シンシア Cynthia
フリースタイル界を代表する永遠の美少女
一時期の勢いを失いつつあった90年代のフリースタイル界で絶大な人気を誇った女性アーティスト。ボーカリストとしては決して上手い人ではなかったが、その抜きん出た美少女ぶりはスター不在のフリースタイル界において非常に貴重な存在だった。ニューヨークのマイナー・レーベルだったMicMac
Records所属のアーティストとして初めてビルボードのポップ・チャートにもランク・インし、すっかり下火になってしまったフリースタイル業界では唯一全米のメジャー・マーケットで勝負できるスターだったと言えるだろう。
Tommy
Boyに移籍してからはユーロ・ハウスやハード・ハウスにも取り組み、ジャンルのクロス・オーバーにも積極的だった。また、少女のような清らかさや優しさを残した、ちょっとあどけない声質も魅力だった。結局、メジャー・シーンでの成功は限られたものでしかなかったが、後期フリースタイルを語る上では欠かすことのできないアーティストだ。
ニューヨークのスパニッシュ・ハーレムに生まれ育ったシンシアは、幼い頃からドナ・サマーのような歌手を夢見ていたという。地元のアマチュア・コーラス・グループに参加していた彼女は、そこで後のフリースタイルの女王サファイアと知り合い大親友となる。一足先にレコード・デビューして人気スターとなったサファイアは、あちこちのレコード会社にシンシアを紹介してオーディションを受けさせた。そうした中で、当時MicMac
Recordsのプロデューサーだったミッキー・ガルシアが彼女に興味を示し、5年契約を結ぶこととなる。そうして88年に発売されたデビュー・シングルが“Change
On
Me”。センチメンタルな哀愁系フリースタイルの名曲で、フリースタイル系のラジオ局で大ヒットを記録した他、ビルボードのダンス・チャートでも37位にランクされ、弱小レーベルの新人シンガーとしては幸先の良いスタートとなった。
その後、“Endless
Nights”、“Thief of
Hearts”とヒット・シングルが続き、アルバム“Cynthia”もリリースされた。そして、91年にリリースされたセカンド・アルバム“Cynthia
U”からシングル・カットされたバラード“Break Up To Make
Up”(スタイリスティックスのカバー)がビルボードのポップ・チャートで70位にランクされ、急速に人気を失いつつあったフリースタイル業界における希望の星となった。
その後、レコード会社の移籍を巡ってのゴタゴタで一時的に干されてしまったような状態だったが、94年にTommy
Boyからシングル“How I Love
Him”をリリース。歌謡曲路線のキャッチーで叙情的な哀愁系フリースタイルの佳作で、ビルボードのダンス・チャートでも15位を記録し、彼女にとって最大のヒット曲となった。97年にリリースされたTommy
Boy移籍第2弾“Like A
Star”ではトランシーなユーロ・ハウスに挑戦。この辺りから日本でも一部のクラブ・ファンの間で彼女の名前が知られるようになった。
さらに99年にはRobbins
Entertainmentに移籍し、ウルトラ・キャッチーな哀愁系ユーロ・ハウス“If I Had A
Chance”をリリース。ニューヨークを中心としたダンス系のラジオ局では爆発的な大ヒットとなり、ビルボードのポップ・チャートでも83位にランクされた。その後、“Thinking
About You”、“I Never
Said”とシングルをリリースしたが、いずれも大したヒットには至らず、ここ数年はフリースタイル系のクラブ・イベントを中心としたライブ活動を行っている。
Cynthia (1989) Cynthia
U(1991) Break Up To Make Up
(1991) Love Me Tonight
(1992) 日本発売もされたセカンド・アルバム。ジャケット写真もすっかり大人っぽくなって、その美形ぶりが際立ってます。ただし、歌唱力の方はあまり成長してません(苦笑)。それでもキャッチーでポップな楽曲の出来映えは前作以上で、これでもう少しサウンド・プロダクションにお金がかけられていたら、なかなかの佳作になっていたでしょう。カバー・ガールズの“Show
Me”も真っ青のウルトラ・キャッチーな哀愁系ナンバー#3なんか最高。ただし、ポーラ・アブドゥルの“Forever Your
Girl”をパクった
(P) MicMac Records (USA)
(P) MicMac Records (USA)
(P) MicMac Records (USA)
(P)1992 MicMac Records
(USA)
1,Change On Me 6:38
2,Endless
Nights 8:13
3,Holding On 3:58
4,Thief of Hearts 5:55
5,Everytime
I Look At You 5:58
6,Gonna Get Over You 6:17
produced by Mickey
Garcia & Elvin Molina.1,What Will It Take 3:59
2,Never
Thought I'd Let You Go 4:12
3,One Mistake 3:02
4,Dreamboy, Dreamgirl
(duet with Johnny O) 4:25
