エミリオ・ヴィエイラ Emilio Vieyra
〜アルゼンチンのカルト映画監督〜

 

 チェ・ゲバラとエヴァ・ペロンを生んだ国アルゼンチンはまた、ブラジルやメキシコと並ぶ南米最大の映画大国としても知られる。政情不安定なこともあって、日本にアルゼンチン映画が入ってくることは少なかったが、それでも83年の軍事政権退陣以降はルイス・プエンソやフェルナンド・E・ソラナス、ヘクトル・オリヴェラ、カルロス・ソリンなどの優れた映画作家が紹介されている。
 だがその一方、日本に入ってくるのはどうしても芸術映画や社会派映画ばかりに偏ってしまい、アルゼンチンの大衆娯楽映画というのは多くの日本人にとって未知の世界と言えるかもしれない。75年から83年までの軍事政権による芸術家への弾圧、民主化以降のアメリカ映画による市場の独占、そして2001年の国家的な経済破綻による打撃など、様々な苦難に見舞われてきたアルゼンチン映画界だが、かつては栄華を極めた時代もあった。
 1940年代に全盛期を迎えたアルゼンチン映画界では、50年代に入ると低予算のエクスプロイテーション映画が誕生する。後にスペインで活躍することになるレオン・クリモフスキー監督の“Marihuana”(50年)やマリオ・ソフィチ監督の“El extrano caso del hombre y la bestia”(51年)、ロマン・ヴィニョリ・バレート監督の“El vampiro negro”(53年)などがその先駆けと言えるだろう。さらに60年代に入ると、アメリカやヨーロッパなどの国外マーケットを狙った輸出ビジネスとして大量のB級映画が製作されるようになった。
 この時代のアルゼンチン映画界はかつてない表現の自由を謳歌し、露骨なセックス描写や血みどろのバイオレンス描写が氾濫する。そうした中でも特に人気を集めたのが、日本でも一世を風靡したセクシー女優イザベル・サルリを主演に据えたアルマンド・ボー監督の一連のソフト・ポルノ映画であり、エミリオ・ヴィエイラ監督の手掛けたエログロ映画の数々であった。

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Placer sangriento (1965)

La bestia desnuda (1967)

Gitano (1970)

