EURO SPIES & THIEVES
ユーロ産スパイ映画&泥棒映画 セレクション

 

キッスは殺しのサイン
Deadlier Than The Male (1966)
日本では1967年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Granada/Network (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤2枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:2/101分/製作:イギリス
※続編『電撃!スパイ作戦』とカップリング

特典映像
オリジナル劇場予告編
タイトルなしクレジット・シーン
出演者インタビュー(R・ジョンソン
、E・ソマー、S・コシナ、N・グリーン、S・カールソン)
ロケ撮影ドキュメンタリー
オフショット・ドキュメンタリー
スチル&ポスター・ギャラリー
監督:ラルフ・トーマス
製作:ベティ・E・ボックス
   シドニー・ボックス
原作:ハーマン・C・マクニール
原案:ジミー・サングスター
脚本:ジミー・サングスター
   デヴィッド・オズボーン
   リズ・チャールズ=ウィリアムス
撮影:アーネスト・スチュワード
音楽:マルコム・ロッカイヤー
出演:リチャード・ジョンソン
   エルケ・ソマー
   シルヴァ・コシナ
   ナイジェル・グリーン
   スザンナ・リー
   スティーヴ・カールソン
   ヴァージニア・ノース
   レナード・ロシター
   ローレンス・ネイスミス
   リー・モンタギュー
   ミルトン・リード

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石油王ケラー氏の自家用ジェットに謎の美女が…

葉巻に仕込まれた弾丸でケラー氏が射殺される

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次々と起きる殺人事件の影で暗躍する美女コンビ

親友の訃報を知らされた凄腕調査員ドラモンド(R・ジョンソン)

 007シリーズのヒットを皮切りに盛り上がった1960年代のスパイ映画ブーム。電撃フリントやマット・ヘルムなどなど次々と新たなスパイ・ヒーローが誕生する中、1920年代に欧米で人気を集めた推理小説の主人公ブルドッグ・ドラモンドことヒュー・ドラモンドをジェームズ・ボンド・タイプのヒーローとして甦らせたのが、この英国産スパイ・アクション『キッスは殺しのサイン』である。
 ヒュー・ドラモンドとは、イギリスの推理作家ハーマン・C・マクニールが1920年にサッパー名義で発表した小説『怪傑ドラモンド』で初登場した冒険家。第一次世界大戦で活躍したイギリスの退役軍人で、その勇猛果敢な人柄からブルドッグという愛称で呼ばれるようになったという人物だ。柔道が得意で、酒と冒険を愛するダンディでハンサムな紳士。戦争のない平穏無事な日常に退屈した彼は、新聞に広告を載せて募集した難事件を見事に解決してみせる。
 このブルドッグ・ドラモンド・シリーズは原作者マクニールが亡くなった1937年まで通算10作が発表され、さらにその後を引き継いだ作家ジェラルド・フェアリーが1954年までに7作を発表。サイレント映画時代の1923年にはイギリスで最初の映画版が登場し、1952年までにイギリスとアメリカで合計21本のブルドッグ・ドラモンド映画が製作された。中でも有名なのは、ハリウッドの大物2枚目スター、ロナルド・コールマンがドラモンド役を演じた、その名もズバリの推理サスペンス映画『ブルドッグ・ドラモンド』(29)であろう。
 そんな古典的推理小説の主人公を、60'sスタイルのモダンなスーパー・ヒーローとして甦らせた本作。主人公ドラモンドと宿敵カール・ピーターソンというキャラクターだけを原作小説から拝借し、あとは全て一から作り上げたオリジナル作品となっている。原案と脚本を手掛けたのは、ハマー・ホラーの第一人者としてもお馴染みのジミー・サングスター。当時ダーク・ボガードとのコンビで『地獄のガイドブック』(64)や『キプロス脱出作戦』(65)などのアクション映画を生み出していたラルフ・トーマス監督が演出を受け持った。
 新生ドラモンドは大手保険会社ロイスの凄腕調査員。石油業界で相次ぐ謎の怪死事件を調べていた彼は、やがて中東の石油利権を巡って陰謀を張り巡らせる巨大な犯罪組織のボス、カール・ピーターソンと対峙することとなる。加えて、ピーターソンの手先である美女アーマとペネロピ―の暗殺者コンビが暗躍。ハンサムでダンディなヒーロー、世界を股にかける謎の犯罪王、そしてセクシーなビキニ姿の危険な美女たちと、まさに007シリーズさながらの世界が展開するわけだ。
 そもそも、イアン・フレミングはブルドッグ・ドラモンドを参考にしてジェームズ・ボンドを創造したということなので、方向性としては決して間違ってはいない…というより、結果として当
然の成り行きだったとも言えるだろう。全体的にアダルトなユーモアを交えたライトなタッチを貫きつつ、随所にハードなバイオレンスやアクションを交えていくというスタイルも、映画版007シリーズと相通ずるような面白さだ。
 さらに、原作にはないドラモンドの甥っ子ロバートというキャラクターを登場させ、ドラモンドの成熟した渋い魅力とロバートの未熟な青臭さを対比させながら、これが大人の粋ってもんだぜ、というものを存分に見せつけていく。宿敵ピーターソンがドラモンドに突きつける挑戦というのが、コンピューター制御された巨大なチェス遊びってのも優雅というか長閑というか。うら若い乙女からグラマーな熟女に至るまで、出てくる女性たちがことごとく若者ロバートよりも熟年ドラモンドによろめくというのも、大人の男がカッコ良かった時代を象徴しているのかもしれない。
 しかし、なんといっても本作の最大の目玉は、60年代のヨーロッパ映画界を代表する2大セクシー女優、エルケ・ソマーとシルヴァ・コシナが演じる最強の殺し屋美女コンビ、アーマとペネロピ―の2人であろう。鼻っ柱が強くて頭脳明晰なアーマと、ちょっとおツムが弱くて能天気なペネロピ―。このお色気全開のチャーミングな美女たちが、様々な武器を片手に情け容赦なく、しかも楽しそうに人を殺していくのがなんとも愉快というか怖いというか。あらま〜、可哀そうにね〜、なんて悩殺ポーズで呟いちゃったりしながら、それはもう嬉しそうに他人の息の根を止めるペネロピ―が個人的には一番のお気に入り。真面目くさったアンジェリーナ・ジョリーのスーパー・ヒロインなんかより、こういう荒唐無稽で愛嬌のあるセクシー悪女の方が遥かに素敵で楽しい。

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石油業界に様々な陰謀を仕掛ける殺し屋アーマ(E・ソマー)

石油会社重役ウェストン(N・グリーン)にも身の危険が迫っていた

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愉しげにロバート(S・カールソン)を拷問するペネロピ―(S・コシナ)

