The Strange Case of Dr.Jekyll and Mr.Hyde (2006)

※『ダーク・シャドウ』のタイトルで2009年8月にDVD発売されました

 

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(P)2008 Image Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド・2.0chステレオ/音声:英語/字幕:スペイン語/地域コード:ALL/89分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
テレビ・スポット集
監督:ジョン・カール・ビークラー
製作:ピーター・デイヴィー
原作:ロバート・ルイス・スティーブンソン
脚本:ジョン・カール・ビークラー
撮影:ジェームズ・レゴイ
特殊効果:スコット・コールター
特殊メイク:ジョン・カール・ビークラー
音楽:アンディ・ガーフィールド
出演:トニー・トッド
    トレイシー・スコギンス
    ヴァーノン・ウェルズ
    デボラ・シェルトン
    ピーター・ジェイソン
    ティム・トマーソン
    スティーヴン・ワステル
    ジュディス・シコーニ
    ダニエル・ニコレット

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心臓病の権威であるジキル博士(T・トッド)

凶暴な男エドワード・ハイド(T・トッド)

 80年代にB級専門の映画会社エンパイア・ピクチャーズで活躍した映画監督兼SFXアーティスト、ジョン・カール・ビークラーが、ロバート・ルイス・スティーブンソンの傑作『ジキル博士とハイド氏』を映画化した作品である。舞台は現代のロサンゼルス。主人公ジキル博士の設定も、黒人の医師へと変更されている。
 ストーリーそのものは、謎の美女連続殺人事件を追う年増の女刑事と、自らの分身であるハイドの存在に怯えるジキル博士の二人の視点から描かれていく。ジキル博士がハイドを自分自身の別人格だとは思っていない、という設定はユニークな解釈だが、それがサスペンスへと全く結びついていないのが残念。低予算ゆえに様々な制約があるのは理解できるが、それにしてもチープで安上がりなサイコ・ホラーだと言わざるを得ないだろう。
 それよりも、本作の見どころは全編を漂うあまりにもオールドスクールなB級感だ。80年代のジャンル系映画スターばかりを揃えたキャスティング、80年代の名残を感じさせる手作り感覚の特殊メイク、そしてクライマックスに登場する着ぐるみのゴリラ・モンスター。CGが当たり前となった21世紀に着ぐるみとは、ある意味でかなりチャレンジングな試みかもしれない。しかも、その出来の悪さといったら(笑)。メカニカル操作で口を動かしているために、やたらと頭でっかちでバランスの悪いゴリラが出来上がってしまったのだ。
 で、なぜにゴリラ・モンスターなのか?というと、ジキル博士が薬を打ちすぎてしまったため、最終的にハイドからゴリラへと変身してしまうのである。このやけっぱちな展開も80年代的レトロを感じさせる。クライマックスではゴリラ化したジキル博士がフィアンセを誘拐し、さながらキング・コングかシュロックかといった展開となるわけだ。あまりにもバカバカしいのだが、エンパイア・ピクチャーズやキャノン・フィルムズのB級映画を見て育った世代にとっては妙な懐かしさがあり、意外と憎めなかったりするのである。

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若い女性ばかりを狙った残虐な連続殺人事件が発生

ジキル博士はハイドの存在に脅かされていた

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事件を担当するアターソン刑事(T・スコギンス)

相棒のエンフィールド刑事(S・ワステル)

