DRIVE IN CLASSICS
PART 2

 

宇宙からの少年
Teenagers from Outer Space (1959)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Goodtimes Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/86分/製作:アメリカ

特典映像
なし
監督:トム・グレーフ
製作:トム・グレーフ
脚本:トム・グレーフ
撮影:トム・グレーフ
特殊効果:トム・グレーフ
出演:デヴィッド・ラヴ
   ドーン・ベンダー
   ブライアン・グラント
   ハーヴェイ・B・ダン
   トム・グレーフ
   キング・ムーディ
   フレデリック・ウェルチ

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町外れに不時着したUFO

異星人たちにはある恐ろしい計画が…

反旗を翻す異星人の若者デレク(D・ラヴ)

逃亡したデレクを生け捕りにせねばならない

 そのバカバカしくも微笑ましい内容はもちろんのこと、監督から脚本、製作、撮影、編集、特殊効果に至るまでの全てを一人でこなしたトム・グレーフという人物自身のユニークな逸話を含め、いろいろな意味でマニアックな映画ファンに愛され続けている伝説のカルト・ムービー。宇宙からやって来た一人の少年(?)が地球人の少女と恋に落ち、ついでに巨大なザリガニ・モンスターを退治し、さらには宇宙人の地球侵略を阻止するまでを描いたウルトラ・チープなZ級SF映画だ。
 とある小さな田舎町の外れにUFOが飛来する。彼らの目的は、地球をガーゴンというザリガニに似た食用モンスターの餌場にするためだ。しかし、異星人の若者デレクは地球に知的生命体が存在することを知り、警告を発するために町中へと逃走する。ベティという美少女と知り合った彼は、なんとかこの危機的な状況を説明しようとするものの、当然のことながらすぐには理解してもらえない。
 一方、異星人のリーダーはデレクの行方を捜すため、凶暴な部下ソーを追手として差し向ける。レーザー光線銃を片手に行く先々で人間を白骨化させ、デレクとベティの2人に迫っていくソー。幾度となく危機をくぐり抜けるデレクたちだったが、その間にも怪獣ガーゴンはどんどんと巨大化していき、やがて町へ向かって移動を始める。さらに、異星人のUFO艦隊が地球侵略のために接近しつつあった。果たして、地球の運命やいかに…!?
 という、それなりにスケールの大きな物語が、高校生の自主製作映画レベルの規模で描かれていく。とりあえず、小道具から特殊効果に至るまで、ありとあらゆるものがとにかくチープ。プラスチックのレーザー光線銃にはおもちゃメーカーのロゴまで入っているし、そもそもレーザー光線そのものが鏡に光を反射させただけという代物。異星人の宇宙スーツにしたって、作業服にガムテープでマスキングをしただけだったりする。
 しかし、中でも極めつけは巨大化したザリガニ・モンスターだろう。怪獣の着ぐるみなんぞを作っている時間も予算もなかったことから、なんと本物のザリガニのシルエットだけを引き伸ばし、その上で単純にフィルムの2重焼き処理を施しているのである。なので、モンスターは終始、微妙な位置で宙に浮いている状態。しかも部分的に合成の甘いところは半透明化する始末(笑)。なんとも可笑しいやら哀しいやらといった珍場面の連続なのだ。
 ただ、意外にもストーリーの展開はなかなか緊張感があって面白いし、技術的な稚拙さは致し方ないにしても、本格的なSF映画を真面目に作ってやろうというグレーフ監督の心意気だけはちゃんと伝わってくる。セリフの内容は全身がむず痒くなるくらいに滑稽だし、役者の演技もほとんど学芸会レベルの域を出るものではないものの、一難去ってまた一難という物語の構成にはかなり知恵が絞られていると言えよう。口が裂けても良く出来た映画などとは呼べないが、その一方でエド・ウッド作品とも相通ずるような親しみを覚えずにはいられない作品だ。個人的には、こういう映画を楽しめてこそ真の映画ファンなのではないかと思う。

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名札に記された住所を捜し歩くデレク

ベティ(D・ベンダー)とその祖父が親切に招き入れる

デレクの追う凶悪な異星人ソー(B・グラント)

レーザー光線銃は人間を白骨化させる

 小さな町外れの荒野に一機のUFOが不時着する。中から出てきたのは宇宙スーツに身を包んだ異星人たち。その姿は人類となんら変わらない。威嚇する犬をレーザー光線銃で白骨化させた彼らは、次々と荷物を外へと運び出す。その中身は、ザリガニとそっくりの形をした生物。このガーゴンと呼ばれる生物は彼らの主食なのだが、性格が凶暴な上に成長すると巨大化するため、異星人たちはその繁殖地を探して地球へとやって来たのだ。
 だが、犬の首に名札を見つけた異星人の若者デレク(デヴィッド・ラヴ)は、この惑星に知的生命体が住んでいると直感。他の文明を危険に晒すことなどできないと、UFOのキャプテン(キング・ムーディ)に異議を唱える。彼らの惑星では愛情や友情などの価値観は文明を弱体化させるものだとして遠い過去に排除されていたのだが、デレクは禁書とされる古い書物からそうした感情を学んでおり、強く反権力の意識に目覚めていたのだ。
 すぐさま反逆罪で捕えられたデレクだったが、隙を見計らって脱走に成功。ガーゴンを解き放った異星人たちは、一旦地球を離れて後発の空母へ合流することになった。そこで、キャプテンはデレクと敵対する残忍な若者ソー(ブライアン・グラント)を地球へ残し、デレクを捕えるべく
追手として差し向ける。ただし、必ず生け捕りにしなくてはならない。なぜなら、デレクは彼らの支配者(ジーン・スターリング)の隠し子だったからだ。
 町中へとやって来たデレクは、犬の名札に書かれた住所を探し当てる。そこには、可憐な美少女ベティ(ドーン・ベンダー)と優しい祖父モーガン氏(ハーヴェイ・B・ダン)が暮らしていた。2人はデレクを下宿希望者だと勘違いして、家へと招き入れる。親切なベティに心を開くデレク。彼はなんとか差し迫った危機を伝えようとするが、ベティは彼の話を冗談だとしか思わない。そこで、デレクはUFOの不時着現場へとベティを連れて行き、犬の白骨死体を見せたところ、ようやく彼女も何かただならぬ事態が起きていることを理解してくれた。しかし、彼女では何の力にもなれない。そこで、ベティは地元大学のシンプソン教授に相談することにした。
 その頃、デレクの後を追うソーも町へと到着していた。邪魔になる人々を片っ端からレーザー銃で白骨化させ、着実にデレクの足取りを追っていくソー。ついには先回りしてシンプソン教授を殺してしまった。祖父にも危険が迫っているかもしれないと考えたベティは、急いで自宅へ電話をかけて市役所で落ち合うことを約束。しかし、市役所へ向かおうとした祖父は、タイミング悪くソーに捕えられてしまった。
 モーガン氏に車を運転させて市役所へ到着したソー。しかし、そこにはベティからの通報を受けた刑事たちが待ち構えていた。激しい銃撃戦の末、負傷したソーは姿を消してしまう。刑事たちと一緒に周辺を捜索していたデレクとベティは、車の中に身を潜めていたソーにレーザー光線銃で脅かされ、傷を治療するためにブランド医師(フレデリック・ウェルチ)の診療所へと向かう。
 しかし、手術の際の激痛でソーが気を失いかけたことから、デレクとベティ、そしてブラント医師は間一髪で脱出に成功。ところが、何も知らずに診療所へやって来た看護婦が倒れているソーの介護をしてしまい、意識を取り戻したソーは看護婦を人質にしてUFOの不時着現場へと向かう。ガーゴンの成長具合を確かめるためだ。その頃、白骨化死体事件を追っている記者ジョー(トム・グレーフ)が、現場近くの洞窟で巨大化したガーゴンを発見していた。危険を知らせるべく町へと急いで戻るジョー。それを阻止しようとするソーとのカーチェイスになったものの、運転を誤ったソーは崖下へと転落。間一髪で脱出した看護婦は奇跡的に無傷で済んだが、重傷を負ったソーは警察病院へと搬送された。
 一方、お互いに愛情を確かめ合うようになったデレクとベティは、UFO不時着現場で巨大化したガーゴンと遭遇。偶然にもソーが落としたレーザー光線銃を拾ったものの、何らかの衝撃で壊れてしまったらしく、ガーゴンを倒すことは出来なかった。よくよく調べてみると、どうやらレーザー光線銃はエネルギーが切れてしまったようだ。
 このままではガーゴンによって、町はおろか地球が破壊されてしまう。その時、ベティはあるアイディアを思いつく。電線を直接レーザー光線銃につなぎ、大量の電流を流し込めば使えるのではないかと。すでにガーゴンは山を越えて町へと迫りつつある。もはやほかに手段は考えられない。果たして、デレクとベティは巨大化したガーゴンを倒すことが出来るのか?
 さらに、地球侵略を狙うUFOの空母も近づいていた。今や第二の故郷となった地球を救うため、デレクは命懸けの戦いに挑むこととなる…。

