フェイス・ダミューア Faith Domergue

 

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 日本ではフェイス・ドマーグという誤った発音で紹介されてしまった女優さんだが、正式にはフェイス・ダミューアと読むらしい。あまり一般的な名前ではないため、アメリカでもデビュー当初はドマーグとかドマーニュとか呼ばれていたという。
 SF映画ファンやB級映画ファンならば、『宇宙水爆戦』('54)や『水爆と深海の怪物』('55)でヒロイン役を務めた女優として記憶している人も多いだろう。だが、一般的にフェイス・ダミューアといえば、大富豪ハワード・ヒューズとの関係を抜きに語ることは出来ない。

 1924年6月16日、ルイジアナ州ニューオーリンズで生まれたフェイスは、生まれてすぐ里子に出された。ダミューアというのはフランス系のファミリー・ネームだが、彼女自身はアイリッシュ系の血が流れている。しかし、大人になるまで自分が養女であるということは全く知らなかったという。
 その後、彼女は家族と共にロサンゼルスへ移住する。ビバリーヒルズのカトリック学校に入学した彼女は、母親の友人の勧めで俳優エージェントに紹介され、ワーナー・ブラザーズと専属契約を結んだ。当時まだ15歳。彼女はスタジオ内に併設された学校で学びながら、デビューに向けて演技のレッスンを重ねていった。
 彼女が初めてハワード・ヒューズと出会ったのも、この時期だったとされる。ヒューズの主催する船上パーティに出席したところを見初められたのだ。一目で彼女に惚れ込んだヒューズは、ワーナーとの契約をそっくり買い受けて自分の庇護の下に置いた。さらに彼は、進行中だった彼女の女優活動を全て白紙に戻させ、家庭教師をつけて勉学に専念させる。
 ちなみに、二人は愛人関係にあったとされており、映画『アビエイター』でもそのような描き方をされていたが、実際にはかなりプラトニックなものだったようだ。なにしろ、15歳の少女と33歳の大人。ヒューズにしてみれば、ダミューアとの関係は『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授とイライザみたいなものだったのだろう。それゆえに、ほどなくして彼はエヴァ・ガードナーと交際するようになるわけだ。
 いずれにせよ、こうしてハワード・ヒューズの後ろ盾を得るようになったダミューアは、本格的な映画デビューへ向けて着々と準備を進めるようになる。だが、肝心の出演作がなかなか決まらなかった。
 当時、ハワード・ヒューズは映画監督プレストン・スタージェスと共にカリフォルニア・ピクチャーズという制作会社を設立したばかりだった。スタージェスはハロルド・ロイド主演のコメディ映画の企画を進めており、その資金提供の見返りとしてダミューアの主演映画を製作するとヒューズに約束していた。そのため、彼女は映画デビューを待たされていたのである。ようやく初主演作“Vendetta”の撮影が開始されたのは1946年。しかし、これがトラブルの連続となってしまい、最終的に完成するまで4年という歳月を要することになる。
 当初はスタージェスが製作を担当し、フランスからハリウッドに来ていた名匠マックス・オフュールスが監督に就任。ところが、その直後にハワード・ヒューズが飛行機事故に遭ってしまった。誰もが助からないだろうと考え、会社の責任はおのずとスタージェスの肩に重くのしかかる。そのプレッシャーのせいなのだろうか、この事故をきっかけにしてスタージェスの行動がおかしくなっていった。
 現場は完全にスタージェスが仕切るようになり、監督のオフュールスは演出に関する一切の権限を取り上げられてしまう。彼に許されたのは、“アクション”のひと声をかけるだけだった。しかも、スタージェスの言動は日を追うごとに気まぐれとなり、1日に1ショットしか撮影しないような事もあったという。オフュールスや撮影スタッフはスタージェスへの不満と不信感を募らせ、当時回復に向っていたヒューズへ直訴の手紙を書くようダミューアに懇願したのだった。
 ところが、彼女からの手紙を受け取ったヒューズは、スタージェスと彼が連れてきたスタッフ全員の解雇を通達し、オフュールスを含めた大半の人間が現場を去ってしまう事態となった。改めてスチュアート・ヘイスラー監督のもとで撮影が再開されたものの、ほどなくしてそれも中断。その2年後に俳優メル・フェラーが監督として起用され、ようやく完成にこぎ着けたのだった。
 その間、脇役として映画『若き未亡人』('46)に出演を果たしたダミューアだったが、期待していた初主演作がトラブル続きとなり、すっかり女優業への意欲を失ってしまった。しかも、撮影中のストレスから流産まで経験。後に彼女は、この“Vendetta”の撮影を“苦痛で不愉快な経験だった”と語っている。

