ダニエラ・メルクリ Daniela Mercury
〜アシェ・ミュージックの女王〜
ブラジルが世界に誇る大スターであり、ブラジル音楽史上最もレコード・CDを売ったアーティストでもある。90年代にブラジル全土にアシェ・ミュージック・ブームを巻き起こした張本人であり、彼女がブラジル音楽界に与えた影響は非常に大きい。
まずはアシェ・ミュージックとは何なのかというところから説明した方がいいかもしれない。サンバやマラカトゥといったブラジルの土着的な音楽にレゲエやメレンゲといったカリビアン・サウンド、さらにアフリカ音楽の要素を盛り込み、エレクトロニックなサウンドで仕上げたダンス・ミュージックがアシェである。トライバルで野性的、エキゾチックでパワフル。欧米のポップスやロックからの影響も色濃く、90年代以降のブラジル音楽を語る上では欠かせないムーブメントと言えるだろう。そのアシェ・ミュージックを世に広めたのがダニエラ・メルクリなのである。
しかし、彼女が成功したのはその音楽性ばかりが理由ではない。アイドル的なルックスからは想像もつかないようなパワフルでスケールの大きなボーカル、幼い頃からダンスで鍛えあげた肉体を駆使したダイナミックなステージ・パフォーマンス。スターとしてのカリスマ性と実力を兼ね備えた才能こそが、ダニエラ・メルクリの大きな武器と言えるだろう。とにかく、むちゃくちゃカッコいいのだ。
生まれ故郷のバイーアとカーニバルをこよなく愛するお祭り女。小股の切れ上がった姐御っぷりも清々しい、まさにアマゾンの女王と言えるだろう。
1965年7月28日、バイーアはサルヴァドールに生まれたダニエラは、バイーアのストリート・カルチャーを吸収して育った。父親はポルトガル人で、母親はイタリア系ブラジル人だった。8歳の頃からダンスを学ぶようになり、大学でもダンスを専攻する。地元のバーで歌うようになり、1989年にポップ・バンドCompanhia
Clicのメンバーとしてレコード・デビュー。数曲のヒットを放った後、1991年にソロ・デビュー。サンバやレゲエ、アフロ・ビートにエレクトロ・サウンドを融合させた斬新なサウンドが話題になり、デビュー・シングル“Swing
Da Cor”はまずまずのヒットとなった。
しかし、彼女の名前がブラジルのみならず世界中に知られるようになったのは、セカンド・アルバム“O Canto
Da
Cidade”である。同名シングルはブラジルのヒット・チャートで1位を記録。さらにアルバムは売れに売れまくり、ブラジル音楽史上初のミリオン・セラーを記録した。さらに、ヨーロッパやアメリカでもリリースされ、結果的に世界中で300万枚以上を売り上げるというメガ・ヒットとなったのだった。
続くアルバム“Musica
de Rua”、“Feijao com
Arroz”もブラジルだけで100万枚以上の売り上げを記録。世界各国でのライブ・ツアーも成功させ、ダニエラはブラジル音楽界最大の輸出品となった。特にスペインや南米のスパニッシュ・マーケットでは絶大な人気を誇っている。また、ポルトガルでは同国の音楽史上最も成功したアーティストの一人と言われるほど国民的な人気を誇っている。
さらにはユニセフの親善大使やユネスコの平和大使などにも任命されており、今や世界で最も知名度の高いブラジル人スターと言っても過言ではないだろう。
ここ数年はよりエレクトリック色を強め、ハウスやダブ、ヒップ・ホップの要素を積極的に取り込んでいる。その一方で、バイーアのカーニバルにも毎年のように参加しており、ブラジル音楽の息吹と魅力を世界に伝える数少ないスーパー・スターとして活躍を続けている。残念ながら、ブラジル音楽と言えばボサノバ一辺倒の日本では決して知名度が高いとは言えないものの、ダンサンブルでクールなブラジリアン・サウンドを探している人は是非とも彼女のアルバムにチャレンジしてもらいたい。
“Rapunzel”のプロモ・クリップ ココ で見れます!(画質悪し)
“Ile Perola Negra”のプロモ・クリップ ココ で見れます!
