80年代カルト・ホラー セレクション
〜PART 2〜

 

ハウリング
The Howling (1981)

日本では81年劇場公開
VHS・DVD共に発売済
※日本盤DVDと米国盤DVDは別仕様・特典内容も別

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(P)2003 MGM (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★★
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド/音声
:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/91分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
削除シーン集
NGシーン集
舞台裏ドキュメンタリー
監督・俳優による音声解説
フォト・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
監督:ジョー・ダンテ
製作:マイケル・フィンネル
   ジャック・コンラッド
原作:ゲイリー・ブランドナー
脚本:ジョン・セイルズ
   テレンス・H・ウィンクルス
撮影:ジョン・ホラ
特殊メイク:ロブ・ボッティン
音楽:ピノ・ドナッジョ
出演:ディー・ウォーレス
   パトリック・マクニー
   デニス・デュガン
   クリストファー・ストーン
   ケヴィン・マッカーシー
   べリンダ・バラスキ
   ジョン・キャラダイン
   スリム・ピケンズ
   エリザベス・ブルックス
   ロバート・ピッカード
   ノーブル・ウィリンガム
   ケネス・トビー
   ディック・ミラー

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殺人鬼に呼び出された女性キャスター、カレン(D・ウォーレス)

取材を続けるクリス(D・デュガン)とテリー(B・バラスキ)

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事件の後遺症に悩むカレンを支える夫ビル(C・ストーン)

セラピストのワグナー博士(P・マクニー)は療養を勧める

 80年代初頭のホラー映画界には、ちょっとした“狼人間”ブームが起きた。その契機となったのが、ジョン・ランディス監督の『狼男アメリカン』(81)と、この『ハウリング』である。当時、これらの作品が世間で大いに受けた理由は、ひとえに特殊メイク技術の進歩にあったと言えるかもしれない。
 それまでの映画における狼人間の変身シーンというのは、段階を追って別撮りしたカットをオーバーラップで重ねたり、編集で織り込んだりするというのが一般的な見せ方だった。しかし、ディック・スミスやリック・ベイカーといった特殊メイク・アーティストの研究・努力により、70年代以降は特殊メイクの技術が格段に向上した。そして、80年代に入るとその恩恵を受けた映画が次々と登場することになるのだ。
 本作の特殊メイクも当初はリック・ベイカーが担当する予定だった。しかし、親友ジョン・ランディスが同時期に『狼男アメリカン』を撮ることを知り、『ハウリング』の方を弟子のロブ・ボッティンに任せることにしたのである。
 ボッティンはラテックス素材やダミーヘッドを駆使し、人間が狼に変身していく様子を細部まで丁寧に再現した。中でも、後半に登場する変身シーンでは人間の顔が伸びて狼の顔に変化していく様子をワン・カットで見せ、当時の観客の度肝を抜いたのである。本作の試写を見たリック・ベイカーとジョン・ランディスはその出来栄えに驚き、すぐさま『狼男アメリカン』の撮り直しを行ったと言われる。
 しかし、本作がカルト映画として今なお愛されているのは、そうした特殊メイクの面白さばかりが理由ではない。ジョー・ダンテ監督の古典的ホラー映画に対する溢れんばかりの愛情、脚本家ジョン・セイルズによる風刺とユーモアの効いた巧みなストーリー、撮影監督ジョン・ホラによるアメコミ風のスタイリッシュな映像。先人たちの功績に敬意を払い、しっかりと伝統を継承しつつ、全く新しいスタイルの狼人間映画を作り上げている。その温故知新の独創性こそが、『ハウリング』という映画の真の面白さなのだろう。
 ちょうどこの時期には、ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグが『レイダース/失われた聖櫃(アーク)』(81)で往年の冒険映画や連続活劇へのオマージュを捧げている。40〜50年代のB級映画を見て育った世代が台頭するようになったのが70年代だとすれば、映画界で確固たる地位を築いた彼らが先人たちへ恩返しをするようになったのが80年代と言えるかもしれない。ホラー映画の世界でも、こうした古典へのオマージュというのは80年代の重要な潮流の1つとなっていくわけだが、その先陣を切った作品が『ハウリング』だったと言えるかもしれない。

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コロニーの夜は不気味な静けさだった

森の中に響く狼の遠吠えを恐れるカレン

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夫ビルが巨大な狼に襲われて怪我を負ってしまう

見る見るうちに狼人間へ変貌していくビル

 テレビの女性キャスター、カレン・ホワイト(ディー・ウォーレス)は、世間を騒がせている連続殺人鬼エディ・クィスト(ロバート・ピッカード)から連絡を受ける。彼女はエディの呼び出しに応じるふりをし、警察のおとり捜査に協力することとなった。エディの指示に従い、目印となるスマイル・マークのシールを辿っていったカレンは、場末のポルノ・ショップへとやって来る。
 店の奥にあるビデオ・ボックスへと入った彼女は、背後にエディの存在を感じた。振り返ろうとした彼女に襲いかかるエディ。その悲鳴を聞きつけた警官がエディを射殺し、カレンは間一髪のところで救出された。
 しかし、その後もカレンは事件のショックから記憶喪失に陥り、情緒不安定で仕事への復帰もままならない。セラピストであるジョージ・ワグナー博士(パトリック・マクニー)のもとへ通うようになった彼女は、博士から“コロニー”と呼ばれる療養所へ行くことを勧められた。
 かくして、夫ビル・ニール(クリストファー・ストーン)と共に“コロニー”で静養することになったカレン。そこは森の奥深くにある小さな別荘地帯で、かなり風変わりな人々が集まってきていた。それでも田舎の大自然に触れ、久々に思い切り羽根を伸ばすカレン。だがそれもつかの間、彼女は真夜中の森を徘徊する怪しい影に怯え、悪夢で眠れぬ夜を過ごすようになる。
 一方、カレンの同僚であるテリー・フィシャー(ベリンダ・バラスキ)と恋人クリス(デニス・デュガン)の2人は、殺人鬼エディについての特番取材を進める中で、彼の自宅に残された異様なスケッチの数々を発見する。それは毛むくじゃらの人間の姿と、謎めいた風景画だった。さらに、警察のラボからエディの死体が消えてしまう。不審に思ったテリーとクリスは、背後にカルト宗教か何かの存在があるのではと疑いはじめる。
 その頃、コロニーでは妖艶で怪しげな美女マーシャ(エリザベス・ブルックス)がビルに接近する。彼女の誘惑を断ったビルだったが、その直後に森で巨大な狼に襲われて怪我を負う。それ以来、ビルの様子が徐々におかしくなっていく。真夜中に森の中で肉体を貪りあうビルとマーシャ。次第に彼らは狼人間へと変身し、その遠吠えが周辺に響き渡る。心細くなったカレンはテリーを“コロニー”へと呼んだ。
 コロニーへやって来たテリーは、散歩中にエディの風景画に描かれた場所を発見した。周辺を捜索すると、一見のあばら家を見つける。そこには、エディの部屋で見たのと同じようなスケッチが散乱していた。すると、いきなり彼女は巨大なモンスターに襲われる。
 命からがら逃げ出したテリーは、ワグナー博士のクリニックへとたどり着いた。すぐさま彼女は電話でクリスに事情を伝えるが、その最中に狼人間に襲われて殺されてしまう。その直後にクリニックへやって来たカレンは、テリーの死体を発見して戦慄する。そんな彼女の前に現れたエディ。混乱するカレンの目の前で、エディは見る見るうちに狼人間へと変身する。
 クリニックを脱出したカレンは車で逃げようとするが、保安官サム・ニューフィールド(スリム・ピケンズ)らに捕らえられてしまう。実は、コロニーは狼人間の集落で、エディやワグナー博士もその一員だったのだ。カレンに迫る絶体絶命の危機。その頃、テリーの電話を受けたクリスは狼人間の存在を確信し、ライフルと銀の銃弾を手にコロニーへと向っていた…。

