The Deaths of Ian Stone (2007)

※『今日も僕は殺される』として2008年9月に日本劇場公開されました

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(P)2008 Lions Gate (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/
5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/87分/
製作:アメリカ・イギリス

映像特典
ミス・ホラーフェスト・コンテスト

監督:ダリオ・ピアーナ
製作:スタン・ウィンストン
    ブライアン・ギルバート
    ラルフ・カンプ
脚本:ブレンダン・フッド
撮影:ステファーノ・モルカルド
特殊効果:スタン・ウィンストン
音楽:エリア・スミラル
出演:マイク・ヴォーゲル
    ジェイミー・マレー
    クリスティナ・コール
    マイケル・フィースト
    チャーリー・アンソン
    マイケル・ディクソン

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アイスホッケーに興じる平凡な若者イアン・ストーン(M・ヴォーゲル)

正体不明の魔物に襲われるイアン

 イタリア出身の大物CMディレクター、ダリオ・ピアーナによる、ちょっと風変わりな輪廻転生(?)ホラー。ピアーナ自身は『ジェイコブス・ラダー』に強く影響を受けたというが、ストーリー自体は『トータル・リコール』をホラー風に味付けしたといった印象だ。主人公の青年イアン・ストーンは毎日何者かによって殺され、その度に転生するというサイクルを繰り返している。その背後には、闇にうごめく魔物たちの存在が。どうやら、転生するたびに登場する女性ジェニーが重要な鍵を握っているようなのだが、イアン自身はなぜ自分が殺され続けるのか全く分からない。真相を究明しようとした彼は、やがて己の正体が何者であるのかという疑問にたどり着くことになる。
 監督のピアーナにとっては、本国イタリアで撮った『華麗なる殺人/死ぬには美しすぎて』(’88)以来、実に19年ぶりとなる劇場用映画。ブルーを基調とした無機質で冷たい世界観や細かいカットをつなぎ合わせたリズミカルなテンポは、いかにもCM出身の人らしいスタイリッシュなセンス。と言えるだろう
 低予算ゆえに小ぢんまりとした印象は拭えないし、中盤あたりで結末もだいたい想像出来てしまう。だが、最近のホラーは『SAW』や『ホステル』みたいなスラッシャー物一辺倒で、独創的なアイディアを持った作品はあまり多くない。本作も完全にオリジナルなアイディアかといえば決してそうではないが、少なくとも他のジャンル映画とは一線を画したものを作ろうという製作サイドの努力は伺える。その点は評価されるべきだろう。少なくとも、『ミステリー・ゾーン』の良く出来たエピソードくらいは楽しめる作品だ。

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ビジネスマンとして転生したイアン

転生するたびに現れる女性ジェニー(C・コール)

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恋人メディア(J・マレー)に秘密を打ち明けるイアン

イアンに助言を与える謎の男グレイ(M・フィースト)

 ロンドンに住むアメリカ人の若者イアン・ストーン(マイク・ヴォーゲル)は、アイスホッケー・チームのフォワードとして活躍している。ある晩、試合で逆転ゴールを決めたつもりの彼だったが、電光掲示板の故障でタイム・オーバーとなり、彼の得点が無効となってしまった。恋人ジェニー(クリスティナ・コール)が励まそうとするものの、イアンの憤慨は収まらない。その帰り道、線路に横たわっている人を助けようとした彼は、何者かによって殺される。それは鋭く巨大な腕を持ったモンスターだった。
 次の瞬間、イアンはオフィスで仕事をしている。彼は大企業で働くビジネスマンになっていた。同僚のジェニーは気分の悪そうな彼を心配する。どうやら、前世の記憶はないようだ。家へ戻ったイアンは言いようのない不思議な感覚を覚えていた。どうも、自分はアイスホッケーをやったことがあるような気がする。しかも、何か恐ろしいものに殺されたような気が・・・。そんな彼に、同棲中の恋人メディア(ジェイミー・マレー)は気のせいだからといって安心させようとする。
 翌朝、目覚まし時計が故障してしまい、イアンは急いで会社へと向う。バスに乗った彼は、謎めいた二人組の男に遭遇した。それは、ホッケーの試合会場にいた連中だった。断片的に記憶が蘇ったイアンは、彼らの後を追ってバスを降りる。そこで彼はグレイ(マイケル・フィースト)という男と出会う。グレイはイアンに前世の話や彼が毎日殺され続けていること、ジェニーという女性を守らなくては破滅してしまうことを説明する。混乱して戸惑うイアンの目前で、暗闇から飛び出してきた魔物にグレイは連れ去られてしまった。パニックに陥ったイアンは自宅に戻るが、恋人メディアに殺されてしまう。メディアも魔物の一味だったのだ。

