80年代カルト・ホラー セレクション
〜PART 1〜

 

ナイト・オブ・ザ・コメット
Night of the Comet (1984)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済み
※DVDはボックス・セットのみ

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(P)2007 MGM/Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/ステレオ・モノラル/音声:英語・スペイン語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/95分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:トム・エバーハード
製作:アンドリュー・レイン
    ウェイン・クロフォード
脚本:トム・エバーハード
撮影:アーサー・アルバート
音楽:デヴィッド・リチャード・キャンベル
出演:ロバート・ベルトラン
    キャサリン・メアリー・スチュアート
    ケリー・マロニー
    シャロン・ファレル
    メアリー・ウォロノフ
    ジョフリー・ルイス

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巨大な彗星が地球へと接近する

群衆とともに夜空を見上げる継母ドリス(S・ファレル)

 いかにも80年代らしいポップでお気楽な青春ホラー・ムービー。そもそも、これをホラー映画に分類して良いもんだかどうかすら迷うところだが、一応コンセプトは『ナイ・オブ・ザ・リビング・デッド』と『ゾンビ』を足して割ったような感じ。ただし、残念ながらゾンビはちょこっとしか出てこないのだけれど。
 主人公はお洒落とショッピングとビデオゲームの大好きな女子高生姉妹。ある朝目覚めてみると、彗星の影響で世界中の人々が灰になって消えていた。で、自分たち以外の人間が殆んど死んでしまったことに気付いた2人。まず何をするかっていうと、とりあえずショッピング・モールでショッピング三昧(笑)
 その上、2人揃って生粋のガン・マニアでもある。こりゃ向うところ敵なしだろう。そんな彼女たちが、マシンガン片手に人喰いゾンビを蹴散らかし、怪しげな科学者集団の陰謀を叩き潰していくという寸法だ。恐るべし、人類最後の女子高生。
 当時、アメリカでは“ヴァレー・ガール”と呼ばれる、お洒落や高級ブランドに目がないティーンエージャーの女の子たちが社会現象になっていた。言うなれば、アメリカ版新人類(死語)といったところか。マドンナの“マテリアル・ガール”なんか、まさにその象徴だったと言えるかもしれない。
 そんな“今どき”の女の子たちが人類滅亡の際に生き残ってしまったら・・・という発想が全ての作品。パステル・カラーや肩パッド入りのファッション、BGMで使われる“ハイスクールはダンステリア”、能天気で軽いノリのヒロインたちなどなど、懐かしくも恥ずかしい80年代が全編に溢れかえっている。
 最近ではゾンビを題材にしたホラー・コメディも珍しくなくなったが、このちょっとトボけた感覚はあの時代ならではものだろう。肝心のゾンビはあまり出てこないし、残酷シーンもほぼ皆無。なので、ホラー・ファンには少々期待ハズレかもしれないが、風変わりな映画がお好きな方は是非。これが結構クセになるんだからさ。

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人類が滅亡したことを知って愕然とするレジーナ(C ・M・スチュアート)

あくまでもお気楽な妹サマンサ(K・マロニー)

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彗星を見学していた人々は、ことごとく灰になってしまった

辛うじて生き残った人々もゾンビに

 舞台はロサンゼルス。巨大な彗星が地球へ近づいていた。街中の人々が彗星を一目見ようとお祭り騒ぎで盛り上がっているのを尻目に、女子高生レジーナ(キャサリン・メアリー・スチュアート)はビデオゲームに夢中。思い通りにスコアが伸びなかった彼女は、さっさと諦めて映画館でアルバイトしているボーイフレンドと倉庫でイチャついていた。
 一方、妹のサマンサ(ケリー・マロニー)は、意地悪な継母ドリス(シャロン・ファレル)と喧嘩して部屋に閉じこもってしまう。やがて夜空が不気味な色に包まれ、人々は彗星の接近を目の当たりにして興奮に沸く。だが、空を見上げていたドリスは、突然奇妙な感覚に襲われるのだった。
 翌朝、目を覚ましたレジーナは辺りの静けさに気付いて外へ出る。すると、街中がもぬけの殻となっていた。しかも、大通りのあちこちに奇妙な灰と洋服が散乱している。ボーイフレンドを探しに行った彼女は、物陰から現れたゾンビに襲われる。ボーイフレンドは既にゾンビの餌食になっていた。
 近くにあったバイクに飛び乗って逃げ出したレジーナは、真っ直ぐ我が家へと向う。妹サマンサは無事だった。2人は自分たちが寝ている間に何かが起きたこと、それが彗星に関係しているであろうこと、そして周りの人々が灰になってしまったことを悟る。
 途方に暮れる2人。ところが、ラジカセをつけてみると、朝の音楽番組を放送しているラジオ局があった。2人は生存者を探して放送局へと向う。だが、ラジオ番組はあらかじめ録音されたものを自動的に流しているだけだった。
 落胆する彼女たちだったが、同じようにラジオ番組を聞いてやって来た長距離トラックの運転手ヘクター(ロバート・ベルトラン)と出会う。彼も昨夜は彗星を見ることなく眠ってしまったらしい。他にも生存者がいるに違いないと考えた彼らは、ラジオの電波を通じて呼びかける。
 その放送を受信している人々がいた。政府の地下施設で働く科学者たちだ。彼らは彗星の正体を事前に把握していた。彗星の光を直接浴びた生物は灰となり、間接的に触れた者は生ける屍となってしまうのだ。彼らは地下施設にいて安全なはずだったのだが、通気口から微量の光が入ってしまった。そのため、彼らの体は少しづつゾンビ化してしまうことが判明。カーター博士(ジョフリー・ルイス)やオードリー(メアリー・ウォロノフ)はワクチンの開発を急いでいたが、そのためには犠牲を伴う必要があった。
 その頃、ラジオ放送に対する反応が全くないことに業を煮やしたレジーナたちは、意を決して外へ出ることにする。このまま隠れていても悪戯に時間が過ぎていくだけだ。ヘクターは家族の無事を確かめるために自宅へ。一方、レジーナとサマンサはマシンガンを片手にショッピング・モールへと向う。気が滅入った時にはショッピングが一番。しかも、人類が絶滅してしまったからにはお金を払う必要もないのだから、タダでショッピングし放題だ。
 だが、その様子を監視カメラで見ている連中がいた。ショッピング・モールの警備員たちだ。ゾンビ化が進んでいる彼らは、狂暴なテロ集団となっていた。軍人である父親の影響で銃の扱いに慣れているレジーナとサマンサは、手に持ったマシンガンで応戦。しかし、お気楽なサマンサが捕まってしまったことから、2人とも処刑されることになってしまう。
 間一髪のところで救出に現れたのは、オードリー率いる科学者チームだった。だが、何故かレジーナだけが基地へ送られ、サマンサはオードリーらと残ってヘクターを待つことになる。実は、科学者たちはワクチンを開発するため、ある恐ろしい実験を行っていたのだ・・・。

