フレッド・オーレン・レイ Fred Olen Ray
〜最低予算で最低映画を撮る愛すべきバカ映画監督

 

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 アメリカ映画界の名物男とも言うべき映画監督フレッド・オーレン・レイ。デビューから27年の間で、実に90本以上のホラー映画やSF映画、アクション映画、ソフト・ポルノ映画などを量産している人物だ。彼の自慢は常識破りの低予算とハイ・スピード。劇場用映画の撮影を6日間で終わらせるなんてことも当たり前だった。
 その座右の銘は、“今あるもので何とかしろ”。予算不足でセットや小道具が準備できなければ、他の映画会社の倉庫から使い古しを借りてきたり、ゴミ捨て場から拾ってきたものを使って何とかする。役者やスタッフの頭数が足りなければ、家族や親戚、知人に頼んでタダで協力してもらう。余計なお金はかけない、というのが彼の映画製作の鉄則なのだ。
 現在もケーブル・テレビやDVD販売専用として年間2〜3本の作品を発表しているフレッド・オーレン・レイだが、やはり1980年代から90年代にかけて作られた劇場用映画が一番良かった。とはいえ、スピルバーグやジョージ・ルーカスのような大作を期待してはいけない。そもそも、その100分の1以下の予算で作られているものばかりなのだから。
 お金はない、時間もない、ついでに才能もない、場合によっては脚本もない、そんなナイナイ尽くしの状況下で作られた彼の作品は、辻褄の合わないストーリーや安っぽい特撮(SFXとは呼ばない)、ぎこちない役者の演技など、一般的なハリウッド映画を見慣れた観客には理解し難い世界と言えるかもしれない。だが、その一方で一部の映画マニアからは熱狂的(?)に愛されていることも事実。何故なら、彼の作品には盲目的と言っていいくらいの、映画に対する深い愛情が溢れているからだ。

 1954年9月10日、オハイオ州生まれのフレッド・オーレン・レイは、フロリダで少年時代を過ごした。幼い頃から大の映画ファンだった彼は、特にホラー映画やSF映画、冒険活劇映画といった低予算の娯楽映画に親しんで育ったという。また、彼の育ったサラソタという町はリングリング・サーカス発祥の地として知られており、サーカス団の曲芸師が学校の先生だったりするくらい、サーカスが住民の生活と密着していた。中でも、サーカスに併設された見世物小屋が大好きだったというフレッドは、そうした奇妙で悪趣味な世界にいつしか強く魅せられていったという。
 現在でも彼の自宅には、古いB級映画で使われた小道具や宇宙人マスク、ポスターやロビー・カードといったコレクターズ・アイテムと共に、かつて見世物小屋で飾られていた調度品や奇形動物の標本などがびっしりと並んでいる。要は、根っからのオタクなのだ。そのマニアぶりが高じて“アメリカン・インディペンデント”なるB級映画系同人誌まで作っていたというフレッドは、おのずと将来は映画監督になりたいという夢を抱くようになったのだった。

 とはいえ、映画監督なんてそう簡単になれるものでもない。フロリダで撮影される映画の使い走りやスチル撮影などの仕事をこなしたフレッドだったが、それだけでは生活が成り立つはずもなく、地元の公共テレビ放送のテクニカル・ディレクターとして就職していた。当時、テレビ局では次々と新しいビデオ・カメラが導入され、古い16ミリ・カメラが大量に倉庫で眠っていた。そこで彼は、自腹でフィルムを1巻購入し、お手製のモンスター・マスクを使って、若い女性が怪物に襲われるというテスト・フィルムを撮影する。
 その頃、彼は知人からヘンリー・カプランという人物を紹介されていた。カプランはニューヨークの映画会社の元重役で、引退して老後を過ごすためにフロリダへ移住してきていた。フレッドはカプランに撮影したフィルムを見せて助言を求めたという。カプランの見解によると、このフィルムをもとに一本の映画を完成させるためには、あと15000ドルくらいは必要だろう。それも、主演には知名度のあるスターを起用しなくてはいけない、とのこと。
 そこでフレッドが思いついたのが、1940年代の映画スター、バスター・クラッブの起用だった。もともと水泳選手だったクラッブは、その彫刻のように美しい肉体とハンサムな顔、そして輝くようなブロンドを武器に、「ターザン」シリーズや「フラッシュ・ゴードン」シリーズといった活劇映画で一世を風靡したトップ・スターだ。当時は既に半ば引退状態にあったが、それでも一般的な知名度は非常に高かった。だが、なぜバスター・クラッブだったのかというと、その直前にテレビ特番のゲストとして彼に出演してもらったことがあったのだ。早速、クラッブに出演交渉をしたところ、週末のみの撮影という事を条件に快諾してもらうことが出来た。あとは製作資金の調達だ。
 母親が連帯保証人となって銀行からの融資を受けたフレッドだったが、借りることが出来たお金はたったの1200ドル。当時の一般的な低予算映画と比べても、1200ドルというのはケータリング代くらいにしかならない。それでも無いよりはマシ。あとは、あるもので何とかしなくてはいけなかった。

 こうして、ほぼゼロに近い状態の製作費で作られたフレッドの処女作が「エイリアン・デッド」('80・日本ではビデオ発売のみ)。撮影されたのは1978年だが、買い手が付くまでに1年半以上かかった。製作費が回収できたのかさえ、実際のところは定かではない。とりあえず映画監督としてのキャリアを歩み始めたフレッドだったが、かといって次があるわけでもなかった。そこで、彼は弟のジムと共にロサンゼルスへ移住することを決意する。なんとかして、映画界に入りたかったからだ。
 ロスへ着いたフレッドとジムだったが、すぐに仕事が見つかるはずもない。テレビ・ドラマやコマーシャルの裏方のアルバイトしながらチャンスを狙っていたフレッドは、ボルチアモにある映像ラボと契約を結ぶことになった。そこで、彼はかねてから暖めていた映画の企画を持ち出す。当時のスラッシャー映画ブームにヒントを得たもので、若者たちのグループがインディアンの悪霊に次々と殺されていくというホラー映画だった。それが「スカルプス」('83)という作品。
 ところが、最初に雇ったカメラマンがズブの素人で、撮影されたフィルムは露出が酷くて使い物にならなかった。一日で代わりのカメラマンを探して撮影を再開。しかし、予算オーバーを解決するために脚本を削ったりしたこともあり、全く辻褄の合わないシュールな映画が出来上がってしまった。だが、それが逆に配給会社の興味を引くところとなり、これがフレッドにとって初の劇場公開作となったのだ。当初はビデオ・スルーも覚悟していただけに、彼にとっては嬉しい驚きだったという。