 アルゼンチン国外では一般的に悪趣味なゲテモノ監督と見られがちなエミリオ・ヴィエイラだが、実際には青春ドラマから歌謡映画、刑事アクション、大衆喜劇など様々なジャンルを世に送り出した典型的な職人監督だった。ただ、60年代末に手掛けた一連のゲテモノ・ホラーがアメリカやヨーロッパ各国に輸出されて話題を呼んだことから、ヴィエイラ=エログロ映画というイメージが定着してしまったのだろう。
 1921年ブエノスアイレスに生まれたヴィエイラ監督は、もともと舞台俳優として活躍した人物だった。1950年頃から映画にも出演するようになったが、役者としての才能に限界を感じて廃業。舞台監督を経て、犯罪ミステリー“Dr.Candido Perez, senoras”(62年)で映画監督デビューを果たす。
 当時は世界的にB級娯楽映画の需要が高まっていた時代。アメリカのヒスパニック・コミュニティーでも、スペイン語の低予算映画が大変な人気を集めていた。主な供給源はメキシコ映画だったわけだが、アルゼンチンでもアルマンド・ボー監督がイザベル・サルリを主演に『女体蟻地獄』(58年)などのセックス映画で国際的な成功を収めていた。
 当初はアメリカのフィルム・ノワールに影響された犯罪映画を手掛けていたヴィエイラ監督も、すぐさまこのトレンドに便乗することとなる。アルマンド・ボー監督がセックスを売りにするならば、こちらはセックスとバイオレンスのてんこ盛り。その露骨で過激なエログロ描写は、たちまち内外で大きな反響を呼ぶようになった。
 その原点と言えるのが“Placer sangriento”(65年)という作品。不気味なマスクを被った怪人が、オルガンのメロディによって次々と若い女性を色情狂に変えていく。たったの10日間で撮影を終えた作品だったが、当時としてはかなり過激なヌード・シーンが話題を呼んで大ヒットを記録した。
 続いて製作された“La venganza del sexo”(66年)はさらに奇想天外な内容で、若い男女を誘拐してはセックスをさせ、そのリビドーで若さを保つというマッド・ドクターを描いた作品。その露骨なセックス描写ゆえに検閲で引っかかり、5年間ものお蔵入りを余儀なくされたものの、アメリカでも“The Curious Dr.Humpp”というタイトルで劇場公開されて大ヒットした。
 さらに、モンスターの仮面を被った歌手が舞台俳優たちを次々と殺していくという“La bestia desnuda”(67年)を経て、アルゼンチンで最初にして唯一のバンパイア映画と呼ばれる“Sangre de virgenes”(67年)を発表。こちらも劇場公開されるまでに7年間もお蔵入りになっていたが、アメリカやイギリス、イタリア、スペインなど各国で興行的な成功を収めた。
 その後、アルゼンチンを代表するアイドル歌手サンドロを主演に迎えた歌謡映画“Gitano”(70年)や青春ラブ・ロマンス“Asi es Buenos Aires”(71年)、アクション映画“La gran aventura”(74年)などのヒット作を連発して人気映画監督となったヴィエイラだったが、75年の軍事クーデター以降はほとんど作品を撮らせてもらえないという不遇の時期を迎える。かつてのエログロ映画監督という悪名が、軍事政権からは好ましく思われなかったのだろう。それでも彼などはまだマシな方で、セックス映画で荒稼ぎしたアルマンド・ボー監督とイザベル・サルリの2人は軍の処刑リストに名前が載り、国外退去まで命じられている。
 83年の軍事政権退陣によって映画界の第一線に返り咲き、『チェーンヒート』をパクった女囚映画“Correccional de mujeres”(86年)や『狼よさらば』をパクったリベンジ・アクション“Obsesion de venganza”(87年)などのB級娯楽映画を次々と手掛けたヴィエイラ監督。しかし、経済的な低迷とアメリカ映画の市場支配に喘ぐアルゼンチン映画界ではなかなかヒット作に恵まれず、国民的なシンガー・ソングライターのハイロを主演に迎えた音楽映画“Adios, abuelo”(96年)を最後にプッツリと作品が途絶えてしまった。2005年に犯罪アクション映画“Cargo de conciencia”で久々にカムバックを果たしているが、どうやらこれを最後に映画界から引退してしまったようだ。

 

La venganza del sexo (1966)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2000 Something Weird Video (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
87分/製作:アルゼンチン

映像特典
オリジナル劇場予告編
“Placer sangriento”の予告編・TVスポット集
短編ヌード映画集(3本)
B級映画ギャラリー集
監督:エミリオ・ヴィエイラ
製作:オレステス・トルッコ
    エミリオ・ヴィエイラ
脚本:エミリオ・ヴィエイラ
撮影:アニバル・ゴンザレス・パス
音楽:ヴィクトル・ブチーノ
出演:リカルド・バウレオ
    グロリア・プラト
    アルド・バルベーロ
    スサーナ・ベルトラン
    フスティン・マルティン
    ミシェル・アンヘル
    マリー・アルバーノ