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生存者を探してラジオ局へとやって来た姉妹だったが・・・

姉妹はトラック運転手ヘクター(R・ベルトラン)と出会う

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ショッピング・モールでショッピング三昧を楽しむレジーナとサマンサ

そこへ凶暴化した警備員たちが襲い掛かってくる

 監督・脚本を手掛けたのは、マイケル・ケインがドジなシャーロック・ホームズを演じた『迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険』(88年)や、キアヌ・リーヴス主演の『ミッドナイトをぶっとばせ!』(88年)などを手掛けたトム・エバーハード。基本的に荒唐無稽なコメディや青春映画に本領を発揮する人である。やはり、本作の軽妙かつ大胆な演出・ストーリーは彼の個性なのだろう。随所に当時のサブカルチャーをさり気なく盛り込んでいる辺りの遊び心も、なかなか気が利いている。
 一方、製作を担当したウェイン・クロフォードとアンドリュー・レインの2人は、ヴァレー・ガールたちのライフスタイルを描いた、そのものズバリなタイトルのカルト映画『ヴァレー・ガール』(83年)のプロデューサー・コンビ。な〜るほど、と思わず納得。
 撮影のアーサー・アルバートは、『ニューヨーク・ベイサイド物語』(86年)や『暴力教室’88』(87年)、『お葬式だよ全員集合』(92年)などアクションや青春もの、コメディを数多く手掛けているカメラマン。現在はテレビの人気シリーズ『ER緊急救命室』の撮影を7年以上務めている。
 ゾンビの特殊メイクを担当したのは、『エルム街の悪夢』(84年)や『クリープス』(86年)で有名な特殊メイク・アーティスト、デヴィッド・ミラー。また、美術デザインには『ホーム・アローン』(90年)や『スピーシーズ/種の起源』(95年)のジョン・ムートが携わっており、アメコミ的な色彩感覚を再現することに努めたという。
 なお、音楽スコアを手掛けたデヴィッド・リチャード・キャンベルは、ロック・ミュージシャン、ベックの父親だそうだ。

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オードリー(M・ウォロノフ)率いる科学者チーム

地下施設へ連れて行かれたレジーナは恐るべき秘密を知る

 ヒロインのレジーナを演じるキャサリン・メアリー・スチュアートは、当時かなりの売れっ子だったアイドル女優。『スター・ファイター』(84年)や『バーニーズ/あぶない!?ウィークエンド』(89年)など、どちらかというとB級映画が多かったものの、オール・アメリカン・ガール的な親しみやすさが魅力だった。日本でも結構隠れファンが多かったように思う。
 その妹サマンサ役のケリー・マロニーも、当時『悪魔のサバイバル』(85年)や『キルボット』(86年)などのカルトなホラー映画に数多く出演し、一部のマニアの間では絶大な人気のあった女優。だいたい、ちょっとオツムの弱い“ヴァレー・ガール”タイプの女の子や生意気なチアリーダーなんかを演じることが多かった。
 彼女たちと親しくなるトラック運転手ヘクター役のロバート・ベルトランは、テレビ・シリーズ『スタートレック/ヴォイジャー』の指揮官チャコティ役で有名な俳優。また、科学者チームの女性スタッフ、オードリー役を、『デス・レース2000年』(75年)や『ロックンロール・ハイスクール』(79年)などのカルト映画で有名な怪女優メアリー・ウォロノフが演じる。さらに、その上司カーター博士役として、ジュリエット・ルイスの父親としても知られる名脇役ジェフリー・ルイスも登場。
 そして、ヒロイン姉妹の意地悪な継母役でチラリと顔を見せるのは、『華麗なる週末』(69年)でスティーヴ・マックイーンの相手役を演じたシャロン・ファレル。とてもキュートな可愛らしい女優さんだったが、出産における医療事故が原因で脳に障害を負ってしまい、セリフを暗記することが出来なくなってしまった。そのため、女優復帰後も本作のようなちょい役に甘んじるしかなかったのは不幸だった。

 

チルドレン・オブ・ザ・コーン
Children of the Corn (1984)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済
※日本盤DVDはアメリカ盤と別仕様

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(P)2004 Anchor Bay (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤・DiviMax版)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/2.0chサラウンド・5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/92分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
監督・製作者・俳優による音声解説
オリジナル劇場予告編
オリジナル・ストーリーボード
ポスター&スチル・ギャラリー
オリジナル・タイトル・アート集
オリジナル脚本(DVD-ROM収録)
監督:フリッツ・カーシュ
製作:ドナルド・P・ボーシャーズ
    テレンス・カービー
原作:スティーブン・キング
脚本:ジョージ・ゴールドスミス
撮影:ラウール・ローマス
音楽:ジョナサン・エリアス
出演:ピーター・ホートン
    リンダ・ハミルトン
    R・G・アームストロング
    ジョン・フランクリン
    コートニー・ゲインズ
    ロビー・カイガー
    アン・マリー・マッケヴォイ

