FREESTYLE ARTISTS
-A-
アルタ・ダスティン Alta Dustin
フリースタイル全盛期の80年代末にデビューした女性アーティスト、アルタ・ダスティン。幾つかのクラブ・ヒットを放ったものの、当時はほとんど注目されることもなく、僅か数年で消えてしまった人だ。しかし、91年にリリースされたシングル“Lookin'
For
Love”は強烈なくらいにキャッチーなメロディとファンキーなサウンドがとても印象的で、フリースタイルの隠れた傑作とも言うべきナンバーだった。
生年月日や出身地などの詳細は不明。トリ・エイモスを発掘したことで知られる敏腕エージェント、ジョン・フロムにスカウトされ、89年に大手のアトランティック・レコードからデビューを果たした。デビュー・シングル“Tonite”とセカンド・シングル“One
Man
Woman”を手掛けたのは、カナダ出身の女性ディスコ歌手フランス・ジョリのプロデューサーとして有名なトニー・グリーン。どちらも当時のエクスポゼやスウィート・センセーションを意識したポップでキャッチーなフリースタイル作品だった。
この2曲がクラブ・チャートでマイナー・ヒットとなり、91年にはファースト・アルバム“Shoulda
Known Better”とシングル“Lookin' For
Love”を発表。しかし、どちらもチャート・アクションは全く奮わず、これを最後にアトランティックとの契約を切られてしまった。
当時は、デビューしたばかりのポーラ・アブダルが全米で一大センセーションを巻き起こしていた時期。当然のことながら数多くのフォロワーが生まれたわけだが、アルタのアルバム“Shoulda
Known
Better”も明らかにその中の一つだった。フリースタイルをベースにしながらも、ポーラ・アブダル的なダンス・ポップを目指すという中途半端さは、やはり亜流のB級ポップ・シンガーとして受け流されても仕方なかったかもしれない。
また、もともと彼女自身も本当はアコースティックなポップスを志していたらしく、アトランティックから押し付けられたダンス・ポップ路線はあまり本意ではなかったようだ。それゆえに、本人のレコード会社に対する不平不満も鬱積していたという。
その後、本来目指していたフォーク・シンガーへ転向した彼女は地道にライブ活動を続け、00年にはポップでハートウォーミングなフォーク・アルバム“Dychology
101”を自らのインディペンデント・レーベルからリリース。現在もニューヨークのライブ・ハウスで音楽活動を続けているという。
Tonite (1989) Lookin' For Love
(1991) Shoulda Known Better
(1991)
(P)1989 Atlantic (USA)
(P)1991 Atlantic (USA)
(P)1991 Atlantic (USA)
A side
1,Extended 12" Vogue
7:00
2,Radio Mix 3;48
B side
1,House Mix 7:16
2,Dub Version
5:35
produced by Tony GreenA side
1,House Mix
6:36
2,Extended Mix 5:39
B side
1,Turkish Knights Mix
4:48
2,Blade Rrunner Beats 2:02
produced by Tolga
Katas1,Shoulda Known Better 4:05 ビデオ
2,Save
Yourself (For Me) 3:46
3,Ecstasy 3:49
4,Time To Let Go
4:56
5,I'll Fight 4 Heaven 4:07
6,Lookin' For Love 4:36 ビデオ
7,Ain't I
Good Enuff? 4:52
8,Life A.D. 4:28
9,Where Were You? 4:52
10,Is It
O.K.? 5:06
produced by Oliver Leiber & Elliot Wolff, Chris
Julian, Martin Briley, Toni C., Tolga Katas, Alta Dustin, Klyde Jones, T
Marlow
まさに当時のフリースタイルの王道を行くような、キャッチーでアップリフティングなアルタのデビュー曲。プロデューサーのトニー・グリーンがカナダ出身で、レコーディングもモントリオールで行われています。煌びやかで派手なアレンジが、カナディアン・フリースタイルらしさを感じさせてくれます。ただ、肝心のメロディやサビの印象が凡庸なのはちょっと残念。なんか、どこかで聴いたことあるなあ・・・という印象は拭えません。
スティーヴィー・Bやリニアで有名なヒット・メーカー、トルガ・カタスを作曲・プロデュースに迎えたシングル。一度聴いたら忘れられないほどキャッチーなメロディと、ファンキーでパワフルなサウンドが印象的なポップ・フリースタイルの傑作です。やはりA面#2のエクステンデッド・バージョンがベストな出来栄え。エキゾチックなオリエンタル・ハウスに仕上げたB面#1のリミックスも悪くありません。ただ、A面#1のハウス・ミックスは微妙。
アルタがアトランティックに残した唯一のフル・アルバム。これがもう、まんまポーラ・アブダルという感じです。しかも、プロデュースにはポーラを手掛けたオリヴァー・レイバーとエリオット・ウルフのコンビも参加。特に#1と#3、#5は、完全な(?)ポーラのパクリです。とはいえ、シングル・カットされた#6は素晴らしい名曲だし、オリジナリティの希薄さを除けば決して悪い出来ではない。亜流のB級アイドルとしてはこれもアリでしょう。
アンバー・ローズ Amber Rose
この人をフリースタイルにカテゴライズしていいものかどうかは迷うところだが、ひとまず唯一のシングル“Never
