変えることができ、人間の潜在意識の中にある恐怖を具現化して殺していく。つまり、その人が最も苦手なものに姿を変えて襲いかかるのだ。
 ヴァン・フリート博士に続いて若い女性科学者キッドウェル博士(ショーン・ウェザリー)や料理人カッター夫人(ルー・レオナード)などのスタッフが次々と犠牲に。果たして怪物の正体とは?どうすれば倒すことが出来るのか、そしてヒコック大尉らは生きて地下施設を出ることができるのか?

 監督と脚本は「ヴァンパイア・ハンター」('01)などのB級ホラーやサスペンスを数多く手がけ、近年では「プロムナイト」('08)や「ステップファーザー」('09)などのホラー・リメイクをプロデュースしているJ・S・カーダン。製作のキャロル・コッテンブルックは彼の奥さんだ。撮影監督のカレン・グロスマンはカーダン監督の処女作「魔島」('82)にも参加している女性カメラマン。迷作「ホラー喰っちまったダ!」('83)のカメラマンとしても知る人ぞ知る存在だ。
 そして、特殊メイクを担当したのは「フロム・ビヨンド」('86)や「死霊のはらわたU」('87)などでお馴染みのマーク・ショストロム。テレビシリーズ「X-ファイル」でも高く評価された特殊メイク・アーティストだが、本作は時間も予算も足りなかったのか、とても彼の仕事とは思えない乱雑なクリーチャー・デザインが失笑を買う。
 主人公ヒコック大尉を演じているデヴィッド・ビークロフトは、「ダラス」や「ダイナスティ」に続くプライムタイム・ソープとしてヒットしたテレビシリーズ「ファルコン・クレスト」の後期シーズンにレギュラー出演していた2枚目俳優。ハンサムでマッチョだが全く印象に残らないタイプの役者だ。
 エアハード博士役のルイーズ・フレッチャーは、「カッコーの巣の上で」('75)でアカデミー主演女優賞を獲得したものの、当時は「スペース・インベーダー」('85)を筆頭にB級ホラー専門女優となっていた。片や、ヴァン・フリート博士役のジェームズ・ホンも、ショー・コスギ主演のオカルト風忍者アクション「ニンジャ」('84)やジョン・カーペンター監督の「ゴースト・ハンターズ」('86)など、ジャンル系ファンにはお馴染みの中国系俳優。
 その他、テレビシリーズ「ベイウォッチ」の水着美女ショーン・ウェザリー、「スクービ・ドゥー」('02)などに出ていた黒人コメディアンのミゲル・ナネス、'80年代L.A.のナイトシーンでカルト的な人気を集めた巨漢の女性スタンダップ・コメディアン、ルー・レオナードらが脇を固めている。

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地下の極秘施設を訪れたNASAのヒコック大尉

施設では謎の死亡事故が起きていた

ここでは夢に関する実験が行われている

エアハード博士らは何かを隠している様子

具現化した恐怖が人々を襲う

 

 

未来娼館ネザーワールド
Netherworld (1992)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/85分/制作国:アメリカ

<特典>
ビデオゾーン(メイキング映像)
監督:デヴィッド・シュモーラー
製作:トーマス・ブラッドフォード
製作総指揮:チャールズ・バンド
原案:ビリー・シカゴ
   チャールズ・バンド
脚本:ビリー・シカゴ
撮影:アドルフォ・バルトーリ
音楽:デヴィッド・ブライアン
出演:マイケル・ベンデッティ
   デニース・ジェンタイル
   アンジャネット・カマー
   ホリー・フロリア
   ロバート・サンプソン
   ロバート・バー

 ホラー映画マニアの間では「デビルズ・ゾーン」('81)で名高いデヴィッド・シュモーラー監督作品。亡き父からアメリカ南部の古い豪邸を相続した若者が、地元の娼館に巣食う魔女によって黒魔術の世界へと誘われ、やがて黄泉の国からの復活を目論む父親の遺言を実行することになる。ストーリー的には、言うなればシュモーラー版「フロム・ビヨンド」といったところだろうか。
 まず目を奪われるのは、南北戦争以前の植民地時代を色濃く残すルイジアナ州の、幻想的な大自然と歴史的な建造物をノスタルジックに捉えた美しくもスタイリッシュなビジュアル。アメリカン・ゴシックなムードを醸し出す映像美は、フルムーン作品らしからぬ風格を漂わせて秀逸だ。また、「ファンタズム」('79)のシルヴァー・スフィアを彷彿とさせる“空飛ぶ手首”などのシュールなホラー・イメージ、怪しげな娼館で繰り広げられるダークで退廃的なエロスなど、少なくとも視覚的には完成度の高い作品である。
 ただ、やけに文学的で勿体ぶったセリフが続くワリにストーリーは意外と底が浅く、思わせぶりなだけで意味がよく分からないようなシーンも少なくない。ゆえに、見栄えがいいだけで印象の薄い作品になってしまったことは否めないだろう。なお、音楽スコアをボン・ジョヴィのキーボード奏者デヴィッド・ブライアンが担当し、娼館でのライブ・シーンには'70年代の大物ギタリスト、エドガー・ウィンターが顔を出しているのは、音楽ファンならば見逃せないはず。

 長いこと音信不通だった父親(ロバート・サンプソン)が死去し、遺産としてルイジアナ州の湿地帯にそびえ立つ豪邸を相続した若者コリー(マイケル・ベンデッティ)。屋敷で待っていたのは、管理人のパーマー夫人(アンジャネット・カマー)と、その娘ダイアン(ホリー・フロリア)だった。弁護士イェーツ(ロバート・バー)から渡された父親の日記には、息子に当てた遺言が残されていた。それは、黒魔術を使って父親を死の世界から蘇らせるための方法だった。
 コリーは生前に父親と関係のあった娼婦ドロレス(デニース・ジェンタイル)を訪ねて付近の娼館へと足を踏み入れる。そこには、マリリン・モンローやマグダラのマリアの生まれ変わりだと称する娼婦たちが働いていた。実は黒魔術を操る魔女であるドロレスに魅了され、めくるめく魔法と官能の世界へと誘われるコリー。彼はダイアンともまた惹かれあうのだが、パーマー夫人は2人の仲を決して認めようとしない。
 異教的なムードの漂う娼館と時間の流れが止まってしまったような豪邸で、次々と起きる不可解で謎めいた出来事。果たして、コリーは亡き父親をこの世に蘇らせることができるのか…?

 本作ではビリー・シカゴ名義で原案と脚本も手がけているシュモーラー監督は、エンパイア時代にもクラウス・キンスキー主演の異色猟奇サスペンス「クロールスペース」('86)や「悪霊墓地カタコーム」('88)を手がけており、フルムーンでの仕事は「パペットマスター」に続いて2作目。それなりに健闘はしていると思うが、残念ながら完成度の高さでは「パペットマスター」に敵わなかった。
 撮影はエンパイア時代からチャールズ・バンドとは繋がりの深いイタリア人カメラマン、アドルフォ・バルトーリ。美術デザインはダリオ・アルジェントの「トラウマ」('93)を手がけたビリー・ジェットが担当している。また、特殊メイクは上記の「シャドー・ゾーン」にも参加していた名匠マーク・ショストロム。「ファンタズム2」('88)や「パンプキンヘッド」('88)のスティーヴ・パティノが、“空飛ぶ手首”などの特殊効果でいい仕事をしている。