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白骨殺人事件を追う記者ジョー(T・グレーフ)

頼みの綱だったシンプソン教授まで犠牲に

ソーに捕まったデレクとベティ

手術による激痛でソーは意識を失いかける

 もともとUCLA在学中から短編映画を撮っていたグレーフ監督は、ロジャー・コーマン監督のSF映画“Not of This Earth”('56)の助監督を経験したことから感化され、自らもSF映画を作りたいと脚本を書き始めたのだという。業界誌に広告を出すなどしてなんとか2万ドルの製作費を調達し、1956年の暮れから57年の初頭にかけて撮影された本作。ロケは全てハリウッド周辺で行われているものの、舞台となる小さな田舎町の雰囲気を出すために、撮影ではランドマーク的な建物などが一切映らないよう細心の注意が払われた。UFOが不時着する洞窟周辺のロケ地は、B級西部劇の撮影場所としても有名なグリフィス・パーク内のブロンソン渓谷である。また、撮り直しによる時間とフィルムの無駄遣いを最小限に抑えるため、出演者は予め録音されたセリフに合わせてクチパクで演技をしているのだそうだ。
 ただ、作品が完成してから1年以上も配給先が決まらず、そのためにグレーフ監督は、本作の出資者であり出演者でもあるブライアン・グラントとその妻アーシュラから訴えられてしまい、夫妻の出資金額を丸々返さねばならなくなってしまう。しかも、彼の災難はそれだけに止まらなかった。'59年になってようやくワーナー・ブラザーズの二本立て興行(併映は『ゴジラの逆襲』)が決まり、それなりの観客動員数を稼いだものの、なぜかグレーフ監督のもとには一銭の収益金も入らなかったという。借金とストレスから精神的に参ってしまった彼は、何を思ったのか突然“イエス・キリスト2世”を名乗りはじめ、ロサンゼルス・タイムズ紙に広告まで掲載。金銭目的の違法な布教活動を行ったことから逮捕され、そのまま行方をくらましてしまった。ところが、60年代半ばに再びロサンゼルスへと舞い戻り、'68年に今度は新作の脚本を50万ドルという高値で販売するとの広告をバラエティ誌に掲載し、何人もの著名な映画監督が興味を示していると実名を挙げながら吹聴して回ったという。もちろん、事実無根の詐欺まがいの売名行為だったわけで、結局誰からも相手にされず、その2年後の1970年に41歳の若さで自殺を遂げてしまった。なんだか映画以上に破天荒というか、コアな人生を歩んだ人物であり、本作が未だに多くの映画マニアの興味を惹きつけている理由の一端もそこにあると言えるだろう。
 なお、BGMには既存のストック・ミュージックが使用されているのだが、全く同じものをジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でも聴くことが出来る。

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巨大化したガーゴンがデレクたちに襲いかかる

壊れたレーザー光線銃の活用法を思いつくベティ

徐々に町へと迫り来るガーゴン

命懸けで立ち向かうデレクだったが…

 主人公デレク役を演じている俳優デヴィッド・ラヴに関する情報は全くと言っていいほど残っておらず、いったい彼は何者なのか?ということが長いこと映画マニアの間で謎とされてきた。しかし、その後ブライアン・グラントとその妻アーシュラのインタビュー証言によって、どうやら当時のグレーフ監督の恋人であったらしいことが判明。つまり、2人ともゲイだったのである。
 一方、デレクと恋に落ちる美少女ベティ役を演じているドーン・ベンダーは、ラジオ・ドラマの子役出身だった女優。当時はすでに結婚して女優業を引退していたものの、知人でもあったグレーフ監督のたっての願いで出演することになったのだという。ただ、俳優組合に名前が登録されており、ほぼタダ同然のギャラで出演していることがバレてしまうと組合規定に抵触することから、本作ではドーン・アンダーソン名義でクレジットされている。
 そして、先述したように本作の製作資金を提供し、悪役の異星人ソーを演じているのがブライアン・グラント。もともと彼はイギリスの舞台俳優で、ヨーロッパ巡業中に知り合ったアメリカ人女優アーシュラ・ピアースと結婚したことから、ロサンゼルスへ拠点を移した人物だった。ただ、ハリウッドではなかなか仕事が見つからず、注目されるきっかけになればということで、本作へ出資する見返りとしてソー役を得たのだという。ただ、俳優としてはどうしようもないくらいに大根。しかも、こんな超低予算のZ級SF映画へ出演した程度のことでキャリアの足しになるわけもなく、その後はハワイへ移住して実業家に転身したそうだ。なお、妻アーシュラはシンプソン教授の秘書ヒルダ役で顔を出している。
 そのほか、エド・ウッド作品の常連俳優ハーヴェイ・B・ダン、往年の人気ドラマ『それ行けスマート』で秘密結社ケイオスのスパイを演じていたキング・ムーディが登場。さらに、グレーフ監督自身が新聞記者ジョー役で顔を出している。

 

 

人喰いネズミの島
The Killer Shrews (1959)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Goodtimes Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ作品/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/69分/製作:アメリカ

特典映像
なし
監督:レイ・ケロッグ
製作:ケン・カーティス
   ゴードン・マクレンドン
脚本:ジェイ・シムス
撮影:ウィルフレッド・M・クライン
音楽:ハリー・ブルーストーン
   エミール・キャドキン
出演:ジェームズ・べスト
   イングリッド・グード
   ケン・カーティス
   ゴードン・マクレンドン
   バルーシュ・ルメット
   ジャッジ・ヘンリー・デュプリー
   アルフレード・デソート