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『ゼロへの逃避行』より

『水爆と深海の怪物』より

 46年に名うてのプレイボーイだったミュージシャン、テディ・ストーファーと結婚したダミューアだったが、1年半ほどで離婚。その直後に、アルゼンチン出身の映画監督ヒューゴ・フレゴネーゼと再婚した。“Vendetta”での苦い経験や流産のショックからハリウッドを離れたいと考えた彼女は、夫と共にアルゼンチン行きを決意する。当時は本気で引退するつもりだったらしい。しかし、アルゼンチン滞在中に念願の第一子を出産したことで考え方も変わり、改めてヒューズからの出演オファーを受けることにする。それが、ロバート・ミッチャム共演のフィルム・ノワール『ゼロへの逃避行』(’50)だった。
 ほぼ同時期に“Vendetta”と『ゼロへの逃避行』が完成したことから、ヒューズは500万ドルという当時としては破格の予算を投入してダミューアの宣伝キャンペーンを展開。有力雑誌に彼女の特集記事を組ませ、全米の主要都市を廻るキャンペーン・ツアーも行った。ところが、女優業よりも家庭生活を優先させたいと考えていた彼女は難色を示し、ニューヨークで行われたプレミアへの出席を蹴ってしまう。これをきっかけにヒューズとの関係は急速に悪化。そして、西部劇『抜き射ち二挺拳銃』('52)への出演を最後に、彼女はフリーとして独立することになる。
 その後、ユニヴァーサルと毎年2本の映画に出演するという契約を結んだダミューアだったが、残念ながらあまりヒット作に恵まれなかった。そうした状況下でユニヴァーサルからオファーされたのが、SF映画『宇宙水爆戦』('54)だったというわけだ。
 SFやホラーに全く興味の無かった彼女は、当初は『宇宙水爆戦』への出演に難色を示したという。しかし、さっさとユニバーサルとの契約を履行して他社の作品に出演したかったという事情もあり、半ば仕方なく出演を承諾した。いずれにせよ、ビッグ・ネームとは言えない彼女に選択の余地はなかったのだ。
 そうした経緯で出演することになった『宇宙水爆戦』だったが、撮影そのものは素晴らしい経験だったと後に語っている。折からのSF映画ブームのおかげもあって、ユニバーサルは潤沢な製作費を用意しており、巨大セットでの大掛かりな撮影というのは彼女にとって初めての体験だった。それまでSF映画に対して食わず嫌いだった彼女も、本作の仕上がりには大満足だったという。
 その後も、彼女は“Cult of the Cobra”('55)、『水爆と深海の怪物』('55)と立て続けにSF映画やホラー映画の主演を務め、たちまちマニアの間でカルト的な人気を博すようになった。当時のハリウッドで、ジャンル系映画に出演するというのは、トップ・スターになるチャンスを永遠に放棄することを意味する。だが、夫フレゴネーゼとの関係が悪化し、離婚を考えるようになっていた彼女は、子供を育てるためにも仕事が必要だった。名声よりも、映画界で生き残る事の方が重要だったわけだ。

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“Una sull'altra”より

 58年にフレゴネーゼとの離婚が成立したダミューアは、主な活動の場を映画からテレビへと移行する。一方で、ソビエト映画『火を噴く惑星』('62)のフィルムを使って製作された超低予算SF『原始惑星への旅』('65)など、僅かながら映画にも出演。その間、3度目の結婚も果たしたが、わずか半年ほどで離婚。仕事でもプライベートでも、この頃が一番辛い時期だったようだ。
 その後、66年にイタリア出身の俳優エージェント、パオロ・コッサと再婚したのをきっかけに、今度は活動の場をヨーロッパへと広げる。イタリアでは、ロマーノ・スカヴォリーニ監督の“L'amore breve”('69)、ルチオ・フルチ監督の“Una sull'altra”('69)、アルベルト・デ・マルティーノ監督の“L'uomo dagli occhi di ghiaccio”('71)に出演。中でも、思春期の美少年と母親(ダミューア)、その親友である女性(ジョーン・コリンズ)の三角関係を耽美的に描いた“L'amore breve”は、彼女自身が最も気に入っている作品だという。
 71年にアメリカへ戻ったダミューアは、『宇宙水爆戦』のジェフ・モローと久々に共演を果たした“Legacy of Blood”('71)、スーザ・ストラスバーグと姉妹役を演じた『サイコ・シスターズ』('72)に出演。そして、親しい友人である俳優ジョン・アイアランドの勧めで出演した『ブラック・マジック/戦慄の館』('73)を最後に女優業から足を洗い、イタリアに定住することになった。