 主人公コリー役のマイケル・ベンデッティは、テレビドラマ「21ジャンプ・ストリート」の最終シーズンに出ていた俳優。かなり容姿端麗なイケメンだが、残念ながら演技は決して上手いとは言えない。ドロレス役のデニース・ジェンタイルは昼メロドラマ「サンタ・バーバラ」の出身らしいが、こちらも演技力は限りなく大根に近い感じだ。
 一方、どこか謎めいたところのあるパーマー夫人役に扮しているのは、「シェラマンドレの決闘」('66)でマーロン・ブランドの相手役を演じた往年の美人女優アンジャネット・カマー。そのほか、テレビドラマ「Acapulco H.E.A.T.」(日本未放送)のホリー・フロリア、昼メロ俳優のロバート・バーなどが出演。また、「死霊のしたたり」('85)の病院長役でお馴染みのロバート・サンプソンが、コリーの父親役で顔を出している。

 なお、未来とは何一つ関係のないストーリーゆえ、なぜにこの邦題が付いたのかは謎だ(笑)。

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亡き父の遺した屋敷を訪れた青年コリー

管理人のパーマー夫人と娘ダイアン

壁から飛び出した手首が宙を舞う

ゴア描写は少ないながらもインパクト強烈

娼婦ドロレスに魅了されるコリー

 

 

デビル・シード
Seedpeople (1992)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1:33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/81分/制作国:アメリカ

<特典>
ビデオゾーン(メイキング映像)
監督:ピーター・マヌージアン
製作:アン・ケリー
製作総指揮:チャールズ・バンド
原案:チャールズ・バンド
脚本:ジャクソン・バー
撮影:アドルフォ・バルトーリ
音楽:ボブ・ミソフ
出演:サム・ヘニングス
   アンドレア・ロス
   デイン・ウィザースプーン
   バーナード・ケイツ
   デヴィッド・デュナード
   ホリー・フィールズ
   アン・ベタンコート

 とある田舎町を舞台に、隕石に付着していた種子によって住民たちが無感情なエイリアンと入れ替わっていく。明らかに「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」('56)をパクった侵略型SFホラーだ。違うのは、こちらはサヤではなくて胞子だということ。宇宙からやってきた種子が成長して奇妙な植物となり、そこからドバーっと飛び出す胞子に触れた人々が体を乗っ取られてしまうというわけだ。
 しかも、普段は人間の姿をしている彼らだが、その真の姿は醜悪な植物型クリーチャー。どういう仕組みで体が入れ替わるのかは、最後まで謎なのだけれど(笑)。このエイリアンのデザインがなかなか秀逸で、脚本や演技の安っぽさをそれなりに補っていると言えよう。というか、それが本作の見所のほぼ全て。団子のように丸くなったエイリアンがコロコロと転がりながら襲い来るシーンはシュールなインパクトがある。

 隕石の調査をするためにコメット・ヴァレーの町へやって来た地質学者トム(サム・ヘニングス)。彼はこの町で宿屋を営む元妻ハイジ(アンドレア・ロス)のもとに滞在することとなる。2人の間にはティーンの娘キム(ホリー・フィールズ)がいるのだが、彼女はメイドのサンチャゴ夫人(アン・ベタンコート)が別人に入れ替わってしまったと主張。ハイジは反抗期の一種だと考えて取り合わなかったが、キムは町の住人たちの怪しげな行動をこっそりとカメラで撮影していた。
 確かにキムの言う通り、町では不可解が現象が水面下で進行していた。あちこちで奇妙な植物が急速に成長し、人間が近づくと大量の胞子を噴射。すると、胞子を浴びた人々は感情のないエイリアンに体を乗っ取られ、互いに協力しながら何かを企みつつあった。
 そして、その事実に気付きつつあったのが地元の植物学者ローラー博士(バーナード・ケイツ)。隕石の破片を調べていた彼は、それが地球外生命体の種子であるとの結論にたどり着いていた。しかし、変わり者で挙動不審な博士の言葉を、トムはにわかに呑み込めない。だが、ある日キムがエイリアンの決定的な映像を撮影し、それを見たトムやハイジは何か恐ろしいことが町で進行しつつあると悟る。
 実は、エイリアンに乗っ取られた人々は、植物を世界中に運んで仲間を増やそうと考えていたのだ。それを知ったトムは、ハイジの彼氏でもある保安官補ブラッド(デイン・ウィザースプーン)と協力して、エイリアンの地球侵略を阻止しようとするのだが…。

 監督のピーター・マヌージアンはエンパイア時代から「エリミネーターズ」('86)や「アリーナ」('89)といったB級SF映画を手がけてきた人物。フルムーンでも本作の他に、「デモニック・トイズ〜ドールズ2〜」('91)を手がけている。といっても、これは「ドールズ」とは全く無関係の人形ホラー。チャールズ・バンドは人形や玩具など小さな物が動き出すというアイディアが大好きらしく、「パペットマスター」や「ジンジャーデッドマン」などのシリーズを世に送り出しているが、「デモニック・トイズ」もシリーズ化されている。
 脚本は“Subspecies”('91)や「エイリアン・コレクター」('92)などフルムーン作品でお馴染みのジャクソン・バー。撮影のアドルフォ・バルトーリやSFXのジョン・カール・ビュークラーなど、スタッフの多くがチャールズ・バンド作品の常連組だ。また、音楽には「カブキマン」('90)や「悪魔の毒々ハイスクール2」('91)などトロマ作品で知られるボブ・ミソフが参加している。

 主人公トムを演じているのは、「メンフィス・ビート〜南部警察人情派〜」('10〜11)など主にテレビで活躍する俳優サム・ヘニングス。その元妻ハイジを演じているアンドレア・ロスも、デニス・リアリーの妻役で親しまれた「レスキュー・ミー〜NYの英雄たち」('04〜11)などテレビドラマでお馴染みの人気女優だ。
 そのほか、故コリー・ハイムの婚約者だったことでも知られるホリー・フィールズ、ロビン・ライトの元ダンナで昼メロ俳優だったデイン・ウィザースプーンなどが出演している。

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地質学者トムと元妻ハイジ

町のあちこちで奇妙な植物が生息している

住民たちの変貌に気づいたトムの娘キム

コロコロと転がって襲い来るエイリアン

体を伸ばすとこんな感じ

 

 

エイリアン・コレクター
Bad Channels (1992)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1:33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/88分/制作国:アメリカ

<特典>
ビデオゾーン(メイキング映像)
監督:テッド・ニコラウ
製作:キース・ペイソン
製作総指揮:チャールズ・バンド
原案:チャールズ・バンド
脚本:ジャクソン・バー
撮影:アドルフォ・バルトーリ
音楽:ブルー・オイスター・カルト
出演:ポール・ヒップ
   マーサ・クイン
   アーロン・ラスティグ
   イアン・パトリック・ウィリアムス
   チャーリー・スプラドリング
   マイケル・ハドルストン
   ヴィクター・ロジャース

 フルムーンとエンパイアの最大の違いといえば、恐らくジャンル系マニアを主なターゲットにした“おバカ映画”が増えたことなのではないかと思うのだが、この「エイリアン・コレクター」などはその好例かもしれない。邦題だとエイリアンをコレクションするハンターの話かなんかかと勘違いされそうだが、実際は人間の美女をコレクションするために地球へやって来たエイリアンのお話。なぜかこいつがロック系ラジオ局をジャックし、電波を使ってリスナーの美女たちを次々と小さな瓶の中へテレポートさせるのだ。
 いったい何の目的で美女をさらうのか、どうしてラジオなのか、最後まで謎は明かされず。というか、実際そんなことはどうでもよくて、最大の見せ場はテレポートされる美女たちを襲うMTV風の幻覚。様々なロックバンドのミュージックビデオの中へ入り込んでしまうのだ。まあ、言ってみればフルムーン版SFロックミュージカル。ヒロイン役にMTVの初代VJマーサ・クインを起用したり、音楽スコアをロックバンド、ブルー・オイスター・カルトに任せたりしているのもそのため。ブロッコリみたいな頭をしたエイリアンを含め、シュールなバカバカしさが身上のチープなおバカ・コメディだ。