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ボートの船長ソーン(J・べスト)と相棒グリズウォルド

2人は物資を運ぶために無人島へとやって来た

出迎えたのは研究所のスタッフたち

研究所はなぜか高い塀で囲まれていた

 ボロ雑巾を被せられた犬たちが巨大ネズミのふりをして、これまた怖がったふりをした人間とじゃれ合ってみせるというだけの似非モンスター映画。もうどっからどう見ても犬でしかないのがバレバレで、そのどうしようもないくらいの間抜けさを笑い飛ばすしかないという絶望的なアホらしさから、いつしかカルト映画としてマニアの間で語り継がれるようになった迷作である。
 物語は至って単純。無人島の怪しげな研究所へ物資を運搬するボートの船長が、ハリケーンの接近によって島で一晩を過ごさねばならなくなる。ところが、この島には生体実験の末に巨大化した人喰いネズミが多数生息しており、次々と研究所へ襲いかかってくるというわけだ。で、案の定というかなんというか、研究所内での人間関係にいろいろと揉め事があり、博士の娘と船長との間にはロマンスがあり、はてさて彼らは無事に島を脱出できるのか?というサスペンス(?)が繰り広げられることとなる。
 監督のレイ・ケロッグはもともと20世紀フォックス専属の特殊効果マンだった人物で、本作と同時上映されたモンスター映画『大蜥蜴の怪』('59)の2本が監督デビュー作に当たる。特殊効果マンとしては一流の仕事をしてきたのかもしれないが、演出家としては低予算のハンデを差し引いても二流の腕前。まあ、これほどまでに底の浅い脚本を料理せねばならないという、更なる悪条件も考慮せねば不公平なのかもしれないのだが。それにしても、スリルもサスペンスも一切感じさせない、ダラダラとした呑気な展開はお粗末な印象が否めない。
 とりあえず、先述したような犬にしか見えない巨大ネズミ(もちろん、本物の犬)や、その巨大ネズミのクローズアップ・シーンに使われているハンド・パペットの乱雑過ぎる造形、小さな木製テーブルの上に数個の試験官とビーカーしか置かれていない研究所ラボ、科学者とは思えない博士たちのトンチンカンなセリフなどといった、クズ映画ゆえの見事な突っ込みどころだけは満載。2〜300匹はいるはずの巨大ネズミ軍団が、どう見たって4〜5匹だけだったりするようなトホホぶりこそ、本作の醍醐味(?)なのだと言えるかもしれない。是非とも寛大な心で楽しみたいもんだ。

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研究所の責任者クレイグス博士(B・ルメット)

博士の娘アン(I・グード)はなにかに怯えていた

イングリッドの嫉妬深い婚約者ジェリー(K・カーティス)

グリズウォルドが得体のしれない生物に襲われる

 小型ボートの船長ソーン・シャーマン(ジェームズ・べスト)と相棒グリズウォルド(ジャッジ・ヘンリー・デュプリー)は、物資運搬の依頼を受けて小さな無人島へと到着した。彼らを待ち受けていたのは、島にある小さな科学研究所のメンバーたち。クレイグス博士(バルーシュ・ルメット)の娘アン(イングリッド・グード)を本土へ送り届けて欲しいというのだ。しかし、島にはハリケーンが迫りつつあり、すぐに出発することは危険だと判断したソーンは、ひとまず研究所にて一晩を明かすことにした。
 まだ仕事が残っているグリズウォルドをボートへ残し、一足先に博士たちと研究所へと向かうソー。施設は高い木製の塀でグルリと覆われており、まるでなにか外敵の侵入から守ろうとしているかのようだった。怪訝に思うソーだったが、そのことについては誰もが一様に口を閉ざしている。特にアンは強い不安を隠しきれない様子だった。
 研究所を運営しているのはクレイグス博士と同僚のベインズ博士(ゴードン・マクレンドン)。2人は来るべき将来の人口増加と食料不足の問題を解決するため、人間を半分のサイズに縮めるという研究を行っていた。ハリケーンが徐々に近づき、より一層のことヒステリックになっていくアン。そんな彼女を優しくなだめるソーンだったが、傲慢で嫉妬深いアンの婚約者ジェリー(ケン・カーティス)はそれが面白くない。
 その頃、ボートの錨を固定して研究所へと向かっていたグリズウォルドは、得体のしれない生物の集団に襲われ、あえなく命を落としてしまう。一方、不安におびえるアンが重たい口を開き、実験の失敗で巨大化したネズミが研究所を脱走し、島の全土で繁殖を繰り返しているのだということをソーンに語る。その数は2〜300匹を下らないという。日か落ちると行動を活発化させるため、夜に外へ出ることは危険だった。研究所の周りを塀で取り囲んでいるのも、巨大ネズミの襲来を防ぐためだったのである。
 深夜になって、召使マリオ(アルフレード・デソート)が地下室で物音がすることに気付いた。巨大ネズミが侵入したのだ。ソーンはマリオを連れて、ライフル銃を片手に地下室へと降りていく。なんとか巨大ネズミを仕留めたものの、マリオが片脚を噛みつかれてしまった。すぐに手当てをしようとしたものの、その直後にマリオは絶命してしまう。ベインズ博士が調べたところ、巨大ネズミの体液に猛毒が含まれていることが判明した。
 ネズミたちは確実に狂暴化していた。すぐにでも島を脱出しなければならない。翌朝になってネズミたちが棲み処へ戻ったことから、ソーンはジェリーを連れて周辺の安全とボートの様子を調べるために研究所の外へ出る。しかし、嫉妬に狂うジェリーはライフルをソーンに向け、アンに手出しをしたら殺してやると脅すのだった。
 その時、辺りから不気味な動物の鳴き声が。巨大ネズミが周辺をうろついているのだ。慌てて研究所へと逃げ戻る2人。気配を察知して襲いくる巨大ネズミ軍団。ところが、先に研究所へ逃げ込んだジェリーが入口に鍵をかけてしまい、ソーンは一人で外に締め出されてしまう。間一髪のところで塀を乗り越え、研究所の敷地内へと逃げ込んだソーン。怒りの収まらない彼は、見えすいた言い訳をするジェリーをコテンパンに殴り倒した。
 もはや研究所の安全も風前の灯。巨大ネズミたちはあちらこちらから侵入しようとしている。ジェリーは錯乱状態になって暴れ、ベインズ博士は巨大ネズミに襲われて命を落とした。果たして、ソーンとアン、クレイグス博士の3人はどうやって島を脱出しようというのか…?

