Driftwood (2006)

 

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(P)2006 Image Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/DTSサラウンド・5.1chサラウンド・2.0chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL
/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
監督・製作者・主演者の音声解説
未公開シーン集
別エンディング
オリジナル劇場予告編
フォト・ギャラリー
オーディション映像集
監督:ティム・サリヴァン
製作:マイク・リチャードソン
    ボブ・エンゲルマン
    バリー・レヴィン
    クリス・コビン
    バド・スミス
脚本:ティム・サリヴァン
    クリス・コビン
撮影:スティーヴ・アドコック
特殊メイク:ヴィンセント・ガスティーニ
音楽:ウィリアム・ロス
出演:ラヴィヴ・ウルマン
    ダイアモンド・ダラス・ペイジ
    タラン・トリエーロ
    デヴィッド・エイゲンバーグ
    リン・シェイ
    マーク・マクルーア
    ラッセル・サムス
    ベイエリン・ネフ
    ジェレミー・レリオット
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舞台となる青少年向けの矯正施設ドリフトウッド

16歳の少年デヴィッド(R・ウルマン)が入所して来る

 『ヘルボーイ』や『マスク』、『シン・シティ』などで知られるアメコミ出版社ダーク・ホース・コミックスの社長マイク・リチャードソンが、インディペンデントで活躍する映像作家に出資する目的で設立した映画会社ダーク・ホース・インディーの第1回製作作品。矯正施設に入れられた少年が亡霊によって導かれ、施設の恐ろしい実態を暴き出していくというサスペンス・ホラーだ。
 監督を務めたのはスプラッター映画の怪作『2001人の狂宴』(05年)で注目を集めた鬼才ティム・サリヴァン。ハーシェル・ゴードン・ルイス監督の古典的スプラッター『2000人の狂人』のリメイクであり、往年のエクスプロイテーション映画へのオマージュという意味合いの強かった『2001人の狂宴』は、時として過剰なくらいにオフビートでクレイジーなホラー映画だった。もちろん、それは意図してのことなのだが。
 しかし、本作においてサリヴァン監督は、現代アメリカ社会に横たわる深刻なジェレネーション・ギャップの問題に切り込み、非常に真面目でメッセージ性の強いユニークな作品に仕上げている。

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施設の所長である暴君キャプテン・ケネディ(D・D・ペイジ)