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夜な夜な人々を誘拐する謎のモンスター

レズビアンのカップル

ニンフォマニアの金髪美女

 露骨なエログロ描写と奇妙キテレツなストーリー展開で悪名高いヴィエイラ監督だが、そのフィルモグラフィーの中でも特に奇想天外で悪趣味な作品として知られる伝説的カルト映画がこいつだ。主人公のハンプ博士は不老不死の研究をしているマッド・ドクター。そのために彼は性欲過剰気味な若い男女を次々と誘拐し、彼らのリビドーを刺激してバンバンとセックスをさせ、その体液を抽出しては自らの体に投与して永遠の若さを保っている。つまり、人間のオーガズムこそが不老不死の秘薬というわけだ。
 この科学的根拠の一切ない破天荒なアイディアそのものもビックリだが、全編を通じて繰り広げられるシュールで支離滅裂なストーリー展開もユニーク。ハンプ博士の手となり足となって人々を誘拐する醜悪なモンスターは、白昼堂々と薬局へ買い物に出かけるし、ストリッパーを物色するためにナイトクラブに紛れ込んだりする。もちろん、堂々と客席に座ってドリンクまで注文するのだから大した根性だ。どう考えたって、あんな化け物が街中をウロウロしていたら大騒ぎになりそうなもんなのだが、誰一人として警察に通報すらしないのだからアルゼンチンの人というのは大らかなのか鈍いのか(笑)
 しかもこのモンスター、暇なときは研究所の中庭で優雅にギターを奏でたり、患者の女性に淡い恋心を抱いたりと、その顔に似合わずやけにロマンチストだったりする。にもかかわらず、結局最後まで大した活躍もせず終わってしまうということで、その存在意義そのものが五里霧中に包まれた何とも摩訶不思議なキャラクターだ。
 摩訶不思議といえば、ハンプ博士の師匠だという“喋る脳みそ”もかなりシュールな存在。そう、脳みそが喋るのである。しかも、ビーカーの中に入ったままで。どうやら不老不死の秘密を解き明かした張本人はこの脳みそクンらしいのだが、その正体は最後まで一切明かされず。結局、なーんにも解決されぬまま物語はジ・エンドを迎えることになるのだ。

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乱交パーティに興じるヒッピーたち

ナイトクラブのストリッパー、レイチェル(G・プラト)

ハンプ博士(A・バルベーロ)と助手エンフェルメラ(S・ベルトラン)

 もちろん、ヴィエイラ作品の看板であるエロ描写も盛りだくさん。レズビアンのカップルやニンフォマニアの金髪美女、乱交パーティ好きのヒッピーなどが登場し、濃厚で過激なセックス・シーンを繰り広げる。もちろん、まだハードコア・ポルノが誕生する以前の作品なので、過激過激とは言ってもたいしたことはない。ただし、さすがにパンティの脇から堂々とはみ出している陰毛にはビックリしたが(笑)やはり、当時はビキニラインのムダ毛処理という発想はなかった・・・?って、んなわけないか。
 ちなみに、実はこれらのセックス・シーンの大半はアメリカで撮り直されている。全米での配給を手掛けたのはベティ・ペイジのヌード映画で有名な映画監督ジェラルド・イントレイター。もともとのオリジナル・バージョンにも大胆なセックス・シーンは存在したが、イントレイターはより過激な描写を追加することによって成人向け映画として売り出そうと考えたのだ。それに、オリジナルのセックス・シーンをカットした状態でフィルムを輸入すれば、税関チェックも簡単に済ませることが出来る。まさに一石二鳥というわけだ。
 また、本作では誘拐事件を追跡取材する新聞記者がヒーローとして登場、こいつが刑事顔負けの活躍を繰り広げるのはいいのだが、警察の囮捜査まで担当してしまうのはいかがなもんかと(笑)ほとんど警察と一心同体で、しまいには担当警部を差し置いて警官隊の指揮まで取ってしまう。ヒーローをカッコよく見せたいというのは分かるが、これはさすがにやり過ぎだろう。しかもこの記者、出会った女性とはとりあえず一発といった具合に下半身の方でも大活躍。囚われの身になってるくせして(笑)
 とまあ、こんな具合でエロもグロも突っ込みどころも満載。世の中にケッタイなB級映画は数あれど、これだけビザールでシュールでいかがわしい映画もなかなかないだろう。もちろん、最大級の褒め言葉である。