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牧師の姿をした謎の少年アイザック(J・フランクリン)

町の子供たちが次々と大人を殺していく

 子供ばかりのカルト教団が支配する田舎町で、偶然訪れた若い夫婦が体験する恐怖を描いた異色のオカルト・ホラー。これまでに6本もの続編が製作され、来年は新たにリメイク版まで登場するという、隠れた人気シリーズの記念すべき1作目である。
 原作はスティーブン・キングが1977年に発表した短編小説『とうもろこし畑の子供たち』。小説版は、古き良き時代のアメリカを連想させるトウモロコシ畑を舞台に、その中に潜む魔物の恐怖と、その魔物を崇拝する邪悪な子供たちを描いたシンプルな物語だった。
 一方、映画版では子供たちが形成するカルト教団の実態が詳しく描かれ、さらにクライマックスでは魔物との直接対決が用意されている。これはこれで娯楽映画としては正しい脚色なのかもしれないが、原作における救いのない最期をハッピー・エンドにしたのは賛否の分かれるところだろう。
 もちろん、商業的な見地に立てば、ハッピー・エンドは必要悪ともいえる選択肢。アメリカの観客は基本的にハッピー・エンドを好むものだから。ただ、作品の完成度を求めるならば、やはりある程度は原作に準じた方が賢明だったようにも思う。おかげで、後半へ進むにしたがって、物語はどんどん凡庸になって行く。
 また、子供たちがある日突然大人を皆殺しにして町を乗っ取ってしまうという設定にしても、同じような題材を描いたスペイン映画『ザ・チャイルド』(75年)に比べると決定的なインパクトに欠ける。原因を明かさないことによって不気味なリアリズムを高め、その中から社会的なメッセージを浮き彫りにしていた『ザ・チャイルド』に対して、本作はカルト教団の内情を具体的に描くことにより、逆に彼らの存在がかもし出す得体の知れない不気味さを半減させてしまった。所詮、やっぱり子供は子供じゃないか、と。その点、原作は読み手の想像に委ねる部分を多く残していた分だけ説得力があったように思う。
 とはいえ、50年代から時が止まってしまったかのような田舎町の風景は、不気味でシュールなムードを大いに盛り上げる。まるで異空間に迷い込んでしまったような不安感を煽って秀逸だ。クライマックスに登場する魔物にしても、その正体を最後まで明かさなかったのは良かった。また、カルト教団のリーダーである少年アイザックを演じるジョン・フランクリンの、大人なのか子供なのか分からないような不気味さも強烈なインパクトを残す。
 ただでさえだだっ広いアメリカ。こんな田舎町があっとしても、もしかしたらおかしくないのかもしれない。見ていて、ふとそんな不安に駆られる作品だ。

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少年を車で引いてしまったバート(P・ホートン)とヴィッキー(L・ハミルトン)

ガソリンスタンドの店主(R・G・アームストロング)は何かに怯えている

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子供たちはトウモロコシ畑に潜む魔物を崇拝していた

ゴースト・タウンと化した田舎町ゲイトリン

 舞台はネブラスカ州の小さな田舎町ゲイトリン。ある穏やかな日の昼下がり、町の子供たちが突如として大人たちを皆殺しにする。子供たちを率いるのは、牧師の姿をした謎の少年アイザック(ジョン・フランクリン)。彼らはとうもろこし畑に潜むという魔物を神と崇拝し、大人を穢れたものとして抹殺したのだ。
 それから数ヶ月が経ったある日、若い夫婦バート(ピーター・ホートン)とヴィッキー(リンダ・ハミルトン)は、トウモロコシ畑のそばを車で通りかかった。すると、突然目の前に現れた少年を轢いてしまう。車を止めて駆け寄った2人は、少年の喉がナイフで掻っ切られているのを見て驚く。ゲイトリンを逃げ出そうとした少年は、アイザックの片腕であるマラカイ(コートニー・ゲインズ)に襲われたのだ。
 事情を知らないバートとヴィッキーは、助けを求めて町外れのガソリンスタンドに立ち寄るが、店主ディール(E・G・アームストロング)は何かを恐れている様子。仕方なく町へ向うことにした2人が立ち去ると、ディールは何者かによって殺された。
 ゲイトリンへ到着したバートとヴィッキーだったが、町はゴースト・タウンと化している。子供の走り去る姿を見かけた2人は、その後を追って一軒家にたどり着いた。中に入ると、サラ(アン・マリー・マッケヴォイ)という少女が一人で遊んでいる。バートはヴィッキーをサラのもとに残し、町の中を捜索することにした。
 ところが、手に斧や鍬を持った子供たちが家に押し入り、ヴィッキーを無理やりさらっていく。一方、町の教会に足を踏み入れたバートは、そこで不気味な儀式が行われているのを目撃した。それは19歳を迎える少年エイモス(ジョン・フィルビン)が魔物の生贄となるための洗礼だった。悪趣味な悪ふざけだと叱咤するバートだったが、逆に子供たちに取り囲まれてしまう。
 傷を負いながらも必死になって逃げるバート。その窮地を救ったのは、ジョブ(ロビー・カイガー)という幼い少年だった。彼はサラの兄で、アイザックたちから身を隠して暮らしている。ヴィッキーがさらわれたことをサラから聞いたバートは、生贄の儀式が行われる夜を待って救出しようと決意する。
 その頃、専制君主的なアイザックに日頃から不満を抱いていたマラカイは、仲間たちを煽動して反旗を翻す。侵入者が現れたのはアイザックの責任なのだ。マラカイは彼を生贄にすることを決める。
 やがて夜の帳がおりた頃、トウモロコシ畑では生贄の儀式の準備が整っていた。迫り来る魔物の気配を感じ、十字架にはりつけられたアイザックは断末魔の悲鳴をあげる。どよめく子供たち。その隙を狙ってヴィッキーを救出するべく乗り込んだバート。マラカイを殴り倒し、彼らの崇拝する神が“偽者”であると説くバートの言葉に、子供たちは圧倒された。
 その時、生贄となったはずのアイザックが凄まじい形相で蘇る。その体には魔物が乗り移ったようだった。彼はマラカイを惨殺し、子供達を血祭りにあげようと迫るのだったが・・・。