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電話でクリスに狼人間の存在を知らせるテリー

突如として現れた狼人間がテリーを襲う

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カレンの前に現れたのは死んだはずの連続殺人鬼エディだった

徐々に狼へと変身していくエディ

 満月でなくとも自由に変身できる狼人間というアイディアは面白かったし、皮肉の効いたクライマックスにも思わずニンマリさせられる。ホラー・ファンのツボを心得たダンテ監督の演出もサービス精神旺盛で賑やかだ。
 原作はゲイリー・ブランドナーの書いたホラー小説。もともとテレンス・H・ウィンクルスが原作にほぼ忠実な脚本を書き上げたが映画的な面白みに欠け、ダンテ監督と『ピラニア』(78)で組んだ脚本家ジョン・セイルズが一から書き直した。その結果、土台となるプロット以外は原作と全く違う作品に仕上がっている。
 『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』(84)や『メイトワン』(87)、『フィオナの海』(94)などアート系インディーズ映画監督として有名なセイルズだが、もともとはロジャー・コーマン一派の出身で、B級娯楽映画の世界にも造詣の深い人物。スピルバーグの『E.T.』(82)の元ネタとなった脚本を書いたのも彼だ。
 監督のジョー・ダンテ自身もロジャー・コーマン門下生の1人で、本作ではそのコーマン自身がワン・シーンだけカメオ出演している。また、コーマン映画の常連俳優だったディック・ミラーが本屋の店員役で顔を出したり、その本屋のお客役でモンスター映画の伝道師フォレスト・J・アッカーマンが登場したり、50年代のB級映画スター、ケネス・トビーが冒頭で初老の警官役を演じていたりと、B級映画マニアには嬉しいサプライズがいっぱいだ。
 また、登場人物たちの役名にもマニアックな遊びが凝らされている。カレンの親友テリー・フィシャーはハマー・ホラーの名監督テレンス・フィシャーのもじりだし、ジョージ・ワグナー博士はユニバーサル・ホラー『狼男の殺人』(41)の監督と同じ名前。それ以外にも、フレディ・フランシスやサム・ニューフィールド、アール・ケントンなど、狼男映画を撮ったことのある監督の名前が登場人物たちに付けられているのだ。
 さらに、ディック・ミラーの働いている本屋というのも、ハリウッド大通りに実在する本屋ラリー・エドモンズを使ってロケ撮影されている。ここは映画ファンなら知らない人はいないくらい有名な映画関連書籍の専門店で、中でもB級映画やホラー映画に関する専門書の品揃えはピカイチ。僕自身も渡米するたびに立ち寄っている店だ。こうした細かいディテールへの気配りや遊び心というのも、映画フリークたるダンテ監督の面目躍如たるところだろう。
 撮影監督のジョン・ホラはダンテ監督作品には欠かせないカメラマンで、本作をきっかけに『グレムリン』(84)や『エクスプローラーズ』(85)、『マチネー 土曜の午後はキッスで始まる』(93)などの作品を手掛けている。随所に原色を生かしたアメコミ風の映像は彼の真骨頂だ。また、音楽にはブライアン・デ・パルマ監督とのコンビで知られるイタリアの作曲家ピノ・ドナッジョが参加し、程好い叙情性をたたえた重厚なスコアを聴かせてくれる。
 ちなみに、本作は興行成においても大成功を収め、ジャンル系映画に贈られるサターン賞の最優秀ホラー映画賞を受賞。しかし、原作者のブランドナー自身は大幅なストーリー変更に憤慨し、フィリップ・モラ監督による続編『ハウリングU』(85)では自ら脚本を手掛けた。
 なお、シリーズは合計で7作品が作られているが、制作会社の変わった3作目以降は一切のストーリー的な繋がりはない。いずれの続編もダンテ監督の1作目には遠く及ばない出来栄えだが、推理サスペンス仕立ての5作目『ハウリングX/最後の復活』(89)はなかなか悪くなかった。

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公開当時話題を呼んだ顔面変身シーン

コロニーの人々は全て狼人間だった・・・!

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カレンの嫌味な上司役を演じるケヴィン・マッカーシー

本屋の店長役で顔を出すカルト俳優ディック・ミラー

 主人公カレン役のディー・ウォーレスは、本作の直後に出演したスピルバーグ監督作『E.T.』の母親役で知られる女優。その親しみやすい庶民的なキャラクターが逆にホラーの世界で説得力を増すためか、『サランドラ』(77)や『クジョー』(83)、『クリッター』(86)、『ポップコーン』(91)、『ハロウィン』(07)などホラー映画への出演がとても多い。
 その夫ビル役を演じているのは、実生活でも本作の共演をきっかけにディー・ウォーレスと結婚した俳優クリストファー・ストーン。彼もどちらかというと平凡で目立たないタイプの役者だ。ちなみに、2人は『クジョー』でも夫婦役を演じている。
 2人をコロニーへと誘うジョージ・ワグナー博士役には、60年代に大ヒットしたイギリスのテレビ・ドラマ『おしゃれ(秘)探偵』でサブカル・アイコンとなった俳優パトリック・マクニー。カレンの上司フレッド・フランシス役には、SFホラーの金字塔『ボディ・スナッチャー/盗まれた街』(56)のケヴィン・マッカーシー。コロニーの奇妙な老人アール・ケントン役には、B級ホラーへの出演も多かった『駅馬車』(39)の名優ジョン・キャラダイン。保安官サム・ニューフィールド役にはペキンパー映画の常連として有名な名優スリム・ピケンズ。といった具合に、映画マニアには嬉しい大ベテランがガッチリと脇を固めている。
 その他、ディズニー映画“The Spaceman and King Arthur”(79)や『長くつ下のピッピ』(87)など子供向け映画で知られるデニス・デュガンがクリス役を、ジョー・ダンテ作品の常連女優ベリンダ・バラスキがテリー役を、同じくダンテ作品の常連で『スター・トレック:ヴォイジャー』のドクター役で有名なロバート・ピッカードがエディ役を演じている。また、マーシャ役のエリザベス・ブルックスは本作で有名になり、何本かB級映画の悪女役を演じたが、97年にガンのため亡くなっている。

 

ボーディングハウス
Boardinghouse (1982)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2008 Code Red (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★☆☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
ALL/98分/製作:アメリカ

映像特典
監督と主演女優の特別インタビュー
監督と主演女優による音声解説
オリジナル予告編
監督:ジョン・ウィンターゲイト
製作:ピーター・アール
脚本:ジョン・ウィンターゲイト
撮影:ヤン・ルーカス
   オビー・レイ
音楽:カラッスー
   331/3
   ジョネマ
出演:ハンク・アドリー
   カラッスー
   アレクサンドラ・デイ
   ジョエル・リオルダン
   ブライアン・ブルダーリン
   トレイシー・オブライアン

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豪邸を改装した下宿屋に集まってきたセクシー美女たち

主人公ジム(H・アドリー)はテレキネシスの持ち主

下宿人のリーダー的存在ヴィクトリア(カラッスー)