 行き過ぎたヤラセが問題視されて前職をクビになった人気ラジオDJ、デンジャラス・ダン(ポール・ヒップ)が、ロック系専門チャンネルとしてリニューアルした老舗ラジオ局KDULのメイン・パーソナリティとしてカムバックする。その初日を密着取材するのは、ニュース専門ケーブル・テレビ局の女性リポーター、リサ・カミングス(マーサ・クイン)。しかし、取材の最中にUFOの飛来を目撃したリサは、その行方を追って各地を駆け巡る。
 一方、エンジニアのコーキー(マイケル・ハドルストン)と共にノリノリで放送を続けるデンジャラス・ダンだったが、突然ラジオ局のビルが大きく揺れだし、スタジオに巨大なブロッコリ頭のエイリアンと相棒のロボットが出現。スタジオを占拠した彼らは見たこともない機械と放送機材をドッキングさせ、引き続き音楽を流し続けるよう脅迫するのだった。
 その頃、ダイナーで放送を聞いていたウェイトレスが突如としてミュージックビデオのような幻覚に襲われ、踊り狂った挙句にプツッと姿を消してしまう。次の瞬間、彼女はエイリアンが準備した小さな瓶の中に縮小サイズでテレポートしていた。その様子を目撃したデンジャラス・ダンは、エイリアンが地球人を誘拐しようとしていることに気づき、マイクを通じてリスナーにラジオを消すよう訴えるが、どうせまたヤラセだろうと誰もまともに取り合わない。
 そうこうしている間に、チアリーダーのクーキー(チャーリー・スプラドリング)や看護婦のジンジャー(メリッサ・ベア)などの美女が囚われの身に。ラジオでデンジャラス・ダンのライブレポートを聴いていたリサだけは、彼の話していることが本当であると信じ、自らカメラを担いで現場の突撃取材を試みる。また、次々と女性が姿を消したことから、もしかすると本当にエイリアンが彼女たちを誘拐したのではと感じ始めた町の住人も、ラジオ局の周りに詰めかけた。
 そして、ついにリサまでもが縮小されて瓶の中へ。なんとかして女性たちを救わなくてはいけないと考えたデンジャラス・ダンは、ひょんなことから身近なあるモノがエイリアンの弱点であることに気付く…。

 監督はフルムーンの看板シリーズの一つにしてヴァンパイア映画の隠れた傑作“Subspicies”('91)を生み出したテッド・ニコラウ。シリアスなゴシック・ホラー物に定評のあるニコラウだが、その一方でエンパイア時代の「テラービジョン」('86)や本作などトラッシュなSFコメディも少なからず手がけている。ただ、いずれの出来栄えを見ても決して得意分野だとは思えず、やはりホラーに専念しておいたほうがいいのでは…と余計なお世話の一つも言いたくなってしまう(笑)。
 で、チャールズ・バンドの原案を脚色したのも、“Subspicies”などニコラウ監督とのコンビが多いジャクソン・バー。撮影監督にはエンパイア時代からチャールズ・バンド関連作品を手がけているイタリア人カメラマン、アドルフォ・バルトーリが参加している。
 そもそもエンパイアはイタリアの撮影スタジオを買収して制作拠点にしていたのだが、事業を引き継いだフルムーンも立ち上げ当初はイタリアでの撮影が多かった。しかし、ニコラウ監督の“Subspicies”辺りから、さらに人件費の安いルーマニアへと拠点を移していくことになる。
 そして音楽スコアを担当したのは有名ロックバンド、ブルー・オイスター・カルト。'70年代から活躍する彼らにとって、映画のサントラに既成曲が使われたことは数多くあれど、オリジナルのスコアを書き下ろしたのは本作が唯一。フルムーンは上記の「未来娼館ネザーワールド」('92)でもボン・ジョヴィのデヴィッド・ブライアンにスコアを書かせ、エドガー・ウィンターをカメオ出演させていたが、いったいどうやって
そんな人脈を作ったのか。チャールズ・バンド、侮れん。

 ヒロインの女性レポーター、リサ役をMTVの初代VJ、マーサ・クインが演じていることは先述したが、一方のラジオDJデンジャラス・ダンに扮しているのは、「チャイナ・ガール」('87)や「バッド・ルーテナント」('92)などアベル・フェラーラ作品に出演していた元スタンダップ・コメディアンのポール・ヒップ。その他、「メリディアン」('90)や「パペット・マスター2」のチャーリー・スプラドリング、「死霊のしたたり」や「ドールズ」のイアン・パトリック・ウィリアムスなど、エンパイア/フルムーンに縁の深い役者が集められている。

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人気者だが問題児のラジオDJデンジャラス・ダン

突如現れたエイリアンがラジオ局を占拠してしまう

ミュージックビデオの世界へ入り込む美女たち

エイリアンは縮小した美女たちを瓶の中に捕える

突撃取材に挑む女性レポーター、リサ

 

 

バーチャゾーン
Arcade (1993)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/85分/制作国:アメリカ

<特典>
・ビデオゾーン(メイキング映像)
監督:アルバート・ピュン
製作:キャシー・ゲスアルド
製作総指揮:チャールズ・バンド
原案:チャールズ・バンド
脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー
撮影:ジョージ・ムーラディアン
音楽:アラン・ハワース
出演:ミーガン・ウォード
   ピーター・ビリングズリー
   ジョン・デ・ランシー
   ノーバート・ウェイサー
   シャロン・ファレル
   セス・グリーン
   A・J・ランガー
   ブライアン・ダッティーロ

 一部ではフルムーン版「トロン」とか、「マトリックス」の先駆けなどと呼ばれている作品だが、まあ、当たらずとも遠からずといったところだろうか。ティーンエイジャーがビデオゲームのバーチャルな世界に入り込んで戦うというストーリーは、むしろオムニバス・ホラー「デビルゾーン」('83)の第2話“悪魔のビデオゲーム”に近いという印象。今見ると極めて稚拙ではあるものの、ゲームシーンの特殊効果ではCGをフル稼働させており、当時のフルムーンとしてはなかなか野心的なSF映画だったと言えるかもしれない。

 主人公は母親(シャロン・ファレル)の自殺現場を目撃して心にトラウマを負った女子高生アレックス(ミーガン・ウォード)。恋人グレッグ(ブライアン・ダッティーロ)や悪ガキのニック(ピーター・ビリングズリー)、ゲームオタクのスティッツ(セス・グリーン)、そして親友ローリー(A・J・ランガー)ら仲間たちと、いつものように行きつけのゲームセンター“ダンテズ・インフェルノ”へ繰り出した彼女は、そこで新作ゲーム“アーケード”を体験する。
 “アーケード”とは、プレーヤーがゲームのバーチャル世界に入り込んで悪の化身アーケードと戦うという新感覚のコンピューターゲーム。発表会に居合わせた若者たちはたちまち夢中となり、ゲームメーカーの営業マン、ディフォード(ジョン・デ・ランシー)から配られた家庭用ソフトのサンプル盤を次々と持ち帰る。ところが、その日以来、町の若者が一人また一人と姿を消していく。アレックスの周囲でも、グレッグやローリー、スティッツの行方が分からなくなってしまった。
 この不可解な現象の原因が“アーケード”にあると直感したアレックスは、ニックと共にゲームメーカーへと押しかけ、開発者アルバート(ノーバート・ウェイサー)を問い詰める。すると、実はこのゲームには親の虐待で死亡した少年の脳細胞が組み込まれているのだという。何らかの理由で、その脳細胞が自分の意思を持つようになり、悪の化身アーケードとして戦いに敗れた若者たちをゲームの世界に閉じ込めてしまったのだ。
 そこで、アレックスはニックと共にゲームセンターへと向かい、“アーケード”の本体ゲームの中へ入り込み、囚われた仲間たちを救い出そうとするのだが…。

