90年代カルト・ホラー セレクション

 

 

フランケンフッカー
Frankenhooker (1990)
日本では1990年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2006 Unearthed Films (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/85分/製作:アメリカ

映像特典
監督&特殊メイクマンの音声解説
女優パティ・マレン インタビュー
女優ジェニファー・デローラ インタビュー
特殊メイク ドキュメンタリー
プロダクション・フォト集
オリジナル劇場予告編

監督:フランク・ヘネンロッター
製作:エドガー・レヴィンス
脚本:ロバート・マーティン
   フランク・ヘネンロッター
撮影:ロバート・M・ボールドウィン
特殊メイク:ガブリエル・バルタロス
音楽:ジョー・レンゼッティ
出演:ジェームズ・ロリンズ
   パティ・マレン
   シャーロット・ヘルムカンプ
   ルイーズ・ラッサー
   シャーリー・ストーラー
   ジョセフ・ゴンザレス
   ジェニファー・デ
ローラ
   キンバリー・テイラー
   ビヴァリー・ボナー
   キャスリーン・ガティ

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最愛のフィアンセを失った青年ジェフリー(J・ロリンズ)

自宅内に建てた研究室で人体蘇生の研究をしている

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ジェフリーは売春婦たちのボディー・パーツを狙う

ポン引きゾロ(J・ゴンザレス)に売春婦を調達してもらう

 フランク・ヘネンロッターといえば傑作カルト・ホラー『バスケットケース』(82)がなんといっても有名だが、ボクが個人的に一番好きなのはこの『フランケンフッカー』。『フランケンシュタイン』と『死霊のしたたり』を合体させて、ヘネンロッター流のお下劣かつ悪趣味なユーモアで味付けした超能天気ホラー・コメディだ。
 主人公はサイエンス・マニアのオタク青年ジェフリー・フランケン。芝刈り機に巻き込まれてバラバラになった恋人エリザベスを甦らせようと考えた彼は、超高純度コカインを吸って爆発した売春婦たちのボディ・パーツをつなぎ合わせて彼女の体を再生させる。ところが、甦ったエリザベスは体に滲みこんだ売春婦としての記憶が勝ってしまい、夜のニューヨークへ繰り出しては次々と男たちをポンポン吹き飛ばしていく・・・というなんともおバカさんなストーリー。
 全編に漂うニューヨークのケバケバしい場末感は80年代を引きずっていていい感じ。当時の42番街辺りと思しき売春地帯の、うらぶれた賑々しさや猥雑さがヘネンロッターらしい世界観だ。すれっからしの売春婦にマッチョなポン引き、ボンデージ姿のオバサンに筋骨隆々のオカマさんなどなど、周辺にたむろする怪しげで滑稽な人々にも監督の“愛”が感じられる。
 さらにさらに、エロ・グロ・ナンセンス全開なスプラッター・ギャグのくっだらなくて悪趣味なこと!殺人コカインを吸って巨乳をブラブラさせながら大騒ぎしていた売春婦たちが、バッフンバッフンと火花を散らしながら次々と爆発していくシーンは大爆笑。クスリで飛びますっちゅーたって、いくらなんでも飛びすぎだっつーの!って(笑)騒ぎを聞きつけて部屋へ乱入したポン引きの脳天に、飛んできた売春婦の生首がスコンッ!と間抜けな音をたてて直撃するオチにはホント腹を抱えて笑いましたわ。
 しかも、甦ったエリザベスの肉体には殺人コカインが浸透しているもんだから、彼女とエッチしたりキスしたりした男たちも次々と爆発。エクスタシーの頂点で爆発したオッサンの生首が、“最高に気持ち良か〜”などと言い残して文字通り“昇天”なさる下りの何ともバカバカしいこと。このオヤジギャグ的なベタさ加減が、やはり本作の真骨頂なのだと言っていいだろう。
 そして、エンディングは文字通り酒池肉林の大団円。蘇生液に放り込まれていた売春婦たちのボディ・パーツが勝手に合体し、見るも悪趣味なクリーチャーとなってゾロゾロ出てくるのだ。さらに、主人公ジェフリーの身にもとんでもない災難(?)が。これは、いうなれば傲慢で独善的な男たちに対する女の逆襲。そんなフェミニズム的メッセージが込められているのかどうか定かではないものの(笑)、最後の最後まで実に痛快でナンセンスな怪作だ。

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コカインを精製して作られた超高純度の“殺人コカイン”

安宿に売春婦たちが集められた

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ハニー(C・ヘルムカンプ)がコカインを発見する

ラリってぶっ飛んだ売春婦たち

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で、本当に火花を散らして次々とぶっ飛んでいく

爆発した売春婦たちの死体が飛び交う

 科学の研究に没頭している無職のオタク青年ジェフリー・フランケン(ジェームズ・ロリンズ)は、ちょっと太目の美人エリザベス(パティ・マレン)との結婚を控えている。ところが、彼女の父親の誕生日プレゼントとして作った芝刈り機が暴走し、巻き込まれたエリザベスはバラバラになってしまった。
 フィアンセの死にショックを受けたジェフリーは、事件以来すっかり自室に引きこもってしまう。母親(ルイーズ・ラッサー)は息子の精神状態を心配するが、ジェフリーは聞く耳を持たない。実は、彼は事故現場からエリザベスの頭部などをこっそりと持ち出し、自宅倉庫内に建てた研究室で蘇生液に漬けて保管していた。彼は秘かにエリザベスを蘇生するための研究を行っていたのだ。
 研究は最終段階に入っており、後は足りないパーツを集めて、落雷による電気ショックを与えるだけ。しかし、天気予報によると落雷は2日後に控えており、体のパーツを集めるための時間が足りなかった。追いつめられた彼は脳みそに電気ドリルを突き刺し、妙案を思いつく。ニューヨークには金で体を売る女たちがいくらでもいるじゃないか・・・と。
 さっそく繁華街の売春エリアへと向ったジェフリーは、売春婦ハニー(シャーロット・ヘルムカンプ)とポン引きソロ(ジョセフ・ゴンザレス)に金を渡し、パーティと称して若くてピチピチした売春婦を集めてもらう。さらに、彼は強力なコカインをさらに精製した超高純度の殺人コカインを作り、売春婦たちの待つ安宿へと向う。
 ところが、ジェフリーのバックからコカインの袋を見つけた売春婦たちは狂喜乱舞。ほんの少し吸っただけでも死に至るコカインを、彼女たちはスッパスパと吸って騒ぎ始めた。オロオロとするジェフリー。
 やがて、売春婦たちは体が熱く火照ってくるのを感じ、次々と火花を散らして爆発する。宙を舞う売春婦たちの首や足、オッパイ。騒ぎを聞きつけて部屋に入ってきたゾロは、飛んできたハニーの生首が頭に直撃して気絶した。