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“Legacy of Blood”より

『ブラック・マジック/戦慄の館』より

 同じようにハワード・ヒューズに見初められてトップ女優となったジェーン・ラッセルと違い、結局は大成することが出来なかったフェイス・ダミューア。彼女にとって最大の不幸は、“第二のジェーン・ラッセル”を求められてしまった事だろう。デビュー当時の宣材写真を見ても、明らかにラッセルを意識した髪型やポーズのものが多い。しかし、どこの世界でも“第二”という形容詞の付く者は、決してオリジナルを越えることは出来ないのである。
 それに、そもそも彼女は“第二のジェーン・ラッセル”を名乗るにはちょっと小粒過ぎたかもしれない。まるでホルスタイン並みに迫力のあるラッセルと比べられること自体、ダミューアにとっては分が悪かった。どちらかというと、彼女はグラマラスなセックス・シンボル路線よりは、アンニュイでニューロティックなファム・ファタールがよく似合う。そういった意味では、『ゼロの逃避行』みたいなフィルム・ノワールに活路を見出すことが出来れば良かったのだが、残念ながら西部劇やSF映画、ホラー映画ばかりにお声がかかってしまった。
 それでも、『宇宙水爆戦』や『水爆と深海の怪物』といったカルト映画に出演することが出来たのはラッキーだったと言えよう。彼女自身も生前のインタビューで、“どんな作品であるかを問わず、私や私の映画を楽しんでくれる人がいるなんて、こんな幸せなことはない”と語っており、いつまでも覚えていてくれる熱心なファンの存在には感謝していたようだ。
 その後、1996年に夫パオロ・コッサと死別したダミューアはアメリカへ帰国。静かに余生を送っていたが、1999年4月4日癌のため帰らぬ人となった。享年74歳。

 

ゼロへの逃避行
Where Danger Lives (1950)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 Warner Bros. (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/80分/製作:アメリカ
※カップリング“Tension”('49)

映像特典
評論家A・シルバー、J・ウルシーニの音声解説
メイキング・ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
監督:ジョン・ファロー
製作:アーウィン・カミングス・ジュニア
    アーウィン・アレン
原作:レオ・ローゼン
脚本:チャールズ・ベネット
撮影:ニコラス・ムラスカ
音楽:ロイ・ウェッブ
出演:ロバート・ミッチャム
    フェイス・ダミューア
    クロード・レインズ
    モーリーン・オサリヴァン
    チャールズ・ケンパー
    ラルフ・ダムケ

 色添え的な役柄の多かったダミューアにとっては数少ない難役であり、女優としての実力を垣間見せた貴重な作品でもある。彼女が演じるのは金持ちの人妻マーゴ。情緒不安定かつ気まぐれな女性で、ロバート・ミッチャム扮する善良な医師を地獄巡りさせることになるファム・ファタールだ。
 愛のない夫婦生活に疲れた弱い女性だったはずが、ストーリーが進行するにつれて全く違った顔を覗かせるようになるマーゴ。果たして彼女は本当に悲劇のヒロインなのか?それとも、涙で男を利用しようとする悪女なのか?そして、警察に追われる身となった2人の末路とは?典型的なヒッチコック・スタイルの逃走劇で、スタイリッシュな映像と無駄のない演出が最後まで飽きさせない小品佳作である。

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ジェフとマーゴを見つめるジュリー(M・オサリヴァン)

