ヨーロッパ映画 ブルーレイ レビュー

 

去年マリエンバートで
L'annee derniere a Marienbad (1960)

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(P)Geneon Universal (Japan)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(日本盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/画面比: 2.35:1/HD規格:1080p/音声: DTS-HDマスターオーディオ モノラル/言語:フランス語/字幕:日本語・英語/地域コード:ALL/93分/制作国:フランス

<特典>
・短編「スティレンの唄」(1959年・アラン・レネ監督)
・短編「世界のすべての記憶」(1956年・アラン・レネ監督)
・ジネット・ヴァンサドーによる音声解説
・ビデオ・ドキュメンタリー「アラン・ロブ=グリエ」
・メイキング・ドキュメンタリー「マリエンバードの迷路の中で」
・オリジナル劇場予告編
監督:アラン・レネ
製作:ピエール・クーロー
   レイモン・フロマン
脚本:アラン・ロブ=グリエ
   マルグリット・デュラス
撮影:サッシャ・ヴィエルニ
音楽:フランシス・セイリグ
出演:ジョルジュ・アルベルタッツィ
   デルフィーヌ・セイリグ
   サッシャ・ピトエフ

 言わずと知れたフレンチ・アートムーヴィーの傑作。去年マリエンバートで知り合ったはずの男女の駆け引きを軸に、現在と過去の時間軸が錯綜するストーリーはけっこう難解な代物だが、絢爛たる豪邸と幾何学的な庭園を流麗なカメラワークで捉えた映像や、現実と幻想の入り混じったシュールレアリスティックな演出はクセになるほど素晴らしい。まさに魅惑的な白日夢の世界といった感じだ。
 ジェネオン・ユニバーサルから発売されている日本盤ブルーレイは、UKやヨーロッパと同じスタジオ・カナル作成のマスターを使用。タイトルによってテレシネやレストアのクオリティがまちまちだったりするスタジオ・カナルだが、本作の場合はほぼ完璧と呼んで良いくらいに見事な仕上がりだ。フィルムの経年劣化やダメージが殆ど見られないのは勿論のこと、白黒のコントラストは適度に明瞭だし、細やかなディテールの再現力も文句なし。豪邸の天井を流れるようにカメラがなめていくオープニングから息を呑むような美しさである。DTS-HDにリマスターされた2.0chのモノラル音声も一切の曇りなし。実にいい仕事をしている。
 特典も十分に満足のいく内容。メイキングおよび脚本家アラン・ロブ・グリエについて2本のドキュメンタリーが収められているほか、アラン・レネ監督の手がけた短編ドキュメンタリーを2本収録している。中でも、ポリエステル製品の製造過程をカラフルなストップモーション・アニメを交えながら紹介した「スティレンの唄」は、単なる産業ドキュメンタリーの枠を超えた珠玉のアート作品。これだけ充実した内容で低価格の廉価版なのは嬉しい。

 

 

孤独の報酬
This Sporting Life (1963)

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(P)2014 Network/ITV Studio (UK)
画質★★★★★ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(UK盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/画面比: 1.66:1/HD規格:1080p/音声:ドルビー・デジタル・モノラル/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/134分/制作国:イギリス

<特典>
・オリジナル劇場予告編
・スチル・ギャラリー
・プロモ用資料(PDF)
<封入特典>
解説ブックレット(26ページ)
監督:リンゼイ・アンダーソン
製作:カレル・ライス
原作:デヴィッド・ストーリー
脚本:デヴィッド・ストーリー
撮影:デニス・クープ
音楽:ロベルト・ゲルハルド
出演:リチャード・ハリス
   レイチェル・ロバーツ
   アラン・バデル
   ウィリアム・ハートネル
   コリン・ブレイクリー
   ジャック・ワトソン
   アーサー・ロウ