 その後、「エイリアン・ハザード」('85・日本ではビデオ発売のみ)、「ファントム・エンパイア」('86)、「ネフレイティスの秘宝」('86・日本ではビデオ発売のみ)といった超低予算のSFホラー活劇を次々と手掛けていったフレッド・オーレン・レイ。この頃から、日本でも一部の映画マニアの間で彼の名が注目されるようになっていった。
 80年代後半といえば、ちょうど日本でもビデオ・レンタルがブームとなっていた時期。見た目の派手な彼の作品は、日本のビデオ・メーカーにもレンタル向けとして好まれたのだろう。「ファントム・エンパイア」や「超高性能兵器サイクロン」('87)、「宇宙要塞からの脱出」('88)なんかは劇場公開までされている。当時は、ヘラルドやジョイパックが歌舞伎町の小さな映画館でB級娯楽映画の2本立て興行を積極的にやっており、ちょっとした日本版グラインドハウス的なムーブメント(?)が存在していた。フレッドの作品なんかはまさに、そうした興行形態におあつらえ向きだったと言えるだろう。

 当時のフレッド・オーレン・レイ作品の醍醐味といえば、キラ星のごとき(?)B級映画スターや往年の名優の大量出演。シド・ヘイグやリチャード・リンチ、ディック・ミラー、ロス・ヘイゲンといったB級映画ファンにはお馴染みの顔ぶれから、ジョン・キャラダインやキャメロン・ミッチェル、アルド・レイ、ロバート・ヴォーン、マーティン・ランドーといった往年のハリウッド・スター、さらには1930年代のユニヴァーサル・ホラーで活躍した女優キャロル・ボーランドのようなマイナーな人まで、その賑やかな顔ぶれは映画オタクであるフレッドの面目躍如といったところ。マニアックな映画ファンならば、そのキャスティングだけでも心動かされてしまうはずだ。
 また、こうしたベテラン俳優の起用というのは、インディペンデント系の娯楽映画にとっては重要なセールス・ポイントでもあった。配給会社には売り込みやすいし、それなりに観客を呼ぶことも出来る。旬のスターを起用するにはギャラが問題となるが、全盛期を過ぎてしまったベテラン俳優は二束三文で出演させることが可能だった。ロバート・ヴォーンやマーティン・ランドーが出演している映画ならば、そこそこ製作費はかかっているに違いない、という印象を与えることも出来た。実際には、彼らのギャラなど雀の涙ほどだったのだが、一般の観客は知る由もない。
 そのベテラン俳優たちにとっても、フレッドの作品はいい小遣い稼ぎだった。というのも、彼はこうしたベテラン俳優の出番に関しては、大抵1日か2日で撮り終えてしまうからだ。しかも、特別な理由がない限りは1テイクでオーケーを出す。フィルムを無駄にしたくないから。撮影自体も朝の7時に始まって、夜の7時で終わるというのが当たり前。元来ずぼらな性格のフレッドは、基本的に長時間の仕事はしたくない、というのが本音だった。年老いた俳優にしてみれば、こんなに楽な現場もないだろう。ただでさえ、年を取って仕事のなくなった彼らにしてみれば、まだ現役であるということを世間にアピールできる上に、老体に鞭打つ必要も無いということで、実は結構オイシイ仕事でもあったのだ。双方の利害が見事に一致していたのだと言えるだろう。

 一方、90年代に台頭したB級映画専門女優たちを発掘したことも、当時のフレッドの大きな功績だったと言えるだろう。リニア・クイグリー、ミシェル・バウアー、ブリンク・スティーブンス、J・J・ノースなどなど、彼の作品には巨乳美女が付き物だった。彼女たちはいずれもヌード・モデル出身で、オッパイを出すことには一切抵抗がなかった。しかも、喜んでB級映画に出演するというノリの良さもあって、マニアの間では熱狂的に迎えられた。その人気はうなぎのぼりとなり、90年代後半にはちょっとしたスクリーム・クィーン・ブームを巻き起こしたものだった。
 また、モニーク・ガブリエルやマーゴ・ヘミングウェイ、ブリット・エクランドといった、旬を過ぎたベテラン・セクシー女優たちも、フレッドのおかげで仕事にありつくことが出来た。気難しい事で有名なタニア・ロバーツなんかも、当時は誰も一緒に仕事したがらなかったものだが、ソフト・ポルノ「スキャンダラスな女/愛と欲望の私生活」('91)の主演に起用され、一時的ではあったにせよ再び脚光を浴びることが出来た。

 現在も相変わらず低予算のB級ホラーやSF、アクション、エロティック・サスペンスなどを撮り続けているフレッド・オーレン・レイ。最近ではニコラス・メディーナやエド・レイモンド、シャーマン・スコットといった匿名を使うことが多いようだが、そのハイペースな創作活動は一向に衰える事を知らない。ただ、殆んどの作品が劇場公開されずにDVDでリリースされたり、ケーブル・テレビで放送されたりするというのが現状で、その製作スタイルはすっかり様変わりしてしまった。
 作品の供給先が決まっているので、かつてのように知恵を絞った突飛なアイディアもなくなってしまった。ヒット作の二番煎じさえ作っていれば十分なのだから。予算が少ないという事情は変らないが、CGさえあれば何とか足りないものをカバー出来るので、もうセットや小道具を借りるために奔走する必要も無い。CGによるSFXが最大の目玉になったので、ベテラン俳優やセクシー女優も特に必要が無くなった。インディペンデント会社による劇場用B級映画の時代は、すっかり過去のものとなってしまったのである。なにしろ、かつてはB級映画の十八番だったジャンルを、ハリウッドのメジャー会社がビッグ・バジェットでバンバン作るようになってしまったのだから。
 さてさて、そんな状況を味気ないと感じるのは、果たしてボクのような古いB級映画ファンだけなのだろうか・・・?