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一番形のいいオッパイを選ぶジェフリー

脚だってよりどりみどり選び放題

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ついに甦ったエリザベス(P・マレン)だったが・・・

顔の筋肉が硬直して変顔になってしまうのがご愛嬌

 バラバラになった売春婦たちの体をかき集めたジェフリーは、自宅の研究室に戻ってエリザベスの蘇生作業を開始する。ところが、落雷を受けて甦ったエリザベスが最初に発した言葉は“兄ちゃん、遊んでかない?”。“カネ持ってんの?”という彼女の言葉に“ありません”と正直に答えたジェフリーは、その場で殴り倒されて気絶する。
 蘇生したばかりのエリザベスは、体のパーツに刻み込まれた売春婦たちの記憶が勝っていた。ニューヨークの繁華街へと繰り出した彼女は、言いがかりをつけるビジネスマンや写真マニアの日本人観光客を蹴散らかしていく。そんな彼女の勇姿(?)にほれ込んだ中年男と商談が成立。安宿へ連れ込んで商売に取り掛かったものの、彼女の体には殺人コカインが残っており、中年男はエクスタシーの頂点とともに爆発する。
 さらに、通りがかりの色男やテーブルの下からクンニする男を爆死させたエリザベス。場末のバーではオカマや売春婦の悲鳴が響き渡り、一帯が大パニックになってしまう。そこへ、彼女の後を追うジェフリーがやって来て、電気ショックで首が半分もげてしまったエリザベスを自宅へと連れ戻す。
 ところが、彼女の言動が死んだ売春婦たちのものにソックリだと気付いたポン引きゾロが、二人の後をつけて来た。電気ショックで昔の記憶を取り戻したエリザベスは、変わり果てた自分の姿を見て大変なショックを受ける。
 そこへ乱入してきたゾロがナタでジェフリーの首をはねてしまった。すると、蘇生液を保管した箱がゴソゴソと動き出し、中から世にも不気味なクリーチャーたちが現れる。ジェフリーは残った売春婦たちのパーツを蘇生液の中に放り込んだままにしていたのだ。手や足やオッパイなどが合体して甦った売春婦モンスターたちは、自分たちを搾取していたゾロに群がる。断末魔の叫びをあげるゾロ。
 一方、目の前でジェフリーを殺されたエリザベスは、ある妙案を思いつくのだった・・・。

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エクスタシーの瞬間に首が吹っ飛んだオッサン

エリザベスに接触した男たちは次々と爆発

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場末のバーも大パニックに

なんとかエリザベスを連れ帰ったジェフリーだったが・・・

 脚本に参加しているロバート・マーティンは、もともとホラー専門誌『ファンゴリア』の編集者だった人物。そのためホラー映画関係者との交友も広く、ヘネンロッター監督とも親しかったことから、本作と『バスケットケース3』(92)に脚本家として参加している。
 製作を手掛けたエドガー・レヴィンスは、『バスケットケース』(82)以来一連のヘネンロッター作品を世に送り出しているプロデューサー。また、製作総指揮にはB級アクションのカルト作『エクスタミネーター』(80)や『ザ・ソルジャー』(82)で知られるジェームズ・グリッケンハウスが参加し、グリッケンハウス映画の常連カメラマンであるロバート・M・ボールドウィンが撮影監督を務めている。
 さらに、ケヴィン・テニー監督の日本未公開ホラー“Brain Dead”(07)でフェニックス国際ホラー&SF映画祭の視覚効果賞を受賞したガブリエル・バルタロスが特殊メイクを担当。彼は『ドールズ』(86)のメカニカル・エフェクツや『ダークマン』(90)の特殊メイクにも参加していた人物だ。また、爆発シーンなどの特殊効果には、『吐きだめの悪魔』(87)や『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記』(90)のマット・ヴォーゲルが加わっている。

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蘇生液の中で合体してしまった売春婦のボディ・パーツ

次々とゾロに襲い掛かっていく

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ジェフリーの母親を演じる名コメディエンヌ、ルイーズ・ラッサー

