クラシック・カートゥーン大好き!
ドルーピー DROOPY

 

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 かつてアメリカでは、長編映画の前座として予告編やニュース映画などと共に短編アニメーションが上映されていた。ワーナーやユニバーサル、パラマウントなど各メジャー・スタジオは社内にアニメ制作部を設けたり、特定のアニメ制作プロダクションと提携するなどして、いわゆるアメリカン・カートゥーンの黄金期を作り上げていったのだ。
 中でもアニメ制作の最大手と呼ばれたのが、自社制作を行っていたワーナーとMGM、そしてディズニーである。アニメが本業のディズニーは当然のことながら、ワーナー・ブラザーズもバッグス・バニーやダフィー・ダック、トィーティーなど、今でもお馴染みの人気キャラクターを数多く生み出し、ディズニーに匹敵するほどの人気とクオリティを誇った。そして、当時ハリウッドで最大の映画スタジオだったMGMの生み出した人気アニメが“トムとジェリー”シリーズであり、この“ドルーピー”シリーズなわけである。

 主人公ドルーピーは胴長短足の犬バセットハウンド。いつもトロ〜ンと眠たそうな顔をして、歩くのもノロければ喋るのだってノロい。性格は至って呑気でマイペース。ところがこのドルーピー、そのおトボケぶりとは裏腹に神出鬼没で、どこへ行ってもなぜだか先回りしている。海だろうが、空だろうが、北極だろうが、ライオンの腹の中だろうが、とにかく行くところお構いなしに馳せ参ずる。
 しかも、のんびりしているように見えてすこぶる知恵者。ブルドッグのスパイクやオオカミが様々な罠を仕掛けても、まるで相手の手の内を読んでいるかのように、平気な顔をしてスルリと罠をかわしていく。そればかりか、相手の仕掛けた罠を逆に仕掛け返してみせたり、絵の中に入っていっちゃったりと、ビックリするような超人技まで見せてくれるのだ。
 このドルーピーのトボケたキャラクターと、それと相反するようなスーパー・パワーのギャップこそが、抱腹絶倒のナンセンスな笑いを生み出すのである。

 ドルーピーの生みの親はテックス・エイヴリー。彼はもともとワーナー・ブラザーズのアニメーターとして、バッグス・バニーやポーキー・ピッグ、ダフィー・ダッグなどのキャラクターを生み出した人物だった。しかし、ボスであるレオン・シュレシンガーとの対立が原因でワーナーを離れ、1942年にMGMへと移籍。そんな彼がMGMで手掛けた最も有名なアニメ作品が、“ドルーピー”シリーズだった。
 アニメーターとしてのエイヴリーの特徴は、なんといっても過激でナンセンス極まりないギャグの数々。暴力やお色気なんかも満載で、子供向けと呼ぶにはかなり刺激が強いのである。また、異国文化をカリカチュアしてみたり、社会風刺を織り込んでみたりと、ギャグの知的レベルも非常に高い。明らかに、子供が見ることを大前提にはしてないというのが、彼の作品の面白さと言えるだろう。
 それは、この“ドルーピー”シリーズも例外ではない。それどころか、そうしたエイヴリーの強烈な作家性が本当の意味で開花したのが、このシリーズをはじめとするMGM時代の作品だったと言われている。ゆえに、その内容はとっても刺激的(笑)
 なにしろ、アメリカで発売されたDVDボックスの裏には、“本製品は大人のコレクターを対象にしたものであり、お子様の鑑賞には相応しくないかもしれません”という但し書きまで記載されているのだから。
 ということで、今回はシリーズ24本の中から代表的なエピソードを幾つか紹介してみたい。

 

つかまるのはごめん
Doumb-Hounded (1943)

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のんびり警察犬のドルーピー

オオカミが刑務所を脱獄

どこへ逃げても先回りしているドルーピーにビックリ!