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事件を追跡取材する新聞記者ジョージ(R・バウエロ)

薬を買うために薬局を訪れたモンスター

刑事と一緒になって捜査する新聞記者ジョージ

 夜な夜な人々が何者かによって誘拐されるという事件が発生。レズビアンのカップルや色情狂の金髪美女、乱交パーティに興じるヒッピー集団、ゲイ・バーにたむろする男娼、そしてナイトクラブのストリッパー、レイチェル(グロリア・プラト)らが忽然と姿を消した。
 事件を取材する新聞記者ジョージ(リカルド・バウレオ)は、目撃者の証言から誘拐犯が不気味な顔をしたモンスターであることを知る。警察とタッグを組んでモンスターの行方を捜すジョージのもとへ、一本の電話が入る。それは薬局の店主からの通報で、新聞に掲載された似顔絵と瓜二つのモンスターが薬を買いに現れたというのだ。
 警官隊と共に現場へ急遽駆けつけたジョージだったが、店主は殺されてしまっていた。しかし、その手元に残された処方箋を見ると、犯人が特殊な薬品を買おうとしていたことが判明。そこで、警察はその薬品を扱っている薬局を探し出し、店員を装ったジョージが待ち伏せすることにする。薬品を必要としているならば、すぐにでも現れるはずだからだ。
 案の定、その薬品を買いに怪しげな男が来店する。ジョージは警察に連絡を入れることも忘れ、その男の後を追うため車に乗り込んだ。だが、途中で相手の車を見失ってしまった上、宇宙人のような格好をした集団に拉致されてしまう。
 薬局に現れた怪しげな男というのはハンプ博士(アルド・バルベーロ)だった。手下として使っていたモンスターの顔が割れてしまったため、自ら薬局へ薬を買いに出かけたのだ。彼は誘拐した人々のリビドーを刺激し、性的興奮を高めた状態で抽出した体液を不老不死の秘薬として研究していた。彼自身、その秘薬によって永遠の若さを保っているのだ。助手のエンフェルメラ(スサーナ・ベルトラン)は博士を愛しており、その悪事をやめさせようと説得する。しかし、自らの研究に命を捧げている博士は聞く耳を持たない。
 拉致されたジョージは、ハンプ博士の研究所に連れてこられた。病室のベッドに縛り付けられた状態で目が覚めたジョージは、隣のベッドに寝ているのが誘拐されたストリッパー、レイチェルであることを知る。レイチェルの助けで拘束具を解いたジョージは脱出を図ろうとするものの、モンスターに見つかりそうになって断念。レイチェルがモンスターの気を引くことで事なきを得た。
 一方、ジョージは容態チェックに訪れたエンフェルメラの肉体を満足させ、彼女を味方につけることに成功。警察宛ての手紙を街へ届けさせるが、寸でのところで失敗してしまう。レイチェルと愛し合うようになった彼は、なんとか2人で研究所を脱出しようと画策するのだが・・・。

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宇宙人のような連中に取り囲まれたジョージ

ジョージはレイチェルの手助けで脱出を図る

ハンプ博士の恐るべき野望とは・・・!?

 プロデューサーのオレステ・トルッコ以下、スタッフは全てヴィエイラ監督作品の常連組。特殊メイクのホルヘ・ブルーノとオルランド・ヴィローネによるモンスター・マスクはなかなか強烈なインパクトだ。また、ヴィクトル・ブチーノによるイージーでグルーヴィーな音楽もカッコいい。
 そして、主要キャストもまたヴィエイラ作品の常連ばかり。新聞記者ジョージを演じるリカルド・バウレオはヴィエイラ監督の代表作と呼ばれるラブ・ロマンス“Asi es Buenos Aires”の主演にも名を連ねている。また、ハンプ博士役のアルド・バルベーロもアルゼンチンでは有名な脇役俳優だ。
 一方、ストリッパーのレイチェルを演じるグロリア・プラトはヴィエイラ監督の秘蔵っ子的な存在。ヴィエイラ監督は彼女を積極的に売り出そうとしたようだが、演技力ゼロだったこともあって失敗に終わっている。エンフェルメラ役のスサーナ・ベルトランは40年代に活躍した女優アニタ・ベルトランの娘で、現在も映画やテレビで活躍しているようだ。
 ちなみに、追加撮影されたエロ・シーンでニンフォマニアの金髪美女として登場するのは、当時ニューヨーク界隈のヌード映画で活躍していた巨乳モデル、キム・ポープである。

