デニース・ロペス Denise Lopez
ダンス・ミュージック全盛期の1988年に、アメリカの大手レコード会社A&M傘下のダンス・ミュージック専門レーベルとして発足したヴェンデッタ・レコード。C&Cミュージック・ファクトリーの手掛けたガールズ・グループ、セダクションの所属レーベルとしても有名だが、そのヴェンデッタのディストリビュート契約第一号としてデビューしたアーティストがデニース・ロペスだった。
ニューヨークに生まれたデニースは、高校卒業後にバック・ボーカリストの募集広告に応募して合格。インディーズ・バンドのメンバーを経て、84年にアトミック・レコードからデビューした。85年にTNTレコードからシングル“The
Best Of Me”をニーシー・ディー名義でリリース。さらに、RCAからシングル“If You Feel
It”をリリースした。これがアンダーグランド・シーンでヒットしたことからA&M関係者の注目するところとなり、翌88年にヴェンデッタのディストリビュートでメジャー発売されることとなったわけだ。
その“If
You Feel
It”はビルボードの12インチ・セールス・チャートで最高3位をマークし、トップ100でも94位にランク・インする。さらに、セカンド・シングル“Sayin'
Sorry”が12インチ・セールス・チャートの1位を獲得したほか、ダンス・チャートで6位、ホット100でも最高31位を記録。フリースタイル系の中堅女性アーティストとして認知されるようになった。
しかし、アルバム“Truth
in Disguise”はアルバム・チャートで最高184位、サード・シングルの“Too Much Too
Late”もダンス・チャートでトップ10入りを逃すなど低迷。そもそも、ヴェンデッタ・レコード自体がフリースタイルやハウス、ニュージャック・スウィングなど時流のサウンドを食い散らかすばかりで、確固としたレーベル・カラーを打ち出せないままでいた。そのどっちつかずが災いしたのか、発足からたったの3年でヴェンデッタはクローズ・ダウン。デニースの契約はそのまま本家A&Mレコードへと引き継がれた。
そして、A&Mからの心機一転第一弾としてリリースされたのが、シングル“Don't
You Wanna Be
Mine”。C&Cのロバート・クリヴィリスとデヴィッド・コールをミキサーに迎え、フリースタイルの要素を盛り込んだハウス・アンセムに仕上がっていたが、ビルボードのホット100で86位と全く奮わず、ダンス・チャートではチャート・インすら出来なかった。楽曲のクオリティの高さから考えると、全く残念な結果だったと言える。当然のことながら、セカンド・アルバム“Every
Dog Has Her
Day”もチャートインせず。これを最後に、デニース・ロペスはメジャー・シーンから消えてしまう。
その後、93年にインディーズからシングル“Ain't
You Happy”をリリースしたものの、これも全くの不発。手元にあるのは当時CISCOで手に入れたホワイト・レーベルのプロモ盤なのだが、後にStatus
Control featuring Denise
Lopez名義でコマーシャル・リリースされている。しかし、それっきり音沙汰もなく、かくしてデニース・ロペスの名は永遠に忘れ去れる・・・と思われたのだが、21世紀に入って思わぬ形で再び脚光を浴びることとなった。
2008年の夏にイギリスのユニヴァーサル傘下にあるレーベル、House-Trainedから、“Don't
You Wanna Be
Mine”のリミックス盤がリリースされ、UKのクラブ・チャートで大ヒットしたのだ。実はこの曲、イギリスでは当時未発売だったものの、輸入盤の12インチを当時の人気DJがヘヴィー・ローテーションしたおかげで、アンダーグランド・シーンでは絶大な人気を誇るナンバーだったらしい。
ここ数年、90年代のハウス・クラシックが再び注目されるようになり、インターネット上でもこの曲に対する問い合わせが急増、youtubeにアップロードされたプロモビデオにもアクセスが集中するようになったという。そこで、House-TrainedレーベルのスタッフがA&Mに残されたマスターテープを取り寄せ、オリジナルの発売から18年という歳月を経てようやく、リミックス盤という形でUK発売されることとなったのである。
また、MySpaceにもデニースのファン・サイトが誕生し、カムバックを望む声も少なからずあるものの、残念ながら肝心の本人は行方知れずのまま。イギリスでの時ならぬリバイバル人気を本人は果たして知っているのかどうか、気になるところではある。
ちなみに、90年代に日本でもヒットを飛ばしたスウェーデンのR&B系女性アーティスト、DeDeの本名がデニース・ロペスということから、一時期2人を混同する情報もあった。しかも、そのDeDeが本名でカムバックしてしまったのだからややこしいことに。もちろん、2人は全くの別人なのであしからず。