 ブリティッシュ・ニューシネマの旗手だったリンゼイ・アンダーソン監督の代表作にして、'60〜'70年代の英国映画が誇る名優リチャード・ハリスの出世作。ハリス扮する無骨で乱暴なラグビー選手が下宿先の未亡人に恋をする。だが、彼は素直に愛情を表現することができず、死んだ夫への未練を残す未亡人は男に惹かれつつも抵抗感や嫌悪感を捨て去ることができない。そんな2人のお互いを傷つけあうような関係をピリピリとした緊張感で描きつつ、当時の英国社会に根強かった階級格差の壁やモラル意識の偽善を浮き彫りにしていく。地味ながらも独特の荒々しいエネルギーを持った作品だ。
 過去に米クライテリオンから素晴らしく高画質なDVDがリリースされていた本作。こちらのUK盤ブルーレイは大手テレビ局ITV系列のメーカー、ネットワークからのリリースだ。オリジナル・ネガより2K解像度でテレシネされており、フィルム独特の粒子が若干目立つものの、コントラストや再現力はクライテリオン版DVDを凌ぐほどのクオリティ。ただ、残念なのはドルビー・デジタルのモノラル音声で、部分的に聞き取りづらいだけでなくヒスノイズなども目立つ。リマスタリング処理は施されていないのは明らかだ。
 また、関連資料映像やインタビュー映像などを収録していたクライテリオン版に比べて、特典が極端に少ないのもマイナスポイント。ただ、スチル・ギャラリーは撮影舞台裏やプロモ用スチルなど4種類に分けられ、それぞれ圧倒的なボリュームの写真が収録されている。撮影秘話や作品解説などを盛り込んだブックレットも読み応えありなのだが、願わくば関係者のインタビューなどを交えたメイキング映像が欲しかった。

 

 

さらばベルリンの灯
The Quiller Memorandum (1966)

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(P)2014 Network/ITV Studio (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 2.35:1/HD規格:1080p/音声:ドルビー・デジタル・モノラル/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/制作国:イギリス

<特典>
・インタビュー集(ジョージ・シーガル、アレック・ギネス、センタ・バーガー、マックス・フォン・シドー、マイケル・アンダーソン、アイヴァン・フォックスウェル)
・オリジナル劇場予告編
・オープニング&エンディングのクレジット抜き映像
・プロダクション・スチル集
・撮影舞台裏スチル集
・ポートレート集
・プロモーション用スチル集
・プロモーション用資料集(PDF)
監督:マイケル・アンダーソン
製作:アイヴァン・フォックスウェル
原作:アダム・ホール
脚本:ハロルド・ピンター
撮影:アーウィン・ヒリアー
音楽:ジョン・バリー
出演:ジョージ・シーガル
   アレック・ギネス
   マックス・フォン・シドー
   センタ・バーガー
   ジョージ・サンダース
   ロバート・ヘルプマン
   ロバート・フレミング
   ギュンター・マイズナー

 世間では賛否両論が真っ二つに分かれる英国産スパイ映画。なにしろ、派手なアクションもなければガジェットもなし。一切の荒唐無稽を排したリアリズム志向の作品ゆえ、西ドイツの地下に潜伏するネオナチ集団を追い詰めるというストーリーにも殆ど緊張感やカタルシスが存在しない。いわゆる007的なスパイ・アクションを期待すると大きく肩透かしを食らうことだろう。
 しかし、冷戦時代の日常生活に直結した地道な諜報活動の世界を少なからず知っている筆者にとっては、確かに娯楽性には乏しいけれどそれなりに説得力のある内容だし、西ベルリンでのロケ撮影を最大限に有効活用したアダルトでスタイリッシュなビジュアルも魅力的。ヒロインを演じるセンタ・バーガーの惚れ惚れとするような美しさも絶品である。
 で、イギリスのNetworkレーベルから発売されたブルーレイなのだが、正直なところ画質的には玉石混合。素材のキズやホコリなどはほとんど見受けられないものの、フィルム特有の粒子が全体的に目立ちすぎており、明るいシーンでは気にならないのだが、一転してナイト・シーンになると画面のざらついた粗さが目障りに感じられてしまう。ドルビーデジタルのモノラル音声はまずまずといったところ。
 しかし、本BDの最大の見どころは旧DVDと比べ物にならないくらいボリューム感のある特典だ。メイン・キャストおよび監督と製作者のインタビュー映像は、恐らく当時テレビのプロモーション用に撮影されたもの。特にスター陣はプライベートのことについても語っており、クラシック映画ファンにはとても興味深い。また、自ら戦前のベルリンで育ったというアンダーソン監督はドイツ人やドイツ文化への愛着を力説しており、本作の戦後ドイツへ注がれるある種の暖かな眼差しの意味が理解できる。
 さらに、4種類にカテゴライズされたスチル・ギャラリーの膨大なこと!特にプロダクション・スチルと撮影舞台裏スチルは、それぞれ軽く100枚以上にも及ぶ貴重な写真が収められている。恐らくスチル・カメラマンはセンタ・バーガーにイチコロだったのだろう、彼女の撮影舞台裏スチルは数が多いだけでなく、どれもそのままポートレートに使えそうなくらいに美しい。