5,Pledging All My Love 3:46
6,Best of
Lovers/Best of Friend 3:59
7,Break Up To Make Up 3:59
8,Forever
Missing You 4:10
produced by Mickey Garcia & Elvin Molina
#2
by Mickey Garcia,Elvin Molina,Steve Kourlas & Thomas J. Mercado
#4
by Charlie "Rock" Jimenez,Mickey Garcia & Elvin Molina
#5 by
Charlie "Babie" Rosario & CynthiaSide 1
1,Break Up To Make Up
(Radio Mix) 3:50
2,Break Up To Make Up (Background Vocal Mix)
3:50
Side 2
1,Never Thought I'd Let You Go (Club Mix 1)
6:38
2,Never Thought I'd Let You Go (Club Mix 2) 7:20
Side
1
produced by Mickey Garcia & Elvin Molina
Side 2
produced by
Mickey Garcia,Elvin Molina,Steve Kourlas & Thomas J. Mercado
#2
remixed by Tony Moran.1,New And Old School Mix
2,My
Bonus Beat
3,Percupella
4,Radio Mix
produced by Frankie
Cutlass
まだまだ初々しさの残る顔立ちがキュートなシンシアのファースト・アルバム。デビュー曲#1を筆頭に、いかにもニューヨーク系らしい歌謡曲路線の哀愁系フリースタイル・サウンド満載の1枚。ただ、楽曲の出来の良さに比べてミッキー・ガルシアとエルヴィン・モリーナによるアレンジは明らかに力不足。特に#5におけるバック・コーラスなんか、ユニゾンのバランスが全く取れていない。シンシアのボーカルも、ところどころで音程をキープ出来ていないのは残念。ちなみに、#6はフランス・ジョリの往年のディスコ・ヒットのカバー。
#8はいただけません。安っぽ過ぎ。 シンシアにとってもMicMac
Recordsにとっても初の全米ポップ・チャート・ヒットとなったシングル。もともとはスタイリスティックスのヒット曲で、原曲に忠実なカバーに仕上がっている。フリースタイル・ファンにとってはSide
2の方が目玉と言えるかもしれない。特に、今やハウス系のプロデューサーとして絶大な人気を誇るTony
Moranが手掛けた#2は興味深い。とはいえ、十分な予算を与えられなかったためか、当時の他のTony
Moran作品と聴き比べてみても明らかに安上がりな出来映え。
MicMac
Recordsにおける最後のシングル。ヒップ・ホップ出身のFrankie
Cutlassによるプロデュースで、MicMac時代の作品の中では最もサウンド・プロダクションのしっかりした作品。ストリート感溢れるヘヴィーな打ち込みと派手なエフェクト、キャッチーなメロディ・ラインと、全体的なバランスも見事で、非常にヒット・ポテンシャルの高い1曲。下手にハウス・ミックスなんかを収録していないのも潔くてグッドです。
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The Remixes (1993) |
How I Love Him (1994) |
How I Love Him (1994) |
Like A Star (1997) |
(P)1993 MicMac Records (USA) | (P)1994 Tommy Boy Music (USA) | (P)1994 Tommy Boy Music (USA) | (P)1997 Timber/Tommy Boy (USA) |
1,Forever Missing You
4:04 2,Endless Nights 4:56 3,Gonna Get Over You 4:15 4,Dreamboy/Dreamgirl 5:15 5,Love Me Tonight 5:02 6,What Will It Take 5:07 7,Change On Me 5:39 8,Thief of Hearts 6:35 9,Never Thought I'd Let You Go 7:28 10,Pledging All My Love 5:43 11,Everytime I Look At You 4:27 #1 & #3 remixed by Costantino Padovano & Paul Harlin #2 & #11 remixed by Mauro P. DeSantis & Jerry Melilo #4 remixed by Charlie "Rock" Jimenez #5,#8 & #10 remixed by Mickey Garcia #6 remixed by Elis Pacheco #7 remixed by Mohamed Moretta #9 remixed by Tony Moran |