ウェストンのオフィスが爆破されてしまう

 石油王ヘンリー・ケラーを乗せた自家用ジェット機が爆破された。犯人は謎の美女アーマ・エックマン(エルケ・ソマー)。彼女は弾丸を仕込んだ葉巻をケラーに吸わせて射殺し、ジェット機に時限爆弾を仕掛けた上で脱出。パラシュートで海面へ不時着した彼女を待っていたのは、相棒のペネロピ―(シルヴァ・コシナ)である。さらに、2人はスキンダイビングで海辺の豪邸へと侵入し、デヴィッド・ウィンガードという男性を殺害した。
 ウィンガードは大手保険会社ロイスの調査員で、上司ブレッドロー(ローレンス・ネイスミス)の指示で石油業界の動きを調べていた。ブレッドローからウィンガードの死を知らされた同僚で親友のヒュー・ドラモンド(リチャード・ジョンソン)は、その背後に何かしらの陰謀があると睨んで調査を引き継ぐことにする。
 実は、ケラー氏の石油会社はライバルのフェニンアン石油との合併計画を進めていた。その計画を手引きしていた謎の第三者の代理人というのが、アーマだったのである。ケラー氏の死によって合併計画は頓挫してしまったものの、アーマは巨額の手数料を要求。だが、会議の席でケラー石油の重役ヘンリー・ブリッジノース(レナード・ロシター)が異を唱えたことから、結論は先延ばしとなってしまった。
 その晩、ブリッジノースの自宅へアーマとペネロピ―が侵入。指輪に隠した毒薬でブリッジノースを仮死状態にさせた上で、高層マンションのベランダから彼を突き落として殺害する。毒薬は数分で跡形もなく消えることから、事件は自殺として処理された。さらに、2人はウィンガードの召使カルロッジョがドラモンドに接触していることを察知。カルロッジョを殺害した彼女たちは、ドラモンドを次のターゲットに定める。
 その頃、ドラモンドのもとへアメリカに住む甥っ子ロバート(スティーヴ・カールソン)が訪ねてきた。叔父の留守中にガールフレンドのブレンダ(ヴァージニア・ノース)をアパートへ連れ込むロバート。そこへ、ペネロピ―がドラモンドの知人を装って現れ、プレゼントの包みを手渡す。中身は高級葉巻だった。受け取ったブレンダは、それをロバートへの贈り物と勘違い。試しに吸ってみようと火をつけたところ、葉巻から弾丸が飛び出した。
 運良く的が外れて一命を取り留めたブレンダ。ロバートから経緯を知らされたドラモンドは、引退した元マフィアのボクサー(リー・モンタギュー)の力を借りて、この新手の武器の出所を調査したものの、どうやらかなり巨大な裏組織が絡んでいるようだった。その帰り道、ドラモンドは2人組の殺し屋に襲撃される。得意の柔道で2人をやり込めたドラモンドに、彼らは女性の依頼人に雇われたことを白状した。
 一方、今度はパン・アラビアン石油とフェニンアン石油が中東の王国アマタの石油利権を獲得するべく動き始めた。その仲介役を務めるのは、またしてもアーマだ。だが、アマタの若き国王フェドラ(ジーア・モヒエディン)は利権を外国企業に売り渡すような人物ではない。国王を暗殺でもしなければ、利権の獲得など実現できないはずだ。ドラモンドはアーマが一連の怪事件に関与しているのではないかと疑うようになる。さらに、彼はフェニンアン石油の重役で知人のウェストン(ナイジェル・グリーン)にアーマが接触していることを知り、彼女と距離を置くようウェストンに警告。その足で、彼は会議を終えたアーマを追跡する。
 その頃、得意のお色気を使ってロバートを誘拐したペネロピ―は、ドラモンドの調査がどれだけ進んでいるのかを聞き出すためにロバートを拷問。そこへ、アーマが戻ってきた。ドラモンドに尾行されていることを知っているアーマは、アパートに時限爆弾を仕掛けた上でペネロピ―と逃走。しかし、ドラモンドの機転で時限爆弾は解除され、間一髪のところでロバートの命は救われた。
 次はウェストンが危ないと察知したドラモンド。だが、その直後にウェストンのオフィスが爆破されてしまった。ロバートがアマタ国王と学生時代からの親友と知ったドラモンドは、彼と一緒にイタリア滞在中の国王を訪ねることにする。次のターゲットは国王である可能性が高いからだ。しかも、その滞在先はウィンガードが殺されたのと同じ場所。とても偶然だとは思えない。
 ウィンガードが借りていたヴィラへ宿泊することにしたドラモンドとロバート。港を挟んで向かい側に位置する巨大な古城には、謎の大富豪カール・ピーターソンが住んでいるという。古城から何者かが監視していることにドラモンドは勘付いた。案の定、ピーターソンからドラモンドへディナーの招待が届いた。国王を警護するためにロバートを送り出したドラモンドは、単身でピーターソンの古城へと向かう。
 なんと、ピーターソンの正体は爆死したはずのウェストンだった。彼は国際的な巨大犯罪組織のボスで、アーマとペネロピ―も彼の部下だったのである。組織は世界中から集めた美女たちを訓練して暗殺者に仕立て上げ、様々な陰謀を張り巡らせながら巨万の富を築いていた。ピーターソンはコンピューターで制御された等身大のチェスを使って、ドラモンドに頭脳勝負を申し出る。その一方で、彼は新しい暗殺者グレイス(スザンナ・リー)の体に爆弾を仕込み、アマタ国王の乗るボートへと送り込んだ。果たして、ドラモンドは犯罪王ピーターソンの陰謀を食い止めることが出来るのか…!?

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石油利権を巡って若きアマタ国王の命が狙われていた

謎の大富豪ピーターソンの邸宅へ招かれたドラモンド

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ピーターソンの正体は爆死したはずのウェストンだった

ドラモンドの行動を逐一監視するピーターソンたち

 とまあ、よくよく考えるまでもなく非論理的でご都合主義だらけの脚本ではあるものの、奇想天外なガジェットを含めた様々な趣向が凝らされており、さらには舞台となるロンドンやイタリアの華麗なロケーションの魅力も加わって、これが最後の最後まで観客を飽きさせない痛快な娯楽映画に仕上がっている。さすがに昨今のアクション映画と比べるとストーリー運びは大分ノロノロとしているし、ヒーローも悪人もえらく優雅でのんびりしちゃっているが、それもまた古き良き時代のスパイ映画ならではの醍醐味みたいなもんだ。あまりにもお気楽なドジを踏んで自滅するアーマとペネロピ―の最期も大爆笑。もともと『わたしのお医者さま』(55)や『恋の体温計は40度』(59)などのコメディで鳴らした、ラルフ・トーマス監督らしい茶目っ気が光っている。
 そのドクター・シリーズなどでトーマス監督と長年タッグを組んだ大物女性製作者ベティ・E・ボックスと、その兄のシドニー・ボックスがプロデュースを担当。青春ラブコメ映画『渚のデイト』(63)などで知られるデヴィッド・オズボーンと、当時新人のリズ・チャールズ=ウィリアムスが、ジミー・サングスターと共に脚本を手掛けている。
 さらに、『わたしのお医者さま』以来のトーマス監督作品には欠かせないカメラマン、アーネスト・スチュワードが撮影監督を担当。ビング・クロスビーなどのアレンジャーとして鳴らしたマルコム・ロッカイヤーが音楽スコアを手掛け、「太陽はもう輝かない」などの全米ナンバー・ワン・ヒットで有名なウォーカー・ブラザーズが主題歌を歌っている。また、『レイダース/失われた聖櫃<アーク>』(81)でオスカーを獲得したキット・ウェストが特殊効果を担当しているのも、映画ファンには興味深いところかもしれない。
 ちなみに、トーマス監督によると、もともと本作はテレビ・シリーズのパイロット版として製作されるはずだったという。

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自爆テロのために送り込まれた暗殺者グレイス(S・リー)

アマタ国王暗殺を見届けようとするアーマとペネロピ―だったが…

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コンピューター制御された巨大なチェスゲームに挑むドラモンド

チェス盤を使った死闘が繰り広げられる

 主人公ドラモンド役を演じているのはリチャード・ジョンソン。現在では『デアボリカ』(74)や『サンゲリア』(80)などのイタリア産B級ホラーでお馴染みになってしまった俳優だが、テレンス・ヤング監督がジェームズ・ボンド役の第一候補に挙げていたことからも分かるように、当時の彼は英国紳士のあらゆる粋を濃縮したような渋い二枚目スターだった。中でも、このドラモンド役は彼にとって最大の当たり役で、まさに代表作と呼んでも差し支えないだろう。彼のクールでダンディな魅力というものが、以降の出演作で生かされることがなかったのは惜しかった。
 その宿敵となるピーターソン役には、もう一つの007系犯罪アクション“フーマンチュー・シリーズ”の第1作目『怪人フー・マンチュー』(65)で正義のヒーロー、ネイランド・スミス役を演じていたタフガイ俳優ナイジェル・グリーン。これまた、ジョンソンと比べても遜色のない大人の魅力で、華麗な犯罪王を洒落っ気たっぷりに演じている。
 そして、チャーミングでセクシーな殺し屋美女コンビ、アーマとペネロピ―を演じるエルケ・ソマーとシルヴァ・コシナ。『暗闇でドッキリ』(64)などのハリウッド映画でも活躍した西ドイツ出身のソマーに、『鉄道員』(56)の清純派美少女からグラマー美女へと成長したイタリア出身のコシナという、当時のヨーロッパを代表する国際的な人気セクシー女優2人を起用出来たことは、本作の最大の強みだったと言えるかもしれない。
 その他、『ハワイアン・パラダイス』(66)でプレスリーの相手役を務めたイギリスのアイドル女優スザンナ・リー、当時まだ新人俳優だったアメリカ出身のスティーヴ・カールソン、『女王陛下の007』(69)でボンド・ガールの1人に起用されたヴァージニア・ノース、『2001年宇宙の旅』(68)のロシア人科学者役で知られるレナード・ロシター、『キャメロット』(67)の魔術師マーリン役で知られる名優ローレンス・ネイスミス、『ブラザーサン・シスタームーン』(72)の父親役などが印象深いリー・モンタギューらが出演。また、007シリーズにも何度が登場したイギリスの有名なプロレスラー、ミルトン・リードがピーターソンの手下チャンを、『007は2度死ぬ』(67)にも顔を出していた日本人女優ナガズミ・ヤスコが和服姿の殺し屋ミツコを演じている。

 

電撃!スパイ作戦
Some Girls Do (1969)
日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Granada/Network (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤2枚組)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:2/88分/製作:イギリス
※『キッスは殺しのサイン』とのカップリング

特典映像
オリジナル劇場予告編
スチル・ギャラリー
監督:ラルフ・トーマス
製作:ベティ・E・ボックス
原作:ハーマン・C・マクニール
脚本:デヴィッド・オズボーン
   リズ・チャールズ・ウィリアムス
撮影:アーネスト・スチュワード
音楽:チャールズ・ブラックウェル
出演:リチャード・ジョンソン
   ダリア・ラヴィ
   ベバ・ロンカー
   ジェームズ・ヴィリアーズ
   シドニー・ローム
   ヴァネッサ・ハワード
   ロニー・ジョーンズ
   モーリス・デナム
   ロバート・モーレー
   ユッテ・ステンスガード
   ヴァージニア・ノース
   フローレンス・デズモンド
   ジョアナ・ラムレー

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空軍の工場へ潜入した女サイボーグ(J・ラムレー)