Again”は90年代フリースタイルの隠れた名曲として記憶しておきたい作品。歌謡曲も真っ青なくらいに切ない哀愁メロディは日本人の琴線に触れまくること間違いなしで、当時まったく無視されてしまったのが残念で仕方ない。
アンバー・ローズは1983年テキサスの生まれ。80年代に全米トップ40ヒットを放ったロック・ミュージシャン、マイケル・モラレスとその兄弟ロンの二人がプロデュースを手掛けた。彼らもテキサスの出身なので、もしかしたらご近所さんだったのかもしれない。
シングルと同時発売されたアルバム“Amber
Rose”を聴けば分かると思うが、基本的にはラテン・ポップス畑の人。ボレロやランチェラをベースにしつつ、ロックやハウス、ヒップ・ホップなどの要素を盛り込んだティーン向けラテン・ポップスが特徴で、伸びのある爽やかでキュートな歌声も魅力的だった。アルバムそのものも非常に完成度が高く、これが当時全く売れなかったというのは、やはりプロモーション不足が原因と考えざるを得ないだろう。
Never Again
(1997) Amber Rose
(1997)
(P)1997 Barb Wire/Virgin America
(USA)
(P)1997 Barb Wire/Virgin America
(USA)
1,A.C.'s Stylin' Free Mix
(Radio Edit) 4:10
2,A.C.'s Stylin' Free Mix
(Extended) 6:36 ビデオ
3,House Mix
(Extended) 6:56
4,House Mix (Radio Edit) 4:06
5,Lil' Big Man's Dub
6:07
produced by Michael & Ron Morales
#1-4 reproduced by
Albert Castillo
#5 reproduced by Leonard Trujillo.1,Chicas Quieren Gozar
(Girls Just Wanna Have Fun) ビデオ
2,Candyboy
3,Esta
Noche
4,Let Me Be Your Angel
5,Tu Me Prometiste
6,Never
Again
7,La Reyna De Tu Corazon ビデオ
8,My True
Love
9,Que Ha Pasado?
10,Conversation
produced by Michael
& Ron Morales
なぜ当時全くヒットしなかったのか首を傾げてしまうくらい、とても良く出来た哀愁系フリースタイルの傑作です。コテコテなまでに歌謡曲ノリのメロディは、そのまま日本語の歌詞を乗せてもハマるはず。特に#3と#4のハウス・ミックスは、まさにユーロビート炸裂という感じです。なので、まあアメリカで受けなかったというのは分からないでもないんですけどね。アメリカで売るにはちょっとヨーロッパ的過ぎたのかもしれません。
キュートでポップでセンチメンタルなアンバー・ローズのファースト・アルバム。まさに若さ炸裂といった感じです。オープニングを飾るシンディー・ローパーのカバー#1も、程よいラテン風味がパーティー気分を盛り上げます。それ以外にも、全体的にラテン・ポップス的要素を隠し味にしているのがグッド。モラレス兄弟のポップ・センスもなかなか見事で、売り方次第では十分に大ヒットの可能性もあったと思います。ラテン好きにもお薦めできる1枚。
アンジェリーナ Angelina
カリフォルニアのサン・ホセを拠点とするインディペンデント系フリースタイル専門レーベル、アップステアズ・レコーズから96年にデビューした女性シンガー、アンジェリーナ。当時は既にフリースタイルそのものがアンダーグランド化しており、いわゆるメジャー・ヒットには恵まれなかったわけだが、それでもこれまでに3枚のアルバムと10枚のシングルをリリースしているのは立派だと言えよう。
5人きょうだいの貧しくも賑やかな家庭に生まれ育ったアンジェリーナは、両親の勧めで幼い頃から歌のレッスンに通っていたという。まだ発足したばかりだったアップステアズ・レコーズのオーディションに合格した彼女は、その約2週間後にデビュー・シングル“Release
Me”を発表。これがラジオのフリースタイル専門局を中心に評判となり、レーベルの看板アーティストとして活躍するようになる。
中でも、ハウスとヒップ・ホップとマンボをミックスさせたパーティー・チューン“Mambo”と、ベルギーのグループ“パラディシオ”のカバー曲“Bailando”は、90年代末のラテン・ハウス・ブームのおかげでクラブ・チャートでかなりの人気を集めた。その人気は北米に止まらず、メキシコやブラジルでもコンサートを行ったことがあるそうだ。
ただ、歌手としての実力は正直なところ及第点。お世辞にも上手い人とは言えず、セクシーなルックスと露出度の高さで人気を得たという事実は否定できないだろう。楽曲の出来不出来もかなり落差が激しく、どのみちメジャー・シーンで勝負できるようなアーティストではなかったのかもしれない。
今のところ、03年のアルバム“Love
Ain't Here No
More”以降は新作をリリースしておらず、最近では主にヒスパニック層向けのテレビ・タレントとして活躍しているようだ。
Mambo (1998) Bailando
(1999)
(P)1998 Upstairs Records
(USA)
(P)1999 Upstairs Records
(USA)
1,Original Radio 3;01
2,East West
Radio 3:29 ビデオ
3,West Radio
3:22
4,East Radio 3:27
5,Original Radio Intro Chant
3:53
produced by Noel Sauchedo1,Pop Mix 3:33
2,Crossover Mix
3:33
3,Spanish Pop Mix 3:33
4,Spanish Crossover Mix 3:33 ビデオ
produced
by Noel S.