ジェフ(R・ミッチャム)と急接近するマーゴ

ラニントン氏を演じるクロード・レインズ

 主人公は有能な若手医師ジェフ・キャメロン(ロバート・ミッチャム)。仕事を終えて帰宅しようとした彼は、急患で運び込まれた自殺未遂の若い女性に応急処置を施す。女性は昏睡状態だったが命に別状はなく、ほどなくして意識を取り戻した。彼女はマーゴ(フェイス・ダミューア)と名乗り、ジェフの手を握って感謝の言葉を述べる。しかし、それを見ていたジェフの恋人である看護婦ジュリー(モーリーン・オサリヴァン)は、まるで彼を誘惑するようなマーゴの様子に違和感を感じるのだった。
 翌朝出勤したジェフは、マーゴが勝手に退院してしまった事を知る。彼女が書き残していった住所や名前も全てウソだった。ところが、そのマーゴからジェフ宛に電報が届けられる。事情を説明したいから家に来てほしいというのだ。
 電報に書かれた住所を訪ねて行ったジェフだったが、そこはビックリするような豪邸だった。彼を待っていたマーゴは、病気の父親を悲しませたくないから自殺未遂を表沙汰にしないで欲しいと懇願する。母親を亡くした彼女は父親との二人暮らしで、その孤独に耐えかねての自殺未遂だったのだという。本来は警察に通報する義務のあるジェフだったが、彼女の身の上話にすっかり同情してしまった。
 たちまちマーゴと恋に落ちたジェフは、秘かにデートを重ねるようになる。だがある日、マーゴは別れを切り出す。父親と共に長旅へ出なくてはいけないのだという。何とか引き止めようと説得するジェフだったが、生活力のない彼女は父親に従わざるを得ない。ジェフは自分が面倒を見ると申し出るが、駆け出しの医師の給料では生活できないと断られてしまう。マーゴは貧しさを極端に怖れていた。それでも食い下がらないジェフに、彼女は父親を説得してみると約束して帰宅した。
 その晩、ヤケ酒を浴びたジェフはマーゴの家を訪れる。そこには彼女の父親であるラニントン氏(クロード・レインズ)もいた。しかし、マーゴとの結婚を切り出したジェフに、ラニントン氏は皮肉な笑みを浮かべる。彼はマーゴの父親ではなく、夫だったのだ。
 マーゴの自殺未遂や浮気は初めてのことではなかった。彼女は財産が目当てで年の離れた男と結婚し、ラニントン氏もそれを承知の上だった。予想外の事実を突きつけられて困惑するジェフ。そんな彼にマーゴは許しを請い、ラニントン氏も彼女を連れて行って構わないという。だが、彼女の言葉を信用できなくなったジェフは、引きとめようとするマーゴを振り払って屋敷を後にする。
 ところが、玄関の外へ出たところでマーゴの悲鳴が響き渡った。ジェフが急いで屋敷内に戻ると、マーゴは夫に暴力を奮われたと泣きじゃくっている。ラニントン氏は彼女の言葉に騙されるなと警告するが、興奮したジェフは耳を貸そうとしない。やがて2人はもみ合いとなり、ジェフは火掻き棒で襲い掛かってきたラニントン氏を殴り倒してしまった。
 自らも後頭部を強く殴られた彼は、洗面所で傷口を冷やしてくる。しかし、居間に戻るとラニントン氏は息を引き取っていた。警察に通報しようとするジェフだったが、マーゴは猛反対する。たとえ事故だったと説明しても、状況的に警察は信用してくれないだろうと。
 強打されたショックで極度のめまいと頭痛に襲われたジェフはマーゴの言うがままとなり、二人は夫婦を装って逃亡の旅へと出ることになる。目的地はメキシコ。だが、やがてマーゴの言動に辻褄が合わなくなってくる。彼女は明らかに何かを隠していた。果たしてマーゴの正体とは?ラニントン氏は本当にジェフが殴り殺したのか?そして、今や彼女の奴隷となってしまったジェフの運命は?

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泣きじゃくるマーゴの涙のわけとは・・・?