 これがドルーピー・シリーズ第一作目。しかし、まだドルーピーという名前は付けられておらず、ミッキー・マウスやウッディ・ウッドペッカーと同じように、後の作品とは作画デザインがかなり異なっている。とはいえ、のんびりしたキャラクターと神出鬼没の超人技はまさしくドルーピー。どこかオッサンぽい雰囲気が、またキュートで憎めないのだ。
 ストーリーは至って単純。刑務所を脱走したオオカミを、警察犬ドルーピー(ここではハッピー・ハウンド)がひたすら追い掛け回す。車や列車、飛行機などあらゆる手段を使って、全米各地から北極に至るまで逃げ回るオオカミなのだが、なぜかどこへ行ってもドルーピーが先回りしている。最後はニューヨークの高層ビルへと追い詰められ、逃げ場を失ったオオカミがビルのてっぺんから飛び降りるのだが・・・という逃走劇だ。
 とにかく、全編に渡ってオオカミが逃げる・逃げる・逃げる!その狂ったようなスピード感が凄まじい。そこへ、とんでもなくマイペースなドルーピーがひょっこりと現れ、のほほんとした顔で“見〜つけた”とやるわけだ。そのタイミングが実に絶妙でなんとも可笑しい。
 猛ダッシュで逃げまくるオオカミが、道のカーブで勢いあまってフィルムから飛び出したりとか、高層ビルの上から飛び降りたオオカミを見た葬儀屋が、一緒になって飛び降りてオオカミの寸法を測って去っていったりとか、ギャグのセンスも辛口で気が利いている。細かいディテールに至るまで、文字通り自由奔放なアイディアと発想がめいっぱい詰め込まれた作品。文句なしの傑作だ。

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ここにもやっぱりドルーピーが!

こんなところまで先回り!

勢い余ってフィルムから飛び出してしまったオオカミ

 

アラスカの拳銃使い
The Shooting of Dan McGoo (1945)

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まさに無法地帯と化したアラスカの酒場

我らが一匹狼のギャンブラー、ダン・マグー(ドルーピー)

歌姫ルーのお色気にオオカミの目玉も飛び出す

 アメリカの有名な現代詩人ロバート・W・サーヴィスの詩“The Shooting of Dan McGrew”をネタにした、ドルーピー風の大人向けパロディ西部劇。強烈なバイオレンスとセックスを盛り込み、かなり刺激的でデンジャラスなギャグが機関銃のごとく連射される。これはかなり面白い。
 舞台はゴールド・ラッシュに沸くアラスカの小さな町。そこはまさに無法地帯で、人々は酒とバクチと喧嘩に明け暮れている。撃ち合いや殺し合いなんぞ日常茶飯事なもんだから、町の人口は急速に激減中。酒場は今日もギャンブルと殺し合いで大賑わい。そんな人々を尻目にスロットと対峙しているのが、我らが孤高のギャンブラー、ダン・マグー(ドルーピー)である。しかし、酒場へやって来たお尋ね者のオオカミが、ダン・マグーの恋人である歌姫ルーに目をつけたことから、血で血を洗う(?)大騒動が勃発する・・・ってなわけだ。
 冒頭から凄まじいバイオレンスのオンパレード。かわいい顔した動物たちが酒を飲んで暴れるわ、殴り合いはするわ、縄で首を絞めて殺すわとやりたい放題。さりげなく、“うるさくね〜か!?”ってな看板が画面を横切ったりするのが大爆笑だ。
 さらに、カウンターに並んでいた客が片っ端から銃殺されるものの幽霊になって飲み続けたりとか、葬儀屋がレジで死人の数をカウントしていたりとか、不謹慎なくらいに辛口なギャグが炸裂する。
 中でも有名なのは、歌姫ルーを一目見て入れあげてしまうオオカミの描写。文字通り目玉がビョーン!と飛び出し、セクシーなルーの全身をなめ回すようにして見るのだ。しかも、心臓までビョーンと飛び出してバクバク。このネタはそのまんま、ジム・キャリー主演の『マスク』で使われている。まさにテックス・エイヴリー流ナンセンスの極地と言えるだろう。
 他にも、オオカミの熱い視線がビームになってメニューを焼いてしまったり、カウンターの上を自動車のごとくビールが行き交ったりと、エイヴリーのイマジネーション豊かなビジュアル・ギャグが縦横無尽に駆け回る。挑発的で肉感的な歌姫ルーのパフォーマンスも、当時としてはかなり刺激的で大胆だ。また、暗闇の銃撃戦で呆気なくドルーピーが勝ってしまうというラストも、当時のB級西部劇のご都合主義をおちょくっていて痛快。これぞ究極の大人向けカートゥーンと言えるだろう。
 ちなみに、歌姫ルーのモデルになっているのは、同じくエイヴリー作のアニメ『おかしな赤頭巾』に出てくるセクシーな“赤ずきんちゃん”。