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アンは島に生息する巨大ネズミについて語りはじめる

召使マリオ(A・デソート)が襲撃される

巨大ネズミが研究所に忍び込んでいたのだ

ネズミの体液に猛毒が含まれていると判明する

 実はこの作品、もともとテキサスでラジオ局と映画館チェーンを経営する実業家ゴードン・マクレンドンが、自分のところの映画館で上映するために資金を出して作らせたというローカル・ムービーだった。同時上映の『大蜥蜴の怪』も同じこと。ところが、地元で予想外の大ヒットを記録したことから全米規模で配給されることとなり、しまいには外国へも輸出されることに。自主製作のローカル・ムービーとしては異例の大成功を収めることとなったのである。
 脚本を手掛けたのは、『ライフルマン』や『バークレー牧場』などテレビの西部劇ドラマの脚本を数多く担当したジェイ・シムス。撮影監督のウィルフレッド・M・クラインは、『二人でお茶を』('51)や『カラミティ・ジェーン』('53)など、ワーナーのドリス・デイ主演映画を数多く手掛けたカメラマンだ。また、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』にも参加していたバイオリニスト、ハリー・ブルーストーンとその相棒エミール・キャドキンが音楽スコアを手掛けている。
 なお、巨大ネズミのハンド・パペットを誰がデザインしたのかはよく分かっていないが、個人的には『原子怪獣と裸女』('55)などのハチャメチャなクリーチャー・デザインで知られるポール・ブレイズデル辺りが怪しいのではないかと睨んでいる。

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次々と忍び込む巨大ネズミ…というか犬(笑)

嫉妬に駆られたジェリーはソーンに銃口を向ける

襲いかかってくる巨大ネズミの大群…?

外に1人締め出されてしまったソーンだったが…

 主人公の船長ソーン役を演じているのは、'80年代の人気ドラマ『爆走!デューク』('79〜85)の悪徳保安官ロスコー役で知られる脇役俳優ジェームズ・べスト。また、巨匠シドニー・ルメット監督の父親バルーシュ・ルメットが、科学者というよりは下町の工場長といった雰囲気のクレイグス博士役を演じているのも興味深い。
 で、本作のキャストでまともに演技が出来るのは以上の2人だけ。あとの出演者はいずれ劣らぬ大根役者揃いで、その大仰過ぎる演技に是非とも腹を抱えて笑いたい。一応のヒロインであるアンを演じているイングリッド・グードは、スウェーデン出身のブロンド女優。ミス・ユニバースのスウェーデン代表に選ばれたことからユニバーサル映画にスカウトされたものの、ハリウッドでの仕事はエキストラ同然のチョイ役ばかりで、本作が彼女にとって初めての大役となった。
 そのチンケな婚約者ジェリーを演じているのは、往年の人気西部劇ドラマ『ガンスモーク』のフェスタス役で全米に親しまれた俳優。本作の共同製作者でもある彼だが、少なくともこの作品を見る限りでは、決して上手い役者だとは思えない。そして、ベインズ博士を演じているのが、本作のメイン出資者である実業家ゴードン・マクレンドン。彼はもともとラジオのディスク・ジョッキーとしても有名(あのジャック・ルビーも熱烈なファンだったらしい)な人で、本人としては演技にも心得があるつもりだったのかもしれない。とりあえず思い入れたっぷりに演じているのはよく分かるのだが、まるでピーター・ローレかライオネル・アトウィルを大袈裟に真似てみせているようにしか見えないのは残念というかなんというか(笑)。

 

 

蜂女の実験室
The Wasp Woman (1959)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2005 Goodtimes Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/73分/製作:アメリカ

特典映像
なし
監督:ロジャー・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
脚本:レオ・ゴードン
撮影:ハリー・ニューマン
音楽:フレット・カッツ
出演:スーザン・キャボット
   アンソニー・アイズリー
   バーボーラ・モリス
   マイケル・マーク
   ウィリアム・ローリック
   リン・カートライト

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舞台は大都会ニューヨーク

化粧品会社を経営する女社長ジャニス(S・キャボット)

業績悪化の原因はジャニスの衰えた容姿にあった

ゼンスロップ博士(M・マーク)の実験に驚くジャニス

 スズメバチの酵素を使って若返った化粧品会社の女社長が、世にも醜悪な蜂女と化して次々と人間を襲うというクリーチャー・ホラー。現代人の若さと美に対する異常な執着心を皮肉った風刺色の強い社会派作品…ってなわけはこれっぽっちもなく、単に当時話題になったばかりのホラー映画『ハエ男の恐怖』のヒットにあやかろうとしただけのパクリ映画。あまりの適当ぶりにズッコケてしまう蜂女マスクの造型が強烈なインパクトを残す、ロジャー・コーマン監督の初期代表作とも言うべきトラッシュ・ムービーだ。
 主人公は大手化粧品会社の女社長ジャニス。長年に渡って自社製品の広告塔を務めてきた彼女だったが、寄る年波には勝てず容色衰えてしまったことから、会社の売り上げは目に見えて落ち込む一方だった。そんな彼女の前に現れたのが、スズメバチのロイヤルゼリーに含まれる酵素の若返り効果を研究するゼンスロップ博士。動物実験では驚くべきほどの効果を実証できた博士だったが、人間でも同じような効果が得られるのかは未知数だった。そこで、ジャニスは自ら実験台となって液体酵素の注射を受ける。たちまちのうちに、かつての若さと美貌を取り戻したジャニス。だが、やがて徐々に体調がおかしくなり、時を同じくして彼女の周囲の人間が一人また一人と蜂女の餌食となって殺されていく。
 もちろん、蜂女の正体は実験の副作用で変身してしまったジャニスなわけだが、そのクリーチャー・デザインというのがある意味で驚愕すべきほどの粗雑な代物。ほとんど子供の落書きみたいなレベルなのだ。しかも、マスクを被って手袋をはめただけという過激な安っぽさ。ここまで大胆不敵だと逆に感心させられてしまうかもしれない。
 ただ、ハッキリ言って見どころはこの蜂女の造型のみ。30分もあれば片付いてしまうような話を無理やり73分に水増ししているため、とにかく無駄にダラダラとした展開ばかりが目立ってしまい、退屈なことこの上ないのだ。それでもなおカルト映画として長年に渡って語り継がれ、ジェニファー・ルービン主演の『ザ・フェイス』('95)というリメイク映画まで作られているのだから、低予算映画の世界というのも実に不思議なもんである。

