DRIVE IN CLASSICS
PART 1

 

 1933年にアメリカで誕生したドライブ・イン・シアター。広い駐車場に巨大なスクリーンを設置し、車に乗ったまま映画を見ることが出来る屋外型の映画館のことだ。広大な土地の余ったアメリカならではのシステムであり、常設の映画館が少ない郊外や田舎を中心に幅広く親しまれた施設と言えるだろう。
 このドライブ・イン・シアターが全盛期を迎えたのは1950〜60年代年代。2本立て興行が主流で、最新のハリウッド大作からB級映画まで、様々なジャンルの映画が上映された。車に乗ったまま見ることが出来るという便利さもあって、特に小さな子供のいる家族連れや学生グループ、恋人同士などに親しまれたようだ。
 中でも、暇をもてあました学生たちのたまり場や若いカップルのデート・スポットとして利用されることが多かったという。それゆえに、上映される作品もそうした若者のニーズを満たす娯楽映画が重宝され、ロックン・ロールをフィーチャーした音楽映画や不良少年映画、チープなスリルを売り物にするホラー映画やサスペンス映画、SF映画、アクション映画といった、言うなれば暇つぶしに適したような軽いB級映画が2〜3本立てで次々と上映されるように。全盛期には、ドライブ・イン・シアター専用として低予算のB級・C級映画を製作・配給する会社も数多くあった。
 しかし、70年代に入ると地価の高騰で経営が困難となり、さらに若者たちによる不良行為や犯罪の温床としてドライブ・イン・シアターそのものの存在が問題視されるようになり、急速な顧客離れによって一気に衰退してしまう。低予算映画の供給先も大都市や地方都市の繁華街にあるうらぶれた映画館、いわゆるグラインドハウスへと移行。全盛期には全米で5000ヶ所近くあったドライブ・イン・シアターだが、1990年には1000ヶ所以下へと落ち込んでしまった。
 それでも、ドライブ・イン・シアターは古き良きアメリカを象徴する懐かしい文化としていまだに愛されており、ここ数年は徐々にシアター数を増やしつつあるという。また、かつてドライブ・イン・シアターを中心に上映されて親しまれた低予算映画の数々も、ドライブ・イン・クラシックとして根強い人気を誇っている。中にはカルト映画と呼ばれるような作品も少なくない。
 ということで、ここでは1950〜60年代のドライブ・イン・シアター全盛期に作られた低予算映画をご紹介。当時はヨーロッパやアジアのB級映画もドライブ・イン・シアター名物として親しまれたが、当コーナーではあくまでもアメリカの国産映画に限定してセレクトしてみたい。
 なお、当時はアメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ(AIP)もドライブ;イン・シアター向けに数多くのB級映画を供給していたが、当HP内で別コーナーのシリーズを設けているので、そちらを参照していただきたい。

 

 

双頭の殺人鬼
The Manster (1959)
日本では1959年劇場公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2002 Alpha Video (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語・日本語/字幕:なし/地域コード:ALL/72分/製作:アメリカ・日本

特典映像
なし

監督:ジョージ・P・ブレイクストン
   ケネス・G・クレイン
製作:ジョージ・P・ブレイクストン
原案:ジョージ・P・ブレイクストン
脚本:ウィリアム・J・シェルドン
撮影:デヴィッド・メイソン
音楽:小川寛興
出演:ピーター・ダイネリー
   ジェーン・ヒルトン
   中村哲
   テリー・ジマーン
   ノーマン・ヴァン・ハウリー
   ジェリー伊藤
   武智豊子

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日本の温泉旅館で凄惨な殺人事件が発生

ロバート鈴木博士(中村哲)

鈴木博士のラボに現われたモンスター

 高度経済成長期にさしかかった日本を舞台に、アメリカ人の特派員記者が世にも醜悪な双頭の怪物となって殺戮を繰り広げるという日米合作ゲテモノ・ホラー。実際に東京や箱根などでロケ撮影も行われており、日本人にとってはいろいろな意味で興味深い映画だと言えよう。
 主人公はアメリカ人の新聞記者ラリー。高名な日本の科学者ロバート鈴木博士のもとを取材に訪れた彼は、逆に実験台として怪しげな薬を投与されてしまう。そうとは知らず、鈴木博士に連れられて日本各地を豪遊し続けるラリー。やがて、彼の体に異変が起り始める。
 突然襲ってくる肩や手の痛み。さらに、夜な夜な街を徘徊しては殺人を繰り広げるようになるが、ラリー自身は全く記憶がない。そればかりか症状はどんどんとエスカレートし、ついには右の肩からもう一つの頭が現われ、血に飢えた凶暴なモンスターと化してしまう。
 製作及び共同監督、原案を手掛けたジョージ・P・ブレイクストンは、子役出身の映画監督兼プロデューサー。GHQ占領下の日本で“Oriental Evil”(50)と『間諜(スパイ)777』(52)という2本の低予算映画を撮った経験があり、それなりに日本通ではあったようだ。
 なので、当時のアメリカ映画にしては日本や日本人に関する描写が至極まともで、そればかりか日本の伝統文化に対する敬意や親しみのようなものまで感じさせられるのは興味深い。本来は悪人であるはずの鈴木博士にしても、メロドラマ的なバックグランドを挿入しながら、かなり人間臭い人物として同情的に描いている。
 一方、遺伝子操作によって人間が物理的に分離するという荒唐無稽なアイディアはともかく、様々な人間模様を織り交ぜたストーリーは決して悪い出来ではないし、夜のロケーション撮影を多用したサスペンスやアクションの演出もなかなか見応えがある。全体的にどこか新東宝の怪談映画を思わせるような雰囲気があるのも面白いし、ヒュ〜ドロドロといった日本的な怖がらせ音楽がまた和洋折衷な情緒をかもし出す。
 そして、最大の見どころとも言えるモンスターの特殊メイク。よく見るといかにも作り物っぽい粗雑な出来栄えだが、登場シーンのほとんどが暗闇というおかげもあって、その粗雑さはほとんど気にならない。それどころか、暗闇の中からモンスターが姿を見せるシーンはなかなかショッキングだし、ダミー・ヘッドが絶妙なタイミングで口をパクパクさせてみせるシーンもかなり不気味。殺人シーンが全てオフ・カメラで描かれているのは不満の残るところだが、とりあえず特殊メイクの醜悪すぎるデザインだけでも十分に合格だ。低予算ホラーの好きなファンなら一度は見ておきたい名作である。

