フェミ・ベヌッシ Femi Benussi

 

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 60年代から70年代にかけて、数多くのイタリア産B級映画に出演したセクシー女優フェミ・ベヌッシ。小悪魔的なベビー・フェイスと豊満な肉体がとても印象的で、ホラーからセックス・コメディ、マカロニ・ウェスタン、スパイ映画など出演作のジャンルは実に幅広かった。ほとんど脱ぎ役&殺され役専門といった感じで、18年間のキャリアで80本以上もの映画に出演しているが、主演クラスの作品はほんの僅か。それでも、その美貌は一度見たら忘れられないほどインパクトが強く、いまだに熱狂的なファンを持つカルト女優だ。

 1945年3月4日、現在はクロアチアの領土となったイストリア半島の古都ロヴィニの生まれ。本名をエウフェミア・ベヌッシという。もともと学校の教師を目指していたらしく、大学では文学と哲学を専攻した。
 そんな彼女が女優となったきっかけは失恋。心の傷を癒すためローマに住む叔母のもとを訪れたところ、映画関係者にスカウトされたのだ。デビュー作はマッシモ・プピッロ監督のゴシック・ホラー『惨殺の古城』(65)。フェミ・マーティン名義で出演した彼女は、拷問具で殺されるセクシー・モデル、アニー役として登場。これが、その後の彼女のキャリアを決定付けたと言っても過言ではあるまい。
 鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の『大きな鳥と小さな鳥』(66)で主人公親子と出会う美女ルナ役を演じたり、ラクエル・ウェルチ主演のハリウッド映画『大泥棒』(68)にもチラリと登場したりしたものの、やはり彼女の専門分野は低予算のB級娯楽映画。
 ゴードン・ミッチェル主演の“Nato per uccidere”(67)やリチャード・ワイラー主演の『決闘!荒野のサボテン』(68)などの西部劇でヒロインを演じ、ジェフリー・ハンター主演のセックス・コメディ“Frau Wirtin hat auch einen Grafen”(68)や人気歌手リトル・トニー主演のアイドル映画“Vacanze sulla Costa Smeralda”(68)などのお色気要員として活躍。さらに、エドウィージュ・フェネッシュ主演のジャングル映画“Samoa, regina della giungla”(68)を経て、女ターザン映画“Tarzana, sesso selvaggio”(69)ではヒロインのターザナ(笑)役を演じている。

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『クレイジー・キラー/悪魔の焼却炉』より

 三人組のポンコツ・スーパーマンを捕えるアマゾネスの女王を演じたビト・アルベルティーニ監督のナンセンスSFコメディ“Che fanno i nostri supermen tra le vergini della giungla?”(70)を経て、マリオ・バーヴァ監督のサイコ・ホラー『クレイジー・キラー/悪魔の焼却炉』(70)では主人公に惨殺されるファッション・モデル役で強烈な印象を残した。
 その後も、マルコ・ヴィカリオ監督のセックス・コメディ『黄金の七人・1+6/エロチカ大作戦』(71)や『あゝ結婚』(73)、ファーリー・グレンジャー主演のジャッロ『ソー・スウィート、ソー・デッド』(72)、フェルディナンド・レオ監督のバイオレンス・アクション『皆殺しハンター』(72)、エドウィージュ・フェネッシュ主演のジャッロ“Nude per l'assassino”(75)など数多くの作品に出演するものの、いずれもヌードになるだけや殺されるだけの小さな役柄ばかり。
 そうした中で数少ない代表作と呼べるのが、古代ローマ時代の売春婦ポッペアを演じた歴史セックス・コメディ“Poppea... una prostituta al servizio dell'impero”(72)。また、ゴシック・ホラー『踊る吸血鬼』(75)では連続猟奇殺人の鍵を握る女性シビル役として主演しているが、出番そのものはあまり多くはなかった。
 この頃までが、女優フェミ・ベヌッシの全盛期と呼べるかもしれない。本人も脱ぎ役ばかりしか回ってこないのは不満だったようだが、“選択肢の少ないイタリア映画界では、プロデューサーの指示に従うしかない”と諦めていた様子。
 70年代半ばを過ぎると映画における性描写もどんどん過激になり、必然的に彼女もよりハードなセックス・シーンやヌード・シーンを求められるようになる。マリオ・ビアンキ監督の“La camereira nera”(76)やキャロル・ベイカー主演の『新・課外教授/禁断のセックス』(76)といったソフト・ポルノにも積極的に出演したが、この頃になると豊満な肉体に衰えも目立つようになり、中にはクレジットに名前すら載らない端役まで引き受けざるを得なくなる。
 そのような状況の中で自分の置かれた立場を理解したのか、83年に突如として映画界を引退。以降はひたすら沈黙を守り続け、マスコミなどの取材には一切応じていないという。