ということで、個人的に大好きなフレッド・オーレン・レイ作品を以下に紹介しておきます。

 

エイリアン・デッド
Alien Dead (1980)
日本ではビデオ発売のみ・DVDは未発売

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(P)2005 Retromedia (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
75分/製作:アメリカ

映像特典
フレッド・オーレン・レイ監督音声解説
出演者による座談会
スチル・ギャラリー
監督:フレッド・オーレン・レイ
製作:チャック・サムナー
    フレッド・オーレン・レイ
脚本:フレッド・オーレン・レイ
    マーティン・ニコラス
撮影:フレッド・オーレン・レイ
    ゲイリー・シンガー
音楽:フランクリン・スレッジ
    チャック・サムナー
出演:バスター・クラッブ
    レイモンド・ロバーツ
    リンダ・ルイス
    ジョージ・ケルシー
    マイク・ボナヴィア

 フレッド・オーレン・レイ監督の記念すべき(?)デビュー作品。ただ、1977年に“The Brain Leeches”という自主制作映画を作っているので、正確にはこれが2作目に当たる。その“The Brain Leeches”という作品は、いわゆるホーム・ムービー的な映画だったらしく、“あまりにも酷い出来なので封印しておきたい”と監督自身も語っている。なので、この「エイリアン・デッド」が監督デビュー作品という事で問題はないだろう。まあ、問題があるとすれば、この作品自体も決して出来が良いとは言えないということくらいか(笑)。
 上でも述べたように、製作費はたったの1200ドル。当時のレートに換算してみても、恐らく40万円程度。とても映画の製作費とは思えないような金額だ。で、実際に出来上がった作品も、身の丈に合っているというか、まさしく1200ドルで作られた映画といった感じ。要は、ド素人の作った学生映画と何ら変わりないのである。
 しかし、そこはフレッド・オーレン・レイのこと。ジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」からユニヴァーサルの「大アマゾンの半魚人」に至るまで、彼が愛してやまない古典的B級ホラー映画への愛情がたっぷり詰まった、何とも微笑ましいバカ映画に仕上がっている。

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主人公トム(R・ロバーツ)とショーン(L・ルイス)
「エイリアン・デッド」より

保安官役のバスター・クラッブ
「エイリアン・デッド」より

迫り来るゾンビ軍団!
「エイリアン・デッド」より

 舞台はアメリカ南部の田舎町。近辺の湖や川から突然ゾンビが現れ、住民を次々と食い殺していく。異変に気付いた若者トム(レイモンド・ロバーツ)と恋人ショーン(リンダ・ルイス)は、保安官コワルスキー(バスター・クラッブ)の協力を得て調査を開始した。すると、墜落した隕石を拾おうと湖に入った若者たちが次々とゾンビになってしまったという事実を知る。迫り来るゾンビたちに追い詰められたトムやショーンたち。果たして、彼らの運命やいかに・・・!?
 とまあ、ストーリーはいたって単純。上映時間を埋めるために本筋とは全く関係のないシーンがところどころで追加撮影されているので、とにかくのんびりとストーリーが進行する。正直、かったるい。最初にゾンビが登場するシーンというのも、実はフレッドがテスト・フィルムとして事前に撮影したものをそのまま使用しているので、その後に出てくるゾンビとは特殊メイクのデザインが全く違ったりする。そもそも、最初に登場するのはどう見てもゾンビではなくて、宇宙人風のモンスターだし。
 この種の突っ込みどころは、これ以外にも全編に渡って盛りだくさん(笑)。たとえば、女性がゾンビの集団に襲われて食われてしまうシーン。ゾンビが女性の右手をもぎ取って貪り食うのだが、横たわっている女性の体にはしっかりと右手が付いている。また、お婆さんが干草用のフォークで串刺しにされるシーンも、フォークの先端は三本だったはずなのに、お婆さんの背中から突き出ているのは何故か四本。とにかく、細かいディテールなんぞお構いなしといった様子だ。
 しかし、一番笑えるのは湖を泳いでいた女性が、岸に立つ男性から声をかけられるシーン。それまで、水中カメラが湖の底から女性の泳ぐ姿を捉えていたのだが、岸から声をかけられた途端に女性がいきなり湖から立ち上がってしまう。それも、水かさは膝上までくらいしかない。どう考えても、泳げるような深さじゃないのだ。となると、今までの水中撮影は何だったのか!?と思わず目を疑ってしまう衝撃の爆笑シーンである。もちろん、作ってる側は至って大真面目。コメディ映画じゃないんだし。

 とまあ、万事がこの調子で展開されるのだが、当時のフレッド・オーレン・レイは映画監督としては素人も同然。演出の勉強なんかしたことないもんだから、市販されている映画製作のマニュアル本を片手に撮影を行ったそうだ。監督が素人ならスタッフも素人。サウンド・エンジニアは本職がラジオのDJだったらしく、ラジオ局で要らなくなったエルヴィス・プレスリーの8トラック・テープを解体し、テープだけ抜き出してアフレコ用に再利用していたという。
 キャストにしたって、主演のバスター・クラッブ以外は殆んどが素人。例えば、ヒロイン役のリンダ・ルイスはカーペット屋の奥さんで、顔が何となく女優っぽいからという理由だけで起用されている。ヒロインの兄を演じているジョージ・ケルシーは、フレッドの勤めていたテレビ局の上司。その他、友達の友達だったり、ご近所さんだったりといった人々が顔を出していて、妙にアット・ホームな雰囲気なのだ。
 ちなみに、一応主演としてクレジットされているバスター・クラッブだが、週末しか撮影に参加できないという事もあって出番は少なめ。それでも、当時70歳を過ぎているとは思えないくらいに筋骨隆々としたカッコいいオヤジで、さすが往年の映画スターといった雰囲気がある。当時も現役でスイミング・インストラクターをやっており、シニア・オリンピックで新記録を樹立するなどの活躍ぶりだったという。

