エディ・ロメロ Eddie Romero
フィリピンを代表するエログロ監督のもうひとつの顔

 

 小津安二郎に影響を受け、フィリピンのアカデミー賞とも言えるFAMAS賞で最優秀監督賞を2度受賞。フィリピン国内で5つもの生涯功労賞を授与されている国民的な映画監督。片や、60年代から70年代にかけて全米のドライブ・イン・シアターや場末の映画館を獣人や出目人間、グリーン・モンスターで賑わせた悪名高いZ級映画監督。その極端な二つの顔を併せ持つ人物がエディ・ロメロ監督である。
 
 フィリピン映画が殆ど紹介されない日本やアメリカでは、エディ・ロメロと言えばショッキングなエログロ・ホラーや「ランボー」もどきのC級戦争アクションを撮るキワモノ映画監督として認知されている。特にアメリカでは、密林生茂るフィリピンの孤島を舞台にしたホラー映画“ブラッド・アイランド”シリーズや、パム・グリアが主演した女囚もの“ブラック・ママ・ホワイト・ママ”('72)で一部の映画マニアの間でカルト的な人気を誇っている。
 しかし、日本では彼が製作を手がけたブラッド・アイランド・シリーズ第1弾「残酷の人獣」('59)が1966年に劇場公開されているものの、監督作としては70年代以降の「半獣要塞ドクター・ゴードン」('73)や「謎のアトランティス」('73)、「ゴリラ・フォース」('88)といった特に出来の悪い作品ばかりがテレビ放送ないしビデオ発売されているだけなので、ことさらクズ映画監督としての悪評を高めてしまっている。
 もちろん、“ブラッド・アイランド”シリーズにしろ“ブラック・ママ・ホワイト・ママ”にしろ、所詮はドライブ・イン・シアター向けの超低予算映画。芸術性などは皆無に等しいし、“良識”のある映画ファンは眉をひそめてしまうような代物かもしれない。しかし一方で、それらはドライブ・イン・シアターや場末の映画館に悪趣味な娯楽映画を求めて集まる人々の、飽くなき好奇心を満たすだけのサービス精神に溢れた作品であったことも間違いない。
 だが、エディ・ロメロのユニークなところは、こうした悪趣味な低予算映画を次々と送り出す一方で、社会性の高い良質な作品も数多く手掛けているという点であろう。彼がアメリカで最初に注目されるきっかけとなった“The Day of the Trumpet”('58/全米公開は63年)は、アメリカ統治下におけるフィリピンを舞台に、アメリカ軍とフィリピンの村人たちの交流を描くヒューマニズム溢れる戦争アクションだった。また、第2次大戦終結による日本軍からの解放で混沌とするマニラの様子をドキュメンタリー・タッチで描いた問題作“Manila, Open City”('68)も、イタリアの巨匠ロッセリーニ監督の「無防備都市」を彷彿とさせる傑作として評価が高い。実際、フィリピン国内におけるエディ・ロメロ監督の名声はこうした作品に基づいた評価であり、彼が国外マーケット向けに撮った低予算映画は実はフィリピンでは殆ど上映されていないのだ。


 こうした、ビジネスと芸術を全く別のものとして割り切った彼のバランス感覚の良さは、マルコス政権時代における彼の巧みな処世術にも端的に現れている。マルコスやイメルダに対しては決して好意的ではなかったロメロだが、あくまでも中立の立場を取り続けた。賞賛もしなければ批判もしない。マルコス主催のパーティーに招かれれば出席はするが、決して長居はしない。近づきすぎることはせず、かといって露骨に距離を置くこともしない。彼の弟子でありカンヌ映画祭の常連で、社会派の映画監督として国際的にも評価の高いリノ・ブロッカ監督は、そんなロメロをたびたび面と向かって批判したという。そんなブロッカに対してロメロは、“どうせマルコス政権はすぐに潰れるさ”と言って諭したという。理想主義者のブロッカは彼の考えを理解できなかったようだが、ロメロは“我々が短い人生ですべきことは、己の置かれた状況にいかに順応するかということだ”と語る。そうしたある種のしたたかさ、処世術の上手さこそが、彼の2面性を語る上での重要な鍵になってくると思われる。
 処世術と言うと聞こえは悪いかもしれないが、エリア・カザンやジョージ・キューカーのように激動の時代に処世術を駆使して生き抜くことによって数多くの傑作・名作を世に残した人々もいる。一概に、無責任だの卑怯だのと批判はできまい。
 ちなみに、彼とたびたび組んで低予算ホラーを撮っていたジェラルド・デ・レオン監督もまた、フィリピン国内では3度もFAMAS賞の最優秀監督賞を取った巨匠として名高い人物だった。