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オオカミの熱い視線はメニューをも焼き焦がす!

自動車のごとくカウンターを行き交うビールたち

幽霊になっても飲み続ける荒くれ者たち

 

迷探偵ドルーピー西部の早射ち
Wild and Woolfy (1945)

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無法者オオカミと我らがドルーピー

セクシーな酒場の歌姫

酒場の歌姫を誘拐したオオカミ

 前作に引き続いて、こちらも西部劇をモチーフにしたドルーピー作品。悪玉を捕らえたり、美女を助けたりしたドルーピーが、勝利の感極まって狂ったように豹変する・・・というのはシリーズで時折見られる展開だが、中でも本作のクライマックスにおけるドルーピーの狂暴な豹変ぶりは、ショッキングなくらいに抱腹絶倒と言えるだろう。
 舞台は西部の小さな町。住民たちは無法者のオオカミの存在を恐れていた。もちろん、のんびり屋のドルーピーは除いて(笑)ある日、酒場の歌姫に一目ぼれしたオオカミは、彼女を誘拐して逃げ去る。さすがの住民も堪忍袋の緒が切れ、大掛かりな討伐隊を組んでオオカミの後を追う。もちろん、ちっちゃなポニーに乗ったドルーピーも(笑)果たして、彼は悪漢オオカミを捕らえて、美しき歌姫を救い出すことが出来るのか・・・?
 明らかに前作『アラスカの拳銃使い』の延長線上にある作品だが、ギャグのナンセンス度はさらにパワー・アップ。オオカミにビビッた酒場の客がチキン(英語で臆病者の意味)に変身して逃げ去ったり、ウマが裸足(!?)になって川を渡ったり、なぜだか岸壁にエレベーターが付いていたり。前作のように不謹慎なギャグこそないものの、まさに何でもアリのやりたい放題といった感じだ。とにかく、テックス・エイヴリーの豊かな想像力には舌を巻かざるを得ない。
 そして、討伐隊の最後尾でチョコマカチョコマカとくっついていくのがやっとだったはずのドルーピーが、最後にはまんまとオオカミを退治してしまう。この人を喰ったような能天気さはアッパレと言うべきだろう。

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討伐隊の最後尾にくっついていくドルーピーだったが・・・!?

裸足になって川を渡るウマ

なぜか岸壁にエレベーターが!?

 

迷探偵ドルーピーの大追跡
Northwest Hounded Police (1946)

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鉛筆で書いたドアから脱獄を謀るオオカミ

ボーっとしてたら捜索隊に選ばれちゃったドルーピー

神出鬼没のドルーピーにオオカミは翻弄される

 刑務所を脱獄したオオカミを警察犬ドルーピーが追いかけるという、シリーズ1作目『つかまるのはごめん』のリメイク作品。とはいっても、勿論ただのリメイクじゃない。ギャグのナンセンス度はさらにパワー・アップ・・・というよりもエスカレートと言ったほうが適切か(笑) 特に、オオカミにとっては悪夢としか言いようのないシュールなクライマックスは傑作だ。
 物語の始まりはアルカトラズ刑務所ならぬアルカフィズ刑務所。囚人のオオカミが脱走し、カナダへと逃亡する。警察では捜索隊を募るが、ボーっとしていたドルーピー以外は全員が辞退。結局、なんだか良く分からないまま、ドルーピーが単独でオオカミを追跡することになる。どこへ逃げてもなぜか先回りしているドルーピーに翻弄されるオオカミ。海の底では魚に混じって、山頂の鳥巣では卵から飛び出してオオカミをビックリさせるドルーピー。観念したオオカミが逃げ込んだ場所とは・・・!?そして、そこでオオカミが知った衝撃的な事実とは・・・!?
 電気椅子の入り口に“どうぞお掛けください”なんて看板がかかっている辛口のギャグ・センスはテックス・アヴリーの十八番といったところ。オオカミが鉛筆で描いたドアから脱走したり、鳥の卵からドルーピーが飛び出したり。“アニメ”という媒体にしか出来ない笑いのツボというものを、実に良く理解しているのがアヴリー作品特有の面白さ。しかも、そのアニメならではの不条理を逆手に取ったクライマックスのどんでん返しはお見事。まさに、1本取られましたという感じだ。