 

 

シシリアン
Le clan des Siciliens (1969)

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(P)2014 20th Century Fox (Japan)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 2.35:1/HD規格:1080p/音声: DTS-HDマスターオーディオ1.0chモノラル/言語:フランス語/字幕:日本語・英語/地域コード:A/125分/制作国:フランス・アメリカ

<特典>
・英語バージョン本編
・メイキング・ドキュメンタリー「シシリアンの舞台裏」
・フレッド・カヴァイエによるイントロダクション
・隠しコマンド(マルセイユでのプレミア試写を伝えるニュース映像)
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
製作:ジャック・S・ストラウス
原作:オーギュスト・ル・ブルトン
脚本:アンリ・ヴェルヌイユ
   ジョゼ・ジョヴァンニ
   ピエール・ペルグリ
撮影:アンリ・ドカエ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジャン・ギャバン
   アラン・ドロン
   リノ・ヴァンチュラ
   イリーナ・デミック
   アメデオ・ザナーリ
   シドニー・チャップリン
   エリザ・チェガーニ
   マルク・ポレル

 ジャン・ギャバンにアラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラという当時のフランス映画界を代表する超大物スターが三つ巴の初共演を果たしたフレンチ・ノワール。ギャバンが大胆な宝石強奪を計画するシシリアン・マフィアのボス、ドロンが一味に協力するフランス人の殺し屋、そしてヴァンチュラが彼らを追い詰める刑事を演じている。
 アクションやサスペンスよりも洒落た雰囲気とディテールを重視、滅多なことで暴力を振るったり人を殺したりしない。近頃の物騒なクライム・ムービーに比べると平和そのものな作品だが、この酸いも甘いも噛み分けた大人にしか分からない渋さとダンディズムこそ、当時のフレンチ・ノワールの醍醐味。ほろ苦さと哀愁の漂うクライマックスも余韻を楽しむのにもって来いだ。
 ヨーロッパ盤ブルーレイと同一マスターを使用した本作。もともと、20世紀フォックスの出資で企画された米仏合作映画だった。画質はブルーレイとして平均レベル。全体的にディテールの細やかさが不足しているように感じるが、過去のDVDに比べれば格段のレベルアップと言えよう。DTS-HDにリマスターされた音声も良好。概ね満足できるクオリティだ。
 特典映像も納得の充実ぶり。まずは、アメリカ公開用に作られた英語バージョンがフルで収録されている。実はこれ、米国サイドにオリジナルネガから渡さねばならなかったため、フランス語版と並行して別撮りされていた。なので、英語が苦手だったギャバン以外の役者が全員英語で喋っているほか、よく見ると画面の構図や編集もソックリだが微妙に違っているのだ。ただし、発音の訛りが強すぎるという理由から、ドロン以外は本人の声ではなく別人が後から声を当てているのだが。画質にも若干の違いがあり、英語バージョンの方が僅かに暖色系。特に肌の色などは、こちらの方がナチュラルに見える。
 さらに、1時間を越える見応えたっぷりなメイキング・ドキュメンタリー。ヴァンチュラ扮する刑事が実は後から作られた役だったとか、当時のダリル・F・ザナックの愛人イリーナ・デミックを起用することが出資の条件で、そのためにヒロインの出番を増やさねばならなくなったとか、次々と飛び出す撮影秘話の面白さといったらない。フランス映画ファンなら絶対に買い逃せないマスト・アイテムと言えよう。