 エディ・ロメロは1924年7月7日、フィリピンはドゥマゲッティ市に生まれた。父親のホセ・E・ロメロは元国会議員でスペイン、イギリスの駐在フィリピン大使を歴任した名士である。裕福な家庭に育ったロメロは、12歳で作家デビューするという早熟な少年だった。映画に携わるようになったのは16歳の時。クラスメートの姉の夫で当時まだ俳優だったジェラルド・デ・レオン監督が、雑誌に掲載されていたロメロの小説を読んで興味を持ち、脚本を書かないかと持ちかけてきたのだ。
 当時のフィリピン映画界はまだ草創期にあったものの、後にピノウッド(フィリピン版ハリウッド)と呼ばれるようになるスタジオ・システムの原型は既に出来つつあり、まさにこれからという勢いのある時代だった。デ・レオン監督の処女作“Estrellita(先生)”で脚本家デビューを果たしたロメロは、学業を続けながらも次々と映画の脚本を手掛けるようになる。しかし、第2次世界大戦が勃発し、フィリピンの映画産業は一時中断を余儀なくされてしまった。
 戦後の一時期は新聞社に勤めていたロメロだったが、フィリピン映画の復興に伴い再びジェラルド・デ・レオンに誘われて脚本を書くようになった。しかし、“脚本家では食っていけない”というデ・レオンの熱心なアドバイスを受け、1947年に監督デビューを果たしたのだった。ただ、彼には大きな弱点があった。タガログ語が話せなかったのである。フィリピンには実に170もの言語が存在する。その中でも最も使用人口が多く、特に政界や財界の重要人物が使用していることから半ば公用語となっていたのがタガログ語だった(1987年に正式に公用語に認定されている)。ロメロは、そのタガログ語を全く理解できなかったのである。
 そこで解決策として用いられたのが英語だった。フィリピンは長くアメリカ統治下に置かれていた事もあり、殆どの国民が英語を話すことが出来る。撮影現場では英語、タガログ語、さらには各スタッフの故郷の言葉が飛び交い、混沌とした有様だったという。

 こうして映画監督としてのスタートを切り、興行的にも順調な成績を収めていったロメロだったが、彼自身は映画監督としての自らの技量に疑問や不安を抱いていた。そこで、ヨーロッパやアメリカを歴訪していた父親の誘いで、彼もロンドンやワシントンに滞在するようになる。ロンドンでは父親のコネでデヴィッド・リーン監督やキャロル・リード監督の撮影現場、編集現場を視察し、ローマではロベルト・ロッセリーニ監督の撮影現場にも立ち会った。そして、ワシントン滞在中にはモノグラム・ピクチャーズなど当時全盛だったアメリカのB級西部劇を初めて見る機会を得、“これだったら自分にも出来る”と考えた。
 そこで、彼はフィリピンだけでなくアメリカ市場でも通用する低予算映画を撮るべく奔走、作品さえ持ってくればアメリカで配給をしてくれるという人物を探し出した。早速フィリピンへ戻ったロメロは、各方面に渡りをつけて製作資金を調達し、ジョン・エイガーやリチャード・アーレンといったアメリカのB級映画スターをキャスティングした映画を完成させる。それが“The Day of the Trumpet”である。結局なかなか公開が決まらず、最終的には“Cavalry Command”というタイトルで1963年に上映されることになるのだが、ハリウッドで行われた業界内の試写会でこの小品に感銘を受けた人物がいた。ハリウッドを代表する名脇役俳優で、当時インディペンデント映画の監督としても活躍していたバージェス・メレディスである。どんなにギャラが安くてもいいから、次の作品に出演させてくれと熱心に説得するメレディスのために撮った作品が“Man on the Run”('58)であり、この作品のおかげでロメロはアメリカの映画業界でも認められるようになる。ちなみに、メレディスが受け取ったギャラはたったの2000ドル。さすがに彼のエージェントも腰を抜かしたという。