If You Feel It
(1987) Sayin' Sorry
(1988) Too Much Too Late
(1988) Don't You Wanna Be Mine
(1990)
(P)1988 Vendetta/A&M
(USA)
(P)1988 Pony Canyon/A&M
(JP)
(P)1988 Vendetta/A&M
(USA)
(P)1990 A&M (USA)
Side A
1,Re-Feel Mix
6:59
2,Hot 7" 4:05
Side B
1,Ax-id Dub Mix 6:59
2,Percappella
2:07
3,Pop 7" 3:52 ビデオ
produced
by Bowler, Li & Bowler
remixed by John Morales & Sergio
MunzibaiSide A
1,Club Mix 8:58 ビデオ
2,M&M Hot
7" Mix 4:27 ビデオ
Side
B
1,House Vocal 8:37
2,Latin Dub/Bonus Beats 3:56
3,Over Dub
5:54
produced by John Morales & Sergio Munzibai
co-produced
by Bowler, Li & Bowler
remixed by Bruce ForestSide A
1,Club Mix 7:32
2,Hot
Edit 4:40
Side B
1,Rose Dub 3:38
2,Too Much Mix 2:47
3,Pop
Edit 3:47 ビデオ
produced
by John Morales & Sergio Munzibai
co-produced by Bowler, Li &
BowlerSide One
1,The Clivilles and Cole
Vocal Club Mix 7:20ビデオ
2,The
Clivilles and Cole Club Edit 3:46
3,LP Version 4:05
Side
Two
1,The Clivilles and Cole Club A Dub Mix 8:12
2,The Clivilles and
Cole House Dub 6:16
produced by John Morales, Howard Bowler and
David Bowler.
remixed by Robert Clivilles & David Cole
いかにもニューヨーク系といった感じの、パワフルでキャッチーなフリースタイル・ナンバー。なんといっても、リミックスがジョン・モラレスとセルジオ・マンジバイの名コンビですからね、むちゃくちゃポップで派手な仕上がりです。楽曲そのものは平均点レベルの作品だと思いますが、ここはリミックスの妙技に救われたという感じでしょうか。やっぱり、ダンス・ミュージックはミックス命であります。
これは本当に大好きでした。前作以上にキャッチーでパワー溢れるフリースタイルの名曲。デニースの熱唱も圧巻です。今回はモラレス&マンジバイがプロデュースを担当。リミックスはハウス系の中堅ブルース・フォレスト。それだけに、クラブ・ミックスも途中からハウスっぽい展開となります。ちなみに、この日本盤12インチはアメリカのリミックス盤と同じ内容。オリジナル・バージョンはM&Mがミックスも担当しています。
セールスがイマイチ伸び悩んだというのも納得というか、どうにもインパクト不足な仕上がりのサード・シングル。全体的には哀愁を帯びたユーロ・ハイエナジーという感じで、決して出来は悪くないんですけどね。ペット・ショップ・ボーイズをサンプリングする辺りの遊び心も洒落てるし。アレンジも非常にキレイです。原曲は爽やかなポップ・バラードなんですけど、オリジナル・バージョンの方がクオリティ的には上かも。
セカンド・アルバムからのファースト・シングルとしてリリースされた、超パワフルでアップリフティングなハウス・アンセムの傑作。リミックスをクリヴィリス&コールが手掛けていますが、当時のC&Cの美味しいところを凝縮したような素晴らしい仕事をしています。弾けまくったデニースのボーカルも圧巻。これだけ歌える人が短命に終わってしまったというのも、つくづく残念としか言いようがないです。ハウス・ファン必携。
Every Dog Has Her Day
(1990) Ain't You Happy
(1993) Don't You Wanna Be Mine
(2008) Paybacks Are Hell : Vendetta's
Alternate Mixes Vol.1
(P)1990 A&M (USA)
(P)1993 White Label
(P)2008 House-Trained/Universal