 

 

国際殺人局K/ナンバーのない男
Innocent Bystanders (1972)

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(P)2013 Olive Films/Paramount (USA)
画質★★★☆☆ 音声★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 1.85:1/HD規格:1080p/音声: DTS-HD マスター・オーディオ1.0chモノラル/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/111分/制作国:イギリス

<特典>
なし
監督:ピーター・コリンソン
製作:ジョージ・H・ブラウン
原作:ジェームズ・マンロー
脚本:ジェームズ・ミッチェル
撮影:ブライアン・プロビン
音楽:ジョン・キーティング
出演:スタンリー・ベイカー
   ジェラルディン・チャップリン
   ドナルド・プレザンス
   ダナ・アンドリュース
   ヴラデク・シェイバル
   スー・ロイド
   ダーレン・ネスビット
   フェルディ・メイン

 キャリアの下り坂にある英国のトップ諜報員が名誉挽回の一大ミッションに挑むというスパイ・アクション。全編にお洒落なユーモアを散りばめた大人向けのスタイリッシュな活劇映画…なのだが、あからさまな低予算が完成度の足を引っ張っているという印象。「ミニミニ大作戦」('69)で痛快なカー・アクションを披露したピーター・コリンソン監督だが、本作のアクション・シーンはバイオレンス度が高いワリに見栄えがあまりよろしくない。
 また、戦争映画のアウトローや悪人役で有名なスタンリー・ベイカーは残念ながら主役向きではないし、そんな彼にライバル心を燃やす若手スパイ役のダーレン・ネスビットは地味過ぎで役不足。ジェラルディン・チャップリンもスパイ映画の美人ヒロインという柄じゃない。総じてミスキャストが目立つ作品だが、007では悪役だったドナルド・プレザンスが一癖も二癖もある上司役というのはちょっと興味深いと言えよう。ジョン・キーティングによる007タッチのグルーヴィーな音楽スコアもなかなか秀逸だ。
 で、パラマウント映画とライセンス契約しているオリーヴ・フィルムスからリリースされた米国盤ブルーレイ。ソフト化に手間暇をかけないことで知られる(?)同社だが、本作は恐らく上映用ポジ・フィルムからテレシネされているのだろう。レストア処理など一切施されていないので、フィルムの粒子の粗さが目立つだけでなく、画像の輪郭そのものがぼんやりと滲んでおり、印象としてはレーザーディスクとDVDの中間くらい。音質に関してはほぼ問題なしだが、正直なところ画質はブルーレイとしてあまり褒められたレベルではない。しかも特典映像はゼロ。オリジナル予告編すら収録されていないという体たらくだ。
 とりあえず、滅多に見れる映画ではないのでコアなスパイ映画ファンならば一見の価値ありだが、そうでなければブルーレイを買うまでのことはないかなと。CSの映画専門チャンネルで放送されるのを待つほうが賢明かも知れない。

 

 

フリック・ストーリー
Flic Story (1975)

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(P)2012 Twin/Paramount (Japan)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 1.66:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch リニアPCMモノラル/言語:フランス語/字幕:日本語/112分/制作国:フランス・イタリア

<特典>
オリジナル劇場予告編
監督:ジャック・ドレー
製作:アラン・ドロン
   レイモン・ダノン
原作:ロジェ・ボルニッシュ
脚本:アルフォンス・ブーダール
   ジャック・ドレー
撮影:ジャン=ジャック・タルベ
音楽:クロード・ボラン
出演:アラン・ドロン
   ジャン=ルイ・トラティニャン
   クロディーヌ・オージェ
   レナート・サルヴァトーリ
   マリオ・ダヴィッド
   ジャンピエロ・アルベルティーニ
   クリスティーヌ・ボワッソン