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ジャニスは博士の研究に社運を賭けようとする

右腕のアーサー(W・ローリック)はその決定に懐疑的だ

社長秘書メアリー(B・モリス)はジャニスの身辺を探る

自ら進んで実験台となるジャニス

 舞台は大都会ニューヨーク。化粧品会社を経営する女社長ジャニス・スターリング(スーザン・キャボット)は、重役会議の席で残酷な現実を目の前に突き付けられていた。このところ会社の業績はずっと右肩下がり。役員にはっぱをかけるつもりで檄を飛ばすジャニスだったが、そんな彼女に若手営業マンのビリー(アンソニー・アイズリー)がモノを申す。業績悪化の原因はあなたにあるのだと。
 長年に渡って自社製品のイメージ・モデルを務めてきたジャニス。だが、最近の彼女は容色の衰えが著しく、化粧品の広告塔としては明らかに説得力が欠けてしまった。つまり、ユーザーに見限られてしまったのである。紛れもない事実なだけに、さすがのジャニスも一切の反論が出来なかった。何としてでも質の高い新商品を開発し、身を持ってその効果を証明しなくてはならない。
 そんな彼女の前に、ゼンスロップ博士(マイケル・マーク)という科学者が現れる。彼はスズメバチのロイヤルゼリーに含まれる酵素の若返り効果に着目し、その実用化について長いこと研究をしていた。ジャニスの見ている前で、年老いたモルモットに液体酵素を注入する博士。すると、その数分後、驚くべきことにモルモットは子供へ返ってしまった。その場で、ジャニスはゼンスロップ博士を雇うことにする。
 博士の研究に社運を賭け、研究に必要な資金や設備を提供することにしたジャニス。だが、彼女の右腕であるアーサー・クーパー(ウィリアム・ローリック)は博士の研究に胡散臭いものを感じ、社長秘書メアリー(バーボーラ・モリス)にジャニスと博士の動向を逐一報告するよう命じる。
 やがて博士の研究は最終段階を迎えたものの、人間にも同じような効果が得られるのかは未知数だった。そこで、ジャニスは自らが実験台となることを申し出る。当初は気が進まなかった博士だが、彼女の熱意に押されて同意した。だが、液体酵素を注射してはみたものの、なかなか目立った効果が表れない。焦ったジャニスは博士に内緒で、こっそりと液体酵素を余計に注射するのだった。
 翌朝、会社へ出勤したジャニスの姿を見た受付係のモーリーン(リン・カートライト)は驚きの表情を浮かべる。まるで別人のように美しく若返っていたからだ。その効果は誰の目にも明らかだった。これで我が社の業績も上向きになる、と意気揚々のジャニスだったが、ゼンスロップ博士はまだまだ商品化には慎重だった。なぜなら、危険な副作用があるかもしれないからだ。案の定、実験台に使った猫が突如として狂暴化し、博士へ向かって襲いかかって来た。ジャニスにも同様の副作用が起きるかもしれない。すぐに報告せねばならないと考えた博士だったが、その直後に交通事故で重傷を負ってしまう。
 病院へ担ぎ込まれた博士は意識不明の状態が続いていた。このままでは新商品の開発が滞ってしまう。焦ったジャニスは、勝手に液体酵素の注射を続けた。そんなある日、博士の研究が危険なものであることを証明しようと考えたアーサーは、夜中にこっそりと研究室へ忍び込む。すると、奇妙な虫の音が聞こえ、次の瞬間、世にも醜悪な蜂女が彼に襲いかかった。必死に抵抗を試みたアーサーだったが、あえなく蜂女の手にかかって殺されてしまう。
 蜂女の正体はジャニスだったが、彼女にはその自覚が全くない。だが、たびたび激しい頭痛に襲われるようになったことから、漠然とした健康上の不安を抱くようになっていた。一方、メアリーやビリーはアーサーの行方が分からないことを心配する。そうこうしているうちに、今度は会社の警備員(ブルーノ・ヴェソータ)が蜂女に襲われて姿を消してしまった。
 やがて、意識を取り戻したゼンスロップ博士が病院を退院し、看護婦の付き添いのもと研究室で寝泊まりすることとなる。だが、博士は事故以前の記憶を失っており、不安を訴えるジャニスの問題を解決することなど到底できない状態だった。すると、彼の目の前でジャニスは蜂女へと変身。看護婦を殺害して逃走し、さらに残業していたメアリーにまで襲いかかる。
 メアリーの悲鳴を聞いて駆け付けるビリーとゼンスロップ博士。果たして、今や身も心も完全に蜂女と化してしまったジャニスを救うことは出来るのだろうか…!?

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結果を急ぐジャニスは勝手に液体酵素を注射する

見違えるほど美しく若返ったジャニス

凶暴化したモルモットの猫が博士に襲いかかる

交通事故で意識不明の重体に陥った博士

 この翌年にあの傑作『アッシャー家の惨劇』('60)を世に送り出すこととなるロジャー・コーマン監督だが、残念ながら本作の演出にはその片鱗が全く見られない。なにしろ、当時の彼はビジネスを軌道に乗せるために質よりも量で勝負していた時期。本作も撮影期間を最小限に抑えるため、ほとんどのシーンをワン・テイクで撮っていたらしく、そのため会議室のテーブルに撮影カメラの影が映り込んでいたり、蜂女の手袋の隅っこから女優の素手が見えていたりといった、本来ならばNGテイクになるはずのショットがそのまま使われている。化粧品会社の重役の1人を演じている俳優が、別のシーンでは運送屋スタッフとして出てきたりするのもなかなか失笑もの。また、オープニングではマンハッタンの街頭風景のストック・フッテージを使用し、ニューヨークが舞台であることを明確に示しているにも関わらず、ロケ・シーンの風景は明らかにロサンゼルス界隈だったりする。
 脚本を手掛けたのは、『恐怖のロンドン塔』('62)や『古城の亡霊』('63)でもコーマン監督と組んだレオ・ゴードン。撮影監督には『失われた世界』('50)や『火星超特急』('51)のハリー・ニューマンが携わっている。また、コーマン監督の『血のバケツ』('59)や『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』('60)を手掛けたフレッド・カッツが音楽スコアを担当。さらに、その後AIPで『襲い狂う呪い』('65)や『ダンウィッチの怪』('70)といったホラー映画の佳作を監督するダニエル・ホラーが、美術監督としてクレジットされていることにも注目したい。
 なお、蜂農園で研究に没頭するゼンスロップ博士の姿を描いた冒頭のプロローグは後に追加撮影されたもので、コーマンの弟子に当たるジャック・ヒル監督(『スパイダー・ベイビー』『コフィ―』)が演出を手掛けている。

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研究室へ忍び込んだアーサーだったが…

博士は交通事故以前の記憶を失っていた

いきなり蜂女へと変身したジャニス

看護婦を殺害して逃亡するのだったが…

 主人公の女社長ジャニスを演じているのは、『女バイキングと大海獣』('57)や『機関銃(マシンガン)ケリー』('58)でもコーマン監督と組んだブルネット美女スーザン・キャボット。その秘書であるメアリー役のバーボーラ・モリスも、“Sorority Girls”('57)や『血のバケツ』('59)といったコーマン作品に出演していた女優だ。
 一方、ゼンスロップ博士役のマイケル・マークは、『フランケンシュタイン』('31)や『黒猫』('34)などの古典ホラーでチョイ役を務めていた俳優。営業マンのビルを演じているアンソニー・アイズリーは、日本でも大ヒットした人気ドラマ『ハワイアン・アイ』('59〜63)の主人公トレイシー役として有名な若手スターだった。
 そのほか、『ラブ・マシーン』('70)や『イルカの日』('73)のウィリアム・ローリック、コーマン作品の常連組ブルーノ・ヴェソータ、『プリティ・リーグ』('92)でジーナ・デイヴィス扮するヒロインの晩年を演じたリン・カートライトなどが脇を固めている。また、病院の医師役でコーマン監督が顔を出しているのも見逃せない。

 

 

新・猟奇島
Bloodlust ! (1961)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 BCI Eclipse (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤4枚組ボックス)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/68分/製作:アメリカ
※『The Madmen of Madoras』『They Saved Hitler's Brain』『Terrified』『The Devil's Hand
』『クリーピング・テラー』『デビルズ・ビレッジ』『ザ・ハース/生贄の町』を同時収録

特典映像
なし
監督:ラルフ・ブルック
製作:ラルフ・ブルック
   ロバート・H・バグリー
脚本:ラルフ・ブルック
撮影:リチャード・E・クーニャ
音楽:マイケル・ター
出演:ウィルトン・グラフ
   ジューン・ケニー
   ウォルター・ブルック
   ロバート・リード
   ユージン・パーソン
   ジョーン・ロラ
   トロイ・パターソン
   リリアン・ショーヴィン