Side A 1,Suite 13:58 Side B 1,Hearthrob Mix 9:30 2,Hearthrob Dub 8:08 produced by Joey Gardner |
Side A 1,Club Mix 6:19 2,Buzz Mix 6:03 Side B 1,Euro Mix 6:03 2,Spike Mix 9:04 Side C 1,Spike Mix 9:04 2,Spike Dub 7:01 Side D 1,Classic Club Mix 8:01 2,Timber Mix 9:31 produced by Joey Gardner Side B #2 remixed by Darrin Friedman & Hex Hector Side C #1 & #2 remixed by Darrin Friedman & Hex Hector Side D #2 remixed by Joey Gardner |
1,Joey's Remix Edit 3:41 2,Joey's '79 Mix 9:25 3,TM's Shining Mix 11:30 ビデオ 4,X-Mix 7:37 5,The F.L. Mix 5:43 6,Cibola Mix 5:20 7,Tee's Inhouse Mix 5:20 8,Joey's Estrella Mix 9:25 9,The Deeper Mix 7:45 10,The Dard Deeper Mix 8:13 produced by Tony Moran #1, #2 & #8 remixed by Joey Gardner. #3 remixed by Tony Moran #4 remixed by The Fitch Bros. #5 remixed by DJ Lucho #6 remixed by Steve Chavez,Albert Castillo & Charles Chavez. #7,#9 & #10 remixed by Todd Terry. |
シンシアが実質的にMicMacを離れてしまった事もあって、その穴埋め的に企画されたリミックス・アルバム。サウンド的にはガラージやシカゴ・ハウス的なアプローチのものが多い。ただ、もう明らかに制作費がかかっていないもんだから、まるで80年代のようなチープな音作りのものばっかり。#6のリミックスを手掛けたElis Pachecoなんか個人的にも好きなプロデューサー兼ミキサーだが、残念ながら出来損ないのハード・ハウスもどきにしか聴こえない。 | TKAのプロデューサーとして有名なJoey Gardnerを迎えた、Tommy Boy移籍第1弾。歌謡曲路線の叙情感溢れる美しいメロディ・ラインが印象深い作品で、90年代のフリースタイルを代表する名曲と言っても過言ではない。シンシアのボーカルも安定感があり、非常に繊細な表現力を身につけている。音的には典型的なニューヨーク系のフリースタイルで、A面、B面共に基本的なミックスは変わらない。いずれにせよ、彼女にとって大きな転機となった力作だ。 | こちらはプロモ盤のみでリリースされた2枚組リミックス。いずれも質の高いキャッチーな哀愁系ユーロ・ハウスに仕上がっている。特にハード・ハウス色の強いDarrin FriedmanとHex HectorのコンビによるSpike Mixは猛烈にカッコいい。また、Joey Gardner自身によるside Dのリミックスもなかなか。ポップで切ないプログレッシブ・ハウスに仕上がった#1、派手なエフェクトで加工しまくったニューヨーク系フリースタイル#2と、いずれも聴き応え十分な出来。 | 話題にならない方がおかしいくらいに豪華なリミキサー陣を揃えた入魂のシングル。今までの哀愁路線から一転し、ハッピーで爽快感溢れるユーロ・ハウスに仕上がっている。個人的には、それほど好きな作品ではないものの、フロアでは盛り上がること必至のキラー・チューンだ。リミックスも粒揃いで甲乙つけがたい。特にJoey Gardnerの#2とTony Moranの#3は超が付くほどゴージャス。ドナ・サマーの“Last Dance”を彷彿とさせる演出の#7も秀逸です。 |
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If I Had The Chance (1998) |
Thinking About You (1999) |
Thinking About You (1999) |
I Never Said (2000) |
(P)1998 Timber/Tommy Boy (USA) | (P)1999 Timber/Robbins (USA) | (P)1999 Timber/Robbins (USA) | (P)2000 Timber/Robbins (USA) |
1,Timber Radio Edit 4:08 ビデオ 2,Timber Mix 6:11 3,Cruz & Lucci's Krash Mix 6:18 4,Slammin' Sam Mix 5:29 5,Edge Factor Mix 7:02 6,Edge Factor Dub 6:27 produced by Tony Moran #1 & #2 remixed by El Nino #3 remixed by Mike Cruz #4 remixed by Slammin' Sam Maxion #5 & #6 remixed by Markus Shulz |