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“Nude per l'assassino”より

 

 

踊る吸血鬼
La sanguisuga conduce la danza (1975)

日本では劇場未公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)1998 Redemption/Image (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語
/字幕:なし/地域コード:ALL/89分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:アルフレード・リッツォ
脚本:アルフレード・リッツォ
撮影:アルド・グレチ
音楽:マルチェロ・ジョンビーニ
出演:フェミ・ベヌッシ
   ジャコモ・ロッシ・スチュアート
   パトリツィア・デ・ロッシ
   クリスタ・ネル
   ルチアーノ・ピゴッツィ
   レオ・ヴァレリアーノ
   マリオ・デ・ローサ
   バルバラ・マルツァーノ
   マルツィア・ダモン
   リディア・オリッツィ

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ダンディで謎めいたマルナック伯爵(G・ロッシ・スチュアート)

伯爵は舞台女優たちを自らの城へと招待する

 邦題でも原題でも“吸血鬼”を謳っているものの、実際に吸血鬼なんぞ一切登場しない羊頭馬肉(?)な作品。20世紀初頭のアイルランドを舞台に、謎の伯爵に城へと招かれた美しい女優たちが、一人また一人殺されていくというジャッロ風のゴシック・ホラーだ。
 監督と脚本を手掛けたアルフレード・リッツォは、『グラマーと吸血鬼』(60)にも出演していたベテランの脇役俳優。これが監督3作目に当たるが、正直なところ演出家としては決して上手い人ではない。ロケーションや衣装、美術セットなどの生み出す雰囲気になんとか助けられてはいるものの、肝心のカメラワークや構図など被写体の見せ方が非常に粗雑で、素人臭さを隠しきれていないという印象だ。
 さらに、脚本のほうも極めて稚拙。城の中で美女たちが次々と殺されるという基本コンセプトに終始し、そこからゴシック・ロマン的なドラマを膨らますには遠く至っていない。一応、伯爵とスター女優のロマンスや、その2人に嫉妬する女中頭との三角関係なんかも描かれているが、こちらも型通りといった感じで退屈そのもの。クライマックスの謎解きも辛うじて辻褄だけは合っているものの、かなり強引な印象は否めない。
 で、我らがフェミ・ベヌッシの演じるのは、冷淡で嫉妬深い女中頭のシビル。主である伯爵に横恋慕しているが、そこへ女優のイヴリンという恋敵が現れて嫉妬の炎がメラメラと燃え盛る。一応キャスト・クレジットでは主演の扱いだが、ストーリー上は明らかに敵役。主演スターの割りに出番が少ないのは残念だが、お色気サービス・ショットはバッチリなので良しとしておこう(笑)
 ちなみに、本作の舞台として使用された古城は、先日の主要国首脳会議も行われた古都ラクイラ近郊にあるバルソラーノ城。カミロ・マストロチンクエ監督の『女ヴァンパイア カーミラ』(64)など、数多くのイタリアン・ゴシック・ホラーが撮影された場所として有名な城だ。

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どこかで見たことのある(笑)マルナック伯爵の城

伯爵に連れられて一座が到着

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一行を出迎えたのは女中頭シビル(F・ベヌッシ)