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手に斧や鍬を持った子供たちが忍び寄る

子供達を支配するアイザック

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ヴィッキーが子供たちにさらわれる

アイザックに反旗を翻したマラカイ(C ・ゲインズ)

 もともと、本作はスティーブン・キング自身が脚本の草稿を書き上げていた。しかし、ヴィッキーが生贄となって殺されてしまうというエンディングが受け入れられず、当時全くの無名だったジョージ・ゴールドスミスが最終的な脚本を仕上げることとなった。
 監督のフリッツ・カーシュにとっても、これが初の劇場用長編映画。テレビ・コマーシャルの出身だということだが、牧歌的な田舎の風景と宗教的なイメージを絡めた映像スタイルはなかなか悪くない。本作ではブリュッセル国際ファンタスティック映画祭の最優秀ファンタジー映画賞を受賞した。その後、無名時代のジェームズ・スペーダーが主演した『ハイスクール・ファイター』(85年)という青春バイオレンスの佳作を残しているものの、あとは箸にも棒にも引っかからないC級映画ばかりでお茶を濁している。
 撮影を担当したのは、スラッシャー映画の名作『ローズマリー』(81年)を手掛けたラウール・ローマス。また、美術デザインを担当したクレイグ・スターンズはジム・キャリー主演の『マスク』(94年)で英国アカデミー賞を受賞した人物で、『シャイニング』(97年)や『スティーブン・キングの悪魔の嵐』(98年)、『スティーブン・キングのローズ・レッド』(02年)、『スティーブン・キングのキングダム・ホスピタル』(04年)など、スティーブン・キングによる一連のテレビ・ミニ・シリーズを数多く手掛けている人物。キングから絶大な信頼を得ているデザイナーだと見て構わないだろう。その原点が、この『チルドレン・オブ・ザ・コーン』というわけだ。

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バートの窮地を救った少年ジョブ(R・カイガー)

バートの傷を手当する少女サラ(A・M・マッケヴォイ)

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アイザックが魔物の生贄に

子供たちの前に姿を現したものとは・・・!?

 主人公バートを演じるピーター・ホートンは、80年代末に全米で大ヒットしたテレビ・シリーズ『ナイスサーティーズ』で人気スターとなった俳優。これが初の映画主演作だ。ハンサムで爽やかな好青年だったが、あまり印象には残らないタイプの人。その後、90年代に入って監督へ転身し、最近では日本でも大人気のテレビ・シリーズ『グレイズ・アナトミー』の監督兼製作総指揮を務めている。
 その妻ヴィッキー役を演じているのが、同じく当時まだ無名だったリンダ・ハミルトン。そう、日本でも『ターミネーター』シリーズのサラ・コナー役でお馴染みの女優だ。だからというわけではないが、スターとしての存在感というかオーラみたいなものは、この時点で十分に感じることが出来る。見終わった後、バートよりもヴィッキーの方が印象に残るというのも、やはり彼女のカリスマ性のなせる業なのかもしれない。
 だが、やはり本作で最も強烈なインパクトを残すのは、アイザック役のジョン・フランクリンとマラカイ役のコートニー・ゲインズだろう。この2人の“特異”としか言いようのない顔つきと、少年らしからぬ怪演には圧倒される。彼らを探してきたキャスティング・ディレクターは本当に偉いと思う。
 まず、アイザックを演じるジョン・フランクリン。実は彼、成長ホルモン分泌不全性低身長症という障害の持ち主で、撮影当時既に25歳だった。あの年齢不詳ともいうべき摩訶不思議な存在感の理由は、これだったわけである。この作品が映画デビューだったのだが、やはり見た目が特殊過ぎるゆえになかなか役柄に恵まれず、その後は映画『アダムス・ファミリー』シリーズの妖怪役が目立つ程度。現在は高校教師として働いているという。
 一方のコートニー・ゲインズは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(84年)やパトリック・デンプシー主演の『キャント・バイ・ミー・ラブ』(87年)、『メンフィス・ベル』(20年)などに出演していた俳優。だいたい、いつも主人公の友達やいじめられっ子などを演じることが多かった。彼もこれが映画デビュー作で、当時は18歳。現在もテレビ・ドラマやインディーズ映画を中心に活躍している。
 その他、サム・ペキンパー監督作品の名バイプレイヤーとして有名なR・G・アームストロングが、ガソリンスタンドの店主役として登場。魔物の生贄になる少年エイモス役のジョン・フィルビンはアメリカの有名なサーファーで、映画『ノース・ショア』(87年)や『ハートブルー』(91年)にもサーファー役で出演している。また、アン=マーグレット主演のTV映画『ファミリー』(83年)やジョン・ヴォイト主演の映画『5人のテーブル』(83年)などに出演して当時売れっ子だった子役ロビー・カイガーが、バートを助ける少年ジョブ役で顔を出しているのも懐かしい。

 

 

真昼の決闘'88/殺戮汚染都市
Nightmare at Noon (1987)
日本では劇場未公開・TV放送あり
VHSは日本発売済・DVDは日本未公開

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(P)1999 Simitar Entertainment (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/96分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
スライドショー
キャスト・バイオグラフィー
監督:ニコ・マストラキス
製作:ニコ・マストラキス
脚本:ニコ・マストラキス
    カーク・エリス
撮影:クリフ・ラルク
音楽:スタンリー・マイヤーズ
    ハンス・ジマー
出演:ウィングス・ハウザー
    ボー・ホプキンス
    ジョージ・ケネディ
    キンバリー・ベック
    ブライオン・ジェームス
    キンバリー・ロス
    ニール・ホイーラー