バーのマダム役を演じるカルト女優シャーリー・ストーラー

 主人公ジェフリー・フランケン役を演じているのは、『吐きだめの悪魔』にレストランのドアボーイ役として顔を出していた俳優ジェームズ・ロリンズ。『死霊のしたたり』のジェフリー・コムスに似たような雰囲気があり、これはこれでなかなかのはまり役だったが、以降はあまりパッとしない。
 エリザベス役のパティ・マレンは、成人雑誌「ペントハウス」のグラビアモデルだった女性。これがなかなか清楚な雰囲気の美人なのだが、蘇生したエリザベスのおとぼけ演技ではバカ全開の怪演を披露。中でも、顔の筋肉が硬直したときのアホ面は傑作だ。これが最後の映画出演作とはなんとも勿体ない。
 また、ジェフリーの母親役として初期ウディ・アレン映画のミューズとして有名な名コメディエンヌ、ルイーズ・ラッサーが登場。当時は大病を患った直後で言葉を上手く喋ることが出来ず、そのためセリフも全てアフレコだったという。
 さらに、場末のバーのマダム役として、リナ・ウェルトミューラー監督の『セブン・ビューティーズ』(76)で演じたナチの女看守役が強烈だった巨漢女優シャーリー・ストーラーが顔を出している。彼女はカルト映画として名高い『ハネムーン・キラーズ』(72)のヒロイン役でも有名だ。
 その他、雑誌「プレイボーイ」のプレイメイトとして有名なシャーロット・ヘルムカンプが姐御肌の売春婦ハニー役を、人気ドラマ『24』のロシア大統領夫人役が印象的だったカナダ女優キャスリーン・ガティが立ちんぼ売春婦役を演じている。また、『バスケットケース』の黒人売春婦ケイシー役でお馴染みのビヴァリー・ボナーが、同じ役でカメオ出演しているのもファンなら注目したいところ。

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今も相変わらず美しいパティ・マレン

 

 

サンダウン
Sundown : The Vampire in Retreat (1990)

日本では1991年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2008 Lions Gate Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド・2.0
chモノラル/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/104分/製作:アメリカ

映像特典
デヴィッド・キャラダイン インタビュー
ブルース・キャンベル インタビュー
M・エメット・ウォルシュ インタビュー
フォト・ギャラリー
監督・撮影監督による音声解説
オリジナル劇場予告編
監督:アンソニー・ヒコックス
製作:ジェファーソン・リチャード
脚本:ジョン・バージェス
   アンソニー・ヒコックス
撮影:レヴィー・アイザックス
特殊視覚効果:アンソニー・ダブリン
音楽:リチャード・ストーン
出演:デヴィッド・キャラダイン
   ジム・メッツラー
   モーガン・ブリタニー
   マックスウェル・コールフィールド
   ブルース・キャンベル
   ジョン・アイアランド
   デボラ・フォアマン
   M・エメット・ウォルシュ
   ダナ・アシュブルック
   ジョン・ハンコック
   バート・レムゼン
   サンシャイン・パーカー

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ガソリンスタンドの店番をしているビスビー三兄弟

短気なモート(M・E・ウォルシュ)が人を殺してしまう

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その現場を目撃するジャック(D・アシュブルック)とアリス

ハリソン一家が町へとやって来る

 数々の名作ホラー映画をネタにしたパロディ映画『ワックス・ワーク』シリーズで知られるアンソニー・ヒコックスが手掛けた、西部劇風のヴァンパイア・コメディ。といっても、パロディというより『ハウリング』(82)や『フライトナイト』(85)のような路線を狙った、映画マニア向けのジャンル・オマージュといった趣きだ。
 舞台はアメリカ西部の砂漠のど真ん中。訪れる者のほとんどない小さな町プーガトリーは、実は住民全員がヴァンパイアだ。町の統治者マーデュラクは人間との共存共栄を掲げている。しかし、その方針に不満を持つ凶暴なヴァンパイアたちが反乱を起こし、血で血を洗う闘いが繰り広げられることに。で、たまたま町を訪れたエンジニア一家やヴァン・ヘルシングの子孫、旅行者の若者といった人間たちがヴァンパイアの抗争に巻き込まれてしまう・・・というわけ。
 全体的にホラーとコメディのバランス配分があまり上手くないため、後半のパニック・シーンに緊張感が全くないというのが玉に瑕。呑気なギャグもお子様向けの域を出るものではなく、いまいち物足りない印象は否めない。これが『ドラキュリアン』くらい開き直ってくれれば良いのだが、その点もパワー不足という感じ。
 その一方で、往年のゴシック・ホラーや西部劇を意識したカメラワークにセット・デザイン、視覚効果などのこだわりは、映画マニアであるヒコックス監督の面目躍如たるところ。クライマックスのマーデュラクと宿敵ジェファーソンの一騎打ちは、『夕陽のガンマン』(65)のイーストウッドとリー・ヴァン・クリーフを彷彿とさせるようなカッコ良さ・・・といったら褒めすぎかもしれないが、音楽も含めてマカロニ・ウェスタンを多分に意識した演出はなかなか捨て難い。
 なお、当時日本ではロードショー公開されたものの、本国アメリカでは劇場未公開のままビデオ・スルーになったらしい。それでも口コミで評判が広がり、今ではカルト映画としてマニアから根強い支持を集めている。ホラー映画と西部劇への溢れんばかりの愛情が詰まった1本。決して出来の良い映画とは言わないが、なぜか憎めない小品佳作だ。

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不気味な物音に気付くサラ(M・ブリタニー)