Daniela Mercury
(1991) O Canto Da Cidade
(1992) Feijao Com Arroz
(1996) Rapunzel (Julieta e Romeu)
(1996)
(P)1992 Celluloid (USA)
(P)1993 Sony Discos (USA)
(P)1996 Epic (Brasil)
(P)1996 Epic/Sony Music
(Brasil)
1,Swing Da Cor
2,Ninguem
Atura
3,Milagres
4,Todo Canto Alegre
5,Geleia Geral
6,Menino
Do Pelo
7,Todo Reggae
8,Vida E
9,Tudo De Novo
10,Doce
Esperanca
11,Maravilhe
produced by Daniela Mercury & Wesley
Rangel1,O Canto Da
Cidade
2,Batuque
3,Voce Nao Entende Nada Cotidiano
4,Bandidos Da
America
5,Geracao Perdida
6,So Pra Te Mostrar
7,O Mais Belo Dos
Belos
8,Rosa Negra
9,Vem Morar Comigo
10,Exotica Das
Artes
11,Rimas Irmas
12,Monumento Vivo
produced by
Liminha1,Nobre
Vagabondo
2,Rapunzel
3,Minas Com Bahia
4,Feijao de
Corda
5,Voce Abusou
6,Dona Cano
7,Bate Couro
8,A Primeira
Vista
9,Rede
10,Musa Calabar
11,Vai Chover
12,Vestido de
Chita
13,Do Carinho
14,Bandeira Flor
15,Vide Gal
produced
by Alfredo Moura & Rildo Hora1,Rapunzel (Remix Radio)
4:00
2,Rapunzel (Version Album) 3:39
produced by Alfredo
Moura
#1 remixed by Sami Zitouni/Bibi
ダニエラの記念すべきファースト・アルバムのアメリカ盤。トライバルでワイルドなブラジリアン・ビートと哀愁感溢れるメロディが気持ちいいデビュー・シングル#1は必聴。オバサンみたいなハスキー・ボイスでシャウトしまくるダニエラのパワフルな歌いっぷりにも意表を突かれます。とてもジャケットの素朴で可愛らしい顔からは想像もつかないような貫禄。まだまだサウンド的には荒削りな感じはしますが、デビューでこれだけの完成度は立派です。
ブラジル全土で一大センセーションを巻き起こしたメガ・ヒット・アルバム。日本でも当時ちょっと話題になりました。打楽器を前面に押し出した豪快なトライバル・サウンドで統一されており、まさに踊り狂うためのブラジリアン・ミュージックです。#7の猛烈なトライバル感はクセになること必至。彼女にとって代表作となったシングル#1もスケールの大きなダンス・ナンバーです。レゲエやメレンゲの要素も随所に散りばめられており、ラテン・ファンにもオススメ。
レゲエのビートとサンバの打楽器で奏でられる雄大で牧歌的な佳作#1で幕を開ける洗練されたダンス・アルバム。一転してメレンゲ風のハイテンションなリズムとハードなトライバル・サウンドが圧巻のシングル#2、パーカッションの乱れ打ちとメランコリックなメロディ、サイケデリックなギターが最高にクールな#4、Antonio
Carlos &
Jocafiによるボサノバの名曲を壮大なスケールの叙情的なトライバル・サウンドに仕上げた#5など、全編聴きどころ満載の傑作。大推薦です。
アルバム“Feijao Com
Arroz”からのファースト・シングル。もともとメレンゲ風のダンス・ナンバーですが、#1のリミックスでは見事なラテン・ハウスに生まれ変わっています。BPMはちょっと遅めですが、マイアミ・サウンド風のゴージャスなアレンジが気持ち良く、ラテン・ファンも十分に納得の仕上がり。贅沢を言えば、もう少し長尺で聴きたかったかな。既に廃盤ですが、海外の中古盤サイトでは比較的よく見かけますので、是非とも探してゲットして下さい!