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メディアも魔物の一味だった・・・

タクシー運転手として蘇ったイアンと乗客のジェニー

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周囲には彼を監視する魔物たちの存在が

ジャンキーとして蘇ったイアン

 次の瞬間、イアンは車を運転していた。彼はタクシー運転手だ。助手席には乗客のジェニーが座っている。やがて彼女の家に到着。眠そうなイアンに、ジェニーはコーヒーを持ってくるという。彼女を待っていたイアンは、周囲の不穏な空気に当惑する。ジェニーからコーヒーを受け取って、そそくさと帰ろうとしたイアンは、タクシーの時計が止まっていることに気付く。路上でイアンはグレイの姿を発見。その後を追ってビルの中庭へ入ったイアンに、グレイは“早く記憶を蘇らせて彼女を守るんだ”と警告する。その次の瞬間、イアンは頭上から魔物に襲われる。
 イアンは、とある事務所で目覚めた。どうやら彼は何らかのカウンセリングを受けているらしい。カウンセラーはジェニーだった。前世の記憶が残っている彼は、ジェニーにそのことを説明しようとする。だが、ドアの窓の外からは怪しい目線が。魔物たちが彼を監視しているのだ。ふと見ると、部屋の時計が止まっている。危険を察知したイアンは部屋を飛び出した。後を追う魔物たち。危機一髪でビルを飛び出し、タクシーに飛び乗ったイアン。しかし、降りたところでトラックに轢き殺されてしまった。息も絶え絶えの彼の前に現れたメディアが不気味に微笑む。
 次にイアンが目覚めると、彼は暗闇の中でモウロウとしていた。腕には注射針が刺さっている。鳴り響く激しいヘビメタの音。ドアを叩く音がして開けると、アパートの上階に住むジェニーだった。イアンがドラッグを打っていることに気付くと、ジェニーは嫌悪感をむき出しにして戻っていく。その後を追うイアン。彼はジェニーにこれまでの出来事を話す。ホッケーの試合会場でのこと、オフィスで話したこと、タクシーの中で話したこと。そしてジェニーの記憶が蘇った瞬間、ドアを破って魔物たちが襲い掛かってきた。
 間一髪で逃げ出したイアンとジェニーは、地下鉄に乗り込む。そこへグレイが現れた。彼は自分も魔物の一人であることを告白。魔物たちは人々の恐怖を食べる生き物だった。だが、ある時から恐怖だけではなく、人々の苦痛をも好むようになり、その凶暴性に歯止めが利かなくなった。そんな仲間たちに、グレイは嫌悪感を抱くようになったのだ。そして彼は言う。“お前も俺たちの仲間なのだ”と。イアンは最強のパワーを持つ魔物だったのだ。しかし、あることがきっかけで、魔物であることをやめてしまい、仲間を殺してしまった。だが、本来は魔物を殺すことなど出来ない。彼らは不死身のはずだったのだ。メディアたちは、なぜイアンが魔物としての能力を放棄したのか、なぜ彼が仲間を殺すことが出来たのかを解明しようとしていた。そして、裏切りの罰として永遠の苦痛を与えるため、輪廻転生させては殺し続けていたのである。
 終点で降りたイアンとジェニーは、メディアたちに捕まってしまった。ジェニーを殺そうとするメディア。そう、イアンが魔物であることを放棄してしまったのは、ジェニーへの愛だった。激しく抵抗するイアンだったが、体の衰弱が激しい。魔物としての本能が“獲物”に飢えているのだ。ジェニーの恐怖を貪り食うように仕向けようとするメディアだったが、イアンはホームへ到着した電車に身を投げ出した。
 そして、目を覚ましたイアンは病院のベッドに縛り付けられていた。身動きが出来ない。そこへメディアたちが現れ、サディスティックな拷問を始めるのだった・・・。体をメスで切り裂かれ、眼球に注射針を刺されるイアン。死ぬことが出来ない彼は、壮絶な痛みに耐え続ける。一方で、病院の看護婦として働くジェニーにも危険が迫っていた。魔物たちはイアンの裏切りの元凶であるジェニーを抹殺しようとしていたのだ。果たして、イアンは本来のパワーを取り戻し、ジェニーを救うことができるのだろうか?