自爆テロによって破壊された工場

休暇を楽しむドラモンド(R・ジョンソン)とフリッキー

SST1の出資者モーティマー(M・デナム)も襲われる

 こちらが『キッスは殺しのサイン』の続編。前作と同じラルフ・トーマスが監督を務め、デヴィッド・オズボーンとリズ・チャールズ=ウィリアムスがオリジナル脚本を手掛けている。が、やはり名脚本家ジミー・サングスターが抜けた穴は大きかったのかもしれない。ストーリーは行き当たりばったりだし、洒落たつもりのユーモアにもセンスが欠けている。しかも、前作に比べてコメディとアクションのバランスも悪く、ただ単に軽薄なだけの安っぽいスパイ映画となってしまった。
 今回は、英国空軍の最新戦闘機SST1の開発に携わる関係者が次々と謎の死を遂げる。調査に乗り出したドラモンドは、再び宿敵ピーターソンと対峙。ピーターソンは殺し屋の美女コンビ、ヘルガとパンドラに加えて、多数のサイボーグ美女軍団を従え、SST1の開発を阻止しようと企んでいたのだ。なぜなら、戦闘機の納期が遅れればピーターソンの元に800万ポンドの保険金が入るから。そのために、彼は音波振動によって人間や物体に打撃を与える秘密兵器インフラサウンドを開発し、テスト飛行中のSST1を破壊しようとする。
 800万ポンドを手に入れるために秘密兵器や美女サイボーグ軍団を開発するという収支計算がよく分からんのだが、それはそれでご都合主義の他愛ない娯楽映画なのだからいちいち文句は言うまい。しかし、泥臭い大衆向けドタバタ喜劇のようなギャグの連続や、ダラダラと長ったらしい説明ばかりのセリフはどうにかならなかったもんだろうかとは思う。サスペンスの緊張感は皆無だし、アクションの切れ味も鈍い。低予算丸出しのチープなセットを含め、まるでテレビのパロディ・ドラマを見ているかのようだ。これが『それゆけ!スマート』の1エピソードだったら許せるのだが、劇場用映画としてはいかがなもんであろうか。
 さらに、前作のナイジェル・グリーンに代わって、カリスマ性において遥かに劣るジェームズ・ヴィリアーズをピーターソン役に起用したのもミスキャストだった。また、コミック・リリーフとして喜劇俳優ロニー・ジョーンズをおバカな大使館員役に配したのは別に構わないのだが、本当にただ単なるボケ役に終始させてしまったのは間違った選択だ。ステレオタイプなゲイ・キャラで笑いを取ろうとするのも愚の骨頂。前作で披露した大人の粋が全て台無しにされている。
 ただ、ダリア・ラヴィにベバ・ロンカー、シドニー・ローム、ヴァネッサ・ハワード、ユッテ・ステンスガードといった、まさにユーロ・セクシー女優のオールスターが揃った女優陣のキャスティングはお見事。それだけでも一見の価値はあるだろう。また、当時まだ無名だったジョアナ・ラムレーも美女サイボーグ役で冒頭にチラリと登場。ある意味、カルト女優好きにはたまらない一本なのではと思う。

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謎の大富豪トレンソン(J・ヴィリアーズ)

ドラモンドに近づく美女ヘルガ(D・ラヴィ)

情報提供者のミス・メアリー(R・モーリー)も殺される

レディ・レンディヴィル(F・デズモンド)のパーティ

 イギリス空軍は、最新鋭の超高速戦闘機SST1の開発を進めていた。しかし、開発に携わる技術者が次々と殺害され、部品を製造する民間会社もテロの標的となる。さらには出資者の1人であるモーティマー氏(モーリス・デナム)も原因不明の自動車事故で死亡し、空軍の重要な開発工場も自爆テロで破壊された。いずれも実行犯は若い美女ばかり。その陣頭指揮を執るのは、チャーミングだが冷酷非情な女殺し屋、ヘルガ(ダリア・ラヴィ)とパンドラ(ベバ・ロンカー)の2人である。
 その頃、ドラモンド(リチャード・ジョンソン)は避暑地で休暇を楽しんでいた。彼は好奇心旺盛な若い娘フリッキー(シドニー・ローム)と知り合う。フリッキーはドラモンドの熱烈なファンで、すっかりスパイにでもなった気分でいるが、小娘になど興味のないドラモンドは少々迷惑気味。それでも、屈託のない彼女のことがどうにも憎めず、暇つぶし感覚で相手をしていた。
 すると、空軍参謀を務める友人のダンブリー卿(ニコラス・フィップス)から、SST1開発を巡る不穏な動きを調査してほしいと依頼を受ける。そのダンブリー卿の狩猟会に招かれたドラモンドは、そこでSST1開発に投資しているという謎の大富豪トレンソン(ジェームズ・ヴィリアーズ)、そして男爵婦人を名乗る妖艶な美女ヘルガと知り合う。早速、ヘルガとベッドインしたドラモンド。そこへ、彼の後を追いかけてきたフリッキーが現れる。すると、その隙にヘルガが姿をくらまし、ドラモンドは寝室の電話機に小型爆弾が仕掛けられているのを発見。ヘルガがSST1開発を阻止しようという一味の手先であることに気付く。
 ミス・メアリー(ロバート・モーリー)というゲイの料理研究家から呼び出しを受けたドラモンド。ミス・メアリーは上流階級向けに料理教室を経営しており、その顧客には空軍関係者もいた。なにか重要な情報があるのだという。しかし、フリッキーを連れて料理教室へ行ったドラモンドだったが、既にミス・メアリーは殺害されていた。部屋の中を探したドラモンドは、“ボート”“ブルーシュ”と書かれた謎のメモ書きを発見する。
 さらに、トレンソンの勧めで飛行訓練を楽しんだドラモンドだったが、そこへプロペラ機を操縦するヘルガが登場。ドラモンドの飛行機は撃墜された。間一髪で脱出したドラモンドだが、パラシュートが細工されていて開かない。しかし、なんとか強引にパラシュートを開き、無事に地上へ降り立つことが出来た。
 馴染みの美人マッサージ師ビルギットから、ブルーシュというのが男性の名前であること、他でもないトレンソンがエジプトで彼とたびたび会っているらしいことを知ったドラモンドは、一路エジプトのカイロへと向かう。現地の大使館員カルーザース(ロニー・ジョーンズ)の案内で、社交界の花形レディ・レンディヴィル(フローレンス・デズモンド)のパーティへ出席したドラモンド。
 普段は酔っぱらいのパーティ・ガールのふりをしているレディ・デズモンドだが、その正体は凄腕の女性スパイだった。彼女によると、ブルーシュは遊牧民のシークで、その素性は謎に包まれている。今夜のパーティにも来る予定だという。また、彼はクルーガーという若者の所有するレース用ボートを欲しがっているらしい。クルーガーの死んだ父親は科学者で、音波振動によって破壊的なパワーを出すインフラサウンドを開発していた。ボートにはそのインフラサウンドが搭載されており、超高速で走ることが出来るらしい。しかも、そのインフラサウンドを開発させたのは、あの犯罪王カール・ピーターソンだというのだ。
 やがて、パーティ会場へブルーシュが到着。ところが、どこからともなく現れたヘルガによって、その場で射殺されてしまった。翌朝、ドラモンドはカルーザースと共にクルーガーのもとを訪ねる。しかし、彼は既に死んでいた。一足先にやって来たパンドラによって、インフラサウンドで殺されていたのだ。パンドラはボートを奪うつもりだったが、ドラモンドたちが現れたために断念せざるを得なかった。
 その翌日、大規模なボートレースが開催され、ドラモンドとカルーザースはクルーガーのボートに乗って出場。もちろん、ヘルガとパンドラも参加している。彼女たちはレースの最中にバズーカでドラモンドらを攻撃。結局、ドラモンドとカルーザースは捕えられ、犯罪組織の秘密基地へと連れて行かれることとなる。
 その秘密基地には、無数の美女サイボーグ軍団が配置されていた。彼女たちはもともと人間だったが、機械人間に改造されていたのだ。そこで、ドラモンドは宿敵カール・ピーターソンと再会する。実は、トレンソンもブルーシュもピーターソンが変装した姿だったのだ。彼はSST1の納期を遅らせることで、800万ポンドもの保険金を手に入れようと画策していたのである。さらに驚くことに、あのフリッキーもピーターソンの手下だった。
 ヘルガを誘惑し、その隙になんとか一人脱出することが出来たドラモンド。しかし、ピーターソン一味はインフラサウンドを使って、SST1のテスト飛行を妨害しようとしていた。人間の感情が残っているという欠陥品のサイボーグ7号(ヴァネッサ・ハワード)、そして実はCIAスパイだったフリッキーの協力を得て、ドラモンドはピーターソンの野望を打ち砕くべく行動に出る。

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手掛かりの男性ブルーシュがヘルガに殺される

超高速ボートを盗もうとするパンドラ(B・ロンカー)