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鈴木博士を取材するアメリカ人記者ラリー(P・ダイネリー)

鈴木博士の接待を受けて上機嫌のラリー

ラリーは博士の助手タラ(T・ジマーン)にゾッコンとなる

 とある温泉宿で宿泊客の女性が次々と殺される。犯人は類人猿のようなモンスターだ。事件を知ったロバート鈴木博士(中村哲)は急いで研究所へ戻る。地下のラボへ降りて行くと、そこには例のモンスターが。博士はモンスターのことを“ケンジ”と呼び、ガスを使って泣く泣くその息の根をとめた。
 アメリカの新聞社ワールド・プレスの東京特派員ラリー・スタンフォード(ピーター・ダイネリー)は、火山地帯に研究所を構える高名な科学者ロバート鈴木博士のもとをインタビューに訪れる。彼は数日後にニューヨークで待つ妻のもとへ戻る予定で、これが日本における最後の仕事となるはずだった。
 その取材の最中、鈴木博士はラリーのお茶に睡眠薬を混ぜる。そして、彼が眠ったことを確認して右肩に薬品を注射をした。というのも、博士が現在没頭している遺伝子操作研究の実験台として、ラリーは実に理想的な体格をしていたからだ。
 何も気付かないまま眠りから醒めたラリー。博士の人柄にすっかり魅せられた彼は、アメリカへ帰る前に日本の素晴らしい観光名所を巡らないかという博士の誘いを喜んで受ける。接待に次ぐ接待ですっかり自堕落な生活を送るようになったラリーは、帰国の時期が来ても鈴木博士と一緒に豪遊の日々を続けていた。そんな彼を心配する同僚イアン(ノーマン・ヴァン・ハウリー)だったが、ラリーはどんな言葉にも一切を耳を貸さなかった。
 鈴木博士はラリーをさらに骨抜きにするため、妖艶な助手タラ(テリー・ジマーン)に彼を誘惑させる。その思惑通り、すっかりタラの魅力に溺れていくラリー。夫の音信不通を心配した妻リンダ(ジェーン・ヒルトン)がニューヨークから駆けつけるものの、ラリーはすっかり別人になっていた。
 それでも、愛する夫を正気に戻そうと根気強く説得を続けようとするリンダ。だが、ラリーの常軌を逸した言動には別の理由があった。彼自身も説明のつかない体の異変だ。最初は肩や腕が時々痛む程度だった。しかし、それは次第に大きくなり、遂には右腕が毛むくじゃらに変貌してしまう。
 途方に暮れながら夜の街を徘徊するラリー。ふとお寺に迷い込んだ彼は仏像を見ているうちに表情が豹変し、無意識のうちに僧侶を殺害していた。自宅で正気に戻った彼は、手に数珠が握られていることに気付いて困惑する。
 その後も、夜な夜な住宅街や繁華街を歩いては女性を次々と殺害していくラリー。思い悩んだ挙句、彼は赤坂に住むアメリカ人の精神科医ジェンセン博士(アラン・タリトン)のもとを訪れる。その尋常ではない様子に危機感を覚えて警察を呼ぶジェンセン博士。だが次の瞬間、双頭の怪物となったラリーが博士を襲った。
 現場を検証した警察のアイダ警視(ジェリー伊藤)は、一連の女性殺害事件及び僧侶殺し、ジェンセン博士殺しの犯人が同一人物であると断定する。一方、ラリーの留守宅を訪れて数珠を発見したイアンは、ラリーが数日間行方不明だということ、そして彼がジェンセン博士と顔見知りだったことなどをアイダ警視に報告。念のため、ラリーの自宅を家宅捜査することにした警察は、今まさに妻リンダに襲いかかろうとしているラリーを発見する。
 あと一歩のところでラリーに逃げられた警察はタラの自宅へと向かうが、既に荒らされた後だった。ラリーを指名手配するアイダ警視。その頃、モンスターと化したラリーは鈴木博士の研究所へと向かっていた・・・。

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芸者遊びに興じるラリーとタラ

ラリーの妻リンダ(J・ヒルトン)がアメリカから来た

夜の街を徘徊するラリー

 共同監督のケネス・G・クレインはもともと編集マンの出身で、『昆虫怪獣の襲来』(58)などの低予算映画の演出を何本か手掛けたことがある人物。脚本を書いたウィリアム・J・シェルドンは、これが唯一の劇場用映画の仕事だったようだ。
 撮影のデヴィッド・メイソンはイギリス出身のカメラマンで、巨匠マイケル・パウエル監督の名作『潜水艦轟沈す』(41)などのカメラ助手を務めていたらしい。また、音楽には映画版『月光仮面』シリーズやテレビの『少年ジェット』、『怪傑ハリマオ』などで知られる作曲家、小川寛興がクレジットされている。
 なお、アメリカ本国では“The Manster”というタイトルで劇場公開された本作、日本を含む世界各国では“The Split”というインターナショナル・タイトルが使用された。

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ラリーの肩に目玉が現われるショック・シーン

双頭の怪物へと変身したラリー

ラリーの行方を追う警察のアイダ警視(J・伊藤)

 主人公ラリー役を演じているピーター・ダイネリーは、イギリスの人気TV人形劇『サンダーバード』シリーズのヒーロー、ジェフ・トレイシーの声優として有名な役者。ただ、確かに声は印象的であるものの見た目が非常に地味で華に欠け、映画俳優としては全く伸びなかった。本作でも、脇を固める中村哲やテリー・ジマーン、ジェリー伊藤といった役者陣に比べて圧倒的に存在感が薄い。
 その妻リンダ役を演じているジェーン・ヒルトンは、私生活でもダイネリーの奥さんだったイギリスのB級映画女優。低予算のフィルム・ノワールやサスペンス、ホラー映画などの“悩み苦しむ女性”役を得意とした人で、ブリティッシュ・ホラーの名作『殺人鬼登場』(60)にも顔を出していた。
 鈴木博士役の中村哲は『地球防衛軍』(57)や『美女と液体人間』(58)、『モスラ』(61)などの和製SF映画や怪奇映画の軍人役、科学者役として欠かせなかった名脇役。英語が堪能であったことから、外国映画や合作映画でも重宝された役者だった。ブレイクストン監督の『諜報(スパイ)777』にも出演している。
 また、警察のアイダ警視役には懐かしいジェリー伊藤が登場。LA育ちの日米ハーフだけあって、英語のセリフはペラペラだ。かえって、日本語のセリフの方がおぼつかない様子で、英語訛りもかなり強い。少なくとも、筆者がもの心ついてからテレビで見た彼は流暢な日本語を話していたと記憶しているのだが、恐らく当時はまだ日本語が不得手だったのかもしれない。
 そのほか、タラ役のテリー・ジマーン、イアン役のノーマン・ヴァン・ハウリーは、どちらも揃ってこれが唯一の映画出演作。もしかしたら、当時日本在住の外国人だったのではなかろうかとも思うのだが、真相やいかに?