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湖の底を泳ぐスイミング・ゾンビ
「エイリアン・デッド」

死体の内臓をムシャムシャ食べる犬
「エイリアン・デッド」より

ゾンビ軍団に襲われる女性
「エイリアン・デッド」より

 このように、どこからどう見ても素人が作った低予算映画なわけだが、オオッっと思わせられるようなシーンもないではない。例えば、湖の底をゾンビが泳ぐシーン。「サンゲリア」のサメを噛み殺すゾンビほど強烈ではないが、それでもなかなか不気味なムードが漂っていてインパクトが強い。水面からゾンビが続々と登場するシーンは、ケン・ヴィーダーホン監督の「ゲシュタポ卍(ナチ)死霊軍団/カリブ・ゾンビ」('77)にソックリだが、実はこの作品はフロリダで撮影されていて、フレッドもスチル・カメラマンとして撮影に参加していたという。海底からゾンビが登場するというシーンはフレッドのお気に入りで、自分の作品でも是非やってみたかったのだそうだ。
 また、男性がゾンビに下半身を食われてしまうシーンでは、上半身だけになった遺体に犬が近寄ってきて、内臓をむしゃむしゃ食ってしまう。このシーンでは、ダミー・ボディの内臓部分にドッグ・フードを詰め込んで撮影しているのだが、これがなかなか良く出来ている。
 ちなみに、フレッドは残酷シーンや暴力シーンがあまり好きではなく、特に女性に対する暴力描写は生理的に受け付けないらしい。そう言われると、確かに彼の作品にはセクシーなキャット・ファイト・シーンはあっても、露骨なレイプ・シーンは一切ないし、女性を狙うシリアル・キラーなんかもあまり登場しない。彼の作品がどこか微笑ましくて長閑(のどか)なのは、その平和主義で温厚で適当(笑)な彼自身のキャラクターに由来しているのかもしれない。
 なお、アメリカではフレッド自身の経営するビデオ・メーカー、レトロメディアからDVDがリリースされている。1980年に「エイリアン・デッド」の配給権を売った彼は、実は手元にオリジナル・ネガを残していなかった。その後、配給会社も倒産してしまったため、この作品のフィルムは残されていないものと諦めていたという。ところが、2003年の暮れになってロン・リングホファーという個人コレクターが、「エイリアン・デッド」の16ミリ・ポジ・フィルムを所有していると名乗り出たのだ。当時の配給会社からロン自身が直接購入したもので、入手してから一度も開封していないという新品同然のフィルムだった。そこからテレシネして、デジタル・リマスターを施したのが、このDVDなのだ。
 とはいえ、35ミリ・フィルムに比べると16ミリ・フィルムは極端に傷みやすい。しかもオリジナル・ネガではなくてポジ・フィルムだ。デジタル・リマスターしたとはいえ、画質は決して良いとは言えない。しかし、もともと16ミリで撮影された作品で、当初から画質は悪くて当たり前だったので、贅沢は言えない。当時のキャストが集まって思い出を語る座談会も映像特典で収録されているので、ファンなら是非とも手に入れておきたい1枚。

 

ファントム・エンパイア
Phantom Empire (1986)
日本では劇場公開及びビデオ発売
DVDは未発売

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(P)2005 Retromedia (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/ステレオ/音声
:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/84分/製作:アメリカ

映像特典
監督&カメラマンの音声解説
メイキング・ドキュメンタリー
撮影の舞台裏映像
スチル・ギャラリー

監督:フレッド・オーレン・レイ
製作:フレッド・オーレン・レイ
脚本:フレッド・オーレン・レイ
    T・L・ランクフォード
撮影:ゲイリー・グレイヴァー
音楽:ロバート・ギャレット
出演:ロス・ヘイゲン
    ジェフリー・コムス
    ロバート・クォリー
    シビル・ダニング
    スーザン・ストーキー
    ドーン・ワイルドスミス
    ラス・タンブリン
    ミシェル・バウアー

 最高に下らなくて、最高に楽しいバカ映画の佳作。全編これまた適当な作りで、チープかつ意味不明、B級映画オタクの独りよがり以外の何ものでもない作品だ。地底探検の冒険活劇を軸に、SFアクションからモンスター・ホラー、巨大怪獣、アマゾネスなど、ありとあらゆるB級ジャンルをてんこ盛りにした寄せ鍋状態。いや、安くて身体に悪そうな具材しか入ってないのでヤミ鍋か。とにかく、内輪ネタとしか思えないような寒いギャグも満載で、まさに大人の学芸会といった感じの賑やかな作品に仕上がっている。
 こんな映画をまともに鑑賞して、下らない!バカバカしい!と憤慨するのは野暮というもの。下らなくて当たり前。バカバカしくてナンボのもの。こういう映画を純粋に楽しめるようになってこそ、初めて本物の映画通を名乗れるようになるのだから。・・・って、ウソです♪

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私立探偵コート(R・ヘイゲン)と相棒エディ(D・ワイルドスミス)
「ファントム・エンパイア」より

謎の美女デニー(S・ストーキー)
「ファントム・エンパイア」より

ストロック教授(R・クォリー)と助手アンドリュー(J・コムス)
「ファントム・エンパイア」より

 主人公は私立探偵コート・イーストマン(ロス・ヘイゲン)と相棒の女性エディ(ドーン・ワイルドスミス)。2人が経営する探偵社C&Cに、一人のミステリアスな美女が訪れる。彼女の名はデニー・チェンバース(スーザン・ストーキー)。デニーの話によると、とある洞窟から人食い地底人が現れて、近くにいた民間人を襲ったのだという。現場には地底人の身に付けていた首飾りが残されており、その首飾りにはダイヤモンドなどの高価な宝石が沢山使われていたらしい。きっと、その洞窟の奥には大量の財宝が眠っているに違いない。そう確信した彼女は、コートとエディに洞窟の調査を依頼したいというのだ。
 ビル(ラス・タンブリン)という男から洞窟の地図を入手した3人は、現地で専門家のストロック教授(ロバート・クォリー)と助手のアンドリュー(ジェフリー・コムス)と合流する。こうして洞窟を探検することになった一行だが、そこでミュータントのような地底人に追われるセクシーな洞窟美女(ミシェル・バウアー)と遭遇。彼らも地底人に襲われ、デニーが誘拐されて丸焼きにされそうになってしまうものの、間一髪のところで救出することに成功した。
 さらに奥へ進むと、今度は何故かロボットが登場。ロボットは破壊的な威力を持つビーム光線で一行を攻撃してくるが、手元にあった鏡でビームを反射させて撃退する。やがて洞窟を抜けた一行は、青空の広がる地底世界へ到達。しかし、今度は異星人のアマゾネス軍団が登場する。一行は、ボンデージ・ファッションに身を包んだ女王(シビル・ダニング)によって捕えられてしまった。だが、洞窟美女の機転で難なく脱走に成功。すると、今度は巨大な恐竜たちが彼らを襲ってくる。
 果たして主人公たちは無事に地上へ戻る事ができるのだろうか・・・!?!?!?