 

Sangre de virgenes (1967)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2004 Mondo Macabro (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:スペイン語/字幕:英語/地域コード:ALL/77分/製作:アルゼンチン

映像特典
ドキュメンタリー
スチル・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
ヴィエイラ監督作品予告編集
監督:エミリオ・ヴィエイラ
製作:オレステ・トルッコ
脚本:エミリオ・ヴィエイラ
撮影:アニバル・ゴンザレス・パス
音楽:ヴィクトル・ブチーノ
出演:リカルド・バウエロ
    スサーナ・ベルトラン
    グロリア・プラト
    ロロ・プエンテ
    ワルター・クリチェ
    エミリオ・ヴィエイラ

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秘かに愛し合うオフェーリア(S・ベルトラン)とグスタヴォ

オフェーリアの婚礼を黙って見守るグスタヴォ

オフェーリアの夫がグスタヴォに殺害される

 上でも述べたように、アルゼンチン映画史上最初の、そして今のところ唯一の本格的バンパイア映画。奇想天外なアイディアと過激なセックスという点では“La venganza del sexo”に敵わないものの、同時代のスパニッシュ・ホラーやイタリアン・ホラーを彷彿とさせるゴシック・ムードはなかなか捨てがたい。特に19世紀を舞台にした(多分)オープニングのメロドラマ・チックな雰囲気はとても良かった。
 その後は現代に舞台を移し、お気楽な若者グループが足を踏み入れた屋敷でバンパイアに遭遇するというありきたりな物語が展開するわけだが、こちらもヴィエイラ監督お得意の露骨なエログロ描写のオンパレード。さすがに、若者たちの乱痴気騒ぎばかりを10分以上も延々と見せられるのはちょっとやり過ぎだと思うのだが(笑)

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グスタヴォの正体はバンパイアだった

自由奔放な現代の若者たち

エンジンの故障で立ち往生してしまう

 結婚を控えた女性オフェリア(スサーナ・ベルトラン)は、グスタヴォ(ワルター・クリシェ)という貴族と秘かに愛し合っていた。しかし、親の決めた結婚に逆らうことは出来ない。涙ながらに別れを告げ、結婚式を挙げたオフェーリア。しかし、初夜の晩に乗り込んできたグスタヴォは新郎を殺害し、オフェーリアの首筋に咬みついた。彼はバンパイアだったのだ。墓地に埋められたオフェーリアの棺を掘り起こし、バンパイアとして目覚めた彼女に手を差し伸べるグスタヴォ。こうして2人は永遠に結ばれたのだ。
 時は移って現代。ラウール(ロロ・プエンテ)ら気ままな若者グループは、スキーにディスコにセックスにと青春を謳歌している。真夜中に車で移動していた彼らだったが、山道でエンジンが故障して立往生してしまった。ふと見ると、近くに人里離れた屋敷が見える。一行はそこで一晩を過ごすことにした。
 屋敷内を物色していたラウールの前に不気味な顔をした執事が現れ、食事の準備が出来ているという。居間のテーブルを見ると、その言葉通り豪勢な食事とワインが用意されていた。若者たちは大喜びで食事を貪り、そのままベッドで眠りについた。
 しかし、ラウールだけは妙な胸騒ぎを覚える。誰が食事を用意していたのか?そこへ謎めいた女性が現れた。オフェーリアである。彼女の美しさに心を奪われたラウールは、無我夢中でその肉体を貪った。
 翌朝、ラウールは女性たちの姿が見えないことに気付く。彼女らは既にオフェーリアとグスタヴォの餌食になっていた。しかし、そうとは知らないラウールたちは警察に相談して屋敷を調べてもらうが、やはり何も見つからない。それどころか、昨晩の食事の跡や彼らが宿泊した痕跡まで全てきれいさっぱり消えてしまっていた。
 狐に鼻をつままれた状態のラウールたち。だが、そこへモウロウとした状態のローラ(グロリア・プラト)が戻ってきた。病院で手当てを受けるローラだったが、なかなか意識が戻らない。ラウールは彼女の兄ティト(リカルド・バウエロ)に電話をかけて呼び出した。
 その後、屋敷の近くで女性たちが発見される。いずれも命に別状はなかったが、狂ったように取り乱して手に負えない。彼女たちの首に奇妙な傷を発見したティトとラウールは、一連の出来事がバンパイアの仕業ではないかと疑る。その頃、病院ではローラの血を求めるグスタヴォの影が・・・。