 とまあ、細かい設定には無理がある…というか、ツッコミどころ満載(笑)。この脚本を「ダークナイト」トリロジーや「マン・オブ・スティール」のデヴィッド・S・ゴイヤーが書いているというのはちょっとした驚きだが、誰でも下積み時代にはやっつけ仕事みたいなこともこなしているわけだし、そもそもチャールズ・バンドの書いた原案に問題があったのかもしれないし。いずれにせよ、ゴイヤーにとってはフィルモグラフィーから消したい作品の一つではなかろうか。
 演出はジャン=クロード・ヴァン・ダムの「サイボーグ」('89)や「ネメシス」('92)シリーズなどのSFアクションで有名なアルバート・ピュン監督。個人的には「ラジオアクティブ・ドリーム」('86)も大好きなのだが、どちらかというとハードな男性向けB級映画を得意とする彼にとって、女子高生が主人公のティーン向けSFアドベンチャーは明らかに畑違い。どう料理したものかと手をこまねいている姿が容易に想像つくような出来栄えだ。
 特殊視覚効果を手がけたのは、現在もトロントを拠点とするカナダのコンピューターグラフィック制作会社DHDポストイメージ。本作の以前に公開された「ターミネーター2」('91)と比べても、CGの出来栄えはかなり見劣りのするチープなものだが、実はこれでも改良に改良を重ねた結果らしい。というのも、もともと'91年に完成していた本作なのだが、あまりにもCGの見た目が貧相だったことから、いったんビデオリリースが見送られてしまったのだ。そして、チャールズ・バンドはDHDポストイメージに視覚効果の修正作業を依頼。これにかなりの時間を費やさねばならなくなったため、リリースが大幅に遅れてしまったのだそうだ。
 そんなこんなで映画の出来栄えには問題多々ありだが、まだまだ草創期にあったCGを大量導入したという意味で、その意欲だけは買いたい作品。予算は低くとも志は高く、という当時のチャールズ・バンドの制作方針が垣間見れるようにも思う。

 なお、ヒロインのアレックスを演じているのは、「ジャンクウォーズ2035」('90)や「トランサーズ2360」('91)など、当時フルムーン製作のSF映画で立て続けに起用されていた若手女優ミーガン・ウォード。ニック役のピーター・ビリングズリーは、バート・レイノルズ主演の「結婚しない男」('81)で注目された元子役で、後にプロデューサーへ転向して「アイアンマン」('08)などを製作している。
 ゲームメーカーの口八丁手八丁な営業マンを演じているのは、テレビ「新スタートレック」の異星人Q役で知られるジョン・デ・ランシー。アルバート・ピュン監督作品の常連俳優ノーバート・ウェイサーがゲーム開発者アルバートを、「かわいい女」('69)のファムファタールや「悪魔の赤ちゃん」('73)の妻役で有名なシャロン・ファレルがアレックスの母親役を、それぞれ演じている。
 また、本作は「オースティン・パワーズ」シリーズや「スクリーム」シリーズのセス・グリーン、ドラマ「アンジェラ 15歳の日々」でクレア・デインズの親友を演じたA・J・ランガーといった、後に有名となる若手俳優がアレックスの友人役を演じていることも注目ポイント。子役時代にウディ・アレンの「ラジオ・デイズ」('87)に主演して脚光を浴びたセス・グリーンだが、本作の撮影当時はちょうどキャリアに行き詰まっている時期で、低予算映画やテレビCMで食いつないでいるような状態だったようだ。

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深いトラウマを抱えた女子高生アレックス

若者たちは新作ゲーム「アーケード」に魅了される

プレイヤーはゲームのバーチャル世界に入り込む

消えた仲間たちを救おうとするアレックスとニック

自分の意思を持ってしまった悪の化身アーケード

 

 

地球最終戦争ロボット・ウォーズ
Robot Wars (1993)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/72分/制作国:アメリカ

<特典>
・ビデオゾーン(メイキング映像)
監督:アルバート・バンド
製作:チャールズ・バンド
原案:チャールズ・バンド
脚本:ジャクソン・バー
撮影:アドルフォ・バルトーリ
音楽:デヴィッド・アーケンストーン
出演:ドン・マイケル・ポール
   バーバラ・クランプトン
   ジェームズ・ステイリー
   ピーター・ハスケル
   リサ・リンナ
   ダニー・カメコナ
   ユージ・オクモト

 「ロボ・ジョックス」('89)と「ジャンクウォーズ2035」('90)に続く、フルムーン製作の巨大ロボット映画第3弾。今回はチャールズ・バンドの父親アルバートがメガホンを取り、人間型とサソリ型の2大ロボットによる激突が描かれる…わけなのだが、なにしろ上映時間はたったの72分。ストーリーはほぼ刺身のツマのようなもので、ストップモーションの巨匠デヴィッド・アレンによるミニチュア特撮が唯一の見どころとなっている。
 とはいえ、その特撮もかなりシンプル。基本的にロボットの登場する背景は砂漠が多いので、大掛かりなミニチュアセットは殆ど使用されていない。それも低予算ゆえの知恵なのだろうが、やはり迫力不足は否めない。もちろん、当時のビデオストレート映画の規模やクオリティを考えると、十分に健闘しているとは思うのだけれど。

 時は2041年。30年間に渡る大規模な戦争によって環境は破壊され、世界は2つの勢力に断絶されていたものの、ようやく1つの政府に統合されようとしていた。平和な時代が訪れたことから、戦争に使用された巨大なロボット兵器も廃棄され、現在ではMRAS-2というサソリ型のロボットだけが、放射能汚染地域を監視するために稼働しており、戦争前の都市を訪れる観光客の輸送手段としても人気を博している。
 そんなある日、観光客を乗せたMRAS-2が武装テロ集団に攻撃されるという事件が発生。操縦士ドレイク(ドン・マイケル・ポール)と相棒スタンピー(ジェームズ・ステイリー)の機転で被害は免れたものの、事態を軽視する上司ルーニー(ピーター・ハスケル)とドレイクは激しく対立する。
 その頃、ロボットの視察に訪れていたアジア同盟のワー・リー将軍(ダニー・カメコナ)と腹心チュー・シン(ユージ・オクモト)によって、MRAS-2が観光客もろともハイジャックされてしまう。実は将軍はテロ集団と結託して新政府を窮地に陥れようとしていたのだ。ジャーナリストの親友アニー(リサ・リンナ)と共に街を訪れていた考古学者リーダ(バーバラ・クランプトン)は、その事実を掴んでチュー・シンらに追われていたところをドレイクに助けられる。
 ワー・リー将軍の野望を阻止するため、旧都市クリスタル・ヴィスタへやって来たドレイクやリーダたちは、地下に眠る人間型ロボットMEGA-1を起動させ、MRAS-2との最終決戦に挑むのだった…。

