スペインのガキ大将〜David Civera

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 スペインのエイベックスと呼ばれているレコード会社Vale Musicは、ここ数年文字通り破竹の勢いで若手スターを世に送り出している。中でも、現在スペインの若手でナンバー・ワンの人気を誇るDavid Bisbalは、本国のみならず南米やアメリカでもブレイクしており、その後を追うようにレーベル・メイトであるBustamanteもアメリカ大陸進出を果たしている。そして、そのVale Musicが放つ“第3の男”が、このDavid Civeraだ。

 David BisbalやBustamanteが少女マンガから抜け出たような貴公子として売り出しているのに対し、David Civeraは見ての通りのチョイ悪なガキ大将といったイメージ。顔立ちそのものは童顔で憎めないタイプなのだが、無理して背伸びをして悪ぶっているような雰囲気がとっちゃん坊や的で、そこら辺が女性ファンの母性本能をくすぐるのかもしれない。楽曲的にも、“Que la detengan”のようなRicky Martin路線のイケイケでダンサンブルなラテン・ディスコや、大ヒットした“Bye Bye”のようなビッグ・バンド風のキザなユーロ・ラテン・スイングなど、危険な男の色気を演出しているのだが、逆に大人ぶったやんちゃな悪ガキにしか見えないのが微笑ましい。

 1979年1月8日、スペインはテルエルの生まれ。子供の頃からギターやピアノ、歌を学び、11歳の時に初めて人前でステージに立つ。97年にスペインのオーディション番組“Lluvia de estrellas”に出演。賞こそ逃したものの、プロデューサーのAlejandro Abadの注目するところとなり、コンピューター技師を目指していた彼は芸能界入りを勧められる。“Canciones de nuestra vida”などの人気音楽番組に出演した後、2000年にロマンチックなバラード“Hoy como ayer”でデビュー。しかし、翌年のユーロビジョン・ソング・コンテストのスペイン代表に選ばれた“Dile que la quiero”が、その後の彼の音楽的な路線を決定付ける。ユーロビジョンの本大会では残念ながら6位に終わったものの、ダンサンブルなラテン・ディスコ“Dile que la quiero”はスペイン国内で大ヒットを記録。同名アルバムもベスト・セラーとなる。
 2002年にリリースされたセカンド・アルバム“En cuerpo y alma”は、さらにダンサンブルなラテン・ビートを全面に押し出し、プラチナム・ディスクを獲得するほどの大ヒットとなり、シングル“Que la detengan”も売れに売れまくった。2003年の“La chiqui Big Band”からは“Bye Bye”が大ヒット。ビッグ・バンド風のゴージャスなサウンド・プロダクションと今風のダンス・ビートの融合が新鮮で、スペインではこの年の夏最大のヒット・ナンバーとなった。
 最新アルバム“Perdoname”では、前作のダンサンブル路線を踏襲しながらも、渋めのバラードも織り交ぜながら、よりダンディな大人のアーティストへと脱皮を図っているように見える。それを象徴するような楽曲がタイトル・トラックの“Perdoname”。本格的なタンゴとダンス・ビートを融合させた野心的な作品で、もうクドいくらいにラテンのダンディズムとエロティシズムが炸裂。大人のアーティストといっても、お上品な正統派ではなく、あくまでも裏街道を行くような胡散臭いB級っぽさを狙うところが、David Civeraの魅力だったりするのだ。

 盟友のDavid BisbalやBustamanteがLuis MiguelやMiguel Boseといった大御所の先輩たちの路線を踏襲しているのに対し、暗黒街のチンピラRicky Martinみたいな雰囲気でわが道を行くDavid Civeraからはまったく目が離せない。

“Bye Bye”のビデオ・クリップ ココ で見れます!