 80年代のスラッシャー映画ブームの最中に登場した超低予算ホラーで、ビデオ撮り映画の先駆けともなった作品。脚本も演出も役者も全てが最低最悪レベルのゴミ映画だが、あまりにも出来が酷すぎるがゆえに、一部に熱狂的ファンを生んでしまったというカルト映画だ。
 内容は『キャリー』と『悪魔の棲む家』を足して『13日の金曜日』で割ったような感じ。なんていったら結構面白そうに思えてしまうかもしれないが、残念ながらさにあらず。素人が暇つぶしに友達を集めてビデオカメラを回してみました、
みたいなノリで作られており、とにかくチープなことこの上ない。
 しかも、ダラダラしたストーリー展開に意味不明の演出、ろくにセリフも喋れない出演者たち。安い機材を使っているためか、ところどころで役者の声が周囲の環境音に邪魔されて聞き取れなかったりする。恐らくライティング機材もほとんど使っていないのだろう。暗闇のシーンでは何が起っているのか判別がつかないため、見せ場の残酷描写になるといきなり部屋の明かりが点くんだから(笑)
 また、“ホラーヴィジョン”なる安手のギミックも噴飯もの。これは残酷シーンの直前になると、黒いグローブをはめた手が画面に現れるというもの。グーからパーへ開くと危険信号、心臓の弱い方は注意して下さいという合図なのだそうだ。それじゃホラー映画の意味がないじゃん!と突っ込みたくなるところだが、初期の安っぽいコンピューター・グラフィック処理も含め、ある意味でZ級映画特有の切なさが漂う珍シーンと言えるかもしれない。
 監督のジョン・ウィンターゲイトは役者出身らしいが、詳しいプロフィールなどは不明。ハンク・アドリーの変名で主役も演じており、やたらとビキニ・パンツ一枚で出てくるシーンが多いところから察すると、かなりのナルシストなのかもしれない。しかし、これがまた主役に相応しいとは思えないキョーレツな妖怪顔で、ただでさえ怪しげで安っぽい映画に、より一層のゲテモノ感を与えている。
 ちなみに、監督の弁によると、ファンの熱い要望(?)に応えて続編の製作も計画しているという。つくづく、アメリカというのは広い国なんだな〜と実感させられる次第だ(笑)

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セクシー美女に忍び寄る怪しい影…!?

美女がいきなりブタ女に変身!?

次々と起こる怪事件に住人たちは…!?

 ロサンゼルスのとある豪邸。ここは呪われた屋敷と噂されており、かつてノーベル賞を獲った科学者ホフマンの一家が住んでいたが、幼い娘1人を残して惨殺されてしまった。その娘も事件のショックで精神に異常をきたしてしまい、長いこと入院生活を送っているという。
 そんな曰くつきの豪邸を、ひとりの裕福なビジネスマンが購入した。彼の名はジム・ロイス(ハンク・アドリー)。名うてのプレイボーイでテレキネシスの持ち主である彼は、買い取った豪邸を下宿屋にして、若い女の子たちに貸すことにした。
 やがて、ヴィクトリア(カラッスー)やデビー(アレクサンドラ・ハリス)をはじめとするセクシーな女学生たちが住人として集まった。彼女たちは毎日のようにビキニ姿でプール遊びに興じ、パーティを開いたりパイ投げをしたりして過ごす。ジムも仕事そっちのけで、彼女たちと戯れたり、体を鍛えたりすることに忙しい。
 そのうち、女学生たちは奇妙な幻覚を見たり、不思議な力が働いたせいで怪我をしたりするようになり、さらには1人また1人と不可解な死を遂げていく。しかし、残った女学生たちは遊びやセックスに夢中で、仲間がいなくなっていることになど全く気付く様子もない。
 そんなある日、ヴィクトリアの発案で派手なガーデン・パーティが開かれることになった。次々と無残な死を遂げる出席者たち。ここへきてようやく、ジムとヴィクトリアは何者かが屋敷内で人殺しをしていることに気付く。果たして、殺人鬼の正体とは…?

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グローブをはめた手がパーになったら危険信号

ベッドの下から飛び出した手がヴィクトリアを襲う!

窓の外で怪しく光る眼

 まあ、殺人鬼が自ら名乗り出るので、大したスリルもサスペンスもないのだけれど(笑)で、実はジムだけでなくヴィクトリアもテレキネシス能力の持ち主で、しかも犯人までもが超能力者だったことが判明し、最後は実にショボいテレキネシス合戦が繰り広げられる。合戦とはいったって、お互いにただ念じているだけ。これってもしかしたら『スキャナーズ』(81)のパクリ!?と一瞬考えたりもするが、恐らく思い過ごしに違いない(笑)
 一応、残酷シーンだけはいろいろと趣向が凝らされていて、内臓を引きずり出したり、体中から血をダラダラ流したりとバラエティに富んでいる。中でも、一番印象的なのは目玉が飛び出してマッシュポテトの中にポロッと落ちるシーン。ただし、特殊メイクの技術的には小学生レベルなので、ちっとも怖くはないのだが。
 また、シャワーを浴びていた女の子が幻覚を見て、いきなりブタ女に変身してしまうシーンは笑えた。なぜブタ女なんだ!?という素朴な疑問は残るが(笑)、こういうシュールなバカバカしさは嫌いではない。
 ヴィクトリアのベッドから手が飛び出すシーンなんかも、SFXを一切使わない大胆さにちょっとだけ感動した。なんてったって、シーツの下から懐中電灯を照らしながら手を出すだけなんだから!ある意味で『エルム街の悪夢』を先駆けたようなシーンなわけだが、そんなこと言ったらウェス・クレイヴンに怒られるか(笑)
 監督のウィンターゲイトは主演のみならず、脚本や特殊メイクも手掛けている。その他のスタッフには彼の友人が集められたらしく、いずれも映画製作経験のない素人ばかりだ。

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美女の目玉が顔面からポロリと

犯人はデビー(A・デイ)だった…!?

現在のウィンターゲイト監督と主演女優カラッスー

 ヒロインのヴィクトリア役を演じているカラッスーは、ウィンターゲイト監督の奥さん。もともとインディペンデント系ロック・バンドのリード・ボーカリストだったらしく、本作では自らのバンド“33 1/3”を率いてパフォーマンスも披露している。
 そして、一番最後に屋敷の住人となるブロンド美女デビー役のアレクサンドラ・ハリスは、『プレイボーイ』や『ペントハウス』のグラビアを飾ったヌード・モデル。その他、基本的には演技経験のない素人ばかりがキャストとして名を連ねている。

 

屋根裏部屋の花たち
Flowers In The Attic (1987)

日本では1988年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2001 Anchor Bay (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/92分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ジェフリー・ブルーム
製作:サイ・レヴィン
   トーマス・フライズ
原作:V・C・アンドリュース
脚本:ジェフリー・ブルーム
撮影:ギル・ハブス
音楽:クリストファー・ヤング
出演:ヴィクトリア・テナント
   ルイーズ・フレッチャー
   クリスティ・スワンソン
   ジェブ・スチュアート・アダムス
   ベン・ライアン・ギャンガー
   リンゼイ・パーカー
   ネイサン・デイヴィス
   レオナード・マン

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最愛の父を交通事故で失った少女キャシー(K・スワンソン)