 

 

とむらいレストラン
The Undertaker and His Pals (1966)

日本では劇場未公開
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2007 Cheezy Flicks (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー(一部セピア)/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし
/地域コード:ALL/66分/製作:アメリカ

特典映像
ドライブ・イン・シアターCM集
監督:T・L・P・スワイスグッド
製作:アレハンドロ・グラッタン
脚本:T・L・P・スワイスグッド
撮影:アンドリュー・ヤンツァック
音楽:ジョニー・ホワイト
出演:ウォレーヌ・オット
   ラッド・フルトン
   レイ・ダニス
   マーティ・フリードマン
   サリー・フレイ
   リック・クーパー
特別出演:ロバート・ロウリー

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深夜の町を走る怪しげなバイカー3人組

サリー・ラムという女性が殺される

その凄惨な現場には写真の水兵もビックリ(?)

 悪徳葬儀屋と場末のレストランのオーナー及びコックがタッグを組み、黒づくめのバイカー姿で次々と女性を殺害。葬儀屋は殺された女性の遺族や友人に法外な葬儀料を請求してぼろ儲けし、レストランでは女性の死体の一部を食材に使って儲ける・・・というのが大まかなお話。そんな彼らの悪だくみに気付いた私立探偵と美人秘書が、警察と協力して3人を追いつめるというわけだ。
 どことなく、一連のハーシェル・ゴードン・ルイス作品を彷彿とさせる雰囲気のこの映画。とりあえずジャンル的にはホラー・コメディに分類されるのだろうが、ホラーとしてもコメディとしてもまるっきり行き当たりばったりの中途半端さ。ギャグのセンスはユルいことこの上ないし、スリルもサスペンスも皆無に等しい。スプラッター描写だって非常にお粗末。まことにチープでお寒いトラッシュ映画なのだが、なぜか愛嬌があって憎めない迷作だったりするのが実に悩ましい(笑)。

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首謀者は葬儀屋のモート(R・ダニス)

場末のレストランで食事する探偵ハリー(R・フルトン)

オーナーのスパイク(M・フリードマン)も犯人一味だ

 ある晩、アパートに一人暮らしの女性サリー・ラムが黒づくめのバイカー3人組によって殺害される。犯人の正体は葬儀屋モート(レイ・ダニス)とレストランのオーナー、スパイク(マーティ・フリードマン)、そして変わり者のコック、ドク(リック・クーパー)だった。モートはサリーの両親に莫大な葬儀料を請求。一方のスパイクとドクはサリーの脚を“ラム肉”として料理の食材に使う。ドクは医者志望の人体破壊マニアで、食材を届けに来た雑貨屋の店員まで殺す始末だ。
 その日、売れない私立探偵ハリー(ラッド・フルトン)は秘書アン(サリー・フレイ)を連れてスパイクの店を訪れた。そしてその晩、3人組によってアンが殺害される。フライデー(ウォレーヌ・オット)というブロンド美女が新しい秘書として雇われるが、彼女もランチを食べにスパイクの店を訪れて殺されてしまった。
 ハリーにアンの葬儀代を踏み倒されてお金に困ったモートンは、スパイクとドクを連れてサウナへ行き、中年のマダムをチェーンで撲殺する。ところが、そこへやって来た女性の友人たちに目撃され、さらには拳銃で攻撃されてバイクのナンバー・プレートを落としてしまう。
 これが原因で仲間割れを起こした3人。なぜか失態を繰り広げたモートではなく、スパイクが硫酸に溶かされて殺される。一方、警察はナンバー・プレートからバイクの持ち主がモートであることを突き止め、彼がスパイクやドックと組んで殺人を繰り返していたものと睨む。
 ハリーはフライデーの双子の姉妹サーズデー(ウォレーヌ・オット)と共にスパイクの店を調べた。そんな二人の後を秘かに尾行するモートとドク。ドライブ中に車がガス欠を起こし、ハリーが助けを呼ぶために町へ引き返した隙を狙って、彼らは一人残されたサーズデーに襲いかかる・・・。

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ハリーの秘書アン(S・フライ)を狙う3人

アンも惨殺されてしまった

刑事(R・ロウリー)の捜査に協力するハリー

 冒頭のサリー・ラム殺害シーンでは、恋人らしき水兵の写真がサリーの殺される現場を目撃(?)して驚愕の表情に。さらには、彼女の血まみれの死体を見てトホホ顔を見せるというダメ押しまで用意されている。
 そのほか、サリーの脚を使った料理メニューが“Leg of Lamb(ラムの脚)”だったり、葬儀屋の名前が“Shady Rest Funeral Parlor(怪しげな葬儀屋)”だったりと、笑うに笑えないダジャレギャグのオンパレードは確かに下らないのだが、個人的には結構嫌いじゃなかったりする。フライデーの内臓を抉り出したドクが、思わず“彼女は中身も美しいんだね”などと呟くシーンもちょっとニンマリ。あまりにもマヌケな葬儀屋モートの最期もケッサクだ。
 全体的にノンビリとし過ぎたテンポは退屈に感じる人も多いだろうし、ぶつ切りに近い下手っクソな編集や著しく安定感に欠けた素人臭いカメラもハッキリ言って酷い代物。しかしながら、このノホホンと雰囲気といい、アッケラカンと開き直った感のあるデタラメさといい、この種のクズ映画が好きな人にはたまらない魅力があることも確か。おいそれと他人にオススメ出来るような映画ではないが、その一方でどうしても嫌いになれない作品の一つでもある。
 監督兼脚本のT・L・P・スワイスグッドはもともと脚本家の出身で、名作テレビ・ドラマ『アンタッチャブル』の脚本を書いたこともあったらしい。監督作はこれ一本だけだったようだが、まあ、この完成度ではそれも致し方ないというか当然だったのかもしれない。
 そのほか、撮影のアンドリュー・ヤンツァックや音楽のジョニー・ホワイト、美術監督のマイク・マクロスキーなど、スタッフは当時ドライブ・イン向けの低予算映画に携わっていた面々ばかり。その中で、編集を担当したトーマス・ルーサーという人物だけは、どうやら未経験の素人だった模様だ。また、特殊効果を手掛けたスティーヴ・カーカスが、その後『イージー・ライダー』(69)に参加しているという事実も興味深い。