コウモリに化けたヴァンパイアが・・・

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その正体はシェーン(M・コールフィールド)だった

シェーンはデヴィッド(J・メッツラー)の恋敵でもある

 砂漠のど真ん中にポツリと点在する小さな町プーガトリー。その入り口で営業するガソリンスタンドでは、モート(M・エメット・ウォルシュ)とミルト(バート・レムゼン)、マール(サンシャイン・パーカー)のビスビー老三兄弟が店番をしている。そこへよそ者の若者が訪れた。若者の横柄な言動にぶち切れたモートは、つい勢い余って彼の首を素手ではね飛ばしてしまう。
 実は、彼らは設計エンジニアのデヴィッド・ハリソン(ジム・メッツラー)一家の来訪を待っていた。町では唯一の産業である血清の製造工場に故障が発生し、その原因究明をハリソンに依頼していたのだ。当初はあまり気の進まなかったハリソンだが、家族旅行を兼ねて妻サラ(モーガン・ブリタニー)、幼い娘ジュリエット(エリン・ゴーレイ)とグウェンドリン(ヴァネッサ・ピアソン)を伴い、遠路はるばるプーガトリーへとやって来た。
 町に到着したハリソン一家は、ちょっと奇妙な町の住民に戸惑う。外を歩く人々は一様に日傘やサングラスをしており、肌を露出しないように気を配っている様子だ。しかも、着ている服装はかなり時代遅れのもので、ニンニクという言葉に敏感だった。
 それもそのはず、プーガトリーはヴァンパイアの町なのだ。統治者であるマーデュラク(デヴィッド・キャラダイン)は、これからのヴァンパイアは人間と平和に共存しなくてはならないと考え、血液の代用品である特殊な血清の大量生産に着手していた。ところが、原因不明の事故で生産ラインがストップしてしまい、責任者シェーン(マックスウェル・コールフィールド)の旧友であるデヴィッドに白羽の矢が立ったというわけだ。
 もちろん、デヴィッドはシェーンや住民たちがヴァンパイアだとは全く知らない。それどころか、かつて二人はサラを巡って争ったライバル同士で、あまり仲が良いとは言えなかった。デヴィッドが乗り気ではなかったのも、それが理由だ。
 実は、シェーンには目論見があった。いまだにサラのことを諦められない彼は、彼女を襲ってヴァンパイアにしてしまおうと考えていたのだ。一家が到着した夜に、サラの寝室へと侵入するシェーン。しかし、間一髪のところで娘たちに見つかってしまい、彼の計画はひとまず頓挫する。

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保安官へ通報して逆に逮捕されてしまうジャックとアリス

ヴァン・ヘルシング(B・キャンベル)とサンディ(D・フォアマン)

 一方、友人がモートに殺される様子を目撃した旅行中の若者ジャック(ダナ・アシュブルック)とアリス(エリザベス・グレイセン)は、住民全員がヴァンパイアであるということを知らずに保安官へ通報するが、逆に留置所へと入れられてしまう。翌朝目覚めた二人は、自分たちもヴァンパイアにされてしまったことに気付く。
 同じ頃、一人の風変わりな青年が町へとやって来た。彼の名前はロバート・ヴァン・ヘルシング(ブルース・キャンベル)。そう、あの吸血鬼ハンターとして有名なヴァン・ヘルシング教授の子孫だ。町のダイニングで親しくなった美人ウェイトレスのサンディ(デボラ・フォアマン)がヴァンパイアであることに気付いた彼は、彼女を脅かしてヴァンパイアの親玉マーデュラクのもとへ案内させることにする。
 さて、人間との共存共栄を目指すマーデュラクとプーガトリーの住民だったが、その中には不満分子も少なくなかった。そのリーダーが長老であるジェファーソン(ジョン・アイアランド)だ。彼は秘かに凶暴なバンパイアたちを集め、反乱の機会を虎視眈々と狙っていた。実は、シェーンもその仲間だったのだ。
 マーデュラクと仲良しになったジュリエットとグウェンドリンは、ジェファーソンが不穏な動きをしていると訴える。そこへ、ジェファーソンらが保安官を殺害する様子を目撃したサンディとヴァン・ヘルシングも登場。空気を読めずにマーデュラクを退治しようとするヴァン・ヘルシングだったが、サンディに首筋を噛まれてヴァンパイアにされてしまう。
 危険が迫っていることを察知して、ハリソン一家に町から逃げるよう指示するマーデュラク。しかし、時すでに遅く、町ではジェファーソン一味が蜂起していた。それまでヴァンパイアの存在に半信半疑だったデヴィッドとサラだが、その様子を目撃して信じざるを得なくなる。
 次々と殺されていくマーデュラク派のヴァンパイアたち。ジャックとアリス、ビスビー三兄弟、ヴァン・ヘルシングなどもマーデュラク側に加勢し、なんとかジェファーソン一味の反乱を食い止めようとするのだったが・・・。

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町の統治者マーデュラク(D・キャラダイン)は平和主義者

彼は人間との共存共栄を訴えている

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マーデュラクの宿敵ジェファーソン(J・アイアランド)

子供たちは町の不穏な動きを察知していた

 ヒコックス監督と共に脚本を手掛けたジョン・バージェスについては詳細不明。本作以外に関わった作品もない様子で、もしかしたら誰かの匿名なのかもしれない。いずれにせよ、ストーリーの展開やセリフのニュアンスなどから察するに、脚本の大半はヒコックス自身の手によるものではないかと考えられる。
 撮影を担当したのは、トニー・フーパーの『スポンティニアス・コンバッション』(89)や『ドレス』(90)などを手掛けたレヴィー・アイザックス。日本でも放送された異色ファミリー・ドラマ『マルコム inthe Middle』の撮影も手掛けたカメラマンだ。
 ウェスタンとゴシックを絶妙にブレンドさせたセット・デザインを手掛けたのは、『メキシカン』(01)や『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)などのメジャー作品で活躍するロバート・グリーンフィールド。
 また、特殊効果には『フロム・ビヨンド』(86)でシチェス国際映画祭の最優秀SFX賞を受賞したアンソニー・ダブリン。ヴァンパイアのストップモーション・アニメには、『リバイアサン』(89)のクリーチャー・エフェクトや『ターミネーター2』(91)のメカニカル・エフェクトを手掛けたハル・マイルズが参加している。
 さらに、特殊メイク・デザインはリック・ベイカーの愛弟子で、『ダークマン』(90)や『キャプテン・スーパーマーケット』(93)、『ヘアースプレー』(07)などを手掛けているトニー・ガードナーが担当。その『ダークマン』でもガードナーと組んだラリー・ハムリンが、共同で特殊メイクのデザインと製作を担当している。

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ジェファーソン率いる反乱軍が蜂起する

マーデュラク側のヴァンパイアたちに助けられるハリソン一家

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一対一の決闘を申し出るマーデュラク

果たしてジェファーソンは正々堂々と戦うのか・・・?