ロザリンド(M・ダモン)とペニー(L・オリッツィ)の濡れ場

 1902年のアイルランド。千秋楽を終えた劇場にマルナック伯爵(ジャコモ・ロッシ・スチュアート)がやって来た。舞台では既に後片付けが始まっている。しばらくは仕事の当てもないと語る女優たちを、伯爵は自分の城へと招待することにした。
 だが、主演女優のイヴリン(パトリツィア・デ・ロッシ)だけはあまり気乗りがしない。しかし、一座の忠実な雑用係サミュエル(レオ・ヴァレリアーノ)も同行することになり、彼女は伯爵の城へ行くことを渋々と承諾した。
 気弱で大人しいサミュエルは派手好きの女優コーラ(クリスタル・ネル)に心を寄せているが、コーラは彼のことなど全く眼中にない。そんなサミュエルのことを、イヴリンはいつも気にかけていた。また、常に行動を共にしているロサリンド(マルツィア・ダモン)とペニー(リディア・オリッツィ)はレズビアンの関係にある。
 かくして、伯爵の城へと到着した一行を待ち受けていたのは、冷淡で威圧的な態度の女中頭シビル(フェミ・ベヌッシ)と狂信的なキリスト教信者の執事ジェフリー(マリオ・デ・ローサ)。伯爵に恋心を抱いているシビルはイヴリンに対して敵意のこもった眼差しを向け、女優を罪深く汚れた職業と考えるジェフリーは客人たちのことを忌み嫌っていた。
 ゲスト・ルームへと案内されたイヴリンは、行方不明だという伯爵の妻が自分と瓜二つであることを知って驚く。また、伯爵家には先祖代々伝わる短刀が飾られており、伯爵の父親と祖父は浮気をした妻の首をこの短刀で切り落として殺害したという。
 また、城にはグレゴリー(ルチアーノ・ピゴッツィ)という醜い使用人がおり、宿泊客たちの様子を嗅ぎまわっていた。そればかりか、彼は女中頭シビルの性欲処理まで手伝っている。そして、彼以外にもう一人、城内を徘徊する怪しい人影があった。
 それから数日後の早朝、メイドのメアリー(バルバラ・マルツァーノ)が中庭でコーラの生首を発見した。どうやらゲスト・ルームの窓から外を眺めていたところを襲われ、鋭利な刃物で首を切断されたようだった。
 さらに、今度はペニーがベッドの中で同じように首を切断され、続いてロサリンドの生首が納屋で発見された。シビルは次はイヴリンの番だとして彼女を脅す。果たして連続殺人犯は誰なのか?そして、その目的とは?

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宿泊客の様子を覗き見するグレゴリー(L・ピゴッツィ)

グレゴリーはシビルの性欲処理の務めも果たしていた

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お互いに惹かれあう伯爵とイヴリン(P・デ・ロッシ)

伯爵とイヴリンの様子を探るシビル

 レズビアンのカップル、ロザリンドとペニーのセックスを使用人グレゴリーが覗くシーンは、どこからどう見てもセルジョ・マルティーノ監督の『影なき陰獣』(73)のパクリ。片方が黒人という設定まで一緒だが、ペニー役のリディア・オリッツィはドウランで黒く塗っているようにも見えるのが何ともビミョーな感じだ。
 その一方で、切断された生首の特殊メイクなんかは、テクニック的にはかなり原始的であるものの、仕上がりの方はなかなか上等。本作の数少ない見せ場と言えるかもしれない。
 撮影監督のアルド・グレチは、リッツォ監督が出演していた『グラマーと吸血鬼』を手掛けていたカメラマン。また、衣装デザインには『海賊王バイキング』(61)や『バイキングの逆襲』(65)といったコスチューム・プレイで知られるマリア・ルイサ・パナーロが衣装デザインを手掛けている。
 そして、音楽スコアには『西部悪人伝』(70)や『西部決闘史』(72)などの、キャッチーでグルーヴィーなマカロニ・ウェスタン音楽で有名な作曲家マルチェロ・ジョンビーニ。本作では一転してクラシカルでエレガントなスコアを聴かせてくれる。