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キッチンをのぞいたがために殺される雑貨屋の店員

フライデーの体を解剖するドク(R・クーパー)

フライデーの双子の姉妹サーズデー(W・オット)

 私立探偵ハリー役のラッド・フルトンは、本名をジェームズ・ウェストモアランドという俳優。あのロック・ハドソンを育てたエージェントの秘蔵っ子として売り出されたものの、全くの泣かず飛ばずに終ってしまったという残念な人だった。
 その秘書となるフライデーとサーズデイの二役を演じているウォレーヌ・オットは、サンドラ・ディー主演の青春映画『電話にご用心』(62)などで売り出されたハリウッド女優。こちらも泣かず飛ばずで、当時はメジャー映画の端役やテレビ・ドラマのゲストなどで食いつないでいた。確かに美人であることは確かだが、よくいるタイプのカリフォルニア・ブロンドと言えなくもない。
 そして、本作の真の主役と言えるのが、葬儀屋モート役のレイ・ダニス。テッド・V・マイケルズの悪趣味映画『人間ミンチ』(71)にも出ていた役者だが、どことなく人の神経を逆撫でするような顔つきや物腰はまさに適役。スパイク役のマーティ・フリードマン、ドク役のリック・クーパーを含め、そこはかとなく漂う怪しげな安っぽさはZ級映画俳優ならではの持ち味・・・なんて言ったら失礼か(笑)いずれにせよ、スター候補崩れの役者よりも作品世界に相応しい存在感があることは確かだろう。個人的には最初の秘書アン役を演じているサリー・フレイの安っぽいお色気美人ぶりもお気に入りだ。
 ちなみに、警察の刑事役として特別出演しているロバート・ロウリーは戦前から戦中にかけてハリウッドの売れっ子スターだった人で、戦後はテレビドラマ『バットマン&ロビン』のバットマン役を演じたことでも知られる俳優。当時も脇役とはいえ普通にメジャー映画へ出演していたのだが、やはりお小遣いが必要だったのだろうか。

 

 

Sting of Death (1965)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2001 Something Weird Video (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
ALL/80分/製作:アメリカ
※『タートゥ/死霊の呪い』とカップリング

特典映像
W・グルフェ予告編コレクション
W・グルフェ監督による音声解説
製作者R・フィンクの短編映画
監督:ウィリアム・グルフェ
製作:リチャード・S・フィンク
脚本:アル・デンプシー
   ウィリアム・カーウィン
撮影:フリオ・チャヴェス
   フリオ・ロルダン
音楽:アル・ジェイコブス
   ロン・E・ノーマン
主題歌:ニール・セダカ
出演:ジョー・モリソン
   ヴァレリー・ホーキンス
   ジョン・ヴェラ
   ジャック・ニーグル
   サンディ・リー・ケイン
   ディアナ・ランド
   ロイス・エテルマン
   ブランシュ・デヴェルー
   ダグ・ホバート

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久々に帰省した女子大生カレン(V・ホーキンス)

カレンは父の助手ジョン(J・モリソン)に惹かれる

カレンの親友たちもジョンに興味津々

 生まれ育ったフロリダ州マイアミを活動の拠点とし、大ヒット映画『ウィラード』をパクッた70年代グラインドハウス・クラシックの定番『残酷ヘビ地獄』(72)の監督として知られるウィリアム・グルフェ。その初期代表作の一つとして一部マニアに知られる超低予算映画が、この“Sting of Death”である。
 他のグルフェ監督作品と同様、舞台となるのはフロリダの湿地帯。川べりで次々と行方不明になる人々。なんと、犯人は巨大なクラゲ人間だった・・・!ということで、湿地帯に住む科学者のもとへ大学生の愛娘が友達を連れて里帰りし、彼女たちを歓迎するために地元の若者たちが集合。そこへクラゲ人間が現われ、たちまち大パニックに陥る。果たしてクラゲ人間の正体とは?そしてその目的とは・・・?
 まず、スキューバ用のウェット・スーツに赤や青のコードを巻きつけ、頭に半透明のゴミ袋を被っただけというクラゲ人間のショボイ姿にズッコケること必至。当然のことながらその正体は人間なのだが、それにしてもアンマリなイデタチには目まいすら覚えてしまうはずだ。しかも、誰が犯人なのかすぐにバレてしまう。
 そう、とにかく全編を通してお安いことこの上ない作品である。一応、ボートが転覆してクラゲの大群に若者が大量虐殺されるというパニック・シーンもあるのだが、肝心のクラゲは小さなビニール袋を膨らませて水面に浮かべただけという代物。キャーキャー叫びながら勝手に溺れ死んでいく若者たちの白々しいことといったら(笑) 中には苦笑いまで浮かべている連中もいて、思わず我に返ってしまったんだろうな〜と心中察するに余りある場面も。
 そんな底なしのガラクタさ加減を楽しめるコアなファンにとっては文字通り最高のエンターテインメントだが、逆に楽しめない人にとっては最後まで苦痛以外の何ものでもない究極のヘッポコ映画である。
 とりあえず、個人的にはおバカな若者たちの能天気なパーティー・シーンもお気に入り。へんちくりんなゴー・ゴー・ダンスにポップでキッチュなロックン・ロール、そしてカラフルでグルーヴィーなファッションが盛りだくさん。このダンス・シーンだけで20分近くも時間稼ぎをしているんだから(笑)
 しかも、主題歌を歌うのはあのスーパー・スター、ニール・セダカ!“Do The Jellyfish”というお気楽過ぎるタイトルもどうかと思うが、なぜこんなZ級映画にニール・セダカなどという大物が絡んだのかという点も、大いに首をひねりたくなるところだ。
 さらに加えて、オープニングでは“Special Singing Guest Star Neil Sedaka”と、あたかも彼がゲスト出演しているかのように誤解を招くクレジットをデカデカと表記。もちろん、一瞬たりとも出てこないのだが、確かに出演しているとは謳ってないからな(笑)
 ということで、これはこれでなかなか楽しめる60's激安モンスター・パーティ・ムービーなのでした、チャンチャン♪