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いよいよ魔物たちの追跡が迫る

地下鉄に乗って逃走するイアンとジェニー

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遂に魔物たちがイアンとジェニーを捕らえた

サディスティックな本性を見せるメディア

 まず、日本の落武者を連想させるような魔物たちのクリーチャー・デザインが秀逸。海外では賛否両論あるようだが、個人的にはかなりカッコ良く感じられた。物影から長髪をなびかせてスーッと現れるシーンや、ものすごい速さで群になってイアンを追いかけるシーンなどが素晴らしくクールで印象的だ。また、彼らが一種のパラレルワールドにいる存在で、我々の日常生活の中に人知れず潜んでおり、人間の恐怖心を糧にして生きているという設定も都市伝説的で面白い。
 ただ、彼らが裏切り者であるイアンを苦しめるために、残虐な方法で殺しては輪廻転生を続けさせるというプロットそのものには正直なところ無理を感じる。魔物であるがゆえに本当に殺すことが出来ないから、というのが理由なわけだが、それならば最初から拷問で痛めつけた方が手っ取り早かったに違いない。まあ、そんなことを言ってしまったら、本作のストーリーそのものが成立しなくなってしまうのだけれど。
 脚本のブレンダン・フッドは、ウェス・クレイヴン製作のホラー『インプラント』(’02)の脚本を手がけていた人物。あちらも日常生活の中に潜む闇の恐怖を描いた作品で、魔物たちの設定にはかなり共通点がある。本作の方がプロット的には複雑で凝っているが、説得力という点ではシンプルで分かりやすい『インプラント』の方がより優れていたように思う。
 また、本作はプロデューサーとしてスタン・ウィンストンが名を連ねている。ウィンストンといえば、『ターミネーター』('85)や『エイリアン2』('86)、『ジュラシック・パーク』('93)などを手がけた超大物SFXアーティスト。本作でもスタン・ウィンストン・スタジオの面々が特撮およびクリーチャー・デザインを手がけているが、低予算ゆえにあまり派手な見せ場はない。また、ダリオ・ピアーナ監督の意向で露骨な残酷シーンもかなり抑え気味なので、その辺りを期待するコアなマニアには不満が残るかもしれない。

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目覚めるとイアンは病院で縛り付けられていた

別人のように衰弱したグレイがイアンに救いの手を

 主人公イアン・ストーン役を演じているマイク・ヴォーゲルは、『テキサス・チェーンソー』('03)や『ポセイドン』('06)、『クローバーフィールド』('08)などで注目を集めている若手スター。とてもハンサムで好感を持てるタイプの役者だが、スターとしてのカリスマ性はいまひとつ。キャスパー・ヴァン・ディーンやスキート・ウーリッチのように、数年で消えてしまいそうな気がする。ジェニー役のイギリス人女優クリスティナ・コールも、ヒロインとしてはちょっとカリスマ性に乏しい。かなりの美人であることは間違いないのだが、どうもサラ・ポリーの二番煎じに見えて仕方ないのだ。
 それに比べると、メディア役のジェイミー・マレーはひと頃のララ・フリン・ボイルを彷彿とさせるダークな魅力があってなかなか良かった。彼女はBBCの人気ドラマ『華麗なるペテン師たち』で人気を得たイギリスの女優で、最近ではアメリカのドラマ『デクスター〜警察官は殺人鬼』でかなりクレイジーな悪女役を演じている。個人的にも、しばらく注目してみたい若手女優の一人だ。

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