無一文となった家族は祖父母の家へとやって来る

 アメリカの有名なミステリー作家V・C・アンドリュースの書いたベストセラー小説を映画化した作品。冷酷な祖母によって幽閉されてしまった子供たちの残酷な運命を描いていく、ゴシック・ホラー・スタイルのサスペンス・ミステリーだ。
 父親を事故で亡くしたドランギャンガー家の子供たちは、母親に連れられて祖父母のもとへ身を寄せる。母親は由緒正しい大富豪の家庭に生まれたが、祖父母の反対を押し切って結婚したために実家を勘当されていた。そこで、母親は子供がいるということを隠し、祖父の寵愛を取り戻して勘当を解いてもらおうと考える。そのために、子供たちは屋根裏部屋での幽閉生活を余儀なくされるというわけだ。
 迷信深くて厳格な祖母による執拗な苛めと虐待、愛する母親となかなか会えないという心細さ。それでも、母親が祖父に認められれば自由になれると信じ、忍耐強く待ち続ける子供たち。だが、祖母の虐待はどんどんとエスカレートし、やがて母親の態度までおかしくなっていく。
 現在はカルト映画として一定の評価を得ている作品だが、劇場公開当時は原作ファンから総スカンを食らい、批評家にも散々な酷評をされてしまった。その主だった理由は、やはり原作の重要なテーマだった近親相姦の要素を思い切り薄めてしまい、結果的に母親を悪人に仕立ててしまった点にあると言えるだろう。
 ただ、それはあくまでも原作を読んでいるファンでなければ分からないことだし、そもそも映画と小説では表現の方法が根本的に違うのだから、それぞれのメディアに適したストーリー展開というものがあっていいはず。単に原作とストーリーが違うからという理由だけで映画版を否定するのは、必ずしもフェアなことではないだろう。
 『新・刑事コロンボ』シリーズの脚本家としても知られるジェフリー・ブルーム監督は、舞台となるゴシック様式の壮大な豪邸のロケーションを生かし、背筋の凍るような恐ろしい物語を詩情溢れる語り口で描いていく。さながら、残酷なおとぎ話といった風情だ。
 原作の主軸である近親相姦の要素を匂わせる程度に留め、弱肉強食の大人社会と純真無垢な子供たちとの対比に焦点を絞ったのは、商業的な意味合いや映画としての統一性を考えれば正しい選択だったと言えよう。そのおかげで、ある種の現代版グリム童話的な世界を作り出すことに成功していると思う。
 確かに一歩間違えると単なる勧善懲悪になりかねないクライマックスの復讐劇には、ハリウッド映画ならではのご都合主義が鼻につく。しかし、ここは安易なハッピーエンドに逃げなかったことだけでも高く評価したい。この首尾一貫した理不尽さと救いの無さ、陰鬱さこそが本作の真骨頂だ。

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母親の実家は由緒正しい大富豪だった

冷たい態度で出迎える祖母オリヴィア(L・フレッチャー)

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子供たちは幽閉生活を余儀なくされた

少しの間の我慢だからと約束する母コリン(V・テナント)

 ドランギャンガー一家はごくありふれた平凡な、しかしとても幸せで明るい家族だった。心優しい両親の愛情に恵まれ、4人の子供たちはなに不自由なく育っている。中でも長女キャシー(クリスティ・スワンソン)は父親に溺愛されていた。
 ところがある日突然、彼らの生活は一変してしまう。父親が交通事故で帰らぬ人となってしまったのだ。母親コリン(ヴィクトリア・テナント)は女手ひとつで子供たちを育てようとするが、手に職の無い彼女に仕事の当てはなく、たちまち一家は路頭に迷ってしまう。途方に暮れたコリンは子供達を連れて、17年間音信不通となっていた実家へ戻ることを決意した。
 コリンの実家は由緒正しい家系で、広大な土地と豪邸を持つ大富豪だった。祖母オリヴィア(ルイーズ・フレッチャー)が一家を出迎えるが、その眼差しと態度は冷酷そのものだ。子供たちは巨大な要塞のごとき豪邸に言葉を失い、祖母の威圧的な態度に不安感を抱く。
 実は17年前に家族の反対を押し切って結婚したコリンは、駆け落ちも同然で実家を飛び出していた。そのため、祖父マルコム(ネイサン・デイヴィス)は娘を勘当処分にしていたのだ。だが、無一文となった現在のコリンにとっては、実家の財産が唯一の頼みの綱である。そのためには父親の許しを請い、勘当処分を取り消してもらわねばならない。
 父親が病床に伏していることを知ったコリンは、子供たちの存在を隠すことにした。必要以上に父親を刺激してはいけないと心配したからだ。昔のように自分を愛してくれるようになれば、必然的に孫たちの存在も許してくれるに違いない。そう考えたコリンは、子供達をバス・トイレ付きの部屋にかくまい、ほんの少しの辛坊だからと部屋の外へ一歩も出ないよう懇願する。
 その日から、祖母オリヴィアが子供たちの世話をするようになった。しかし、厳格な祖母はなぜか孫たちのことを忌み嫌い、愛情のかけらも見せようとはしない。そればかりか、躾と称して理不尽極まりない態度で子供たちに臨む。キャシーと兄クリス(ジェブ・スチュアート・アダムス)の2人は、まだ幼い双子の弟コリー(ベン・ライアン・ギャンガー)と妹キャリー(リンゼイ・パーカー)を庇おうとするが、祖母は情け容赦なかった。
 年端も行かないコリーたちにまで体罰を加える祖母に怒りを爆発させたキャシーとクリス。そんな彼らに、祖母は信じがたいような事実を突きつける。父親クリストファーと母親コリンは、叔父と姪の間柄だったのだ。近親相姦によって生まれた汚らわしい子供たち。祖母は冷たくそう言い放った。
 さらに、祖母は実の娘である母親コリンにも、容赦ない体罰を加えていた。神の許しを得るのだと叫び、娘に激しくムチを浴びせるオリヴィア。その一方で、父親の寵愛を取り戻そうと、病床の傍らで下着姿になって懇願するコリン。この親子関係は不気味に歪んでいた。
 祖母の残酷な仕打ちと母親に会えない寂しさを耐え忍んでいた子供たちは、部屋の中に屋根裏へと続く階段を発見する。そこは広い倉庫になっており、一族代々受け継がれてきた家具やおもちゃが所狭しと眠っていた。やがて子供たちはその屋根裏部屋を遊び場として寂しさを紛らわすようになり、さすがの祖母も黙認する。
 だが、定期的に顔を見せていた母親も滅多にやって来なくなり、さらには祖母の運んでくる食事まで途絶えてしまった。誰も訪れなくなった部屋で衰弱していく子供たち。屋敷から脱走を試みたクリスだったが、あえなく失敗してしまった。
 その脱走事件を機に食事が復活し、久々に母親コリンが会いに来る。だが、キャシーとクリスは母親の刺々しい態度に困惑を隠せなかった。さらに、子供たちの体調も日増しに悪化し、中でも幼いコリーが寝たきりになってしまう。
 実は、子供たちのもとに届けられる食事のクッキーに砒素が混入されていたのだ。しかも、そのクッキーを用意していたのは、ほかならぬ母親コリンだった。やがて衰弱したコリーが昏睡状態に陥る。キャシーとクリスは、病院に運ばれるコリーを見ても全く動じる様子もない母親と祖母に強い不信感を抱く。しかし、そんな彼らですら、コリーの行き先が病院ではないことまでは想像していなかった。
 ある晩、こっそりと部屋を抜け出したキャシーとクリスは、華やかな舞踏会で男性と親しげに踊る母親コリンの姿を見て愕然とする。コリンは両親の勧める上流階級の紳士バート・ウィンスロー(レオナード・マン)と結婚するつもりだった。そのためには、子供の存在が邪魔だったのだ・・・。

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子供たちは屋根裏部屋の倉庫を発見する

屋根裏部屋でつかの間の楽しみを見つけた子供たち

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父親の形見であるバレリーナ人形をわざと落とす祖母

それはキャシーにとってなによりも残酷な仕打ちだった

 虚飾と偽善で塗り固められた世界に順応して行き、やがて己の富と幸せのために我が子を手にかける母親。幻想的で閉鎖的な世界の中で展開する物語なだけに、より一層のこと恐ろしく感じられるはずだ。
 母親による理不尽な子殺しは現実社会でも少なからず起きているわけだし、思い返せばグリム兄弟の『白雪姫』初版本で白雪姫を殺そうとするのも実の母親だった。いうなれば、子供たちは究極の弱肉強食を目の前に突きつけられるのである。大人になるための教訓としては、あまりにも残酷で悲惨な物語と言えよう。
 監督と脚本を手掛けたジェフリー・ブルームは、もともとプロのマジシャンだったというユニークな経歴の持ち主。70年代から主に脚本家として活躍していた。なお、本作は当初ウェス・クレイヴンが監督として起用され、クレイヴン自身がヒラリー・ヘンキンと共同で脚本も書き上げていたという。実際、撮影前に製作された映画ポスターにはクレイヴンやヘンキンの名前がクレジットされている。ただし、なぜクレイヴンが最終的に企画から外されたのかは不明だ。
 撮影を担当したのは、『燃えよドラゴン』(73)のギルバート・ハブスことハル・ギブス。主にテレビで活躍したカメラマンで、人気ドラマ『TVキャスター マーフィ・ブラウン』の撮影を長年手掛けていた人物だ。また、美術デザインには『ホーム・アローン』(90)や『スピーシーズ 種の起源』(95)のジョン・ミュートが参加している。
 そして、美しくも艶かしい音楽スコアを書いたのは、『THE JUON/呪怨』(04)や『ゴーストライダー』(07)の作曲家クリストファー・ヤング。もともとは低予算のB級映画を数多く手掛けていた人で、本作は『ヘルレイザー』(87)と並んで80年代における彼の代表作といっても過言ではない出来栄えだ。