逃避行を続けるジェフとマーゴ

マーゴには重大な秘密があった・・・

 監督はジョン・ファロー。戦争映画から冒険活劇まで幅広いジャンルを手掛けた職人監督だが、中でも『恐るべき告白』('39)や『大時計』('48)、『替え玉殺人事件』('51)などの犯罪映画で優れた仕事を残しており、フィルム・ノワールを語る上では欠かすことのできない人物だ。
 本作では明暗を極端に強調したライティングでシュールな雰囲気を演出し、まさに悪夢のような不条理世界を作り上げている。ストーリー展開はヒッチコック風だが、その映像や語り口はフリッツ・ラングに限りなく近い。ちょうど『死刑執行人もまた死す』('43)や『恐怖省』('44)辺りを彷彿とさせる感じだ。ドイツ表現主義のムードを上手く取り入れることにより、物語の背景にある精神病理学的なテーマを浮かび上がらせることに成功していると言えるだろう。
 本来は理性的であるはずの医師が徐々に自分をコントロール出来なくなって行き、夢とも現実ともつかない世界へと引きずり込まれていく。一方、精神的に問題のある女性は膨れ上がる妄想の中で己の目的を明確化し、逆に驚くべき行動力を発揮していく。つまり、ジェフが引きずり込まれていったのは、パラノイアであるマーゴの心象世界なのだと言えるだろう。そして、それはおのずとクライマックスで明かされる彼女の正体への伏線となっていく。この幻想的でサイコロジカルな切り口こそが、本作の最大の面白さなのだろうと思う。
 脚本を手掛けたのは『三十九夜』('35)や『サボタージュ』('36)、『間諜最後の日』('36)、『海外特派員』('40)、『知りすぎていた男』('56)などのヒッチコック作品で有名なチャールズ・ベネット。なるほど、ヒッチコックを彷彿とさせるストーリー展開というのも頷けるところだろう。窮地に陥った二人がとっさの思いつきで結婚式を挙げて難を逃れるというエピソードなんかは、ちょうど『三十九夜』で追いつめられたロバート・ドーナットが、どさくさ紛れに選挙の応援演説をして喝采を浴びるシーンを彷彿とさせる。
 また、撮影を手掛けたニコラス・ムスラカについても言及しておかねばなるまい。彼はRKOの専属カメラマンとして数多くの巨匠・名匠と組んできた人物で、中でも『キャット・ピープル』('42)や『恐怖の精神病院』('46)など一連のヴァル・リュートン作品で素晴らしい仕事を残している。その他にも、ロバート・シオドマクの傑作スリラー『らせん階段』('45)やアイダ・ルピノ監督のフィルム・ノワール『ヒッチ・ハイカー』('53)なども手掛けており、フリッツ・ラング監督とも『熱き夜の疼き』('52)と『青いガーデニア』('53)で組んでいた。陰影のはっきりとした象徴的なライティングは彼の十八番であり、本作はそのセンスが十二分に生かされていると言えるだろう。

 マーゴ役を演じるフェイス・ダミューアの脇を固めるのはロバート・ミッチャムとクロード・レインズ。ミッチャムは当時RKOの看板スターであり、ハワード・ヒューズのお気に入り俳優だった。ダミューアにとってはまさに雲の上の人である。また、クロード・レインズも当時はハリウッドを代表する名優であり、この二大スターに囲まれた彼女は相当な緊張を強いられたという。特にレインズは超のつく完璧主義者で、駆け出しのダミューアとは最後まで打ち解けることがなかったと言われている。
 なお、ジェフの恋人である看護婦ジュリーを演じているのは、ジョン・ファロー監督の妻マーガレット・オサリヴァン。つまり、女優ミア・ファローの母親である。ジョニー・ワイズミューラー主演のターザン映画でジェーン役を演じて一世を風靡した人で、本作ではゲスト出演的な存在だった。

 

Legacy of Blood (1971)
日本未公開

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(P) Synergy Entertainment (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL
/90分/製作:アメリカ
※DVD-R

映像特典
なし

監督:カール・モンソン
製作:ベネット・H・ランバウツ
原案:カール・モンソン
脚本:エリック・ノーデン
撮影:ジャック・ベケット
    ベン・ランバウツ
音楽:ハイメ・メンドーサ・ナヴァ
出演:ロドルフォ・アコスタ
    メリー・アンダース
    ノーマン・バートルド
    アイヴィー・ベスーン
    ジョン・キャラダイン
    リチャード・ダヴァロス
    フェイス・ダミューア
    バック・カータリアン
    ブルック・ミルズ
    ジェフ・モロー
    ジョン・ラッセル
    ジョン・スミス

 落ち目のハリウッド・スターばかりを集めて撮影されたC級スラッシャー・ホラー。遺産相続に集まった家族たちが次々と殺されていく、というプロットは実に凡庸。当時としては比較的過激な残酷シーンが見どころかもしれないが、いかんせんダラダラとしたストーリー展開なので緊張感もクソもない。
 ところが、なぜかダミューアは後年のインタビューで、この作品のことを“私の傑作の一つだ”と褒めちぎっている。“音楽の付いていないラフ・カットを見ただけで、これはいい映画になると思った”とも語っているのだが、何か別の映画と勘違いしてるんじゃないかとしか思えない。ただ、どうも彼女は最終的な完成版を見ていなかったようだし、尺を伸ばすための追加撮影も幾度となく行われたようなので、もしかしたら当初のラフ・カットとは全く違った内容に仕上がってしまったのかもしれない。
 とはいえ、カメラの構図だけを見ても、まるで学生の自主制作映画みたいな代物。とてもじゃないが、“傑作”という言葉が出てくるような要素はどこにも見当たらない作品だ。ただ、あまりにも酷くて笑いがこみ上げてくるという意味では、それなりに楽しめる映画なのかもしれないが・・・。