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地元の若者たちがカレンを歓迎するために集まる

使用人のイーゴン(J・ヴェラ)をいじめる若者たち

バラエティ豊かなゴー・ゴー・ダンス

 フロリダ州南部の湿地帯エバーグレーズ。近隣の川では猟師や観光客などが次々と行方不明になっていた。川底で発見された死体を検視したリチャードソン博士(ジャック・ニーグル)と弟子のジョン・ホイト(ジョー・モリソン)は、その様子を見て愕然とする。まるで大量のクラゲに襲われて毒が回ったとしか思えなかったからだ。
 その頃、リチャードソン博士の家には愛娘カレンが女友達を連れて里帰りして来ていた。2年ぶりの再会に喜びを隠せない博士とカレン。彼女が幼い頃から博士に仕えている使用人イーゴン(ジョン・ヴェラ)も嬉しそうだったが、彼の醜い姿を見た女友達らは嫌悪感を隠せなかった。
 初めて会うジョンに強く惹かれるカレン。友達のルイーズ(サンディ・リー・ケイン)、ジェシカ(ディアナ・ランド)、ドナ(ロイス・エテルマン)、スーザン(ブランシュ・デヴェルー)の4人も彼に興味津々だ。
 そこへ、地元の友達が大挙して訪れた。カレンの里帰りを歓迎するため、ジョンが気を利かせて声をかけたのだ。ところが、彼らは醜い姿をしたイーゴンを取り囲み、罵声を浴びせながら追い掛け回す。底知れぬ憎悪の表情を浮かべながら、イーゴンはボートに乗って逃げ去った。
 飲めや踊れやのバカ騒ぎを繰り広げる能天気な若者たち。プールでは不気味なクラゲ人間がその様子を伺っている。すると、すっかり酔っ払ったルイーズが服を着たままプールへ飛び込み、クラゲ人間に襲われてしまった。さらに、クラゲ人間は駆け寄った若者の一人を襲い、どこかへと逃げ去ってしまう。
 リチャード博士はルイーズの介護をすることにし、地元の若者たちは町へ戻って助けを呼ぶことにした。ところが、その若者たちの乗ったボートはクラゲの大群に襲われて沈没し、皆殺しにされてしまう。
 その頃、リチャード博士はルイーズの治療法を見つけるため、ジョンとジェシカ、ドナを連れて自宅から離れた研究所へと向かった。ところが、タバコを吸うために外へ出たドナがクラゲ人間に殺されてしまう。犯人を捕まえようと川へ潜った博士とジョン、ジェシカの3人だったが、今度はジェシカが餌食になってしまった。
 一方、自宅ではカレンとスーザンがルイーズを看病している。しかし、ルイーズは苦しみ続けた挙句に死亡し、スーザンもシャワールームで殺害されてしまう。危機一髪のところでリチャード博士とジョンが駆けつけたものの、どこからともなく現われたクラゲ人間はカレンを連れ去ってしまった・・・。

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プールの中から様子を伺うクラゲ人間

クラゲ人間に襲われたルイーズたち

クラゲの大群によって沈没してしまったボート

 犯人が何者かという事を考えると辻褄が合わないことばかりなのだが、まあ、そんなことはいちいち気にするまい(笑) ゴミ袋を被ったクラゲ人間が出てくるという時点で何でもアリなのだから。
 脚本を手掛けたアル・デンプシーの本職は編集マン、ウィリアム・カーウィンの本職は俳優。どちらも脚本家としては素人同然ということで、とにかくディテールの穴や突っ込みどころが満載なのも致し方ないところだろうか。まあ、モノには限度というのもあるのだけど(笑)
 問題のクラゲ人間の特殊メイク(?)を手掛けたのは、ウィリアム・カーウィンの弟でもあるハリー・カーウィン。『チアリング・ハイスクール』(77)や『悪魔の毒々魚』(78)などのC級映画で知られる映画監督だ。特殊メイクを手掛けたのは、後にも先にもこれ一作だけだったことは言うまでもなかろう(笑)
 そのほか、撮影はグルフェ監督作品の常連フリオ・チャヴェスとフリオ・ロルダンが担当。また、ティミ・ユーロやエルヴィス・プレスリーの歌唱で知られる名曲“Hurt”やエディ・フィシャーのヒット曲“I Need To Know”などの作曲家として有名なアル・ジェイコブスが主題歌を書いている。

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次々とクラゲの餌食となる若者たち

ドナ(ロイス・エテルマン)も殺される

遂に姿を見せたクラゲ人間・・・!

 主人公ジョン役のジョン・モリソンは、グルフェ監督の前作に当たるカーレース映画“Racing Fever”(64)にも主演していた俳優。ヒロインのカレンを演じているヴァレリー・ホーキンスは当時ハリー・カーウィンの奥さんだった人で、これが映画デビュー作だった。
 イーゴン役のジョン・ヴェラ、博士役のジャック・ニーグル、クラゲ人間の中に入っているダグ・ホバートはいずれもグルフェ監督作品の常連俳優。『タートゥ/死霊の呪い』に出ているゲイリー・ホルツも、若者の一人として顔を出している。
 また、後にTVドラマ『巨人の惑星』(68〜70)のヒロイン役で人気スターになる女優ディアナ・ランドが、ジェシカ役で出演しているのも興味深いところだろう。

 

 

タートゥ/死霊の呪い
Death Curse Of Tartu (1966)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2001 Something Weird Video (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
ALL/84分/製作:アメリカ
※“Sting Of Death”とのカップリング収録

特典映像
W・グルフェ予告編コレクション
W・グルフェ監督による音声解説
監督:ウィリアム・グルフェ
製作:ジョセフ・フィンク
   フアン・ヒダルゴ=ガト
脚本:ウィリアム・グルフェ
撮影:フリオ・C・チャヴェス
音楽:アル・ジェイコブス
出演:フレッド・ピネロ
   バベット・シェリル
   ビル・マーカス
   マイラ・クリスティン
   シャーマン・ヘイズ
   ゲイリー・ホルツ
   モーリス・スチュワート
   フランク・ウィード
   ダグ・ホバート

