エレナ・パパリズー Elena Paparizou
今やギリシャを代表するスーパー・スター。2005年にはユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、ギリシャにとって史上初のグランプリをもたらした。受賞曲“My
Number
One”はギリシャとスウェーデンでヒット・チャートのナンバー・ワンを獲得し、ドイツやベルギー、ハンガリーなどでもトップ10ヒットを記録。全米進出も果たし、ビルボードのダンス・チャートでも8位をマークするヒットとなった。
もともと彼女はスウェーデン出身のギリシャ系移民で、アンティークというテクノ/ハウス系男女デュオのボーカリストだった。子供の頃からヒップ・ホップやハウス、ポップス、ロックなどに親しんで育ち、いわゆる伝統的なギリシャ音楽にはあまり関心はなかったようだ。
実際に彼女の作品そのものも、いわゆるギリシャ的な民族性は希薄で、ハウスやテクノといったダンス・ミュージックをベースに、ロックやラテン、シャンソン、リズム&ブルースなど様々なジャンルを寄せ集めた、非常にグローバルな雑食性が強い。逆に言えば、だからこそ国際マーケットで成功することが出来たのだろう。
また、ライブ映像などを見ていて驚かされるのは、彼女の圧倒的な歌唱力だ。スタジオ・レコーディングよりもライブ・ステージで実力を発揮できるタイプなのかもしれない。特にライブで聴かせるバラードの上手さは圧巻。ダンス・ポップ系シンガーとしてのイメージから脱却するのは難しいかもしれないが、今後の楽曲次第では本格的ボーカリストとして息の長い活躍も期待できるだろう。それだけの実力を兼ね備えたアーティストであることは間違いない。
1982年1月31日、ギリシャ系移民の子としてスウェーデンのボロースに生まれ、ヨーテボリに育った。幼い頃から体の弱い子供だったが、歌や踊り、演劇には人一倍関心が強かったという。7歳からピアノを習い、13歳の時に友人とヒップ・ホップ・バンドを結成している。
16歳の時に市内のクラブが火災に遭い、親しい友人13人が命を落とすという事件が発生。当日、彼女も一緒に誘われていたが、母親に反対されて家にいたことから命拾いをした。この事件で大きなショックを受けた彼女は、その後しばらく音楽の世界から遠ざかってしまった。
その後、知人のクラブDJから頼まれて“Opa
Opa”という楽曲のデモ・テープをレコーディングしたエレナ。その際に声をかけた幼馴染の男性ニコス・パナギオティディスと結成したデュエット・グループがアンティークだった。デビュー曲“Opa
Opa”はスウェーデンのヒット・チャートで1位を記録。たちまちヨーロッパ各国でもヒットを飛ばすようになった。ギリシャ音楽の要素が濃厚な彼らの作品はギリシャでも受け入れられ、2001年にはユーロビジョン・ソング・コンテストにギリシャ代表として出場している。
しかし、2003年にアンティークは突如として解散。ギリシャのソニー・ミュージックと契約したエレナは、シングル“Anapandites
Kliseis”でソロ・デビューを果たした。これはギリシャのヒット・チャートで1位をマーク。翌年の春にリリースされたアルバム“Protereotita”もアルバム・チャート1位を獲得し、国内だけで10万枚を超えるセールスを記録している。
そして、2005年にはユーロビジョン・ソング・コンテストでグランプリを獲得。受賞曲“My
Number One”は世界各国でリリースされ、英語版アルバム“My Number
One”も大ヒットした。さらに、その年の秋には新曲“Mambo!”がヒット・チャート1位に。この“Mambo”は翌2006年には日本を含む世界20カ国以上でリリースされ、英語アルバム“The