 フルムーンの総裁チャールズ・バンド、そして作曲家リチャード・バンドの父親であるアルバート・バンドは、'50年代からB級映画を数多く手がけてきた映画監督。初期のホラー「デス・プラン 呪いの地図」('58)はカルト映画として名高い。また、'60年代にイタリアへ活動の拠点を移し、「荒野の渡り者」('66)などマカロニ・ウェスタンの監督・脚本家としても活躍した。息子チャールズがエンパイア時代にイタリアを制作拠点としたのも、そうした経緯があったからだ。
 主要スタッフはフルムーンお抱えの常連組。巨大ロボットのミニチュア特撮を手がけたデヴィッド・アレンは、ストップモーション撮影の大家として知られる人物で、「フレッシュ・ゴードン」('74)や「ハウリング」('82)、「トワイライトゾーン/超次元の体験」('83)などの作品で知られる。チャールズ・バンドとはエンパイア時代から「ドールズ」('87)などで関わっており、「ロボ・ジョックス」と「ジャンクウォーズ2035」のロボット特撮も彼が担当した。
 また、オプチカル効果などのSFXを手がけたのは、「死霊の世界ウィッチボード」('86)や「悪霊たちの館/呪われたハロウィンパーティ」('87)など'80年代に数多くのB級ホラー作品を担当したモーション・オプチカルズ。こちらもチャールズ・バンドとはエンパイア作品「トロル」('86)からの付き合いだ。なお、音楽スコアを手がけたデヴィッド・アーケンストーンはグラミー賞に3度ノミネートされているニューエイジ系のアーティストで、フルムーンでは「マンドロイド」('93)とその続編「インビジブル」('93)にも参加している。

 主演のドン・マイケル・ポールは「思い出のハートブレイク・ホテル」('89)や「リッチガール」('91)などの青春映画で活躍した2枚目俳優。近年はスティーブン・セガール主演の「奪還 DAKKAN アルカトラズ」('02)などB級映画の監督として活躍している。その相手役は「死霊のしたたり」('85)や「フロム・ビヨンド」('86)などでお馴染みのスクリーム・クィーン、バーバラ・クランプトン。最近では傑作ホラー・アクション「サプライズ」('11)で復活を遂げたことも記憶に新しい。
 ドレイクの相棒スタンピー役のジェームス・ステイリーは、ゴールディ・ホーン主演の「アメリカ万才」('84)で副大統領を演じていた人。アニー役のリサ・リンナはテレビの昼メロ女優としてアメリカでは有名で、最近ではリアリティ番組のセレブ系タレントとして活躍している。また、上司ルーニー役のピーター・ハスケルは、「チャイルド・プレイ」シリーズの玩具会社社長役で知られている。
 そして、悪役ワー・リー将軍を演じているダニー・カメコナは、「ロボ・ジョックス」にも出演していたハワイ出身の俳優。その腹心チュー・シン役のユージ・オクモトは'80年代から活躍する日系人俳優で、「ベストキッド2」ではダニー・カメコナと、「アロハ・サマー」('88)ではドン・マイケル・ポールとも共演。最近では「インセプション」('10)にも顔を出していた。

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サソリ型ロボットMRAS-2

考古学者リーダ(左)とジャーナリストの親友アニー

ワー・リー将軍(右)と腹心チュー・シン(左)

旧式のMEGA-1を起動させるドレイクとリーダ

MEGA-1とMRAS-2の激突が幕を開ける

 

 

マンドロイド
Mandroid (1993)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/81分/制作国:アメリカ

<特典>
・ビデオゾーン(メイキング映像)
監督:ジャック・エルスガード
製作:ヴラド・パウネスク
   オアナ・パウネスク
製作総指揮:チャールズ・バンド
脚本:アール・ケントン
   ジャクソン・バー
撮影:ヴラド・パウネスク
音楽:デヴィッド・アーケンストーン
出演:ブライアン・カズンズ
   ジェーン・カルドウェル
   マイケル・デラフェミーナ
   カート・ローウェンス
   ロバート・サイモンズ
   パトリック・エルスガード

 言うなれば、フルムーン版ロボコップである。とは言っても、こちらは100%人造マシン。専用のヘッドセットを被った人間が、バーチャルリアリティによってマンドロイドの視覚や動作を共有しながら遠隔操作する。そのアイディアやマンドロイド自体のデザインは意外にクールだったりするのだが、結果的にそれが見どころの全てという点がいかにもフルムーン作品らしい。
 とりあえず設定は無茶苦茶。舞台が東欧の某国という曖昧さは別に構わないし、なぜか全員が流暢な英語しか喋らないってのも、まあ、この種のB級映画にはありがちなので目くじらを立てるまでもない。…なのだが、しかし、である。とりあえず物語の粗筋としては、東欧の化学者コンビが人造人間マンドロイドと驚異の新物質スーパーコンを開発し、それを平和利用のためアメリカへ売るか、それとも軍事利用のため母国の軍隊へ売るかで意見が分かれたことから争いに発展する…というわけなのだが、このマンドロイドとスーパーコンの基本設定がおかしい。
 というのも、スーパーコンは人体に有害な影響を与えるためマンドロイドを使わねば創出することができない。で、マンドロイドの動力源というのが実はスーパーコン。すると、当然のことながら大きな疑問が沸く。マンドロイドがスーパーコンなしじゃ動かないのなら、最初にスーパーコンを作ったのは誰なんだ?と。そもそも、アメリカなら人類のために平和利用してくれる、共産国に売ろうとするような奴は悪者だという考えそのものが笑止千万。
 まあ、そんなこんなで突っ込みどころは満載。というか、論理的に考えると全く成立しないお話なのだが、それを含めてのフルムーン・クオリティといったところか。肝心のマンドロイドも劇中の半分位は実験室の助手みたいなことやっているので、実際にヒーローっぽい活躍を見せるのはごく僅か。この直後に続編の「インビジブル」が制作されているのだが、本当にシリーズ化するほど受けたのかどうかは謎だ。

 東欧のとある極秘研究所。カール・ジマー博士(ロバート・サイモンズ)とドラゴ博士(カート・ローウェンス)の2人は、ジマー博士の娘ザンナ(ジェーン・カルドウェル)とアメリカ人助手ベンジャミン・ナイト(マイケル・デラフェミーナ)の協力のもと、人型サイボーグのマンドロイドと驚異の新物質スーパーコンの開発に成功していた。特にスーパーコンは原子力を遥かに超え、地上最大のパワーを持つ物質だ。
 しかし、ジマー博士がマンドロイドとスーパーコンをアメリカ政府に売却することを勝手に決めてしまったことから、ドラゴ博士との軋轢が生じてしまう。アメリカならば人類のために平和利用してくれると信じるジマー博士に対し、自国の軍隊へ売ったほうが有益だと考えるドラゴ博士。2人の意見は真っ向から対立したまま平行線をたどる。
 その頃、ジマー博士からのオファーを受けてCIA捜査官ジョー(パトリック・エルスガード)と科学者ウェイド・フランクリン(ブライアン・カズンズ)がアメリカから到着する。2人はマンドロイドとスーパーコンの可能性を目の当たりにして興奮を隠せなかった。また、ハンサムで知的なウェイドに惹かれるザンナ、そんな彼女に密かな想いを寄せ続けるベンジャミンの三角関係も水面下で進行する。
 だがある晩、殺し屋を引き連れたドラゴ博士が研究所に侵入し、マンドロイドとスーパーコンを奪い去ろうとする。間一髪で殺し屋を倒し、ドラゴ博士を撃退したザンナたち。しかし、ベンジャミンがスーパーコンを保存した冷却装置に激突して重傷を負ってしまう。また、ドラゴ博士も逃げる際にスーパーコンの原料物質を浴びて全身が焼けただれてしまった。
 醜く変形した顔をマスクで覆ったドラゴ博士は、浮浪者たちを集めてギャング団を組織。マンドロイドを奪ってジョーを拉致し、彼の命と引き換えにスーパーコンを手に入れようとするのだが…。