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インディアンの埋葬地へ来たサム(F・ウィード)とビル

呪術師タートゥ(D・ホバート)のミイラが甦る

ヘビに姿を変えたタートゥに殺されるサム

 80年代のホラー・ビデオ・ブームの際、どさくさに紛れて(?)日本発売されてしまったウィリアム・グルフェ監督のZ級ホラー映画。上記の“Sting of Death”とどっこいどっこいの出来栄えではあるが、こちらの方がシリアス路線に徹している分だけ著しく面白味に欠けるかもしれない。ということは、限りなく退屈でツマラナイ映画ということでもあるのだけれど(笑)
 例によって例のごとく、舞台となるのはフロリダ州エバーグレーズの湿地帯。とあるインディアンの埋葬地に大学の発掘隊が足を踏み入れたところ、そこに眠る呪術師タートゥの霊が甦って殺戮を繰り広げるというお話。このタートゥが様々な野生動物に姿を変えて人間に襲い掛かるというところがポイントであり、本作最大の突っ込みどころと言ってもいいかもしれない。
 なぜに野生動物に姿を変えるのか?それは、エバーグレーズ近辺にヘビやらワニやらの動物がウジャウジャといるからに他ならない。下手に特殊メイクを使ってモンスターを登場させるよりも遥かに安上がりだし、仕掛けとしてもひとまずは派手に見えるからだ。
 一応、タートゥはどんな動物にも姿を変えることが出来るとされており、トラやサメなどエバーグレーズには存在しない動物に変身することもあるという設定にはなっている。だが、もちろん本編中でトラになることなんかないし、サメに変身するシーンは記録映画を挿入してお茶を濁す始末。
 しかも、人間がサメに襲われる下りでは、とりあえず申し訳程度にサメの背びれも見せてくれるのだが、これが小さいのなんのって(笑) どう見てたってトビウオくらいのサイズしかないんだから。ちょいとひねりつぶせばオシマイだろうに、と誰もが突っ込まずにはいられないだろう。
 ってなわけで、このお粗末なミニチュア・シャークがほぼ唯一の見せ場。それ以外は眠たくなること必至の超ボンクラ映画である。

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サムと合流する予定の大学教授エド(F・ピネロ)

エドは妻と学生を連れてサムを探す

古代文字の記された奇妙な石を発見する

 フロリダ州南部の湿地帯エバーグレーズ。考古学者のサム・ガンター(フランク・ウィード)はインディアンの青年ビリー(ビル・マーカス)に案内され、インディアンの古い埋葬地へとやって来る。しかし、ビリーは土地の奥へ入ることを頑なに拒んだ。なぜなら、そこにはタートゥという邪悪な呪術師が埋葬されており、昔からインディアンの人々の間では呪われた場所だと恐れられてきたからだ。
 ビリーの言い分を迷信だと笑い飛ばすサムを残し、ビリーは町へと戻っていった。一人で奥地へと入っていったサムは、古代文字の書かれた石を発見する。その時、埋葬地のどこかで眠るタートゥのミイラが目覚め、ヘビに姿を変えてサムへと襲い掛かった。必死の抵抗を試みるも、あえなくヘビに殺されてしまうサム。
 翌日、一足先に埋葬地へと向かったサムと合流すべく、友人である大学の考古学教授エド(フレッド・ピネロ)は妻と学生たちを連れて出発する。だが、現地にはサムの姿は見当たらなかった。その代わり、彼らは例の石を見つける。
 その石に書かれた文字はラテン語だった。文章を解読したエドは、この土地にタートゥという呪術師が埋葬されており、足を踏み入れた者は生きて変えることが出来ない、タートゥはあらゆる野生生物に姿を変えることが出来る、などといった恐ろしい内容が記されていることを知る。もちろん、そんなこと鼻から信じないエドだったが、妻のジュリー(バベット・シェリル)は漠然とした不安を抱くのだった。
 その頃、川べりへ行った学生たちは焚き火でマシュマロを焼き、ラジオから流れる音楽に合わせてダンスを楽しんでいた。調子に乗ったトミー(ゲイリー・ホルツ)とジョアン(モーリス・スチュワート)の二人は川へ飛び込み、水泳に興じる。すると、そこへ巨大なサメが近づいてきた。
 サメに気付いたトミー(シャーマン・ヘイズ)とシンディ(マイラ・クリスティン)は、慌ててジョニーたちを呼び戻そうとする。しかし時すでに遅く、ジョニーとジョアンは無残にも食い殺されてしまった。
 海に生息するはずのサメが川にいるなんてあり得ない。もしかしてタートゥの呪いは本当なのではないか。そう考えたエドは、調査を中止して町へ戻ろうとする。ところが、野生動物かなにかによってボートが破壊されてしまっていた。
 そこでトミーが自ら志願し、一人で湿地帯を歩いて町まで戻り、助けを呼んでくることとなる。だが、トミーもヘビに姿を変えたタートゥによって殺害されてしまった。
 その頃、全ての原因はタートゥの呪いにあると考えたエドたちは、その遺体が眠る墓を探すことにした。トミーの帰りを待っていても、先に自分たちが殺されてしまうかもしれない。それならば、タートゥを先に倒してしまおう、というわけだ。
 どこからともなく聞こえてくる呪文の音を頼りに付近を探索したエドたちは、洞穴の奥にあるタートゥの墓を発見する。しかし、恐怖に耐えきれなくなったシンディが外へと逃げ出し、その瞬間に洞窟の扉が閉まってしまったことから、エドとジュリーは中に閉じ込められてしまった。
 パニックに陥って逃げまどうシンディに襲いかかる巨大なワニ。なんとか彼女を助けようと、エドは洞穴の扉を弾丸の爆薬で破壊しようとするのだが・・・。

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妻ジュリー(B・シェリル)は不安を覚える

川べりでパーティに興じる学生たち

サメに姿を変えたタートゥが忍び寄る

 今回はグルフェ監督自身が脚本を担当。なぜに400年前のインディアンの古文書がラテン語で書かれているのか?なんて突っ込みどころは序の口で、相変わらずいい加減かつ適当な設定やストーリー運びが失笑を誘ってくれる。ゴー・ゴー・ダンス・シーンで時間稼ぎするのも“Sting od Death”と一緒だし(笑)
 スタッフの面子も常連組ばかり。“Sting od Death”に続いて、今回もアル・ジェイコブソンがポップでグルーヴィーな主題歌を担当している。この歌詞がね、なぜか“叙々苑”としか聞こえないんですよ(笑) とりあえず、サメに食い殺される女の子ジョアンの名前を拝借して“Jo Joanne Jo Joanne...”と歌っているのだけど、これが何回聴いても、“じょーじょえん、じょーじょえん♪”としか響いてこない。是非とも、叙々苑のCMソングとして使って欲しいもんだ(笑)

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手前に見えるサメの背びれの小さいこと!