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海の底へ逃げても・・・

鳥巣へ逃げても・・・!?

どうぞお掛けください・・・って電気椅子じゃん!?

 

財産をねらえ
Wag to Riches (1949)

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遺産相続の発表を待つスパイクとドルーピー

ドルーピーが遺産を相続すると知って驚愕するスパイク

親切を装ってドルーピーに近づくスパイクだが・・・!?

 ドルーピー・シリーズではオオカミと並ぶ悪役としてお馴染みのブルドッグ、スパイクが初めて登場した作品がこれ。ドルーピーが飼い主の遺産を相続し、それをスパイクが横取りしようとあの手この手を使うというお話だ。
 とある大富豪が死去し、その遺産相続が行われることとなった。残された親族は飼い犬のドルーピーとスパイク。当然自分が遺産を全て相続するものとたかをくくっていたスパイクだったが、遺言によって財産も土地も全てドルーピーのもとに。しかし、遺言書にはドルーピーが死んだ場合にスパイクが相続すると書かれていたことから、彼はあの手のこてを使ってドルーピーを亡き者にしようとする・・・のだったが!?
 部屋にガスを充満させた上で葉巻を勧めたり、カメラにミサイルを仕込んで記念写真を撮ろうとしたり、絵で描いたプールに飛び込み台から飛び込ませようとしたりするのだが、なぜか痛い目に遭うのはスパイクの方。ボーっとしたまま本人の知らぬ間に危険を免れるドルーピーと、自分の仕掛けた罠に自分でハマってしまうトンチンカンなスパイク。そのギャップの生み出す笑いは勿論のこと、スピード感とリズム感を活かしたギャグのタイミングというのが実に絶妙だ。
 中でも有名なシーンは、絵に描いたプールに飛び込んだドルーピーが平気な顔してスイスイと泳いで行き、それを見て“おっかしいな・・・?”と首を傾げながら自分も飛び込んでみたスパイクが陶器のように粉々に砕け散るという一幕。これ以降、ドルーピーはたびたびスパイクの描いた絵の中に入っていくことになる。
 そして、テックス・アヴリーの毒っ気たっぷりなギャグ・センスが炸裂するのが、今では倫理的に問題がありそうなビックリ仰天の皮肉なクライマックス。この文字通り“キ○ガイ”のようなエンディングこそ、ディズニーの子供向けアニメにはないアヴリー作品の醍醐味と言えるだろう。

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ドルーピーを爆殺するはずだったが・・・?

写真家を装ってカメラにミサイルを仕込むスパイク

絵に描いたプールに激突

 

いかさま狐狩り
Out-Foxed (1949)

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とある英国風の邸宅

ティー・タイムを楽しむキツネ、レジナルド・フォックス

捕まってちょうだいと頼み込むドルーピーだったが・・・!?