 監督のジャック・エルスガードは本名をヨアキム・エルスガードというスウェーデン人で、母国で撮ったSFホラー「ザ・ビジターズ」('88)のカルトヒットで注目された人物。本作が監督2作目にして初のアメリカ映画進出作となった。そもそも「ザ・ビジターズ」自体が平均的なB級SFホラーで、巨匠イングマール・ベルイマンを生んだスウェーデンでもこんな低予算娯楽映画が存在する、という物珍しさが受けたような作品だった。なので、この程度の仕上がりもむべなるかなといった感じであろう。
 注目すべきは、製作のヴラド・パウネスクとオアナ・パウネスクの夫婦の存在だ。フルムーンは大ヒットした“Subspecies”シリーズを皮切りに人件費の安いルーマニアでの撮影を本格化させたのだが、その一連のルーマニア・ロケ作品で撮影監督を担当したのがヴラド、衣装デザインを担当したのがオアナだった。本作でプロデューサーへと昇格した2人は、その後もフルムーン作品を中心に低予算映画を製作し、やがて本格的にハリウッドで活躍するように。特にヴラドはケヴィン・コスナーが主演したテレビの大作ミニシリーズ「宿敵 因縁のハットフィールド&マッコイ」('12)でエミー賞にもノミネートされるまでになった。
 そのヴラドが本作でも撮影監督を担当。これをきっかけにフルムーンでSF映画やエロ映画を手がけることになったアール・ケントンが、常連組ジャクソン・バーと共同で脚本を書いている。また、モンスター化したドラゴ博士の特殊メイクを、後にSFX工房K.N.B. EFXの一員として「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「トランスフォーマー」シリーズに参加するマイケル・ディークが手がけている。

 マンドロイドの操縦を任されるイケメン科学者ウェイド役を演じているブライアン・カズンズは、キャリアの大半がテレビドラマのゲスト出演という無名の俳優。ヒロイン役のジェーン・カルドウェルも、本作以外に大した仕事をしていない無名女優だ。
 一方、ザンナに横恋慕するベンジャミン役のマイケル・デラフェミーナは、'80年代にニューヨークの演劇シーンで注目されたパフォーマーで、現在は全米の有名レストランを顧客にする広告代理店のオーナーとして活躍している人物。CIA捜査官ジョー役のパトリック・エルスガードは監督の実弟である。
 そして、宿敵ドラゴ博士を演じているカート・ローウェンスは、「ヒンデンブルグ」('75)や「セントアンナの奇蹟」('08)など第二次世界大戦を題材にした映画でドイツ人役を数多く演じてきた俳優。彼自身がナチスのホロコーストを体験したユダヤ人だったことから、その手の映画への出演が多かったらしい。

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こちらが人造人間マンドロイド

ジマー博士(中央)はCIAに技術を売ろうとする

マンドロイドは特殊なヘッドセットで操作する

醜く変形した顔をマスクで隠したドラゴ博士

ドラゴ博士に操られたマンドロイド

 

 

インビジブル
Invisible: The Chronicles of Benjamin Knight (1993)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆

カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/80分/制作国:アメリカ

<特典>
・ビデオゾーン(メイキング映像)

監督:ジャック・エルスガード
製作:ヴラド・パウネスク
   オアナ・パウネスク
製作総指揮:チャールズ・バンド
脚本:アール・ケントン
撮影:クリスティアーノ・ポガニー
音楽:デヴィッド・アーケンストーン
出演:ブライアン・カズンズ
   ジェニファー・ナッシュ
   マイケル・デラフェミーナ
   アーロン・イペール
   カート・ローウェンス
   デヴィッド・カウフマン
   アラン・オッペンハイマー

 で、こちらが「マンドロイド」の続編。とはいっても、ジャケットにはどこにもマンドロイドの文字も姿もないし、そもそもデザイン自体が完全にユニバーサル版「透明人間」のパクリなので、前作のクライマックスの予告を見ていない限りは、これが続編だとは誰も気づかないだろう。しかも、オリジナル・タイトルからして前作の事故で透明人間になってしまったベンジャミン・ナイトを主人公にした作品かと思いきや、蓋を開けてみると彼の存在はサブプロット扱いで、あくまでもマンドロイドがメイン。いったい誰に向けて作られた映画なのか、そもそも「マンドロイド」の続編であることを隠す必要があったのか、さっぱり分からないという代物なのである。
 その上、前作から引き続いて登板するマッド・サイエンティストのドラゴ博士も、本作では美女を誘拐しては宴会の席で踊らせたりレイプしたりする異常者集団のボスに成り下がってしまい、キャラクター設定がまるっきり迷走している。その代わりと言ってはなんだが、秘密警察の長官ペトロフなる人物がスーパーコンを狙う最大の敵として登場。だとすると、わざわざドラゴ博士を再び引っ張り出す必要などなかったのでは?との疑問が湧き上がるし、尺合わせのために登場させたのではないかという裏事情まで透けて見えてしまう。
 ただ、やたらと必要以上にセリフの多かった前作と比べて、今回はそれなりに派手なカーチェイスや銃撃戦などのアクション、サービス的なベッドシーンといった見せ場が増えている。その点だけは評価してもいいと思うし、少なくとも前作よりは娯楽映画としての完成度は高い。

 ドラゴ博士(カート・ローウェンス)の野望を打ち砕くことはできたものの、ジマー博士は殺されてしまい、ウェイド(ブライアン・カズンズ)も下半身が麻痺して車椅子の生活を余儀なくされてしまった。しかも、ドラゴ博士に襲われてスーパーコンに触れてしまったベンジャミン(マイケル・デラフェミーナ)は、なんとか一命を取り留めたとはいえ、事故の影響で透明人間となってしまう。退院したベンジャミンを出迎えたウェイドとザンナ(ジェニファー・ナッシュ)は、その治療方法を探すべくマンドロイドを使って研究を重ねるのだった。
 一方、ウェイドたちに敗れたドラゴ博士だったが、スーパーコンを奪う計画を秘密裏に進めつつ、精神異常者を揃えた部下たちを使って若い美女を次々と誘拐。セクシーなコスチュームを着けさせて宴会の席でベリーダンスを踊らせたり、部下たちに集団レイプさせたりするのだ。そんな彼は、ザンナを誘拐して人質とし、その身代金としてスーパーコンを手に入れようと考える。
 さらに、スーパーコンの存在を知った秘密警察のペトロフ長官(アーロン・イペール)も、警官隊を総動員して略奪作戦に乗り出そうとしていた。ドラゴ博士とペトロフ、この2人の巨悪に立ち向かうため、ウェイドはベンジャミンの特殊能力とマンドロイドのスーパーパワーを駆使する。

 主要スタッフは前作とほぼ一緒。ただし、今回はプロデューサーに専念したヴラド・パウネスクに代わって、「白昼の暴行魔」('77)や「モニカ・ベルッチの情事」('92)などのイタリア人カメラマン、クリティアーノ・ポガニーが撮影監督を担当している。ヴィットリオ・デ・シーカの「ふたりの女」('60)やケン・アナキンの「モンテカルロ・ラリー」('69)で知られる大御所ガボール・ポガニーの息子である。また、「フランケンフッカー」('90)や「アダムス・ファミリー」('91)のアル・マグリオケッティが特殊効果スーパーバイザーとしてクレジットされている。

 キャストでは、前作のジェーン・カルドウェルに代わってジェニファー・ナッシュがザンナ役として登場。彼女もまた美人だけれど印象の薄い無名女優で、本作以外はテレビドラマのゲスト出演ばかりだったようだ。また、「ハムナプトラ」シリーズのファラオなど、主にエジプト人やアラブ人役などで数多くの映画に出演しているアーロン・イペールが秘密警察のペトロフ長官役。有名なアニメ声優のデヴィッド・カウフマンが、ドラゴ博士のスパイとしてウェイドの助手となるライダーを演じている。