ボートレースに出場したドラモンドとカルーザース

ヘルガとパンドラに捕らわれてしまう

 謎の大富豪トレンソンが、一目で変装だとバレテしまうのがなんとも情けない。もう、見るからに不自然なかつらと付け髭。これを見破れなかったドラモンドは、調査員としていかがなもんなのだろうか(笑)。他にも、初歩的な突っ込みどころは満載。脚本も演出もまるで手抜き仕事といった印象は否めないだろう。これはなんとも痛い。
 主要スタッフは前作とほぼ一緒。全体的に安っぽさを覆い隠しようがないような出来栄えだが、キット・ウェストによる特殊効果はそれなりに見栄えが良い。中でも、プロペラ機による空中戦シーンはまずまずの仕上がり。また、飛行中に旅客機のドアを開いて犠牲者を外へ放り投げてしまうシーンも、なかなか
迫力があって面白かった。
 音楽は前作のマルコム・ロッカイヤーに代わって、ポップスやイージー・リスニングのアレンジャーとして知られるチャールズ・ブラックウェルが担当。70年代に音楽プロデューサー、ビドゥーの片腕として、カール・ダグラスやティナ・チャールズなどのディスコ・アーティストを育てたリー・ヴァンダービルトが主題歌を歌っている。

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宿敵ピーターソンと再会したドラモンド

フリッキー(S・ローム)も敵方のスパイだった

ドラモンドを助けるサイボーグ7号(V・ハワード)

秘密兵器インフラサウンドを破壊しなければならない

 前作のエルケ・ソマーとシルヴァ・コシナに代わって、美しき女殺し屋コンビのヘルガとパンドラを演じているのは、イスラエル出身のエキゾチック美女ダリア・ラヴィとユーゴスラヴィア出身のコケティッシュ美女ベバ・ロンカー。どちらも、当時はハリウッドにヨーロッパにと国際的な活躍を繰り広げていた人気セクシー女優だ。ダリア・ラヴィもエルケ・ソマーと同じく西ドイツを基盤にしていたこと、シルヴァ・コシナもベバ・ロンカーと同じ旧ユーゴスラヴィアの出身だったことを考えると、これはちゃんと計算されて選ばれたキャスティングだったのかもしれない。
 そして、犯罪王ピーターソン役を演じるジェームズ・ヴィリアーズ。主にイギリスのテレビのコメディ・ドラマで親しまれた脇役俳優で、『007/ユア・アイズ・オンリー』(81)ではジェームズ・ボンドの親友ビル・タナ―役を演じていた人。個性的な性格俳優ではあるのだが、スパイ映画の悪役としてはカリスマ性に乏しく、正直なところ役不足という印象は否めない。
 また、本作にはモーリス・デナムにロバート・モーリーというイギリスを代表する名クセモノ俳優が顔を出しているのだが、いずれもなぜわざわざこの役に彼らを!?と思わず首を傾げてしまうような、とてもとても小さな役をあてがっている。モーリス・デナムなんて、出てきた途端に殺されてしまうんだから驚き。もうちょっと上手い使い方があったのではなかろうか。
 そうした中、一際フレッシュな輝きを放っていたのが、ドラモンドにまとわりつくお転婆少女フリッキー役のシドニー・ローム。アメリカ出身でありながらヨーロッパを基盤にし、『個人生活』(74)や『危険なめぐり逢い』(75)などで日本でも人気の高かったブロンド美女。本作の撮影当時はまだ17歳で、とにかくキラキラと輝かんばかりに愛くるしい美少女ぶりを見せてくれる。
 そのほか、ハマー・ホラー『恐怖の吸血美女』(71)のカーミラ役で有名なユッテ・ステンスガード、『吸血蛾クレア』(67)など英国ホラーで活躍した美女ヴァネッサ・ハワード、戦前の有名な舞台女優フローレンス・デズモンド、イギリステレビ界の名喜劇俳優ロニー・ジョーンズなどが登場。また、人気テレビドラマ『アブファブ』でイギリスを代表する毒舌コメディエンヌとなったジョアナ・ラムレーが、冒頭の自爆テロを実行するサイボーグ美女役を演じている。当時、彼女は『女王陛下の007』にも出演していたのだが、どちらの作品も同じパインウッドスタジオで撮影されていたのだそうだ。

 

モナリザの恋人
On a vole la joconde (1966)
日本では1970年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2004 C'est la Vie DVD (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:フランス語/字幕:英語/地域コード:2/104分/製作:フランス・イタリア

特典映像
フォト・ギャラリー
監督&キャスト バイオグラフィー
監督:ミシェル・ドヴィル
製作:オッタヴィオ・ポッジ
脚本:ニーナ・コンパネーズ
   ミシェル・ドヴィル
   オッタヴィオ・ポッジ
撮影:マッシモ・ダラマーノ
音楽:カルロ・ルスティケッリ
出演:マリナ・ヴラディ
   ジョージ・チャキリス
   マーガレット・リー
   ジャン・ルフェーヴィル
   アルベルト・ボヌッチ
   アンリ・ウィロージュ
   ポール・フランクール
   ジャック・エシャンティロン
   ジェス・ハーン
   ミーノ・ドーロ
   ウンベルト・ドルシ

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世界を股にかける美術品泥棒ヴァンサン(G・チャキリス)

ヴァンサンは額縁職人ルメルシエのもとへ弟子入りをする

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ターゲットはルーヴル美術館の至宝「モナリザの微笑」

モナリザと瓜二つの美女を目撃するヴァンサン

 スパイ映画と非常に近い魅力のあるのが泥棒映画。中でも、60年代の泥棒映画というのは、お洒落でポップでキュートな作品が多かった。ブレイク・エドワーズ監督の『ピンクの豹』(63)然り、オードリー・ヘプバーン主演の『おしゃれ泥棒』(66)然り。イタリアの『黄金の七人』(65)シリーズなんか、個人的にはその最高峰だったりする。また、この手のジャンルはフランスでも結構作られていて、ジャン=ポール・ベルモンド主演の『パリの大泥棒』(66)なんてのもあったし、ジャン・ギャバン主演の『太陽のならず者』(67)もギャング映画と泥棒映画を足して割ったような作品だった。
 で、この『モナリザの恋人』という映画。主人公はジョージ・チャキリス扮する国際的な美術品泥棒ロミオことヴァンサン。このハンサムでチャーミングな犯罪者が、こともあろうかルーヴル美術館からモナリザを盗み出そうと計画するところから物語が始まる。ところが、そんな彼が偶然にもモナリザと瓜二つの美女ニコールと出会ったことから徐々に計画は脱線。なんとかモナリザを盗み出すことに成功したヴァンサンだったが、アヴィニョンの田舎町でニコールと落ち合う約束を交わしたところ、モナリザを横取りしようとするライバルの盗賊コンビやパリ警察のおとぼけ刑事コンビがその後にゾロゾロとくっ付いて来てしまう。名画を巡って繰り広げられる三つ巴のドタバタ劇。果たして、ヴァンサンとニコールは無事に逃げおおせることが出来るのだろうか…?というスラップスティックな泥棒コメディだ。
 ルーヴル美術館の警備態勢があまりにも手薄で、いとも簡単にモナリザを盗んでしまう辺りの安直さは少々拍子抜けではあるものの、舞台を風光明媚なアヴィニョンの田舎町へ移してからの追いかけっこはなかなか痛快。ヴァンサンとニコール、泥棒のエルンストとフェタール、刑事のジェルメインとガスパールの3組が、お互いにあの手この手を使ってモナリザを奪い合っていく様子をナンセンスなギャグのつるべ打ちで描いていく。みんなどこか抜けているのがご愛嬌で、そのノホホンとした緩いスピード感が微笑ましい。
 また、当時日本でも人気だったジョージ・チャキリスとマリナ・ヴラディの主演コンビも魅力的。特にチャキリスは、この手の軟派で軽妙な二枚目役がよく似合う。2人が新たに盗賊コンビ、ロミオ&ジュリエットを名乗ってパリの街を暗躍するエンディングも洒落が効いている。まあ、見終わったらきれいさっぱり忘れてしまうタイプの映画ではあるものの、少なくとも100分ちょっとの上映時間を飽きることなく楽しめるはずだ。

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モナリザ似の美女ニコール(M・ヴラディ)に惹かれるヴァンサン

ニコールは魔術師(A・ボヌッチ)の助手として巡業に出てしまう

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ルーヴルの警備員(J・ルフェーヴィル)とチェスに興じる

トイレへ行くふりをしてモナリザを盗み出すヴァンサン

 世界を股にかける美術品泥棒ロミオことヴァンサン(ジョージ・チャキリス)がパリに現れた。彼は額縁職人レメルシエ(ポール・フランクール)のもとへ弟子入り。というのも、レメルシエはルーヴル美術館のお抱え職人だったからだ。若くて美人なレメルシエ夫人(マーガレット・リー)の誘惑を適当にかわし、師匠の仕事を手伝うふりをしてルーヴル美術館の警備体制を調べていくヴァンサン。彼の標的は名画「モナリザの微笑」だ。
 それとなく警報装置の仕組みを把握し、チェス好きの警備員(ジャン・ルフェーヴィル)とも仲良くなったヴァンサンは、モナリザのために新しい額縁を製作することとなる。そんなある日、部屋の窓から外を見た彼は、向かいの建物の窓際に立つモナリザに瓜二つの美女を発見して心奪われた。彼女の名前はニコール(マリナ・ヴラディ)といい、観光客向けの“モナリザ・ホテル”でメイドとして働いていた。
 