一人で助けを呼びに行くトミー(S・ヘイズ)だったが・・・

エドたちはタートゥの墓を発見する

 主人公エド役のフレッド・ピネロとその妻ジュリー役を演じるバベット・シェリルは、どちらもグルフェ監督が同時期に撮影した“The Devil's Sisters”にも出演していた役者。二人とも、この2本しか出演作が残されていない。恐らく、地元フロリダ在住のアマチュア俳優か何かだったのだろう。
 一方、ラテン系の美人学生シンディ役のマイラ・クリスチャンは、その後スペインに渡ってマイラ・ゴメス・ケンプを名乗り、ポップ・シンガー兼テレビ・タレントとして一世を風靡するほどの人気スターとなった。
 また、インディアンの若者ビリー役を演じているビル・マーカスもその後脇役として映画やテレビで活躍するようになり、『ダイ・ハード』(88)や『3人のゴースト』(88)などにもチョイ役で出演している。
 そのほかのキャストはグルフェ監督の友人や無名の役者ばかり。トミー役のゲイリー・ホルツは“Sting of Death”にも顔を出していたし、サム役のフランク・ウィードの本職はアニマル・トレーナーだ。本作のヘビやワニの調教をしているのも彼である。
 また、タートゥ役で登場するダグ・ホバートは、“Sting of Death”のクラゲ人間の中に入っていた人。彼はその後グルフェ監督作品のプロデューサーとなった。

 

 

She Freak (1967)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2000 Something Weird Video (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
1/83分/製作:アメリカ

特典映像
オリジナル劇場予告編
製作者による音声解説
アート・ギャラリー
30年代見世物小屋の記録フィルム
シャム双生児の記録フィルム
監督:バイロン・メイビ
製作:デヴィッド・F・フリードマン
脚本:デヴィッド・F・フリードマン
撮影:ウィリアム・G・トロイアーノ
特殊メイク:ハリー・トーマス
音楽:ウィリアム・アレン・キャッスルマン
出演:クレア・ブレナン
   リー・レイモンド
   リン・コートニー
   ビル・マッキニー
   クロード・アール・ジョーンズ
   ベン・ムーア
   ヴァンティーン
   フェリックス・シラ

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秘かに野心を抱くウェイトレス、ジェイド(C・ブレナン)

旅回りのカーニバル一座に自らを売り込む

カーニバルの食堂で働くようになったジェイド

 ハーシェル・ゴードン・ルイス監督とのコラボレーションでも知られる伝説的なB級映画プロデューサー、デヴィッド・F・フリードマンが、あのトッド・ブラウニングの怪作『怪物團(フリークス)』(32)をリメイクした異色のカルト映画。ブラウニング作品が見世物小屋のフリークスたちにシンパシーを寄せた残酷な復讐劇であったのに対し、本作は彼らのことを虐げる悪女を主人公に、彼女の野心と欲望の行き着く果てを描いたソープドラマ的内容になっている。
 主人公は片田舎の寂れたダイナーで働く女性ジェイド。人一倍野心の強い彼女は旅回りのカーニバル一座に加わり、見世物小屋を経営する若くてハンサムな実業家と結婚する。満ち足りたはずの夫婦生活。それでも飽き足らない彼女は、夫に隠れて愛人との逢瀬を続ける。その挙句、愛人が夫を殺害。まんまと見世物小屋のオーナーの座を手に入れたジェイドだったが、実は彼女、大のフリークス嫌いだった…。
 ダーティなイメージの付きまとうカーニバル一座というものを舞台に、アメリカン・ドリームの光と影を描くという着眼点は悪くない。しかし、ブラウニング版の作られた30年代と違って、60年代当時のカーニバルがファミリー向けの健全なエンターテインメントに様変わりしていたのは、やはり製作サイドの大きな誤算だったと言えよう。この物語に必要不可欠な、いかがわしさみたいなものがいまひとつ足りないのだ。
 逆に、古き良き時代のノスタルジーというか、全体的になんともいえず郷愁を誘うような雰囲気が漂っている。それこそが実は、この“She Freak”という作品の大きな見どころなのだと言えるかもしれない。
 実際、この作品は一部の屋内シーンを除くほぼ全編を、本物のカーニバル会場にてロケ撮影している。北米カーニバル業界のパイオニアであるボビー・コーンという人物がテクニカル・アドバイザーを務め、彼の経営するWest Coast Showsという会社が全面的にバックアップした。
 そのおかげもあって、当時の古き良きファミリー・エンターテインメントとしてのカーニバルの様子が、文字通りドキュメンタリー映画のように生き生きと記録されているのだ。これらのフッテージを見るだけでも、十分に興味をそそられる作品なのではないかと思う。
 よって、カルトなエクスプロイテーション映画として見ると、ちょっと期待はずれな印象を受けることは否めない。そもそも、見世物小屋を題材にしながら肝心のフリークスたちが殆んど出てこないというのも致命的だ。
 一応、これには理由があって、ロケ地となったカリフォルニア州の条例では、身体障害者を映画に出演させるに当たって様々な規制があったのだそうだ。わずかにクライマックスでフリークスがチラリと出てくるものの、残念ながら本当に一瞬だけ。それも、よく見ると本物ではない。とりあえず、フェリックス・シラという有名な小人俳優が脇役で出てくるものの、いわゆる見世物的な役柄ではないので問題なかったのだろう。それに、そもそも彼はプロの俳優だし。
 ちなみに、本作で唯一ショッキングなのが、エンディングに登場するShe Freak。ブラウニング版をご覧になった方ならお分かりのことと思うが、言うなれば罪深きヒロインの成れの果ての姿である。この特殊メイクというか、クリーチャー・デザインがなかなか狂ってて面白い。この部分だけは、辛うじてオリジナルのトッド・ブラウニング版に拮抗するようなインパクトを残してくれる。

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観覧車に乗って気分を高揚させるジェイド

ストリッパーのムーン(L・コートニー)