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元軍人のヒッチハイカー、ライリー(B・ホプキンス)

ライリーを拾ったのは、休暇中のケン&シェリー夫妻

丘の上から町を眺める怪しげな集団

 ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と『ザ・クレイジーズ』を足してサム・ペキンパーのバイオレンス西部劇で割ったような作品。なんていったら、無駄に期待感を高めてしまうかもしれないので、だいたいそこから5割引きくらいで見ておいて然るべきだろう(笑)
 ストーリーもアクションもサービス満点なのに、どうも安っぽく見えてしまうのは、やはりニコ・マストラキス監督の力量不足か。低予算なのは仕方ないにしても、これだけ派手なカー・アクションをふんだんに盛り込んでおいて、いまひとつパッとしないというのもいかがなもんだろうといったところ。
 アメリカ中西部の田舎町を舞台に、町の人々が原因不明の病気で次々と凶暴化してゾンビのようになってしまうというお話。案の定、背後には謎の科学者グループによる企みがあるわけで、たまたまこの町を訪れたアウトローたちがその陰謀を叩き潰すことになる。
 ということで、内容的にはよくありがちなB級ホラー・アクション。そこに、往年のラオール・ウォルシュやヘンリー・ハサウェイの西部劇みたいな雰囲気を盛り込み、サム・ペキンバーばりのバイオレス描写で仕上げようとしたのだろう。やたらとスロー・モーションばかり使ってるしね(笑)とりあえず、目指すところは素晴らしいのだけれど、その目論見が必ずしも成功してないというのが玉に瑕。
 しかし、ウィングス・ハウザーやボー・ホプキンス、ジョージ・ケネディ、ブライオン・ジェームスといったツワモノ揃いのキャスティングだけでも、B級映画ファンなら思わず唸ってしまうはず。ヒロイン役に『13日の金曜日完結篇』(84年)のキンバリー・ベックを持ってきたのもポイントが高い。これでもうちょっとホラー・タッチが濃厚だったら、すこぶる面白い作品になっていただろう。ひとまず、80年代のB級映画が好きな人にはオススメ。この胡散臭さを楽しめるくらいじゃなければ、マニアとは言えない…かもね(笑)

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突然凶暴化した老人チャーリー(N・ホイーラー)

ケン(W・ハウザー)は保安官に協力することを決意

妻シェリー(K・ベック)までもが凶暴化してしまう

 舞台はユタ州の大荒原。休暇を過ごすためにキャンピングカーで移動していた弁護士ケン(ウィングス・ハウザー)と妻シェリー(キンバリー・ベック)は、ライリー(ボー・ホプキンス)というヒッチハイカーの男を拾う。彼は陸軍の兵士だったが、犯罪者を誤って殺してしまったことから除隊させられていた。
 3人はキャニオンランズという小さな町に立ち寄る。ダイナーでランチを食べていたところ、常連客の老人チャーリー(ニール・ホイーラー)が突然狂ったように暴れだす。手にフォークを突き刺されたウェイトレスの悲鳴で事態に気付くケンとラリー。2人がかりでチャーリーを押さえ込もうとするが、老人とは思えないくらいの力で投げ飛ばされてしまった。
 そこへ、通報を受けた保安官助手のジュリア(キンバリー・ロス)が到着。拳銃で威嚇して何とか取り押さえるが、油断したすきにパトカーを盗まれてしまった。遅れて合流した保安官ハンクス(ジョージ・ケネディ)とジュリアはチャーリーを追跡。再三の説得もむなしく、警官隊はチャーリーを銃殺した。だが、その体から流れる緑色の血を見て、保安官は驚きを隠せない。
 その様子を、遠い丘の上から眺めている謎の集団がいた。アルビーノ(ブライオン・ジェームス)と呼ばれる科学者が率いる武装グループだ。実は、彼らは政府の依頼で細菌兵器の研究・開発を行っており、新たに開発されたウィルスの効能を試すため、キャニオンランズの貯水タンクに細菌をばら撒いたのだ。
 そうとは知らずに水を飲み、次々と凶暴化していく町の人々。普段はのどかで平和な町キャニオンランズは、またたく間にパニックへと陥ってしまう。事態を収拾しようと奔走する保安官とジュリア。そしてケンとライリーも彼らに協力する。
 しかし、状況はさらに悪化して行き、ついにはシェリーまでもがウィルスに侵されて凶暴化してしまった。やがて夜になると、防護服に身を包んだ謎の集団が町を訪れ、証拠隠滅の為に被害者たちの死体を次々と焼き払っていった。自分たちのあずかり知らないところで、何か恐ろしい陰謀が行われていると気付いたケンとライリーたちは、その集団のあとを密かに追跡するのだったが・・・。

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保安官ハンクス(G・ケネディ)と助手ジュリア(K・ロス)