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次第に変わっていく母親の態度に戸惑うキャシーたち

祖母の嫌がらせもエスカレートしていく一方だった

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やがて子供たちは目に見えて衰弱していく

屋敷から逃げ出すことを考えるキャシーとクリスだったが・・・

 実質的なヒロインである長女キャシー役を演じているクリスティ・スワンソンは、ウェス・クレイヴンの『デッドリー・フレンド』(86)やテレビ化もされた『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』(92)の主演でカルトな人気を誇る美少女スター。特にジャンル系ファンの間ではいまだに根強い人気を誇っているが、決定的な代表作に恵まれないまま現在へと至っている。やはり、この頃が一番キュートで可愛らしかった。ハリウッド女優らしからぬ憂いのある表情が魅力的だ。
 母親コリンを演じるヴィクトリア・テナントは、人気コメディアン、スティーヴ・マーティンの奥さんだったことでも知られる女優。彼女自身イギリスの裕福な家庭の生まれで、父親は有名な俳優エージェント、母親はロシアの伝説的プリマドンナのイリーナ・バロノワ、そして名付け親が名優ローレンス・オリヴィエという恵まれた環境に育ったという。日本では夫マーティンと共演した『L.A.ストーリー/恋が降る街』(91)が一番知られているかもしれない。
 そして、冷酷で残忍な祖母オリヴィアを演じて強烈な存在感を放つのが、『カッコーの巣の上で』(75)でアカデミー主演女優賞を獲得したルイーズ・フレッチャー。怖いオバサンを演じさせたら、まずこの人の右に出る者はいないだろう。小さな子供を平手で思い切りバチン!と叩くシーンなんか、その形相も含めて震え上がるほど怖い。それでいながら、ふとした表情や仕草の中に祖母としての複雑な感情を垣間見せるという演技の細やかさも巧みだ。特に、僅かながらも人間的な素顔を覗かせるエンディング・シーンの表情は印象的だった。
 その他、『怪獣大戦争』(65)など日本の特撮映画にも出演していた俳優ニック・アダムスの息子ジェブ・スチュアート・アダムスが長男クリス役を、『ポルターガイスト3/少女の霊に捧ぐ』(88)でケイン牧師役を演じていたネイサン・デイヴィスが祖父マルコム役を、60年代にマカロニ・ウェスタンで活躍した俳優レオナード・マンがコリンの婚約者バート・ウィンスロー役を演じている。

 

ドラキュリアン
The Monster Squad (1987)

日本では1987年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2007 Lions Gate (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
DVD仕様(北米盤2枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド・2.0chステレオ/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/82分
/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
フランケンシュタイン インタビュー
未公開シーン集
オリジナル劇場予告編
テレビ・スポット集
スチル・ギャラリー
監督・出演者による音声解説
監督・撮影監督による音声解説
監督:フレッド・デッカー
製作:ジョナサン・A・ジンバート
脚本:シェーン・ブラック
   フレッド・デッカー
撮影:ブラッドフォード・メイ
特殊メイク:スタン・ウィンストン
特殊効果:リチャード・エドランド
音楽:ブルース・ブロートン
出演:アンドレ・ゴウアー
   ロビー・カイガー
   ダンカン・レジャー
   スティーブン・マクト
   トム・ヌーナン
   ブレント・シャレム
   ライアン・ランバート
   アシュリー・バンク
   メアリー・エレン・トレイナー
   レオナード・チミノ
   スタン・ショー

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19世紀のトランシルヴァニアはドラキュラ城

ドラキュラ伯爵(D・レジャー)

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討伐隊を率いるヴァン・ヘルシング教授

呪文とともに巨大な渦巻きが現れる

 ホラー映画ファンならずとも間違いなく楽しめるホラー・コメディの傑作だ。とあるアメリカの田舎町にドラキュラ伯爵や狼男、半魚人などのモンスターたちが集結。ホラー映画マニアの子供たちが心優しきフランケンシュタインの怪物と共に、モンスター軍団の野望を打ち砕くために立ち上がるというわけだ。笑いあり、冒険あり、アクションあり、友情あり、感動ありの賑やかな物語が、派手なSFXや特殊メイクを駆使して描かれていく。
 まず、自らが熱狂的なホラー・マニアであるフレッド・デッカー監督の愛情溢れるマニアックな演出が抜群に素晴らしい。基本的にファミリー向けなので残酷シーンはほとんどないが、オープニングのドラキュラ城やモンスター軍団が集結する沼地などの美術セットやモンスターたちの細かいディテールなど、ホラー映画マニアも思わず納得のこだわりが全編に貫かれている。さりげなく『サンゲリア』や『吸血鬼サーカス団』などのポスターが出てくるのも嬉しい。
 そればかりではなく、ストーリーや人間描写に優れているのも本作の傑出している点だろう。ホラー映画に夢中になる子供たちの、思春期特有の繊細な感情が実に上手く描きこまれている。周りの大人たちのキャラクターにも説得力があり、単なる子供だましのパロディ映画に終っていないのは立派だ。子供たちのホラー映画同好会“モンスター・スクワッド”の拠点となる隠れ家や、どこの町にも1つはある幽霊屋敷、学校でのいじめっ子、セクシーなお姉さんなど、思春期ドラマには欠かせない要素もきっちりと押えている。
 劇場公開当時はほとんど話題にならず、興行的には惨敗だった本作。ところが、80年代末にビデオ発売されてから徐々に口コミで評判が広まり、いつの間にかカルト映画として絶大な人気を集めるようになった。アメリカではファン・クラブも結成され、ネットのファン・サイトはもとより、映画にオマージュを捧げたパンク・バンドまで存在する。陳腐な邦題に惑わされて見逃していたという人は、是非とも騙されたと思って一度見て欲しい。

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大親友のパトリック(R・カイガー)とショーン(A・ゴウアー)