 その後、マニラで製作会社を立ち上げたロメロは、アメリカ市場向けに次々と低予算の戦争アクションやホラー映画を手掛けていく。その中の一つが「残酷の人獣」だったが、公開当初は殆ど話題にもならなかった。当時、彼の制作会社は戦争映画に力を入れており、お試し的に作ったホラー「残酷の人獣」にはあまり宣伝費をかけなかったのだ。後に「ドクター・モローの島」('77)、さらには「D.N.A.」('96)としてリメイクされるハリウッド・ホラーの古典「獣人島」('32)をベースにした作品で、謎の孤島“ブラッド・アイランド”で野生動物を人間化する実験を試みる科学者の狂気を、モノクロの幻想的な映像で描くシリアスなホラー映画。後のロメロ作品のようなキワモノ的な要素の低い作品だった。
 しかし、アメリカでは戦争映画はなかなか当たらず、Hemisphere Picturesの名前でニューヨークに支社まで設立したロメロは興行的な窮地に立たされてしまった。が、そこへ救世主が現れる。ニューヨーク支社に新しく入った営業マン、ジョー・オーンステインは、フィリピンの国民的大スターであるフェルナンド・ポー・ジュニアの主演する戦争アクション“Walls of Hell”('64)と「残酷の人獣」の2本立て興行を打ったのである。これが大正解だった。ドライブ・イン・シアター全盛期ということもあり、この2本立ては大ヒットを記録。その後、Hemisphere Picturesは2本立て、3本立ての興行形態で全米のドライブ・イン・シアターを席巻するようになる。
 そして、中でも特に観客の絶大な支持を得た「残酷の人獣」の続編が企画されることになる。今度は前作のデ・レオン監督とロメロ自身が共同でメガホンを取った。そうして出来上がったのが“Brides of Blood”('68)。「残酷の人獣」の舞台となったブラッド・アイランドで、再び恐ろしい出来事が起こる。今回は野生の植物や動物が太平洋の核実験の影響で突然変異し、島の住民を次々と襲っていくのだ。最大の見ものは、植物と合体してしまったような醜悪なミュータント人間。あまりにも奇想天外でシュールなモンスター・デザインが強烈なインパクトを放つ。さらに、ロメロはウィリアム・キャッスルのギミック商法に習い、“血の花嫁”というタイトルにひっかけて入場者全員に結婚指輪をプレゼントするというサービスを実施。もちろん、プラスチック製の安物の指輪ではあったものの、観客を面白がらせるには十分だった。
 さらに、ロメロは同年シリーズ3作目の“Mad Doctor of Blood Island”('68)を発表。アメリカではカルト女優として絶大な人気を誇るアンジェリーク・ペティジョンをヒロインに迎えた作品で、狂った科学者の実験によって生まれた緑色の血を流すモンスターがブラッド・アイランドを恐怖に陥れる。しかも、この緑の血は感染性があり、殺された人間はゾンビのように甦る。今回もギミック付きで、感染から身を守るための予防策として“緑の血ドリンク”が試験管に入れて配られた。映画を見る前に飲んでください、というわけだ。実際は緑色に着色しただけの水だったらしいのだが、そんな体に悪そうなものを観客に飲ませても問題視されなかったなんて、いろんな意味で古き良き時代だったのかもしれない。
 翌年にはシリーズ最終作となる“Beast of Blood”が公開される。今度は、前作で死んだと思われた科学者が、首がもげたままでも生きているモンスターの体を再び合体させるため、ブラッド・アイランドの住民を次々と毒牙にかけていく。よくよく考えれば、こんな小さな島で毎回大量に人が殺されて、よくも過疎化しないもんだ。てなわけで、今回はドライブ・イン・シアターで10ドル札をばらまくという究極のギミックを考案。もちろん本物の10ドル札ではなく、拾ってみると“Beast of Bloodには10ドル以上の価値あるショックと娯楽が満載!”とか書いてあったらしい。よく暴動が起こらなかったもんである(笑)。
 こうして“ブラッド・アイランド”シリーズに一区切りをつけたロメロは、当時アメリカのドライブ・インで人気を集めていた女囚もの映画にチャレンジを試みる。それが“ブラック・ママ・ホワイト・ママ”である。スタンリー・クレイマー監督の名作「手錠のままの脱獄」('58)を下敷きに、白人の男性(トニー・カーティス)と黒人の男性(シドニー・ポワチエ)というオリジナルの主人公の設定を、白人の女性(マーガレット・マーコフ)と黒人の女性(パム・グリア)に変更している。フィリピンのジャングルを舞台に、手錠で繋がれたまま脱走した2人の女囚を巡って警察、軍隊、革命軍、ギャング団が大乱闘を繰り広げるという作品で、この時期に量産された女囚ものの中では屈指の娯楽作品だった。