次々と凶暴化していく町の人々

平和な町は阿鼻叫喚の大パニックに

 監督・製作・脚本のニコ・マストラキスはギリシャの出身。『ハードアブノーマル』(75年)というエログロ映画で注目を集め、アンソイー・クィン主演のハリウッド映画『愛はエーゲ海に燃ゆ』(78年)の原案を書いたことをきっかけにアメリカへ。カースティ・アレイ主演のサスペンス映画『ブラインド・デート/盲目の目撃者』(84年)で、念願のハリウッドへと進出した。
 その後は、『悪魔のサバイバル』(85年)や『キラーウィンド』(86年)、『地獄の女囚コマンド』(90年)など低予算のホラー映画やアクション映画を連発。商業主義丸出しの乱暴で大雑把な作風が多くのマニアに愛され(?)、アーマンド・マストロヤンニと並ぶ80年代アメリカB級映画界きっての名物監督となったというわけだ。
 なお、共同で脚本を手掛けたカーク・エリスはテレビ界で活躍しているシナリオライターで、スピルバーグ製作の西部劇ミニ・シリーズ『INTO THE WEST イントゥー・ザ・ウェスト』(05年)に参加したほか、今年の春に全米放送されて話題になった歴史ミニ・シリーズ“John Adams”でエミー賞も受賞している人物。
 撮影監督を担当したクリフ・ラルクは、マストラキス監督のコメディ『青春のウルトラ・スクープ』(85年)も手掛けていたカメラマン。また、『バタリアン』(85年)にも参加していたSFXマン、ケヴィン・マッカーシーが特殊効果を担当しており、イタリアで行われたファンタフェスティバルの最優秀特殊効果賞を受賞している。
 また、『プリック・アップ』(87年)や『トラック29』(89年)で知られるイギリスの作曲家スタンリー・マイヤーズと、ディズニーの『ライオンキング』(94年)でオスカーを受賞した巨匠ハンス・ジマーが音楽を手掛けているのにも注目だ。

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なんとか事態を収拾させようと奔走する3人だったが・・・

科学者グループを一網打尽すべく立ち上がるライリー

迎え撃つ悪党アルビーノ

 主人公ケンを演じているウィングス・ハウザーは、サスペンス映画『ザ・モンスター』(82年)のレイプ魔役で一躍有名になった怪優。凶悪でサディスティックなサイコ野郎を演じさせたら天下一品の役者で、主にアクション映画の悪役として知られているが、この手の低予算映画では時々ヒーロー役を演じたりする。この作品もその1本だ。その顔で善人面するんじゃね〜よ、と思わず突っ込みたくなるところだが、まあ、人は見かけによらないということで(笑)
 もう一人のヒーロー、ライリーを演じるボー・ホプキンスも、70年代から80年代にかけて低予算のアクション映画に数多く出演した俳優。その昔は、サム・ペキンパーの傑作『ワイルドバンチ』(68年)や『ゲッタウェイ』(72年)、『キラー・エリート』(75年)、ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(73年)など、なかなか良い作品に恵まれていたもんだったが、いつの間にかB級アクション専門に。なんとなく、いでたちが貧乏臭いんだよね。って、失礼だな(^^;
 そんな、アクション映画のヒーローとしてはいまいち心もとない2人を強力にサポートするのが、保安官役を演じる永遠の助っ人スター、ジョージ・ケネディ。『エアポート』シリーズを筆頭に、この人が出てくれば何とかなる、という安心感を与えてくれる名優。もちろん、悪役からヒーロー役まで幅広く演じてきた人なわけだけど、やっぱり頼りになる親爺さんというポジションがしっくりくる。ここでも、その持ち味を存分に発揮してくれているのが嬉しい。
 主人公ケンの美人妻シェリー役を演じているのが、『13日の金曜日完結篇』(84年)でヒロイン役を演じていたキンバリー・ベック。『13金』シリーズは基本的に無名の新人ばかりを起用するのが常なわけだが、この『完結篇』だけは何故か例外で、彼女の弟役でコリー・フェルドマンなんかも出ていた。キンバリー自身もヒッチコックの『マーニー』(64年)やルシール・ボール主演の『合併結婚』(78年)など、子役として60年代から数多くのメジャー映画に出演してきた女優さんだ。
 そして、科学者チームの黒幕である悪役アルビーノを演じているのが、名前は知らなくても誰でも一度は顔を見たことのある名悪役スター、ブライオン・ジェームズ。中でも、『ブレードランナー』(82年)や『48時間』(82年)、『XYZマーダース』(85年)、『フィフス・エレメント』(97年)などは強烈なインパクトだった。その顔に似合わずとても繊細で優しい人で、人から騙されたりすることも多かったという。そのおかげで長いこと麻薬中毒とアルコール中毒に苦しみ、最後に亡くなったときはほとんど無一文だったらしい。

 

 

魔性の囁き/悪夢と幻想の四章
The Offspring (1987)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2005 MGM (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/100分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ジェフ・バー
製作:ダリン・スコット
    ウィリアム・バー
脚本:C・コートニー・ジョイナー
    ダリン・スコット
    ジェフ・バー
撮影:クレイグ・グリーン
音楽:ジム・マンジー
出演:ヴィンセント・プライス
    スーザン・ティレル
    クルー・ギャラガー
    テリー・カイザー
    ハリー・シーザー
    ロザリンド・キャッシュ
    キャメロン・ミッチェル
    マルティーヌ・ベスウィック
    ローレンス・ティアニー

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女殺人鬼キャサリン・ホワイト(M・ベスウィック)が処刑される

キャサリンを取材するジャーナリスト、ベス・チャンドラー(S・ティレル)