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コーラ(K・ネル)の生首が発見される

ペニーもベッドで惨殺されていた

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納屋ではロザリンドの生首が・・・

次の犠牲者はイヴリンだと脅すシビル

 ダンディで謎めいたマルナック伯爵を演じているのは、マリオ・バーヴァ監督の『呪いの館』で知られるジャコモ・ロッシ・スチュアート。マカロニ・ウェスタンや戦争アクションなどでも活躍し、母親がイギリス人で英語が堪能であることから国際的なプロジェクトにも多数参加した俳優だ。息子のキム・ロッシ・スチュアートも2枚目スターとして活躍している。
 イヴリン役のパトリツィア・デ・ロッシは本名をパトリシア・ウェンブリーというイギリス人で、これが映画デビュー作。エンツォ・G・カステラーリ監督の『ローマ麻薬ルート大追跡』(77)ではレズビアン役を演じていたほか、多数のソフト・ポルノに出演している。
 その他、オーストリア出身でイタリアのB級映画で活躍したセクシー女優クリスタ・ネル、アラン・コリンズの名前でアンソニー・M・ドーソン作品の常連だったルチアーノ・ピゴッツィ、カテリーナ・チアーニの芸名で数多くのセクスプロイテーション映画に出演したマルツィア・ダモンらが登場。
 また、『悪魔の陵辱』(74)や『(秘)ナチス残酷物語/アフリカ拷問収容所』(77)などのエログロ映画で有名なルイジ・バツェッラ監督が、犯人を捜査する警察官役として最後に顔を出している。

 

 

真・西部ドラゴン伝
El karate, el Colt y el imposter (1974)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2009 Video Asia (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/98分/製作:イタリア・香港・スペイン・アメリカ

映像特典
なし
監督:アンソニー・M・ドーソン
製作:カルロ・ポンティ
   ギュスタフ・M・バーン
   ラン・ラン・ショー
脚本:バート・ジュールス・サスマン
撮影:アレハンドロ・ウロア
音楽:カルロ・サヴィーナ
出演:リー・ヴァン・クリーフ
   ロー・リエ
   パティ・シェパード
   フェミ・ベヌッシ
   エリカ・ブラン
   カレン・イー
   ジュリアン・ウガルテ
   ゴヨ・ぺラルタ
   ジョルジュ・リゴー

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中国人の商人ワン(アル・タン)が心臓発作で死亡

盗賊のダコタ(L・ヴァ・クリーフ)が犯人として捕まる

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若き武術家のホー(L・リエ)

皇帝が叔父に預けた金塊を取り戻さねばならなくなる

 『燃えよドラゴン』(73)の大ヒットをきっかけに世界を席巻したカンフー映画ブーム。その波に乗って・・・というよりも便乗して、バンパイア映画と合体させた『ドラゴンvs7人の吸血鬼』(74)とか、アマゾネス映画と合体させた『空手アマゾネス』(74)といった、突然変異的なハイブリッド映画がボロボロと出てきた。
 そうした中で、イタリアの誇る世界的な大物製作者カルロ・ポンティが香港のショー・ブラザーズとタッグを組み、カンフー映画とマカロニ・ウェスタンを融合させてしまったのが、この『真・西部ドラゴン伝』である。
 カリフォルニアに住む裕福な中国人の商人が死亡。お尋ね者の泥棒と中国人の若者がコンビを組んで、商人が何処へと隠した財宝の在り処を探すというウェスタン・アドベンチャーだ。
 話のミソは、死んだ商人が財宝の在り処の地図を4人の愛人のお尻に、刺青として彫りこんでいたということ。つまり、隠し場所を知りたければ、4人の女性全員のお尻をチェックしなくてはいけないのである。このナンセンスなユーモアこそが、本作の醍醐味と言えよう。
 監督はイタリア映画界きっての娯楽映画職人アンソニー・M・ドーソン。マカロニ・ウェスタンの“売り”である残酷なバイオレンスを大胆にも抑え、軽妙なユーモアとかわいいお色気、痛快なアクションで全編をリズミカルに見せていく。
 ストーリーは極めて単純で、これといった捻りもないままに進んでいくが、その大らかさが何とも憎めない魅力と言えるだろう。ショー・ブラザーズが絡んでいるだけに、中国を舞台にしたカンフー・シーンにもデタラメな勘違いは見られない。決して傑作・名作と呼ばれる部類の作品ではないかもしれないが、これはこれで愛すべき娯楽映画だと思う。
 なお、フェミ・ベヌッシが演じているのはお尻に刺青を持った愛人の一人。出番こそ少ないものの、珍しくコミカルでキュートな演技を見せてくれているのが嬉しい。