Game Of Love”も発売された。さらに、ギリシャ語アルバム“Iparhi
Logos”もほぼ同時期にリリース。いずれも、ギリシャではアルバム・チャートの1位に輝き、ヨーロッパ各国でも好セールスを記録している。
2007年には映画の主題歌“To
Fili Tis Zois”がギリシャのエアプレイ・チャートで1位をマーク。そして、2008年6月には待望のギリシャ語サード・アルバム“Vrisko To
Logo Na
Zo”がリリースされ、アルバム・チャートで11週連続1位を記録した。現在は、来年春の発売に向けて新作英語アルバムのレコーディングを行っているという。
ちなみに、英語盤ではHelena
Paparizouと表記されている彼女の名前だが、ギリシャ語表記そのままにエレナ・パパリズーと発音するのが正しい。Hを付けるのはキリル語を英語アルファベットに変換する際の慣わしみたいなものらしく、最近ではあまり使われることもないという。
Anapandites Kliseis
(2003) Protereotita
(2004) Euro Edition
(2005) My Number One
(2005) “Anapandites
Kliseis”の大ヒットを受けてリリースされたファースト・アルバム。ハウスやヒップ・ホップをベースにしつつ、程よく汎地中海的な民族性を散りばめた、良質のダンス・ポップ・アルバムに仕上がっています。ユーモラスなサンプリングの印象的な#1、ノスタルジックで爽やかなポップ・ナンバー#3といったシングル・カット曲をはじめ、全体的にとてもキャッチーでポップな印象。楽曲の完成度にバラつきはありますが、まずまずの出来栄えです。 アメリカ進出に当たってリリースされたマキシ・シングル。ハウス・シーンの名だたるリミキサーを揃えた、むちゃくちゃ豪華なラインナップです。どれも甲乙付けがたい出来栄えですが、原曲のイメージに忠実という意味では、ノーティ・コットーの手掛けた#2と#9がベストでしょうか。大箱向けのド派手なハウス・アンセムに仕上げたジョージー・ポージーの#4と#10、ジョシュ・ハリスによる70年代ディスコ風の煌びやかな#1と#8もお気に入り。オススメです。
(P)2003 Sony Music
(Greece)
(P)2004 Sony Music
(Greece)
(P)2005 Sony Music
(Greece)
(P)2006 Moda Records
(USA)
1,Anapandites Kliseis ビデオ
2,Treli
Kardia
3,Brosta Ston Kathrefti1,Katse Kala ビデオ
2,Protereotita
3,Antitheseis ビデオ
4,Anamniseis
5,Aksizei
6,Taksidi
Gia To Agnosto
7,Galana
8,(Eheis Kairo Na Mou Fereis)
Louloudia
9,Stin Kardia Mou Mono Thlipsi
10,Zise (Vive La Vida
Loca)
11,I Zoi Sou Zari
12,M'Aggaliazei To Skotadi
13,Matia Kai
Heili
14,Mesa Stin Fotia Sou
15,Anapandites Kliseis
16,Treli
Kardia
17,Anapandites Kliseis (SMS Remix)1,My Number One ビデオ
2,O.K.