 ホラー映画の帝王ヴィンセント・プライス扮する歴史学者が語る4つの怪奇譚を描いたホラー・アンソロジー。アンソロジー形式のホラー映画といえば、60年代〜70年代前半にイギリスのアミカス・プロやアメリカのAIPなどが得意としたジャンル。その後、『クリープショー』(82年)や『トワイライト・ゾーン/超次元の体験』(83年)が大ヒットしたことから、80年代半ば頃から再びポツポツと作られるようになった。その流れを受けて登場したのが、この『魔性の囁き/悪夢と幻想の四章』という作品だったと言えるだろう。
 監督は『悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲』(89年)や『パペットマスター4/最強の敵』(92年)、『パンプキンヘッド2』(93年)など、続編ホラーの王様とも言われるジェフ・バー。幼い頃から近所のドライブ・イン・シアターでB級ホラーを貪り見て育ったという、筋金入りのホラー・マニアだ。しかも、学生時代には映画の自主制作に熱中し過ぎ、それが原因で大学を落第してしまったというほどの凝り性なのだという。
 そのホラー映画に対するはちきれんばかりの愛情と情熱は、この劇場用映画デビュー作からもヒシヒシと伝わってくる。恐らく、彼はアミカスやハマーなどのブリティッシュ・ホラーをお手本にしたのだろう。全体的なムードはアミカスの『呪われた墓』(73年)や『スクリーミング・夜歩く手首』(73年)なんかによく似ている。
 また、ハマー・フィルムのホラー・クィーンだったマルティーヌ・ベスウィックが特別ゲストとして登場するというのも、マニアックな人選以外の何ものでもないだろう。実際、主演のヴィンセント・プライスは、自ら出演交渉に訪れたジェフ・バーの熱烈なホラー・マニアぶりに心を動かされ、この無名の新人監督の作品へ出演を快諾したという。
 正直なところ、演出はまだまだ稚拙な印象を受けるし、低予算ゆえにSFXや特殊メイクも比較的地味め。全体的に、当時でも古臭いと感じさせる内容の作品だ。それでも、それぞれのエピソードはなかなか捻りが効いていて面白いし、オーソドックスで古典的な怪奇ムードも非常によく出ている。もうちょっと、見せ場をしっかり押さえて欲しかったという不満は残るが、デビュー作としてはまずまずの仕上がりだろう。ホラー映画マニアによるホラー映画マニアのための小品佳作といったところだ。
 ちなみに、もともとアメリカでは“The Offspring”のタイトルで劇場公開されたが、国外マーケット向けには“From A Whisper To A Scream”というタイトルで配給されている。また、アメリカでDVDが発売された際にも、“From A Whisper〜”のタイトルが使用された。

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キャサリンの叔父ジュリアン(V・プライス)が語る四つの呪われた話

地味で目立たない男スタンリー(C ・ギャラガー)は同僚の女性を殺害

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さらにスタンリーは実の妹をも手にかける

おちんちんをブラブラさせた赤ちゃんモンスター!?


 テネシー州の歴史ある町オールドフィールド。20年以上に渡って殺人を犯し続けた女性キャサリン・ホワイト(マルティーヌ・ベスウィック)が処刑された。事件を取材してきた女性ジャーナリスト、ベス・チャンドラー(スーザ・ティレル)は、キャサリンの叔父ジュリアン(ヴィンセント・プライス)のもとを訪れる。殺人鬼の深層心理について疑問をぶつける彼女に対し、歴史学者であるジュリアンはかつてこの町で起きた陰惨な出来事の数々を語って聞かせる。オールドフィールドは呪われた土地なのだ、と。
<第一話>病弱な妹と2人で暮らしている地味で目立たない中年男スタンリー・バーンサイド(クルー・ギャラガー)は、会社の上司である若いキャリア・ウーマン、グレイス(ミーガン・マクファーランド)に秘かな想いを寄せている。思い切って彼女をディナーに誘ったスタンリーだったが、その帰り道にセックスを拒絶され、気がつくと彼女を絞め殺してしまっていた。死体を置き去りにして逃げるスタンレー。
 警察が事件を捜査する中、グレイスの葬儀が行われることになった。真夜中に葬儀場へ忍び込んだスタンリーは、酒に寄った勢いでグレイスの死体を陵辱してしまう。それから9ヵ月後。いまだ捜査の手が自分に及ばないことで、スタンリーはすっかり気が大きくなっていた。いつものように病弱な妹アイリーン(ミリアム・バード=ネサリー)の世話をしていた彼は、肉体を求めてくる彼女をアイスピックで殺害した。
 その頃、グレイスの墓で異変が起きていた。土の下から“何か”が姿を現したのだ。ビールを飲みながらテレビを見ていたスタンリーは、奇妙な物音に気付く。それは、悪魔のような姿をした赤ん坊だった・・・!
<第二話>1950年代半ば。詐欺師のジェシー・ハードウィック(テリー・カイザー)は、マフィアのマッコイ兄弟を騙したことから組織に追われていた。瀕死の重傷を負ったジェシーは、もうろうとした状態で沼地までたどり着き、ボートに倒れこんだまま意識を失った。
 ベッドの上で目を覚ましたジェシーは、フェルダー(ハリー・シーザー)という年老いた黒人に救われたことを知る。フェルダーの家は暗くて怪しげな場所だった。ある晩、ジェシーは彼がヴードゥーの儀式を行っているのを目撃する。さらに、家の中を詮索したジェシーはフェルダーの日誌を発見。なんと、彼の年齢は200歳近かった。
 フェルダーを脅迫したジェシーは、自分のために不老長寿の儀式を行うよう強要する。だが、フェルダーはそれを頑なに拒む。しびれを切らしたジェシーは彼を殺害して沼に沈めた・・・つもりだったのだが・・・!
<第三話>オールドフィールドに住む若い娘アマリリス(ディディ・ラニエ)は、旅回りのカーニバル一座でガラスや剃刀の刃を食べる芸人スティーヴン(ロン・ブルックス)と知り合う。深く愛し合うようになった2人だが、スティーヴンは彼女の愛を素直に受け入れることが出来ない。なぜなら、一座を率いる蛇女(ロザリンド・キャッシュ)がそれを許さないからだ。彼女はスティーヴンに警告する。お前のパワーは私が与えたものだ、もしカーニバルから逃げ出せば必ず報いを受けることになる、と。
 しかし、スティーヴンはその言葉を無視し、アマリリスと駆け落ちをする。モーテルで愛を交わす2人。ところが、突然スティーヴンの体に異変が起きた。体中からガラスの破片や剃刀の刃が飛び出し、彼は血まみれとなって息絶える。狂ったように泣き叫ぶアマリリス。そこへ、不気味な笑みを浮かべた蛇女が現れて・・・。
<第四話>南北戦争の末期。ガレン軍曹(キャメロン・ミッチェル)率いる北軍の兵士たちは、本隊から離れて無法者集団と成り果てていた。オールドフィールドという集落にやって来た彼らは、何ものかの罠にはまって捕らえられてしまう。
 兵士たちを捕らえたのは、北軍の殺戮で親を殺された子供たちの集団だった。リーダーの少年アンドリュー(トミー・ノーウェル)は、“執政官”と呼ばれるものがオールドフィールドを支配しているという。アマンダ(アシュリー・ベア)という少女を騙して縄をほどかせ、彼女を絞殺した上で逃げようとしたガレン軍曹だったが、子供たちが仲間の兵士をバラバラにして殺し、その遺体で遊んでいる姿を目撃して呆然とする。
 再び捕虜となったガレン軍曹に、アンドリューは“執政官”の正体を明かす。それは、戦争で殺された親たちの遺体で作られたオブジェだった。この世に大人が存在する限り殺し合いは続く。だから、抹殺しなくてはならないのだ、と。そして、世にも恐ろしい運命がガレン軍曹を待ち構えていた・・・。