1,If I Had The Chance
4:14 2,Thinking About You 3:55 3,I Never Said 5:34 4,No Golding Back 3:28 5,It Wasn't Enough 3:55 6,How I Love Him 5:04 7,All The Days of Love 6:43 8,Save Your Love For Me 3:44 9,Feel Good 4:12 10,Like A Star 4:10 11,If I Had The Chance (Tony Moran's Old School Mix) 5:18 12,No Holding Back (featuring Urban Misfits) produced by Tony Moran,Frankie Lamboy & Andy Wedean, Kenny Diaz, Victor Franco & Joey Gardner |
1,Original Mix-Radio Version
3:55 2,Slammin' Sam's Wesside Rhythm Mix-Radio Version 3:40 3,Linus Forever Euro Mix-Radio Version 4:05 4,Rich 3:16 Radio Version 3:43 5,Original Mix 5:50 6,Slammin' Sam's Wesside Rhythm Mix 5:37 7,Linus's Forever Euro Mix 6:35 8,Rich 3:16 Mix 6:40 produced by Frank Lamboy & Andy Wedeen. #2 & #6 remixed by Slammin' Sam Maxion #3 & #7 remixed by Lenny "Linus" Douglas #4 & #8 remixed by Rich Pangilinan |
1,Giuseppe D's Hothead Radio Mix
4:02 2,Original Version (Radio Edit) 4:06 3,Giuseppe D's Hothead Mixshow Mix 6:41 4,Denny Tsettos Escape To Exit Mix 8:11 5,Original Version 5:34 6,Giuseppe D's Hothead Club Mix 9:06 produced by Kenny Diaz #1, #3 & #6 remixed by Giuseppe D. #4 remixed by Denny Tsettos & Eddie Baez. |
フリースタイルと2ステップの打ち込みは非常に良く似てると思うのだが、この作品などはその良いショーケースと言えるだろう。キャッチーで美しくも切ないメロディに、2ステップ風の硬質でファンキーな打ち込みが冴える哀愁系フリースタイルの佳作。ヘヴィーでクールなハード・ハウスに仕上げた#3、よりシンプルでハードなオールド・スクール風のラテン・ヒップ・ホップに仕上げた#4、殆どハイエナジーと呼んでもいい位、ポップで華やかなユーロ・ハウスに仕上げた#5などリミックスも充実している。 | ようやく、といった感じで8年ぶりにリリースされたシンシアのサード・アルバム。ボーナス・トラックを除く10曲中半分がシングル・カット曲である事でも分るとおり、どこからシングル・カットしてもおかしくないようなポップでキャッチーなトラックが詰まった作品。メジャー・シーンにも通用するようなフリー・スタイルのアルバムというのは、恐らくこれが最後なのではないでしょうか・・・。シンシアのボーカルも、声量に欠ける分を表現力でカバーできるようになり、ジェニファー・ロペスなんかよりも遥かに上手い。 | これまたポップでフェミニンな哀愁系フリースタイルの秀作。“ラ、ラ、ラララ”と思わず口ずさんでしまうようなキャッチーなサビも素敵です。エレガントで爽やかなユーロ・ハウスに仕上がった#3と#7や、Junior Vasquezも真っ青のイケイケでサウンド・エフェクト炸裂のハード・ハウスに大変身した#4と#8なんかもカッコいいですが、やはり個人的には硬質でヘヴィーな打ち込みが超ファンキーな2ステップ風の#2と#6が最高にお気に入り。思わずジャンプしてしまいそうです、って意味わからん(笑)。 |
ちょっとKissの“I Was Made For Loving You”を彷彿とさせるバック・コーラスが印象的なアゲアゲのフリースタイル・ナンバー。Tony Moranの愛弟子で、ここ数年ReinaやRuPaulのリミックスなどで大活躍中のミキサーGiuseppe Dを迎えた#1,#3、#6はいずれも豪華でダンサンブルな仕上がり。大箱フロアに映えるスケールの大きなハード・ハウスです。ちなみに、プロデュースは大親友サファイアの旦那Kenny Diaz。 |
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