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アメリカ西部へとやって来たホー

留置所のダコタと接触する

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絞首刑に処せられるダコタ

ホーの助けで脱走することに成功した

 開拓時代のアメリカ。カリフォルニアの町モンタレーに一人のガンマンがやって来る。彼の名はダコタ(リー・ヴァン・クリーフ)。お尋ね者の泥棒である彼は、裕福な中国人の商人ワン(アル・タン)の財産を狙っていた。
 夜中にワンの事務所へ忍び込み、金庫の中を探るダコタ。しかし、その中には女性の姿を写した写真しか入っていなかった。4つ目の金庫をダイナマイトで爆破しようとしたその時、泥棒に気付いたワンが事務所へと入ってきた。爆風に飛ばされたワンは心臓発作で死亡し、ダコタは駆けつけた保安官に逮捕されてしまう。
 その頃、中国では武術家の若者ホー(ロー・リエ)の家族が皇帝によって捕えられてしまった。実は、ホーは商人ワンの甥っ子に当たる。ワンに貸したはずの金塊が戻ってこないことに腹を立てた皇帝は、家族を人質にしてホーをアメリカへと遣わし、金塊を取り戻させようというのだ。
 アメリカへ到着したホーは、叔父の銀行口座がゼロであることを知って驚く。叔父を殺したという泥棒ダコタが留置所に捕らわれていると知った彼は、わざと“中国人お断り”のバーへ入って騒動を起こし、留置所に入ってダコタと接触する。
 やがて、ダコタが絞首刑に処されることとなった。ロープを首に巻かれたダコタの足元が開く。すると、処刑台の下では馬を従えたホーが密かに隠れていた。素早く縄を切り落としたホーはダコタを馬に乗せ、絶妙なタイミングで逃走することに成功した。
 叔父の遺言書を読んだホーは、写真に写された女性たちの尻に叔父が地図を彫っていたことに気付いていた。しかし、女性たちは西部の各地に散らばっている。英語が満足ではない上にアメリカの地理に疎いホーは、ダコタを旅の道連れにする必要があったのだ。
 ワンにはアメリカ人、ロシア人、イタリア人、中国人の4人の愛人がいた。ダコタとホーが最初に訪れたのはアメリカ人の愛人(エリカ・ブラン)のところ。難なくお尻の地図を確認することに成功したが、彼女の恋人である悪党ヤンシー(ジュリアン・ウガルテ)が地図の秘密に気付いてしまった。ヤンシーは怪力のインディアン(ヨゴ・ぺラルタ)ら無法者たちを集め、ダコタとホーの後を追うことにする。
 一方、ダコタたちが次に訪れたのはロシア人の愛人(パティ・シェパード)のもと。サロンの経営者の妻がそうだと思った2人だったが、実は彼女の双子の妹こそがワンの愛人だった。こちらも無事に地図をチェックし、2人はサロンを後にしようとする。ところが、そこへやって来たヤンシー一味と銃撃戦になり、彼らは自分たちが追われていることに気付いた。
 急いで彼らは3人目のイタリア人(フェミ・ベヌッシ)のもとを訪れる。病気がちの彼女を心配する夫(ジョルジュ・リゴー)を上手く言いくるめ、針治療をするという口実でお尻のチェックをするホー。針治療は効果テキメンで、ホーはすっかり元気を取り戻した彼女とその夫から感謝されるのだった。
 そして、最後の一人である中国人女性(カレン・イー)を探し当てたダコタとホー。女性とその父親に夕食をご馳走になったホーは、美しくも清らかな彼女の魅力に参ってしまい、とてもお尻を見せて欲しいとは言い出せなかった。そこへヤンシー一味が来襲し、町を火の海にした挙句、女性の父親を殺害して彼女を誘拐してしまう。怒りに燃えるホーとダコタは、女性を奪還すべく敵の本拠地へと殴りこむのだった・・・。