(English Version) ビデオ
3,Let's Get
Wild
4,The Light In Our Soul ビデオ
5,I Don't Want
You Here Anymore
(Anapandites Kliseis)
6,A Brighter Day
(Antitheseis) ビデオ
7,If You
Believe Me (Anamniseis)
8,Louloudia (Ballad Version)
9,To Fos Stin
Psixi (The Light In Our Soul)
10,O.K. (Greek Version)
11,My Number
One (Karaoke)1,Josh Harris Radio Mix
3:38
2,Norty Cotto's My Radio Love Mix 3:29
3,Original Radio
2:55
4,Georgie's #1 Radio Anthem Mix 3:18
5,Mike Cruz Radio Mix
4:03
6,Chris "The Greek" Panaghi Radio Mix 3:35
7,Valentino's Radio
Epic Mix 3:02
8,Josh Harris Vocal Club Mix 6:53
9,Norty Cotto's My
Clubber Lover Mix 6:57
10,Georgie's #1 Anthem Mix 7:00
11,Mike Cruz
Vox Mix 9:44
#1&8 remixed by Josh Harris
#2&9 remixed by
Norty Cotto
#4&10 remixed by Georgie Porgie
#5&11 remixed by
Mike Cruz
#6 remixed by Chris "The Greek" Panaghi
ソロ・デビュー盤に当たるシングル。タイトル曲#1はちょっとエスニック風味を加えたユーロ・ハウスといった感じで、特にこれといった特徴もない仕上がりですね。#2も典型的なユーロ・テクノだし、#3はアンビエント風のエレクトロ・バラード。ギリシャではヒット・チャート1位の大ヒットとなったようですが、このシングルを聴く限りでは、そこまで売れる理由もイマイチ分かりかねるかも。個人的には、すごく平凡な作品という印象でした。
こちらはユーロビジョン優勝を受けてリリースされた、インターナショナル向けアルバム“My Number
One”用に製作された楽曲を集めたコンピレーション盤。当時はトルコのセルタブやウクライナのルスラーナなどがオリエンタル色の強いダンス・ナンバーで成功していたということもあり、こちらも汎地中海系サウンドが炸裂。タルカン辺りを彷彿とさせるオリエンタル・ディスコ#2と#3も良いですが、突き抜けるように爽やかなユーロ・トランス#4も大好き。
Iparhi Logos
(2006) The Game Of Love
(2006) Heroes
(2006)
(P)2006 Sony BMG Music
(Greece)
(P)2006 Bonnier Music
(Sweden)
(P)2006 Engine/Bonnier
(Sweden)
CD 1
1,Gigolo (Greek Version) ビデオ
2,The Game Of
Love (Greenglish Version) ビデオ
3,Iparhi
Logos
4,Mambo
5,Paradigmatos Hari
6,Oti Axizi Ine I Stigmes (Le
Bonheur)
7,Pote Xana (Greek Version of Let Me Let Go)
8,Meres
Enoes
9,Se Pion Na Miliso ビデオ
10,Parapono
Emovoro
11,Panta Se Perimena (Idaniko Fili)
12,Anixan I
Ourani
13,Asteria
14,You Set My Heart On FireCD 2
1,An Ihes Erthi Pio Noris ビデオ
2,Pou Pige
Tosi agapi
3,Me Theloun Ki Alli
(Greek Version of Heart Of
Mine)
4,Tipsis (You Set My Heart On Fire)
5,Pote S'ena
Antio
6,Just Walk Away (Live) ビデオ
7,Don't Speak
(Live)
8,Crazy (Live)
9,Like A Prayer (Live)
10,Why?
(Live)
11,Smooth Operator
12,Can't Help Falling In Love
(Live)
13,Outside (Live)
14,To Fos Sti Psihi/The Light In Our Soul
(Live)
15,Iparhi Logos (Remix)1,Gigolo ビデオ
2,Somebody's
Burning (Put The Fire Out)
3,The Game Of Love
4,Mambo! ビデオ
5,Carpe Diem
(Seize The Day) ビデオ
6,Teardrops ビデオ
7,Let Me Let
Go
8,Heroes
9,It's Gone Tomorrow (Iparhi Logos)
10,Heart Of
Mine
11,You Set My Heart On Fire
12,Voulez Vous?