 ロサンゼルスのダウンタウンで女子大生が惨殺されるという事件が発生。現場に駆けつけたカレン・アターソン刑事(トレイシー・スコギンス)とエンフィールド刑事(スティーブン・ワステル)は、遺体のあまりにも無残な状況に足がすくんだ。検視官アーニー(ティム・トマーソン)によると、人間の仕業というよりも野生動物に襲われたとしか考えられないという。
 一方、心臓病の権威であるジキル博士(トニー・トッド)は、事件をニュースで見て胸を痛めていた。なぜなら、彼は犯人を知っているからだ。それはエドワード・ハイド。博士が心臓病の治療薬を自らに投与しはじめた頃から、彼の前に現れるようになった凶暴な男だった。ハイドは違法な動物実験を行っていることをネタに博士を脅し、現在は博士の助手として医薬品研究所に勤務していた。博士はせめてもの罪滅ぼしにと、被害者の女性に多額の見舞金を贈る。
 やがて、再び同様の事件が発生。今回も被害者は若い女子大生だった。アターソン刑事は同一犯と睨んで捜査を続けるが、前回の事件で現場に残された犯人のDNAが人間のものではないと判明して途方に暮れる。また、彼女は精神的な問題も抱えていた。かつての相棒を自らの判断ミスで失って以来、拳銃を手にすることが出来なくなっていたのだ。上司のハミルトン警部(ピーター・ジェイソン)は彼女の精神状態を心配する。
 捜査に行き詰ったアターソン刑事とエンフィールド刑事は、被害者の家族に見舞金を贈ったジキル博士の存在を知り、その周辺を調べることにする。博士の勤務する医薬品研究所を訪れた二人は、留守中だった博士のラボをチェックしようとするが、怒り狂ったハイドによって追い返されてしまう。
 スタッフから報告を受けたジキル博士の親友ラニヨン博士(ヴァーノン・ウェルズ)は、ハイドを危険な人物だとして社長のドナ・ケアリュー(デボラ・シェルトン)に忠告する。ドナはさっそくジキル博士を社長室に呼び、ハイドを即刻解雇するように命令した。すると、彼女の目の前でジキル博士がハイドへと変身。ドナの顔面を食いちぎったハイドは、彼女を撲殺してしまう。社長室の異変に気付いた秘書が警備員を呼ぶものの、ハイドは彼らを蹴散らして逃走。通報を受けた警察が到着して研究所内を捜索したものの、ハイドを捕らえることは出来なかった。

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ジキル博士を心配する親友ラニヨン博士(V・ウェルズ)

医薬品研究所の女ボス、ドナ(D・シェルトン)

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ドナの顔面を食いちぎったハイド

ジキル博士のフィアンセ、レニー(J・シコーニ)

 その頃、駐車場で意識を取り戻したジキル博士は、血だらけになった自分の衣服を見て愕然とする。研究所に戻ってドナが殺されたことを知った博士だったが、何事もなかったかのようにアターソン刑事らの事情聴取を受けた。
 ジキル博士にはレニー(ジュディス・シコーニ)というフィアンセがいる。レニーは仲間内でナイトクラブを借り、オペラの夕べを企画していた。その当日、ナイトクラブにはジキル博士やラニヨン博士などの友人が正装して集まってくる。だが、オペラの演奏が始まると、ジキル博士の様子に異変が起きた。同じテーブルに座っていたラニヨン博士は、信じられない光景を目の当たりにする。ジキル博士がハイドに変身したのだ。ハイドが暴れだし、場内は大パニックに。ラニオン博士らはジキルを捕らえようとするが、その怪力に歯が立たず逃がしてしまった。
 ラニヨン博士の証言をもとに、アターソン刑事らはジキル博士のラボへと向う。レニーとラニヨン博士も同行した。研究室には憔悴しきったジキル博士の姿が。駆け寄ったレニーとラニヨン博士が見守る中、ジキル博士は静かに息を引き取った。ところが次の瞬間、博士はハイドへと変身。レニーを人質にとったハイドは、警官隊の前で巨大なゴリラへと姿を変えた。ゴリラはエンフィールド刑事を殺害し、レニーを抱えたまま逃走。大切な相棒を再び失ったアターソン刑事は、拳銃を片手に復讐を誓うのだったが・・・。