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遺産相続に集まったディーン家の人々

長女ヴェロニカ役のフェイス・ダミューア

運転手フランク役のジョン・ラッセル

 舞台となるのはディーン家の豪邸。一家の主クリストファー・ディーン(ジョン・キャラダイン)が亡くなり、その家族が葬儀のために集まった。長男グレゴリー(ジェフ・モロー)と妻ローラ(メリー・アンダース)、長女ヴィクトリア(フェイス・ダミューア)、次男ジョニー(リチャード・ダヴァロス)、次女レズリー(ブルック・ミルズ)と夫カール(ジョン・スミス)。
 やがて弁護士トム・ドレイク(ノーマン・バートルド)は、故人の遺言を録音したテープを回し始める。それは、世にも奇妙な内容の遺産相続だった。ディーン家の財産は1億3600万ドル。それを子供たち4人で均等に分配する事になるのだが、誰かが死んだ場合は残った子供たちで分ける。さらに、子供たちが全員死んでしまった場合は、執事イゴール(バック・カータリアン)、女中エルガ(アイヴィー・ベスーン)、運転手フランク(ジョン・ラッセル)の3人で均等に分けて構わないという。しかも、遺産を相続するためには、1週間のあいだディーン家の敷地から一歩も外に出てはならないというのだ。
 父親クリストファーと子供たちは長年憎しみあってきた。さらに、次男ジョニーと次女レズリーはかつて近親相姦の関係にあり、ジョニーはそのトラウマで精神に問題を抱えている。長男グレゴリーは家族の事に無関心で、長女ヴィクトリアは金の亡者だった。また、執事イゴールは極度のマゾヒストで、運転手フランクは戦時中にナチの皮を剥いで作ったランプを大切に持っているという変わり者。
 そうこうしているうちに、グレゴリーの妻ローラが可愛がっている子犬が沼で八つ裂きにされた。さらに、パトロールで訪れた警官ガルシア(ロドルフォ・アコスタ)が何者かに斧で惨殺され、その生首が冷蔵庫から発見される。電話の回線が断ち切られ、車も壊されてしまった。お互い疑心暗鬼となるディーン家の人々。やがて、一人また一人と殺されていき、誰もが考えていなかった真犯人が明らかになるのだが・・・。

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ヴェロニカと次男ジョニー(R・ダヴァロス)

長男グレゴリー(J・モロー)と妻ローラ(M・アンダース)

召使イゴール(B・カータリアン)とエルガ(I・ベスーン)

 反則技としか言いようがない犯人の正体にビックリさせられるが、その後の無理矢理などんでん返し(?)もなかなか衝撃的。製作者サイドは気の利いたジョークのつもりなのかもしれないが、あまりにも取ってつけたような急展開は呆気にとられること必至だ。脚本を書いたのはカール・モンソン監督の盟友エリック・ノーデンだが、謎解きや伏線といったものが皆無で、まるで行き当たりばったりといった様子。
 殺し合いをしろと言わんばかりの内容の遺言も凄いが、次々とディーン家の人々が殺されていく中で、誰も召使たちを疑わないというのも、ちょっと考えれば変な話だ。彼らが死んで一番得をするのは召使たちなわけだから、疑ってみるのが当然だとは思うのだが・・・。
 で、本作のカール・モンソン監督。日本でも人気のあったポルノ女優シャロン・ケリーの『ポルノ捜査局/シャロン・ケリー』('73)や、海外ではカルト映画として悪名高い人食い植物映画“Please Don't Eat My Mother”('73)、そしてフランク・スタローンにクリストファー・ミッチャムという七光りスター共演のC級アクション『コング/怒りの処刑』('87)を手掛けた人物。
 ピラニアの水槽に頭を突っ込んだ人の顔が食い散らかされたり、蜂の大群に襲われた人が顔中を刺されて死んだりといったゴア・シーンが印象に残るものの、それ以外は全くいいところナシ。いわゆるトラッシュ・ムービー系の監督なわけだが、アンディ・ミリガンやテッド・V・マイケルズのような強烈な個性も無く、普通に下手っクソなだけというのが何とも虚しい。
 ちなみに、音楽を手掛けたハイメ・メンドーサ・ナヴァは、もともとディズニーの音楽部門に在籍し、テレビ『ミッキー・マウス・クラブ』の音楽を手掛けていた人物。その後、アニメ『Mr.マグー』シリーズや『ジェラルド・マクボイン・ボイン』シリーズで有名なアニメ・プロダクションUPAの音楽監督に就任し、数多くのアニメ作品の音楽を担当している。本作ではエンディングのユーモラスなパレード音楽で、そのアニメ的な個性を発揮している。