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半身不随の科学者ウェイド(右)と助手ライダー(左)

ドラゴ博士は引き続きスーパーコンを狙っている

事故の影響で透明人間になってしまったベンジャミン

秘密警察のペトロフもスーパーコンを奪おうとする

マンドロイドとベンジャミンを駆使して戦うウェイド

 

 

地底人アンダーテイカー
Lurking Fear (1994)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆

カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/76分/制作国:アメリカ

<特典>
・ビデオゾーン(メイキング映像)

監督:C・コートニー・ジョイナー
製作:ヴラド・パウネスク
   オアナ・パウネスク
製作総指揮:チャールズ・バンド
原作:H・P・ラヴクラフト
脚本:C・コートニー・ジョイナー
撮影:アドルフォ・バルトーリ
音楽:ジム・マンジー
出演:ジョン・フィンチ
   ブレイク・ベイリー
   アシュレイ・ローレンス
   ジェフリー・コムス
   ヴィンセント・スキャヴェリ
   アリソン・マッキー

 チャールズ・バンドといえばラヴクラフト原作ものというイメージを持つホラー映画ファンもいるかもしれないが、彼自身が特にラヴクラフトのファンというわけではなく、単にスチュアート・ゴードン監督の「死霊のしたたり」('85)がエンパイア・ピクチャーズ最大のヒットになったから、その後も製作資金を出し続けたというだけの話。実際、エンパイアはもちろんフルムーン設立後も、ラヴクラフトものといえばスチュアート・ゴードンの独壇場。あくまでもゴードンのライフワークであり、チャールズ・バンド自身はラヴクラフト作品に愛があるわけではなかった。なので、ゴードンがメガホンを取らなかった唯一の例外である本作が、とてもラヴクラフトものと呼べるような代物でなくとも何ら不思議はないだろう。
 原作はラヴクラフトの代表作の一つに数えられる傑作「潜み棲む恐怖」。絶滅したはずの近親結婚一族が、ミュータントとなって地下に棲息していたというお話だ。もともとエンパイア時代にスチュアート・ゴードンの監督で企画されていたらしいが、巡り巡って脚本家出身のC・コートニー・ジョイナーが監督することとなった。ただ、ジョイナーの回想によると、当時まだ経験の浅かった彼には大した権限も与えられず、思い描いたような作品には仕上がらなかったという。
 それがただの言い訳なのかどうかは置いといても、本作がラヴクラフトの知名度と原作の基本設定だけを拝借した、およそ「潜み棲む恐怖」とはほど遠い映画であることは確かだろう。物語の主軸を父親が一族の墓場に隠した大金を巡る息子VSマフィアの攻防戦に置き換え、そこへ謎の地底人の存在を暴こうとする調査チームを絡めることで、結果的に犯罪アクションともホラーともつかない中途半端な映画が出来上がってしまったのだ。
 そもそも明確なストーリー性に欠けるラヴクラフト作品は映像化が難しいことでも知られており、実際に多くの映画化作品が失敗に終わっているが、本作も残念ながらその一つ。同じ原作を基にした「ヘモグロビン」('97)の方が、安っぽいとはいえラヴクラフトの世界観に忠実だったと言えよう。

 無実の罪で有事判決を受けた青年ジョン(ブレイク・ベイリー)は、5年の刑期を終えて釈放され故郷へと戻ってきた。身寄りのない彼は亡き父の友人だった葬儀屋ナッグス(ヴィンセント・スキャヴェリ)の元を訪れ、そこで父親が残したという古い地図を渡される。というのも、犯罪者だった父親はマフィアのボス、ベネット(ジョン・フィンチ)の大金を横領し、息子への遺産として現金を死体に詰めて古い墓地に隠したのだ。地図にはその隠し場所が記されている。無一文のジョンは地図を受け取り、大金の在り処を探すことにした。
 だが、ジョンが釈放されたことを知ったベネットが、大金を取り戻すべく彼をつけ狙っていた。ナッグスを脅迫してジョンが墓地へ向かったことを知ったベネットは、用済みになったナッグスをその場で殺害。腹心である女殺し屋マーロウ(アリソン・マッキー)を従え、ジョンの足取りを追う。
 その頃、廃墟のような古い墓地へ忍び込んだジョンは、拳銃を手にした女性キャスリン(アシュレイ・ローレンス)に見つかり、これまた廃墟のような教会へと連れて行かれる。実はキャスリンの姉が墓地に棲息する謎の地底人によって殺害され、復讐を誓う彼女は未知の生物に興味を持つハギス博士(ジェフリー・コムス)率いる研究チームや教会のポール神父(ポール・マンティー)らの協力を得て、地底人の住処を探していたのだ。
 そこへ、ベネット一味が到着してジョンたちを拘束する。大金の隠し場所を教えなければ全員の命がないと脅迫するベネット。だが、そんな彼らに人喰い地底人たちの魔手が迫る…。

 これが監督2作目となったC・コートニー・ジョイナーは、レニー・ハーリン監督の「プリズン」('87)やマーク・L・レスター監督の「クラス・オブ・1999」('90)の脚本で注目された人物。本作で演出の仕事に嫌気がさしたのか、以降は再び脚本家に専念するようになった。とはいえ、これといったヒット作には恵まれていないのだが。
 そのほかのスタッフは、大半がフルムーン作品ではお馴染みの面々。地底人の特殊メイクは「マンドロイド」シリーズに引き続いてマイケル・ディークが担当しており、古いモンスター・コミックから抜け出てきたような造形デザインには賛否両論あるかと思われるが、その悪趣味なチープさ加減は嫌いじゃない。「悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲」('89)や「デモンナイト/惨劇のハロウィン」('94)で知られるジム・マンジーの音楽スコアも悪くなかった。

 そして、当時のフルムーン作品としてはかなり豪華なキャスト。主演としてクレジットされているベネット役のジョン・フィンチは、ロマン・ポランスキーの「マクベス」('71)やヒッチコックの「フレンジー」('72)などに主演し、'70年代に世界的な高い評価を得たイギリス人俳優だ。ただ、かなり気難しく扱いづらい人物としても悪評が高く、本作の撮影現場でも監督の言うことを全く聞かずに周囲を困らせたらしい。
 また、ヒロインのキャスリン役には、クライヴ・バーカー監督の傑作ホラー「ヘルレイザー」('87)で一躍ブレイクしたスクリーム・クィーン、アシュレイ・ローレンス。ただ、本作ではなぜかアシュレイ・ラーセンという変名でクレジットされている。さらに、変わり者のハギス博士役として「死霊のしたたり」や「フロム・ビヨンド」でホラー・アイコンとなった怪優ジェフリー・コムズが登場。「ゴースト/ニューヨークの幻」('90)や「バットマン・リターンズ」('92)などでお馴染みのヴィンセント・スキャヴェリの出演も見逃せない。
 そうした中で、最も知名度の低いのが主人公ジョンを演じているブレイク・ベイリー。現在はブレイク・アダムスを名乗っている彼は、ヒュー・ジャックマンやジョシュ・ハロウェイを彷彿とさせるかなりの男前なのだが、本作を見ても分かる通り演技力に関して問題ありだったせいか、低予算映画の主演を数本こなした以外は仕事に恵まれていない。なお、冷酷無比な女殺し屋マーロウ役で異彩を放つ美女アリソン・マッキーは、ジョイナー監督の従姉妹に当たるらしく、もともと彼女を念頭に置いて役柄が作られたのだそうだ。

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無実の罪で刑期を終えた若者ジョン

葬儀屋ナッグスからジョンの行方を聞き出すベネット

地底人を探すキャスリン(右)とハギス博士(左)

ジョンたちはベネット一味に捕まってしまう

ついに姿を現した地底人の正体とは?