積極的にニコールを口説くヴァンサンだったが、これがなかなかつれない相手だった。確かにヴァンサンはハンサムで魅力的だが、所詮は額縁職人の弟子。貧しい者同士が結ばれても幸せになれない、というのがニコールの言い分だった。そんな彼女を華やかなディナーへと連れ出すヴァンサン。なぜこんなお金があるの?と首を傾げるニコールだったが、さすがに本職は美術品泥棒ですなどとヴァンサンも言い出せない。すると、ショータイムでマジックショーを披露する魔術師(アルベルト・ボヌッチ)がニコールに一目惚れし、高額のギャラを約束して助手にスカウトしてしまった。
 魔術師と共に次の公演地ダンケルクへと向かうことを決めたニコール。そんな彼女に、ヴァンサンはアヴィニョンの小さな町で3日後に待っていると伝える。しかし、その意図が分からないニコールは約束することを躊躇するのだった。そして、ニコールがダンケルクへと旅立った当日、ヴァンサンは出勤前の警備員をビストロへ呼び出してチェス遊びを始める。彼もまた、新しい額縁をルーヴルへ納めなくてはいけないので、その前に一試合しようというのだ。そして、トイレに行く振りをしてビストロを抜け出し、まんまとモナリザを盗み出すことに成功した。
 名画は手にした額縁の中。もちろん、誰もそんなこと気付きはしない。ところが、そんなヴァンサンのことを終始見張っている男たちがいた。彼らの正体はライバルの泥棒エルンスト(ジャック・エシャンティロン)とフェタール(ジェス・ハーン)。ヴァンサンが盗んだ美術品を横取りするべく虎視眈々と狙っていたのだ。しかし、ヴァンサンは彼らの追跡を上手くかわし、アヴィニョンへ向けて出発した。
 一方、パリ警察の威信をかけて捜査に乗り出した刑事ジェルメイン(ウンベルト・ドルシ)とガスパール(ミーノ・ドーロ)だったが、ずぼらな彼らは初めての大役にあまり乗り気ではない。モナリザ・ホテルの主人からメイドのニコールが蒸発したと聞いた彼らは彼女が犯人だと睨み、ダンケルクへと向かうことにする。そして、その会話を盗み聞きしていたエルンストとフェタールも、ニコールがヴァンサンの行方を知っているのではと推測するのだった。
 一足先にダンケルクへと到着したエルンストとフェタールは、マジック・ショーに出演中のニコールを誘拐。しかし、彼女のお色気にのぼせてまんまと逃げられてしまった。警察にも追われていることを知ったニコールは、行きずりのお金持ちから現金と上着を拝借。変装してアヴィニョン行きの列車切符を手に入れた。ところが、駅員の通報で刑事ジェルメインとガスパールも同じ列車へ。さらに、電話を盗み聞きしたエルンストとフェタール、さらにはニコールを奪い返したい手品師も、同じくアヴィニョン行きの列車へ乗り込むのだった。
 追手の存在に気付いたニコールは、アヴィニョン到着前に列車から脱走。近くの村で新しい服を買って着替え、馬車に乗せてもらって目的の街へ行くことにした。ところが、泥棒コンビと刑事コンビ、魔術師もニコールの脱走を知って列車を途中下車。次々とヒッチハイクで馬車に乗り込むのだが、同じ馬車に乗っている村娘の正体がニコールだとは誰も気づかなかった。
 一方、アヴィニョンの街でニコールのことを待つヴァンサンだったが、約束の日を過ぎても彼女が現れないことからローマへ向けて旅立った。その直後にニコールたちを乗せた馬車が到着。宿屋の主人の話からヴァンサンがローマへ出発したことを知ったエルンストとフェタールは車を盗んでその後を追いかけ、慌てたニコールも馬車を奪って追跡する。困った刑事コンビは自転車で、魔術師は徒歩で彼らの後を追うのだった。
 エルンストとフェタールに追いつかれたヴァンサンはモナリザを奪われてしまうものの、ニコールと再会できて上機嫌。そのまま二人で逃亡しようとする。すると、道路を封鎖していた警察から逃げてきたエルンストとフェタールが偶然にも近くに。こっそりと彼らからモナリザを奪い返したヴァンサンとニコールは、近隣の村へと見事に逃げおおせる。
 夜も更けてきたことから、地元の宿屋で部屋を借りたヴァンサンとニコール。ところが、泥棒コンビ、刑事コンビ、そして魔術師らも、次々と同じ宿屋へとやって来る。お互いに同じ場所に宿泊しているとは気付かない彼ら。だが、夜中に残飯を漁ろうとしたフェタールがヴァンサンとニコールの存在に気付いたことから、再びモナリザを巡るドタバタの争奪戦が繰り広げられることとなる。

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ずぼらな刑事ガスパール(M・ドーロ)とジェルメイン(U・ドルシ)

泥棒エルンスト(J・エシャンティロン)とフェタール(J・ハーン)

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村娘のふりをしてアヴィニョンへと向かうニコール

ニコールを待ち続けるヴァンサンだったが…

 監督のミシェル・ドヴィルは、バルドー主演の『気まぐれに愛して』(70)やミュウ=ミュウ主演の『読書する女』(88)、エマニュエル・べアール主演の『恋は足手まとい』(05)など、知的でウィットに富んだロマンティック・コメディに定評のある名匠。『女は夜の匂い』(62)や『ポーラの涙』(69)のように洗練されたミステリーにも佳作がある。ヌーヴェルヴァーグのゴダールやトリュフォーなんかと同世代の人だが、娯楽職人的な気質と芸術家としての才能を兼ね備えているという点で、フィリップ・ド・ブロカやロジェ・ヴァディムなどと共に語られるべき映画監督かもしれない。本作ではまだまだ荒削りで泥臭い部分が随所に見受けられはするものの、後半のスクリューボール・コメディ的な展開はなかなか巧みだし、登場人物の入り乱れるドタバタ劇を流暢にまとめあげている点はさすがといったところだろう。
 そのドヴィルと共に脚本を手掛けたのは、処女作“Se soir ou jamais”(61)から『ラファエルあるいは道楽者』(71)まで、ほぼ全ての作品でコンビを組んできた女流脚本家ニーナ・コンパネーズ。彼女はルネ・クレマン監督の『海の牙』(46)やジャック・ベッケル監督の『肉体の冠』(51)などで有名な名脚本家ジャック・コンパネーズの娘で、『夏の日のフォスティーヌ』(71)という青春映画の佳作を演出したこともある女性だ。また、『大遠征軍』(57)や『ハンニバル』(59)などのスペクタクル史劇で有名なイタリアのプロデューサー、オッタヴィオ・ポッジが製作と共同脚本に名を連ねている。
 他にも、『荒野の用心棒』(64)や『夕陽のガンマン』(65)でお馴染みのマッシモ・ダラマーノが撮影監督、『刑事』(59)や『ブーベの恋人』(63)で日本でも人気が高かったカルロ・ルスティケッリが音楽といった具合に、スタッフの多くがイタリア勢で固められている。そのルスティケッリだが、本作では大衆コメディ的なあか抜けないスコアに終始しており、作品全体の中でも非常に違和感のある出来栄えとなってしまった。ここはルイス・バカロフやウミリアーニのような、都会的なセンスを持ったコンポーザーに委ねるべきだったかもしれない。

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エルンストとフェタールにモナリザを奪われてしまう

楽しそうに逃亡を図るヴァンサンとニコール

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警察から逃れようと川を渡るエルンストたち

モナリザを取り戻してめでたしめでたしのはずだったが…!?

 主人公ヴァンサン役は、『ウエストサイド物語』(61)でお馴染みのジョージ・チャキリス。当時のハリウッドでは彼のような少数民族系俳優の活躍する場がまだまだ少なかったせいか、すぐに活動の場をヨーロッパへと移していた。本作のチャーミングで人懐っこい二枚目ぶりなんかはまさにハマリ役。時代が時代ならば、もっと大スターになれたのではないだろうかと残念に思う。
 そんなヴァンサンが一目惚れするモナリザと瓜二つの美女ニコールを演じるのが、『洪水の前』(54)で日本でもセンセーションを巻き起こしたロシア系フランス人女優マリナ・ヴラディ。本当にモナリザに似ているかどうかは別としても、当時の彼女は美しさの絶頂期。どちらかというと芸術映画への出演が多かった女優さんなだけに、こうしたライトな泥棒コメディのヒロインというのがまた新鮮だ。
 また、当時イタリアを中心に活躍していたイギリス出身のグラマー女優、マーガレット・リーが欲求不満気味のルメルシエ夫人役として登場。清楚なマリナ・ヴラディに代わってお色気シーンを一手に担当するのかと思われたが、残念ながら出番はほんのちょっとだけ。これは少々勿体なかった。
 その他、ルイ・ド・フュネス主演のコメディ映画の脇役として欠かせない喜劇俳優ジャン・ルフェーヴィル、『パリの空の下セーヌは流れる』(51)や『ヘッドライト』(56)などの名作に数多く出演した名脇役ポール・フランクール、『ナポリの饗宴』(54)などイタリアの大衆喜劇で活躍したアルベルト・ボヌッチ、フランスとイタリアを基盤に活躍したアメリカ人俳優ジェス・ハーン、フェリーニの『甘い生活』(60)や『81/2』(63)などにも出ていたミノ・ドーロ、トトやニノ・マンフレディのコメディ映画で脇役を務めたウンベルト・ドルシなどが登場。また、『地下室のメロディー』(63)のギャング、マリオ役で知られるアンリ・ウィロージュがルーブル美術館の館長役で顔を出している。