施設内では訓練と称して過酷な労働作業を課している

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キャプテン・ケネディは陰湿な体罰も日常的に行っていた

デヴィッドはたびたび正体不明の亡霊を目撃する

 舞台となるのは私立の青少年向け矯正施設。実は、あのコロンバイン高校の銃撃事件以来、全米では裕福な家庭を中心として、問題のある子供達をこうした矯正施設に入れる親が続出した。もちろん、実際に犯罪に手を染めているような問題児が大部分を占めていたわけだが、その一方で単なる親の無理解やコミュニケーション不足が原因で施設に入れられてしまうような若者も少なくなかったという。
 例えば、デスメタルを聴いて鼻やヘソにピアスをしている、ゴス系ファッションで身を固めてホラー映画ばかり見ている、ゲイであることが分かってしまったなどの理由だけで、親から理解不能のレッテルを貼られてしまう若者たちが大勢いたらしい。サリヴァン監督によれば、“自分の子供を理解しようとしない親たちが、もしかしたらわが子が次のコロンバイン事件を引き起こしてしまうのではないかという恐怖心から、次々と若者たちを全米の施設に送り込んでいった”のだという。
 ところが、そうした私立の矯正施設では日常的に体罰や不正行為が行われている所が多く、実際に入所者を死に至らしめてしまうという事件も起きている。しかも、18歳までは一切の法的権利を与えられていないため、一旦親が契約書にサインしてしまうと18歳になるまで施設から出ることが出来ないのだ。
 10年ほど前、当時映画界の仕事の傍らでLAの地域ボランティアに参加していたサリヴァン監督は、ロック・ミュージシャンを目指している一人の若者と出会った。彼は黒のレザー・ウェアに身を包み、ウォークマンでニルヴァーナを聴いているような、いわゆる今どきのパンク少年だった。とてもシャイな優しい性格で、いつも寂しそうな表情をしていたという。彼の両親は典型的なコンサバティブで、親子のコミュニケーションはあまりうまく行ってなかったらしい。そんな彼がある時期からボランティアに姿を見せなくなり、どうしたのかと思って行方を捜したところ、矯正施設に入れられてしまったことが分かったのだった。
 この件をきっかけに、サリヴァン監督は矯正施設の実態や現代アメリカの家庭事情について詳しく調べるようになり、強い憤りを感じるようになったという。思春期ならではの複雑な内面を抱えた子供と向き合う勇気もなく、施設に預けるという安易な方法を選んでしまう無責任な親たち。そうした親たちの不安や弱みにつけこんで商売をする悪どい施設経営者たち。そして、人間の内面的な弱さを否定して、表向きの強さばかりを尊ぶ理不尽なアメリカ社会。そうした監督自身の強い怒りが、本作では全編に渡ってみなぎっている。
 ただ、本作はそうしたメッセージ性にこだわりすぎてしまったが為に、肝心のストーリーがないがしろにされてしまったという印象は拭えない。起承転結にメリハリがなく、スリルやサスペンスが盛り上がることもないままに、物語はポンポンと先に進んでしまう。主人公を取り巻く人々のキャラクター造形なんかも厚みに欠けており、どうも表面をなぞっただけに見えてしまう。ホラー映画としても社会派ドラマとしても、いまひとつ中途半端なのだ。
 もちろん低予算映画ゆえの制約はいろいろとあったのだろう。ただ、ストーリー・テリングの稚拙さや演出の青臭さに関しては、監督であり共同脚本家でもあるティム・サリヴァン自身の力量不足による所が大きいのではないかと思う。
 少なくとも、名作となりえる可能性を秘めた作品であることは確か。テーマに関する着眼点は鋭いし、ホラーという表現手段を選んだことも間違ってはいないだろう。監督自身がもう少し経験を積んでから手掛けるべき作品だったのかもしれない。

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ゲイというだけで差別を受ける少年ノア(J・レリオット)

卑劣な警備担当者ノリス(D・エイゲンバーグ)

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少年たちに嫌がらせばかりする教育係イェーツ(T・トリエーロ)

死んだ兄ディーン(R・サムズ)はデヴィッドの憧れだった

 青少年向けの矯正施設ドリフトウッドに、16歳のデヴィッド(ラヴィヴ・ウルマン)という少年がやって来る。彼はロック・スターだった兄ディーン(ラッセル・サムズ)が自殺して以来、死の概念に取り付かれるようになっていた。デヴィッドのメモ帳を見た両親は狼狽するばかりでどうすればいいのか分からず、このままでは彼も自殺してしまうのではないかと心配し、藁にもすがる思いで施設の門を叩いたのだった。
 ドリフトウッドは軍隊式の教育をモットーとしており、“少年を男にする”が謳い文句だった。所長であるキャプテン・ケネディ(ダイアモンド・ダラス・ペイジ)は体育会系マッチョ気質丸出しの男で、口答えする相手を暴力で押さえつけることも辞さないような暴君。警備担当ノリス(デヴィッド・エイゲンバーグ)もキャプテン・ケネディに媚びへつらっているような小悪党で、少年たちへの嫌がらせを繰り返している。
 また、教育係のイェーツ(タラン・トリエーロ)はもともと入所者の一人だったが、何でもいう事をきくことから教育係を任されるようになった若者で、キャプテン・ケネディの指示通りに動く飼い犬。気弱な性格からキャプテンに対して文句も言えず、そのストレスのはけ口として立場の弱い入所者たちへ暴力を振るっている。
 デヴィッドとルームメイトになったのは、ダリル(コリー・ハードリクト)、ボイル(フランキー・レヴァンジー)、コビー(シャヒーン・エゼル)、KC(デヴィッド・スカイラー)、そしてノア(ジェレミー・レリオット)の5人。大半が札付きの不良少年だったが、ノアはゲイであるという理由だけで施設に入れられた大人しい少年だった。
 施設では訓練と称して所長の私的利益のための労働を少年たちに課したり、暴力による洗脳教育を行うなどの違法行為が行われている。近頃では一部の親から悪評が立つようになり、キャプテン・ケネディは本社の重役シャーマン(キム・モーガン・グリーン)から注意を受けるが、立場が危うくなったら別の土地へ高飛びすればいいという程度にしか考えていない。