 

 

ダーク・エンジェル/地獄のヴェロニカ
Dark Angel: The Ascent (1994)

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(P)2005 Full Moon Features (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆

カラー/スタンダードサイズ/画面比: 1.33:1/音声:ステレオ/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/84分/制作国:アメリカ

<特典>
・ビデオゾーン(メイキング映像)

監督:L・ハッサニ
製作:ヴラド・パウネスク
   オアナ・パウネスク
製作総指揮:チャールズ・バンド
      デブラ・ディオン
脚本:マシュー・ブライト
撮影:ヴィヴィ・ドラガン・ヴァシル
音楽:ファズビー・モース
出演:アンジェラ・フェザーストーン
   ダニエル・マーケル
   シャーロット・スチュアート
   ニコラス・ウォース
   マイケル・C・マホン
   ミルトン・ジェームス

 オリジナリティという点に関して限りなく乏しいフルムーンの作品群にあって、本作は奇跡としか言いようのない独創性で異彩を放つ。なにしろ、脚本を書いたのはカルト映画として名高い前代未聞の仰天ミュージカル「フォービデン・ゾーン」('80)のマシュー・ブライトだ。「連鎖犯罪/逃げられない女」('96)や「トリック・ベイビー」('99)といった強烈にクレイジーな映画の監督としても一部で熱狂的に支持される彼は、本作でキリスト教的世界観を根底から覆すことで善悪の意味を問うという離れ業をやってのけてしまった。
 主人公は地獄に住む若い女悪魔ヴェロニカ。罪人たちに責め苦を味わせるための修行を行っている彼女は人間社会に強い興味を抱き、両親の反対を押し切って地上へと出てしまう。そう、本作の最大の特色は悪魔を唯一神への反逆者ではなく、それどころか神の忠実なしもべであり、地獄へ落ちた悪人たちを制裁する究極の正義として描いている点だ。ある意味で仏教の価値観に近い視点だとも言えよう。
 そんなヴェロニカは地上でも悪人たちを躊躇することなく血祭りにあげていくのだが、その一方で心優しい青年医師マックスとの出会いによって初めて愛というものを知り、善悪で単純に割り切れない人間というものの複雑さを学んでいく。つまり、究極の正義というのは冷酷非情であり、それは悪と表裏一体であるということを物語っているのだ。
 中世の宗教絵画から抜け出てきたような冒頭の地獄絵図に始まり、ゴシックムード溢れるスタイリッシュな映像美も大きな見どころ。特殊メイクやSFXには低予算ならではの安っぽさが漂うものの、ルーマニア・ロケによるダークな重厚感は白眉だ。ビデオスルーのB級ホラーという枠に収まりきらない、知的で奥の深い作品。フルムーン史上最も完成度の高い野心作ではないかと思う。

 生前に大きな罪を犯した人々が永遠の責め苦を受ける場所・地獄。厳格な父親(ニコラス・ウォース)と優しい母親(シャーロット・スチュアート)に育てられた若い悪魔ヴェロニカ(アンジェラ・フェザーストーン)は、なぜ悪人は死なないと罰を受けないのか、悪人は大罪を犯す前に殺してしまった方が罪を軽く出来るし、善良な人々の苦しみも軽減できるのではないか、そんな数々の疑問に囚われていた。しかし、父親は神の御心に疑問を差し挟むことを許さず、人間界に関心を寄せる娘のことを激しく叱責する。
 とはいえ、ヴェロニカの興味と疑問は収まることを知らず、ある時ついに彼女は地上へと出てしまう。人間の姿に変身した彼女は通りがかった車に轢かれ、病院へ担ぎ込まれた。当直の青年医師マックス(ダニー・マーケル)はヴェロニカの驚異的な回復力に驚きつつ、身寄りのない彼女を自宅に住まわせることにする。
 テレビや新聞などから人間界の事情を素早く学び取ったヴェロニカは、地獄の番犬ヘルレイザーを従えて悪人退治に乗り出す。夜の公園を徘徊するレイプ魔、弱い人間から金を巻き上げる汚職警官などを、有無を言わさず次々と血祭りにあげ、抜き取った心臓をヘルレイザーに食わせるヴェロニカ。だが、助けた善人たちが揃って、彼女のことを恐れて震え上がることが本人は理解できない。なにしろ、当然の制裁を加えているだけなのだから。
 同時に、彼女は心優しいマックスに惹かれていく。ただ、愛という感情を知らないヴェロニカにとって、その気持ちは全く未知のものだった。しかも、マックスの元恋人ロイス(ヴィクトリア・コシアス)が突然現れたことで、彼女は生まれて初めて嫉妬というものを覚える。燃え上がる嫉妬心を抑えきれず、ロイスに制裁を加えようとするヴェロニカ。恐怖に涙する彼女を見てハッと我に返ったヴェロニカは、自分の正義感が間違っているのではないかと気づく。
 その頃、一連の凄惨な殺人事件を捜査していた刑事ハーパー(マイク・ジェノヴェーゼ)は、容疑者としてヴェロニカのことをマークしていた…。

 監督としてクレジットされているL・ハッサニとは、雑誌「プレイボーイ」が製作した短編官能ムービー集「インサイド・アウト」('92)シリーズに参加した女流監督リンダ・ハッサニのこと。本作を見る限りではビジュアリストとして見どころのある映像作家なのだが、長編映画を1人で手がけたのは後にも先にもこれだけ。あとはテレビシリーズのエピソード演出や、オムニバス映画の1エピソードみたいな仕事ばかりだ。
 脚本は先述の通り、カルト系の鬼才マシュー・ブライトが担当。彼の特異な才能がなければ本作は成立しなかったと言えよう。また、撮影監督には母国ルーマニアで数々の映画賞に輝く名カメラマン、ヴィヴィ・ドラガン・ヴァシル。特殊視覚効果を「パペットマスター」('89)のブレット・B・ホワイト、音楽スコアを「ドールズ」('86)のファズビー・モースが手がけている。

 ヒロインのヴェロニカを演じているアンジェラ・フェザーストーンは、「ウェディング・シンガー」('98)のアダム・サンドラーの元カノ役や、人気ドラマ「フレンズ」のシーズン3に登場したクロエ役などで知られるセクシー女優。冒頭の悪魔メイクは安っぽさが漂って微妙なところだが、ある意味で無垢な地獄の天使が“人間性”に目覚めていく姿を手堅く演じている。
 相手役のダニエル・マーケルは'90年代に昼メロ俳優として活躍した人物。また、名作ドラマ「大草原の小さな家」の女教師ビードル先生役や、デヴィッド・リンチの傑作「イレイザーヘッド」('77)のメアリーX役で有名なシャーロット・スチュアートが、ヴェロニカの母親役で顔を出しているのも見逃せない。
 さらに、カルト系ホラー「レイプ・魔の標的」('80)の殺人鬼役でシチェス国際映画祭男優賞を獲得したニコラス・ウォースがヴェロニカの父親役、ドラマ「ER 緊急救命室」の名物看護婦リディアの夫役で知られるマイク・ジェノヴェーゼが刑事ハーパー役を演じている。

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生前に大きな罪を犯した人々が罰を受ける地獄

人間界に興味を抱く若い女悪魔ヴェロニカ

心優しき青年医師マックスと出会う

有無を言わせず悪人たちを成敗していくヴェロニカ

マックスに惹かれて初めて愛を知る

 

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