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地図にない無人島へ近づいたボート

好奇心に駆られた若者たちは上陸することにする

慌てて止めようとするトニー船長(T・パターソン)

ジョニー(R・リード)は島の奥へ行こうと仲間を誘う

 無人島を舞台にした人間狩りの恐怖を描く傑作サバイバル・ホラー『猟奇島』('32)を、超激安バジェットにてリメイクしてしまった作品。ドライブイン・シアターの主要顧客はティーンエージャーだったわけだが、本作はさしずめドライブイン向けの“ティーン版『猟奇島』”といったところだろうか。バカンスの最中に無人島へ立ち寄った4人のティーン男女が、島に住む大富豪の道楽である人間狩りの獲物にされてしまうというお話だ。
 主人公はジョニー、ベティ、ピート、ジーニーの2組のティーン男女カップル。バカンスでクルージングを楽しんでいた彼らは、地図にない無人島を発見して好奇心から上陸してしまう。だが、そこにはバロー博士と名乗る怪しげな大富豪が住んでおり、主人公たちは彼の屋敷に閉じ込められてしまった。
 実は、博士は狙撃兵として従軍した戦争での快感が忘れられず、無人島を買い取ってジャングルの人間狩りを楽しんでいたのだ。しかも、仕留めた獲物を剥製にし、地下洞窟の秘密基地に陳列していた。要は、血に飢えた狂人だったのである。屋敷には博士の妻サンドラと助手のディーンが一緒に暮らしていたが、島からの脱出を企てたために殺され、やはり剥製にされてしまった。そして、いよいよ獲物としてジャングルへ放たれた若者たち。果たして、彼らは生きて島を脱出することが出来るのだろうか…!?
 正直なところ出来の悪い換骨奪胎としか言いようがないものの、それでもオリジナルが比類なき傑作であるがために、それなりに面白く見ることが出来てしまうのは皮肉というか何というか。仕留めた人間の皮を液体薬品で剥がして残りの肉塊を捨てたりとか、剥製にした人間を蝋人形館のごとく陳列したりとか、グロテスクで悪趣味な見せ場もとりあえず用意されている。C級ゲテモノ映画としてはまずまずの仕上がりだ。
 もちろん、思わず苦笑いしてしまうような突っ込みどころも満載。英雄気取りのリーダー格ジョニーはいつもなぜだか最悪な選択しかせずにイライラさせられるし、そもそも4人の元気な若者が小柄な老人一人を相手にして誰も力で抵抗しようとしないというのもおかしな話だ。まあ、さっさと組み伏せてしまったらそこでストーリーが終わってしまうので、作り手側としては若者たちの実力行使なんてのは選択肢に入ってなかったのかもしれないけど(笑)。
 そんなこんなで、原作が良ければどんなに低予算のクズ映画でも平均点くらいは稼げるという良い見本のような作品。とはいっても、真っ当な映画ファンにおススメできるような代物ではないのでご注意を。

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島を所有する大富豪バロー博士(W・グラフ)

博士の豪邸に泊まることとなった若者たちだが…

博士の妻サンドラ(L・ショーヴィン)と愛人ディーン

サンドラたちはジョニーとベティに博士の秘密を語る

 十代のカップル、ジョニー(ロバート・リード)とベティ(ジューン・ケニー)、ピート(ユージン・パーソン)とジーニー(ジョーン・ロラ)の4人は、トニー船長(トロイ・パターソン)のボートを借りてクルージングを楽しんでいた。すると、彼らは地図に載っていない無人島を発見する。リーダー格のジョニーは好奇心に駆られ、島へ上陸してみることを提案。酒で酔いつぶれているトニー船長を尻目に、4人は救命用ボートに乗って島へと向かった。その様子を見た船長はすぐに引き返すよう叫び声を上げるが、4人の若者の耳には届かない。酔いの回った船長はその場で眠りこけてしまった。
 島の海岸には古い難破船の残骸や遺留物が散らばっていた。もしかすると、島の奥にはお宝が眠っているかもしれない。そう考えたジョニーは、仲間を連れてジャングルの中へと分け入っていく。ところが、何者かが仕掛けた落とし穴にジョニーが転落。ベティたちが助け出そうとしていると、バロー博士(ウィルトン・グラフ)とその手下に身柄を捕えられてしまった。
 バロー博士はこの島の所有者で、妻のサンドラ(リリアン・ショーヴィン)や古い友人ディーン(ウォルター・ブルック)と共に広大な邸宅で暮らしている。夜は危険だから泊まっていきなさいという博士だったが、ジョニーたちはなにか薄気味悪いものを感じるのだった。そこで、ジョニーとベティ、ピートとジーニーの二手に分かれ、こっそりと屋敷の中を探ることにする。
 すると、博士の妻サンドラと同居人ディーンがジョニーとベティに接触した。2人は秘かに愛しあっており、この島から
脱出する機会を待っていたのだという。実は、バロー博士には恐ろしい秘密があった。彼は第二次世界大戦に狙撃兵として従軍し、その際に味わった人殺しの快感が忘れられず、身寄りのない人々を島へ連れてきては人間狩りを行っているのだという。
 その頃、屋敷の地下へと迷い込んだピートとジーニーは、そこで恐ろしい光景を目撃してしまった。水槽には若い女性の死体が沈められており、博士の部下であるホンドー(ボビー・ホール)は液体薬品を使って人間の皮を剥いでいる。肉や骨、内臓などは硫酸で溶かして捨てているようだった。
 恐怖に震え上がったピートとジーニーは、命からがら部屋へと戻ってジョニーたちと合流。ディーンとサンドラは彼らに協力を願い出た。水泳の得意な2人は泳いで近海を航行している船へと乗り込み、本土へ行って警察の助けを求める。2人が屋敷を抜け出して海岸へたどり着く間、ジョニーたちに警備員の注意を逸らして欲しいというのだ。
 計画は実行に移され、ディーンとサンドラは海岸へと向かう。一
方、ホンドーの行動を監視していたジョニーとベティは、屋敷の地下にある洞窟の秘密基地を発見する。すると、そこにはバロー博士が待ち構えていた。ジョニーたちに戦利品の数々を披露してみせる博士。それは、人間狩りで犠牲になった人々の剥製だった。その最新作はディーンとサンドラ。2人の計画は失敗したのである。
 博士はジョニーとピートを次の獲物に指名する。さらに、捕えられたトニー船長もそこに加わった。実は、船長は獲物となる人間を本土から連れてくる運び屋だったのだが、小遣い稼ぎのため博士に無断でジョニーたちのクルージング用として
ボートを貸したのだった。その罰として、彼も獲物にさせられることとなったのである。
 ジョニーたちには拳銃と銃弾一発が与えられた。バロー博士の武器はクロスボーと3本の矢。ベティとジーニーは博士の慰みものにさせられる運命にあった。ジャングルへと解き放たれたジョニー、ピート、トニー船長の3人。果たして、彼らは生き残ることが出来るのか?そして、無事に島から脱出することが出来るのだろうか?