ムーンと親しくなったジェイド

 片田舎の寂れたダイナーで働く若い女ジェイド・コクラン(クレア・ブレナン)は、刺激のない退屈な日常に飽き飽きとしていた。自分はこんなところで埋もれたまま一生を終えるような女じゃない、いつかリッチな有名人になって世界を跪かせるんだ。そんな漠然とした夢と野心を抱きながら。空虚な毎日を過ごしている。
 ある日、ダイナーにアル・バブコック(ヴァンティーン)という男が客としてやって来る。話をしてみると、旅回りのカーニバル一座でマネージャーをしているという。この掃き溜めみたいな場所から抜け出すことの出来るチャンスだと感じたジェイドは、カーニバル一座で働くために自らを売り込んだ。
 かくして、カーニバルの食堂のウェイトレスとして働くようになったジェイドは、親しくなったストリッパーのムーン(リン・コートニー)から一座の人間関係や暮らしぶりなどを聞き知る。彼女が唯一我慢ならないのは、見世物小屋のフリークスたちだった。汚らわしいとしか思えなかったのである。
 だが、その見世物小屋を経営する男性スティーヴ(ビル・マッキニー)は別だった。若くてハンサムだし、紳士的で優しいし、何よりも金を持っている。見世物小屋はカーニバル一座の花形アトラクションだからだ。
 偶然を装ってスティーヴに接近した彼女は、積極的なアタック作戦で彼のハートを掴むことに成功。晴れて結婚するに至った。しかし、その一方で彼女にはブラッキー(リー・レイモンド)という愛人もいた。観覧車の作業員として働くブラッキーは、悪名の高いプレイボーイにして乱暴者だ。その危険な魅力に惹かれたジェイドは、より強い刺激を求めるかのように、彼とのセックスに溺れる。
 だが、その様子をスティーヴの右腕である小人のショーティ(フェリックス・シラ)が目撃してしまう。ショーティから事実を知らされたスティーヴは、ジェイドとブラッキーの逢引き現場で待ち伏せをしていた。
 取っ組み合いの喧嘩を繰り広げるスティーヴとブラッキー。すると、とっさにブラッキーが懐から取り出したナイフで、スティーヴが腹を刺されてしまう。力尽きて倒れるスティーヴ。ジェイドはその様子を冷ややかに眺めながら、薄ら笑いを浮かべるのだった。
 スティーヴは死んで、ブラッキーは逮捕された。ジェイドは見世物小屋を相続して、オーナーの座を手に入れる。すぐさま、彼女はショーティを解雇した。欲に目のくらんだ彼女は、もともと大嫌いだったフリークスたちから徹底的に搾取し、わが世の春を謳歌してみせる。
 その理不尽なやり方に異を唱えるムーンだったが、ジェイドは全く聞く耳を持たなかった。そんなある晩、彼女の前にショーティが姿を見せる。強気な態度で彼を追い払おうとしたジェイドは、暗がりから続々と姿を見せるフリークスたちに取り囲まれてしまった・・・。

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見世物小屋を経営するスティーヴ(B・マッキニー)に接近

スティーヴとの結婚にこぎ着けたジェイド

一方でブラッキー(L・レイモンド)と肉体関係にあった

 監督を務めたバイロン・メイビは、もともと俳優として低予算映画の脇役を務めていた人物。デヴィッド・F・フリードマンに拾われて監督業へ進出し、B・ロン・エリオットの名前で“The Acid Eaters”(68)や“Brand of Shame”(68)などのエクスプロイテーション映画を数多く手掛けた。いずれも超アングラなZ級作品ばかりで、最終的にはハードコア・ポルノの世界に落ち着いたようだ。
 撮影監督のウィリアム・G・トロイアーノも、C級〜Z級映画の世界で食いつないだカメラマンの一人。ただ、本作ではカーニバルの魅力を生き生きとしたタッチでカメラに収めており、そのドリーミーな映像センスはなかなか悪くない。
 音楽スコアを手掛けたウィリアム・アレン・キャッスルマンはフリードマン組のコンポーザー。ジャック・ヒル監督がロジャー・コーマンのもとで手掛けた女囚もの『残虐全裸女収容所』(72)にもクレジットされていた人物だ。
 そして、She Freakの悪趣味極まりない特殊メイクを担当したのは、『宇宙からの暗殺者』(54)や『X星から来た吸血獣』(58)、『ジェシー・ジェームスとフランケンシュタインの娘』(65)などのB級カルト映画を数多く手掛けたメイキャップ・アーティスト、ハリー・トーマス。初期AIPのホラー映画やエド・ウッド作品なども担当していたという興味深い(?)人物だ。

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右腕ショーティ(F・シラ)から妻の浮気を聞くスティーヴ

ブラッキーがスティーヴを刺し殺してしまう

見世物小屋を相続することになったジェイドは・・・

 ヒロインのジェイド役を演じているクレア・ブレナンは、フランスの大物シャンソン歌手ミレイユ・マチューにちょっと似たタイプのきつい顔をした女優。前髪を三角にしたヘアスタイルもソックリ。当時ミレイユはアメリカでも有名だったので、恐らく意識したのではないかとも思う。本作を見る限りでは決して演技の上手い女優ではないものの、その後テレビを中心に70年代末まで活躍し、ジーン・ハックマン主演の映画『ドミノ・ターゲット』(77)などにも出演していた。
 乱暴者ブラッキー役を演じているリー・レイモンドは、フリードマン組のスタッフだったらしく、その後L・レイ・モンドの名前で低予算映画の監督へと転向している。
 一方、ジェイドと結婚する見世物小屋のオーナー、スティーヴ役を演じているビル・マッキニーは、『ガントレット』(77)や『ダーティ・ファイター』(78)、『ピンク・キャデラック』(89)など、クリント・イーストウッド作品の常連としてお馴染みの名脇役。なんと、これが映画デビュー作だったらしい。
 そのスティーヴの右腕である小人ショーティ役を演じているのが、ドラマ『アダムスのお化け一家』(64〜66)の毛むくじゃらの従兄弟役や映画『スターウォーズ ジェダイの復讐』(83)のイウォーク役などで知られる小人俳優フェリックス・シラ。スタントマンとしても有名だった人だ。身長はお子様サイズだが、これがなかなかハンサムかつ色っぽい雰囲気のある人で、私生活では結構女性にもてたらしい。ジェイド役のクレア・ブレナンも彼の恋人だった女性の一人で、二人の間には子供まであったそうだ。
 なお、ストリッパーのムーン役を演じているリン・コートニーも独特の個性を持ったキレイな女優さんだが、どうやら映画出演作はこれ一本だけだった模様。

 

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