 ・・・みたいなスリルや緊張感は一切ナシ(笑)。何とものんびりとトボけた冒険アドベンチャーが繰り広げられる。とりあえずネタは満載。オープニングは「マルタの鷹」風のフィルム・ノワールだし、洞窟の中で登場するロボットは「禁断の惑星」のロビー君を流用。もちろん、中に人が入っている。「恐竜100万年」風のストップ・モーション・アニメも見せてくれるし、「ブレード・ランナー」風の未来カーも登場。全体の筋立ては、「ロスト・ワールド」や「地底探検」といった古典的な冒険映画や40年代の連続活劇の要素をミックスしたものだ。とにかく、好きなものを片っ端から詰め込んじゃったという印象。その結果、まるで行き当たりばったりの不条理な物語が展開することになってしまった。
 でもまあ、それも仕方あるまい。実はこの作品、ろくな脚本もないままに撮影が行われたのだから。そもそもの発端は1985年の秋。当時、カリフォルニアのブロンソン洞窟近辺で「コマンド・スクワッド」('86・日本ではビデオ発売のみ)という戦争アクション映画を撮影していたフレッドは、この洞窟を使って一本映画が撮れるかもしれないと思いついた。
 そこで、彼は「コマンド・スクワッド」のセットを使ってテスト・フィルムを撮影。友人でもあるロス・ヘイゲン、当時結婚したばかりだった妻ドーン・ワイルドスミス、友人に紹介された新人女優スーザン・ストーキー、そして「コマンド・スクワッド」にも出演しているラス・タンブリンが集められ、主人公たちが洞窟の地図を入手するシーンが撮影されたのだ。
 当初は、「コマンド・スクワッド」のギャラが入ってから撮影しようと考えていたフレッドだったが、テスト・フィルムを見た仲間たちは俄然やる気になってしまった。すぐさま銀行に行って掛け合ったフレッドは、2万ドルの融資を受けることになる。さらに、前作「ネフレイティスの秘宝」が大ヒットして多額の印税を手に入れた彼は、その一部を「ファントム・エンパイア」の製作費に回すことにして、撮影をスタートしたのだった。
 ちなみに、彼は本作のために制作会社アメリカン・インディペンデント・ピクチャーズを設立している。名前の由来は、少年時代に発行していた同人誌のタイトル。彼のような低予算映画監督の場合、自分で著作権を持つことが非常に重要だった。所詮はマイナーなB級映画、よほど作品が当たらない限りは印税などたかが知れている。自分で著作権を持っていれば、たとえ劇場で当たらなくてもビデオやテレビで稼ぐことが出来るのだ。

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洞窟に生息する人食いミュータント
「ファントム・エンパイア」より

なぜか洞窟に現れるロボット、ロビー
「ファントム・エンパイア」より

地底帝国を支配するエイリアンの女王(S・ダニング)
「ファントム・エンパイア」より

 10日間でスタッフやキャスト、大道具、小道具などを揃えたフレッドは、すぐさま撮影に突入した。脚本はまだ完成していなかったが、フロリダ時代からの友人であるT・L・ランクフォードと共に現場で書き足していったという。完全に手探り状態の無謀な挑戦。まさに、撮影そのものが行き当たりばったりだったのだ。案の定、途中で資金が尽きてしまい、配給会社から借金をする羽目になった。それでも、洞窟ロケはたったの6日間で終了。その後、冒頭の探偵事務所シーンの追加撮影も1日で終えている。ポスト・プロダクションも含めて、撮影準備からファイナル・カットまで、約1ヶ月で完成させてしまったのだった。

 実はこの作品、後にメジャーで活躍するようになるスタッフが参加している。まずは、視覚効果を担当したバート・ミクソン。彼は同じくフレッドの「宇宙要塞からの脱出」などにも参加しているが、後に「ターミネーター2」や「メン・イン・ブラック2」の特殊効果に参加し、最近では「ファンタスティック・フォー」シリーズや「Xメン」シリーズ、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどの特殊メイクも担当する超売れっ子となった。そして、プロダクション・デザインと特殊視覚効果を担当しているコリー・カプラン。彼はテレビ「Xファイル」シリーズのプロダクション・デザインを手掛けた事で知られている人物だ。まあ、誰にもで下積み時代はあるもの。
 ちなみに、撮影監督のゲイリー・グレイヴァーは、70年代からロバート・マッカラムの名前でハードコア・ポルノの監督として活躍した人物で、90年代後半までに100本近くのポルノを手掛けている。撮影監督としても、60年代末から現在までに200本近くの映画を手掛けているというツワモノだ。

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アマゾネス軍団・・・といっても全部で4人だけ
「ファントム・エンパイア」より