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傷を負った詐欺師ジェシー(T・カイザー)が目覚めた場所は・・・

ヴードゥーの儀式を行う老人フェルダー(H・シーザー)

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アマリリス(D・ラニエ)はカーニバルの芸人(R・ブルックス)に恋する

カーニバル一座を仕切る邪悪な蛇女(R・キャッシュ)

 近親相姦にネクロフィリア、ヴードゥー教、フリークスなど、タブー・ネタをたっぷりと盛り込んだ各エピソードだが、中でも『チルドレン・オブ・ザ・コーン』を彷彿とさせる第四話が秀逸。あちらはとうもろこし畑の中に潜む魔物を崇拝する子供たちの話だったが、こちらでは“戦争”と“大人”という憎悪の対象を明確化させることにより、より説得力のある物語に仕上がっている。
 しかも、出てくる子供たちのリアルで怖いこと!自分たちも戦争に巻き込まれて負傷しており、片足のない子や片目が潰れている子、顔面が変形している子など、実に痛々しくて生々しい。そんな彼らが大人をバラバラにして、その肉片でボディ・パズルをしたり、生きたまま人間バーベキューにしちゃったりするもんだから、そりゃまあ凄まじいもんだ。
 ショッキングといえば、ヴードゥー教を題材にした第二話の凄惨なクライマックスも相当なもの。逆に、グレムリンみたいな赤ちゃんがおちんちんをブラブラさせながら“ダディ〜!”と叫ぶ第一話はバカバカしくて笑わせる。
 脚本に参加しているC・コートニー・ジョイナーは、『パペット・マスター3』(91年)や『サイキック・ウォリアーズ/超時空大戦』(92年)などフルムーン・ピクチャーズの作品でお馴染みの脚本家。映画監督としても、ラヴクラフト原作の『地底人アンダーテイカー』(92年)などを手掛けている。
 一方、製作と脚本の両方に参加しているダリン・スコットは、サンダンスで審査員賞を受賞した“To Sleep With Anger”(90年)や『ポケットいっぱいの涙』(92年)など良質なインディーズ映画を手掛けるプロデューサーとして知られる人物。
 地味ながらも効果的な特殊メイクを担当したのは、『遊星からの物体X』(82年)や『スーパー・マリオ/魔界帝国の女神』(93年)のロブ・バーマン。また、『クリッターズ』(86年)や『エルム街の悪夢3』(87年)の特殊メイクで知られるR・クリストファー・ビッグスがメカニカル・エフェクトで参加している。

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北軍の兵士たちを捕らえたのは子供の集団だった

リーダーのアンドリュー(T・ノーウェル)の語る秘密とは・・・

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ガレン軍曹(C ・ミッチェル)は信じられない光景を目にする

看守役でゲスト出演する往年のスター、ローレンス・ティアニー

 ヴィンセント・プライス扮するジュリアン・ホワイトのもとを訪れる女性ジャーナリスト、ベス・チャンドラーを演じているのは、ジョン・ヒューストン監督の『ゴングなき戦い』(72年)の紅一点でアカデミー助演女優賞にノミネートされたスーザン・ティレル。『海流の中の島々』(77年)や『アンディ・ウォーホルのBAD』(77年)、『テープヘッズ』(88年)、『クライ・ベイビー』(90年)など個性的な映画監督の作品に数多く出演し、非常にエキセントリックな役柄を得意とするアクの強い名脇役だ。
 第一話で地味な中年男スタンリー役を演じているクルー・ギャラガーは、ドン・シーゲル監督の名作『殺人者たち』(64年)の殺し屋役で知られる名優。『バタリアン』(85年)の工場長役でもお馴染みだろう。本作では、一瞬本人と分からないような眼鏡姿で登場する。ちなみに、近親相姦を匂わせる妹アイリーン役を演じているミリアム・バード=ネサリーは、彼の実の奥さんだ。
 第二話で悲惨な目に遭う詐欺師ジャスティンを演じているテリー・カイザーは、アメリカで大ヒットしたコメディ『バーニーズ/あぶない!?ウィークエンド』(89年)のバーニー役で有名な性格俳優。彼を助ける黒人の老人を演じるハリー・シーザーは、“リトル・シーザー”の名前でブルース歌手としても知られる役者だ。
 第三話でカーニバルを支配する謎めいた蛇女役を演じているロザリンド・キャッシュは、『地球最後の男オメガマン』(71年)でチャールトン・ヘストンの相手役を演じた黒人女優。『センチュリアン』(72年)ではステイシー・キーチの相手役も演じていた。
 そして、第四話でガレン軍曹役を演じているのは、往年のタフガイ・スター、キャメロン・ミッチェル。『セールスマンの死』(51年)や『百万長者と結婚する方法』(53年)、『回転木馬』(55年)などの他、マカロニ・ウェスタンやホラー映画でも御馴染みの名優だ。
 その他、オープニングではハマー・フィルムの看板スターとして活躍したセクシー女優マルティーヌ・ベスティックと、往年のB級フィルム・ノワールでハードボイルドなヒーローを演じた名優ローレンス・ティアニーが顔を出している。

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