 町の統治者マーデュラク役を演じるのは、最近だと『キル・ビル』シリーズで御馴染みとなったカルト映画の帝王デヴィッド・キャラダイン。ホラー映画への出演も多いが、ヴァンパイア役を演じるのは結構珍しいかもしれない。父親のジョン・キャラダインは、かつてドラキュラ伯爵役を何度も演じていたもんだったが。
 そのマーデュラクに招かれて町へやって来るエンジニア、デヴィッド・ハリソン役には、『テックス』(82)でマット・ディロンの兄役を演じていたジム・メッツラー。爽やかな好青年や良きマイホーム・パパみたいな役を演じることの多い俳優で、出演作の多い割には印象に残らないタイプの人。
 デヴィッドの妻サラを演じているのは、80年代の人気ドラマ『ダラス』でブレイクした女優モーガン・ブリタニー。彼女も美人だがあまり印象に残らない人で、映画よりもテレビ・ムービーへの出演が圧倒的に多い。
 サラに横恋慕するハンサムで邪悪なヴァンパイア、シェーン役には、『グリース2』(82)の主演でデビューしたマックスウェル・コールフィールド。『エレクトリック・ドリーム』(84)や『エンパイア・レコード』(95)など、鼻持ちならない二枚目という役柄ばかり演じている俳優だ。
 さらに、どこか間抜けでおっちょこちょいのヴァン・ヘルシング役には、『死霊のはらわた』(83)シリーズなどでホラー映画ファンにはすっかりお馴染みのカルト俳優ブルース・キャンベル。そんな彼と惹かれあう女性ヴァンパイアのサンディ役には、こちらも数々のカルト映画に主演したアイドル女優デボラ・フォアマンが扮している。
 そして、マーデュラクと対立する宿敵ジェファーソン役には、西部劇『赤い河』(48)や『荒野の決闘』(46)などの早撃ちガンマン役で有名な名優ジョン・アイアランド。当時既に70代半ばを過ぎており、健康面に問題を抱えていたことから、クライマックスの一騎打ちシーンの撮影では体に負担がかからないよう工夫されたらしいが、そんなことを微塵も感じさせないのはやはりベテランの風格だ。
 その他、『ブラッド・シンプル』(84)の私立探偵役で有名な名優M・エメット・ウォルシュ、ロバート・アルトマン作品の常連としてお馴染みの老優バート・レムゼン、『ツイン・ピークス』のボビー役で知られるダナ・アシュブルック、テレビ『暗黒の戦士/ハイランダー』シリーズのアマンダ役で知られるエリザベス・グレイセンなど、『ワックス・ワーク』シリーズと同じく低予算映画にしてはかなり豪華なキャストが揃っている。

 

 

ヘルハザード/禁断の黙示録
The Resurrected (1992)

日本では1992年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2005 Lions Gate Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/ステレオ・サラウンド/音声:英語/字幕:なし
/地域コード:1/108分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:ダン・オバノン
製作:マーク・ボード
   ケン・ライチ
原作:H・P・ラヴクラフト
脚本:ブレント・V・フリードマン
撮影:アーヴ・グッドノフ
特殊効果:トッド・マスターズ
音楽:リチャード・バンド
出演:ジョン・テリー
   ジェーン・シベット
   クリス・サランドン
   ロバート・ロマヌス
   ローリー・ブリスコー
   ケン・カムルー
   パトリック・ポン

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探偵事務所を訪れる人妻クレア(J・シベット)

肉の大半をそぎ落とされた死体が発見される

クレアの夫チャールズと対面する探偵ジョン(J・テリー)

 アメリカ恐怖文学の大家H・P・ラヴクラフトの代表作「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を、『エイリアン』(79)や『スペースバンパイア』(85)の脚本家ダン・オバノンが映画化したフィルム・ノワール・タッチのゴシック・ホラー。
 舞台を現代に移しただけではなく、プロットや設定もかなり脚色されているものの、ラヴクラフト作品の世界観が忠実に再現されているのはホラー・ファンにとって嬉しいところ。世にも醜悪なクリーチャー・デザインも含め、低予算映画にしてはとても良く出来た佳作だ。
 短編小説をベースにしているのでストーリーはシンプル。私立探偵ジョン・マーチは、人妻クレアの依頼で彼女の夫チャールズ・デクスター・ウォードの身辺を洗う。チャールズは科学者で、数百年続く由緒正しい名門の出身だった。彼が姿を隠している川沿いの小屋を捜索したジョンは、やがてチャールズの祖先が残した日記を発見する。それは、不老不死に関する恐るべき実験の記録だった。果たしてチャールズは小屋の地下にある先祖代々受け継がれてきた実験室で何を行っているのか?
 上記の『サンダウン』と同じく、本作も日本では劇場公開されたものの、本国アメリカではビデオ・スルー扱いだった作品。極端な低予算によるセットや衣装の安っぽさは否めないものの、古い地下実験室の不気味なムードや人間を蘇生させた“失敗作”たちの異様なクリーチャー・デザインは文句なしに秀逸。ラヴクラフト作品の映画化は失敗に終ることが圧倒的に多い中で、本作は数少ない成功例として記憶にとどめておきたい1本である。