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En cuerpo y alma (2002)

La chiqui Big Band (2003)

Perdoname (2005)

(P)2002 Vale Music (Spain) (P)2003 Vale Music (Spain) (P)2005 Vale Music (Spain)

1,Que la detengan
2,Cuidare de ti
3,Muero por besarte
4,En cuerpo y alma
5,Que pasada de morena
6,Definitivamente tuyo
7,Me dejaste plantao
8,Hay algo en ti
9,Necesito amar a esa mujer
10,Me estoy enamorado
11,Que la detengan (Remix)
bonus
Que la detengan (video)

produced by Alejandro Abad

1,La chiqui Big Band
2,Amor de hielo
3,Bye Bye
4,Todavia
5,Que peligro tiene mi nina
6,Como yo te quiero
7,Uno en dos
8,Rosa y Espinas
9,Dame una razon
10,Donde estas abusadora
11,Bye Bye (Remix)
12,Que la detenga
13,Dile que la quiero
bonus
Bye Bye (video)

produced by Alejandro Abad
1,Bailando con el viento
2,Perdoname
3,El rey del dancing
4,Solo soy un ser humano
5,Gloria Bendita
6,De que sirve
7,Dime como se baila
8,Eres unica
9,Me puedo enamorar
10,Dicen por ahi
11,Me esperan
12,Perdoname (version tango)
bonus
Perdoname (video clip)

produced by Alejandro Abad
 もうモロに当時のRicky Martin路線。もしくは“Oye”の頃のGloria Estefanといったところか。超ノリノリのラテン・ダンス・ナンバー#1は大好きですねー。まさしく、ラテンの血が騒ぐといった感じのお祭りナンバー。#11はリミックスとはいうものの、パーカッションやホーン・セクションが派手になった以外は殆どノリもアレンジも変化なし。
 同じ路線の#5も、イケイケの哀愁ラテン・カーニバル!!って感じでむちゃくちゃカッコいい。と思ったら、#9もそっくりな仕上がり。この辺りの、いかにも流行もの的な臆面もないアイドル路線、嫌いじゃないですねー。ただ、それ以外のバラードやミディアム・ダンス・ナンバーは平凡な仕上がりで、アルバムとしては及第点といったところか。
 オープニングからムンムンとしたラテンの色気が満載の痛快なダンス・アルバム。タイトル通りのビッグ・バンド・ジャズ風のラテン・ダンス・ナンバー#1に始まり、ノリノリの哀愁ラテン・ディスコ#2、そして爆発的なヒットとなった超キャッチーなビッグ・バンド・ラテン・ディスコ#3と、たたみ掛けるように豪快なダンス・ナンバーを連発。ラテン魂炸裂です。これぞ、David Civeraの醍醐味。下世話なくらいにダンサンブルでポップなセンスがいいですねー。Santana風の泣きのラテン・ギターが印象的な哀愁のミディアム・ナンバー#5、やはり哀愁感溢れる華麗なラテン・サンバ#6、盟友David Bisbalとのディエットが実現した迫力のフラメンコ・ハウス#8と、とにかく全編ノリ良く楽しめる1枚。ボーナス・トラックとして、ユーロビジョン・ソング・コンテスト出場曲#13も収録したお得仕様。超オススメ。  目玉は、思いっきりタンゴ路線の哀愁ダンス・ナンバー#2。そうくるかあ〜、と思わず唸ってしまうような露骨なダンディズムに感服(笑)。胡散臭い伊達男の雰囲気がプンプン。口元にはバラ一輪だね、絶対。#5では、相変わらずの哀愁ラテン・ディスコ路線も健在。全く、飽きないネー、と思いつつ楽しめてしまうのだ、これが。Cab Callowayミーツ・ラテン・ダンス・ポップな#7もカッコいいし、フラメンコ・ギターの音色も切ない哀愁のミディアム・ダンス・ナンバー#10もムードたっぷり。一応、#6や#8、#9と本格的なバラードにも挑戦しているが、やっぱりDavid Civeraの十八番はダンス・ナンバー。どんなに背伸びをしてみても、ジゴロを気取ったやんちゃなダンス小僧なんだよねー。そのギャップが一番の魅力だったりする。これからも、どんどんこの路線で突っ走っていって欲しいものだ。

 

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