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検視官アーティ役を演じるティム・トマーソン

エンフィールド刑事までもが殺されてしまう

 どこぞのオフィスの一室を使ったとしか思えないちっぽけな警察署にもガッカリするが、安っぽいシンセサイザーの演奏で歌われる下手っくそなオペラなんぞはまさに爆笑もの。うっとりと聞き惚れている観客の顔がまったくのアホにしか見えない。まあ、その下手さ加減に拒絶反応を起こしたジキル博士が、たまらなくなってハイドに変身したとすれば説得力はあるのだが(笑)。
 一応、ジキル博士の変身シーンではVFXも使われているものの、仕上がりは初期のCGとほぼ同レベル。動きがかなり不安定で、まるでアニメーションみたいなのだ。ハイドの特殊メイクにしても、あちこちにツギハギの跡が。かつてロジャー・コーマンはビークラー監督のことを“業界で最も優秀なSFXマンの一人”と絶賛したらしいが、予算が少なすぎたのか、技術の革新に追いつけなくなったのか。
 いずれにせよ、80年代からほとんど進化していないSFX技術と映像センスは、コアなマニアの間でも賛否両論分かれるところかもしれない。いや、賛否両論というのも大げさか。この安っぽさを許せるか許せないかで、本作に対する評価も違ってくるのだろう。
 撮影監督を務めるのは、ここ数年ビデオ・ストレートの低予算映画を中心に活躍しているカメラマン、ジェームズ・レゴイ。なんというか、これといった特徴の全くない、いかにも無難な画を撮る人物だ。
 ビークラー監督と共に特殊メイクを手がけたのは、かつてフル・ムーン・エンターテインメントで撮影監督、俳優、特殊メイク・マンとして活躍していたジョン・ポール・フェデール。また、特殊効果には低予算のビデオ・ムービーから『ランボー 最後の戦場』('08)まで幅広く手がけている、スコット・コールターとシメオン・アセノフらワールドワイドFXの面々が当たっている。

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レニーを人質にとったハイド

拳銃を手に復讐を誓ったアターソン刑事

 主演は『キャンディマン』('92)でお馴染みの黒人俳優トニー・トッド。威厳と重厚感を併せ持った素晴らしい俳優である。ハイド役の特殊メイクはともかくとして、ジキル博士の存在感や気品を演じるに当たっては、全く文句のないキャスティングと言えるだろう。
 対する女刑事アターソンを演じるのは、70年代に世界的なファッション・モデルとして活躍したトレイシー・スコギンス。80年代から女優としても活躍し、『ウォッチャーズ2』('90)や『ドールズ2』('91)などのB級映画のヒロインとして活躍した。既に50歳を過ぎており、この手のヒロイン役を演じるには無理があるというのが正直なところ。しかも、とても刑事とは思えないような厚化粧があまりにも不自然で、全く説得力がないというのはちょっと痛かった。
 また、かつてのエンパイア・ピクチャーズ・ファンにとっては、『トランサーズ/未来警察2300』('85)シリーズのヒーローとして活躍したアクション・スター、ティム・トマーソンが検視官役で登場するのも注目したいところ。すっかり気の抜けた好々爺となってしまい、かつてのタフ・ガイぶりがまるっきりウソみたいなのには面食らった。
 さらに、ブライアン・デパルマの『ボディ・ダブル』('84)で美しきファム・ファタールを演じ、その後『エスカレート/感染マニア』('88)や『ネメシス』('92)といったB級映画で活躍した女優デボラ・シェルトンが医薬品研究所の女ボス役で登場する。彼女もモデル出身で、もともとはミスUSAの優勝者。かつて大ファンだっただけに、個人的にはとても懐かしい女優だ。
 また、ジキル博士の親友ラニヨン博士役で登場するのは、『マッドマックス2』('81)の悪役で強烈なインパクトを残したオーストラリア人俳優ヴァーノン・ウェルズ。『コマンドー』('85)や『インナースペース』('87)などでも凶暴な悪役として大活躍したが、彼もいつの間にか普通のオジサンになってしまった。
 その他、『ゼイ・リブ』('88)や『エイリアン・ネイション』('88)、『ゴースト・オブ・マーズ』('01)などのピーター・ジェイソン、『ゴーストハウス』('03)に主演していたスティーブン・ワステル、『マイプライベート セックス』('05)に主演していたイギリス女優ジュディ・シコーニが顔を出している。

 

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