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屋敷の地下へ迷い込んだピート(E・パーソン)とジーニー

下男ホンドー(B・ホール)が人間の剥製を作っている

屋敷を抜け出すディーン(W・ブルック)とサンドラ

ジョニーとベティは洞窟の秘密基地を発見した

 監督のラルフ・ブルックはもともとリチャード・E・クーニャ監督のゲテモノ映画“She Demons”('58)や“Giant from the Unknown”('58)などのスタッフとして働いていた人物で、これが監督デビュー作に当たる。本作でもその師匠であるクーニャ監督が撮影を務めており、他にもクーニャ作品の常連スタッフや俳優が参加。また、『アッシャー家の惨劇』('60)や『恐怖の振り子』('61)などのロジャー・コーマン作品で知られるマージョリー・コーソが衣装デザインを担当しているのもマニアには興味深いところかもしれない。
 なお、もともと本作は1959年に撮影されたものの配給先がなかなか決まらず、1961年にドライブイン・シアターやグラインドハウス専門の配給会社クラウン・インターナショナルによって全米公開されている。

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ディーンとサンドラも剥製にされてしまった

ジョニーとピートを次の獲物に指名するバロー博士

ジャングルに取り残されたジョニーとピート

獲物を追うバロー博士とホンドー

 バロー博士役を演じているウィルトン・グラフは、'40年代初頭から『墓標なき亡霊』('46)などの低予算映画を中心に活動してきた俳優。その大半がスクリーンにクレジットもされないような端役だったらしく、本作が彼にとって唯一の大役となったようだ。
 若者グループの中心人物ジョニー役を演じているのは、後に人気ドラマ『ゆかいなブレディ家』('68〜74)のパパ役でお茶の間の顔となったロバート・リード。撮影当時27歳ということで、ティーンの若者を演じるには少々無理があるように思われる。その恋人ベティ役には、ロジャー・コ
ーマンの『女バイキングと大海獣』('57)やバート・I・ゴードンの『吸血原子蜘蛛』('58)などのAIP作品で知られるB級女優ジューン・ケニー。また、後にブロードウェイ・ミュージカルの演出家としてトニー賞も受賞したユージン・パーソンがピート役を、“Sorority Girl”('57)や“Unwed Mother”('58)などの非行少女映画に出ていたジョーン・ロラがジーニー役を演じている。
 さらに、『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧』('84)の孤児院院長役でも知られるフランス人女優リリアン・ショーヴィン、ブルック監督の実兄でドラマ『グリーン・ホーネット』('66〜67)の検事役で有名なウォルター・ブルック、バート・I・ゴードン作品の常連だったトロイ・パターソンなどが出演している。

 

 

The Devil's Hand (1962)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

CULT_CLASSIC_DVD.JPG
(P)2007 BCI Eclipse (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤4枚組ボックス)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/71分/製作:アメリカ
※『The Madmen of Madoras』『They Saved Hitler's Brain』『Terrified』『新・猟奇島』『クリーピング・テラー』『デビルズ・ビレッジ』『ザ・ハース/生贄の町』を同時収録

特典映像
ドライブイン・シアター用CM集
監督:ウィリアム・J・ホール・ジュニア
製作:アルヴィン・K・バビス
脚本:ジョー・ヘイムス
撮影:メレディス・M・ニコルソン
音楽:アリー・ファーガソン
   マイケル・ター
出演:リンダ・クリスチャン
   ロバート・アルダ
   アドリアナ・ウェルテル
   ニール・ハミルトン
   ジャンヌ・カーメン

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恋人との結婚を控えた男性リック(R・アルダ)

彼は夜毎見る悪夢に悩まされていた

それは夜空でひたすら舞い踊り続ける謎の美女

人形店で夢に出てくる美女に瓜二つの人形を発見する

 邪神崇拝のカルト教団に巻き込まれた男性の恐怖体験を描いたオカルト映画なのだが、これが思わず頭を抱えてしまうほど怖くない(笑)。そもそも、作り手側に観客を怖がらせようというつもりがあるのかどうか定かではないのだが、とにかく何もかもがホラー映画的観点からすると大胆なまでにセンスがズレまくっている。世にも奇妙なクズ映画。そういった意味では、キワモノ好きの映画ファンならば一度は見ておかねばならんだろう。
 主人公は家庭的で素朴な女性ドナと結婚を控えた男性リック。このところ彼は夜な夜な恐ろしい(?)悪夢に悩まされている。それは、夜空で妖艶なブロンド美女がひたすら舞い踊り続けるというものだった。そのおかげで、努力して掴んだ新しい仕事まで辞めてしまったリックは、何か見えない力によって導かれていった怪しげな人形店で、そのブロンド美女にそっくりな人形を発見する。
 店主ラモンによると、その人形を注文したのはリック自身だという。もちろん、彼には全く身に覚えがない。キツネに鼻をつままれた状態で、その美女ビアンカのもとへ人形を届けに行った彼は、たちまち彼女に恋をしてしまった。ところが、ビアンカの正体は邪神を崇拝するカルト教団の魔女。ラモンも彼女とグルだった。リックを教団へ引き込んだ2人は、ドナにソックリな人形へ針を刺して彼女を病気にさせる。はてさて、いつになったらリックは正気に戻って教団の呪縛から逃れるのだろうか…?という、本当にどうでもいいお話なのだ。
 とりあえず、最初から最後まで優柔不断で気が弱くて誘惑に負けてばかりの主人公リックの行動心理が意味不明。ドナからの手紙をニヤニヤしながら破り捨てたかと思ったら、突然思い出したように病院へ見舞いに訪れ、必ず君を助けてあげるなどと宣言し、でもその直後にはビアンカのアパートでキスをおねだりしているようなダメ男なのだ。そもそも、身持ちの堅そうなドナがなぜこんな男に惚れぬいているのかも謎。要は、キャラ設定に一切の説得力がないのである。
 だいたい、リックを悩ませる悪夢というのが、夜空でひたすら舞い踊るネグリジェ姿のブロンド美女ってのがね…(笑)。それの一体どこが悪夢なんじゃい!と突っ込みたくもなってしまうというもの。悪夢というよりもエロ親父の妄想だろうに、それは。しかも、リックをカルト教団に引き込んだビアンカとラモンが、結局何が目的で彼に目を付けたのか、彼を仲間に入れて何がしたいのか、ということが最後の最後まで殆ど語られず。まあ、どうやらビアンカがヒマつぶしのオモチャとして彼を弄んでいるだけなようなのだが、そんなもんをいちいち映画にされても困るんだよね、としか言いようがない(笑)。
 そんな具合で、どこを褒めたらいいのか分からないくらいにバカバカしい映画なのだが、そのトンチンカンぶりが実は最大の見所だったりもする。そう、なんだかんだ言って、気が付いたら結構楽しんでしまっているのだ。それが作り手側の狙いだったりして。ま、んなわけないと思うけどね(笑)。

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その人形はリック自身が注文したものだという

ドナ(A・ウェルテル)にソックリな人形もあった

ドナ人形に針を突き刺す店主ラモン(N・ハミルトン)