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チャールズ(C・サランドン)は別人のように衰えていた

クレアを人質に取るチャールズ

ジョンはトランクから古い日記を発見する


 私立探偵ジョン・マーチ(ジョン・テリー)の事務所に、クレア・ウォード(ジェーン・シベット)という美しい人妻が現れた。彼女は夫チャールズ・デクスター・ウォード(クリス・サランドン)の身辺を探って欲しいとジョンに依頼する。
 チャールズは有能な科学者だったが、ある時期から急に言動がおかしくなったという。自宅の離れに研究室を建て、四六時中そこへ引きこもるようになった。何の実験を行っているのかクレアには皆目見当がつかなかったが、研究室から洩れてくる恐ろしい叫び声や不気味な光に尋常ならざるものを感じた。
 やがて夫婦間のすれ違いとわだかまりは限界に達し、チャールズはアッシュ博士なる謎の人物を伴って家を出て行ってしまった。行き先はウォード家に代々伝わる田舎のあばら家。ジョンはその周辺を捜索することにする。
 近隣の住民によると、あばら家からは夜な夜な不気味な声が響き渡るという。さらに、地元の生肉業者から毎日大量の肉が持ち込まれ、付近には異臭が漂っているという。実際にあばら家を訪ねたジョンだったが、目の前に現れたチャールズは写真で見るのとは別人のようにやせ衰えていた。
 やがて、あばら家に出入りする生肉業者の男が死体で発見される。それは体の肉の大部分がそぎ落とされるという異様な状況だった。チャールズとの関連性を疑った警察はあばら家を強制捜査することになり、ジョンとクレアも現場に立ち会った。ところが、凶暴化したチャールズはクレアを人質に取って捜査を妨害。警察に取り押えられたチャールズは精神病院へ入れられる。
 チャールズは支離滅裂な言動を繰り返していた。一方、ジョンはチャールズが大切にしていたトランクの中から古い日記を発見する。そのトランクはウォード家に先祖代々伝わるもので、それを見つけてからチャールズの様子が徐々に変化したのだという。日記は1770年代に書かれたもので、持ち主はチャールズの先祖ジョセフ・カーウェンなる人物だった。
 その日記によると、カーウェンは何か恐ろしい実験のようなことを行っており、地元住民から錬金術師として恐れられていたようだ。近隣の川では人体の一部や異様な姿をした“人間らしきもの”が発見され、暴徒と化した住民はカーウェンの自宅を焼き払った。それが、現在のウォード家のあばら家なのだ。しかも、カーウェンの肖像画はチャールズと瓜二つだった。
 ジョンは部下のロニー(ロバート・ロマヌス)とクレアを伴い、あばら家の地下を捜索することにする。そこには、さらに地下へと続くマンホールがあった。警察もこれには気付かなかったようだ。マンホールを降りていった3人は、そこに不気味な研究室を発見する。
 研究室には見たこともない薬品が並び、さらに名だたる魔術師などの遺灰を納めた瓶が棚に収納されていた。その奥へと進んだ彼らは、床のそこかしこに大きな穴が幾つも掘られていることに気付く。ランプで穴の中を照らすと、そこには人間の一部らしき姿をした異様なクリーチャーたちがウヨウヨしていた。
 さらに、闇の奥から現れた別のクリーチャーが3人に襲いかかる。必死の抵抗を試みる彼らだったが、ロニーが穴の中に引きずり込まれて食い殺されてしまった。命からがら逃げ出したジョンとクレアは、地下室に仕掛けた爆薬であばら家を始末する。
 かくして、恐るべき秘密を知ってしまったジョンは、精神病院に隔離されたチャールズのもとを訪れる。そもそも、果たして彼は本当にチャールズなのか?それとも、この世に甦ったカーウェンなのか?やがて、チャールズの口から驚愕の真実が語られる・・・。

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チャールズの先祖ジョセフ・カーウェン(C・サランドン)

ジョセフは錬金術師として恐れられていた

周辺で発見された“人間らしき”クリーチャー

 ラヴクラフトの原作では、チャールズ・デクスター・ウォードは若き医学生という設定。その人格的な豹変に疑問を抱いたウォード家の主治医ウィレットが、恐るべき謎の核心に迫っていく。なので、ジョン・マーチとクレア・ウォードというキャラクターは、本作の完全なオリジナル。また、原作ではチャールズと同じような実験を行う仲間たちがおり、不老不死の力を悪用して世界征服を目論むというスケールの大きな物語になっている。
 脚本を手掛けたブレント・V・フリードマンは、『ネクロノミカン』(93)でもラヴクラフトの世界に挑んだ脚本家。もともと、監督のオバノンとフリードマンは別々に「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」の映画化を企画していたらしい。それを知った二人は、一緒に組めば予算もより多く確保できると考えたわけだ。
 なので、基本的に脚本はフリードマンが書いたものをベースにしているが、オバノンが準備していた脚本の要素も一部で反映されているという。原作の基本プロットだけを抽出し、予算の範囲内に収まるよう考えながら脚色されていると思われるわけだが、それが逆に閉塞感のあるリアリズムを生み出すことに成功している。無理に話を広げすぎなかったのは大正解だ。
 また、ラヴクラフト作品特有のアメリカン・ゴシック的な世界観や、神秘主義に根ざした超自然的恐怖というものをしっかりと踏襲しており、原作のファンも納得できるような作品に仕上がっている。その点は、原作がラヴクラフト作品の中でも特に“分かりやすい”作品であることも手伝っているのだろう。
 撮影を担当したのは、いじめられっ子ホラー(?)の怪作『デビルスピーク』(81)を手掛けたアーヴ・グッドノフ。見せるべきところと見せないところのバランスを絶妙に保ち、趣きのあるゴシック・ムードを盛り上げることに成功している。
 そして、特殊効果チームの監修を務めたのは、クリーチャー・ホラーの佳作『スリザー』(06)や『インベージョン』(07)などを手掛けているトッド・マスターズ。メカニカル操作によるクリーチャー・エフェクトは、昨今のCGなんぞよりもずっとリアルで生々しい。
 また、エンパイア・ピクチャーズやフル・ムーン・ピクチャーズの作品でもお馴染みの作曲家リチャード・バンドによる、スリリングで迫力のある音楽スコアも非常に効果的だ。
 ちなみに、同じ原作は過去にロジャー・コーマンが『怪談呪いの霊魂』(63)として映画化している。が、こちらは先祖の霊に乗り移られていく貴族を描いた怪奇譚で、ラヴクラフトというよりもエドガー・アラン・ポーの世界に近いような作品だった。実際にポーの詩も引用されており、そのために当時はポー原作の映画化として宣伝されている。

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あばら家の地下に無数の洞穴が

異形のクリーチャーがジョンたちに襲いかかる

チャールズの語り始めた真実とは・・・?