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両親(リン・シェイとマーク・マクルーア)が面会に訪れる

デヴィッドはノアから施設の封印された過去を知る

 一方、デヴィッドはドリフトウッドに来て以来、夜な夜な悪夢に悩まされるようになる。そして、真夜中に目覚めると、暗闇の廊下を不気味に歩く少年の影を見つけるのだった。デヴィッドは、以前にこの施設でジョナサン(コナー・ロス)という少年が失踪していることを知る。
 やがて、デヴィッドは事あるごとにジョナサンの姿を目撃するようになった。ジョナサンと親しかったノアの話によると、彼はキャプテン・ケネディの甥に当たり、繊細で感受性の豊かな少年だったという。しかし、キャプテンはそんなジョナサンの性格を忌み嫌い、軟弱な負け犬として容赦ない体罰を与えていた。表向きは施設を脱走して行方不明になったことになっているが、実際はキャプテンに殺されたのではないかと噂されているらしい。
 デヴィッドは面会に訪れた両親(マーク・マクルーア&リン・シェイ)にその事実を伝えようとするが、父親は施設を出たいがためのウソだとしか受け取らず、その弱い性格を鍛えなおしてもらえと一蹴する。しかし逆に、デヴィッドからその弱い息子となぜ向き合おうとしないのかと詰め寄られ、父親は言葉を失ってしまった。
 ある日、授業中に教師クォリス(ジョン・ウォルカット)から変態呼ばわりされたノアが逆上。クォリスから拳銃を奪ってデヴィッドを人質に取った。その際に、彼は医務室のロバーツ医師(ルー・ビーティ・ジュニア)がジョナサン失踪の真相を知っているということをデヴィッドに伝える。銃の暴発で腕に怪我を負ったデヴィッドだが、騒動は無事に収まった。医務室でロバーツ医師の治療を受けた彼は、キャプテン・ケネディがジョナサンを殺害したという事実を知る。ノリスとイェーツの2人も隠蔽工作に加担しているという。
 ノアによる篭城事件を解決したということでキャプテン・ケネディに気に入られたデヴィッドは、彼の自宅でバーベキューに招かれ、娘のマイラ(ベイエリン・ネフ)と親しくなる。キャプテンがジョナサン殺しの犯人であることを伝えると、マイラは死体の隠し場所探しに協力することを約束した。
 ところが、マイラはデヴィッドの言葉を信用せず、彼から聞いたことを父親に話してしまう。逆上したキャプテンはデヴィッドを監禁し、ロバーツ医師を殺害。さらに、ノアやダリルたちルームメイトを事故に見せかけて焼死させるようイェーツに命じ、デヴィッドを始末するようノリスにも指示を出した。自分に疑いの目が向く可能性は全て消し去らねばならないからだ。
 その頃、監禁されているデヴィッドの前にジョナサンの亡霊が姿を現す。ついに復讐の時がやって来たのだ。

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キャプテン・ケネディからバーベキューに誘われたデヴィッド

キャプテンの娘マイラ(B・ネフ)と親しくなるデヴィッドだったが・・・

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ボイラー室に監禁されてしまったデヴィッド

ジョナサン(C ・ロス)の亡霊がついに姿を現す

 リアリズムを追及するためか、悪役を含めて極端にデフォルメされたキャラクターが登場しないのは好感が持てる。サリヴァン監督の作品に対する姿勢は非常に真面目で真摯だ。ただ、それぞれの人物のバックグラウンドが十分に描ききれておらず、ドラマの厚みや説得力が希薄になってしまったのは残念だった。
 また、なぜジョナサンの亡霊がデイヴィッドだけにコンタクトを取るのかという点も曖昧。クライマックスにおけるキャプテン・ケネディの暴走も唐突な印象を受ける。もっと交通整理がきちんと出来ていれば、よりメッセージも明確になったであろうし、クライマックスも盛り上がったはずだ。
 監督のティム・サリヴァンはもともと『スリー・メン・アンド・ベイビー』(87年)や『カクテル』(88年)、『ゴッドファーザーPARTV』(90年)などの製作アシスタント出身で、『デトロイト・ロック・シティ』(99年)のプロデューサーを務めた後、『2001人の狂宴』で劇場用長編映画の監督デビューを果たした。この“Driftwood”は長編監督2作目。既に次回作の撮影も始まっており、これからの活躍に期待したいところ。脚本と製作に参加しているクリス・コビンは彼の親友で、『2001人の狂宴』でも共同で脚本を手掛けていた。
 一方、プロデューサーにはダーク・ホース・コミックの社長マイク・リチャードソンを筆頭に、『キッド』(90年)や『ダイハード3』(95年)などの音楽スーパーバイザーを歴任したバリー・レヴィン、『マスク』(94年)や『ブレイド』(98年)など数多くのヒット作を製作したボブ・エンゲルマン、そして『エクソシスト』(73年)と『フラッシュダンス』(83年)でオスカーにノミネートされた編集者バド・スミスという業界のベテラン勢が集結。スミスは編集も手掛けている。
 また、特殊メイクは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(68年)に参加した経験を持ち、『痩せゆく男』(96年)や『ドグマ』(99年)、『レクイエム・フォー・ドリーム』(00年)などの特殊メイク・スーパーバーザーを務めたヴィンセント・ガスティーニが担当。撮影監督は『2001人の狂宴』でサリヴァン監督と組んだスティーヴ・アドコックが手掛けている。