#1&3 mixed by Luigi Giraldo
#2&4 mixed by Bill
Williams
これは当時フリースタイル系チャートを中心に大ヒットしたシングル。ちょうどリッキー・マーティンやエンリケ・イグレシアスの大成功によるラテン・ブームが巻き起こっていた時期で、その波に乗ったという印象があります。オーソドックスなマンボのリズムとメロディをベースにしつつ、ヒップホップ的な要素を盛り込んだラテン・ハウス。なかなかキャッチーで楽しい作品です。ただ、ミックスはどれも似たり寄ったりといった感じ。
日本でもちょっとだけ話題になったベルギーのラテン・ハウス系ユニット、パラディシオがヨーロッパで大ヒットさせた曲のカバー。ドイツの女性アーティスト、ローナも当時カバーしていましたね。アンジェリーナのバージョンは、よりハードなハウス色を強調したパワフルな仕上がり。また、#2と#4のリミックスでは、オールドスクール系のフリースタイルに衣替えしており、しっかりとアメリカ市場向けの作品になっています。
アン=マリー Ann-Marie
伝説的なダンス系レーベル、スリーピング・バッグからデビューしたフリースタイル系女性アーティスト、アン=マリー。スリーピング・バッグといえばマントロニックスやコンク、ダー・ブラクストンなど主にヒップ・ホップやハウスのダンス・クラシックを数多く生み出したレコード会社として有名だが、その一方でジョイス・シムスやノセラといったフリースタイル系の人気アーティストも少なからず抱えていたことを忘れてはならないだろう。
そんな彼女を手掛けたのは、今やハウス界の大御所として知られるプロデューサー、トッド・テリー。そう、リトル・ルイ・ヴェガがフリースタイルでキャリアをスタートさせたように、トッド・テリーも初期の頃は数多くのフリースタイル系ナンバーを手掛けているのだ。
ただ、チャート・アクション上ではこれといった結果を残すことが出来ず、たった2枚のシングルをリリースしただけで、アン=マリーは音楽シーンから消え去ってしまった。どちらも、なかなか良心的な佳作だっただけに、その短すぎるキャリアが惜しまれる。
With Or Without You
(1989) Just Waiting For You
(1990)
(P)1998 Sleeping Bag Records
(USA)
(P)1990 Sleeping Bag Records
(USA)
side X
1,Club Mix 6:15 ビデオ
2,Radio Mix
3:39
side Y
1,Dub T 6:15
2,Dub U 5:54
3,Bonus Beats
2:55
produced by Todd Terry
mixed by Little Louie Vegaside X
1,Club Mix 5:10 ビデオ
2,Dub Mix
6:15
3,Radio Mix 3:23
side Y
1,Deep House Mix 4:50
2,Acapella
1:43
3,Master Dub 5:00
4,Bonus Dub 4:23
produced by Todd
Terry
mixed by Todd Terry
プロデュースにトッド・テリー、ミックスにリトル・ルイ・ヴェガという、ハウス・フリークなら狂喜乱舞間違いなしの最強の布陣によって制作されたフリースタイル・ナンバー。これがニューヨーク系フリースタイルの王道を行くような作品に仕上がっているんですね〜。まるで初期カバー・ガールズやミックマック・レコードの作品を彷彿とさせるものがあります。トッド・テリーやルイ・ヴェガのハウス作品しか知らないファンにとっては、かなり意外な音かもしれませんね。ただ、楽曲的にはヒットしなかったのも納得。いまひとつパンチが足りません。
こちらも同じようにセールス的には惨敗でしたが、楽曲的には前作よりも遥かに優れた出来の作品。ほんのりと漂う哀愁感がなんとも心地よく、決して派手ではないものの、なかなか秀逸な仕上がりのアーバンなニューヨーク系フリースタイルだと思います。なんとなく、レーベルメイトのマントロニックスを彷彿とさせるものがあると思いますね。一方、B面#1のディープ・ハウス・ミックスも、トライバルなアフロ・ビート炸裂という感じで、なかなかクールかつスタイリッシュな出来栄え。これがアン=マリーにとって最後の作品になったのは残念です。
アーリーン Arlene
80年代から90年代初頭にかけて、フリースタイル・チャートで活躍した女性ボーカリスト、アーリーン。フリースタイル・ミュージック全盛期を陰で支えたマイナー・アーティストの一人である。