 主人公の私立探偵ジョン・マーチ役を演じているのは、『007/リビング・デイライツ』(87)のCIAスパイ、フェリックス・ライター役で注目された俳優ジョン・テリー。最近では人気ドラマ『LOST』の主人公ジャックの父親役として御馴染みかもしれない。
 そのジョンに仕事を依頼する人妻クレア・ウォード役を演じているジェーン・シベットは、こちらも大ヒットした人気ドラマ『フレンズ』の青年医師ロスの前妻でレズビアンの女性キャロル役を演じたことで知られる女優。
 ただ、ジョン・テリーもジェーン・シベットも映画の主役としてはいまひとつ存在感やカリスマ性に欠けるタイプの役者。この2人のキャスティングが、実は本作最大の弱点と言えるかもしれない。
 一方、その弱点を十分すぎるくらいに補ってくれているのが、チャールズ・デクスター・ワードとジョセフ・カーウェンの一人二役を演じている名優クリス・サランドン。この人のダークで粘着質な存在感は本作の重要な要と言ってもいいだろう。オスカーの助演男優賞候補になった『狼たちの午後』(75)のオカマ役に始まり、『リップスティック』(76)のレイプ魔や『フライトナイト』(85)のゲイのバンパイアなど、屈折したキャラクターを演じさせたら天下一品。本作でも尋常ならざる雰囲気を存分に醸し出し、ほぼ独壇場とも言える怪演を披露してくれている。

 

 

ヘモグロビン
Bleeders (1997)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)1998 A-Pix/Simitar (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/ステレオ・5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/92分/製作:カナダ・アメリカ

映像特典
バイオグラフィー集
トリビア集
監督:ピーター・スヴァテック
製作:ピーター・クルーネンバーグ
   ジュリー・アラン
脚本:ダン・オバノン
   チャールズ・アデイア
   ロン・シャセット
撮影:バリー・グレイヴェル
特殊効果:エイドリアン・モロット
音楽:アラン・リーヴス
出演:ルトガー・ハウアー
   ロイ・デュプイ
   クリスティン・リーマン
   ジャッキー・バローズ
   ジャニーヌ・セリオール
   レニ・パーカー
   リサ・ブロンウィン・ムーア

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虚弱体質の青年ジョン(R・デュプイ)と妻(K・リーマン)

島では墓地の移動作業が行われていた

いずれの墓も棺の底が破壊されている

 で、こちらはそのダン・オバノンが脚本を手掛けた作品。風光明媚なニューイングランドの孤島を舞台に、近親相姦を繰り返した貴族の末裔が奇形化して地底人間となり、住民を次々と餌食にしていくというラヴクラフト風のゴシック・ホラーだ。
 厳密にはラヴクラフト作品の映画化ではないし、映画のクレジットにもラヴクラフトの名前はない。しかし、消息を絶った名門一族の末裔が異形のクリーチャーとなって地下深くで生き延びていたという設定は、明らかに彼の『潜み棲む恐怖(The Lurking Fear)』をヒントにしていることは間違いないだろう。
 作品の前半はラヴクラフト的ゴシック・ムードを上手く再現しており、少なからず冗長な印象は否めないものの、ホラー・ファンの期待を高めるに十分な面白さだ。伝統的なニューイングランド地方(実際の撮影はカナダだが)の美しい風景と、そこに潜むインモラルで退廃的な世界の対比も巧い。
 それだけに、肝心のクリーチャーが登場してからの非常にユルい展開は残念だった。だいたい、地底人間のチープなクリーチャー・デザインにはガックリ。ここでいきなり大きな肩透かしを食らう。怪物がちっとも怖くないわけだから、灯台に追いつめられた人々のサバイバルを描いたクライマックスも緊張感ゼロ。何とも消化不良な結末を迎えることとなる。
 とまあ、ちょっと残念な出来栄えの作品ではあるものの、ラヴクラフト・ファンならばそれなりに楽しめたりするはず。これでもうちょっと特殊メイクの出来が良ければ、なかなかの佳作になったのではないかと思う。

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島の開業医マーロウ(R・ハウアー)