13,Seven
Days
14,Oti Axizi Ine I Stigmes (Le Bonheur)1,Heroes ビデオ
2,Heroes
(Freerunners Radio Edit)
3,Heroes (Freerunners X10ded) ビデオ
#2&3
remixed by Wagemyr, Mansson & Jansson
2年ぶりにリリースされたセカンド・アルバム。今のところ、彼女の最高傑作と呼んでいいでしょう。素晴らしい完成度の高さです。キャッチーでダンサンブルなオリエンタル・ビートからシャンソン風バラードまで、無駄な楽曲が1つもありません。全曲オススメ。ちなみに、#6はギリシャを代表する作曲家マノス・ハジタキスが62年に発表した名曲で、フランスでダリダが歌って大ヒットさせた作品。#14はティナ・チャールズの往年のディスコ・ヒットです。
こちらはボーナス・ディスクですが、最大の目玉は#6〜#14のライブ・トラックでしょう。いずれもカバー・ソングばかりですが、#6はオリジナルのセリーヌ・ディオンも顔負けの大熱唱だし、#9はマドンナよりも遥かに上手いと思います。エレナのボーカリストとしての実力をまざまざと感じさせてくれますね。もちろん、オリジナルのスタジオ・トラックも佳曲揃い。#5では本格的なモダン・ライカにも挑戦し、素晴らしい歌声を聴かせてくれています。
世界向けにリリースされた英語版セカンド・アルバム。こちらは、よりダンス・ポップ色を前面に押し出したという印象で、中近東のアラベスクからライカ、フラメンコまで様々なスタイルを取り入れたエキゾチックでキャッチーなダンス・ナンバーが盛りだくさん。中でも#8と#12は傑作だと思います。ギリシャ語盤と比べても全く遜色のない出来栄え。こちらの方が手に入りやすいので、初心者にはオススメかもしれませんね。是非とも手に入れて下さい。
2006年ヨーロッパ陸上選手権の公式テーマソングに選ばれた大ヒット曲。ギリシャのライカとスペインのフラメンコを足して割ったような、エキゾチックで高揚感のある素晴らしいダンス・ナンバーです。トライバル感を増したクラブ・ミックスの出来栄えもカッコいいと思いますね。リミックスを担当したアルビン・ワゲミール、アラン・ヤンソンらは、スウェーデンで活動しているハウス系DJ。ハンドクラップやパーカッションの使い方がセンスあります。
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Fos (2007) |
Vrisko To Logo Na Zo (2008) |
(P)2007 Sony BMG Music (Greece) | (P)2008 Sony BMG Music (Greece) |
1,Mazi Sou ビデオ 2,Min Fevgis ビデオ 3,Le temps des fleurs 4,An Esy M'agapes 5,Fos (Shine) 6,Pou Pige Tosi Agapi (Summer Moonlight Mix) 7,I Agapi Sou Den Meni Mia Edo ビデオ (Askin Acamadigi Kapi) |
1,I Kardia Sou Petra ビデオ 2,Kita Brosta 3,Porta Gia Ton Ourano ビデオ 4,Pios 5,Agapi San Listia (Historias De Danzon Y De Arrabal) 6,Mathe Prota N'Agapas 7,Eisai I Foni 8,Pirotehnimata 9,Den Tha' Me Do 10,Papeles Mojados (with Chambao) ビデオ 11,To'Heis I De To'Heis (Hip Teens Don't Wear Blue Jeans) 12,Mi Mou Milas Gi' Antio 13,To Fili Tis Zois ビデオ |
ギリシャのヒット・チャートで初登場1位となったミニ・アルバム。一番のお気に入りは、ロックンロールにモダン・ライカの要素を加えた#2。まるで60年代のグループ・サウンズを彷彿とさせる歌謡ロックに仕上がってます。メアリー・ホプキンの名曲『哀しき天使』をダリダがカバーしたシャンソンを、さらにカバ−した#3も秀逸。同じく60年代の歌謡ロック風に仕上げたのが大正解ですね。ちなみに、#7はトルコの女性歌手Demet Akalinのカバー。 |
今年の6月にリリースされた最新アルバム。もちろん、アルバム・チャートで初登場1位を獲得しております。前作までのダンス・ポップ路線から一転、今回はバラード〜ミディアム路線の楽曲を中心に構成されており、全体的にロック色の強い作品に仕上がってます。#10ではスペインのエレクトロ系フラメンコ・バンド、チャンバオと共演。最初は何とも地味なアルバムだな〜と思いましたが、よく聴くと音作りが非常に凝っていて、なかなか質の高い作品です。 |