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警察官ガルシア(R・アコスタ)

ピラニアの餌食になった犠牲者

ディーン家の主クリストファー(J・キャラダイン)

 ちなみに、ダミューア以外の出演者についてもザッと紹介しておこう。ディーン家の長男グレゴリーを演じているのは、『宇宙水爆戦』でダミューアとコンビを組んだジェフ・モロー。名匠ダグラス・サーク監督作品の常連としても知られる名脇役だ。その妻ローラを演じるメリー・アンダースは、50年代から60年代にかけてB級西部劇やコメディのヒロインとして活躍した女優で、『あばずれ西部魂』('60)ではジェフ・モローと共演している。
 精神的なトラブルを抱えている次男ジョニーを演じたリチャード・ダヴァロスは、『エデンの東』('55)でジェームス・ディーンの弟役を演じていた人。彼は今も現役で、つい先ごろ最新作“Ninja Cheerleaders”('08)が完成したばかりだ。
 次女レズリー役のブルック・ミルズは、ジャック・ヒル監督の傑作女囚映画『残酷女刑務所』('71)やジョナサン・カプラン監督の『いけない女教師』('73)で知られるB級セクシー女優。その夫カールを演じるジョン・スミスは、日本でも一世を風靡したテレビ・ドラマ『ララミー牧場』('59〜'63)の主人公スリム・シャーマン役で人気を得たスターだった。
 謎めいた運転手フランクを演じているジョン・ラッセルは、『テキサス街道』('54)や『リオ・ブラボー』('59)、『イエローストン砦』('59)などで活躍した西部劇スター。B級映画が多かったものの、その存在感のある顔つきは印象的で、クリント・イーストウッドの『ペイル・ライダー』('85)に出たときは往年の西部劇ファンを喜ばせたものだった。
 斧で首を切られる警察官を演じたロドルフォ・アコスタも、往年の西部劇には欠かせない名脇役。『ホンドー』('53)や『誇り高き男』('56)など数多くの作品でメキシコ人役を演じており、この作品が最後の出演作となってしまった。
 そして、亡くなったディーン家の主クリストファーを演じているのがジョン・キャラダイン。ジョン・フォードの傑作『駅馬車』('39)で賭博師ハトフィールドを演じ、『怒りの葡萄』('40)や『血と砂』('41)、『大砂塵』('53)、『十戒』('56)などの名作に数多く出演した名優だ。しかし、破天荒な生活を送っていたことから幾度となく破産し、当時はギャラのためならどんな仕事でも引き受けていた。本作の撮影時は65歳だったはずだが、年齢よりもかなり老けて見える。
 その他、執事イゴール役のバック・カータリアンは『猿の惑星』('68)の猿人ジュリアスを演じていた元ボディビルダー。女中エルガ役のアイヴィー・ベスーンは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』('85)のピーボディ夫人役で知られる脇役女優。

 なお、アンディ・ミリガン監督が78年に同名の“Legacy of Blood”という作品を発表しており、ストーリーも非常に酷似している。ただ、ミリガン作品の方は68年に彼が撮った『アンディ・ミリガンのガストリー・ワンズ』のセリフ・リメイクであり、当然ながら本作との関連性は全くない。アメリカでもよく混同されてしまうらしいが、不思議といえば不思議な偶然だ。

 

ブラック・マジック/戦慄の館
The House of Seven Corpses (1973)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2005 Geneon (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
89分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:ポール・ハリソン
製作:ポール・ルイス
    ポール・ハリソン
脚本:ポール・ハリソン
    トーマス・J・ケリー
撮影:ドン・ジョーンズ
出演:ジョン・アイアランド
    フェイス・ダミューア
    ジョン・キャラダイン
    キャロル・ウェルズ
    ジェリー・ストリックラー
    チャールズ・マコウリー
    ロン・フォアマン

 フェイス・ダミューアにとって最後の出演作となった低予算ホラー。忌まわしい過去を持つ豪邸を舞台に、ホラー映画の撮影クルーが次々と恐ろしい出来事に遭遇する。前半は主に超常現象を描いたオカルト映画だが、後半では墓地から甦ったゾンビが撮影クルー全員を血祭りにあげるという変化球的な作品。これといって派手な展開もないし、ゾンビが登場するシーンも僅かなのだが、独特のゴシック・ムードを漂わせたロケーション撮影はなかなか魅力的。海外での評価はかなり低いようだが、個人的には意外と好きな作品である。