 

ブロンドの罠
La blonde de Pekin (1967)
日本では1969年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2010 VCI Entertainment (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/82分/製作:フランス・イタリア・西ドイツ
※『太陽のならず者』『七人の狼・タウンジャック』『Big Game』との4本立て収録

特典映像
なし
監督:ニコラス・ジェスネール
製作:レイモン・ダノン
原作:ジェームズ・ハドリー・チェイス
脚本:ニコラス・ジェスネール
   リチャード・ブレーム
   ジャック・ヴィルフリッド
撮影:クロード・ルコント
音楽:フランソワ・ド・ルーベ
出演:ミレーユ・ダルク
   クラウディオ・ブルック
   エドワード・G・ロビンソン
   フランソワーズ・ブリオン
   ジョルジア・モル
   ジャン=ジャック・デルボ
   パスカル・ロベール
   ティニー・ヨン

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パリの路上で記憶喪失の女性が発見される

女性の尻には“金京女”という感じの刺青が

 『悪女イヴ』や『その男、凶暴につき』などのハードボイルド小説で知られ、特にフランスで人気が高かったイギリスの推理作家ジェームズ・ハドリー・チェイス。これは、そのハドリー・チェイスが生み出した人気キャラクター、プレイボーイ・スパイことマーク・ガーランドを主人公にしたアクション映画である。
 パリの路上で記憶喪失の女性が発見された。女性の尻に“金京女”という刺青が彫ってあることから、彼女は中国の高名なロケット科学者の愛人エリカだと推察された。CIAはパリ在住のアメリカ人俳優マーク・ガーランドにエリカの夫のふりをさせ、彼女から機密情報を得ようとする。しかし、いち早く情報をキャッチした中国とソ連のスパイが、それぞれエリカの身柄を奪取するために暗躍。エリカをスイスへと匿うCIAだったが、敵方スパイの執拗な追跡は続く。次々と犠牲者が出る中、やがてマークはエリカの意外な正体、そして彼女が握っている“青いブドウ”という希少な宝石の存在を知ることとなる。
 前半は東西冷戦の時代を背景にしたスパイ・アクション、後半は一転して幻の宝石を巡る泥棒アドベンチャーと、一粒で2度おいしい構成となっているのが見どころだろうか。『扉の影に誰かいる』(70)や『白い家の少女』(76)などで知られるニコラス・ジェスネール監督のアクション演出はやけに野暮ったくて歯切れが悪いし、全体的に低予算がバレバレの安っぽい映像はいかんともしがたいものがあるものの、メキシコ出身のカルト俳優クラウディオ・ブルックにハリウッドの大御所俳優エドワード・G・ロビンソン、さらにはミレーユ・ダルクにジョルジア・モルという仏伊のスター女優を配した豪華なキャスティングは魅力的だ。あくまでもコアな映画ファン限定、ということでおススメしておきたい。

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CIAのダグラス(E・G・ロビンソン)は俳優マーク(C・ブルック)を雇う

ソ連のスパイが先回りしてエリカをさらおうとしていた

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ハーディ警部の協力でソ連スパイのアジトを突き止めるマーク

ソ連側からエリカを奪還することに成功した

 パリの路上で記憶喪失のブロンド女性(ミレーユ・ダルク)が発見され、市内のアメリカ病院へ担ぎ込まれた。アメリカ大使でCIAの大物ダグラス(エドワード・G・ロビンソン)は、女性の尻に“金京女”という漢字の刺青が彫られていることから、彼女が中国の有名なロケット兵器開発者の愛人エリカ・オルセンであると確信する。中国にいるはずのエリカがなぜパリで発見されたのか?詳しい事情を探り、中国の武器開発に関する情報を得るため、ダグラスはパリ在住のアメリカ人俳優マーク・ガーランド(クラウディオ・ブルック)を雇うことにする。マークの役割は、エリカの夫のふりをして24時間付き添い、彼女の信頼を得ることで情報を引き出すことだ。
 しかし、エリカがパリにいることは中国やソ連の諜報機関の耳にも入っていた。早速、東側のスパイたちが動き始める。ソ連はエリカの身柄を拘束すること、中国はエリカを抹殺することが目的だ。マークはエリカの退院手続きをするために病院を訪れるが、既にソ連側のスパイが先回りしていた。
 たまたま居合わせた看護婦ペギー(ジョルジア・モル)、さらにはソ連側の動きを察知したハーディ警部(カール・スチューダー)の協力を得て、ソ連スパイの隠れ家からエリカを奪い返すことに成功したマーク。その足でスイスへと向かい、ダグラスの用意した完全警護体制の別荘へとエリカを避難させる。その移動中に、エリカは“青いブドウ”という言葉をうわごとで繰り返していた。
 やがて意識を取り戻したエリカだが、マークとダグラスの電話を秘かに盗聴するなど、不可解な行動を見せる。一方で、“青いブドウ”のことを調べていたマークは、それが中国原産の幻のサファイアのことであることを知った。マークはエリカがその“青いブドウ”の在り処を知っているのではないかと疑う。
 その頃、エリカの行方を捜してソ連と中国のスパイは躍起になっていた。ダグラスの秘書モニカ(パスカル・ロベール)を拷問・殺害してスイスの別荘を探り当てたソ連のスパイ、スメルノフ(ウェルナー・シュワイエル)だったが、中国側は一足先に暗殺者を送り込んでいた。CIAは全く気付いていていない。マークに惹かれたペギーはエリカへ嫉妬し、彼女の真似をしてブロンドのかつらを被っていた。すると、それを中国の暗殺者がエリカだと勘違いして射殺してしまう。
 CIAはこの不測の事態を利用することにした。つまり、エリカが殺されたことにして、彼女に黒髪のかつらを被せてペギーのふりをさせようというのだ。この計画は成功し、ソ連と中国のスパイはエリカが死んだものと思って去っていく。これでお役御免となるはずのマークだったが、彼はすっかり“青いブドウ”に心を奪われていた。なんとしてでも手に入れたい。そこで、彼はエリカを脅迫して“青いブドウ”を手に入れようとする。白状しなければ、生きていることをソ連や中国のスパイにバラすというのだ。
 やがて、すっかり意気投合するようになったエリカとマーク。しかし、やはりエリカは一枚上手だった。マークがダグラスに秘密で宝石探しすることをベラベラ喋っていると、彼女は仲間を使ってその言葉をテープにレコーディングしていたのだ。自分を裏切るようなことをすれば、CIAにテープを持ち込むと。さらに、彼女は意外な事実をマークに告白する。それは、彼女がエリカではなく妹のクリスティーヌであること、そして姉妹を使って中国・ソ連・アメリカのスパイを出し抜いた張本人が彼女たちの父親オルセン氏(ジャン=ジャック・デルボ)だということだ。
 クリスティーヌがエリカのふりをすることで、中国の諜報機関の目はパリへと注がれる。その隙を狙って、本物のエリカ(フランソワーズ・ブリオン)は宝石“青いブドウ”を盗んで中国国外へ逃亡するというわけだ。エリカは香港へと到着する予定である。“青いブドウ”を売り払った金の一部を山分けしてもらうという約束で、マークはクリスティーンと共に香港へと向かう。だが、彼らの計画はCIAやKGB、中国にも既に漏れており、各国のスパイが香港へと結集していた…。

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意識を取り戻したエリカ(M・ダルク)

看護婦ペギー(G・モル)はマークに惹かれていた

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ダグラスの秘書モニカ(P・ロベール)を拷問するソ連スパイ

エリカと間違えられたペギーが射殺された

 ハドリー・チェイスの映画化と言えば、ジョセフ・ロージーの『エヴァの匂い』(60)とかジュリアン・デュヴィヴィエの『めんどりの肉』(63)、ロバート・アルドリッチの『傷だらけの挽歌』(71)、パトリス・シェローの『欄の肉体』(73)辺りが有名だが、その大半がフランス映画だったりする。ダークでノワールなタッチがフランス人の琴線に触れるのかもしれない。本作なんかは、その中でも珍しくライトなエンターテインメントを志向しているわけだが、あまり成功しているとは言い難い。80年代には同じく007スタイルでハドリー・チェイス作品を料理したレプスキー・シリーズってのもあったが、そういえばあちらもイマイチな出来栄えだった。
 ニコラス・ジェスネール監督と共に脚本を手掛けたのは、『大混戦』(65)や『グランド・バカンス』(68)などルイ・ド・フュネス主演のドタバタ・コメディで知られるジャック・ヴィルフリッド。もう一人のリチャード・ブレームという人物は詳細不明だ。撮影のクロード・ルコントは『女は夜の匂い』や『ポーラの涙』などミシェル・ドヴィル監督作品の常連だったカメラマン。音楽には『冒険者たち』(67)や『サムライ』(67)、『さらば友よ』(68)、『ラ・スクムーン』(72)など数多くの名作を手掛け、75年に若くして急逝したものの現在でも熱狂的なファンを持つ名作曲家フランソワ・ド・ルーベが携わっている。

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ソ連と中国のスパイをごまかすためペギーに成りすますエリカ