 しかし、この翌年に発表された「半獣要塞ドクター・ゴードン」('73)は酷かった。またまた「獣人島」を下敷きにしたマッド・サイエンティストものなのだが、モンスターの数で勝負をかけてきてしまったもんだから全く収拾がつかなくなってしまった。ヒョウだ、コウモリだ、ゴリラだと、片っ端からなんでも人間と合体させちゃったもんだから、しまいには何と人間を合体させたのか分らないような代物のモンスターがごろごろと登場。結局、全く焦点の定まらない奇妙な映画に仕上がってしまった。
 続く「アトランティスの謎」('73)も変な映画だった。アトランティス大陸の末裔が住むという謎の島に漂着したアメリカ人一行が遭遇する恐怖を描くのだが、基本路線はブラッド・アイランド・シリーズと殆ど変化なし。アトランティスの謎とやらが何なのかすらもイマイチ分らないまま終わってしまう。目玉の飛び出した原住民のメイクなんてのも、Del Tenney監督の迷作Z級クズ・ゾンビ映画“I Eat Your Skin”('64)そのまんまだし。ロメロ監督の悪趣味路線は明らかに失速しつつあった。

 さて、ロメロ監督はこうしてアメリカ市場向けにキワモノ映画を次々と作りながらも、その儲けでフィリピン国内向けに良質な作品を次々と生み出していった。それが先述した“Manila, Open City”('68)であり、日本でも82年の南アジア映画祭で上映された、フィリピンの歴史の転換期である20世紀初頭の混乱を描く問題作「われらフィリピン人」('76)、そして一人の老人の生涯を通じてフィリピンの近代史を描く3時間半に及ぶ壮大な叙事詩“Aguila”('79)である。
 こうして見ると、エディ・ロメロの映画監督としての2面性というか、その潔い割り切り方はアッパレとしか言いようがない。「アトランティスの謎」や「半獣要塞ドクター・ゴードン」しか知らない日本人が「われらフィリピン人」なんか見たら、同じ監督の手による作品だとは決して思わないだろう。もちろん、その逆もまた然り。しかし、その2面性こそエディ・ロメロにとって、映画業界で生き残って好きな作品を作っていくために必要な手段だったのである。

 

TERROR_IS_MAN.JPG BRIDES_OF_BLOOD.JPG MAD_DOCTOR.JPG BEAST_OF_BLOOD.JPG

残酷の人獣
Terror Is A Man (1959)

Brides of Blood (1968)

Mad Doctor of Blood Island (1968)

Beast Of Blood (1970)

(P)2003 Wellspring Media (USA) (P)2002 Image Entertainment (USA) (P)2002 Image entertainment (USA) (P)2002 Image Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆ 画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆ 画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆ 画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル/英語音声/字幕なし/地域コード:ALL/90分/製作:フィリピン・アメリカ

映像特典
エディ・ロメロ インタビュー
劇場予告編
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/英語音声/字幕なし/地域コード:1/97分/製作:フィリピン・アメリカ