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女優ゲイル役のフェイス・ダミューア

ハートマン監督役のジョン・アイアランド

管理人エドガー役のジョン・キャラダイン

 とあるゴシック様式の邸宅でホラー映画の撮影が行われていた。監督のエリック・ハートマン(ジョン・アイアランド)はやり手の頑固な男で、管理人エドガー(ジョン・キャラダイン)の警告にも耳を傾けようとしない。
 実は、この屋敷にはかつて悪魔崇拝の一族が住んでいた。しかし、7名の家族はいずれも屋敷内で謎の死を遂げてしまい、それ以来この家は“七つの死体の家”と呼ばれて怖れられている。ハートマンはその怪事件を題材にした映画を製作しているのだった。黒魔術の儀式を忠実に再現しようとするハートマンに、エドガーは異を唱えていたのだ。
 我がままな主演女優ゲイル(フェイス・ダミューア)と相手役クリストファー(チャールズ・マコウリー)は犬猿の仲で、ただでさえトラブルの火種を抱えている撮影現場だったが、やがて奇怪な出来事が連続して起きるようになる。真夜中に聞こえる不気味な物音、裏庭で発見された猫の惨殺体、そして墓地を徘徊するエドガーの奇妙な行動。エリックはエドガーの嫌がらせだと考えたが、彼にはアリバイがあった。
 撮影現場にも不穏が空気が漂っていたが、それでも撮影は強行されていく。若手女優アン(キャロル・ウェルズ)は撮影に不安を抱くが、共演のデヴィッド(ジェリー・ストリックラー)はまるで意に介さない。そうした中、死者を甦らせるシーンの撮影が始まり、黒魔術の呪文が唱えられる。すると、裏庭の墓地から死体が甦り、撮影スタッフや出演者を次々と殺害していくのだった・・・。

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舞台となる呪われた屋敷

屋敷では過去に凄惨な事件が・・・

 実はこの作品、ユタ州のモルモン教団体の出資で作られている。そのため、撮影現場には酒とたばこが持ち込み禁止で、団体から派遣された関係者が常時監視していたという。ストーリーそのものにモルモン教が関わってるわけではないが、撮影には教会の所有する建物が使用された。モルモン教とホラー映画というのも意外な組み合わせだが、あくまでもビジネスと割り切って投資したのだろう。押し付けがましいプロパガンダ映画ばかり作る、日本の某新興宗教団体とは大違いだ。
 製作・監督・脚本を務めたポール・ハリソンはテレビ界出身の人で、劇場用映画はこれ一作だけ。確かに、本作もクロース・アップやバスト・ショットが多く、まるでテレビ・ムービーのような印象を受ける。恐怖シーンの演出も控えめで、残酷描写はほとんどない。この手の映画には付きモノのお色気シーンも皆無なので、お子様が見ても安心だろう(笑)。
 ちなみに、共同プロデューサーとしてクレジットされているポール・ルイスはデニス・ホッパーの盟友として有名で、『イージー・ライダー』('69)のプロダクション・マネージャーを務めたほか、『ラスト・ムービー』('71)や『カラーズ』('88)、『バックトラック』('89)、『ホット・スポット』('90)などの製作を担当している。

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女優アン(C ・ウェルズ)とデヴィッド(J・ストリックラー)

映画撮影は順調に進んでいるようだったが・・・

墓場から甦ったゾンビが屋敷を徘徊する

 これが女優として最後の仕事となったダミューアだが、さすがに容色衰えてのスター女優役というのは説得力に乏しく、一抹の寂しさを感じさせる。しかも、自分勝手で我が儘な女王様という設定。ジョーン・クロフォードやラナ・ターナーのような大女優が演じるならまだしも、スターとしてはBランクだった彼女ではさすがに無理があるように思う。
 管理人エドガー役を演じるジョン・キャラダインは酔っ払って現場に現れるような状態だったらしいが、カメラが回ると完璧に演技をこなしたという。また、当時は関節炎で身体中が痛んでいたというが、そんな事を全く感じさせないパワフルな演技を披露している。
 ハートマン監督役のジョン・アイアランドは個人的にも大好きな俳優。ジョン・ウェインの『赤い河』('48)では一匹狼の早撃ち名人バランスを演じていたが、善悪を超越した独特の存在感が印象的だった。その他、『荒野の決闘』('45)や『オール・ザ・キングスメン』('49)、『復讐の谷』('51)、『北京の55日』('63)など、素晴らしい仕事を残している名優だ。ほとんどが悪役だったものの、その眼光鋭い顔立ちとニヒルでクールな演技は時として主役を食うほどのカッコ良さだった。

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