地底帝国を闊歩する巨大な怪獣たち
「ファントム・エンパイア」より

特別出演のラス・タンブリン
「ファントム・エンパイア」より

 主演のロス・ヘイゲンは60年代から活躍する有名な悪役スターで、「スピードウェイ」('68)でプレスリーのライバルを演じた他、数多くのB級アクションに出演している人物。フレッドとはプライベートでも親しかったようで、常連俳優の一人だった。
 その相棒役のドーン・ワイルドスミスは、当時フレッドの奥さんだった人。この作品の撮影1ヶ月前に結婚したばかりで、95年に離婚するまで全てのフレッド・オーレン・レイ作品に出演。その後は女優業を引退し、現在は前衛アートの画家として活躍している。
 ストロック教授を演じるロバート・クォリーは、70年代のバンパイア映画「吸血鬼ヨーガ伯爵」シリーズで知られる怪奇俳優。その助手を演じるジェフリー・コムスは、当時スチュアート・ゴードン監督の「死霊のしたたり」や「フロム・ビヨンド」に主演してホラー映画ファンの注目を集めていた。彼はフレッドの自宅近所に住んでいて、息子クリストファーの遊び相手をしてくれるような間柄だったらしい。そのご近所さんというよしみの出演だったようだ。
 さらに、地底探検を持ちかける美女デニーを演じるスーザン・ストキー。彼女は「宇宙要塞からの脱出」や「ネフレイティスの秘宝」などにも出演し、当時フレッド・オーレン・レイ作品の常連だった女優だ。父親はテレビの人気ホストだったマイク・ストーキーという人物。フレッドが彼女のどこを気に入ったのか分らないが、これといった特徴のない普通のおばさん。
 一方の洞窟美女役を演じたミシェル・バウアーは元ポルノ女優で、B級映画の脱ぎ役やボディ・ダブルを数多く務めてきた人だった。フレッドの作品に出演するのはこれが最初。以降、作品を追うごとに重要な役を任されるようになり、90年代にはスクリーム・クィーンとして一世を風靡することになる。まあ、ごく一部のマニアの間での話だけど。
 そして、アマゾネス軍団を率いるエイリアンの女王を演じるのは、泣く子も黙るセクシー女優シビル・ダニング。彼女については、カルト女優コーナーで詳しく紹介しているので、そちらをどうぞ。で、主人公たちに洞窟の地図を渡す男ビル役で顔を出すのが、ラス・タンブリン。「ウェストサイド物語」や「親指トム」、「渚のデイト」などで活躍した青春スターだったが、あまり人気は長続きせず、70年代以降はB級映画俳優の道をまっしぐら。テレビ「ツイン・ピークス」で奇妙な精神科医ジャコビー役を演じていた事でも知られる。

 

地獄の武装都市/復讐のターミネーター
Armed Responce (1986)
日本ではビデオ発売のみ・DVDは未発売

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(P)2002 Platinum Disc (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL
/86分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:フレッド・オーレン・レイ
製作:フィル・ハーツバーグ
脚本:T・L・ランクフォード
撮影:ポール・エリオット
音楽:スティーブ・ラッカー
    T・チェイス
出演:デヴィッド・キャラダイン
    リー・ヴァン・クリーフ
    マコ岩松
    ロス・ヘイゲン
    ローレン・ランドン
    ロイス・ハミルトン
    ディック・ミラー
    ブレント・ハフ
    マイケル・ベリーマン
    ケリー・ヒロユキ・タガワ
    ドーン・ワイルドスミス
    コナン・リー
    スーザン・ストーキー

 フレッド・オーレン・レイ監督にとって、初めてまともな予算を与えられて撮った作品が、この「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」だった。主演はデヴィッド・キャラダイン。当時は落ち目になりつつあったが、それでもネーム・バリューのあるスターだった。そして、共演はリー・ヴァン・クリーフ。2人が親子という設定には若干無理があるものの(年齢差13才)、アクション映画ファンなら思わず喜んでしまうような顔合わせと言えるだろう。
 当初は25万ドルという低予算が組まれていたらしいが、制作会社のシネテルは非常に物分りの良い相手だったらしく、最終的には150万ドルまで製作費が膨れ上がったという。それまではろくにセットも組めないような超低予算で映画を撮ってきたフレッドだっただけに、最初のうちは慣れない事ばかりでドギマギしていたという。
 たとえば、チャイナタウンでのロケ当日。車で現場に到着したフレッドだったが、よく見るとそこらじゅうに駐車禁止のサインが貼られている。どこに車を止めようかと困った彼は、たまたま近くを通った助監督に尋ねたところ、“何言ってるんです?この区域はあなたのために空けられてるんですよ。好きなところに止めればいいじゃないですか”と不思議そうな顔をされてしまった。映画撮影のために交通制限がされるなんて思っても見なかったフレッドは、一瞬何を言われているのか分らないくらいビックリしたという。

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ベトナム帰還兵のジム(D・キャラダイン)
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

ロス・ファミリーの父親バート(L・V・クリーフ)
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

ヤクザのボス、田中(マコ岩松)
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

舞台となるチャイナタウンの夜景
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

 舞台はロサンゼルスのチャイナタウン。街の一角でバーを経営しているジム・ロス(ジョン・キャラダイン)は、ベトナムからの帰還兵だった。いまだに戦争の後遺症に悩まされているジムだが、心優しい妻サラ(ロイス・ハミルトン)と一人娘ローレン、もともとバーの経営者だった父バート(リー・ヴァン・クリーフ)に2人の弟トミー(ブレント・ハフ)とクレイ(デヴィッド・ゴス)ら家族に支えられて平和な生活を送っている。
 ある晩、いつものようにバート、トミー、クレイのロス・ファミリーがジムの店で飲んでいると、私立探偵をやっているクレイの相棒コリー・ソートン(ロス・ヘイゲン)がやって来る。急な仕事の依頼があったので、すぐに事務所まで来て欲しいというのだ。
 コリーと共に探偵事務所に戻ったクレイを待っていたのは、日本人ヤクザのボス田中(マコ岩松)と手下たち。田中の話によると、敵対するチャイニーズ・マフィアとの和解の印として贈るはずだった翡翠の仏像が盗まれてしまったという。犯人からは現金との引換え要求があり、クレイとコリーに現金の入ったアタッシュ・ケースを持っていって欲しい、というのが田中からの依頼だった。
 翌日、犯人から指定されたロサンゼルス郊外の砂漠へと現金を持って向ったクレイとコリー。2人を待っていたのは、デボラ(ローレン・ランドン)とスティーヴ(ディック・ミラー)の強盗コンビだった。何とか仏像と現金の交換を終えたと思った矢先、コリーがスティーヴを射殺する。銃撃戦の末に、デボラや隠れていた手下たちを始末したクレイとコリー。だが、コリーは相棒であるクレイにまで銃口を向けた。
 その夜、ジムの自宅にクレイが瀕死の状態で現れ、コリーに裏切られた事を伝えて息を引き取った。ジム、バート、トミーの3人は、自分たちの手で事件の真相を探ることを誓う。一方、現金の入ったアタッシュケースを持って逃亡したコリーは、クレイたちが現金と仏像を奪って逃げたと田中に報告する。それを聞いて激怒した田中は、クレイらロス・ファミリーへの報復を部下に指示。こうして、ジム、バートらロス・ファミリーと田中率いるヤクザの全面対決の火蓋が切って落とされる。