現代に甦ったドラキュラ伯爵

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伯爵のもとにはミイラ男や狼男が集まってくる

沼からは半魚人も登場

 19世紀末のトランシルヴァニア。ヴァン・ヘルシング教授率いる討伐隊がドラキュラ城へとなだれ込む。不思議な光を放つアミュレットを発見した一行は、若い娘に命じて呪文を唱えさせた。すると、空中に巨大な渦巻きが発生し、全てを呑み込んでいってしまう。
 時代は移って1987年。平和な田舎町に住む少年ショーン(アンドレ・ゴウアー)は大のホラー映画マニアだ。地元警察の刑事をしている父親デル(スティーブン・マクト)は息子の趣味に理解を示してくれるが、仕事が忙しすぎるせいで家族のコミュニケーションは希薄になりがち。両親の諍いも絶えず、ショーンは寂しい思いをしている。
 そんな彼は、同じようにホラー映画の好きな仲間たちと同好会を結成していた。メンバーは大親友のパトリック(ロビー・カイガー)、おデブでいじめられっ子のホレイス(ブレント・シャレム)、甘えん坊の下級生ユージーン(マイケル・ファウスティーノ)、そして喧嘩の強い不良少年の上級生ルディ(ライアン・ランバート)だ。彼らは庭の木の上に立てた隠れ家に集まっては、ホラー談義に花を咲かせている。
 そんなある日、ショーンの母親エミリー(メアリー・エレン・トレイナー)が近所のガレージ・セールで古い本を買ってきてくれた。それを手に取ったショーンはビックリして飛び上がる。あのヴァン・ヘルシング教授の日記だったのだ。シャドウブルック通りにある廃墟の屋敷から出てきたものらしい。だが、ドイツ語で書かれているため、ショーンにはさっぱり内容が分からなかった。
 その頃、町の上空を通過する貨物飛行機から、怪しげな荷物とコウモリが沼地に落下した。コウモリの正体はドラキュラ伯爵(ダンカン・レジャー)。一方、町では博物館から古代エジプトのミイラが姿を消し、警察署では狼男を名乗る男が大暴れしていた。やがて、ドラキュラ伯爵のもとにミイラと狼男、半魚人が集まり、彼らは雷を利用してフランケンシュタインの怪物(トム・ヌーナン)を甦らせる。
 ショーンのもとにアルカード氏と名乗る人物から、ヴァン・ヘルシング教授の日記を探しているという電話が入った。母親の伝言メモでそれを知ったショーンは、その綴りを見てドラキュラ伯爵のアナグラムだと気付く。父親の話からミイラの失踪事件や狼男騒ぎを聞いていた彼は、この町にモンスターが集まっているのではないかと疑う。そこで、少年たちは町の子供たちに恐れられているドイツ人の老人(レオナード・チミノ)に、ヴァン・ヘルシングの日記を訳してもらうことにした。
 意外にも老人は心優しい人物だった。日記を翻訳してもらったところ、この世の善と悪のバランスを保つ不思議なアミュレットがあるという。100年に一度のある晩、悪の力がそのアミュレットを手にすると、強大な力を持って世界を支配してしまう。それを阻止するためには、悪の力よりも先にアミュレットを手に入れ、若い処女がドイツ語の呪文を唱えなくてはならない。すると、巨大な渦巻きが発生し、悪の力を呑み込んでしまうというのだ。そして、その100年に一度訪れる運命の日が、明日に迫っていることを知る。
 一方、沼地の水辺で遊んでいたショーンの妹フィービー(アシュリー・バンク)は、フランケンシュタインの怪物と遭遇する。彼はドラキュラ伯爵の命令でヴァン・ヘルシングの日記を奪いにやってきたのだ。しかし、心優しい怪物はフィービーと仲良くなり、少年たちに協力することとなる。ドラキュラ伯爵たちはシャドウブルック通りの屋敷に潜伏しており、その地下でアミュレットを発見したらしい。
 銀の銃弾や木製の杭などの武器を用意した少年たちは自ら“モンスター・スクワッド”を名乗り、怪物退治に乗り出す。ショーンとホレイス、ユージーンが屋敷に忍び込む一方で、パトリックとルディは呪文を唱える処女探しに出かけた。屋敷でバンパイアたちに遭遇したショーンたちは、偶然にもアミュレットの隠し場所を見つける。ドラキュラ伯爵に襲われるが、たまたまホレイスが持っていたガーリック・ピザで撃退。一方のパトリックたちは、学校でドイツ語のクラスを取っているパトリックの姉に呪文を唱えてもらうことにした。
 アミュレットを奪って屋敷から逃げ出したショーンたちは、パトリックらと合流。そこへ、車に乗って応援に駆けつけたドイツ人の老人とフィービーが加わり、町の中央広場にある教会へと逃げることにした。その頃、変身直前の狼男から電話を受けたデルは、息子ショーンに危険が迫っていることを知る。自宅へ向った彼はドラキュラ伯爵と遭遇し、モンスターの存在を確信した。
 教会へと到着したモンスター・スクワッド一行だが、モンスターたちも後を追って次々と広場に集結。ついに運命の時間が迫ってきた。老人の翻訳に助けられながら、パトリックの姉が呪文を唱える。ところが、なぜだか何事も起きない。というのも、パトリックの姉は本当は処女じゃなかったのだ・・・!

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伯爵たちはフランケンシュタインの怪物を甦らせる

怪物たちの復活にいち早く気付いたモンスター・スクワッドの面々

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フランケンシュタインの怪物(T・ヌーナン)

子供たちは怪物と仲良くなる

 フランケンシュタインの怪物が水辺で少女と遭遇するという正統派な出会いに始まって、少年たちと交流を深めていくロマンティックな展開がとても好印象。クライマックスの切ない別れに思わずジーンとくるホラー・ファンも少なくないはずだ。そうかと思えば、最後の最後に意外な人物が登場し、これまたホラー・ファンもニンマリの粋なシーンを見せてくれる。しかも、全てが楽屋落ちレベルに陥らず、エンターテインメントとして立派に成立しているのは見上げたもんだ。
 監督のフレッド・デッカーは本作の主人公たちと同じように、幼い頃からホラー映画やアメコミの熱烈なファンだったという。一度は入試に失敗したUCLAで学び、『ガバリン』(86)の脚本家としてデビュー。その同じ年、往年のB級SF映画やホラー映画にオマージュを捧げた『クリープス』(86)で監督デビューを飾り、コアなホラー・マニアの間では大変な評判となった。本作の後には『ロボコップ3』(92)の監督・脚本を手掛けているが、いずれも興行的に失敗だったため、残念ながら今では映画界から遠ざかっている。
 そのデッカーと共に脚本を手掛けたのは、『リーサル・ウェポン』シリーズや『ロング・キス・グッドナイト』(96)の脚本家として有名なシェーン・ブラック。彼はデッカー監督とはUCLA時代からの親友だったらしい。
 さらに、撮影監督にはテレビ映画やミニ・シリーズのカメラマンとして活躍し、エミー賞を受賞したこともあるブラッドフォード・メイが参加。モンスターの特殊メイクには『エイリアン2』(86)や『ターミネーター2』(92)、『ジュラシック・パーク』(93)でオスカーを受賞したスタン・ウィンストンが、特殊効果には『スター・ウォーズ』シリーズや『レイダース/失われた聖櫃<アーク>』(82)でオスカーを受賞したリチャード・エドランドが参加している。
 また、製作総指揮として『ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど』(79)や『2010年』(84)、『カナディアン・エクスプレス』(90)などの名匠ピーター・ハイアムズが名を連ねている。『シルバラード』(85)や『トゥームストーン』(93)のブルース・ブロートンの手掛けた、躍動感溢れる音楽スコアも印象的だ。
 ちなみに、本作はブリュッセル国際ファンタジー映画祭で銀賞を受賞し、主演の子役スターたちはヤング・アーティスト・アワードを獲得している。

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怪物が身を潜めている屋敷へと侵入したショーンたち

バンパイアの群に襲われる!