もともと彼女はニューヨークのフリースタイル系レーベル、ミッドナイト・サン所属の女性トリオ、レザー&レースというグループのメンバーだった。グループ在籍当時から、その傍らでソロ・シングルを発表し、88年の“We
Can Work It
Out”でソロ・アーティストとして独立。
91年にはフィーバーと並ぶニューヨーク・フリースタイルの総本山カッティング・レコーズに移籍し、フリースタイル・クラシックとして有名なヒット曲“Why
U Wanna Hurt
Me”をリリースしている。
ただ、いずれの楽曲もあくまでフリースタイル・コミュニティー内に限られたヒットであり、ポップ・チャートへのクロスオーバーには至らなかった。やがてフリースタイルのジャンルそのものが衰退すると、90年代半ばにはゴスペル・シンガーへと転向している。
Why U Wanna Hurt Me
(1991)
(P)1991 Cutting Records
(USA)
side A
1,Extended Dance Mix
8:30
2,Radio Version 4:12
side B
1,Why U Wanna Dub Me
5:12
2,Funky Strip Mix 6:13
produced by David Sanchez & Guy
Vaughn
mixed by Aldo Marin & Def Con 4
カッティングへの移籍第一弾にして、彼女にとって最大のヒット曲となったシングル。一応、当時フリースタイル界に一大センセーションを巻き起こしていたリセット・メレンデスを意識したのは明らかで、彼女の“Together
Forever”をパクったような印象は否めません。とはいえ、ヒット曲のコピーというのは商業音楽の基本。キャッチーなサビを含め、個人的には好きな作品です。
そのほか Others
I Can't Live Without You
(1996)/Angelique Don't Take Back Your Love
(1991)/Ashley Paul
(P)1996 High Power/Warlock
(USA)
(P)1991 Zazoo Records
(USA)
1,The Way We Were
(Dance
Radio Mix) 3:30
2,You Look So Fine 4:11 ビデオ
3,Midnight
Love Affair 4:46
4,I Would Give The World To You 4:22
5,I Want You
To Know 3:27 ビデオ
6,Take Your
Time 3:39
7,Why Do You Love Her 3:53 ビデオ
8,I Used To
3:39
9,I Can't Live Without You 3:59
10,I Want Your Love
4:02
11,I'm Walking Out The Door 4:06
12,The Way We Were
(Love
Mix) 3:05 ビデオ
produced
by Tony Garcia & Elvin Molinaside 1
1,Don't Take Back Your
Love 5:21
side 2
1,Don't Take Back Your Love
(Instrumental) 4:51
produced by Don Oriolo
ヒップ・ホップの殿堂として有名なワーロック・レコーズ傘下のハイ・パワー・レコーズからデビューしたアンジェリーク。これが唯一のアルバムですが、なかなか悪くない出来です。バーブラ・ストレイサンドのカバー#1と#12なんか、とてもロマンティックでエレガントなアレンジが秀逸。全体的にはチープなB級フリースタイルという印象ですが、手堅い楽曲作りには好感を持てますね。アンジェリークのボーカルも意外としっかりしています。
もともと大手アリオラからデビューした女性歌手アシュリー・ポールのセカンド・シングル。初期リサ・リサ&カルト・ジャムのプロデューサーで、ボビー・オーランドの盟友でもあるドン・オリオロがプロデュースを手掛けています。これまた、いかにもといった感じのチープなB級フリースタイルですが、このケバケバしさは嫌いじゃないんですよね(笑)アシュリーのボーカルも含めて、パワフルなハイエナジー系フリースタイルに仕上がっています。
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