Music (UK)
(P)1989 Pony Canyon/A&M
(JP)
1,Don't You Wanna Be Mine 4:52 ビデオ
2,Communicate
4:38
3,Causa U 4:26
4,Land Of The Living 4:51
5,Love Come Down
4:54
6,It's Just My Heart That's Breakin' 4:46
7,Loving You A to Z
5:19
8,I Want U 2 Know 4:24
9,Layin' Down The Law
3:58
10,Everlasting Love 4:05 ビデオ
produced
by John Morales,Howard Bowler, David Bowler, Oliver Leiber, David
ZSide 1
1,Denise's Scat Mix
5:05
2,Coconut Rumix 5:20 ビデオ
Side
2
1,The Jazz Men Mix 5:35
2,Looped 4 More Mix 4:40
produced
by Davidson Ospina1,Bimbo Jones Radio Edit 3:03 ビデオ
2,Soul
Avengerz Club Mix 7:11
3,Dennis Christopher RMX 7:22
4,Bimbo Jones
Extended Club Mix 7:00
5,Marmot & Fly Remix 6:46
6,Original
Clivilles & Cole Club Mix 7:22
produced by John Morales, Harold
Bowler & David Bowler
#1&4 remixed by Bimbo Jones
#2 remixed
by The Soul Avengerz
#3 remixed by Simmons & Christopher
#5
remixed by Rob Marmot & James Fly1,Too Much Too Late
(The
Essential Funk Remix) 7:27
Denise Lopez
2,Seduction (My House
Mix) 6:14
Seduction
3,Sayin' Sorry (Razor Hot Summer Mix)
4:27
Denise Lopez
4,Move To The Beat 6:06
Interaction
5,Devote Yourself (Extended Mix) 4:45
Seduction
6,Too Much Too Late
(Too Much Of That Dub)
5:44
Denise Lopez
アトミック・レコードのボウラー兄弟とジョン・モラレスを中心に、当時ポーラ・アブダルで当てていたオリヴァー・レイバー、プリンス・ファミリーのデヴィッドZをプロデューサーに迎えたセカンド・アルバム。フリースタイルの要素を若干残しつつ、アシッドなファンク・ソウル路線のダンス・ポップでまとめられています。シングル・カットされた#1以外は決定打に欠けるところですが、アルバムとしての仕上がりはなかなか。当時ほとんど無視されてしまったのが残念。
ブリトニー・スピアーズやエンリケ・イグレシアスのリミックスで有名なラテン・ハウス系DJデヴィッドソン・オスピーナが、Status
Control名義で製作したアシッド・ハウス・ナンバー。ボーカルをデニース・ロペスが担当しており、このプロモ盤は彼女名義でリリースされてます。ただ、基本的にボーカル・ナンバーではなく、グルグルと渦を巻くようなアシッド・サウンドに乗せてデニースがスキャットを繰り広げるというもの。ホーム・リスニング向けではないですね。
UKで時ならぬリバイバル・ヒットとなったリミックス盤。ビンボー・ジョーンズやソウル・アヴェンジャーズ、デニス・クリストファーといったUKハウス・シーンのトップDJによる豪華競演ということで、非常に完成度の高い仕上がりです。中でも、ソウル・アヴェンジャーズによるポップでアゲアゲな#2は秀逸。プログレッシブな仕上がりのビンボー・ジョーンズもまずまずです。とはいえ、改めて聴き比べても、やはりC&Cのオリジナル・ミックス#6が圧倒的にベストですね。
ヴェンデッタ・レコードの企画によるコンピレーション盤。12インチ未収録のレア・トラック満載で、今となっては大変に貴重な一枚。特にデニース・ロペスの作品は3曲も収められており、ファンにとっては必携アイテムだと思います。中でも、ブルックリン・ファンク・エッセンシャルズのリミックスによる#1は、12インチ・バージョンの100倍はカッコいい仕上がり。一方、大ヒット曲#3はデモ・バージョンみたいな印象で、残念ながらパッとしませんでした。