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子供達を助けるドイツ人の老人(L・チミノ)

ショーンの父デル(S・マクト)も怪物の存在を確信する

 で、その主演の子役スターたちをざっと紹介しよう。主人公ショーン役のアンドレ・ゴウアーは当時昼メロやTVコマーシャルに数多く出演していた子役で、映画での主演はこれ一作のみ。現在はスポーツ・ライターをしているという。その親友パトリックを演じているロビー・カイガーは、アン=マーグレットの息子役を演じた『ファミリー』(83)やジョン・ヴォイトの息子役を演じた『5人のテーブル』(83)など、当時売れっ子だった子役スター。『チルドレン・オブ・ザ・コーン』(84)で演じた主人公を助ける少年ヨブ役も印象深い。
 おデブのいじめられっ子ホレイス役を演じたブレント・シャレムはこれ一作のみで成功せず、その後司法書士になったものの、22歳の若さで病死してしまった。甘えん坊のユージーンを演じているマイケル・ファウスティーノは、その後テレビの子役として活躍。不良少年ルディ役のライアン・ランバートは、ロック・ミュージシャンとなった。また、ショーンの妹フィービー役のアシュリー・バンクは、女優兼プロデューサーとして現在も活躍中だ。
 一方、ショーンの父親デルを演じているのは、テレビの人気ドラマ『女刑事キャグニー&レイシー』でキャグニーの彼氏デヴィッド役で人気スターとなったスティーブン・マクト。映画ではドロシー・ストラットン主演のカルトSF『ギャラクシーナ』(80)のヒーロー役が有名だ。
 ドラキュラ伯爵役のダンカン・レジャーは、80年代に一世を風靡したSFドラマ『V』でエイリアンの指揮官チャールズを演じていた俳優。また、フランケンシュタインの怪物を演じているトム・ヌーナンは身長198センチという巨体の俳優で、マイケル・マンの『刑事グラハム/凍りついた欲望』(86)や、シュワちゃん主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』(93)などで悪役を数多く演じている名優だ。
 その他、一度見たら忘れられない個性的な顔立ちで『砂の惑星』(84)や『月の輝く夜に』(87)などの映画に出ていた名脇役レオナード・チミノがドイツ人の老人役、ロバート・ゼメキス監督の元奥さんで『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』(84)でキャサリン・ターナーの妹役を演じていたメアリー・エレン・トレイナーがショーンの母親役、テレビ『ルーツ2』(79)で原作者アレックス・ヘイリーの祖父役を演じていたスタン・ショーがデルの同僚刑事役として登場する。
 なお、上記の米国盤DVDでは、映像特典のドキュメンタリーに成長した子役たちが登場し、当時の思い出を語ってくれている。

 

ワックス・ワーク
Waxwork (1988)

日本では1989年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 Artisan (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/ステレオ・サラウンド/音声:英語/字幕:なし
/地域コード:1/100分/製作:アメリカ
※パート2とのカップリング

映像特典
なし
監督:アンソニー・ヒコックス
製作:ステファン・アーレンバーグ
脚本:アンソニー・ヒコックス
撮影:ジェリー・ライヴリー
特殊効果:ボブ・キーン
音楽:ロジャー・ベロン
出演:ザック・ギャリガン
   デボラ・フォアマン
   ミシェル・ジョンソン
   ダナ・アシュブルック
   パトリック・マクニー
   デヴィッド・ワーナー
   マイルズ・オキーフ
   ジョン・リス=デイヴィス
   クリストファー・ブラッドレー
   J・ケネス・キャンベル
   エリック・ブラウン
   クレア・ケアリー
   ミカ・グラント
   チャールズ・マッコーハン

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いかにも80年代っぽい青春群像

若者たちは深夜の蝋人形館へ

小人の執事が出迎える

 これまた筋金入りのホラー・マニアであるアンソニー・ヒコックス監督が、ありとあらゆるホラー・キャラを1つの映画の中に詰め込んでしまった、まさしくホラー映画のアソート・パックとも言うべきお祭りムービー。
 主人公の学生たちが迷い込んだのは、真夜中の蝋人形館。狼男からドラキュラ、ミイラ男、オペラ座の怪人、果てはマルキ・ド・サド(!)に至るまで、様々な怪奇物語を再現した蝋人形が展示されている。中には、なぜか『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)の蝋人形まで飾られているのだから、ここのオーナーもなかなかのホラー映画マニアだ(笑)ところが、1人また1人と学生たちが姿を消していく。実は、それぞれの展示物は異次元へと通じており、学生たちは物語の世界へと引き込まれていってしまったのだ。
 ある意味でオムニバス・ホラー的な魅力を持った作品。それでも、これだけ盛りだくさんにいろんなものを詰め込んだ映画もそうそうないだろう。低予算映画ゆえ、それぞれの特殊メイクやSFXには粗が目立つものの、質よりも量で勝負という心意気は必ずしも悪くはない。ストーリーにしたって、よくよく考えれば突っ込みどころ満載なわけだが、ホラー・ファンへ向けたオマージュ的アトラクションとして見れば文句もあるまい。
 『ドラキュリアン』とは違った意味で、ホラー映画マニアなら必見の作品。深いこと考えず、肩の力を抜いて楽しみたい。

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トニー(D・アシュブルック)は蝋人形の世界へ

『ハウリング』もどきの狼男が登場

狼男役のジョン・リス=デイヴィス

 大富豪の御曹司マーク(ザック・ギャリガン)は成績優秀な好青年だが、どこかとぼけていてお人好し。おかげで、学校で一番の美人チャイナ(ミシェル・ジョンソン)にも振られてしまった。そのチャイナは友達サラ(デボラ・フォアマン)と一緒に学校へ向っている途中、新しく出来た蝋人形館の前を通りかかる。昨日まではこんなものなかったはずなのに・・・と不思議に思っていると、目の前に突然1人の紳士が現れた。彼は蝋人形館のオーナー(デヴィッド・ワーナー)だと名乗り、2人を夜の特別展示会に招待する。ただし、友達を連れてきてもいいが、6人しか入ることが出来ないという。
 そこで、チャイナとサラはマーク、トニー(ダナ・アシュブルック)、ジェマ(クレア・ケリー)、ジェームズ(エリック・ブラウン)の4人を誘う。夜になって蝋人形館へと出かけた若者たち。だが、ジェマとジェームスは薄気味悪がって帰ってしまった。
 残された4人を出迎えたのは、小人の執事(ジャック・デヴィッド・ウォーカー)。展示室に入ると、そこには古今の怪奇物語を再現した蝋人形が所狭しと並んでいた。ただ、中には未完成と思われるような展示物も。登場人物が足りないのだ。
 そんな未完成品のひとつ、狼男の蝋人形の前に立ち止まったトニーは、タバコを吸おうとしてライターをディスプレイの内側へ落としてしまう。手を伸ばした次の瞬間、彼は牧童のような姿になって森の中で立ち尽くしていた。わけが分からず当惑する彼の前に狼男が現れ、トニーは腕を噛まれてしまう。近くの小屋へ逃げ込んだトニー。しかし、中にいた男(ジョン・リス=デイヴィス)も満月の光を浴びて狼男へと変身する。逃げまどう彼だったが、そこへハンターが現れて狼男を退治した。だが、噛まれたトニー自身も変身し始め、同じくハンターによって射殺されてしまう。すると、その場面が蝋人形となって現れた。
 一方、マントを被った男の蝋人形に近づいたチャイナも、同じように展示物の中に引き込まれてしまう。気が付くと、彼女は中世の貴婦人となって、城の晩餐会に招かれていた。血の滴る生肉を食らう不気味な貴族たち。晩餐会のホストであるミステリアスな男性こそ、かのドラキュラ伯爵(マイルズ・オキーフ)だった。伯爵の息子ステファン(クリストファー・ブラッドレー)に襲われたチャイナは地下室へと逃げる。そこには、片足の肉をそぎ落とされた男性が。先ほどのディナーは彼の足の肉だったのだ。ヴァンパイアたちを次々と退治したチャイナだったが、ドラキュラ伯爵の催眠術には勝てなかった。伯爵の牙がチャイナの首筋に食い込んだ瞬間、ドラキュラ伯爵の展示物が完成した。