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アメリカ人の女性(E・ブラン)のお尻をチェックするホー

悪党ヤンシー(J・ウガルテ)が地図の秘密を知ってしまう

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次にロシア人女性(P・シェパード)のお尻を確認

3人目のイタリア人女性(F・ベヌッシ)が病床に伏していた

 実は、マカロニ・ウェスタンとカンフーを融合した作品はこれが初めてではない。マリオ・カイアーノ監督による『荒野のドラゴン』(73)が、その第一弾とも言うべき作品だろう。また、4人の女性のお尻に財宝の在り処を刺青するというプロットは、クリフ・オーウェン監督によるイギリスのコメディ映画“Oh...You Are Awful”(72)のパクリである。
 脚本を担当したのはアメリカのベスト・セラー作家であり、ロジェ・ヴァディム監督の『ナイト・ゲーム』(80)の脚本も手掛けたバート・ジュールス・サスマン。スペイン語バージョンのみマカロニ・ウェスタンで知られるミゲル・デ・エチャリの名前がクレジットされているが、恐らくスペイン語の翻訳を手掛けただけなのだろう。
 撮影監督には『豹/ジャガー』(68)や『ガンマン大連合』(70)などマカロニ・ウェスタンの傑作・名作を数多く手掛けているスペインのカメラマン、アレハンドロ・ウロアが参加。さらに、『リンゴ・キッド』(66)や『新・荒野の用心棒』(68)などのマカロニ音楽でお馴染みのカルロ・サヴィーナが、軽快な音楽スコアを手掛けている。

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健康のための針治療を口実にお尻をチェック

ホーは中国人女性(K・イー)に恋してしまう

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ヤンシー一味に連れ去られる中国人女性

ダコタとホーは彼女を奪還することに

 主人公ダコタ役には、マカロニ・ウェスタンの代名詞でもある名優リー・ヴァン・クリーフ。一方の中国人青年ホー役には、『燃えよドラゴン』に先駆けてアメリカで大ヒットし、カンフー・ブームの素地を作ったとも言われる香港映画『キング・ボクサー/大逆転』(72)に主演したカンフー・スター、ロー・リエ。『少林寺三十六房』(77)や『少林虎鶴拳』(78)などの悪役としてもお馴染みで、タランティーノが熱狂的なファンだったということでも知られる伝説的な俳優だ。
 フェミ・ベヌッシと共にワンの愛人役を演じている女優たちについても軽く紹介しておこう。まず、双子のロシア人を演じたパティ・シェパードは、スペインを活動の拠点としたアメリカ人女優。ポール・ナッチー主演の『ワルプルギスの夜/ウルフVSヴァンパイア』(70)で女吸血鬼役を演じていた女優といえばピンと来る人もいるかもしれない。
 アメリカ人女性役で登場するエリカ・ブランは、本HPでもカルト女優として紹介したことのある人気セクシー女優。本作での出番は僅かだが、かなりオフビートな演技を披露している。また、中国人女性役で登場するカレン・イーは、同じく香港とイタリアが合作した『アマゾネス対ドラゴン/世紀の激突』(75)にも出演していた女優だ。
 その他、イタリアやスペインのB級娯楽映画で悪役として活躍したジュリアン・ウガルテが悪党ヤンシー、往年のフランス映画スターであるジョルジュ・リゴーがフェミ・ベヌッシの夫役として顔を出している。

 

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