幻の宝石“青いブドウ”を手に入れようとするマークたち

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香港へと到着したマークとクリスティーヌ

本物のエリカ(F・ブリオン)が宝石を持っているはずだったが…

 主人公マーク・ガーランドを演じているのは、メキシコが生んだ国際的な2枚目スター、クラウディオ・ブルック。ギレルモ・デ・トロ監督の『クロノス』(93)で演じた大富豪役で記憶している映画マニアも多いことだろう。当時はイタリアやフランスなどヨーロッパでも活躍しており、ジェームズ・スチュワートを彷彿とさせる甘いマスクでスパイ映画やアクション映画のヒーローを演じていた。
 そして、謎めいたブロンドの美女を演じているのが、『愛人関係』(73)や『プレステージ』(76)などで共演したアラン・ドロンとの熱愛でも有名なフランスのトップ女優ミレーユ・ダルク。個人的にはあまり好きなタイプの女優ではないものの、やはり一時代を築いた人なだけに、テレビ・ドラマ『刑事フランク・リーヴァ』(03〜04)で久々にドロンと共演した姿には感無量だった。
 さらに、ハリウッド黄金期を代表するギャング映画スター、エドワード・G・ロビンソンがCIAの大物ダグラス役で登場。その他、『唇によだれ』(59)や『左利きのレミー』(61)のフランソワーズ・ブリオン、スティーヴ・リーヴスと共演した『怪傑白魔』(59)や『バグダッドの盗賊』(61)の清純派女優ジョルジア・モル、『フレンズ/ポールとミシェル』(71)でミシェルの従姉妹アニー役を演じていたパスカル・ロベールなどが出演。また、60年代にフランスで活躍したベトナム人の女性ポップス歌手ティニー・ヨンが、中国人の女スパイ役で顔を出している。

 

盗みのプロ部隊
Ad ogni costo (1967)
日本では1969年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2004 Blue Underground (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語・フランス語/字幕:なし/地域コード:A
LL/119分/製作:イタリア・スペイン・西ドイツ

特典映像
オリジナル劇場予告編
ポスター&スチル・ギャラリー
監督:ジュリアーノ・モンタルド
製作:アリーゴ・コロンボ
   ジョルジョ・パピ
脚本:ミーノ・ローリ
原案:ミーノ・ローリ
   アウグスト・カミニート
   パオロ・ビアンキーニ
脚色:アウグスト・カミニート
   マルチェロ・フォンダート
   ホセ・A・デ・ラ・ローマ
   マルチェロ・コスチア
撮影:アントニオ・マカソーリ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジャネット・リー
   ロベルト・ホフマン
   エドワード・G・ロビンソン
   クラウス・キンスキー
   リカルド・クッチョーラ
   ジョルジュ・リゴー
   アドルフォ・チェッリ
   フッサーラ

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親友ミルフォードを訪ねたアンダース教授(E・G・ロビンソン)

教授はミルフォード(A・チェッリ)に宝石強奪計画を持ちかける

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元ナチ将校のワイス(K・キンスキー)がリーダーを任せられる

エンジニアのロッシ(R・クッチョーラ)はハイテク担当

 イタリア産泥棒映画と言えば『黄金の七人』(65)を真っ先に思い浮かべる人も多いことだろうと思うが、この『盗みのプロ部隊』も忘れちゃならない。あちらがモンドでポップな60'sサブカルチャーを象徴する作品とすれば、こちらは盗みのテクニックを細部まで丁寧に再現した本格派志向の泥棒映画。因果応報の悲惨な展開から驚きのどんでん返しを含め、観客の予想を覆す仕掛けが満載の極上エンターテインメント作品である。
 ストーリーは非常にシンプル。世界各国から集められたスペシャリストたちが、最新のセキュリティ・システム“グランド・スラム70”に守られた金庫から大量の宝石を盗み出すというもの。この一世一代の大仕事を成し遂げるために、彼らがどのように知恵を絞って綿密な計画を立て、どのような難関を乗り越えて実行していくのかというのを、徹底したリアリズムでスリリングに描いていくというわけだ。
 なによりも面白いのは、登場人物の個性がそれぞれに際立っており、実によく描きこまれているということ。完璧主義で生真面目なドイツ人のワイス、職人気質でプライドの高いイギリス人のグレッグ、繊細でロマンチストなイタリア人のロッシ、根拠のない自信に溢れたフランス人のジャン=ポール。見た目の冴えないロッシがブラジル人の娘に淡い恋心を抱いたり、恋愛の手練手管に長けたはずのジャン=ポールが複雑な女心に思いもよらず翻弄されたりと、各人の様々なエピソードが宝石強奪計画に絶妙な絡み方をしていくドラマ作りが非常に巧い。
 それだけに、一人また一人と悲惨な末路を辿っていく後半の壮絶な展開はなかなかの衝撃。お気楽な泥棒エンターテインメントかとタカをくくっていると、いい意味で予想を裏切られることだろう。恐らく、ジュールズ・ダッシンの『男の争い』(55)がストーリーのヒントになっているはずだ。盗みのテクニックの緻密な再現に関して言えば、あの名作と比べても遜色のない出来栄え。語り口の軽さは否めないものの、人間描写はしっかりしているし、アメリカ及びヨーロッパの名優を揃えたオールスター・キャストも見ごたえ十分。ブラジリアン・テイストの洒落たモリコーネのスコアも最高だし、リオのカーニバルを背景にした華やかなアクションも痛快だ。泥棒映画を語る上では欠かせない一本と言えるだろう。

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普段は執事をしているグレッグ(G・リゴー)は金庫破りの名人

プレイボーイのジャン=ポール(R・ホフマン)も雇われた

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リオデジャネイロに到着した一行は現場を下見する

宝石会社の秘書メアリー・アン(J・リー)に接近するジャン=ポール

 ブラジルのリオデジャネイロで30年間教鞭を執った初老の学校教師アンダース教授(エドワード・G・ロビンソン)が、故郷のニューヨークへと戻ってきた。そのまま、彼はとある会員制高級クラブへと足を運ぶ。経営者のマーク・ミルフォード(アドルフォ・チェッリ)は暗黒街を牛耳るマフィアのドンで、アンダース教授の幼馴染でもあったのだ。久々の再会を喜び合うアンダース教授とミルフォード。教授はおもむろに、今回の訪問の目的を切り出した。
 教授によると、リオデジャネイロの学校の向かいにある宝石会社には、決まって1年に2回、2月と8月の第一木曜日に大量のダイヤとエメラルドが運び込まれるというのだ。その総額は1千万ドルにもなるという。教授は30年の間に周辺の建物や下水道のルートなどを綿密に調べ上げ、宝石強奪の計画を練っていた。地味で質素な生活の中で、この大胆な企みこそが老後の楽しみとなっていたのである。そして、その計画を実行に移す事のできる4人のプロフェッショナルを、親友であるミルフォードに探すよう依頼しに来たのだ。
 真面目一筋だったアンダース教授からの意外過ぎる申し出に目を丸くするミルフォードだったが、少なくとも魅力的な話ではある。計画書に目を通したところ、勝算もありそうだ。協力することを約束したミルフォードは、世界各国の犯罪のプロの中から選り抜きの4人を推薦する。まずはニューヨーク在住のドイツ人兵士エリッヒ・ワイズ(クラウス・キンスキー)。元ナチス将校の彼は、チームを統率するのに向いていた。次がローマ在住のイタリア人技師アゴスティーノ・ロッシ(リカルド・クッチョーラ)。彼はメカニック担当だ。さらに、ロンドン在住のイギリス人執事グレッグ(ジョルジュ・リゴー)。彼は金庫破りのベテランである。そして最後が、パリ在住のフランス人プレイボーイ、ジャン=ポール・オードリー(ロベルト・ホフマン)。彼の役割は、宝石会社の秘書メアリー・アン(ジャネット・リー)を誘惑して、彼女が管理している金庫室の鍵を拝借することだった。
 今年の2月の第一木曜日は、偶然にもリオのカーニバルの前日。つまり、土日を挟んで翌週の月曜日まで宝石は金庫にしまわれることになる。決行は金曜日。カーニバルのどさくさに紛れて、警備の手薄になったところを狙おうというのだ。それぞれのルートでリオに到着した4人。教授の作成した計画書と地図を基に下調べを進めるワイス、金庫破りのハイテク機器を組み立てるロッシ、そして現物と同じタイプの金庫を使って予行演習に余念のないグレッグ。
 その一方で、ジャン=ポールは秘書メアリー・アンに接近する。女性を誘惑することなど朝飯前のジャン=ポールだったが、独身で堅物のメアリー・アンは警戒心が強く、なかなか手ごわい相手だった。心を開き始めたかと思えば、すぐに態度を硬直させる。その予測不可能な言動にジャン=ポールは戸惑うばかりだ。片や、女性には全くと言っていいほど縁のない地味な中年男ロッシは、ボート遊びを楽しむブラジル人の若い娘セトゥアッカ(フッサーラ)と親しくなり、思いがけず恋の花が咲いてしまう。初めての経験にドギマギしながらも、天真爛漫で優しいセトゥアッカに惹かれていくロッシ。
 そして、いよいよ第一木曜日。宝石会社に大量のダイヤとエメラルドが運び込まれた。その様子を秘かに見届けたワイスたちだったが、耳慣れない警報の音を聴いて思わず立ち止まる。すぐにグレッグは、それが最新鋭のセキュリティ・システム“グランド・スラム70”であることに気付いた。このシステムは、ほんの僅かな物音にも反応して警報を鳴らす。どうやら2か月前に導入されたばかりらしく、完全に想定外の展開だった。
 困り果てる一同だったが、ロッシが秘策を思いつく。つまり、一切の物音を立てずに金庫をセキュリティ圏外へ移動すれば、金庫破りの機械を使用することが出来るはずだ。だが、肝心の鍵がまだ入手できていない。メアリー・アンの複雑な乙女心に、ジャン=ポールはすっかりお手上げ状態だった。苛立ちを募らせたワイスは、彼女を殺してでも鍵を手に入れるようジャン=ポールを恫喝。ワイスから拳銃を手渡されたジャン=ポールだったが、人殺しなど完全に専門外だ。
 覚悟を決めてメアリー・アンの自宅へ向かったジャン=ポール。すると、彼女は髪をバッサリと切り落とし、普段かけているメガネも外し、すっかり色っぽく変身してジャン=ポールを出迎えた。ぎこちなさそうに身を委ねるしおらしいメアリー・アンを前に、思いがけず罪悪感を抱いてしまうジャン=ポールだったが、もはや後戻りはできない。既にリオのカーニバルは始まり、計画実行の時は刻々と迫っている。
 メアリー・アンのハンドバッグから鍵を盗み出したジャン=ポールは、シャンパンを買いに行くと言って外出し、カーニバル見物客の中に混じったワイスへ鍵を手渡す。向かいの建物からロープを使って宝石会社へ侵入するグレッグとロッシ。金庫室の鍵を開けると、水道管から鍵を落とし、それを下水道で待ち受けていたワイスが受け取る。すぐさまワイスは花屋のふりをしてメアリー・アン宅へ向かい、受け取ったジャン=ポールが鍵を彼女のハンドバッグへ戻した。
 その間に、グレッグとロッシは金庫前に張り巡らされた光センサーをかわし、次に金庫を特殊な圧力機械とフォームによって無音のまま移動させ、さらには専用の機械と爆薬で金庫の扉を開けることに成功。中から大量のダイヤモンドとエメラルドを頂戴し、首尾よく脱出することに成功した。
 一方、名残惜しそうにメアリー・アンのもとを去るジャン=ポール。どうせ結ばれることなどないと分かっているかのごとく、メアリー・アンは彼を突き放すように送り出し、華やかなカーニバルの様子を一人寂しく眺めていた。翌朝、何気なくハンドバッグの中身を見た彼女は、怪訝そうな表情を見せる。というのも、金庫室の鍵がいつもとは違うキーホルダーにかけられていたのだ。胸騒ぎを抑えながら会社へ向かった彼女は、警察官でごった返す金庫室と空っぽになった金庫を目の当たりにして愕然とする。
 その頃、4人のプロフェッショナル達は車でリオを離れようとしていた。ところが、警察の検問に引っかかってしまい、ジャン=ポールが指名手配されていたことから、一行は警察に追われることとなってしまう。さらに、宝石を独り占めしようとするミルフォードが恐るべき罠を仕掛けていた。一人、また一人と無残に命を落としていく男たち。さらには、アンダース教授の意外な協力者が姿を見せ、したたかな計画の全貌が次第に明らかとなる…。