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田中の部下を演じるマイケル・ベリーマン
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

私立探偵クレイの相棒コリー(R・ヘイゲン)
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

クライマックスの銃撃戦
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

女強盗デボラ(L・ランドン)
「地獄の武装都市/復讐のターミネーター」より

 もともと、この作品はフレッド自身の企画ではなかったという。制作会社シネテルに長いこと放置されていた脚本があり、あまり出来は良くないのだが映画化してみないか?と持ちかけられたのだった。ちょうど仕事が空いてる時期で、断る理由もなかったフレッドは、このシネテルからの申し出を快諾。ただ、オリジナルの脚本ではイタリアン・マフィアの抗争が描かれており、非常にありきたりな内容だったという。そこで、彼は友人のT・L・ランクフォードに脚本のリライトを頼み、チャイナタウンを舞台にしたリベンジ・アクションに変えてしまったのだ。
 ちょうどその頃、たまたまデヴィッド・キャラダインと知遇を得たフレッドは、予算を増やしてくれればキャラダインをキャスティング出来るとシネテルのプロデューサーに交渉。即座にオーケーが出たという。さらに、父親役にリー・ヴァン・クリーフを起用したいと申し出たところ、これもオーケー。そうやって交渉を重ねていくうちに、いつの間にか予算が増えていったのだった。
 ヤクザのボス、田中役には「砲艦サンパブロ」でオスカーにノミネートされた日系人スター、マコ岩松。ジムの弟トミー役にはジュスト・ジャカン監督の「ゴールド・パピヨン」でヒーローを演じたマッチョ俳優ブレント・ハフ、女強盗デボラには「カリフォルニア・ドールズ」や「ハンドラ」で注目されたマッスル美女ローレン・ランドン。その相棒スティーブにはロジャー・コーマン作品の常連として有名なディック・ミラー。田中の手下である大男FCにはカルト・ホラー「サランドラ」で有名な怪優マイケル・ベリーマン。
 その他、「エレクトラ」や「SAYURI」、「モータル・コンバット」などで知られる日系人俳優ケリー・ヒロユキ・タガワ、香港映画「龍の忍者」で真田広之と共演したカンフー俳優コナン・リーなど、映画マニアなら思わずニンマリしてしまう豪華なキャストが勢ぞろいした。もちろん、当時の愛妻ドーン・ワイルドスミスやスーザン・ストーキーなど、フレッド作品の常連組も小さい役で顔を出している。
 ただ、アクション映画としては、正直言って可もなく不可もなくといったところ。銃撃戦や派手なカー・チェイスなど、確かに見どころは盛りだくさんなのだが、いま一つ見せ方を心得ていないといった印象が拭えない。極端な低予算映画ばかりを撮ってきたせいなのだろうか、どこかカメラワークに余裕がないのだ。そう、小ぢんまりとまとまってしまったという感じ。こういうのを貧乏性と言うのだろうか、ダイナミックな思い切りの良さみたいなものが欠落しているのだ。
 なので、せっかくクライマックスでデヴィッド・キャラダインとリー・ヴァン・クリーフの2人が、ライフル片手にヤクザ軍団を蹴散らしていくという見せ場を用意しておきながら、どうも消化不良に終わってしまっている。
 キャストは豪華で魅力的だし、ストーリーもテンポ快調。映像の見てくれも悪くない。あとは、アクション・シーンさえもうちょっと何とかなれば、かなり見応えのあるB級アクション映画になっていただろうと思う。

 

宇宙要塞からの脱出
Star Slammer (1987)
日本では劇場公開及びビデオ発売
DVDは未発売

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(P)2004 Image Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/ステレオ・サラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/製作:アメリカ

映像特典
なし

監督:フレッド・オーレン・レイ
製作:ジャック・H・ハリス
    フレッド・オーレン・レイ
脚本:マイケル・D・ソニエ
撮影:ポール・エリオット
音楽:アンソニー・ハリス
出演:ロス・ヘイゲン
    サンディ・ブルック
    スーザン・ストーキー
    マリヤ・グラント
    ドーン・ワイルドスミス
    アルド・レイ
    ジョン・キャラダイン
    リチャード・ヘンチ
    ジョニー・レジェンド

 日本で最初に劇場公開されたフレッド・オーレン・レイ作品。もちろん、ボク自身にとっても初めて見た彼の作品であり、そういった意味では非常に思い出深い一本だ。同時上映がジム・ウィノースキー監督の「勇者ストーカーの冒険」。今から思えば、実にあっぱれな2本立てを企画したもんである。あちらはヒロイック・マッチョ・ファンタジー。こちらはSF女囚アクション。どちらもオッパイが沢山(笑)。
 当時はジョイパックが、“ジョイパック・ベスト・アクション・シリーズ”と銘打って、低予算のアクションやらSFやらホラーなんかを2本立て興行で上映していた。しかも、2週間ごとにプログラムが変る。上映するのは歌舞伎町の場末の映画館。客席に座ってるのは、見るからに映画マニアのオタク野郎に暇つぶしのサラリーマン、居眠りぶっこいてるホームレス、何しに来てるんだか分らない女装のオカマさん。女子供の姿は一切なし。まさしく日本版グラインドハウスだった。

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惑星アウロスの女戦士タウラ(S・ブルック)
「宇宙要塞からの脱出」より

タウラと敵対する牢名主マイク(S・ストーキー)
「宇宙要塞からの脱出」より

これが宇宙監獄船スター・スラマー号
「宇宙要塞からの脱出」より

 いきなり話が横道に逸れてしまったが、ひとまず本題に戻ろう。この「宇宙要塞からの脱出」。「ファントム・エンパイア」と並んで、フレッド・オーレン・レイ監督のB級映画に対する溢れんばかりの愛情が、これでもかこれでもかと目いっぱいに詰まった一本と言えるだろう。脳細胞が破壊されてしまいそうなくらいに下らないストーリー。楽屋落ちもはなはだしいコテコテの寒いギャグ。美女が一人も出てこない女囚軍団。よその映画から拝借してきたセット・小道具・衣装の数々。ついでに戦闘シーンまで、よそ様からの頂き物だったりする。
 一応、見てくれだけは80年代だが、その精神においては50年代・60年代のZ級SF映画から何一つ進化していない。その時代錯誤なナンセンスぶりが妙に愛おしく思えてしまうのは、やっぱりビョーキなのだろうか(笑)。分る人には分る、分らない人には未来永劫分らない、まさに究極のSF女囚バカ映画だ。