映像特典
オーディオ・コメンタリー(サム・シャーマン)
エディ・ロメロ インタビュー
結婚指輪サービス プロモ・フィルム
予告編集
ビヴァリー・ヒルズ ピンナップ集
イメージ・ギャラリー
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/英語音声/字幕なし/地域コード:1/89分/製作:フィリピン・アメリカ

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オーディオ・コメンタリー(サム・シャーマン)
エディ・ロメロ インタビュー
グリーン・ブラッド・プロローグ
予告編集
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DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/英語音声/字幕なし/地域コード:1/91分/製作:フィリピン・アメリカ

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オーディオ・コメンタリー(サム・シャーマン)
未公開シーン
エディ・ロメロ インタビュー
セレステ・ヤーナル インタビュー
予告編集
スチル・ギャラリー
監督:ジェラルド・デ・レオン
製作:エディ・ロメロ
    ケイン・W・ウィン
脚本:ハリー・ポール・ハーバー
撮影:エマヌエル・I・ロハス
音楽:アリストン・アウエリーノ
出演:フランシス・レデレール
    グレタ・ティッセン
    リチャード・デア
    オスカー・キーシー
    リリア・デュラン
監督:エディ・ロメロ
    ジェラルド・デ・レオン
製作:エディ・ロメロ
製作総指揮:ケイン・W・ウィン
出演:ケント・テイラー
    ジョン・アシュレー
    ビヴァリー・ヒルズ
    エヴァ・ダレン
    マリオ・モンテネグロ
    オスカー・キーシー
監督:エディ・ロメロ
    ジェラルド・デ・レオン
製作:エディ・ロメロ
製作総指揮:ケイン・W・ウィン
脚本:ルーベン・キャノイ
撮影:フスト・パウリーニョ
音楽:ティト・アレヴァーロ
出演:ジョン・アシュレー
    アンジェリーク・ペティジョン
    ロナルド・レミー
    アリシア・アロンソ
監督:エディ・ロメロ
製作:エディ・ロメロ
製作総指揮:ケイン・W・ウィン
脚本:エディ・ロメロ
撮影:フスト・パウリーニョ
音楽:ティト・アレヴァーロ
出演:ジョン・アシュレー
    セレステ・ヤーナル
    エディー・ガルシア
    リサ・ベルモンテ
    ビヴァリー・ミラー
 “ブラッド・アイランド・シリーズ”の記念すべき第1弾。難破船の唯一の生存者である若者ウィリアムは、フィリピンにある謎の孤島“ブラッド・アイランド”に漂着する。島に住むジラード博士に救助されたウィリアムは、博士の美しい妻フランシスに魅了される。その一方で、島では奇怪な生物が徘徊し、次々と人を殺していた。その生物とは、博士の実験によって人間化したヒョウだった。ウィリアムはこのヒョウ人間にも感情のある事に気付き、何とか助けようとするのだが・・・。という典型的なマッド・サイエンティストもの。全体的にクラシカルで幻想的。古典的なユニバーサル・ホラーのような雰囲気をたたえた秀作。しかし、後半にその姿を現すヒョウ人間の特殊メイクは、今見てもかなりショッキング。それだけでも見る価値アリです。
 博士役のフランシス・レデールはルイーズ・ブルックスの「パンドラの箱」で知られ、ハリウッドでも活躍した30年代の2枚目スター。不動産業で成功して大富豪になった人で、今でもボランティア活動や人権活動などで精力的に社会貢献している事で知られる。ウィリアム役のリチャード・デアはSF映画の名作「地球最後の日」に主演した俳優。フランシス役のグレタ・ティッセンはマリリン・モンローの代役を経て、低予算のホラーやSFで活躍したブロンドの女優さん。