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Sol Da Liberdade (2000) |
Ile Perola Negra (2000) |
Sou De Qualquer Lugar (2001) |
Carnaval Eletronico (2004) |
(P)2000 BMG (Brasil) | (P)2000 BMG (Brasil) | (P)2001 BMG Brasil (USA) | (P)2004 BMG Brasil (Brasil) |
1,Sol Da Liberdade 2,Groove Da Baiana 3,Ile Perola Negra 4,Santa Helena 5,Axe Axe 6,Itapua @no 2000 7,Sou Voce 8,Dara 9,Funk Da Decepcao 10,So No Balanco Do Mar 11,Viagem 12,De Tanto Amor 13,Crenca E Fe 14,Ile Perola Negra (Club Mix) bonus disc 1,Como Vai Voce produced by Emilio Estefan Jr, Juan Vicente Zambrano, Will Mowat, Andres Levin & Daniela Mercury |
1,Edit Version 4:33 2,Spanish Version 4:02 3,Pablo Flores Club Radio Edit 4:28 4,Pablo Flores Club Mix 10:37 produced by Emilio Estefan Jr & Juan Vicente Zambrano #3 & #4 remixed by Pablo Flores |
1,De Qualquer Lugar 2,Baiana Havaneira 3,A Praieira 4,Beat Lamento 5,Aeromoca 6,Estrelas 7,Ata-Me 8,Mutante 9,Um Tempo De Paixao 10,Bora Morar 11,Quem Puder Ser Bom Que Seja 12,Janela 13,Nossa Musica 14,Nina produced by Daniela Mercury, Ramiro Musotto, Celso Fonseca,Marcelo Sussekind & Cesario Leony |
1,Maimbe Danda 2,Quero Ver o Mundo Sambar 3,Vou Bate pa Tu 4,Que Baque E Esse? 5,A Tonga da Mironga do Kabulete 6,O Canto da Rainha 7,Amor de Carnaval 8,Por Tras da Fantasia 9,Preto e Branco 10,Charles Yie 11,Ago Lonan 12,Quero Voltar pra Bahia produced by Carlinhos Brown, DJ Renato Lopes, DJ Ze Pedro, Marcelinho Da Iva, DJ Ramilson Maia, DJ Meme, Bid, XIS, DJ Anderson Noise, Hugh |
これまた傑作アルバムです。のっけの#1から完全にノックアウトのカッコよさ。洗練されたメロディにゴリゴリのトライバル・サウンド。全く文句のつけようがないです。プロデュースは元マイアミ・サウンド・マシンのエミリオ・エステファン・ジュニアを筆頭に、ジェニファー・ロペスやリッキー・マーティンで有名なフアン・ヴィセンテ・ザンブラノ、ミーシャ・パリスやアート・リンゼイを手掛けたアンドレ・レヴィン、アンジェリーク・キジョーのプロデューサーとして有名なウィル・モワットと実に多彩。フワフワとドリーミーなスロー・サンバ#4も秀逸! | 当時グロリア・エステファンやリッキー・マーティンらのクラブ・ミックスを手掛けて引っ張りだこだったラテン系DJ、パブロ・フローレスによるリミックスを収めたシングル。オリジナルは爽やかで陽気なエレクトロ・サンバですが、リミックスではラテン・スタイルのアッパーなガラージ・ハウスに仕上がっています。クオリティ的には可もなく不可もなくといった感じですが、オリジナルとは全く違ったキャッチーなラテン・テイストはなかなか新鮮。まさに職人技です。 | ヒップ・ホップとエレクトロニカを融合したストリート風の#1、エレクトロ・ラウンジ風のノスタルジックなマンボ#2、ハードでアンダーグラウンドなロック風ワールド・ビート#3と、今までの作品とはイメージを一変した意欲作。いわゆるアシェ・ミュージックとは一線を画する仕上がりで、彼女の作品の中では最も実験性の高いアルバムと言えるかもしれません。プロデュースにもブラジルのクラブ・シーンを代表する若手アーティストを揃えています。ただ、古くからのファンには賛否両論だったのか、期待ほどセールスは伸びませんでした。 | 前作の反省点を生かし、アンダーグラウンドなクラブ色を前面に押し出しながらもアシェ・ミュージックの原点に立ち戻った佳作。サンバ、レゲエ、アフロ・ビートをハウスやテクノ、トランス、ドラムン・ベース、エレクトロニカで聴かせまくります。これまた賛否両論あろうかとは思いますが、個人的には非常にツボな1枚。ドラムン・ベースに土着的なアフロ・サンバを掛け合わせた#3なんか絶妙なカッコ良さ。クレイジーでキャッチーなラテン風エレクトロ・ジャズ#4、MAW風のトライバルでファンキーなラテン・ガラージ#6も素晴らしい出来映えです。 |
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Bale Mulato (2005) |
(P)2005 EMI (Brasil) |
1,Topo do Mundo |
これぞアシェ・ミュージック。クラブ色一辺倒から脱却し、あらゆる意味で原点に立ち戻った最新アルバム。“Feijao Com Arroz”辺りの頃を彷彿とさせる仕上がりで、エレクトロでトライバルなダンス・ナンバーとなだらかなサンバ・レゲエをバランス良く配した、ベテランらしい風格漂う1枚です。ただ、もうちょっと傑出した個性の強い楽曲が欲しかったかもしれません。まとまりすぎてしまったような気もします。しかしダニエラ姐さん、年をとりませんねー。 |