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キャプテンは少年たちを焼き殺すようイェーツに命じる

うじ虫まみれになって絶命するノリス

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ジョナサンの亡霊に追い詰められるキャプテン・ケネディ

いよいよデヴィッドはキャプテンと対峙することになる

 低予算映画ゆえに主要キャストは決して豪華な顔ぶれとは言えないが、テレビを中心に活躍している若手スターが数多く起用され、しかもドラマとは正反対の意外な役どころで登場するのが面白い。
 まず、主人公デヴィッドを演じているのは、ディズニー・チャンネルの家族向けSFドラマ『22世紀ファミリー〜フィルにおまかせ〜』でティーン・アイドルとなったラヴィヴ・ウルマン。ドラマではリッキー・ウルマンとクレジットされていたが、本作では本名のラヴィヴを名乗っている。これまでのお茶目でキュートな美少年というイメージを覆し、本作ではダークで繊細な一面を披露。このデヴィッド役をきっかけに本名を名乗るようになったようだが、やはり過去のアイドル的イメージとの決別を意味しているのだろう。
 キャプテン・ケネディの子分で、弱いものいじめばかりをしている教育係イェーツ役で登場するのは、全米で大ヒットしたリアリティ番組『ラグナ・ビーチ』のファースト・シーズンで注目されたタラン・トリエーロ。テレビでは女の子にモテモテのセレブ系サーファー高校生だったが、本作では威張り散らしている割にはしょっちゅうドジばかり踏み、その度にキャプテンに殴られてメソメソ泣いているという何とも情けない役どころ。『ラグナ・ビーチ』ファンの女子が見たら、ショックのあまり卒倒してしまうかもしれない(笑)
 もう一人、女性ファンにショックを与えそうなのが、やはりキャプテンの子分である警備係ノリスを演じているデヴィッド・エイゲンバーグ。そう、あの映画化もされた大ヒットドラマ『Sex and the City』でミランダと結婚する素朴で優しいバーテンダー、スティーブン役でお馴染みの俳優だ。ここでは、人の良さそうな顔をしてキャプテンに媚びへつらってばかりいる小悪党として登場。最後はうじ虫まみれになって殺される。スティーブン役のイメージを根底から覆すこと必至だ。
 その他、テレビ・ドラマ“Safe Harbor”や“7th Heaven”で注目されたジェレミー・レリオットがゲイの少年ノア役で、リチャード・ギア主演の『消えた天使』(07年)でケイディー・ストリックランドのボーイフレンド役を演じたラッセル・サムズがデヴィッドの死んだ兄ディーン役で登場する。
 一方、諸悪の根源であるドリフトウッドの所長キャプテン・ケネディを演じているのは、元プロレスラーのダイアモンド・ダラス・ペイジ。ロブ・ゾンビの『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2』(05年)にも出ていたが、本作では予想外に真っ当な演技を披露して驚かされた。
 また、デヴィッドの父親役にはクリストファー・リーヴ版『スーパーマン』シリーズのジミー・オルセン役で御馴染みだったマーク・マクルーア、母親役には『メリーに首ったけ』(98年)の日焼けオバサン役が印象的だったカルト系コメディエンヌ、リン・シェイが顔を出している。

 

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