 主人公は惑星アウロスに暮らす女戦士タウラ(サンディ・ブルック)。宿敵バントール(ロス・ヘイゲン)の陰謀で無実の罪に問われた彼女は、宇宙監獄船スター・スラマー号に収容されてしまう。ここはレズビアンの女所長(マリヤ・グラント)とサイディスティックな女看守長マフィン(ドーン・ワイルドスミス)が支配する無法地帯。
 牢名主のマイク(スーザン・ストーキー)からイチャモンを付けられたタウラは、早速派手な喧嘩をおっぱじめる。罰として人食いエイリアンとの死闘を強要されたタウラとマイクは、これをきっかけに意気投合。女所長たちの度重なる陰湿な暴力に堪忍袋の尾が切れた彼女たちは、遂に反乱軍を組織して決起する。

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タウラの宿敵バントール(R・ヘイゲン)
「宇宙要塞からの脱出」より

サディスティックな女看守マフィン(D・ワイルドスミス)
「宇宙要塞からの脱出」より

お約束のキャットファイト・シーン
「宇宙要塞からの脱出」より

 ・・・というだけのお話を90分近くに渡って繰り広げるわけだが、人食いエイリアンにネズミ・モンスター、宇宙ゾンビ、マッド・サイエンティストなど、手を変え品を変えストーリーの本筋とは関係のない見せ場を次々と用意するごった煮センスは、やはりフレッド・オーレン・レイ映画の醍醐味と言えるだろう。質よりも量で勝負だ。
 無駄に露出度の高い女囚たちの囚人服、意味のないおっぱいポロリ・シーン、お約束のキャットファイトなどなど、女囚ものの定番アイテムも勢ぞろい。女医さんまで何故かTバックのボンデージ・ファッションというのだからサービス満点だ。しかも、一人残らず場末のキャバクラ嬢みたいなのばっかし(笑)。やっぱB級映画はこうでなくっちゃね♪
 実はこの作品、撮影されたのは1984年のこと。つまり、3年間もお蔵入りになってたのだ。しかも劇場公開されたのは、どうやら日本が最初だったらしい。日本での公開日は1987年9月だが、全米公開は1988年2月。フレッドは1994年のインタビューで、“製作会社のトランスワールドは出来上がった作品を見て大いに気に入って、すぐに次の作品のオファーをよこして来たよ”と語っていたが、恐らくなんかの勘違いだろう(笑)。
 もともと、1983年に製作された「エイリアン・ハザード」の撮影中に本作のアイディアを思いついたフレッドは、とりあえず予告編を先に撮影しておいたという。女の子を数人集めて「フラッシュダンス」風のレオタードを着せ、「メタル・ストーム」の衣装を借り、「スペースハンター」のレーザー銃を借り、「ギャラクシー・オブ・テラー」のスペース・スーツを借り、ついでに「宇宙の7人」の宇宙戦闘シーンから1分間分のフィルムを購入し、さらには「エイリアン・ハザード」に出演していたアルド・レイの契約期間を1日だけ延ばし、まだ存在しない映画の予告編を即席で作ってしまったのだ。
 この予告編をもとにして制作会社へ営業に回ったフレッドは、その間に予告編の内容を基にして脚本を書き上げた。さらに、先に「ネフレイティスの秘宝」の撮影に入ったフレッドは、同作に出演していたジョン・キャラダインを使って1シーンを撮影しておいた。
 アルド・レイにしろ、ジョン・キャラダインにしろ、撮影中の映画と全く関係のない作品のパーツを撮り置きしておくのには理由がある。次の作品で彼らのギャラが発生しなくて済むからだ。どちらも落ちぶれた老優とはいえ、れっきとした往年の映画スター。無名の役者を使うよりはギャラがかかる。だったら、今の作品の拘束期間中に別の映画のシーンを撮っておけば、結果としてギャラの節約になるだろう。所詮はアメリカ映画界の最下層集団、恐らく契約書の内容もいい加減なものだったに違いない。
 なので、「宇宙要塞からの脱出」ではアルド・レイとジョン・キャラダインが形として出演してはいるものの、ギャラはそれぞれ「エイリアン・ハザード」と「ネフレイティスの秘宝」で支払い済み。もちろん、撮影現場に顔を出したことすら一度もない。当時は、何でアルド・レイが最後の戦闘シーンにしか出てこないのか、しかも何で唐突に現れて唐突に消えるのか不思議に思ったものだったが、こういう裏事情があったのである。

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宇宙要塞を牛耳る極悪トリオ!?
「宇宙要塞からの脱出」より

「デッドリー・スポーン」から拝借したエイリアン
「宇宙要塞からの脱出」より

タウラに有罪を宣告する裁判官(J・キャラダイン)
「宇宙要塞からの脱出」より

 「ネフレイティスの秘宝」の撮影が終わるとすぐに「宇宙要塞からの脱出」に取り掛かったフレッドだったが、トランスワールドが用意した予算はたったの17万5千ドル。とてもじゃないがSF映画の予算ではない。そこで彼は、再びあらゆる手段を使って借りまくることにした。宇宙船のセットはロジャー・コーマンのスタジオ倉庫に放置されていたものをタダで流用。「アンドロイド」のコンピューター・パネルを借り、「メタル・ストーム」の衣装をさらに追加で借り、「デッドリー・スポーン」のエイリアンを借り、テレビ「ローガンズ・ラン」のランド・ローヴァーを借りた。特撮シーンは「バック・ロジャース」や「宇宙空母ギャラクティカ」、「ダーク・スター」のストック・フッテージを使用。全編に渡って借り物・頂き物のオンパレードだ。どれがどの映画からの借り物なのか探すのも一興だろう(笑)。
 ちなみに、先述したようにフレッド自身の弁によると、製作元のトランスワールドは作品の出来上がりに大満足(笑)だったらしく、さらに追加コストをかけてステレオ・ミックスを施したという。それでも、最終的な製作費は22万5千ドル。ある意味、低予算映画のお手本とも言うべき作品かもしれない。

 

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