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寝る暇を惜しんで予行演習を重ねるワイスたち

大量のダイヤとエメラルドが宝石会社に運び込まれた

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予想外のセキュリティ体制に困惑する一行

堅物のメアリー・アンはようやく心を開き始めた

 監督のジュリアーノ・モンタルドは、ノワール・タッチのギャング映画『明日よさらば』(69)や社会派ドラマの傑作『死刑台のメロディ』(71)、ファシズム政権下の同性愛を描いた文芸作『フェラーラ物語』(87)など、硬派な作風で知られるイタリアの名匠。本作のような純然たる娯楽映画を手掛けるのは珍しいかもしれない。とはいえ、リアリズムを重視したハードボイルドな演出には、モンタルドらしさが十分に垣間見えると言えよう。
 原案と脚本に携わったのが、『明日よさらば』でもモンタルド監督と組んだ脚本家ミーノ・ローリ。カーク・ダグラスとジュリアーノ・ジェンマが金庫破りのプロを演じたミケーレ・ルーポ監督の『ザ・ビッグマン』(72)にも参加していた人物だ。さらに、カルト映画『バンパイア・イン・ベニス』(86)の監督としても知られるアウグスト・カミニート、『西部の無頼人』(68)や『脱獄の用心棒』(68)などマカロニ・ウェスタンの監督として知られるパオロ・ビアンキーニが原案を、マリオ・バーヴァ監督の『モデル連続殺人』(63)や『ブラック・サバス』(63)のマルチェロ・フォンダート、『嵐を呼ぶプロファイター』(67)などの西部劇やアクション映画の監督としても鳴らしたスペインのホセ・アントニオ・デ・ラ・ローマ、『ザ・サムライ荒野の珍道中』(73)や『悪魔の墓場』(74)のマルチェロ・コスチアが脚色を手掛けている。まさに、イタリアとスペインから筋金入りのB級娯楽映画職人を集めたといった感じだ。
 さらに、『黄金の砦』(65)や『新・荒野の七人/馬上の決闘』(69)などのアメリカ産西部劇も手掛けたスペインのカメラマン、アントニオ・マカソーリが撮影監督を担当。編集にはパゾリーニやフェリーニ、レオーネ、ボロニーニなどの巨匠作品を数多く手掛けた大御所ニノ・バラーリ、美術監督には『空爆大作戦』(69)や『愛のエマニエル』(75)のアルベルト・ボッチャンティ、衣装デザインには『戦場のガンマン』(68)や『野獣暁に死す』(68)のジョルジョ・デシデーリなどが参加。また、監督兼カメラマンとして有名なマッシモ・ダラマーノがプロダクション・マネージャーとして携わっている。
 そして、音楽スコアを手掛けたのがイタリア映画界のマエストロ、エンニオ・モリコーネ。ブラジリアン・テイストを取り入れた、イージーでグル―ヴィーなラウンジ・サウンドが実に楽しい。サントラ盤CDも発売されているので、映画音楽ファンやイージー・リスニング・ファンは是非とも手に入れて欲しい。

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リオのカーニバルが始まり、作戦は決行される

ロープを使って宝石会社のビルへ侵入するグレッグとロッシ

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金庫室には無数の光センサーが張り巡らされている

ハイテク機器を使ってセンサーをかわすグレッグ

 ハリウッド黄金期を代表するギャング映画の帝王エドワード・G・ロビンソンが地味な学校教師アンダースを演じるというのは意外に思われるかもしれないが、思い返せばフリッツ・ラングの『飾り窓の女』(44)や『緋色の街』(45)でも真面目一筋の地味な中年男を演じて見事だった。ここでは、人が良さそうでいて実はなかなかの食わせ者という、なんとも美味しいキャラクターを飄々と演じて実に巧い。
 そんなアンダースの幼馴染で、抜け目のないギャングのボス、ミルフォード役を演じているのが、『007/サンダーボール作戦』(65)の悪党ラーゴ役で有名なイタリアの曲者俳優アドルフォ・チェッリ。こういう存在感も演技もスケールのデカい役者が脇にいるだけで、映画全体がピリッと引き締まるもの。出番こそ少ないものの、最初と最後でしっかりとアクの強いところを見せてくれる。
 そして、盗みのプロたちを演じるのがまた、揃いも揃って古いヨーロッパ映画ファンにはお馴染みの顔ばかり。元ナチの将校でチームのリーダー格であるワイスには、ドイツが生んだ天下の怪優クラウス・キンスキー。そのワイスとは犬猿の仲で、対照的に軟派でお気楽なプレイボーイのジャン=ポールには、『イタリア式愛のテクニック』(66)でアニタ・エクバーグやエルザ・マルティネリら豪華女優たちと愛の遍歴を演じたオーストリア人俳優ロベルト・ホフマン。ハイテクはお手のものだけど女性には初心なエンジニア、ロッシ役には、モンタルド監督の『死刑台のメロディ』でカンヌ映画祭最優秀男優賞を獲得したイタリアの名優リカルド・クッチョーラ。几帳面でプライドの高いイギリス人グレッグ役には、戦前のフランス映画で活躍した2枚目スターで、戦後はイタリアやスペインの娯楽映画に数多く出演したフランス人俳優ジョルジュ・リゴー。
 さらに、女を手玉に取るのは得意なはずのジャン=ポールを戸惑わせる堅物のオールド・ミス、メアリー・アン役には、ハリウッドを代表するトップ女優ジャネット・リー。彼女がまた、一筋縄ではいかない複雑な乙女心を巧みに演じており、単純な宝石強奪劇に厚みのあるドラマを加えている。この絶妙なキャスティングというのも、本作の大きな魅力と言って間違いないだろう。

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セキュリティ圏外へ移動させた金庫を開け始める

ついに宝石を手に入れることが出来た

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空っぽになった金庫を目の前に愕然とするメアリー・アン

リオの市外へと逃亡しようとする一行だったが…

 

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