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用意されていた食事を疑うことなく貪る若者たち

ラウール(R・プエンテ)の前に姿を現したオフェーリア

昨夜の出来事を警察に話すラウール

 あまりにも能天気で頭の悪い主人公たちにも恐れ入るが、セックスに気を取られて血を吸うのを忘れてしまうオフェーリアの色ボケぶりもなかなか愉快。一応、クライマックスでは望まずしてバンパイアとなった彼女の哀しみを表現しようとしているものの、思慮分別のない尻軽女に同情しろと言われてもそりゃ無理があろうというもんだ(笑)
 悪の権化たる吸血鬼グスタヴォも、見てくればかりカッコいいものの、やることは極めて地味。なんとな〜く医者のふりをしてローラに接近したりするものの、結局大して脅威になることもせず、その最期もあっけない。まあ、最後の最後にちょっとしたお楽しみは残されているものの、これとて作り手側の自己満足的なジョークに過ぎないだろう。
 その一方で、ロケ地となったリオ・ネグロ州の観光都市バリローチェ郊外のヨーロッパ的な美しい風景は絶品で、ゴシック・ムードを一層のこと高めてくれる。夜の森を徘徊するバンパイア美女という幻想的なイメージもイギリスのハマー作品や日本の『血を吸う』シリーズを彷彿とさせるものがあるし、そもそもバンパイアとセックスを直接結び付けているという点ではハマーを完全に先駆けていると言えよう。
 また、タイトル・クレジットの背景を彩るシュールでモダンなアニメーションも素晴らしい出来栄え。ヴィクトル・ブチーノの手掛けたイージー・リスニング風の艶かしい音楽スコアも十分に雰囲気を盛り上げる。確かに欠点の多い作品だが、それを補って余りある魅力も否定できないだろう。

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ローラの兄ティト(R・バウエロ)が駆けつける

ローラの血を狙って病院へ忍び込むグスタヴォ

タイトル・クレジットの背景を彩るアニメーション

 今回も主要キャストはヴィエイラ作品の常連で固められている。中でも、オフェーリア役のスサーナ・ベルトランの美しさはカラー撮影で一層際立っている。逆に、ローラ役のグロリア・プラトはモノクロ映像だと妖艶に映るが、カラー撮影となるとやけに貧相だ。
 頼りにならないヒーローのラウールを演じているロロ・プエンテは、歌手としても有名なアルゼンチンの人気スター。また、吸血鬼グスタヴォ役のワルター・クリチェは、アルゼンチンではテレビ俳優として有名らしい。
 ちなみに、エミリオ・ヴィエイラ監督が警察長官役で、プロデューサーのオレステ・トルッコが眼鏡をかけた若者役で顔を出している。

 

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