 今回はドルーピーが猟犬に扮して狐狩りに参加する。とはいっても、ドルーピーVSキツネというよりは猟犬VSキツネといった構図で、知恵者のキツネが欲深で間抜けな猟犬たちをコテンパンにやっつけるというのが見どころ。最後の最後に、美味しいところをドルーピーとキツネがさらっていくってなわけだ。
 とある英国風の邸宅。ご主人様にキツネ狩りを命じられた猟犬たちは、キツネ一匹につきステーキを一枚ご褒美としてもらえると聞き、喜び勇んで屋敷を飛び出していく。そんな彼らの後にくっついて、余裕たっぷりにチョコマカと出かけていくのは我らがドルーピー。一方、片時もお茶とポットを手放さない英国紳士のキツネは、様々な知恵を使って猟犬たちを撃退していく。そんなキツネに、“そろそろ捕まっておくれよ”と頼むドルーピー。もちろん、そんなわけにはいかないのだが、“ステーキが貰えないよ〜”と泣き出したドルーピーの一言を聞いて、キツネはある妙案を思いつく・・・。
 なんといっても面白いのは、英国紳士をカリカチュアしたようなキツネのキャラクターだろう。彼にはレジナルド・フォックスなる名前が付けられており、当時ハリウッドで活躍していたイギリス人俳優レジナルド・デニーをもじったのかな・・・とも思うのだが、その気取ったキャラクターはどちらかというとジョン・ギールグッドやラルフ・リチャードソン辺りに近いイメージかもしれない。どんな緊急事態でも涼しい顔をしてお茶をすすりながら、次々と猟犬たちをやり込めていく様子は、おとぼけキャラのドルーピーとは好対照と言うべきだろう。そんなキツネとドルーピーが、ちゃっかりとおいしい思いをする皮肉なクライマックスは何とも痛快だ。

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空中に投げたレンガで次々と猟犬たちを退治

涼しい顔をして猟犬の追跡をかわすキツネ

仕掛けられたダイナマイトも丁寧にお返しします!?

 

勝利はいただき
Three Little Pups (1953)

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仲良し子犬の三兄弟

子犬を捕獲しようと忍び寄る悪者オオカミ

ワラの家と木の家を次々と吹き飛ばしていく

 シリーズ11作目の『双児騒動』(51)からガラリと作画デザインの変わったドルーピー。13作目に当る『勝利はいただき』では、さらに全体の背景デザインやキャラクターの動きなども刷新され、後のUPAによるリミテッド・アニメーションのようなスタイルを生み出している。これは、従来のディズニー的なリアリズムを極力排除し、アニメーションならではの独創性を追及した結果と見るべきだろう。そういった観点からも、見るべきところの非常に多い作品だ。
 ストーリーはオリジナル・タイトルを見ても分かるとおり、『三匹の子豚』ならぬ『三匹の子犬』。子犬の三兄弟スヌーピーとルーピー、ドルーピーがそれぞれ自分の家を建てる。そこへ悪者オオカミが現れ、スヌーピーのワラの家とルーピーの木の家を吹き飛ばすのだが、ドルーピーのレンガの家だけは頑丈で歯が立たない。レンガの家に逃げ込んだ三兄弟を狙うオオカミは、あの手この手を使って家を破壊しようとしたり、家の中に侵入しようとしたりするのだが、その度にこっぴどい目に遭ってしまうというわけだ。
 今回はオオカミのデザインも一新され、そのキャラクターもすっかり変わっている。これまでは基本的に“逃げる”側だったオオカミだが、本作では逆にドルーピーを追い詰めようとする側に廻っているのだ。しかし、のんびりとしたドルーピーのキャラクターはそのまま。何食わぬ顔をして、さりげなくオオカミを痛い目に遭わせていく。その不条理ともいえる可愛らしさが、スタイリッシュなリミテッド・アニメーションの世界と見事にマッチしていると言えよう。

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最後のレンガの家だけは歯が立たない

罠を仕掛けるたびに痛い目に遭うオオカミ

何食わぬ顔してオオカミを懲らしめるドルーピー

 

デキシーランド犬
Dixieland Droopy (1954)

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デキシーランド・ジャズが大好きな犬ジョン(ドルーピー)