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チャイナ(M・ジョンソン)は中世の貴婦人に

そこは人喰いヴァンパイアの世界だった

ドラキュラ伯爵役のマイルズ・オキーフ

 トニーとチャイナの姿が見えなくなったことに気付いたマークは、サラを連れて展示室を後にした。小人の執事が言うのには、2人は先に帰ってしまったという。仕方なく、マークとサラも家に帰ることにした。その頃、チャイナの新しい恋人ジョナサン(ミカ・グラント)は自分だけ仲間はずれにされたことで憤慨し、入れ違いで蝋人形館にやって来る。中へ迎え入れられたジョナサンは、オペラ座の怪人の犠牲者となった。
 翌日になってもトニーとチャイナが学校に現れないことを不審に思ったマークは、警察へ相談に訪れる。ロバーツ刑事(チャールズ・マッコーハン)を連れて蝋人形館を訪れたマークだったが、何も収穫はなかった。だが、オーナーの様子に疑問を持ったロバーツ刑事は、後になってこっそり蝋人形館へ戻ってくる。展示物をチェックしていた彼は、ドラキュラ伯爵のディスプレイに着目。犠牲者チャイナの顔を削ってみたところ、どうやら本物の人間らしかった。他の展示物もチェックしようとしたロバーツ刑事は、ミイラ男の世界に引き込まれてしまう。エジプトの古墳を調べる探索隊の一員となった彼は、甦ったミイラ男に殺されてしまう。かくして、ミイラ男の展示物が完成したのだ。
 その頃、マークは蝋人形館のオーナーの顔に見覚えがあることを気付いた。サラと共に屋根裏の倉庫を探していた彼は、古い新聞記事を発見する。それは、マークの祖父が殺された事件を報じるもので、容疑者として指名手配された祖父の部下デヴィッド・リンカーンなる人物が、蝋人形館のオーナーと瓜二つだったのだ。
 そこでマークとサラは、祖父の親友でマーク自身の名付け親でもあるウィルフレッド卿(パトリック・マクニー)のもとを訪れる。かつて冒険家だったマークの祖父とウィルフレッド卿は世界中を巡り、“歴史上最も凶悪な18人の人々”の身に着けていた遺品を収集していた。ところが、邪な考えを持ったリンカーンが祖父を殺し、そのコレクションを持ち去ってしまったのだ。悪魔に魂を売ったリンカーンは、ヴードゥーの魔術にのっとって悪人たち18人の蝋人形を製作。それぞれの蝋人形の世界に入り込んだ人々が殺されると、その魂が蝋人形に宿るというのだ。そして、全ての展示物が完成した時、“歴史上最も凶悪な18人”が甦って世界を滅ぼすのである。
 再び蝋人形館へ忍び込んだマークとサラは、ガソリンを撒いて火をつけようとする。ところが、サラが誤ってマルキ・ド・サドの世界へ引き込まれてしまう。それを止めようとしたマークも、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』みたいなゾンビの世界へと迷い込んでしまった・・・!

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蝋人形館に忍び込むロバーツ刑事(C・マッコーハン)

蝋人形は本物の人間らしかった

マーク(Z・ギャリガン)とサラ(D・フォアマン)

 いやいや、ゾンビって歴史上実在したんですかね!?なんて突っ込みは野暮というもの(笑)全編これあくまでもホラー・マニアのお遊びなわけで、このおもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさとデタラメさこそが、本作の真髄と言うべきだろう。『狼男アメリカン』や『ハウリング』をパクッた狼男の特殊メイクやクリーチャー・スーツも微笑ましいし、ゾンビの世界が『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』よろしくモノクロだったりするのも愉快。『オペラ座の怪人』がロン・チェイニー版ではなくクロード・レインズ版を模している(マスクのデザインが若干違う)のもこだわりが感じられるところだろう。
 これが映画監督デビューとなったアンソニー・ヒコックスは、ジョン・ウェイン主演の『ブラニガン』(75)などで知られる映画監督ダグラス・ヒコックスを父に、『アラビアのロレンス』(62)でオスカーを受賞した女性編集者アン・V・コーツを母に持つ映画界のサラブレッド。曽祖父がイギリス最大の映画会社ランク・オーガニゼーションの創始者であるJ・アーサー・ランクだというのだから、これはもう完璧なお坊ちゃまである。
 幼い頃からB級映画の熱烈なファンで、本作に続いて撮った『サンダウン』(91)ではバンパイア映画と西部劇をミックスしたパロディに挑戦し、さらに本作の続編である『ワックスワーク2/失われた時空』(92)ではよりストレートな古典的ホラー映画へのオマージュを捧げている。ただ、その後は好きな映画を撮らせてもらえなくなり、平凡なB級アクションが多くなってしまったのは残念だ。
 撮影監督のジェリー・ライヴリーは、『バタリアン・リターンズ』(93)や『ネクロノミカン』(93)などのカルト・ホラーを手掛けたカメラマンで、本作以降ヒコックスとはたびたびコンビを組んでいる。また、『ヘルレイザー』(87)や『キャンディマン』(92)などで知られるボブ・キーンが特殊効果を担当しているのも、ホラー・ファンには興味深いところだろう。

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ウィルフレッド卿役のパトリック・マクニー

サラはマルキ・ド・サドの世界へ

一方のマークはゾンビに追われる

 さて、本作はバラエティ豊かなキャストの顔ぶれも楽しみの一つ。主人公マークを演じているのは、大ヒット作『グレムリン』(84)で一躍有名になったザック・ギャリガン。最近では『リージョン・オブ・ザ・デッド〜ミイラ再生〜』(05)で久々に顔を見たが、あっという間に殺されてしまっていたっけ。
 対するヒロインのサラ役を演じているのは、アメリカでは80年代を代表するカルト映画として名高い青春コメディ『ヴァレー・ガール』(83)で知られる女優デボラ・フォアマン。ちなみに、サラのフル・ネームはサラ・ブライトマンだそうだ(笑)
 そして、ちょっと意地の悪い美女チャイナ役を演じているミシェル・ジョンソンは、巨匠スタンリー・ドーネンの『アバンチュール・イン・リオ』(84)でマイケル・ケインの相手役に抜擢されて映画デビューした女優。トニー役のダナ・アシュブルックは大ヒット・ドラマ『ツイン・ピークス』でローラ・パーマーの恋人ボビー役を演じていたことで有名な俳優で、『バタリアン2』(87)にも出ていた。
 ウィルフレッド卿を演じているのは、『ハウリング』の項でも紹介したイギリスの名優パトリック・マクニー。蝋人形館のオーナー役のデヴィッド・ワーナーも、『砂漠の流れ者』(70)や『戦争のはらわた』(75)、『タイム・アフター・タイム』(79)などで知られるイギリスの名優だが、この作品の当時はもっぱらB級映画専門だった。その後、『妻の恋人、夫の愛人』(96)や『タイタニック』(97)の好演で再注目され、メジャー作品へと返り咲いている。
 さらに、狼男役には“インディ・ジョーンズ”シリーズのアラブ商人サラー役や、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのギムリ役でお馴染みの名優ジョン・リス=デイヴィスが登場。当時は映画にテレビにと大忙しだった彼が、こんなチョイ役を演じているというのも意外な驚きだ。
 その他、ドラキュラ伯爵役を演じているのは、ジョン・デレク監督の『類猿人ターザン』(81)のターザン役で脚光を浴びた肉体派俳優マイルズ・オキーフ。ロバーツ刑事役にはジェームズ・アイヴォリー作品の常連俳優チャールズ・マッコーハン。マークの友人ジェームズ役には、『プライベート・レッスン』(81)でシルヴィア・クリステルに性の手ほどきを受けたエリック・ブラウン。その恋人ジェマ役には、90年代の人気ドラマ“Coach”の娘役やオルセン姉妹主演の『2人はお年ごろ』の母親役、最近では『ジェリコ 閉された街』のバー経営者メアリー役など、主にテレビで活躍を続けている女優クレア・ケアリー。また、冒頭でチラリと顔を出すマークの母親役には、アメリカの国民的昼メロ・ドラマ“All My Children”に現在まで25年以上も出演している名物女優ジェニファー・バッシーが登場する。

 

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