ドナは心筋梗塞で入院することに

 地味だが優しい恋人ドナ(アドリアナ・ウェルテル)との結婚を控えた男性リック(ロバート・アルダ)は、夜な夜な見る悪夢に悩まされていた。それは、白いネグリジェを着たブロンド美女が夜空で舞い踊るというもの。すっかり神経が参ってしまった彼は、せっかく転職をしたばかりの新しい職場を辞めてしまった。そんなある晩、彼は何か見えない力に引き寄せられ、一件の怪しげな人形店へやって来る。すると、夢の中に出てくる美女と瓜二つの人形が店内に飾られていた。
 その翌日、リックはドナを伴ってその人形店を訪れる。店主ラモン(ニール・ハミルトン)によると、その人形を注文したのはリック自身だった。だが、彼には身に覚えがない。しかも、店内にはドナに瓜二つの人形まで置いてあった。ところが、店主はどの人形を注文したのは別の女性で、モデルになっているのはドナではないと言い張る。わけが分からなくなった2人は人形店を後にした。
 すると、店主ラモンはおもむろにドナ人形を手に取り、店の地下にある集会所の祭壇へと立つ。そして、なにか呪文のようなものを唱えながら、人形に針を突き刺した。するとその瞬間、ドナは胸に激痛を覚えて倒れてしまう。そのまま彼女は病院へ入院することとなってしまった。
 その晩、再びブロンド美女が夢の中に現れ、今度はリックに向かって話しかける。私の人形を届けに来て、住所は写真の裏に書かれているわと。翌日、すぐに人形店へと向かったリックは人形を受け取り、写真の裏に書かれた住所へと届けに行くことにした。本人に会えば何か分かることがあるかもしれないからだ。
 美女の名前はビアンカ(リンダ・クリスチャン)。その妖艶な美しさにたちまち一目ぼれしてしまったリックは、ドナという婚約者がいるにも関わらず、すっかりビアンカに骨抜きにされてしまう。彼女は邪悪な神を崇拝するカルト教団の魔女で、その魔法の力を使って彼の夢の中に出てきたのだった。そんな驚くべき事実を知らされても、リックはひたすら彼女に甘えるばかり。魔女だろうが何だろうが、もはや彼には関係がなかった。
 この夜をさかいにドナの存在をすっかり忘れ去ってしまったリック。なにしろ、ビアンカと一緒に競馬へ行けば大当たりし、カジノへ行っても大儲け。一度に美女と大金が手に入ったのだから、そりゃもう笑いが止まらない。カルト教団の集会にだって喜んで参加しようというもんだ。もちろん、ドナからの手紙が届いたって、おととい来やがれと言わんばかりの冷淡な笑みを浮かべて破り捨てる始末。
 だが、ビアンカとラモンに忠誠心を試されるような出来事があり、不安になった彼は突然ドナのことを思い出す。そういえば、ドナにソックリな人形が店に置いてあり、なぜかその胸に針がさされていた。きっとあれが原因でドナは病気になったに違いない。そう考えた彼はドナを見舞って彼女を救うことを宣言。その晩、人形店に忍び込み、こっそりと人形から針を抜き取った。だが、そこへラモンが帰宅。慌てたリックは地下の集会場から外へと逃げる。
 その足でビアンカのアパートを訪ねたリックは、いつも通りに彼女の胸で甘えまくり、焦らされながらも彼女のキスをおねだりする。ところが、カルト教団の儀式で裏切り者を成敗することとなり、リックは自分が殺されてしまうのではないかと震え上がる。だが、ラモンの魔術で殺されたのは、教団の内部調査をしていた新聞記者だった。
 それから暫くして、体調の回復したドナが病院を無事に退院した。看護婦として忍び込ませていたスパイからその事実を知らされたビアンカは、ようやくリックの裏切りに気付き、恐ろしい復讐計画を実行に移す…。

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謎の美女ビアンカ(L・クリスチャン)に一目惚れするリック

ビアンカの正体はカルト教団の魔女だった

邪神を崇拝するカルト教団の集会

リックは教団への忠誠を誓う

 監督を手掛けたウィリアム・J・ホール・ジュニアは、主にテレビの西部劇ドラマなどで活躍した人。もともと、本作はレックス・カールトンという人物が企画を立て、1959年に“Witchcraft”というタイトルで撮影に入った。このカールトンという人物はニューヨークの2流舞台製作者で、他にもプロレスのプロモーターなどをしていたという少々怪しげなところのある男だったらしい。
 で、彼はビジネス・パートナーのリック・ニューベリーと『恐怖のメロディ』('70)で有名な脚本家ジョー・ヘイムスの協力を得て企画書と脚本を完成し、アルヴィン・K・バブスという人物から製作費を出資してもらうこととなった。撮影のスタートは1959年2月。ところが、カールトンとニューベリーの2人が製作費をちょろまかしていたことがバレテしまい、バブスは裁判所へ訴え出て2人をクビにしてしまう。なので、本編には彼らの名前は一切クレジットされていない。
 撮影監督を担当したのは『月へのミサイル』('58)や『宇宙のデッドライン』('60)などのB級SF映画で知られるメレディス・M・ニコルソン。また、『アルゴ探検隊の大冒険』('63)や『シャラコ』('68)のハーバート・スミスが美術デザインに関わっており、当時ハリウッド・セレブも通っていた有名なレストラン“マ・メゾン”の経営者ピエール・グロルーが共同製作者に名を連ねている。

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ビアンカのおかげで大金持ちになったリック

こっそりとドナ人形から針を抜き取る

慌てて集会所へ逃げ込んだリックだったが…

裏切り者を魔術で成敗することとなってしまう

 カルト教団の魔女ビアンカを演じているのは、ハリウッドの大物二枚目スター、タイロン・パワーの夫人として有名なセクシー女優リンダ・クリスチャン。2人は'56年に離婚していたのだが、'58年暮れにタイロンが44歳の若さで急逝してしまう。子供の養育費を確保するために遺産相続の権利を訴え出たものの、とりあえず仕事をせにゃなるまいということで女優復帰を決意。そのカムバック作となったのが、よりによってこの作品だった。どうやら彼女は“マ・メゾン”の常連客だったらしく、本作の共同製作を務める経営者グロルーに誘われて出演を決めたようだ。もともと綺麗なだけが取り柄の大根女優なので、まあ、十分に役目は果たしていると言えよう。
 そんなビアンカにのめり込んでしまうダメ男リック役を演じているのは、名優アラン・アルダの実父としても…というより、ほぼアラン・アルダの実父として有名なロバート・アルダ。『アメリカ交響楽』('45)のガーシュウィン役で人気スターになった人だったが、その後は全くの鳴かず飛ばずで低予算映画路線へ。晩年はイタリアのB級娯楽映画にもたびたび出演していた。
 で、ちょっと興味深いのがリックの婚約者ドナ役を演じているアドリアナ・ウェルテル。メキシコ産ゴシック・ホラーの傑作“El Vampiro”('57)シリーズの可憐なヒロインとして有名な女優さんだが、実はリンダ・クリスチャンの実の妹に当たるのだ。姉妹での共演は後にも先にもこれ一本だけ。しかも、アドリアナにとっては本作が唯一のアメリカ映画出演だった。
 そのほか、人気ドラマ『バットマン』('66〜68)のゴードン警察署長役で知られるニール・ハミルトン、ケネディ兄弟やプレスリーなどと浮名を流したことでも有名なグラマー女優ジャンヌ・カーメンが出演。また、サイレント時代の美人コメディエンヌとして活躍したガートルード・アスターが、カルト教団の信者の老婦人としてチラッと顔を出している。

 

 

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