子供たちが次々と地中に引きずり込まれる

怪物の死体を検証するマーロウ医師

 虚弱体質の青年ジョン・ストラウス(ロイ・デュプイ)は妻キャスリーン(クリスティン・リーマン)を伴い、ニューイングランドの孤島を訪れた。光アレルギーと原因不明の敗血症に苦しむ彼は、自分がこの島の出身であるということを知り、病気の原因を究明する鍵があるのではないかと考えたのである。
 島に着くやいなや発作に襲われたジョンは、地元の医師マーロウ(ルトガー・ハウアー)の治療を受ける。ジョンの血液のサンプルを採取したマーロウは、彼の赤血球に見られる異常が、かつて島に住んでいたヴァン・ダーム一族のものと同じであることに気付いた。
 一方、島では土地開発のために墓地の移動が行われていた。墓を掘り起こしていた地元の人々は、埋められていた棺の底が片っ端から壊され、死体が跡形もなく消えてしまっていることに気付く。夜中に墓地を訪れた葬儀屋の娘アリス(ジャニーヌ・セリオール)は、何者かによって地中へ引きずりこまれてしまった。
 自分がヴァン・ダーム一族の者であることを知ったジョンは、島を見下ろす崖の上に建つヴァン・ダーム家の屋敷を訪れる。屋敷は75年前に火災に見舞われ、ヴァン・ダーム家の人々は焼死してしまったはずだった。今はかつて使用人だった老女レクシー(ジャッキー・バローズ)が一人で屋敷を管理している。
 最初は硬く口を閉すレクシーだったが、ジョンの熱意に根負けして真実を語り始めた。もともとヴァン・ダーム家はオランダの貴族だったが、近親相姦や快楽主義などの悪評から祖国を追われ、新大陸アメリカへと流れ着いた一族だった。
 ニューイングランドに腰を落ち着けてからも地元住民とは交流を持たず、長いこと近親相姦を繰り返してきたことから、ヴァン・ダーム家の人々には血液の異常が見られるようになった。やがて姿形まで変化していったという。しかし、75年前に起きた火災で一族は滅び、唯一生き残った赤ん坊だけが島の外へと引き取られていった。それがジョンの親だったのだ。
 その頃、村では地中から姿を現した怪物が住民を追い回した末に、海へ飛び込んでボートのスクリューに巻き込まれてしまった。その死体を検証したマーロウ医師は、怪物の血液がヴァン・ダーム一族のものと同じであることを発見する。
 さらに、墓地で遊んでいた子供たちが次々と地中に引き込まれて姿を消してしまった。住民の訴えで地中へと潜ったマーロウ医師は、地下深くに張り巡らされた通路や住居、そして人間を食べる異形のモンスターたちの姿を発見する。
 ヴァン・ダーム家の人々は滅んだわけではなかったのだ。光への極端なアレルギーから地中へと姿をくらました彼らは、墓地に埋葬された死体を食料として生き延び、一族内で繁殖を繰り返しながら奇形化していった。ところが、墓地の移動で食料がなくなったことから、生きている人間を狙うようになったのだ。
 やがて島に嵐が近づき、人々は灯台へと避難する。ところが落雷で島全体が停電してしまい、食料を求める怪物たちが灯台へと集まってきた・・・。

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崖の上に建つヴァ・ダーム一族の屋敷

ジョンはヴァ・ダーム家の出身だった

屋敷を管理する老女レクシー(J・バローズ)

 ラヴクラフトの『潜み棲む恐怖』は、廃墟となった古い屋敷を調査する研究者が、地底深くで人喰いモンスターと化してしまった名門一族の末裔を発見するという短編恐怖譚。そのアイディアをここまで大きく膨らませた脚本は十分に努力賞モノだと思う。
 ただ、あまりにも予算が少なすぎたせいか、特殊メイクやセット、SFXなどに全くお金がかかっておらず、なんともチープな印象は否めない。中でも着ぐるみ丸出しの地底人間は滑稽そのもの。また、ピーター・スヴァテク監督のダラダラとした演出やリズム感に乏しい編集にも問題大アリだ。
 オバノンと共に脚本を手掛けたのは、チャールズ・アデイアとロン・シャセット。アデイアは素性も詳細も不明だが、シャセットは『エイリアン』(79)や『ゾンゲリア』(81)などでオバノンとコンビを組んできた脚本家兼プロデューサーだ。
 監督のピーター・スヴァテクはカナダを基盤に活躍する人で、主にテレビ・ムービーを手掛けているようだ。また、製作のピーター・クルーネンバーグもカナダの出身で、ジュスト・ジャカンの『ガールズ』(79)やトニー・リチャードソンの『ホテル・ニューハンプシャー』(84)なども彼の手掛けた作品。
 その他、『スピーシーズ2』(98)や『300』(06)、『スパイダーウィックの謎』(08)などの特殊メイクを担当したエイドリアン・モロットが特殊効果とクリーチャー・デザインを、カナダのアカデミー賞であるジェニー賞を獲得しているミシェル・プルールが美術デザインを手掛けている。

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ジョンは一族の忌まわしい過去を知る

地下にうごめく妖怪はヴァン・ダーム家の末裔だった

マーロウ医師が地底で目にしたものとは・・・!?

 主人公である島の開業医マーロウ役を演じているのは、『ブレードランナー』(82)や『ヒッチャー』(85)などでも御馴染みの人気スター、ルトガー・ハウアー。この頃から劇場未公開の低予算映画やテレビ・ムービーへの出演が増えたのではないかと思うのだが、確かにちょっと太りすぎて精彩を欠いている印象は否めない。中盤まではこれといった見せ場もなく、ジョン役のロイ・デュプレとどっちが主役なんだか分からない感じだ。
 そのロイ・デュプレはカナダの俳優で、テレビの人気アクション・ドラマ『ニキータ』でヒロインの上司マイケル役を演じていた人。ここでは虚弱体質の退廃的な美形青年という役柄なのだが、中途半端にハンサムなせいかとても不自然な印象を受ける。だいたい、白塗りメイクが全然似合っていない(笑)
 ジョンの妻キャスリーン役のクリスティン・リーマンもカナダ出身で、『ポルターガイスト/ザ・レガシー』や『フェリシティの青春』などテレビ・ドラマで活躍している女優。最近では『プリズン・ブレイク』でマイケルの父親アルドの右腕である女性ジェーン役を演じていた。
 また、屋敷の管理人をしている老女レクシー役には、カナダのベテラン名女優ジャッキー・バローズが登場。日本でも『赤毛のアン』(85)のエヴァンズ夫人役や、テレビ『アボンリーへの道』の頑固だが心優しい叔母へティ役として御馴染みだろう。
 その他、テレビ『グルメ探偵 ネロ・ウルフ』のジャニーヌ・セリオールが葬儀屋の娘アリスを、日本未公開のSFドラマ“Earth : Final Conflict”の宇宙人ダーン役で有名なレニ・パーカーが変わり者の住人ローラを演じている。

 

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