ジュークボックスにレコードを紛れ込ませるが・・・

残念ながら追い出されてしまう

 こちらもUPAの“ジェラルド・マクボイン・ボイン”シリーズは“Mrマグー”シリーズを彷彿とさせるような、お洒落でスタイリッシュなリミテッド・アニメ風のユニークな作品。デキシーランド・ジャズが大好きな犬ドルーピーと、彼が見つけた意外すぎる仲間たちの巻き起こす珍騒動を描いている。ナンセンスでスラップスティックな笑いはもちろんのこと、どこかチャップリンを思わせるようなペーソスが持ち味。どちらかというと過激なギャグや風刺性で見せることの多いテックス・アヴリー作品だが、本作では洗練された作画デザインと人情味溢れるストーリーが最大の魅力と言えるだろう。
 主人公はデキシーランド・ジャズの大好きな犬ジョン・ペティボーン(ドルーピー)。しかし、世間では静かな音楽が好まれるようになっており、彼は肩身の狭い思いをしている。デキシーランド・ジャズ嫌いのオーナーに家を追い出されたジョンは、カフェのジュークボックスや猿回しの伴奏機、アイス・キャンディー売りの呼び込みなどにデキシーランド・ジャズのレコードを紛れ込ませて演奏を楽しもうとするが、その度にこっぴどく怒られてしまう。遂にはレコードを割られてしまい、途方にくれるジョン。そんな彼の耳に軽快なデキシーランド・ジャズの音色が飛び込んできた。それは、見世物小屋で演奏するノミの楽団だったのだ。自分の毛の中に楽団を呼び込んだジョンだったが、花形スターを奪われた見世物小屋の興行主はカンカン。さんざん追い掛け回された挙句、ジョンが逃げ込んだ先はなんと芸能事務所だった。事務所の社長はジョンの体から聴こえてくるデキシーランド・ジャズの演奏にすっかり魅了され、彼を“デキシーランド犬”として売り出すことを思いつく・・・。
 誰にも理解してもらえないジョンの哀しみをジンワリと滲ませながらも、一途にデキシーランド・ジャズを愛する彼の不器用さがなんとも愛おしく感じさせられる。アヴリーお得意のリズム感やタイミングの妙も健在で、特にデキシーランド・ジャズをBGMに繰り広げられる追いかけっこシーンの軽妙さは見事なもの。実に楽しくも味わい深い傑作だ。

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猿回しの伴奏機にも・・・

アイスキャンディー売りの呼び込みにも・・・

遂には大切なレコードを割られてしまった

 

 1958年に発表された『幸福を呼ぶ小人(Droopy Leprechaun)』がシリーズ最後の作品。この頃になると映画はテレビの勢いに押されるようになり、中でも短編アニメは子供向けのテレビ・プログラムへとシフトしつつあった。劇場向けの短編アニメは急速に衰退し、各映画会社もアニメ製作部門の閉鎖を余儀なくされていく。
 そうした中で、53年にMGMを去ったテックス・アヴリーは活動の場をテレビに移すようになった。アヴリーの部下だったマイケル・ラーが引き続きドルーピー・シリーズを手掛けたものの、テレビ・アニメの影響力には敵わなかったのである。
 その後、80年代にテレビ版“トムとジェリー”シリーズの中でドルーピーが登場し、90年代にはドルーピーを名探偵に仕立てたテレビ・シリーズ“Droopy, Master Detective”が放送された。しかし、そのどちらにもテックス・アヴリーは関わっておらず、ファンからは賛否両論の評価だった。後者はハンナ=バーベラの手によるものだったが、第1シーズンのみで打ち切られている。
 現在はアニメ専門の衛星チャンネル“カートゥーン・ネットワーク”にてMGM時代の作品が時折放送されており、“トムとジェリー”の日本盤DVDにも幾つかの作品が特典収録されている。アメリカではシリーズ全作を収録したDVDボックスがリリースされているが、残念ながら日本では未発売のままだ。

 

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Tex Avery's Droopy
The Complete Theatrical Collection

(P)2007 Warner Home Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤2枚組)
カラー/スタンダードサイズ&ワイドスクリーン/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/200分/製作:アメリカ

映像特典
テックス・アヴリー ドキュメンタリー
ハイライト集
 劇場版シリーズ全24作を収録したコンプリート・コレクション。ビックリするほどの高画質は、さすがワーナーからのリリースといった感じです。テックス・エイヴリーの作品は殆んどがソフト化されていないので、ファンにとっては貴重なコレクションだと思います。

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