 アラン・ドロンにとって'70年代を代表する傑作の一つ。'40年代のパリを舞台に、フランス史上最悪の犯罪者と最高の刑事が激突する実話を基にしたクライム・アクション。フレンチ・ノワールらしい哀愁溢れる渋いムードとハリウッド的なバイオレンスが絶妙なバランスでブレンドされており、最後の最後まで全く飽きさせない。なによりも、狂犬のごとき極悪人ビュッソンを演じるトラティニャンの存在感と面構えが最高だし、彼と内面的にどこか通じ合うボルニッシュ刑事を演じるドロンのニヒルな魅力にもシビレる。ドロンの恋人役クロディーヌ・オージェも、ただ美人なだけじゃないのがいい。ボンドガール以降も成功した数少ない女優の一人と言えるだろう。
 恐らくフランス盤と同一のマスターを使用したであろう日本盤BDは、部分的にフィルムの劣化が確認できるものの、ほとんど気にならない程度。きめ細かい質感や落ち着いた色彩の再現力も文句のないレベルで、適度に抑えられた粒子がフィルムならではの雰囲気を保っている。リニアPCM非圧縮の音声も十分に合格点。特典がオリジナル劇場予告編だけという物足りなさを補って余りあるハイクオリティな仕上がりだ。

 

 

愛と哀しみのエリザベス
The Romantic Englishwoman (1975)

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(P)2011 Kino Lorber (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/画面比: 1.66:1/HD規格:1080p/音声:モノラル/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/制作国:イギリス

<特典>
オリジナル劇場予告編
スチル・ギャラリー

監督:ジョセフ・ロージー
製作:ダニエル・M・エンジェル
原作:トーマス・ワイズマン
脚本:トム・ストッパード
   トーマス・ワイズマン
撮影:ジェリー・フィシャー
音楽:リチャード・ハートレー
出演:グレンダ・ジャクソン
   マイケル・ケイン
   ヘルムート・バーガー
   ミシェル・ロンズデール
   ルネ・コルデホフ
   ベアトリス・ロマン
   ケイト・ネリガン
特別出演:ナタリー・ドロン

 巨匠ジョセフ・ロージーの後期作品で、日本では劇場未公開のままビデオ発売されたレアな一本。なんとなく歴史ドラマを連想してしまう日本語タイトルだが、内容的には倦怠期の作家夫婦とジゴロ稼業の詐欺師の三角関係を軸としたミステリー仕立てのブルジョワ・ドラマだ。
 主人公は裕福なベストセラー作家のフィールディング(マイケル・ケイン)と妻エリザベス(グレンダ・ジャクソン)。可愛い息子にも恵まれて一見すると幸せそうな2人だが、実のところ夫婦仲は冷め切っている。そこへ、エリザベスが旅行先のスイスで知り合ったイケメン青年トマス(ヘルムート・バーガー)が、フィールディングの秘書として転がり込む。
 この自称詩人のトマスという男、有閑マダムたちのヒモとして暮らしながら、詐欺や窃盗や麻薬売買で稼いでいる怪しげな人物。フィールディングは勝手にエリザベスとトマスの浮気を疑って妄想を膨らませ、妻へのあてつけに彼を秘書として雇うわけだが、そのことが思わぬ危険な波乱を巻き起こす…というわけだ。
 ストーリー的にはエロティック・サスペンスっぽい風情ではあるものの、そこはなんといってもロージー監督、しかも脚本はトム・ストッパードということで、主人公たちの複雑に絡んだ感情のひだに焦点を当てた心理劇的な色合いが濃厚。鏡や窓ガラスなどを巧みに使ったスタイリッシュなカメラワーク、スイスの高級ホテルやイギリスの豪邸などのロケーションを生かしたゴージャスな映像なども見応えがあり、「エヴァの匂い」や「召使」を彷彿とさせる作品に仕上がっている。
 日本ではビデオ発売されて以来、ほとんどお目にかかる機会のない作品だが、欧米では過去に何度かDVDでリリースされている。が、今のところブルーレイはこの北米盤が唯一。マスターの状態は大変良好で、本来の映像美を存分に堪能することができる。モノラル音声はリニアPCMなのかドルビーデジタルなのか、仕様が明記されていないために分からないが、こちらもクッキリと明瞭。とりあえず、特典が予告編と僅かなスチル・ギャラリーのみなのは惜しまれる。

 

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