 エログロ満載、ジャングル・ホラーの怪作。核実験の影響で植物や生物が突然変異して人々を襲うという“ブラッド・アイランド”にやって来た調査団一行。気難しい科学者ヘンダーソン、傲慢で色情狂の妻カーラ、そしてヘンダーソンの助手で真面目な好青年ジム。人食い植物やら、巨大化した昆虫がうようよする島では、住民が正体不明の怪物のために処女を生贄に捧げていた。島の長老の美しい娘アルマに恋をしたジムは、生贄に指名された彼女を救うために怪物を倒そうとする。
 ジャバ・ザ・ハットを人の良い南国のオッサン顔にしたマヌケな怪物の造形が爆笑ものだが、どこか幻想感漂う奇妙なテイストはトッド・ブラウニングにも通じるようなセンスで、とても興味深い。
 ヘンダーソン博士役を演じるのは「ラモナ」でロレッタ・ヤングを共演した30年代の2枚目スター、ケント・テイラー。妻カーラを演じるビヴァリー・ヒルズは、「ラスベガス万才」などのプレスリー映画にお色気担当で出てた女優。“ウギャー”という色気のない悲鳴がとってもうるさい(笑)。一方のアルマ役を演じるエヴァ・ダレンはフィリピンの女優さんで、とても雰囲気のあるキレイな人。地元では有名な女優で、現在も現役で活躍している。そして、ジム役を演じるのがロメロ映画の常連ジョン・アシュリー。アメリカの低予算青春映画のスターだったが、フィリピンに魅せられ現地で自らプロダクションまで設立してしまった人。
 無意味に全裸でジャングルを駆け巡るフィリピン美女(よく見ると肌色のストッキングをちゃんと着用済)。木陰から覗くのは顔面が溶解した緑色モンスター。美女は殺され、その体は緑色に変色してしまう・・・。いろんな意味でインパクトの強烈なオープニング・シーンが痛快な南海モンスター・ホラー。ロメロ監督自身は失敗作だったと嘆いているらしいが、前作以上にゲテモノ感増量のエグイ映像満載でかなり楽しめる。
 ストーリーは単純。緑色の血を流すモンスターが徘徊するブラッド・アイランドに調査のためにやって来た若き科学者フォスター。島に住む父親を捜しにやってきたアメリカ娘シーラ。そして、独りで実家の豪邸を守る母親を訪ねてきた青年カルロス。彼らはモンスターの正体が、カルロスの家に居座る謎の科学者ロルカ博士の実験によって怪物化したカルロスの父親だということを突き止め、ロルカ博士の野望を阻止しようとする、というもの。裸のオネエチャンと内蔵グチョグチョの残酷シーン満載です。
 前作では準主演扱いだったジョン・アシュレーが主演に昇格。これでもかと酷い目に遭いまくるヒロイン、シーラを大熱演するのは「宇宙大戦争」(スター・トレック)の人気エピソード「宇宙指令!首輪じめ」に出演した事でトレッキーの間でも人気が高いセクシー女優、アンジェリーク・ペティジョン。ちなみに彼女、一時期ヘブン・セント・ジョンの名前でハードコア・ポルノにも出ていた。
 ブラッド・アイランド・シリーズ最終作。前作の続きから始まる。事件が解決して帰路につく一行。しかし、倒したはずのモンスターに襲われた船は爆破炎上。フォスター博士ただ一人が生き残る。傷の癒えた博士は、モンスターがまた現れたというブラッド・アイランドを再び訪れ、九死に一生を得たロルカ博士、そして首がもげても生きているモンスターと対峙する。
 ジャケットのモンスターが凄まじく強烈だが、本当に出てくるんですねー、こういうヤツが。そりゃもうまるっきりの悪夢。まあ、こんな風に首を持って飛び出したりはして来ないけど。子供が見たら死ぬまでトラウマになること必至の秀逸なモンスター・メイク。
 今回のヒロイン役はセレステ・ヤーナル。フォスター博士に同行して取材する女性ジャーナリスト、マイラを演じている。ヤーナルはプレスリーの「バギー万才」や「ベルベット・バンパイア」などで有名な女優さんで、モデル出身だけあってシリーズ中でもダントツの美人。しかもこの人、女優業の傍らで不動産会社の社長やったり、血統書付きの猫のブリーダーやったり、脚本家のエージェントを経営したり、ついでに大学教授の肩書きまで持っているという、とんでもないやり手の才女だったりする。映像特典に登場するヤーナルは、まさにハリウッドのセレブなおば様。“フィリピンって大好き!”と撮影当時の思い出を楽しそうに語る姿がとっても素敵です。

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